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特許7637235電子制御ユニットの評価装置及び評価方法
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  • 特許-電子制御ユニットの評価装置及び評価方法 図1
  • 特許-電子制御ユニットの評価装置及び評価方法 図2
  • 特許-電子制御ユニットの評価装置及び評価方法 図3
  • 特許-電子制御ユニットの評価装置及び評価方法 図4
  • 特許-電子制御ユニットの評価装置及び評価方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】電子制御ユニットの評価装置及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
G01M17/007 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023527483
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004460
(87)【国際公開番号】W WO2022259608
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021094890
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千代田 隆良
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534575(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244516(WO,A1)
【文献】特開2019-022262(JP,A)
【文献】特開2013-113624(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108681264(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0010902(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットの評価を行う電子制御ユニットの評価装置であって、
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットと、撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を前記電子制御ユニットに与え、前記電子制御ユニットの応動を評価する車両挙動シミュレータを備え、
前記車両挙動シミュレータは、シミュレーションモデルと、視点CG生成部と、CAN I/Fと、モニタ部から構成され、
前記シミュレーションモデルは、センサモデルと、環境モデルと、車両モデルを有し、
前記電子制御ユニットは、前記撮像素子に対して設定を指示し、設定完了の応動により前記撮像素子の診断を行い、正常の確認をもって、前記車両挙動シミュレータに対して映像信号を含む模擬信号の送信を要求し、
前記シミュレーションモデルは、前記環境モデルが持つ仮想道路上を前記車両モデルが走行することで実車両と同等の試験を実施し、
前記車両モデルは、前記電子制御ユニットから入力される車両制御情報を前記CAN I/Fを介して、車両挙動に反映するとともに、前記車両モデルで模擬した車両情報を前記CAN I/Fで変換し、模擬信号として前記電子制御ユニットに送信し、
前記センサモデルは、前記車両モデルに搭載している外界認識センサの設定を行い、センサの取り付け位置および姿勢を算出し、
前記視点CG生成部は、前記センサモデルが算出した前記センサの取り付け位置および姿勢に応じたCG映像信号を作成することを特徴とする電子制御ユニットの評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御ユニットの評価装置であって、
前記撮像素子は、その設定完了時に前記車両挙動シミュレータまたは前記電子制御ユニットの少なくとも一方に、同期信号を出力することを特徴とする電子制御ユニットの評価装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子制御ユニットの評価装置であって、
前記車両挙動シミュレータは、前記撮像素子が前記電子制御ユニットとの間で送信または受信する制御信号を監視することを特徴とする電子制御ユニットの評価装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子制御ユニットの評価装置であって、
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットにより、単眼カメラを構成していることを特徴とする電子制御ユニットの評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子制御ユニットの評価装置であって、
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットにより、ステレオカメラを構成していることを特徴とする電子制御ユニットの評価装置。
【請求項6】
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットの評価を行う電子制御ユニットの評価方法であって、
撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットに対して、撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を与え、前記電子制御ユニットの応動を評価するに際し、
前記撮像素子の診断を行い、正常の確認をもって、前記撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を与え、
シミュレーションモデルにより、環境モデルが持つ仮想道路上を車両モデルが走行することで実車両と同等の試験を実施し、
前記車両モデルは、前記電子制御ユニットから入力される車両制御情報をCAN I/Fを介して、車両挙動に反映するとともに、前記車両モデルで模擬した車両情報を前記CAN I/Fで変換し、模擬信号として前記電子制御ユニットに送信し、
センサモデルにより、前記車両モデルに搭載している外界認識センサの設定を行い、センサの取り付け位置および姿勢を算出し、
視点CG生成部により、前記センサモデルが算出した前記センサの取り付け位置および姿勢に応じたCG映像信号を作成することで前記電子制御ユニットの応動を評価することを特徴とする電子制御ユニットの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に接続された電子制御ユニットECUを搭載した車両が道路を走行する状態をシミュレーションにより再現するための電子制御ユニットの評価装置及び評価方法に係り、特に撮像素子に接続された電子制御ユニットECUに対して実車両と同様の環境下での評価を可能とする電子制御ユニットの評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全かつ快適な車社会の実現のために運転支援システムや自動運転システムの研究が盛んである。今後自動運転のレベルが向上するにしたがって、高速道路合流や交差点右左折など、周辺環境を含めた複雑な制御ロジックの開発が必要になってくる。
【0003】
検証評価に関しても、自動運転レベルがあがるにつれ、複雑な制御ロジックを検証する為に膨大なテストケースが必要になると予想されている。現状の検証評価では、実車走行評価を中心に実施しているが、今後テスト工数が膨大になり、実際の車両(実車という)を使ったテストだけでは評価が困難である為、HILS(Hardware In the Loop Simulator)のようなシミュレーションを活用する事が一般的になってきている。
【0004】
HILSとは、評価対象となる制御対象は実物を用い、それ以外の車両要素についてはモデル化し、これらを組み合わせて評価装置を構築することで、実際の制御システムを仮想世界にて評価するツールであり、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-26845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各種センサ情報を元に算出を行う制御対象を用いたHILSを構築する際に、制御対象が要求するタイミングでセンサ情報を提供する必要がある。制御対象がカメラである場合、カメラがシャッタを切るタイミングで、映像を入力する必要がある。HILSでは、実際の映像を入力する事が出来ない為、CG(Computer Graphics)で作成した仮想映像を入力する必要がある。本来カメラはセンサとしてCMOSなどの撮像素子があり、外界映像を取り込み制御対象であるカメラECUに情報を提供している。
【0007】
この点に関し、特許文献1では、カメラのCMOSの代わりにカメラECUに直接CG映像を入力している。この入力関係では、本来接続しているカメラECUに接続している撮像素子が存在していない為、撮像素子がなくても動作するように対応する必要があった。1つは、撮像素子がなくても正常に動くようにカメラECUのソフトウェアを改造することであり、もう1つは、撮像素子の動きを完全に再現する機能をHILSに搭載することである。
【0008】
然るに、HILSは、検証するECU、ソフトウェアそのものを使用することが望ましく、1つ目の方法だと検証するECU,ソフトウェア事態を変更することとなり、HILS環境として望ましくない。2つ目の方法だと、検証するECU、ソフトウェアを変更する必要はないが、HILS側に撮像素子の再現する機能を完全に再現するという工数が発生する。カメラECUの複雑化にあたり撮像素子も高度化し、完全再現するということは大変困難となっている。
【0009】
以上のことから本発明の目的は、検証するECU、ソフトウェアを変更することなく、撮像素子との通信を構築することができる電子制御ユニットの評価装置及び評価方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のことから本発明においては、「撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットの評価を行う電子制御ユニットの評価装置であって、撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットと、撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を電子制御ユニットに与え、電子制御ユニットの応動を評価する車両挙動シミュレータを備え、車両挙動シミュレータは、シミュレーションモデルと、視点CG生成部と、CAN I/Fと、モニタ部から構成され、シミュレーションモデルは、センサモデルと、環境モデルと、車両モデルを有し、電子制御ユニットは、撮像素子に対して設定を指示し、設定完了の応動により撮像素子の診断を行い、正常の確認をもって、車両挙動シミュレータに対して映像信号を含む模擬信号の送信を要求し、シミュレーションモデルは、環境モデルが持つ仮想道路上を車両モデルが走行することで実車両と同等の試験を実施し、車両モデルは、電子制御ユニットから入力される車両制御情報をCAN I/Fを介して、車両挙動に反映するとともに、車両モデルで模擬した車両情報をCAN I/Fで変換し、模擬信号として電子制御ユニットに送信し、センサモデルは、車両モデルに搭載している外界認識センサの設定を行い、センサの取り付け位置および姿勢を算出し、視点CG生成部は、センサモデルが算出したセンサの取り付け位置および姿勢に応じたCG映像信号を作成することを特徴とする電子制御ユニットの評価装置」としたものである。
【0011】
また本発明においては、「撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットの評価を行う電子制御ユニットの評価方法であって、撮像素子に接続されて映像信号を取り扱う電子制御ユニットに対して、撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を与え、電子制御ユニットの応動を評価するに際し、撮像素子の診断を行い、正常の確認をもって、撮像素子からの映像信号に代えて映像信号を含む模擬信号を与え、シミュレーションモデルにより、環境モデルが持つ仮想道路上を車両モデルが走行することで実車両と同等の試験を実施し、車両モデルは、電子制御ユニットから入力される車両制御情報をCAN I/Fを介して、車両挙動に反映するとともに、車両モデルで模擬した車両情報をCAN I/Fで変換し、模擬信号として電子制御ユニットに送信し、センサモデルにより、車両モデルに搭載している外界認識センサの設定を行い、センサの取り付け位置および姿勢を算出し、視点CG生成部により、センサモデルが算出したセンサの取り付け位置および姿勢に応じたCG映像信号を作成することで電子制御ユニットの応動を評価することを特徴とする電子制御ユニットの評価方法」としたものである。
【発明の効果】
【0012】
撮像素子に接続されたカメラECUをHILSに構築することで、検証するECUそのまま、ソフトウェアそのままで検証することが可能となる。また、撮像素子を再現する必要がなく、撮像素子がそのまま接続されるため、撮像素子をブラックボックスとして扱うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る撮像素子を備えた電子制御ユニットを用いたHILSの一構成例を示す図。
図2】本発明に係る車両挙動シミュレータの構成例を示す図。
図3】本発明に係るHILSにおける撮像素子との通信フローチャートを示す図。
図4】本発明に係る撮像素子を備えたカメラECUを用いたHILSの一構成例を示す図。
図5】本発明に係る撮像素子を備えたステレオカメラを用いたHILSの一構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明に係る撮像素子に接続された電子制御ユニットを用いたHILSの一構成例を示す図である。制御対象である電子制御ユニット1を評価する環境は、車両挙動シミュレータ3と、撮像素子2とから構成される。この構成では、電子制御ユニット1は撮像素子2からの画像情報を用いて各種演算処理を実行するものであり、車両挙動シミュレータ3は、電子制御ユニット1に対して模擬信号を与え、この時の電子制御ユニット1の応動を監視し、その評価を行う。
【0016】
なお図1の撮像素子2と電子制御ユニット1の関係は互いに独立した部品であり、これらを組み合わせて機能試験する場合を想定している。これに対し、後述する実施例2、実施例3の構成は撮像素子2を備えた電子制御ユニット1として一体化部品とされているものであり、実施例2は単眼カメラ、ステレオカメラを構成したものであるが、本発明はこれらのいずれの場合であっても適用が可能である。
【0017】
図1の設備において、電子制御ユニット1は、撮像素子2との間で制御信号S1を送受信する機能を有する。また電子制御ユニット1は、車両挙動シミュレータ3から模擬信号としてCG映像信号S2及び車両情報S3が入力され、電子制御ユニット1から模擬信号の時の応動結果の信号としてアクセルやブレーキ要求などの車両情報S4を車両挙動シミュレータ3に送信する機能を有する。これにより、映像素子2が各種設定の情報を通信することで電子制御ユニット1が行う診断処理を正常に診断しながら、車両シミュレータ3から入力されるCG映像信号S2を入力することが可能となる。
【0018】
撮像素子2は、電子制御ユニット1に制御信号S1を応答する機能を有する。また、車両挙動シミュレータ3に、撮像素子2が発信する同期情報S5を送信する機能を有する。
【0019】
車両挙動シミュレータ3は、例えば1ms周期間隔で車両の挙動を計算し、電子制御ユニット1に車両情報S3を送信する。また、車両の挙動計算には、ドライバーが操作する情報の他に、電子制御ユニット1から入力されるアクセルやブレーキ、舵角などの車両制御情報S4に応じた計算もおこなう。また、シミュレーション空間内にいる自車両におけるカメラ座標と姿勢を算出し、CG映像信号S2を電子制御ユニット1に出力する。
【0020】
図2は、本発明に係る車両挙動シミュレータの構成例を示す図である。車両挙動シミュレータ3は、シミュレーションモデル301と、視点CG生成部305と、CAN I/F306と、モニタ部307から構成される。また、シミュレーションモデル301はセンサモデル302と、環境モデル303と、車両モデル304を有する。
【0021】
シミュレーションモデル301は1ms間隔で車両挙動の計算を行う。環境モデル303が持つ仮想道路上を車両モデル304が走行することで実車両と同等の試験を実施する。車両モデル304は、電子制御ユニット1から入力されるアクセル、ブレーキ、舵角などの車両制御情報S4をCAN I/F306を介し、車両挙動に反映する。また、車両モデル304で模擬した車両情報はCAN I/F306で変換し、模擬信号S3として電子制御ユニット1に送信する機能を備える。
【0022】
センサモデル302は、車両モデル304に搭載している外界認識センサの設定を行っており、センサの取り付け位置や姿勢を算出し、応じたCG映像信号S2を作成する視点CG生成部305を有する。
【0023】
図3は、本発明に係るHILSの撮像素子との通信フローチャートを示している。この図では、左から順に、電子制御ユニット1、撮像素子2.車両挙動シミュレータ3におけるフローを高さ方向に示しており、またこれらは互いに連携しあって作動することから、相互に交換し合う信号Sを横方向に点線で示している。
【0024】
このフローでは、それぞれの要素がスタートしたのちに、電子制御ユニット1が処理ステップSt11において制御信号S1を出力することをトリガとして、以降連携して作動し、最終的には車両挙動シミュレータ3が処理ステップSt36において電源オフしたことを受けて電子制御ユニット1が処理ステップSt16において電源オフして終了となる。
【0025】
このフローではまず、電子制御ユニット1は、処理ステップSt11において最初に撮像素子2に対して、内部レジスタの設定や診断情報などの制御信号S1を送信する。撮像素子2は、受領した制御信号S1を受け、処理ステップSt21において設定や診断を開始し、その終了後は、処理ステップSt22において電子制御ユニット1に対して設定完了した旨の応答の制御信号S1を送信するとともに、車両挙動シミュレータ3に対して、設定完了した旨の応答の制御信号S1と、以降の処理を同期化させるための同期信号S5を送信する。なお、同期信号は、車両挙動シミュレータまたは電子制御ユニットの少なくとも一方に送信されるものであればよい。
【0026】
なお以降の説明では、撮像素子2における設定や診断は、正しく実行され正常であったことを前提とするが、もしこの処理が適正に行われない時には、電子制御ユニット1が撮像素子2の異常を検知し、以降の処理が停止されるかあるいは何らかの対応がとられることになる。
【0027】
電子制御ユニット1は、撮像素子2からの制御応答を受領後、処理ステップSt12において撮像素子2が正常に機能しているか診断を実施する。処理ステップSt13において撮像素子2が正常であると確認出来たら、本来は映像要求を撮像素子2に出力するところを処理ステップSt14において車両挙動シミュレータ3に送信する。
【0028】
他方車両挙動シミュレータ3は、そのスタート後に事前準備処理として処理ステップSt31において視点算出処理などを実行し、処理ステップSt32において撮像素子2からの設定完了した旨の応答の制御信号S1と、以降の処理を同期化させるための同期信号S5を受領したことをもって、モニタ部307の機能を立ち上げ、以後に電子制御ユニット1がCG映像S2を送信してくるのを待機している。
【0029】
電子制御ユニット1が送信した映像要求を受領した挙動シミュレータ3は、処理ステップSt33において1msで計算している車両挙動の計算結果であるセンサの位置や姿勢に応じたCG映像S2を作成開始し、作成完了した処理ステップSt34において電子制御ユニット1に送信する。以後は、処理ステップSt15、St35に示すように電子制御ユニット1と車両挙動シミュレータ3は映像要求と生成を繰り返す。
【0030】
上記の処理の流れにおいて、本発明の特徴は、処理ステップSt11,St12,St13,St21,St22のルート及び処理を設けた点である。つまり、電子制御ユニット1と車両挙動シミュレータ3の間での模擬信号を用いたやり取りを開始するにあたり、事前に撮像素子2の健全性を確認することを前提としている点である。従来方式では、この前提部分の確認がないままにシミュレーションが開始されていたために、撮像素子2も含めた総合評価ができていなかったものである。なお、従来において本発明の着眼に至らなかった理由としては、HILSの固定概念がある点、撮像素子内部ロジックがブラックボックス化されており、模擬が困難であったことがあげられる。
【0031】
このように実際の電子制御ユニット1と撮像素子2が本来実施する環境を用いつつ、映像入力を車両挙動シミュレータ3とすることで、検証する電子制御ユニット1には変更を加えず、評価する環境を構築することが可能となる。
【実施例2】
【0032】
図4は、本発明に係る一構成例として撮像素子を備えたカメラECUユニットのHILSを示す。この例では撮像素子2とカメラECUユニット1Aが一体に構成されて、単眼カメラC1を形成したものである。以下実施例1と異なる箇所のみ説明を行う。
【0033】
制御対象であるカメラECUユニット1Aを評価する環境は、車両挙動シミュレータ3と、撮像素子2と、から構成される。
【0034】
カメラECUユニット1Aは、撮像素子2と制御信号S1の送受信する機能を有する。また、車両シミュレータ3から映像信号S2と、車両情報S3が入力され、電子制御ユニットからアクセルやブレーキ要求などの車両情報S4を車両シミュレータ1に送信する機能を有する。映像素子2が各種設定の情報を通信することでカメラECUユニット1Aが行う診断処理を正常に診断しながら、車両シミュレータ3から入力されるCG映像S2を入力することが可能とする。
【0035】
撮像素子2は、カメラECUユニット1Aに制御信号S1を応答する機能を有する。また、車両挙動シミュレータ3に、撮像素子が発信する同期情報S5を送信する機能を有する。
【0036】
車両挙動シミュレータ3は、1ms周期間隔で車両の挙動を計算し、カメラECUユニット4に車両情報S3を送信する。また、車両の挙動計算には、ドライバーが操作する情報の他に、カメラECUユニット1Aから入力されるアクセルやブレーキ、舵角などの車両制御情報S4に応じた計算もおこなう。また、シミュレーション空間内にいる自車両におけるカメラ座標と姿勢を算出し、CG映像S2をカメラECUユニット1Aに出力する。
【0037】
実施例2の場合にも、シミュレーションの開始に先立ち、処理ステップSt11,St12,St13,St21,St22のルート及び処理を実行するので、実施例1と同等の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0038】
図4は、本発明に係る一構成例として撮像素子を備えたステレオカメラECUユニットのHILSを示す。この例では左右の撮像素子2R,2LとステレオカメラECUユニット1Bが一体に構成されて、ステレオカメラC2を形成したものである。以下実施例1と異なる箇所のみ説明を行う。
【0039】
制御対象であるステレオカメラECUユニット1Bを評価する環境は、車両挙動シミュレータ3と、左目用撮像素子2Lと、右目用撮像素子2Rと、から構成される。
【0040】
ステレオカメラECUユニット1Bは、撮像素子2R,2Lと制御信号S1の送受信する機能を有する。また、車両シミュレータ3から映像信号S2と、車両情報S3が入力され、電子制御ユニットからアクセルやブレーキ要求などの車両情報S4を車両シミュレータ1に送信する機能を有する。映像素子2R,2Lが各種設定の情報を通信することでステレオカメラカメラECUユニット1Bが行う診断処理を正常に診断しながら、車両シミュレータ3から入力されるCG映像S2を入力することが可能とする。
【0041】
撮像素子2R,2Lは、ステレオカメラECUユニット1Bに制御信号S1を応答する機能を有する。また、車両挙動シミュレータ3に、撮像素子が発信する同期情報S5を送信する機能を有する。
【0042】
車両挙動シミュレータ3は、1ms周期間隔で車両の挙動を計算し、ステレオカメラECUユニット1Bに車両情報S3を送信する。また、車両の挙動計算には、ドライバーが操作する情報の他に、ステレオカメラECUユニット1Bから入力されるアクセルやブレーキ、舵角などの車両制御情報S4に応じた計算もおこなう。また、シミュレーション空間内にいる自車両におけるカメラ座標と姿勢を算出し、左右のCG映像S2R,S2LをステレオカメラECUユニット1Bに出力する。
【0043】
実施例3の場合にも、シミュレーションの開始に先立ち、処理ステップSt11,St12,St13,St21,St22のルート及び処理を実行するので、実施例1と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:電子制御ユニット、2:撮像素子、3:車両シミュレータ、4:カメラECUユニット、5:ステレオカメラECUユニット、301:シミュレーションモデル、302:センサモデル、303:環境モデル、304:車両モデル、305:視点CG生成部、306:CAN I/F、307:モニタ部、S1:制御信号、S2:CG映像、S3:車両情報、S4:アクセル、ブレーキ、舵角などの車両制御情報、S5:同期信号、S2R:左カメラCG映像、S2L:右カメラCG映像
図1
図2
図3
図4
図5