(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体及びそれらの組成物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20250219BHJP
A61K 31/695 20060101ALI20250219BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20250219BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250219BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250219BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20250219BHJP
B01J 31/22 20060101ALI20250219BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250219BHJP
【FI】
C07F7/18 X CSP
A61K31/695
A61P25/04
A61P29/00
A61P37/08
A61K36/185
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023535575
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2020064235
(87)【国際公開番号】W WO2022125095
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508129090
【氏名又は名称】ジェレスト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バリー・シー・アルクレス
(72)【発明者】
【氏名】テウ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ディー・ゴフ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144990(JP,A)
【文献】米国特許第05292899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07B
A61K
B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A):
【化1】
(式中、Rが、SiMe(OSiMe
3)
2、SiMe
2(OSiMe
2)
4CH
2CH
2CH
2CH
3、SiMe
2OSiMe
3、SiMe
2OSiMe
2C
6H
5、CH
2SiMe
2OSiMe
3、又はCH
2SiMe
2OSiMe
2C
6H
5であり、Meがメチル基を表す)を有する
、ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体。
【請求項2】
式(B):
【化2】
(式中、R'が、SiMe(OSiMe
3)
2、SiMe
2(OSiMe
2)
4CH
2CH
2CH
2CH
3、SiMe
2OSiMe
3、又はSiMe
2OSiMe
2C
6H
5であり、Meがメチル基を表し、及びxが1
~11の範囲の整数である)を有する
、ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体。
【請求項3】
式(II):
【化3】
(式中、Meがメチル基を表す)を有する、請求項1に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体。
【請求項4】
式(III):
【化4】
を有する、請求項1に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体。
【請求項5】
式(IV):
【化5】
(式中、Meがメチル基を表し、mが1
~100の整数であり、及びnが1
~10の整数である)を有する
、ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体。
【請求項6】
ベース製剤と少なくとも1種
の請求項1~5のいずれか一項に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を含む、局所又は皮膚用組成物。
【請求項7】
請求
項2又は5に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を作製するための方法であって、溶媒中でテトラヒドロカンナビノールをハロゲン化アリルと反応させて、アリルオキシテトラヒドロカンナビノール中間体を形成する工程と、並びに前記アリルオキシテトラヒドロカンナビノール中間体をシラン化合物及び触媒と反応させて、前記ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を形成する工程とを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を作製するための方法であって、塩基受容体の存在下で塩素含有シロキサン化合物をヒドロキシル基と反応させることによってテトラヒドロカンナビノール分子上にシリル化アルキルエーテルを形成する工程を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を作製するための方法であって、水素化物含有シロキサンを脱水素カップリングすることによってテトラヒドロカンナビノール分子上にシリル化アルキルエーテルを形成する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を作製するための方法であって、中間体アルカリ金属アルコキシドを形成し、続いて、水素化ケイ素又はケイ素-塩素含有化合物と反応させることによってテトラヒドロカンナビノール分子上にシリル化アルキルエーテルを形成する工程を含む、方法。
【請求項11】
請求
項1、2又は5に記載のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体と、大麻から抽出された少なくとも1種のフィトケミカルとを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
テトラヒドロカンナビノール(THC)は、抗炎症活性を有すると知られているフィトカンナビノイドである。
【背景技術】
【0002】
これは、主要な精神活性カンナビノイドであり、カンナビノイド受容体(CB1及びCB2)に結合して、痛み、炎症、及び痛覚過敏を軽減すると知られている(例えば、Cittiら, Sci. Rep. 9, 20335 (2019); Karsakら, Science, 316,1494 (2007); Richardsonら, Pain, 75, 111 (1998)を参照)。テトラヒドロカンナビノールは、(6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オールの指定された名称であり、以下に示されている:
【0003】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Cittiら, Sci. Rep. 9, 20335 (2019)
【文献】Karsakら, Science, 316,1494 (2007)
【文献】Richardsonら, Pain, 75, 111 (1998)
【文献】Karsakら, Science, 316, 1494-1497 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テトラヒドロカンナビノールの局所製剤は、アレルギー性炎症を軽減すると報告されている(Karsakら, Science, 316, 1494-1497 (2007))。純粋なテトラヒドロカンナビノールは、空気、光、酸性媒体、及び高温において低い安定性を有するが、安定性が向上したテトラヒドロカンナビノールの誘導体は魅力的であろう。また、直接的又はシリコーン等の低表面張力流体における溶解性の増加のいずれかで薄膜の形成を可能にし得る、より低い表面張力を有する誘導体も望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態によるケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、式(I):
【0007】
【0008】
を有するテトラヒドロカンナビノール分子に結合したSi-O-Si結合を含有するケイ素系官能基を含有する。
【0009】
本開示の一実施形態による局所又は皮膚用製剤は、ベース製剤と、式(I):
【0010】
【0011】
を有するテトラヒドロカンナビノール分子に結合したSi-O-Si結合を含有する少なくとも1個のケイ素系官能基を含む少なくとも1個のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体とを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、局所医薬品及びパーソナルケア製品の製剤を含む様々な用途に有益な、ケイ素含有官能基を含有するテトラヒドロカンナビノール(THC)の誘導体を含有する組成物、及びそれらの調製のための方法に関する。本明細書に記載されているケイ素含有テトラヒドロカンナビノール誘導体は、テトラヒドロカンナビノールをシロキサン骨格に結合させることによって形成される独特なハイブリッド有機ケイ素化合物であり、テトラヒドロカンナビノール分子に結合したSi-O-Si結合を含有する1個のケイ素系官能基を含む分子としても説明される。本明細書に記載されている化合物のカンナビノイド受容体に対する結合親和性はまだ研究されてはいないものの、これらは、向上した安定性及び溶解性を提供し、遊離テトラヒドロカンナビノールを均一かつ長期間にわたって放出することが期待されている。
【0013】
本明細書で使用される場合、テトラヒドロカンナビノール及びTHCという用語は、天然に見られるもの又は合成的に開発されたものを含む、テトラヒドロカンナビノールのすべての異性体を包含することを意図している。
【0014】
本開示の化合物の好ましい実施形態は、シロキサン系基がテトラヒドロカンナビノール分子のフェノール性ヒドロキシル基を介して結合されてSi-O-C結合を形成する、テトラヒドロカンナビノールのトリシロキサニル誘導体を含む。
【0015】
ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、官能基としてケイ素系基を有する、式(I)に示されているようなテトラヒドロカンナビノール分子を含む。最も好ましくは、ケイ素系基は、シロキサニル基又はトリアルコキシシラン含有基である。
【0016】
本明細書に記載されている好ましいテトラヒドロカンナビノール誘導体は、フェノール性ヒドロキシル基が、2個以上のケイ素原子、好ましくは3個以上のケイ素原子、最も好ましくは約3~約10個のケイ素原子を含有するシロキサン部分に結合している、先の式(I)による構造を有する。
【0017】
本発明の実施形態によるテトラヒドロカンナビノール誘導体は、一般式(A)を有する。この式において、Rは、例えば、限定されることなく、SiMe(OSiMe3)2、SiMe2(OSiMe2)4CH2CH2CH2CH3、SiMe2OSiMe3、及びSiMe2OSiMe2C6H5であり得、「Me」はメチル基である。しかしながら、本開示の範囲内にある式(A)を有する化合物は、これらの置換基に限定されることはなく、当技術分野で知られている又は開発すべきSi-O-Si結合を有する他のケイ素含有官能基もRに好適であろう。
【0018】
2個以上のケイ素原子間にオキサン(酸素)架橋を有しない単一のケイ素原子を含有する置換基は、そのようなテトラヒドロカンナビノール誘導体が許容可能な膜形成特性を提供することができないことから、本開示の範囲内にはない。例えば、単純なトリアルキルシリル誘導体、並びにケイ素上にアルキル、アリール、水素、ハロゲン、ビニル、アリル、及び/又はアルコキシ置換基のみを含有する誘導体は、意図された目的には効果的ではないため、本開示の範囲内にはない。
【0019】
【0020】
本開示の範囲内の他の化合物は、テトラヒドロカンナビノールがフェノール性酸素を介してポリジメチルシロキサン上のメチル基に代わって置換しているポリジメチルシロキサン、例えば、Me3Si(OSiMe2)m(OSiMeTHC)nSiMe3を含み、「THC」はテトラヒドロカンナビノールを表し、Meはメチル基であり、m及びnは整数である。好ましくは、mは1~約100であり、nは1~約10である。
【0021】
本開示の実施形態によるケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、例えば、以下に示されている(テトラヒドロカンナビノールオキシ)ヘプタメチルトリシロキサン(式(II))、テトラヒドロカンナビノールオキシ末端ポリジメチルシロキサン(式(III))、及びテトラヒドロカンナビノールオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(式(IV))等の最も好ましい化合物を含む、幅広い種類の誘導体化された化合物(式中、m及びnは整数であり、好ましくは、mは1~約100であり、nは1~約10である)を含む。
【0022】
【0023】
本開示の実施形態による化合物は、ケイ素含有官能基とテトラヒドロカンナビノール分子のフェノール性ヒドロキシル基との間に直接エーテル結合(直接Si-O結合)を含有し得るか、又はテトラヒドロカンナビノール上のフェノール性ヒドロキシル基と、ケイ素系官能基、例えば、式(A)中のRがCH2SiMe2OSiMe3若しくはCH2SiMe2OSiMe2C6H5である化合物との間にアルキル基スペーサーを含有し得る。スペーサーは、CH2に限定されることはなく、CH2とともに同様に好ましい実施形態である約11個までの炭素原子を含有するより長いアルキル鎖、例えば(CH2)3であってもよい。
【0024】
テトラヒドロカンナビノール上のフェノール性ヒドロキシル基とケイ素系官能基との間にアルキル基スペーサーを含有する本開示の実施形態による化合物は、以下の一般式(B)(式中、R'はケイ素系基であり、xは、1~約11、好ましくは1(メチル)~3(プロピル)の範囲の整数である)を有し得る。最も好ましくは、ケイ素系基は、シロキサニル基又はトリアルコキシシラン含有基である。R'は、例えば、限定されることなく、SiMe(OSiMe3)2、SiMe2(OSiMe2)4CH2CH2CH2CH3、SiMe2OSiMe3、又はSiMe2OSiMe2C6H5であり得、Meはメチルである。
【0025】
【0026】
式(A)に示されているようなテトラヒドロカンナビノール誘導体の直接Si-O結合は、ゆっくりとした加水分解によって長期間にわたって遊離テトラヒドロカンナビノールを放出することによって、アレルギー性炎症の低減をもたらし得る。テトラヒドロカンナビノール誘導体上のSi-O結合は、湿気に曝されると安定せず、それによって、化合物のゆっくりとした分解がもたらされ、遊離テトラヒドロカンナビノール及び低分子量シロキサンが形成される。シラン系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、空気中で保管され、湿気から保護されている場合に安定であると予測される。これらは、直接的又はゆっくりとした加水分解により非誘導体化THCを形成して医薬用途における生物活性を示すことが予測される。
【0027】
多くのシリコーン及びシリコーン誘導体とは異なり、これらの化合物は、ヒマシ油及び様々な化粧用又は皮膚用ビヒクル等の一連の極性化合物におけるそれらの溶解性を理由に、抗炎症及び緩和製剤を含む局所又は皮膚用製品に容易に組み込まれる。これらは、シリコーンのための共溶媒としても作用し得る。更に、そのような溶解性を理由に、これらの誘導体は、他の可能な用途のなかでも、未修飾カンナビジオール及びテトラヒドロカンナビノール化合物等の他の生物活性物質のための相溶化剤として有用であり得る。
【0028】
本明細書に記載されているテトラヒドロカンナビノール誘導体は、様々な合成経路によって調製され得る。本開示の一実施形態によると、これらの化合物は、溶媒中でテトラヒドロカンナビノールのベンゼノイド環上のヒドロキシル基をハロゲン化アリルと反応させて、アリルオキシテトラヒドロカンナビノール中間体を形成する工程と、次いで、この中間体をシラン化合物及び触媒でヒドロシリル化して、スペーサーを有するケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体を形成する工程とによって調製され得る。塩基受容体の存在下でヒドロキシル基(C-OH)を塩素含有シロキサン化合物(-Si-Cl)と反応させることによって、又はヒドロキシル基を水素化物含有シロキサン化合物(-Si-H)と脱水素カップリングすることによって、テトラヒドロカンナビノールのヒドロキシル基上に直接Si-O結合を形成することも本開示の範囲内である。直接Si-O結合を形成するための別の可能な合成経路は、アルカリ金属アルコキシド中間体(-C-O-Na)を形成し、この中間体をSi-Cl含有シロキサン化合物又はSi-H含有シロキサン化合物のいずれかと反応させることである。炭化水素架橋を形成するための反応は、ヒドロシリル化反応によってC=C二重結合を越えて水素化物含有シロキサン(-Si-H)を付加することによって進行する。
【0029】
上記の反応で使用されるシラン化合物は、幅広い種類のケイ素系化合物のいずれであってもよく、好ましくは、アルキルシラン、アルコキシシラン、アルキルシロキサン及びアルコキシシロキサン、並びにそれらの誘導体化又は官能化された対応物を含む。一般に、局所クリーム剤及び軟膏剤に好適な溶解性及び塗布特性を提供するためには、置換において2個以上のケイ素原子を有することが好ましい。例は、限定されることなく、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリメチルシロキシ)プロピルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリエチルシロキシ)プロピルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリプロピルシラン、ビス(トリプロピルシロキシ)メチルシラン、ビス(トリプロピルシロキシ)エチルシラン、ビス(トリプロピルシロキシ)プロピルシラン、及び類似した化合物を含む。
【0030】
また、本明細書におけるシラン化合物としては、当技術分野で知られているように、又は開発すべきであるように、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、ポリメチルエチルシラン、ポリメチルプロピルシロキサン、及び他のポリアルキルシロキサン又はポリアルケニルシロキサン等の、先に挙げられているシランモノマー構造と類似した反応能力を有するポリマーケイ素含有分子も有用である。鎖長は変動し得るが、テトラヒドロカンナビノール上にポリマーケイ素系誘導体基を形成するために使用されるポリマーシラン化合物の分子量(Mn)は、100~約5000であることが好ましく、最も好ましくは約500~約2000である。この範囲の上下の分子量の変動が本開示の範囲内であること、及び異なる鎖長を有する成分がそれに応じて特性の変化に寄与し得ることに留意されたい。例えば、一般に、より低い分子量の鎖は、本来的により皮膚軟化性の傾向があり、その一方で、より高い分子量の鎖は、皮膚上でより長持ちして、より洗い流されにくいという点でより本質的である傾向があるだろう。
【0031】
本明細書に記載されている誘導体は、純粋なテトラヒドロカンナビノールを使用して生成され得るとも理解されるべきである。或いは、誘導体は、フィトカンナビノイド及び/又は他のフィトケミカル混合物の成分として形成及び提供され得る。例えば、大麻抽出物のテトラヒドロカンナビノール誘導体は、純粋なテトラヒドロカンナビノール成分を単離することなく形成され得る。更に、本発明による組成物は、本明細書に記載されている誘導体のうちの1種以上及び大麻から抽出された1種以上のフィトケミカルを含有し得る。
【0032】
本明細書に記載されているケイ素系テトラヒドロカンナビノールは、誘導体が製剤中のそのような化合物における相溶性及び溶解性を促進することから、好ましくはベース製剤中にケイ素化合物又はシリコーン系ポリマーを有するものを含む、様々な局所及び皮膚用組成物に使用され得る。しかしながら、本開示は、これらの組成物に限定されることはなく、ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体が有用である任意の局所又は皮膚用組成物を含み得る。本開示の化粧用及び局所組成物は、上記のような任意の好適な局所又は皮膚用ベース製剤であり得るベース製剤と、本明細書に記載されているような少なくとも1種のケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体とを含む。ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、テトラヒドロカンナビノール分子又はその市販若しくは天然誘導体を含み、ベンゼノイド環の酸素原子を介してテトラヒドロカンナビノール分子(又はその誘導体)に結合したケイ素系官能基を含む。
【0033】
そのような製剤に組み込まれる場合、ケイ素系テトラヒドロカンナビノール誘導体は、製剤の質量に基づいて、約0.01質量パーセント~約20質量パーセント、好ましくは約0.5質量パーセント~約5質量パーセント、最も好ましくは約0.5~約1.0質量パーセントの量で存在することが好ましい。
【0034】
これより、本発明を以下の非限定的な実施例に関連して説明することとなる。
【実施例1】
【0035】
1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-イル)オキシ)トリシロキサン(II)の合成
【0036】
【0037】
ナトリウム(0.55g、0.02mol)及びテトラヒドロフラン(13.42g)を反応器に充填する。テトラヒドロフラン(37.98g)中のテトラヒドロカンナビノール(6.29g、0.02mol)の溶液を、ポット温度を70℃未満に保ちながら30分間かけて滴加する。得られた反応混合物を、ナトリウムがすべて消費されるまで50~60℃で撹拌する。ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン(6.77g、0.03mol)を70℃で10分間かけて滴加し、次いで、反応混合物を110~120℃で10時間加熱する。反応混合物をシリカゲル(40g)に通して濾過し、テトラヒドロフラン(400g)で洗浄する。濾液を真空において濃縮する。残留物は、生成物及び未反応のテトラヒドロカンナビノールを含有しており、1H NMR及びFTIRによって分析される。
【実施例2】
【0038】
1-ブチル-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチル-9-(((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-イル)オキシ)ペンタシロキサン(III)の合成
【0039】
【0040】
ナトリウム(0.55g、0.02mol)及びテトラヒドロフラン(13.42g)を反応器に充填する。テトラヒドロフラン(37.98g)中のテトラヒドロカンナビノール(6.29g、0.02mol)の溶液を、ポット温度を70℃未満に保ちながら30分間かけて滴加する。得られた反応混合物を、ナトリウムがすべて消費されるまで50~60℃で撹拌する。1-ブチル-1,1,3,3,5,5,7,7,9,9-デカメチルペンタシロキサン(12.39g、0.03mol)を70℃で10分間かけて滴加し、次いで、反応混合物を110~120℃で10時間加熱する。反応混合物をシリカゲル(40g)に通して濾過し、テトラヒドロフラン(400g)で洗浄する。濾液を真空において濃縮する。残留物は、生成物及び未反応のテトラヒドロカンナビノールを含有しており、1H NMR及びFTIRによって分析される。
【実施例3】
【0041】
テトラヒドロカンナビノールオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(IV)
【0042】
【0043】
アリルオキシテトラヒドロカンナビノール(70.9g、0.2mol)及びトルエン(50mL)を反応器に充填する。得られた混合物を80~90℃に加熱する。ポット温度が80~90℃に達したら、Karstedt触媒(キシレン中で2%のPt濃度、0.5mL)を添加する。発熱を制御しながら水素化物末端ポリジメチルシロキサン(Mn-1050、105g)を滴加し、次いで、すべてのSi-Hが消費されたことがFTIRによって示されるまで、反応混合物を85~115℃で加熱する。活性炭を混合物に添加し、一晩かけて撹拌する。混合物を濾過し、濾液を真空において濃縮する。残留物は、生成物及び未反応のテトラヒドロカンナビノールを含有しており、1H NMR及びFTIRによって分析される。
【0044】
その広範な発明概念から逸脱することなく上記の実施形態に変更を加えることが可能であり得ると当業者によって理解されるであろう。また、この開示に基づいて、当業者であれば、先に例示した成分の相対比率は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく変動し得ると更に認識するであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の趣旨及び範囲内の変更形態を含むことが意図されていると理解される。