(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】車載用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20250219BHJP
H05K 5/00 20250101ALI20250219BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H05K7/20 B
H05K5/00 A
(21)【出願番号】P 2023529472
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2022004024
(87)【国際公開番号】W WO2022269978
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021104710
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上之 恵子
(72)【発明者】
【氏名】河合 義夫
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 諒
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-166238(JP,A)
【文献】特開2012-044038(JP,A)
【文献】実開平05-067081(JP,U)
【文献】国際公開第2006/098365(WO,A1)
【文献】特開2019-193199(JP,A)
【文献】特開2007-171336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板と、
前記回路基板を収容する第1の筐体と、
前記第1の筐体を収容する第2の筐体と、
前記第1の筐体を支持するブラケットと、
を備え、
前記第2の筐体には、前記第2の筐体の外部と内部とを連通する連通部が設けられており、
前記ブラケットを用いて前記第1の筐体を前記第2の筐体に取り付けた状態で、前記第1の筐体の外表面と前記第2の筐体の内表面との間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記第1の筐体の全周にわたって形成され
ており、
前記連通部は、前記第2の筐体の少なくとも2箇所に設けられており、
前記電子部品は、前記回路基板の一方側に配置された発熱部品と前記回路基板の他方側に配置されたコネクタ部品とを少なくとも含み、
前記2箇所のうち、1箇所に設けられる前記連通部は、前記コネクタ部品よりも前記発熱部品に近い位置に設けられ、他の1箇所に設けられる前記連通部は、前記発熱部品よりも前記コネクタ部品に近い位置に設けられており、
前
記コネクタ部品よりも前記発熱部品に近い位置に設けられた前記連通部は、それぞれ第1の孔寸法S1を有する複数の通気孔によって構成され、
前記発熱部品よりも前記コネクタ部品に近い位置に設けられた前記連通部は、それぞれ第2の孔寸法S2を有する複数の通気孔によって構成され、
前記第1の孔寸法S1と前記第2の孔寸法S2は、
S1>S2
の関係を満たす
車載用電子制御装置。
【請求項2】
前記2箇所は、互いに離れた場所に位置している
請求項
1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項3】
前記2箇所は、少なくとも1箇所が空気の流入側となり、少なくとも他の1箇所が空気の流出側となるように、互いに離れた場所に位置している
請求項
2に記載の車載用電子制御装置。
【請求項4】
前記第2の筐体は多面体であり、
前記2箇所は、少なくとも1箇所が前記第2の筐体の第1の面であり、少なくとも他の1箇所が前記第2の筐体の、前記第1の面と異なる第2の面である
請求項
1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項5】
前記第1の面および前記第2の面は、互いに対向する状態に配置されている
請求項
4に記載の車載用電子制御装置。
【請求項6】
前記第1の筐体と前記第2の筐体との間を流れる空気の向きを直線状に整える整流部材を備える
請求項
1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項7】
前記整流部材は、放熱フィンによって構成されている
請求項
6に記載の車載用電子制御装置。
【請求項8】
前記電子部品は、前記回路基板の一方側に配置された発熱部品と前記回路基板の他方側に配置されたコネクタ部品とを少なくとも含み、
前記整流部材は、前記発熱部品が配置されている側から前記コネクタ部品が配置されている側に向かって直線状に延伸している
請求項
6または7に記載の車載用電子制御装置。
【請求項9】
前記第1の孔寸法S1と前記第2の孔寸法S2は、
S2/S1≦0.5
の関係を満たす
請求項
1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項10】
前記通気孔は、少なくとも一つの角を有する形状である
請求項
1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項11】
前記電子部品が発する熱を前記第1の筐体と前記第2の筐体との隙間部分に放出する放熱ピンを備える
請求項1に記載の車載用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車などの車両には、エンジン、パワーステアリング、ブレーキ、エアバッグなどを含む、様々な対象物を制御するために、複数の電子制御装置(ECU)が搭載されている。車両に搭載される電子制御装置(以下、「車載用電子制御装置」ともいう。)は、電子部品を実装した回路基板を筐体の内部に収容した構造になっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車載用電子制御装置は、エンジンルームに搭載されることが多い。一方で、近年においては、安全な運転支援や自動運転の実現に向けて、より多くの車載用電子制御装置が車両に搭載されている。また、車載用電子制御装置は、エンジンルームの他に、車室内に搭載される場合がある。
【0005】
しかしながら、車室内に車載用電子制御装置を搭載する場合は、運転者が誤って手足を車載用電子制御装置にぶつけるおそれがある。このような外部からの衝撃により車載用電子制御装置の筐体が損傷すると、運転支援や自動運転の安全性に支障をきたすおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、より安全性の高い運転支援や自動運転に寄与することができる車載用電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、たとえば、請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、電子部品が実装された回路基板と、回路基板を収容する第1の筐体と、第1の筐体を収容する第2の筐体と、を備える車載用電子制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より安全性の高い運転支援や自動運転に寄与することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【
図2】
図1に示す車載用電子制御装置のA-A断面図である。
【
図3】
図1に示す車載用電子制御装置のB-B断面図である。
【
図5】比較形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【
図6】第1実施形態に係る車載用電子制御装置によって実現される空気の流れを説明する図である。
【
図7】通気孔を四角形に形成した例を示す図である。
【
図8】通気孔を三角形に形成した例を示す図である。
【
図9】通気孔を五角形に形成した例を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る車載用電子制御装置の第1変形例を説明する図である。
【
図11】第1実施形態に係る車載用電子制御装置の第2変形例を説明する図である。
【
図12】第2実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【
図13】
図12に示す車載用電子制御装置のC-C断面図である。
【
図14】
図12に示す車載用電子制御装置のD-D断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る車載用電子制御装置の第1変形例を説明する図である。
【
図16】第2実施形態に係る車載用電子制御装置の第2変形例を説明する図である。
【
図17】第3実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【
図18】第3実施形態に係る車載用電子制御装置の変形例を説明する図である。
【
図19】第4実施形態に係る車載用電子制御装置を示す断面図である。
【
図20】第5実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【
図21】第6実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。また、
図2は、
図1に示す車載用電子制御装置のA-A断面図であり、
図3は、
図1に示す車載用電子制御装置のB-B断面図である。車載用電子制御装置は、ガソリンや軽油などの液体燃料を用いて走行する車両に搭載される電子制御装置に限らず、例えば、水素を燃料に用いて走行する車両、ハイブリッドタイプの車両、電気自動車などの車両に搭載される電子制御装置にも広く適用可能である。また、車載用電子制御装置が制御する対象物は、特定の対象物に限定されるものではない。
【0012】
以降の説明では、車載用電子制御装置の各部の形状や位置関係などを明確にするために、車載用電子制御装置の厚み方向(高さ方向)をZ方向とし、このZ方向に直交する二軸方向のうち、一方の方向をX方向、他方の方向をY方向とする。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。
【0013】
図1~
図3に示すように、第1実施形態に係る車載用電子制御装置100は、回路基板10と、回路基板10を収容するインナーケース11と、インナーケース11を収容するアウターケース12と、を備えている。
【0014】
(回路基板10)
回路基板10は、例えば、ガラスエポキシ樹脂を基材に用いたリジット基板であるプリント配線基板によって構成されている。回路基板10は、片面だけに配線パターンが形成されていてもよいし、両面に配線パターンが形成されていてもよい。回路基板10は、Z方向から見て矩形(長方形または正方形)をなす基板である。回路基板10には、電子部品の一例として、発熱部品15とコネクタ部品16とが実装されている。また、回路基板10には、発熱部品15とコネクタ部品16の他にも、図示しないスイッチング素子、抵抗素子、コンデンサ、ダイオードなどの電子部品が実装される。発熱部品15とコネクタ部品16は、回路基板10の一方の基板面10Aを共通の実装面として、回路基板10に実装されている。つまり、発熱部品15とコネクタ部品16は、回路基板10の同一の面に実装されている。また、発熱部品15とコネクタ部品16は、回路基板10の基板面10Aに形成された配線パターン(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0015】
発熱部品15は、例えばマイコンと呼ばれるCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算回路が内蔵された電子部品である。発熱部品15は、IC(集積回路)チップや半導体チップなどのプロセッサを有し、数百MHz~数GHzの処理速度で動作する高機能部品である。このような高機能部品は、高速で演算処理を行うために、多くの熱を発生する。つまり、発熱部品15は、発熱する電子部品である。回路基板10には、発熱部品15の他にも電子部品(例えば、ダイオードなど)が実装されるが、発熱量は、演算機能を有する電子部品が多い。このため、本明細書では、演算機能を有する電子部品を発熱部品と定義する。発熱部品15は、マイコンと呼ばれるものに限らず、例えば、マイコンと通信するメモリでもよい。高機能部品である発熱部品15は、いずれも消費電力が非常に高く、数十Wに至る場合もある。
【0016】
発熱部品15は、表面実装型の電子部品である。発熱部品15は、Y方向において回路基板10の一方側(
図3の左側)に配置されている。本実施形態においては、一例として、1つの回路基板10に2つの発熱部品15が実装されている。2つの発熱部品15は、X方向に所定の間隔をあけて配置されている。回路基板10に実装される発熱部品15の個数は1つでもよいし3つ以上でもよい。
【0017】
コネクタ部品16は、Y方向において回路基板10の他方側(
図3の右側)に配置されている。具体的には、コネクタ部品16は、Y方向において発熱部品15が実装される側とは反対側となる、回路基板10の端部に実装されている。コネクタ部品16は、回路基板10が生成する電気信号を外部の機器に送信したり、外部の機器が生成する電気信号を回路基板10で受信したりするためのコネクタ部品である。車載用電子制御装置100と電気信号をやり取りする上記外部の機器としては、例えば、車載用電子制御装置100以外の車載用電子制御装置、カメラ、センサ、アクチュエータなどが考えられる。コネクタ部品16には、図示しないハーネスが接続される。ハーネスは、回路基板10と外部の機器とを電気的に接続するための配線束である。ハーネスは、電気的な接続をとるための導体である金属の線材を、絶縁体である保護被膜によって覆った構造になっている。ハーネスは、アウターケース12に設けられた引き出し部(図示せず)を通して、アウターケース12の外部に引き出される。このため、コネクタ部品16は、ハーネスを介してアウターケース12の外部に熱を逃がす機能を有する。本実施形態においては、一例として、1つの回路基板10に2つのコネクタ部品16が実装されている。2つのコネクタ部品16は、X方向に所定の間隔をあけて配置されている。回路基板10に実装されるコネクタ部品16の個数は1つでもよいし3つ以上でもよい。
【0018】
(インナーケース11)
インナーケース11は、回路基板10を収容可能な第1の空間21を内部に有する中空のケースである。インナーケース11は、第1の筐体に相当する。インナーケース11は多面体であり、より具体的には六面体(直方体)である。インナーケース11は、好ましくは、金属製のケースである。インナーケース11を構成する金属は、好ましくは、アルミニウム、またはアルミニウムを主材とする合金である。ただし、インナーケース11を構成する材料は金属に限らず、樹脂であってもよい。また、インナーケース11は、一部が金属製で、他の部分が樹脂製であってもよい。
【0019】
インナーケース11は、主として、インナーケース本体22と、インナーケース蓋体23とによって構成されている。インナーケース本体22は、Z方向の一方(
図2および
図3の上方)を開口した断面U字形の構造体である。インナーケース蓋体23は、インナーケース本体22の開口寸法よりも大きな外形寸法を有する板状の構造体である。上述した第1の空間21は、インナーケース本体22の開口をインナーケース蓋体23で塞ぐことにより、実質的に密閉された空間となっている。インナーケース本体22とインナーケース蓋体23は、例えば図示しないネジ等によって結合される。インナーケース本体22の内側には段付き部24が形成されている。回路基板10は、段付き部24に回路基板10を載せた状態で、例えば図示しないネジ等によりインナーケース本体22に取り付けられている。また、回路基板10は、一方の基板面10Aがインナーケース蓋体23と対向するように配置されている。
【0020】
インナーケース11は、複数のブラケット30によってインナーケース11の第1の空間21内に支持されている。本実施形態においては、一例として、4つのブラケット30によってインナーケース11を支持している。4つのブラケット30は、X方向でインナーケース11を挟み込むように配置されている。各々のブラケット30は、L字形に形成されている。ブラケット30は、
図2に示すように、第1の取付片31と第2の取付片32とを一体に有する。第1の取付片31は、アウターケース12の内側の底面に固定状態で取り付けられている。第2の取付片32は、インナーケース本体22の側面に固定状態で取り付けられている。このように複数のブラケット30を用いてインナーケース11をアウターケース12に取り付けた状態では、インナーケース11の外表面とアウターケース12の内表面との間に隙間が形成されている。この隙間は、多面体であるインナーケース11の全周にわたって形成されている。
【0021】
(アウターケース12)
アウターケース12は、インナーケース11を収容可能な第2の空間25を内部に有する中空のケースである。アウターケース12は、第2の筐体に相当する。アウターケース12は、多面体であり、より具体的には六面体(直方体)である。アウターケース12は、多面体であるインナーケース11の全面を囲むように配置されている。これにより、インナーケース11は、アウターケース12によって機械的に保護されている。アウターケース12は、好ましくは、金属製のケースである。アウターケース12を構成する金属は、好ましくは、アルミニウム、またはアルミニウムを主材とする合金である。ただし、アウターケース12を構成する材料は金属に限らず、樹脂であってもよい。また、アウターケース12は、一部が金属製で、他の部分が樹脂製であってもよい。
【0022】
アウターケース12は、主として、アウターケース本体26と、アウターケース蓋体27とによって構成されている。アウターケース本体26は、Z方向の一方(
図2および
図3の上方)を開口した断面U字形の構造体である。アウターケース蓋体27は、アウターケース本体26の開口寸法よりも大きな外形寸法を有する板状の構造体である。上述した第2の空間25は、アウターケース本体26の開口をアウターケース蓋体27で塞ぐことにより、実質的に密閉された空間となっている。アウターケース本体26とアウターケース蓋体27は、例えば図示しないネジ等によって結合される。
【0023】
ここで本実施形態においては、一例として、車載用電子制御装置100が
図2および
図3に示す向き(姿勢)で車両に搭載される場合を想定して、アウターケース12が有する6つの面を次のように定義する。まず、Z方向の一方を向いて配置される面を上面12Aとし、Z方向の他方を向いて配置される面を下面12Bとする。また、X方向およびY方向を配置される4つの面をそれぞれ側面12C,12D,12E,12Fとする。上面12Aの面積は、個々の側面12C,12D,12E,12Fの面積よりも広く、かつ、下面12Bの面積と同じである。なお、車載用電子制御装置100は、アウターケース12の相対向する2つの側面を天地方向に向けて車両に搭載することも可能である。また、車載用電子制御装置100は、水平面に対して斜めの姿勢で車両に搭載することも可能である。
【0024】
アウターケース12には、連通部35,36が設けられている。連通部35は、アウターケース12の外部と内部とを連通する部分であり、連通部36も、アウターケース12の外部と内部とを連通する部分である。連通とは、空間的につながるという意味である。つまり、連通部35,36は、アウターケース12の外部の空間とアウターケース12の内部の空間(第2の空間25)とをつなぐ部分である。連通部35,36は、アウターケース12の外部の空間とアウターケース12の内部の空間との間で空気の入れ換えが行われるよう、アウターケース12の少なくとも2箇所に設けることが好ましい。また、連通部35,36が設けられる2箇所は、アウターケース12の外部の空間とアウターケース12の内部の空間との間で空気の入れ換えがよりスムーズに行われるよう、互いに離れた場所に位置していることが好ましい。
【0025】
本実施形態においては、一例として、アウターケース12の2箇所に連通部35,36が設けられている。具体的には、連通部35,36が設けられる2箇所が互いに離れた場所に位置するよう、連通部35は、アウターケース12の側面12Eに設けられ、連通部36は、アウターケース12の側面12Fに設けられている。側面12Eと側面12Fは、一方が空気の流入側となり、他方が空気の流出側となるように、互いに離れた場所に位置している。また、側面12Eと側面12Fは、Y方向で互いに対向する状態に配置されている。
【0026】
図1および
図3から分かるように、側面12Eに設けられた連通部35は、コネクタ部品16よりも発熱部品15に近い位置に設けられている。これに対して、側面12Fに設けられた連通部36は、発熱部品15よりもコネクタ部品16に近い位置に設けられている。連通部35は、複数の通気孔35aによって構成され、連通部36は、複数の通気孔36Aによって構成されている。複数の通気孔35Aは、マトリクス状の配列で密に配置され、複数の通気孔36Aも、マトリクス状の配列で密に配置されている。個々の通気孔35A,36Bは、例えばレーザ加工、プレス加工等によって円形に形成されている(
図4参照)。また、複数の通気孔35Aは、X方向において側面12Eのほぼ全域に形成され、複数の通気孔36Aは、X方向において側面12Fのほぼ全域に形成されている。また、Z方向においては、連通部35および連通部36は、互いに同じ位置に配置されるとともに、アウターケース12の下面12B側よりも上面12A側に近い位置に配置されている。これにより、連通部35および連通部36は、回路基板10上で主たる熱源となる発熱部品15に近い位置に寄せて配置されている。なお、連通部35,36については、例えばアウターケース12の側面12E,12Fにそれぞれ開口部(図示せず)を形成し、この開口部を塞ぐように金網などの網目状部材(図示せず)あるいはパンチングプレート(図示せず)などを溶接等によってアウターケース12に固定することにより形成することも可能である。
【0027】
上述した第1実施形態に係る車載用電子制御装置100においては、回路基板10をインナーケース11に収容したうえで、インナーケース11をアウターケース12に収容している。つまり、車載用電子制御装置100は、回路基板10をインナーケース11とアウターケース12とによって二重に取り囲んだ構造、すなわち二重筐体構造を有している。このため、回路基板10とインナーケース11とを、アウターケース12によって機械的に保護することができる。したがって、例えば車載用電子制御装置100を車室内に搭載する場合に、運転者や同乗者などが誤って手足を車載用電子制御装置100にぶつけてしまっても、その衝撃がインナーケース11に直接加わることがない。よって、外部からの衝撃にともなうインナーケース11の損傷を有効に回避することができる。また、発熱部品15やコネクタ部品16が実装された回路基板10は、アウターケース12の第2の空間25内でインナーケース11により保護されるため、発熱部品15等の電子部品によって実現される車載用電子制御装置100の制御機能を損なうおそれがない。したがって、より安全性の高い運転支援や自動運転に寄与することができる車載用電子制御装置100を提供することが可能となる。
【0028】
また、上述した二重筐体構造は、上述した機械的な保護機能の他にも、インナーケース11を塵埃等から保護する機能や、車両に対する車載用電子制御装置100の取り付けを容易にする機能も有する。
【0029】
また、二重筐体構造は、運転席の足下や助手席の足下、ダッシュボードの奥、トランクルームなどの車室内に搭載される車載用電子制御装置に適用することが好ましいが、これに限らず、エンジンルームに搭載される車載用電子制御装置に適用してもよい。つまり、二重筐体構造を有する車載用電子制御装置は、車室内および車室外のいずれに搭載される車載用電子制御装置にも適用可能である。
【0030】
さらに、上述した第1実施形態に係る車載用電子制御装置100においては、アウターケース12に連通部35,36を設けた構成を採用している。このため、インナーケース11をアウターケース12に収容した場合の、放熱性能の低下を抑制することができる。以下、詳しく説明する。
【0031】
図5は、比較形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
図5に示すように、比較形態に係る車載用電子制御装置200においては、発熱部品15およびコネクタ部品16を実装した回路基板10をインナーケース11に収容し、このインナーケース11をアウターケース12に収容している。このため、インナーケース11をアウターケース12によって機械的に保護したり、塵埃等から保護したり、車載用電子制御装置200の取り付けを容易にしたりする効果は、上記第1実施形態と同様に得られる。このため、比較形態に係る車載用電子制御装置200は、一つの実施形態となり得る。
【0032】
ただし、比較形態に係る車載用電子制御装置200では、アウターケース12に連通部が設けられていない。このため、仮にアウターケース12の外部に実線の矢印で示すような空気の流れが生じていても、アウターケース12の外部から内部に空気が流れ込んだり、アウターケース12の内部から外部に空気が流れ出たりすることがない。したがって、アウターケース12の内部では、空気の対流が起こりにくい状況になっている。
【0033】
一方、第1実施形態に係る車載用電子制御装置100では、アウターケース12に連通部35,36が設けられている。このため、アウターケース12の外部から内部に空気が流れ込んだり、アウターケース12の内部から外部に空気が流れ出したりする。したがって、アウターケース12の内部では、空気の対流が起こりやすい状況になっている。
【0034】
ここで、第1実施形態においては、アウターケース12の側面12Eに連通部35が設けられ、その側面12Eに対向する側面12Fに連通部36が設けられている。また、連通部35は発熱部品15に近い位置に設けられ、連通部36はコネクタ部品16に近い位置に設けられている。このため、連通部35が設けられた側面12Eは、空気の流入側となり、連通部36が設けられた側面12Fは、空気の流出側となる。その理由は、次のとおりである。
【0035】
回路基板10上では、
図3に示すように、発熱部品15がY方向の一方(
図3の左側)に寄せて配置され、コネクタ部品16がY方向の他方(
図3の右側)に寄せて配置されている。また、発熱部品15は、多くの熱を発生するのに対して、コネクタ部品16は、図示しないハーネスを通して外部に熱を放出する。このため、発熱部品15が配置されている側は相対的に高温になり、コネクタ部品16が配置されている側は相対的に低温になる。このため、
図6に破線の矢印で示すように、アウターケース12の内部では、発熱部品15が配置されている側から、コネクタ部品16が配置されている側へと向かう空気の流れ、すなわち対流が発生する。このとき、アウターケース12の外部の空気は、連通部35を通してアウターケース12の内部に流れ込む。また、アウターケース12の内部の空気は、連通部36を通してアウターケース12の外部に流れ出す。したがって、連通部35が設けられた側面12Eは、空気の流入側となり、連通部36が設けられた側面12Fは、空気の流出側となる。
【0036】
このように、相対向する2つの側面12E,12Fのうち、一方の側面12Eが空気の流入側、他方の側面12Fが空気の流出側となることにより、アウターケース12の内部に生じる空気の対流を促進することができる。このため、例えば車載用電子制御装置100を車室内に配置する場合でも、発熱部品15を主たる熱源として発生する熱を、インナーケース11の外表面から空気の流れに乗せてアウターケース12の外部へと逃がすことができる。したがって、回路基板10に実装される電子部品、特に、発熱部品15の温度上昇を抑えることができる。発熱部品15の温度上昇を抑えることは、発熱部品15に内蔵されるCPU等の機能を正常に維持すること、ひいては運転支援や自動運転の安全性を高めることに寄与する。
【0037】
また、連通部35は発熱部品15側に位置し、連通部36はコネクタ部品16側に位置している。このため、アウターケース12の内部に生じる空気の流れを更に加速させることができる。以下、この原理について説明する。
【0038】
まず、コネクタ部品16は、外部と電気的に連結するハーネスを介して、アウターケース12の外部に熱を放出する。このため、コネクタ部品16は、回路基板10に実装される電子部品の中で最も温度が低い部品となり、アウターケース12の内部でも最も温度が低い部位となる。一方、消費電力が高い高機能電子部品である発熱部品15は、コネクタ部品16から遠い位置に実装されることが多い。ここで、熱伝導の基本原理により、個体における熱は、温度の高い側から低い側へ向かって移動する。よって、インナーケース11においては、発熱部品15からコネクタ部品16へ向かって熱が移動する。また、単位時間に単位面積を通過する熱量である熱流束は、個体における温度差が大きいほど増大する。よって、発熱部品15とコネクタ部品16との温度差が大きいほど熱流束は増大することになる。一方、空気は、圧力の高い側から低い側へ、つまり温度の高い側から低い側へ向かって流れる。また、空気が流れる速度は、圧力差や温度差が大きいほど増大する。したがって、発熱部品15側に連通部35を設け、コネクタ部品16側に連通部36を設けることにより、アウターケース12の内部に生じる空気の流れを更に加速させることができる。これにより、熱の移動量が増大するため、車載用電子制御装置100の放熱性能を高めることができる。その結果、インナーケース11を機械的に保護することと、車載用電子制御装置100の放熱性能を確保することを、両立させることができる。
【0039】
また、アウターケース12の内部では、発熱部品15とコネクタ部品16との温度差により、連通部35から連通部36に向かって空気が直線状に流れる。このため、アウターケース12の内部を空気が流れるときの速度の低下を抑え、アウターケース12の内部に効率的に風を通すことができる。
【0040】
また、連通部36から流れ出た空気の一部は、アウターケース12の外側を回り込んで連通部35に達し、この連通部35からアウターケース12の内部に流れ込む。このため、アウターケース12の内部と外部には、連通部35および連通部36によって空気の循環路が形成される。したがって、アウターケース12の内外に存在する空気の熱交換を促進することができる。
【0041】
なお、第1実施形態においては、通気孔35A,36Aの形状を円形(真円)としたが、連通部を構成する通気孔の形状は多角形でもよい。一例を挙げると、通気孔35Aの形状は、
図7に示すように四角形でもよし、
図8に示すように三角形でもよいし、
図9に示すように五角形でもよい。また、図示はしないが、通気孔35Aの形状は、楕円形、星形、十字形、スリット形状などでもよい。このような孔形状は、通気孔36Aにも適用可能である。また、通気孔35Aと通気孔36Aを互いに異なる形状としてもよい。
【0042】
通気孔35Aの形状を、例えば多角形、星形、十字形などのように、少なくとも一つの角を有する形状とした場合は、通気孔35Aを通過する空気の流れが、通気孔35Aの近傍で乱流になりやすい。通気孔35Aの近傍で空気の流れが乱流になると、アウターケース12の内部を流れる空気の速度が高まる。このため、インナーケース11の外表面から効率よく熱を逃がすことができる。したがって、車載用電子制御装置100の放熱性能を向上させることが可能となる。
【0043】
また、第1実施形態においては、アウターケース12の6つの面のうち、側面12Eに連通部35を設け、側面12Fに連通部36を設けているが、これに限らず、例えば
図10に示すように、アウターケース12の側面12Cに連通部37を設け、側面12Cに対向する側面12Dに連通部38を設けてもよい。
【0044】
また、
図11に示すように、アウターケース12の側面12Eの1箇所に連通部35-1を設け、他の1箇所に連通部35-2を設けてもよい。連通部35-1は、X方向で側面12Eの一端側に設けられ、連通部35-2は、X方向で側面12Eの他端側に設けられている。また、連通部35-1は、一方の発熱部品15の近傍に配置され、連通部35-2は、他方の発熱部品15の近傍に配置されている。このようにアウターケース12の側面12Eにおいて、発熱部品15の近傍のみに連通部35-1,35-2を設けた場合でも、側面12E全体に連通部35を設けた場合と同等の放熱効果を得ることが可能である。また、発熱部品15の近傍のみに連通部35-1,35-2を設けた場合は、側面12E全体に連通部35を設けた場合に比較して、インナーケース11を塵埃等から保護する効果を高めることができる。なお、図示はしないが、アウターケース12の側面12Fにも2箇所に分けて連通部(図示せず)を設けてもよいし、側面12F全体に連通部を設けてもよい。
【0045】
<第2実施形態>
図12は、第2実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。また、
図13は、
図12に示す車載用電子制御装置のC-C断面図であり、
図14は、
図12に示す車載用電子制御装置のD-D断面図である。
【0046】
図12~
図14に示すように、第2実施形態に係る車載用電子制御装置100Bは、上述した第1実施形態に係る車載用電子制御装置100(
図1~
図3参照)と比較して、整流部材41を備える点が異なる。整流部材41は、インナーケース11とアウターケース12との間(隙間部分)を流れる空気の向きを直線状に整える部材である。整流部材41は、Y方向と平行に配置された複数の板状部によって構成されている。整流部材41を構成する複数の板状部は、
図13に示すように、X方向に所定の間隔で並んでいる。
【0047】
整流部材41は、Z方向においてアウターケース蓋体27と対向する位置に配置されている。整流部材41を構成する材料は樹脂でよいし、金属でもよい。整流部材41を金属で構成する場合は、整流部材41を放熱フィンとして機能させることができる。放熱フィンとしての整流部材41は、熱伝導率が高く、かつ、耐腐食性に優れる金属であるアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成することが好ましい。また、整流部材41は、車載用電子制御装置100の部品点数を削減するために、インナーケース11と一体に構成することが好ましい。本実施形態では、インナーケース蓋体23と整流部材41とを一体構造にしている。この場合、インナーケース蓋体23と整流部材41は同じ金属材料によって構成され、これらの一体構造物がヒートシンクとして機能する。
【0048】
整流部材41は、発熱部品15が配置されている側からコネクタ部品16が配置されている側へ向かって直線状に延伸している。また、連通部35が設けられた側面12Eと連通部36が設けられた側面12Fは、整流部材41の延伸方向であるY方向で互いに対向する状態に配置されている。
【0049】
一方、インナーケース11の内部には、伝熱部材45が設けられている。伝熱部材45は、発熱部品15が発生する熱をインナーケース11に伝える部材である。伝熱部材45は、例えば熱伝導性樹脂によって構成され、より具体的にはTIM(Thermal Interface Material)によって構成される。伝熱部材45は、発熱部品15とインナーケース蓋体23との間に挟み込まれている。また、伝熱部材45は、発熱部品15とインナーケース蓋体23の両方に密着している。このように伝熱部材45を配置することにより、発熱部品15が発生する熱を効率よくインナーケース蓋体23に伝え、このインナーケース蓋体23を介してインナーケース11の外部に熱を逃がすことができる。
【0050】
上記構成からなる車載用電子制御装置100Bにおいては、連通部35を通してアウターケース12の内部に流れ込んだ空気が、インナーケース11とアウターケース12との間を流れるときに、その空気の向きが整流部材41によって整えられる。これにより、アウターケース12の内部では、整流部材41の延在方向であるY方向に沿って空気が直線状に流れる。このため、連通部35を通してアウターケース12の内部に流れ込む空気を、該空気の速度の低下を小さく抑えながら、連通部36へと到達させることができる。
【0051】
また、整流部材41は、発熱部品15が配置されている側からコネクタ部品16が配置されている側へ向かって直線状に延伸している。このため、整流部材41によって整流される空気の流れる方向は、Y方向に沿う一定の方向であり、かつ、発熱部品15とコネクタ部品16との温度差によってインナーケース11の外表面に生じる熱伝導の方向と同一である。
【0052】
ここで、熱移動量Qは、熱流束qと熱伝導面積Aとの積で表すことができる。熱流束qは、発熱部品15とコネクタ部品16との温度差によって増大する。熱伝導面積Aは、空気の流れが生じなければ面積が広がらずに一定であるが、空気の流れが生じると面積の広がりに応じて増大する。したがって、アウターケース12内に流れ込んだ空気を整流部材41によって整流した場合は、熱流束qと熱伝導面積Aの両方が増大する。その結果、熱移動量Qが大幅に増大する。よって、インナーケース11の内部に生じる熱を、アウターケース12の外部に効率よく排出することができる。また、車載用電子制御装置100Bの放熱性能を高めて、発熱部品15の温度上昇を抑制することができる。
【0053】
また、整流部材41は、複数の板状部からなる放熱フィンによって構成されている。このため、発熱部品15を主たる熱源として発生する熱を、整流部材41の表面から第2の空間25に放出させることができる。そして、第2の空間25に放出させた空気を、整流部材41によって整流される空気の流れに乗せてアウターケース12の外部に逃がすことができる。よって、車載用電子制御装置100Bの放熱性能を、より一層高めることができる。
【0054】
なお、第2実施形態においては、整流部材41の延伸方向であるY方向で互いに対向する2つの側面12E,12Fのうち、側面12Eに連通部35を設け、側面12Fに連通部36を設けているが、これに限らず、例えば
図15に示す車載用電子制御装置100Cのように、側面12Cに連通部37を設け、これに対向する側面12Dに連通部38を設けてもよい。
図15に示す車載用電子制御装置100Cでは、アウターケース12の内部に流れ込んだ空気が整流部材41に整流されることにより、温度の高い発熱部品15側から温度の低いコネクタ部品16側に向かう空気の流れが形成される。一方、アウターケース12の側面12Cに設けられる連通部37と他の側面12Dに設けられる連通部38は、
図12に示す構成とは異なり、整流部材41の延伸方向で対向していない。このため、
図15に示す車載用電子制御装置100Cは、
図12に示す車載用電子制御装置100Bと比べると、アウターケース12の内部を流れる空気の速度は低下する。しかしながら、整流部材41によって整流される空気の流れる方向は、Y方向に沿う一定の方向であり、かつ、発熱部品15とコネクタ部品16との温度差によってインナーケース11の外表面に生じる熱伝導の方向と同一である。したがって、上記同様の原理で熱移動量を増大させ、車載用電子制御装置100Cの放熱性能を高めることができる。このような効果は、例えば
図16に示す車載用電子制御装置100Dのように、側面12Dに連通部38を設け、これと隣り合う側面12Fに連通部36を設けた場合、あるいは図示はしないが、側面12Cに連通部37を設け、これに隣り合う側面12Fに連通部36を設けた場合にも得られる。
【0055】
また、第2実施形態においては、インナーケース11の上面に整流部材41を配置しているが、これに限らず、インナーケース11の下面に整流部材41を配置してもよい。また、第2実施形態においては、インナーケース11の一つの面に整流部材41を配置しているが、これに限らず、例えばインナーケース11の上面および下面に整流部材41を配置するなど、インナーケース11の複数の面に整流部材41を配置してもよい。また、整流部材41は、インナーケース11に代えてアウターケース12に配置してもよい。ただし、整流部材41を放熱フィンとして機能させるうえでは、発熱部品15の熱が伝わりやすいインナーケース11に整流部材41を配置することが好ましい。
【0056】
<第3実施形態>
図17は、第3実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
図17に示すように、第3実施形態に係る車載用電子制御装置100Eは、上述した第2実施形態に係る車載用電子制御装置100B(
図12~
図14参照)と比較して、整流部材41を備える点は共通するが、連通部を設ける位置が異なる。具体的には、車載用電子制御装置100Eを車両に搭載するにあたって、アウターケース12の上面12A側を天面側、アウターケース12の下面12B側を地面側として、車載用電子制御装置100Eを設置する場合を想定して、アウターケース12の上面12Aに連通部46を設け、これに対向する下面12Bに連通部47を設けている。連通部46および連通部47は、それぞれ複数の通気孔によって構成されている。この点は、他の実施形態でも同様である。
【0057】
連通部46は、連通部47よりも狭い面積で形成されている。具体的には、連通部46は、上面12Aの面積の半分よりも狭い面積、より具体的には上面12Aの面積の1/3以下の面積で形成されている。また、連通部46は、X方向において上面12Aの中間部に設けられるとともに、整流部材41の延伸方向であるY方向に長い帯状に形成されている。これに対し、連通部47は、下面12Bの面積の半分よりも広い面積、より具体的には下面12Bのほぼ全域に形成されている。
【0058】
上記構成からなる車載用電子制御装置100Eにおいては、アウターケース12の上面12Aに連通部46を設けるととともに、アウターケース12の下面12Bに連通部47を設けている。このため、アウターケース12の外部で地面側から天面側へ向かう空気の流れを利用して、アウターケース12の内部に効率よく空気を取り込むことができるとともに、取り込んだ空気をアウターケース12の外部に効率よく排出することができる。このため、高い放熱性能を有する車載用電子制御装置100Eを実現することができる。
【0059】
また、連通部46を連通部47よりも狭い面積で形成することにより、連通部46を連通部47と同等の面積で形成する場合に比較して、空気中に浮遊する塵埃等がアウターケース12内に侵入しにくくなる。このため、インナーケース11を塵埃等から保護する機能を高めることができる。
【0060】
なお、第3実施形態の変形例としては、
図18に示すように、アウターケース12の上面12Aの1箇所に連通部46-1を設け、他の1箇所に連通部46-2を設けてもよい。連通部46-1は、発熱部品15が配置されている側に設けられ、連通部46-2は、コネクタ部品16が配置されている側に設けられている。また、各々の連通部46-1,46-2は、X方向に長い帯状に形成されている。このようにアウターケース12の上面12Aの2箇所に分けて連通部46-1,46-2を設けた場合でも、上記同様の効果を得ることができる。
【0061】
<第4実施形態>
図19は、第4実施形態に係る車載用電子制御装置を示す断面図である。
図19に示すように、第4実施形態に係る車載用電子制御装置100Fは、上述した第2実施形態に係る車載用電子制御装置100B(
図12~
図14参照)と比較して、連通部35を構成する通気孔35Aの孔寸法S1と連通部36を構成する通気孔36Aの孔寸法S2との大小関係に特徴がある。本明細書において、連通部を複数の通気孔によって構成する場合の、個々の通気孔の孔寸法は、通気孔の開口面積で規定されるものとする。例えば、通気孔35Aの形状が円形であれば、通気孔35Aの孔寸法S1はπr2で規定される。rは、通気孔35Aの半径である。
【0062】
第4実施形態に係る車載用電子制御装置100Fでは、通気孔35Aの孔寸法S1と通気孔36Aの孔寸法S2とが、S1>S2の関係を満たしている。また、第4実施形態においては、より好ましい態様として、通気孔35Aの孔寸法S1と通気孔36Aの孔寸法S2とが、S2/S1≦0.5の関係を満たしている。
【0063】
第4実施形態に係る車載用電子制御装置100Fにおいては、空気の流出側に形成された通気孔36Aの孔寸法S2が、空気の流入側に形成された通気孔35Aの孔寸法S1よりも小さい。このため、各々の通気孔36Aを通してアウターケース12の外部に流出する空気の速度を増大し、アウターケース12の外部で空気の対流を促すことができる。また、アウターケース12の外部で空気の対流が促されることに伴い、各々の通気孔35Aを通してアウターケース12の内部に流入する空気の速度も増大する。そして、アウターケース12内に流入する空気の速度が増大することにより、インナーケース11の外表面から空気への熱伝達率が増大する。このため、車載用電子制御装置100Fの放熱性能を向上させることができる。このような効果は、S2/S1≦0.5の関係を満たすことによって、より顕著なものとなることが、本発明者が実施したシミュレーションによって確認されている。
【0064】
<第5実施形態>
図20は、第5実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
第5実施形態に係る車載用電子制御装置100Gは、上述した第2実施形態に係る車載用電子制御装置100B(
図12~
図14参照)と比較して、放熱フィンにより構成された整流部材41に代えて、放熱ピン50が設けられている。放熱ピン50は、発熱部品15を主たる熱源として発生する熱をインナーケース11とアウターケース12との隙間部分(第2の空間25)に放出するもので、例えばアルミニウムなどの金属または合金によって構成されている。放熱ピン50は、インナーケース蓋体23に複数のピンをマトリクス状に配置した構成となっている。
【0065】
上記構成からなる車載用電子制御装置100Gは、複数のピンの集合体である放熱ピン50の存在により、空気への熱伝達面積を増大させることができる。このため、車載用電子制御装置100Gの放熱性能を向上させることができる。
【0066】
<第6実施形態>
図21は、第6実施形態に係る車載用電子制御装置を斜め方向から見た透視図である。
図21に示すように、第6実施形態に係る車載用電子制御装置100Hは、上述した第2実施形態に係る車載用電子制御装置100B(
図12~
図14参照)と比較して、整流部材41を備える点は共通するが、連通部を設ける位置が異なる。具体的は、アウターケース12の上面12Aの1箇所に連通部48-1を設け、他の1箇所に連通部48-2を設けている。つまり、アウターケース12の一つの面を対象に、アウターケース12の2箇所に連通部48-1,48-2を設けている。アウターケース12の一つの面に設ける連通部の数は2つ以上であってもよい。また、連通部を設ける面は、アウターケース12の下面12Bでもよい。
【0067】
その場合、少なくとも1箇所は空気の流入側となり、少なくとも他の1箇所が空気の流出側となるように、連通部48-1,48-2を互いに離れた場所に設けることが好ましい。
図21に示す車載用電子制御装置100Hでは、図示しない発熱部品15とコネクタ部品16との温度差によってアウターケース12内に空気の流れ、すなわち対流が発生することから、発熱部品15が配置されている側に連通部48-1を設け、コネクタ部品16が配置されている側に連通部48-2を設けている。これにより、アウターケース12の一つの面にのみ連通部48-1,48-2を設けた場合でも、アウターケース12の内部に直線的な空気の流れを形成し、車載用電子制御装置100Gの放熱性能を高めることができる。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H…車載用電子制御装置、10…回路基板、15…発熱部品(電子部品)、16…コネクタ部品(電子部品)、11…インナーケース(第1の筐体)、12…アウターケース(第2の筐体)、12A…上面、12B…下面、12C,12D,12E,12F…側面、35,35-1,35-2,36,37,38,46,46-1,46-2,47,48-1,48-2…連通部、35A,36A…通気孔、41…整流部材(放熱フィン)、50…放熱ピン