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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】通信用半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 69/14 20220101AFI20250219BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
H04L69/14
H04L12/28 100A
H04L12/28 200Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023552628
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037154
(87)【国際公開番号】W WO2023058189
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 貴大
(72)【発明者】
【氏名】増渕 巧
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-050775(JP,A)
【文献】特開2017-152816(JP,A)
【文献】特開2011-139187(JP,A)
【文献】特開平10-013389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第1の通信回路と、
信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第2の通信回路と、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の一端に接続され、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路に対して信号の入力先と出力元を切り替える第1の切替機能部と、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の他端に接続され、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路に対して前記信号の入力先と出力元を切り替える第2の切替機能部と、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の各々に備えられた、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の診断を行う診断回路と、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路、並びに、前記第1の切替機能部及び前記第2の切替機能部と接続された制御回路と、を備え、
前記制御回路は、外部から入力された動作モードを表す冗長/非冗長モード切替信号と、各診断回路の診断結果とに基づいて、前記第1の切替機能部及び前記第2の切替機能部へ入力先及び出力元の切替指示を出す切替機能制御部、を有し、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路は、トランスミッタとレシーバをそれぞれ有し、
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の各診断回路は、前記トランスミッタに入力される情報と、前記レシーバから出力される情報とを比較することにより、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の各々の診断を行う
通信用半導体装置。
【請求項2】
前記動作モードが冗長モードのとき、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路に入力される信号は、同一の信号である
請求項1に記載の通信用半導体装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記動作モードが冗長モードであるとき、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の入力情報と出力情報に基づき、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路を相互に比較し、比較結果を前記切替機能制御部に出力する相互診断回路、を備える
請求項1又は2に記載の通信用半導体装置。
【請求項4】
前記相互診断回路は、前記第1の通信回路の前記トランスミッタに入力される情報と前記第2の通信回路の前記レシーバから出力される情報を比較すると共に、前記第2の通信回路の前記トランスミッタに入力される情報と前記第1の通信回路の前記レシーバから出力される情報を比較することで、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路を相互に診断する
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項5】
前記切替機能制御部は、前記相互診断回路の診断結果と、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路が備える各診断回路の診断結果とに基づいて、前記第1の切替機能部及び前記第2の切替機能部における信号の入力経路及び出力経路の切り替えを行う
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項6】
前記動作モードが非冗長モードのとき、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路にそれぞれ異なる信号が入力され、かつ前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路から前記異なる信号に対応した信号がそれぞれ出力されるように、前記切替機能制御部は、前記第1の切替機能部及び前記第2の切替機能部の入力経路及び出力経路を切り替える
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項7】
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の優先度の情報が前記切替機能制御部に格納されており、
前記切替機能制御部は、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路のうち、優先度の高い通信回路が故障した際には、優先度の低い通信回路を用いて通信を継続できるように、前記第1の切替機能部及び前記第2の切替機能部の入力経路及び出力経路を切り替える
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項8】
前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の優先度が等しい場合、前記第1の通信回路又は前記第2の通信回路が故障した際は、故障した前記第1の通信回路又は前記第2の通信回路を使用した通信のみが中止される
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項9】
前記切替機能制御部は、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の各診断回路、並びに、前記相互診断回路のいずれかの異常を検知した際には、当該通信用半導体装置の通信相手に異常を通知する
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項10】
前記切替機能制御部は、前記第1の通信回路及び前記第2の通信回路の各診断回路で故障が検出されたときには、当該通信用半導体装置に電源を供給する電源回路に遮断要求を行う
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項11】
前記第1の通信回路を構成する半導体素子を集積した第1の部品と、前記第2の通信回路を構成する半導体素子を集積した第2の部品と、前記第1の切替機能部、前記第2の切替機能部、及び前記制御回路の各々を構成する半導体素子を集積した第3の部品とは、互いにSOI基板上において二酸化ケイ素を介して分離されている
請求項に記載の通信用半導体装置。
【請求項12】
前記第1の通信回路を集積した第1の半導体チップと、前記第2の通信回路を集積した第2の半導体チップと、前記第1の切替機能部、前記第2の切替機能部、及び前記制御回路を集積した第3の半導体チップとが、同一のパッケージに封止されたSIP構造である
請求項に記載の通信用半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長モードと非冗長モードを切替可能な通信用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両アーキテクチャにおける統合ECU(Electronic Control Unit)の導入が検討されている中、CAN I/F(Controller Area Network I/F)等の通信用半導体装置は、機能安全の観点から、冗長機能を有するニーズが出ている。
【0003】
例えば、半導体装置の冗長機能を実現する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、半導体装置に機能回路部を複数設けることと、故障検出制御回路により、各機能回路部に自己診断動作を行わせ、故障判定回路により故障の有無を判定し、記憶回路に記憶したその判定結果に応じて、出力信号切替回路が故障の生じていない側の機能回路部の出力を選択することが記載されている。この特許文献1に記載の半導体装置では、2つ以上の機能回路部に同じ信号を入力することで冗長機能を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-340877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2つ以上の通信回路に同じ信号を入力する構成は、各通信回路を独立な用途では使用できず、冗長機能が不要なシステムに対しては、余剰なハードウェアによりコストが増加する要因になるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、冗長機能を備え、冗長機能が不要な場合には非冗長系を構成することが可能な通信用半導体装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の通信用半導体装置は、信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第1の通信回路と、信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第2の通信回路と、第1の通信回路及び第2の通信回路の一端に接続され、第1の通信回路及び第2の通信回路に対して信号の入力先と出力元を切り替える第1の切替機能部と、第1の通信回路及び第2の通信回路の他端に接続され、第1の通信回路及び第2の通信回路に対して信号の入力先と出力元を切り替える第2の切替機能部と、第1の通信回路及び第2の通信回路の各々に備えられた、第1の通信回路及び第2の通信回路の診断を行う診断回路と、第1の通信回路及び第2の通信回路、並びに、第1の切替機能部及び第2の切替機能部と接続された制御回路と、を備える。そして、上記制御回路は、外部から入力された動作モードを表す冗長/非冗長モード切替信号と、各診断回路の診断結果とに基づいて、第1の切替機能部及び第2の切替機能部へ入力先及び出力元の切替指示を出す切替機能制御部、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一態様の通信用半導体装置は、第1の通信回路及び第2の通信回路、信号の経路を切り替える第1の切替機能部及び第2の切替機能部を備え、冗長/非冗長モード切替信号と、第1の通信回路及び第2の通信回路の状態とに基づいて、第1の切替機能部及び第2の切替機能部を制御する。これにより、本発明の少なくとも一態様は、冗長機能を備え、冗長機能が不要な場合には非冗長系を構成することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る通信用半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る第1の通信回路の構成例を示す回路図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る第1の切替機能部の構成例を示す回路図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る第2の切替機能部の構成例を示す回路図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る制御回路の構成例を示す回路図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る第1の切替機能部及び第2の切替機能部の切替内容を記した切替内容テーブルの構成例を示す図である。
図7】制御回路による異常通知の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る冗長モード時の各診断回路の診断結果と切替機能制御部における制御の一例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る冗長モード時の制御回路の切替機能制御部による第1の切替機能部及び第2の切替機能部の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第1の実施形態に係る冗長モードにおいて第1の通信回路を使用時の通信経路を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る冗長モードにおいて第1の通信回路が故障した場合の通信経路を示す図である。
図12】通信用半導体装置の構成として第1の通信回路及び第2の通信回路の同時破壊を回避するためのIC構成の一例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に係る非冗長モード時の各診断回路の診断結果と切替機能制御部における制御の一例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る非冗長モード時の制御回路の切替機能制御部による第1の切替機能部及び第2の切替機能部の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本発明の第2の実施形態に係る非冗長モードにおいて第1の通信回路及び第2の通信回路を使用時の通信経路を示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る非冗長モードにおいて優先度の高い第1の通信回路が故障した場合の通信経路を示す図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係る通信用半導体装置をCAN I/Fとして使用したシステムにおいて、第1のICと第2のICが異なるCANバスに接続されている場合の例を示す図である。
図18】本発明の第3の実施形態に係る通信用半導体装置をCAN I/Fとして使用したシステムにおいて、第1のICと第2のICが同じCANバスに接続されている場合の例である。
図19】本発明の第3の実施形態に係る第1の切替機能部の切替内容を記した切替内容テーブルの構成例を示す図である。
図20図18に示した通信用半導体装置において、制御回路の切替機能制御部による第1の切替機能部の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図21】本発明の第4の実施形態に係る通信用半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図22】本発明の第4の実施形態に係る上位の電源回路に対する遮断要求の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る通信用半導体装置の構成及び動作について説明する。
はじめに、図1図12を参照して、通信用半導体装置の動作モードが冗長モードに設定された場合において、1つの通信系統をメイン(主系、稼働系)の通信回路を用いて通信を実施し、メインの通信回路に異常が生じた場合に、サブ(従系、待機系)の通信回路へ切り替える際の動作について説明する。
【0012】
[通信用半導体装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信用半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図示する通信用半導体装置1は、第1の通信回路2、第2の通信回路3、第1の切替機能部4、第2の切替機能部5、及び制御回路6を備える。通信用半導体装置1と、当該通信用半導体装置1との通信が可能な通信装置(図示略)との間には、第1の通信系統の通信信号線11a~11dが接続されている。通信用半導体装置1と通信装置との間には、第2の通信系統である通信信号線12a~12dも接続可能であるが、本実施形態では、通信系統は1つのみのため、通信信号線12a~12dは考えないものとする。第2の通信系統の通信信号線12a~12dについては、第2の実施形態において説明する。
【0013】
通信用半導体装置1は、外部(例えば、図17に記載のマイコン7)から動作モードを表す冗長/非冗長モード切替信号63を受信して所定の通信処理を行い、必要に応じて異常通知66を出力することで通信用半導体装置1の状態を外部に通知する。マイコンは、マイクロコンピューターの略称である。
【0014】
本実施形態では、冗長/非冗長モード切替信号63には、冗長モードが指定されている。冗長モードのとき、第1の通信回路2及び第2の通信回路3に入力される信号は、同一の信号である。
【0015】
[第1の通信回路]
図2は、第1の通信回路2の構成例を示す回路図である。
第1の通信回路2は、通信信号線2a~2dの信号、第1の診断回路21の診断結果23を入出力とする。本実施形態における第1の通信回路2は、例えば図2に示すように、送信回路であるトランスミッタ24、受信回路であるレシーバ25、及び第1の診断回路21が設けられた構成とする。第1の診断回路21は、第1の通信回路2を診断する自己診断回路である。
【0016】
トランスミッタ24は、第1の切替機能部4との間に接続された通信信号線2aから入力される信号を受信信号とし、当該受信信号から正側の送信信号と負側の送信信号を生成する。そして、例えば、トランスミッタ24は、通信信号線2cを介して正側の送信信号を、通信信号線2dを介して負側の送信信号を、それぞれ第2の切替機能部5に出力する。トランスミッタ24が出力した正側の送信信号と負側の送信信号はそれぞれ、レシーバ25と、第1の診断回路21の診断用レシーバ211にも入力される。
【0017】
レシーバ25は、第2の切替機能部5との間に接続された通信信号線2c,2dから入力される正側の信号と負側の信号をそれぞれ受信信号とし、2つの受信信号の差分から送信信号を生成する。例えば、レシーバ25は、通信信号線2c,2dの受信信号に電位差があるときはハイレベル信号(H信号)を出力し、電位差がないときはローレベル信号(L信号)を出力する。そして、レシーバ25は、通信信号線2bを介して、送信信号としてH信号又はL信号を第1の切替機能部4に出力する。レシーバ25が出力した送信信号は、第1の診断回路21の比較器212と比較器213にも入力される。
【0018】
第1の診断回路21は、診断用レシーバ211、比較器212、比較器123、及び論理和回路214を備える。診断用レシーバ211の構成及び動作は、レシーバ25と同様である。すなわち、診断用レシーバ211は、通信信号線2c,2dから入力される正側の信号と負側の信号をそれぞれ受信信号とし、2つの受信信号の差分から出力信号215を生成して比較器213へ出力する。比較器212は、通信信号線2aからトランスミッタ24に入力される受信信号と、レシーバ25が通信信号線2bに出力する送信信号とを比較する。比較器213は、レシーバ25が通信信号線2bに出力する送信信号と、診断用レシーバ211の出力信号215とを比較する。
【0019】
論理和回路214は、比較器212及び比較器213のそれぞれの比較結果を集約する。論理和回路214は、比較器212と比較器213からの入力値(比較結果)の論理和を演算し、演算結果を第1の診断回路21の診断結果23として制御回路6の切替機能制御部62に出力する。比較器212の比較結果については、比較器212に対する二つの入力値が一致した場合はOKとし(例えば、差分が所定値未満ならばL信号を出力)、不一致の場合はNGとする(例えば、差分が所定値以上ならばH信号を出力)。比較器213についても同様である。
【0020】
[第2の通信回路]
また、第2の通信回路3の構成は、第1の通信回路2の構成と同じとする。例えば、第2の通信回路3は、第1の診断回路21と同じ構成の第2の診断回路31を有し、通信信号線3a~3dの信号、及び第2の診断回路31の診断結果33を入出力とする。第2の診断回路31は、第2の通信回路3を診断する自己診断回路である。
【0021】
このように、第1の通信回路2及び第2の通信回路3は、トランスミッタ24とレシーバ25をそれぞれ有する。そして、第1の通信回路2及び第2の通信回路3の各診断回路(第1の診断回路21、第2の診断回路31)は、トランスミッタ24に入力される情報と、レシーバ25から出力される情報とを比較することにより、第1の通信回路2及び第2の通信回路3の各々の診断を行う。
【0022】
上記のように第1の通信回路2及び第2の通信回路3が自己診断機能(第1の診断回路21、第2の診断回路31)を備えることで、メインの通信回路の故障時に、サブの通信回路に切替可能、かつ、切替前にサブの通信回路の故障を検知可能である。
【0023】
[第1の切替機能部]
図3は、第1の切替機能部4の構成例を示す回路図である。
第1の切替機能部4は、第1の通信系統の通信信号線11a,11b、第1の通信回路2と接続する通信信号線2a,2b、第2の通信回路3と接続する通信信号線3a,3bのそれぞれの信号を入出力する。本実施形態における第1の切替機能部4は、例えば図3に示すように、スイッチS1~S3を設けた構成とする。スイッチS1は、制御回路6の第1の切替機能制御信号64(図1)により、可動子を固定子S1a(第1の通信系統側)又は固定子S1b(第2の通信系統側)に切り替える。スイッチS2とスイッチS3も同様である。すなわち、スイッチS2は可動子と固定子S2a(第1の通信系統側)及び固定子S2b(第2の通信系統側)を備え、スイッチS3は可動子と固定子S3a(第1の通信系統側)及び固定子S3b(第2の通信系統側)を備える。
【0024】
[第2の切替機能部]
図4は、第2の切替機能部5の構成例を示す回路図である。
第2の切替機能部5は、第1の通信系統の通信信号線11c,11d、第1の通信回路2と接続する通信信号線2c,2d、第2の通信回路3と接続する通信信号線3c,3dのそれぞれの信号を入出力する。本実施形態における第2の切替機能部5は、例えば図4に示すように、スイッチS4~S6を設けた構成とする。スイッチS6は、制御回路6の第2の切替機能制御信号65(図1)により、可動子を固定子S6a(第1の通信系統側)又は固定子S6b(第2の通信系統側)に切り替える。スイッチS4とスイッチS5も同様である。すなわち、スイッチS4は可動子と固定子S4a(第1の通信系統側)及び固定子S4b(第2の通信系統側)を備え、スイッチS5は可動子と固定子S5a(第1の通信系統側)及び固定子S5b(第2の通信系統側)を備える。
【0025】
[制御回路]
制御回路6は、第1の通信回路2の通信信号線2a及び2bの信号、第2の通信回路3の通信信号線3a及び3bの信号、第1の診断回路21の診断結果23、第2の診断回路31の診断結果33、及び冗長/非冗長モード切替信号63を入力する。また、制御回路6は、第1の切替機能制御信号64を第1の切替機能部4に、第2の切替機能制御信号65を第2の切替機能部5に、通信用半導体装置1の状態を外部(例えば、図5のマイコン7)に通知する異常通知66を出力する。
【0026】
本実施形態における制御回路6は、一例として図5に示すように、相互診断回路61と切替機能制御部62を設けた構成とし、後述する図7に示すような異常通知66を行う。例えば、切替機能制御部62は、半導体素子からなる複数の論理回路を組み合わせて構成することができる。また、制御回路6の構成や機能の全部又は一部を、マイコン7と同様に、マイクロコンピューターで構成してもよい。
【0027】
図5は、制御回路6の構成例を示す回路図である。
相互診断回路61は、比較器611、比較器612、及び論理和回路613を備える。
【0028】
比較器611は、第1の通信回路2の通信信号線2aから入力される信号と、第2の通信回路3の通信信号線3bから入力される信号とを比較する。また、比較器612は、第1の通信回路2の通信信号線2bから入力される信号と、第2の通信回路3の通信信号線3aから入力される信号とを比較する。
【0029】
論理和回路613は、比較器611及び比較器612のそれぞれの比較結果を集約する。論理和回路613は、比較器611と比較器612からの入力値(比較結果)の論理和を演算し、その演算結果を相互診断回路61の診断結果616として切替機能制御部62に出力する。比較器611の比較結果については、比較器611に対する二つの入力値が一致した場合はOKとし(例えば、差分が所定値未満ならばL信号を出力)、不一致の場合はNGとする(例えば、差分が所定値以上ならばH信号を出力)。比較器612についても同様である。
【0030】
このように、制御回路6は、動作モード(冗長/非冗長モード切替信号63)が冗長モードであるとき、第1の通信回路2及び第2の通信回路3の入力情報と出力情報に基づき、第1の通信回路2及び第2の通信回路3を相互に比較し、比較結果(診断結果616)を切替機能制御部62に出力するように構成された相互診断回路61を備える。
【0031】
より具体的には、相互診断回路61は、第1の通信回路2のトランスミッタ24に入力される情報と、第2の通信回路3のレシーバ25から出力される情報とを比較すると共に、第2の通信回路3のトランスミッタ24に入力される情報と、第1の通信回路2のレシーバ25から出力される情報とを比較することで、第1の通信回路2及び第2の通信回路3を相互に診断するように構成されている。
【0032】
切替機能制御部62は、第1の通信回路2に設けられた第1の診断回路21の診断結果23、第2の通信回路3に設けられた第2の診断回路31の診断結果33、相互診断回路61の診断結果616、及び冗長/非冗長モード切替信号63を入力とする。切替機能制御部62は、冗長/非冗長モード切替信号63と、各診断回路の診断結果23,33,616とに基づいて、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5へ入力先及び出力元の切替指示を出す。図5に示すように、切替機能制御部62は、第1の切替機能部4への入力先及び出力元の切替指示として第1の切替機能制御信号64を、第2の切替機能部5への入力先及び出力元の切替指示として第2の切替機能制御信号65を出力する。
【0033】
このように、切替機能制御部62は、相互診断回路61の診断結果161と、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が備える各診断回路の診断結果23,33とに基づいて、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5における信号の入力経路及び出力経路の切り替えを行う。
【0034】
また、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果23,33,616に基づいて、通信用半導体装置1の状態、すなわち第1の通信回路2、第2の通信回路3、及び各診断回路の状態を表す異常通知66を出力する。
【0035】
また、切替機能制御部62は、第1の通信回路2と第2の通信回路3の優先度を記憶するメモリ62mを備える。優先度については、第2の実施形態において説明する。各診断回路の診断結果23,33,616に従い、例えば図6に示すように、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5のスイッチS1~S6の制御を行う。詳細は後述する図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図9に記載のスイッチ設定や異常通知66は、図6図7を参照する。
【0036】
図6は、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の切替内容を記した切替内容テーブルT1の構成例を示す図である。
切替内容テーブルT1は、「切替機能部の種類」、「スイッチの種類」、及び「スイッチ設定(接続切替)」の各項目を有する。
【0037】
第1の切替機能制御信号64のスイッチ設定が“No.1”の場合、第1の切替機能部4において、スイッチS1は固定子S1a、スイッチS2は固定子S2a、及びスイッチS3は固定子S3aに切り替えられる。また、第1の切替機能制御信号64のスイッチ設定が“No.2”の場合、第1の切替機能部4において、スイッチS1は固定子S1b、スイッチS2は固定子S2a、及びスイッチS3は固定子S3aに切り替えられる。さらに、第1の切替機能制御信号64のスイッチ設定が“No.3”の場合、第1の切替機能部4において、スイッチS1は固定子S1a、スイッチS2は固定子S2b、及びスイッチS3は固定子S3bに切り替えられる。
【0038】
第2の切替機能制御信号65のスイッチ設定が“No.1”の場合、第2の切替機能部5において、スイッチS4は固定子S4a、スイッチS5は固定子S5a、及びスイッチS6は固定子S6aに切り替えられる。また、第2の切替機能制御信号65のスイッチ設定が“No.2”の場合、第2の切替機能部5において、スイッチS4は固定子S4a、スイッチS5は固定子S5a、及びスイッチS6は固定子S6bに切り替えられる。さらに、第2の切替機能制御信号65のスイッチ設定が“No.3”の場合、第2の切替機能部5において、スイッチS4は固定子S4b、スイッチS5は固定子S5b、及びスイッチS6は固定子S6aに切り替えられる。
【0039】
図7は、制御回路6による異常通知66の一例を示す図である。
制御回路6の切替機能制御部62は、通信用半導体装置1の状態に応じて、異常通知66として、2’b00、2’b01、2’b10、2’b11のいずれかを出力する。本実施形態では、異常通知66は2ビットの信号であり、それぞれの異常通知が表す意味は以下のとおりである。本明細書において、故障とは、通信回路が正常に動作できない状態を指す。
2’b00:正常
2’b01:第1の通信回路2の故障
2’b10:第2の通信回路3の故障
2’b11:通信中止(非冗長モード時、双方の通信回路での通信を中止)
【0040】
[各診断回路の診断結果と切替機能制御部における制御]
図8は、冗長モード時の各診断回路の診断結果と切替機能制御部62における制御の一例を示す図である。
図示する表71は、「No.」、「相互診断回路の診断結果」、「第1の診断回路の診断結果」、「第2の診断回路の診断結果」、及び「切替機能制御部における制御」の各項目を有する。
【0041】
「No.」は、表71内のレコードの位置を表す番号である。
「相互診断回路の診断結果」は、相互診断回路61の診断結果616をOK(良)又はNG(不良)で示す。
「第1の診断回路の診断結果」は、第1の診断回路21の診断結果23をOK(良)又はNG(不良)で示す。
「第2の診断回路の診断結果」は、第2の診断回路31の診断結果33をOK(良)又はNG(不良)で示す。
「切替機能制御部における制御」は、通信用半導体装置1の状態、及び、切替機能制御部62における制御の内容を示す。なお、図8において、切替機能制御部62における制御の内容は、冗長モードにおいて、第1の通信回路2をメインの通信回路として通信を実施することを前提としている。
【0042】
レコードNo.1に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“OK”、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の通信回路2及び第2の通信回路3、並びに、第1の診断回路21及び第2の診断回路31が共に正常であると判断できる。よって、切替機能制御部62は、第1の通信回路2で通信を継続するように、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する。
【0043】
レコードNo.2に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“NG”、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第2の通信回路3が故障していると判断できる。よって、切替機能制御部62は、第1の通信回路2で通信を継続するように、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する。また、切替機能制御部62は、第2の通信回路3の故障情報を含む異常通知66(2’b10)を出力する。なお、第2の通信回路3が故障しているため、第1の通信回路2から第2の通信回路3への切り替えができない。このため、本実施形態では冗長モードであることが前提だったが、通信用半導体装置1は、実質的に非冗長の構成となる。
【0044】
レコードNo.3に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“NG”、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の通信回路2が故障していると判断できる。よって、切替機能制御部62は、第1の通信回路2から第2の通信回路3に切り替えて通信を実施するように、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する。また、切替機能制御部62は、第1の通信回路2が故障していることを示す異常通知66(2’b01)を出力する。
【0045】
レコードNo.4に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“NG”、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の診断回路21、第2の診断回路31、相互診断回路61のいずれかが故障していると考えられる。この場合、切替機能制御部62は、通信中止を表す異常通知66(2’b11)を出力する。そして、異常通知66を受信した上位のコンピューター(例えば、図17のマイコン7)が通信の中止を指示する。
【0046】
レコードNo.5に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“OK”、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の診断回路21、又は相互診断回路61のいずれかが故障していると考えられる。この場合、切替機能制御部62は、通信中止を表す異常通知66(2’b11)を出力し、通信が中止される。
【0047】
レコードNo.6に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“OK”、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第2の診断回路31、又は相互診断回路61のいずれかが故障していると考えられる。この場合、切替機能制御部62は、通信中止を表す異常通知66(2’b11)を出力し、通信が中止される。
【0048】
レコードNo.7に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“OK”、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第1の診断回路21と第2の診断回路31の両方、又は相互診断回路61が故障していると判断できる。この場合、切替機能制御部62は、通信中止を表す異常通知66(2’b11)を出力し、通信が中止される。
【0049】
レコードNo.8に示すように、相互診断回路61の診断結果616が“NG”、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第1の診断回路21と第2の診断回路31の両方、又は相互診断回路61が故障していると判断できる。この場合、切替機能制御部62は、通信中止を表す異常通知66(2’b11)を出力し、通信が中止される。
【0050】
このように、制御回路6の切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23、第2の診断回路31の診断結果33、及び相互診断回路61の診断結果616に基づいて、第1の診断回路21、第2の診断回路31、及び相互診断回路61の故障を検知することが可能となる。また、自己診断結果(診断結果23,33)と相互診断結果(診断結果616)を参照することにより、診断精度を向上させることができる。なお、相互診断回路61は診断精度を向上させるものであるから、必須の構成ではない。要求される診断精度の度合いによって、相互診断回路61の有無を決定するとよい。
【0051】
また、切替機能制御部62は、第1の通信回路2及び第2の通信回路3、第1の通信回路2及び第2の通信回路3の各診断回路21,31、並びに、相互診断回路61のいずれかの異常を検知した際には、当該通信用半導体装置1の通信相手(例えば、図17のマイコン7、第1のIC8、第2のIC9など)に異常を通知するように構成されている。
【0052】
これにより、通信用半導体装置1の通信元及び/又は通信先である通信相手は、異常通知66の有無により、通信が正常であるかどうかを確認することができる。
【0053】
[切替機能制御部の制御処理]
次に、冗長モード時の制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の制御処理の手順について、図9を参照して説明する。
【0054】
図9は、冗長モード時の制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の制御処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、第1の通信回路2をメインの通信回路とし、第2の通信回路をサブの通信回路とする。なお、図9に記載のスイッチ設定や異常通知の内容は、図6及び図7を参照する。
【0055】
通信開始時、切替機能制御部62は、図6に示したスイッチ設定“No.1”のように第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の切替制御を行うことで、メインの通信回路である第1の通信回路2を用いて通信を実施する。ここでは、切替機能制御部62は、異常通知66として“2’b00”を出力する(S100)。この段階では、切替機能制御部62は、第1の通信回路2及び第2の通信回路3、第1の診断回路21及び第2の診断回路31、並びに相互診断回路61に異常なしと判断する。
【0056】
ここで、図10に、冗長モードにおいて第1の通信回路2(メインの通信回路)を使用時の通信経路を示す。
スイッチ設定は“No.1”であるため、図10に太線で示すように、第1の切替機能部4は、第1の通信系統の通信信号線11a及び11bの信号を第1の通信回路2に入出力する。同様に、第2の切替機能部5は、第1の通信系統の通信信号線11c及び11dの信号を第1の通信回路2に入出力する。
【0057】
図9の説明に戻る。次に、切替機能制御部62は、相互診断回路61の診断結果616、第1の診断回路21の診断結果23、及び第2の診断回路31の診断結果33がすべてOKであるか否かを判定する(S101)。ここで、各診断回路の診断結果23,33,616がすべてOKの場合(S101のYES判定)、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が正常に動作していることが判別可能である。
【0058】
次いで、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.1”、異常通知66が“2’b00”の状態で、通信が終了したか否かを判定する(S107)。そして、通信が終了していない場合には(S107のNO判定)、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果を確認するステップS101の判定処理に戻る。通信が終了した場合には(S107のYES判定)、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0059】
一方、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果23,33,616のいずれかがNGである場合(S101のNO判定)、ステップS102に進む。そして、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKであるか否かを判定する(S102)。
【0060】
第1の診断回路21の診断結果23のみOKである場合(S102のYES判定)、第1の診断回路21及び第2の診断回路31が正常に動作していることが分かる。そして、第1の診断回路21の診断結果23のみOKであることから、第2の通信回路3が故障していることが判別可能である。このため、切替機能制御部62は、スイッチ設定を“No.1”としたまま、異常通知66として“2’b10”を出力(S103)した後、ステップS107に進む。そして、ステップS107において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.1”、異常通知66が“2’b10”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0061】
一方、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKではない場合(S102のNO判定)、ステップS104に進む。そして、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKであるか否かを判定する(S104)。
【0062】
第2の診断回路31の診断結果33のみOKである場合(S104のYES判定)、第1の診断回路21及び第2の診断回路31が正常に動作していることが分かる。そして、第2の診断回路31の診断結果33のみOKであることから、第1の通信回路2が故障していることが判別可能である。
【0063】
その際、通信を停止させないために、切替機能制御部62は、図6に示したスイッチ設定“No.2”のように切替制御を行い、サブの通信回路である第2の通信回路3を用いて通信を継続する。また、切替機能制御部62は、異常通知66として“2’b01”を出力(S105)した後、ステップS107に進む。
【0064】
図11に、冗長モードにおいて第1の通信回路2が故障した場合の通信経路を示す。
スイッチ設定が“No.2”に変更されることで、図11に太線で示すように、第1の切替機能部4は、第1の通信系統の通信信号線11a及び11bの信号を第2の通信回路3(サブの通信回路)に入出力する。同様に、第2の切替機能部5は、第1の通信系統の通信信号線11c及び11dの信号を第2の通信回路3に入出力する。
【0065】
図9の説明に戻る。ステップS107において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.2”、異常通知66が“2’b01”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0066】
一方、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKではない場合(S104のNO判定)、ステップS106に進む。この場合、第1の診断回路21、第2の診断回路31、及び相互診断回路61のいずれかの故障が想定されるため、切替機能制御部62は、通信を中止し、異常通知66として“2’b11”を出力する(S106)。現在の通信回路(例えば、第1の通信回路2)による通信が停止され、かつ、サブの通信回路(例えば、第2の通信回路3)への切り替えが実施されないため、通信用半導体装置1による通信が停止する。ステップS106の処理後、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0067】
以上のとおり、第1の実施形態に係る通信用半導体装置は、信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第1の通信回路と、信号入力に対して所定の動作を行い信号出力を行う第2の通信回路と、第1の通信回路及び第2の通信回路の一端に接続され、第1の通信回路及び第2の通信回路に対して信号の入力先と出力元を切り替える第1の切替機能部と、第1の通信回路及び第2の通信回路の他端に接続され、第1の通信回路及び第2の通信回路に対して信号の入力先と出力元を切り替える第2の切替機能部と、第1の通信回路及び第2の通信回路の各々に備えられた、第1の通信回路及び第2の通信回路の診断を行う診断回路(第1の診断回路、第2の診断回路)と、第1の通信回路及び第2の通信回路、並びに、第1の切替機能部及び第2の切替機能部と接続された制御回路と、を備える。
上記制御回路は、外部から入力された動作モードを表す冗長/非冗長モード切替信号と、各診断回路の診断結果とに基づいて、第1の切替機能部及び第2の切替機能部へ入力先及び出力元の切替指示を出す切替機能制御部、を有する。
【0068】
このように構成された第1の実施形態に係る通信用半導体装置では、第1の通信回路及び第2の通信回路、信号の経路を切り替える第1の切替機能部及び第2の切替機能部を備え、冗長/非冗長モード切替信号と、第1の通信回路及び第2の通信回路の状態(各診断回路の診断結果)とに基づいて、第1の切替機能部及び第2の切替機能部を制御する。これにより、本実施形態に係る通信用半導体装置は、冗長機能を備え、冗長機能が不要な場合には非冗長系を構成することができる。これにより、第1の実施形態に係る通信用半導体装置は、通信系統が1系統又は2系統のいずれの場合にも対応可能である。
【0069】
本実施形態に係る通信用半導体装置は、第1の切替機能部及び第2の切替機能部により、各通信回路(第1の通信回路、第2の通信回路)の入力先、出力元を切り替えることが可能である。したがって、冗長/非冗長モード切替信号と、第1の通信回路及び第2の通信回路の状態(各診断回路の診断結果)とに基づいて、冗長機能が必要なシステム(冗長モード)に対しては冗長系を構成し、冗長機能が不要なシステム(非冗長モード)に対しては非冗長系を構成することができる。
【0070】
例えば、本実施形態に係る通信用半導体装置は、冗長系を構成した場合には、メインの通信回路(例えば、第1の通信回路)の異常時において通信を途切れさせることなくサブの通信回路(例えば、第2の通信回路)へ切り替えることが可能である。これにより、異常時にシステムを停止することがないため、機能安全対応と信頼性向上に寄与する。
【0071】
また、本実施形態に係る通信用半導体装置は、非冗長系を構成した場合には、各通信回路で独立の通信系統(第1の通信系統、第2の通信系統)を通信可能である。これにより、ハードウェアを抑制できることから、コストの抑制が可能である。
【0072】
また、本実施形態に係る通信用半導体装置は、各通信回路に自己診断機能(第1の診断回路、第2の診断回路)を備えることで、切替前に待機系の通信回路(例えば、第2の通信回路)に故障がないか診断可能である。
【0073】
さらに、本実施形態に係る通信用半導体装置は、各通信回路の入力/出力を比較する相互診断機能(相互診断回路)を制御回路に備えることで、各診断回路が正常かどうかを判断可能になる。それゆえ、本実施形態に係る通信用半導体装置は、各通信回路の診断精度の向上が可能である。
【0074】
[SOI構造、SIP構造]
なお、通信用半導体装置1は、第1の通信回路2と第2の通信回路3が同時に破壊されることを防止するため、図12に示すように、SOI(Silicon On Insulator)構造、又はSIP(System In a Package)構造にすることが望ましい。
【0075】
図12は、通信用半導体装置1の構成として第1の通信回路2及び第2の通信回路3の同時破壊を回避するためのIC(Integrated Circuit)構成の一例を示す図である。
SOI構造では、例えば、SOI基板(一例としてSi基板)上において二酸化ケイ素(SiO)膜を用いて半導体素子間の分離を行う。図12の左側に示すように、少なくとも、メインの通信回路(例えば、第1の通信回路2)を構成する半導体素子が集積された部品と、サブの通信回路(例えば、第2の通信回路3)を構成する半導体素子が集積された部品とを、互いにSiO膜を介して分離する。
【0076】
例えば、SOI構造のSiO膜による分離の一形態として、「第1の通信回路2」を構成する半導体素子が集積された第1の部品と、「第2の通信回路3」を構成する半導体素子が集積された第2の部品と、「第1の切替機能部4、第2の切替機能部5、制御回路6」の各々を構成する半導体素子が集積された第3の部品とを単位とする分離が考えられる。さらに、「第1の切替機能部4」、「第2の切替機能部5」、及び「制御回路6」の任意の組合せにより、さらに細かく第3の部品を分ける構造としてもよい。
【0077】
SIP構造では、例えば、複数の半導体チップをリードフレーム(パッケージ部材)上に配置して1つのパッケージ内に封止する。図12の右側に示すように、少なくとも、メインの通信回路(例えば、第1の通信回路2)を構成する半導体素子が集積された半導体チップと、サブの通信回路(例えば、第2の通信回路3)を構成する半導体素子が集積された半導体チップとの間を分離する。
【0078】
例えば、SIP構造による分離の一形態として、「第1の通信回路2」を集積した第1の半導体チップと、「第2の通信回路3」を集積した第2の半導体チップと、第1の切替機能部4と第2の切替機能部5と制御回路6とを集積した第3の半導体チップとを、同一のパッケージに封止することが考えられる。また、「第1の切替機能部4」、「第2の切替機能部5」、及び「制御回路6」の任意の組合せにより、第3の半導体チップをさらに複数の半導体チップに分ける構造としてもよい。
【0079】
上述のように、通信用半導体装置1にSOI構造又はSIP構造を採用することにより、少なくとも第1の通信回路2と第2の通信回路3の間を物理的、電気的に分離し、各通信回路の故障が別の通信回路へ及ぶことを防止できる。後述する第2~第4の実施形態においても、通信用半導体装置にSOI構造又はSIP構造を採用することが望ましい。
【0080】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、非冗長モード時に、第1の通信回路2と第2の通信回路3が独立に動作するように第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する例である。また、第2の実施形態は、優先度の高い通信回路側の通信系統を継続するように第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する例である。
【0081】
第2の実施形態における通信用半導体装置の構成は、第1の実施形態に係る通信用半導体装置1(図1図5参照)の構成と同じである。ただし、第2の実施形態では、制御回路6が備える相互診断回路61の診断結果616を使用しない。
【0082】
[各診断回路の診断結果と切替機能制御部における制御]
図13は、非冗長モード時の各診断回路の診断結果と切替機能制御部62における制御の一例を示す図である。
図示する表72は、「No.」、「第1の診断回路の診断結果」、「第2の診断回路の診断結果」、及び「切替機能制御部における制御」の各項目を有する。なお、図13において、切替機能制御部62における制御の内容は、非冗長モードにおいて、複数の通信系統を独立に使用することを前提としている。また、切替機能制御部62のメモリ62mに記憶された優先度は、第2の通信回路3よりも第1の通信回路2の優先度の方が高いものとする。
【0083】
レコードNo.1に示すように、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が共に正常であると判断できる。よって、切替機能制御部62は、第1の通信回路2と第2の通信回路3を用いてそれぞれ独立に通信を継続する。
【0084】
レコードNo.2に示すように、第1の診断回路21の診断結果23が“OK”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第2の通信回路3が故障していると判断できる。よって、切替機能制御部62は、第2の通信回路3の故障情報を含む異常通知66(2’b10)を出力し、第2の通信回路3による通信を中止する。また、切替機能制御部62は、優先度の高い第1の通信回路2で通信を継続するように、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5を制御する。
【0085】
レコードNo.3に示すように、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“OK”である場合、第1の通信回路2が故障していると判断できる。よって、切替機能制御部62は、優先度の低い第2の通信回路3に切り替えて通信を継続する。このとき、切替機能制御部62は、第1の通信回路2の故障情報を含む異常通知66(2’b01)を出力し、元々第2の通信回路3で通信していた通信系統は遮断する。
【0086】
なお、図13に記載していないが、第1の診断回路21の診断結果23が“NG”、及び第2の診断回路31の診断結果33が“NG”である場合、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が共に故障していると判断できる。
【0087】
[切替機能制御部の制御処理]
次に、非冗長モード時の制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の制御処理の手順について、図14を参照して説明する。
【0088】
図14は、非冗長モード時の制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の制御処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、通信用半導体装置1の動作モードが非冗長モードに設定された場合において、第1の通信回路2及び第2の通信回路3それぞれ独立に通信をする際の動作について説明する。また、各通信回路の優先度が等しい場合と、第1の通信回路2が第2の通信回路3よりも優先度が高い場合について説明する。なお、図14に記載のスイッチ設定や異常通知の内容は、図6及び図7を参照する。
【0089】
第1の実施形態で説明した冗長モードは1系統の通信だが、非冗長モードは2系統で独立に通信を行う。そのため、第1の実施形態で参照した図1図7及び図12は、本実施形態においても参照できるが、本実施形態と第2の実施形態とでは次の点が異なる。相違点は、本実施形態では、図1の通信用半導体装置1に対して第2の通信系統(通信信号線12a~12d)が追加され、また、切替機能制御部62は各通信回路の優先度情報を格納する機能(メモリ62m)を有するという点である。
【0090】
通信開始時、切替機能制御部62は、図6に示したスイッチ設定“No.3”のように第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の切替制御を行うことで、第1の通信回路2は第1の通信系統(通信信号線11a~11d)の通信を行い、第2の通信回路3は第2の通信系統(通信信号線12a~12d)の通信を行う。切替機能制御部62は、異常通知66として“2’b00”を出力する(S200)。
【0091】
ここで、図15に、非冗長モードにおいて第1の通信回路2及び第2の通信回路3を使用時の通信経路を示す。
スイッチ設定は“No.3”であるため、図15に太線で示すように、第1の切替機能部4は、第1の通信系統の通信信号線11a及び11bの信号を第1の通信回路2に入出力し、第2の通信系統の通信信号線12a及び12bの信号を第2の通信回路3に入出力する。同様に、第2の切替機能部5は、第1の通信系統の通信信号線11c及び11dの信号を第1の通信回路2に入出力し、第2の通信系統の通信信号線12c及び12dの信号を第2の通信回路3に入出力する。
【0092】
図14の説明に戻る。次に、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23、及び第2の診断回路31の診断結果33がすべてOKであるか否かを判定する(S201)。ここで、各診断回路の診断結果23,33がすべてOKの場合(S201のYES判定)、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が正常に動作していることが判別可能である。
【0093】
次いで、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.3”、異常通知66が“2’b00”の状態で、通信が終了したか否かを判定する(S207)。そして、通信が終了していない場合には(S207のNO判定)、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果を確認するステップS201の判定処理に戻る。通信が終了した場合には(S207のYES判定)、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0094】
一方、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果23,33のいずれかがNGである場合(S201のNO判定)、ステップS202に進む。そして、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKであるか否かを判定する(S202)。
【0095】
第1の診断回路21の診断結果23のみOKである場合(S202のYES判定)、第2の通信回路3が故障していることが判別可能である。このため、切替機能制御部62は、スイッチ設定を“No.3”としたまま、異常通知66として“2’b10”を出力し(S203)、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けて第2の通信系統(通信信号線12a~12d)の通信を中止する。
【0096】
ステップS203の処理後、切替機能制御部62は、ステップS207に進む。ステップS207において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.3”、異常通知66が“2’b10”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0097】
一方、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKではない場合(S202のNO判定)、ステップS204に進む。そして、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKであるか否かを判定する(S204)。
【0098】
第2の診断回路31の診断結果33のみOKである場合(S204のYES判定)、第1の通信回路2が故障していることが判別可能である。その際、切替機能制御部62は、メモリ62mに格納した第1の通信回路2と第2の通信回路3の優先度が等しい場合、スイッチ設定は“No.3”で変更せず、異常通知66として“2‘b01”を出力し、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けて第1の通信系統(通信信号線11a~11d)の通信を中止する(S205)。
【0099】
他方、第1の通信回路2の優先度が高い場合、第1の通信系統の通信を継続するため、切替機能制御部62は、図6に示したスイッチ設定“No.2”のように切替制御を行い、異常通知66として“2‘b01”を出力する(S205)。このとき、切り替えにより、第2の通信系統(通信信号線12a~12d)の信号は、いずれの通信回路にも入出力されないため、切替機能制御部62は、第2の通信系統を使用した通信を中止する。あるいは、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けてから、第2の通信系統の通信を中止するようにしてもよい。
【0100】
図16に、非冗長モードにおいて優先度の高い第1の通信回路2が故障した場合の通信経路を示す。
第1の通信回路2の故障を受けた切り替え後のスイッチ設定“No.2”は、冗長モードにおける切り替え後のスイッチ設定“No.2”(図11)と同じである。すなわち、スイッチ設定が“No.2”に変更されることで、図16に太線で示すように、第1の切替機能部4は、第1の通信系統の通信信号線11a及び11bの信号を第2の通信回路3(サブの通信回路)に入出力する。同様に、第2の切替機能部5は、第1の通信系統の通信信号線11c及び11dの信号を第2の通信回路3に入出力する。この切り替えにより、第2の通信系統の信号は、いずれの通信回路にも入出力されない。
【0101】
図14の説明に戻る。ステップS205の処理後、切替機能制御部62は、ステップS207に進む。ステップS207において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.3”又は“No.2”、異常通知66が“2’b01”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0102】
一方、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKではない場合(S204のNO判定)、ステップS206に進む。この場合、第1の通信回路2及び第2の通信回路3共に故障が想定されるため、切替機能制御部62は、第1の通信系統及び第2の通信系統の通信を中止し、異常通知66として“2’b11”を出力する(S206)。ステップS206の処理後、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0103】
以上のとおり、第2の実施形態に係る通信用半導体装置は、動作モードが非冗長モードのとき、第1の通信回路及び第2の通信回路にそれぞれ異なる信号が入力され、かつ第1の通信回路及び第2の通信回路から上記異なる信号に対応した信号がそれぞれ出力されるように、切替機能制御部が、第1の切替機能部及び第2の切替機能部の入力経路及び出力経路を切り替えるよう構成されている。
【0104】
上記のように構成された本実施形態に係る通信用半導体装置は、動作モード(冗長/非冗長モード切替信号63)に基づいて、冗長機能が不要なシステム(非冗長モード)に対しては非冗長系を構成することが可能となる。これにより、本実施形態に係る通信用半導体装置は、非冗長モード時に、2つの通信系統(第1の通信系統、第2の通信系統)を独立に使用することができる。
【0105】
また、第2の実施形態に係る通信用半導体装置では、第1の通信回路及び第2の通信回路の優先度の情報が切替機能制御部(例えば、メモリ62m)に格納されている。そして、切替機能制御部は、第1の通信回路及び第2の通信回路のうち、優先度の高い通信回路が故障した際には、優先度の低い通信回路を用いて通信を継続できるように、第1の切替機能部及び第2の切替機能部の入力経路及び出力経路を切り替えるように構成されている。
【0106】
上記のように構成された本実施形態に係る通信用半導体装置は、優先度の高い通信回路(第1の通信回路2)が故障した際に、もう一方の通信回路(第2の通信回路3)に切り替えることで、優先度の高い通信回路(通信系統)を使用した通信を停止させずに通信を継続することができる。
【0107】
また、第2の実施形態に係る通信用半導体装置では、第1の通信回路及び第2の通信回路の優先度が等しい場合、第1の通信回路又は第2の通信回路が故障した際に、故障した第1の通信回路又は第2の通信回路を使用した通信のみが中止される。
【0108】
上記のように構成された本実施形態に係る通信用半導体装置は、故障した第1の通信回路又は第2の通信回路を使用した通信のみが中止されることで、故障していない通信回路を使用して通信を継続することができる。
【0109】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、通信用半導体装置1を車内LANプロトコルの一つであるCAN I/Fとして使用した場合の例である。
【0110】
[第1のICと第2のICが異なるCANバスに接続]
図17は、第3の実施形態に係る通信用半導体装置1をCAN I/Fとして使用したシステムにおいて、第1のICと第2のICが異なるCANバスに接続されている場合の例を示す図である。
【0111】
図示する通信用半導体装置1の第1の切替機能部4は、上位のコンピューターであるマイコン7と接続している。マイコン7と通信用半導体装置1とは、第1の通信系統(通信信号線11a~11b)及び第2の通信系統(通信信号線12a~12b)を使用した通信が可能である。マイコン7と通信用半導体装置1は、同一のECU100に搭載されている。例えば、マイコン7と通信用半導体装置1のそれぞれがECUに該当し、ECU100は統合ECUに相当する。
【0112】
マイコン7は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、及び通信回路を備えたコンピューターである。本明細書に記載したマイコン7の機能は、プロセッサが、それぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。該当プログラムやテーブル等の情報は、メモリなどの記録媒体に置くことができる。
【0113】
また、通信用半導体装置1の第2の切替機能部5は、CANバス10Aを介して第1のIC8と接続すると共に、CANバス10Bを介して第2のIC9と接続している。通信用半導体装置1と第1のIC8とは、第1の通信系統(通信信号線11c~11d、CANバス10B)を使用した通信が可能である。また、通信用半導体装置1と第2のIC9とは、第1の通信系統(通信信号線11c~11d、CANバス10B)を使用した通信が可能である。第1のIC8及び第2のIC9はそれぞれ、車載のセンサ等に相当する。
【0114】
図17に示す本実施形態における通信用半導体装置1は、第2の実施形態における通信用半導体装置1と同じ構成、同じ動作である。マイコン7は、通信用半導体装置1を介して、第1のIC8及び第2のIC9と通信を行う。
【0115】
例えば、非冗長モード、かつ第1の通信回路2と第2の通信回路3の優先度が等しい場合、マイコン7と第1のIC8間の通信は、第1の通信回路2を用いて行う。また、マイコン7と第2のIC9間の通信は、第2の通信回路3を用いて行う。図17に示す通信用半導体装置1は、第2の実施形態における各通信回路の優先度が同じ場合と同じ動作を行う。
【0116】
また、非冗長モード、かつ第1の通信回路2の優先度が第2の通信回路3の優先度よりも高い場合、第1の通信回路2が故障した際は、通信を停止しないよう第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5のスイッチS1~S6を切り替える。そして、第2の通信回路3を用いてマイコン7と第1のIC8の通信を行い、第2の実施形態において第1の通信回路2の優先度が高い場合と同じ動作を行う。
【0117】
[第1のICと第2のICが同じCANバスに接続]
図18は、第3の実施形態に係る通信用半導体装置1BをCAN I/Fとして使用したシステムにおいて、第1のICと第2のICが同じCANバスに接続されている場合の例を示す図である。
【0118】
第1のIC8と第2のIC9は、同じCANバス10に接続されている。通信用半導体装置1Bは、第1の通信回路2又は第2の通信回路3の故障時であっても、CANバス10にアクセスすることで第1のIC8及び第2のIC9と通信が可能であることから、図18では第2の切替機能部5を省略している。その他の通信用半導体装置1Bの構成は、図1に示した通信用半導体装置1と同じである。図18に示したような、第1のIC8と第2のIC9の2つのICが同じCANバス10に接続されている場合の通信用半導体装置1Bの動作を、図19及び図20を用いて説明する。
【0119】
図19は、第3の実施形態に係る第1の切替機能部4の切替内容を記した切替内容テーブルT2の構成例を示す図である。
切替内容テーブルT2は、「切替機能部の種類」、「スイッチの種類」、及び「スイッチ設定(接続切替)」の各項目を有する。切替内容テーブルT2に記載された第1の切替機能部4の切替内容は、図6の切替内容テーブルT1に記載された第1の切替機能部4が備えるスイッチS1~S3のスイッチ設定“No.1”及び“No.2”と同じである。
【0120】
[切替機能制御部の制御処理]
次に、第3の実施形態に係る制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の制御処理の手順について、図20を参照して説明する。
【0121】
図20は、図18に示した通信用半導体装置1において、制御回路6の切替機能制御部62による第1の切替機能部4の制御処理の一例を示すフローチャートである。図20に記載のスイッチ設定や異常通知の内容は、図19及び図7を参照する。
【0122】
通信開始時、切替機能制御部62は、図19に示したスイッチ設定“No.1”のように第1の切替機能部4の切替制御を行うことで、第1の通信回路2は第1の通信系統(通信信号線11a~11d)の通信を行い、第2の通信回路3は第2の通信系統(通信信号線12a~12d)の通信を行う。切替機能制御部62は、異常通知66として“2’b00”を出力する(S300)。
【0123】
次に、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23、及び第2の診断回路31の診断結果33がすべてOKであるか否かを判定する(S301)。ここで、各診断回路の診断結果23,33がすべてOKの場合(S301のYES判定)、第1の通信回路2及び第2の通信回路3が正常に動作していることが判別可能である。
【0124】
次いで、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.1”、異常通知66が“2’b00”の状態で、通信が終了したか否かを判定する(S307)。そして、通信が終了していない場合には(S307のNO判定)、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果を確認するステップS301の判定処理に戻る。通信が終了した場合には(S307のYES判定)、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0125】
一方、切替機能制御部62は、各診断回路の診断結果23,33のいずれかがNGである場合(S301のNO判定)、ステップS302に進む。そして、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKであるか否かを判定する(S302)。
【0126】
第1の診断回路21の診断結果23のみOKである場合(S302のYES判定)、第2の通信回路3が故障していることが判別可能である。このため、切替機能制御部62は、スイッチ設定を“No.1”としたまま、異常通知66として“2’b10”を出力し(S303)、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けて第2の通信系統(通信信号線12a~12d)の通信を中止する。
【0127】
ステップS303の処理後、切替機能制御部62は、ステップS307に進む。ステップS307において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.1”、異常通知66が“2’b10”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0128】
一方、切替機能制御部62は、第1の診断回路21の診断結果23のみOKではない場合(S302のNO判定)、ステップS304に進む。そして、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKであるか否かを判定する(S304)。
【0129】
第2の診断回路31の診断結果33のみOKである場合(S304のYES判定)、第1の通信回路2が故障していることが判別可能である。その際、切替機能制御部62は、メモリ62mに格納した第1の通信回路2と第2の通信回路3の優先度が等しい場合、スイッチ設定は“No.1”で変更せず、異常通知66として“2‘b01”を出力する。そして、切替機能制御部62は、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けて第1の通信系統(通信信号線11a~11d)の通信を中止する(S305)。
【0130】
他方、第1の通信回路2の優先度が高い場合、第1の通信系統の通信を継続するため、切替機能制御部62は、図19に示したスイッチ設定“No.2”のように切替制御を行い、異常通知66として“2‘b01”を出力する(S305)。このとき、切り替えにより、第2の通信系統(通信信号線12a~12b)の信号は、いずれの通信回路にも入出力されないため(図16参照)、切替機能制御部62は、第2の通信系統を使用した通信を中止する。あるいは、上位のコンピューター(例えば、マイコン7)の指示を受けてから、第2の通信系統の通信を中止するようにしてもよい。
【0131】
ステップS305の処理後、切替機能制御部62は、ステップS307に進む。ステップS307において、切替機能制御部62は、スイッチ設定が“No.1”又は“No.2”、異常通知66が“2’b01”の状態で、通信が終了したか否かを判定する。
【0132】
一方、切替機能制御部62は、第2の診断回路31の診断結果33のみOKではない場合(S304のNO判定)、ステップS306に進む。この場合、第1の通信回路2及び第2の通信回路3共に故障が想定されるため、切替機能制御部62は、第1の通信系統及び第2の通信系統の通信を中止し、異常通知66として“2’b11”を出力する(S306)。ステップS306の処理後、切替機能制御部62は、本フローチャートの処理を終了する。
【0133】
以上のとおり、第3の実施形態に係る通信用半導体装置1及び1Bは、CAN I/Fとして使用可能であることから、車載にも適用可能である。さらに、通信用半導体装置1及び1Bにおいて、メインの通信回路(例えば、第1の通信回路2)に異常が生じた場合に、通信を途切れさせることなくサブの通信回路(例えば、第2の通信回路3)へ切り替えられるため、車載分野においても機能安全対応と信頼性向上に寄与できる。例えば、統合ECUに相当するECU100に搭載された通信用半導体装置1及び1Bが冗長機能を有することにより、ECU100の機能安全への対応と信頼性の向上が可能となる。
【0134】
<第4の実施形態>
次に、共通原因故障となり得る電気的破壊や破裂、燃焼を回避するための手段として、通信用半導体装置の第1の通信回路2及び第2の通信回路3の状態に従い、上流の電源回路に遮断要求をする例について説明する。なお、第1の通信回路2及び第2の通信回路3の状態の判別方法は、第1~第3の実施形態を参照する。
【0135】
図21は、第4の実施形態に係る通信用半導体装置1Cの構成例を示すブロック図である。
本実施形態における通信用半導体装置1Cの基本的な構成は、第1の実施形態に係る通信用半導体装置1(図1)の構成と同じである。ただし、通信用半導体装置1Cには、図1の通信用半導体装置1に対して、第1の通信回路2の第1電源22、第2の通信回路3の第2電源32、第1電源22の遮断要求67(第1電源遮断要求)、及び第2電源32の遮断要求68(第2電源遮断要求)が追加されている。これらの詳細は図22を参照して説明する。
【0136】
図22は、上位の電源回路(図示略)に対する遮断要求の例を示す図である。
なお、本実施形態では、遮断要求67,68は1ビットの信号であり、図22に示した“1’b0”は遮断要求無効、“1’b1”は遮断要求有効を意味する。通信用半導体装置1Cは、各通信回路の状態に基づき、第1の切替機能部4及び第2の切替機能部5の切替制御と並行して、電源遮断要求を実行する。
【0137】
第1の通信回路2及び第2の通信回路3が共に正常である場合、第1電源22の遮断要求67及び第2電源32の遮断要求68は“1’b0”を出力し、双方の通信回路とも電源を遮断しない。
【0138】
第1の通信回路2のみ故障した場合、第1電源22の遮断要求67のみ“1’b1”を出力し、第1電源22の遮断要求67を受信した上流の電源回路は、第1電源22を遮断する。
【0139】
第2の通信回路3のみ故障した場合、第2電源32の遮断要求68のみ“1’b1”を出力し、第2電源32の遮断要求68を受信した上流の電源回路は、第2電源32を遮断する。
【0140】
第1の通信回路2及び第2の通信回路3が共に故障した場合、第1電源22の遮断要求67及び第2電源32の遮断要求68は“1’b1”を出力する。そして、第1電源22の遮断要求67及び第2電源32の遮断要求68を受信した上流の電源回路は、第1電源22及び第2電源32を遮断する。その他の通信用半導体装置1Cの構成及び動作は、第1~第3の実施形態を参照する。
【0141】
以上のとおり、第4の実施形態に係る通信用半導体装置では、切替機能制御部は、第1の通信回路及び第2の通信回路の各診断回路(第1の診断回路21、第2の診断回路31)で故障が検出されたときには、当該通信用半導体装置に電源を供給する電源回路に遮断要求を行うように構成されている。
【0142】
上記のように構成された第4の実施形態に係る通信用半導体装置は、各通信回路の故障の際、電源回路に遮断要求を行って電源を遮断することで、共通原因故障を回避することが可能となる。通信用半導体装置が備える任意の部品の故障時に電源を遮断することで、2つの通信回路による冗長構成からなる機能を集積回路化した場合の課題である共通原因故障を回避できる。
【0143】
なお、本発明は上述した第1~第4の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために通信用半導体装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0144】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。
【0145】
また、図9図14図20に示した時系列的な処理を記述するフローチャートにおいて、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、複数の処理を並列的に実行したり、処理順序を変更したりしてもよい。
【0146】
また、上述した実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1,1B,1C…通信用半導体装置、11a~11d…通信信号線(第1の通信系統)、12a~12d…通信信号線(第2の通信系統)、2…第1の通信回路、2a~2d…通信信号線、21…第1の診断回路、23…第1の診断回路の診断結果、24…トランスミッタ、25…レシーバ、211…診断用レシーバ、212,213…比較器、214…論理和回路、215…診断用レシーバの出力、2a~2d…第1の通信回路の通信信号線、3…第2の通信回路、31…第2の診断回路、33…第2の診断回路の診断結果、3a~3d…第2の通信回路の通信信号線、4…第1の切替機能部、5…第2の切替機能部、6…制御回路、61…相互診断回路、62…切替機能制御部、62m…メモリ、63…冗長/非冗長モード切替信号、64…第1の切替機能部の制御信号、65…第2の切替機能部の制御信号、66…異常通知、67…第1電源遮断要求、68…第2電源遮断要求、611,612…比較器、613…論理和回路、614…比較器の出力、615…比較器の出力、616…相互診断回路の出力、7…マイコン、8…第1のIC、9…第2のIC、100…ECU、S1…第1スイッチ、S2…第2スイッチ、S3…第3スイッチ、S4…第4スイッチ、S5…第5スイッチ、S6…第6スイッチ、T1,T2…切替内容テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22