(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】着座判定装置及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20250219BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20250219BHJP
B23B 31/00 20060101ALI20250219BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B23Q17/00 B
B23Q17/09 A
B23B31/00 D
B23Q3/06 304K
(21)【出願番号】P 2023557882
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2021040558
(87)【国際公開番号】W WO2023079614
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 淳平
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼▲崎▼ 淳
(72)【発明者】
【氏名】熊▲崎▼ 信也
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-276031(JP,A)
【文献】特開2016-032852(JP,A)
【文献】特開2002-210605(JP,A)
【文献】特開2017-007027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00
B23Q 17/09
B23B 31/00
B23Q 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの着座状態に応じて変化する物理量を検出する検出装置と、
前記検出装置に設けられ、前記物理量と、前記ワークに対する加工中の前記着座状態を判定するために前記物理量に関して設定された閾値とに基づいて、前記着座状態を判定する判定部と、
前記ワークに対する異なる加工毎に、
前記検出装置に前記閾値を設定する設定部と、
を備
え、
前記物理量は、加工時に前記ワークの背面に向けて供給される正圧エアの圧力である背圧、および前記ワークと着座面との間の距離の少なくとも1つである、着座判定装置。
【請求項2】
前記判定部が前記着座状態に異常が発生したと判定した場合、前記着座状態に生じた異常を表す異常信号を出力する出力部を有する、請求項1に記載の着座判定装置。
【請求項3】
前記検出装置は、デジタル信号を出力するデジタル着座センサを有する、請求項1
または2に記載の着座判定装置。
【請求項4】
請求項1-
3の何れか一項に記載の前記着座判定装置を備え、
着座部に着座した前記ワークに機械加工を施す工作機械。
【請求項5】
着座判定装置を備え、着座部に着座したワークに機械加工を施す工作機械であって、
前記着座判定装置は、
前記ワークの着座状態に応じて変化する物理量を検出する検出装置と、
前記物理量と、前記ワークに対する加工中の前記着座状態を判定するために前記物理量に関して設定された閾値とに基づいて、前記着座状態を判定する判定部と、
前記ワークに対する異なる加工毎に、前記閾値を設定する設定部と、
を備え、
前記物理量は、加工時に前記ワークの背面に向けて供給される正圧エアの圧力である背圧、および前記ワークと着座面との間の距離の少なくとも1つであり、
前記検出装置は、前記着座部に設けられており、
前記判定部及び前記設定部は、前記検出装置から前記物理量を入力し、入力した前記物理量を用いて前記工作機械の作動を制御する制御装置に設けられる
、工作機械。
【請求項6】
前記判定部は、前記検出装置によって検出された前記物理量と前記設定部によって設定された前記閾値とを比較して、前記ワークの前記着座部における前記着座状態を判定する、請求項
5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記制御装置は、前記着座状態に異常が発生した場合、前記ワークへの機械加工を停止する、請求項
5又は6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記設定部は、工具を用いて前記ワークに施される異なる加工毎に、前記ワークに対する加工位置、加工方向、加工速度、及び、加工量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記閾値を設定する、請求項
4-7の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記設定部は、前記加工方向が前記ワークの着座方向に沿った方向の場合には前記閾値を予め設定された基準閾値よりも大きな値に設定し、前記加工方向が前記ワークの離座方向に沿った方向の場合には前記閾値を前記基準閾値よりも小さな値に設定する、請求項
8に記載の工作機械。
【請求項10】
着座判定装置を備え、着座部に着座したワークに機械加工を施す工作機械であって、
前記着座判定装置は、
前記ワークの着座状態に応じて変化する物理量を検出する検出装置と、
前記物理量と、前記ワークに対する加工中の前記着座状態を判定するために前記物理量に関して設定された閾値とに基づいて、前記着座状態を判定する判定部と、
前記ワークに対する異なる加工毎に、前記閾値を設定する設定部と、
を備え、
前記物理量は、加工時に前記ワークの背面に向けて供給される正圧エアの圧力である背圧、および前記ワークと着座面との間の距離の少なくとも1つであり、
前記設定部は、工具を用いて前記ワークに施される異なる加工毎に、前記ワークに対する加工位置、加工方向、加工速度、及び、加工量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記閾値を設定し、
前記設定部は、前記加工方向が前記ワークの着座方向に沿った方向の場合には前記閾値を予め設定された基準閾値よりも大きな値に設定し、前記加工方向が前記ワークの離座方向に沿った方向の場合には前記閾値を前記基準閾値よりも小さな値に設定する
、工作機械。
【請求項11】
前記判定部は、前記物理量として加工時に前記ワーク
の背面に向けて供給される正圧エアの圧力である背圧に基づき、前記ワークの前記着座部における着座面に対する浮き上がり状態を前記着座状態として判定する、請求項
4-10の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項12】
着座判定装置を備え、着座部に着座したワークに機械加工を施す工作機械であって、
前記着座判定装置は、
前記ワークの着座状態に応じて変化する物理量を検出する検出装置と、
前記物理量と、前記ワークに対する加工中の前記着座状態を判定するために前記物理量に関して設定された閾値とに基づいて、前記着座状態を判定する判定部と、
前記ワークに対する異なる加工毎に、前記閾値を設定する設定部と、
を備え、
前記判定部は、前記物理量として加工時に前記ワーク
の背面に向けて供給される正圧エアの圧力である背圧に基づき、前記ワークの前記着座部における着座面に対する浮き上がり状態を前記着座状態として判定する
、工作機械。
【請求項13】
前記圧力は、前記ワークに対する加工負荷の大きさ、加工時に前記ワークを把持する把持力の大きさ、及び、前記ワークに機械加工を施す工具の異常のうちの少なくとも一つに依存して変化する、請求項
11または12に記載の工作機械。
【請求項14】
前記判定部は、前記着座状態の判定に基づいて、更に、前記加工負荷の大きさ、前記把持力の大きさ及び前記工具の異常のうちの少なくとも一つを判定する、請求項13に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、着座判定装置及び工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された着座判定方法が開示されている。従来の着座判定方法は、圧力センサによって検出される加工時の背圧が設定時間内に所定の圧力範囲内に収束して一定となった場合において、制御装置が一定となった背圧を基準として加工時用の閾値を設定するようになっている。そして、従来の着座判定方法では、制御装置が背圧に関する加工時用の閾値と、圧力センサによって検出された背圧とを比較して合否判定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、着座したワークに機械加工を施す場合、加工が異なるとワークの着座状態が変化する場合がある。従って、異なる加工毎に適切な閾値を設定して着座状態を判定することが必要である。しかしながら、上記従来の着座判定方法においては、加工時用の閾値を設定する際に、異なる加工毎に加工時用の閾値を設定することが開示されていない。
【0005】
本明細書は、異なる加工毎にワークの着座状態を監視することができる着座判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ワークの着座状態に応じて変化する物理量を検出する検出装置と、物理量と、ワークに対する加工中の着座状態を判定するために物理量に関して設定された閾値とに基づいて、着座状態を判定する判定部と、ワークに対する異なる加工毎に、閾値を設定する設定部と、を備えた、着座判定装置を開示する。
【0007】
着座判定装置によれば、設定部によって異なる加工毎に閾値を設定することができる。従って、着座判定装置では、異なる加工毎に、着座状態を細かく常に監視することができ、その結果、ワークに対する加工の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】着座判定装置を備えた工作機械の構成を説明するための側面図である。
【
図2】
図1の着座判定装置の検出装置の構成を説明するための一部断面図である。
【
図3】
図1の着座判定装置の制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
【
図4】
図3の制御装置において加工毎の閾値の入力を説明するための図である。
【
図5】異なる加工毎(加工内容毎)に設定される閾値を説明するための図である。
【
図6】異なる加工毎に設定される閾値を説明するための図である。
【
図7】第一変形例の着座判定装置の検出装置の構成を説明するための一部断面図である。
【
図8】第一変形例の着座判定装置の制御装置の構成を説明するための機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、着座判定装置及び工作機械について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、着座判定装置を有する工作機械に対してワークを搬送するワーク自動搬送機を備えて形成された加工システムを例示して説明する。
【0010】
1.加工システム10の全体構成
加工システム10は、
図1に示すように、ベース20と、ベース20に設けられてワークWに各種の機械加工を施す工作機械30とを備える。尚、本実施形態においては、ベース20に1つの工作機械30が設けられる場合を例示するが、ベース20に複数の工作機械30を設けることも可能である。又、加工システム10は、工作機械30に機械加工前のワークWを搬入すると共に工作機械30から機械加工後のワークWを搬出するワーク自動搬送機としての多関節ロボット50(以下、単に「ロボット50」と称呼する場合もある。)を備えている。更に、加工システム10を構成する工作機械30には、ロボット50によって搬入されたワークWの着座状態を判定する着座判定装置60が設けられる。
【0011】
2.工作機械30
工作機械30は、機械加工の対象物であるワークWを回転させて、又は、回転不能に固定して、異なる加工、例えば、切削加工や削孔加工(ドリル加工)等を施すものである。工作機械30は、
図1に示すように、可動ヘッド41、主軸台42、工具台43、工具台移動装置44、加工室45、走行室46、及び、制御装置47を有している。可動ヘッド41は、複数の車輪41aを介してベース20に設けられたレール(図示省略)上をZ軸線方向(前後方向)に沿って移動する。
【0012】
主軸台42は、ワークWを回転可能に保持するものである。主軸台42は、Z軸線方向(前後方向)に沿って水平に配置された主軸42aを回転可能に支持する。主軸42aの先端に設けられたワークWの着座部42b(所謂、当金)には、ワークWを保持するチャック42cが設けられる。着座部42bのZ軸線方向にて後方には、後述する着座判定装置60の検出装置61が配置されている。主軸42aは、回転伝達機構42dを介してサーボモータ42eによって回転駆動され、Z軸線の回りに回転可能とされる。
【0013】
工具台43は、複数の工具43aを保持し、選択された工具43aに送り運動を与える装置である。工具台43は、多角形状のタレット型の工具台(刃物台)であり、ワークWを加工する複数の工具43aが取り付けられる工具保持部43bを有している。ここで、工具43aとしては、バイト等の切削工具、或いは、エンドミルやドリル等の回転工具を例示することができる。
【0014】
更に、工具台43は、工具保持部43b回転可能に支持すると共に、旋回割出しされた工具43a、即ち、工具保持部43bを固定可能である回転駆動部43cを有している。これにより、工具台43においては、回転駆動部43cが回転駆動することによって工具保持部43bが回転し、ワークWの各々の加工に対応する工具43aが旋回割出しによって選択される。
【0015】
工具台移動装置44は、工具台43ひいては工具43aをX軸線方向(上下方向)及びZ軸線方向(前後方向)に沿って移動させる装置である。工具台移動装置44は、工具台43をX軸線方向に沿って移動させるX軸駆動装置44aと、工具台43をZ軸線方向に沿って移動させるZ軸駆動装置44bとを有している。
【0016】
X軸駆動装置44aは、可動ヘッド41に設けられたコラムに対して上下方向に沿って摺動可能に取り付けられたX軸スライダ44a1と、X軸スライダ44a1を移動させるためのサーボモータ44a2とを有している。Z軸駆動装置44bは、X軸スライダ44a1に対して前後方向に沿って摺動可能に取り付けられたZ軸スライダ44b1と、Z軸スライダ44b1を移動させるためのサーボモータ44b2とを有している。
【0017】
加工室45は、ワークWを加工するための空間であり、加工室45内には、チャック42c、工具台43(工具43a、工具保持部43b、回転駆動部43c及び検出装置61)が収容されている。加工室45は、前壁45a、天井壁45b、左右壁及び後壁(何れも図示省略)によって区画されている。前壁45aには、ワークWが入出される入出口45a1が形成されている。入出口45a1は、図示省略のモータによって駆動するシャッタ45cによって開閉される。尚、シャッタ45cの開状態(開位置)を実線により、閉状態(閉位置)を二点鎖線により示す。
【0018】
走行室46は、加工室45の入出口45a1に臨んで設けられた空間である。走行室46は、前壁45a及び全面パネル31によって区画されている。走行室46内は、後述するロボット50が走行可能である。
【0019】
制御装置47は、例えば、CNC(Computer Numerically Controlled)、PLC(Programmable Logic Controller)、サーボシステム等を主要構成部品とし、加工毎に設定されたNCプログラム等に従い工作機械30の回転駆動部43c、工具台移動装置44等の作動を制御する。本実施形態において、制御装置47は、後述する着座判定装置60の設定装置62と通信可能に接続されている。
【0020】
3.ロボット50
ロボット50は、走行可能であり、機械加工前のワークWを工作機械30に対して搬入すると共に、機械加工後のワークWを工作機械30から搬出する。このため、ロボット50は、走行部51、本体部52及びロボットハンド53を有している。
【0021】
走行部51は、走行室46内を走行する。本体部52は、旋回テーブル及びアーム部を有し、アーム部を旋回及び伸縮させることにより、加工室45、より詳しくは、主軸42aに対して、ワークWを搬入及び搬出する。ロボットハンド53は、本体部52のアーム部の先端に設けられており、ワークWを把持(クランプ)したり、ワークWを解放(アンクランプ)したりする。
【0022】
4.着座判定装置60
着座判定装置60は、
図1に示すように、主軸台42、より詳しくは、主軸42aにおける着座部42bの後方に設けられた検出装置61と、制御装置47の下部に設けられた設定装置62とを有する。尚、本実施形態においては、設定装置62を制御装置47の下部に配置するが、設定装置62の配置については、この限りではなく、制御装置47から離間した位置に配置可能であることは言うまでもない。
【0023】
4-1.検出装置61
検出装置61は、
図2に示すように、検出孔611、エア供給管612及びデジタル着座センサ613を備えている。検出孔611は、着座部42bに複数設けられている。尚、検出孔611は、例えば、円周上に等間隔に複数配置される。検出孔611は、ワークWが着座部42bの着座面42b1に対して適切に着座した場合において、着座面42b1にて開口する検出孔611がワークWの背面W1によって一定程度塞がれるようになっている。
【0024】
エア供給管612は、検出孔611と、工場内に設置されたコンプレッサ等のエア供給源Cとを接続する。そして、エア供給管612には、流路の絞り量が調整できるように、流量調整弁Vaが接続される。又、エア供給管612における流量調整弁Vaの一次側(エア供給源C側)には、エア供給源Cから供給される一次側圧力を検出する圧力計Gが接続されている。
【0025】
デジタル着座センサ613は、流量調整弁Vaの二次側(主軸42aの着座部42b側)に接続されている。デジタル着座センサ613は、背圧計614及び圧力スイッチ615を含んで形成されている。背圧計614は、着座面42b1にて検出孔611から噴出し、ワークWの背面W1向けて供給される正圧エアの圧力である背圧P(
図3を参照)を検出する。そして、背圧計614は、検出した背圧Pを表すデジタル信号を出力する。
【0026】
ところで、背圧計614によって検出される背圧Pは、ワークWが着座部42bに取り付けられた状態、即ち、ワークWの背面W1が着座面42b1に対向して着座した状態を表す着座状態に応じて変化する物理量である。ここで、ワークWの着座状態として、例えば、背面W1と着座面42b1とが平行且つ互いに近接した着座状態を適切な着座状態として挙げることができる。適切な着座状態においては、検出孔611が背面W1によって塞がれるため、検出される背圧Pは大きくなる。
【0027】
一方、ワークWの着座状態として、例えば、着座面42b1に対して背面W1が傾いている、或いは、背面W1と着座面42b1との間の距離が大きい状態を不適切な着座状態として挙げることができる。不適切な着座状態、換言すれば、ワークWの背面W1が着座部42bの着座面42b1から浮き上がった浮き上がり状態では、検出孔611の全部又は一部が背面W1によって塞がれないため、検出される背圧Pは小さくなる。
【0028】
圧力スイッチ615は、ソリッドステート型のデジタル圧力スイッチであり、設定装置62及び制御装置47に接続される。圧力スイッチ615は、後述するように、設定装置62によって判定用の閾値LV1,LV2,…,LVnが設定され、背圧計614によって検出される背圧Pの大きさに応じてデジタル信号である正常信号Sn又は異常信号Sa(
図3を参照)を出力する。ここで、本実施形態においては、圧力スイッチ615は、判定部及び出力部として機能する。
【0029】
圧力スイッチ615は、検出された背圧Pと、後述するように異なる加工毎(或いは、異なる加工内容毎)に設定される閾値LV1,LV2,…,LVnとを比較する。そして、圧力スイッチ615は、背圧Pが異なる加工毎(或いは、異なる加工内容毎)に設定された閾値LV1,LV2,…,LVn以上の場合に、適切な着座状態を表す正常信号Snを出力する。一方、圧力スイッチ615は、背圧Pが異なる加工毎(或いは、異なる加工内容毎)に設定された閾値LV1,LV2,…,LVn未満の場合に、不適切な着座状態即ちワークWの浮き上がり状態を表す異常信号Saを出力する。ここで、判定部としての圧力スイッチ615は、例えば、検出された背圧Pが所定時間(例えば、数秒間)だけ継続して閾値LV1,LV2,…,LVn未満になっている場合に、異常信号Saを出力することができる。
【0030】
4-2.設定装置62
設定装置62は、例えば、PLCを主要構成部品とし、制御装置47と通信可能とされている。ここで、本実施形態においては、設定装置62は、
図3に示すように、制御装置47から異なる加工毎の加工情報Jを通信によって取得するようになっている。加工情報Jは、加工毎(加工内容毎)に設定される情報であって、例えば、工具43aによるワークWへの加工に関連し、ワークWに対する工具43aの加工位置、加工方向、加工速度、単位時間当たりの加工量(例えば、単位時間当たりの切削体積等)を含む情報である。尚、加工情報Jは、例えば、制御装置47に記憶されたNCプログラム等から抽出することができる。
【0031】
設定装置62は、
図3に示すように、入力部621、設定部622及び履歴記憶部623を備えている。尚、設定装置62は、工作機械30を用いて作業を行う作業者によって操作される。
【0032】
入力部621は、作業者によって入力操作されるヒューマンインタフェースである。入力部621は、設定部622に対して、工作機械30による異なる加工毎、より詳しくは、ワークWに対する異なる加工内容毎に閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbを入力する。以下、閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbの入力を説明するが、説明において閾値LV1,LV2,…,LVnをまとめて単に「閾値LV」と称呼する場合がある。
【0033】
入力部621は、
図4に示すように、作業者によって視認される表示画面621aを表示する。表示画面621aにおいては、加工されるワークWを識別する「ワークNo.」が表示され、又、現在背圧計614によって検出されている背圧Pが「検出値」として表示される。更に、表示画面621aにおいては、「加工(加工内容)」を選択する(又は直接入力可能な)選択部621bと、「閾値」を選択する(又は直接入力可能な)選択部621cとが表示される。
【0034】
ここで、「加工(加工内容)」については、加工情報Jに基づき、選択部621bを用いて「+」又は「-」の操作を行うことにより、「加工No.」を選択して入力される。又、「閾値」については、選択部621cを用いて「+」又は「-」の操作を行うことにより、数値を増減させて入力される。
【0035】
尚、表示画面621aにおいては、後述する履歴記憶部623に記憶されている項目として、デジタル着座センサ613から取得した背圧Pの履歴を表示する「検出値履歴」を表示することができる。又、表示画面621aにおいては、後述する履歴記憶部623に記憶されている項目として、過去に異常信号Saを取得した回数を表示する「NG回数」を表示することができる。
【0036】
又、表示画面621aにおいては、後述する履歴記憶部623に記憶されている項目として、過去にデジタル着座センサ613が背圧Pを検出した総回数を表示する「総検出回数」を表示することができる。更に、表示画面621aにおいては、「NG回数」を「総検出回数」により除することにより算出可能な「NG割合」を表示することができる。
【0037】
再び、
図3に戻り、設定部622は、入力部621によって入力された各閾値LV及び基準閾値LVbを圧力スイッチ615に設定する。ここで、設定部622は、例えば、Mコードを用いて、各閾値LV及び基準閾値LVbをNCプログラムとして記述し、圧力スイッチ615の設定を行うことができる。
【0038】
具体的に、設定部622は、例えば、NCプログラムにおいて、加工毎(加工内容毎)に識別可能な開始コードと終了コードの間にそれぞれの閾値LV(又は基準閾値LVb)を記述する。そして、設定部622は、生成したNCプログラムを圧力スイッチ615に出力することにより、閾値LV及び基準閾値LVbを設定する。これにより、圧力スイッチ615は、NCプログラムに従い、加工毎に、加工に応じた閾値LVを順次変更することができる。
【0039】
尚、設定部622は、入力部621によって入力された全ての閾値LV及び基準閾値LVbを一括して送信することにより、圧力スイッチ615に設定することも可能である。この場合、圧力スイッチ615は、例えば、制御装置47から取得した加工情報Jを参照することにより、加工毎(加工内容毎)に閾値LV(又は基準閾値LVb)を変更することができる。
【0040】
履歴記憶部623は、デジタル着座センサ613から取得したデジタル信号である背圧P、正常信号Sn及び異常信号Saを更新可能に順次記憶する。そして、履歴記憶部623は、更新可能に記憶した背圧Pの検出値や、背圧Pを取得した回数即ち総検出回数、異常信号Saを取得した回数、総検出回数に対する異常信号Saを取得した回数の割合等を入力部621に出力する。
【0041】
4-3.着座判定装置60の作動
着座判定装置60は、異なる加工毎(或いは、異なる加工内容毎)に閾値LVを設定することができ、設定された閾値LV、或いは、予め設定されている基準閾値LVbを用いて、ワークWの着座部42bに対する着座状態を判定する。ところで、デジタル着座センサ613によって検出される背圧Pは、工作機械30における加工毎、より詳しくは、ワークWに対する加工内容毎によって変化しやすい。
【0042】
ここで、異なる加工(或いは、異なる加工内容)を決定する要素(パラメータ)としては、ワークWに機械加工を施す位置である加工位置、機械加工を施す方向である加工方向、機械加工を施す速度である加工速度、及び、機械加工を施す量(例えば、工具43aの送り量や除去体積等)である加工量を例示することができる。従って、異なる加工毎に閾値LVを設定する場合には、各々の加工内容に応じた背圧Pの変化の傾向に従って設定することが必要になる。
【0043】
尚、以下の説明において、
図5に示すように、工具43aがワークWの先端側にて加工する位置を第一加工位置A1とし、工具43aがワークWの基端側にて加工する位置を第二加工位置A2とする。又、
図5に示すように、工具43aが着座部42bの着座面42b1から離間する離座方向を第一加工方向D1とし、工具43aが着座面42b1に接近する着座方向を第二加工方向D2とする。又、
図5に示すように、工具43aがワークWを加工する速度を加工速度Vとし、工具43aのワークWに対する送り量を加工量Rとする。
【0044】
4-3-1.加工位置が異なる場合
例えば、工作機械30において、ワークWに切削加工が施される場合を想定する。この場合、
図5に示すように、工具43a(例えば、バイト)が第一加工位置A1にてワークWを切削加工すると、着座面42b1に対して背面W1が傾きやすくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりやすく、検出される背圧Pの減少が大きくなる。このため、加工位置が第一加工位置A1となる加工(加工内容)においては、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも小さい値に設定する必要がある。
【0045】
一方、工具43aが基端側の第二加工位置A2にてワークWを切削加工すると、着座面42b1に対する背面W1の傾きが第一加工位置A1の場合に比べて小さくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりにくく、検出される背圧Pの減少が小さくなる。このため、加工位置が第二加工位置A2となる加工(加工内容)においては、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも大きい値に設定する必要がある。
【0046】
4-3-2.加工方向が異なる場合
例えば、
図5に示すように、工具43aが第一加工方向D1に沿ってワークWを切削加工すると、破線の矢印により示すように、ワークWが着座部42bの着座面42b1から離間する離座方向に移動しやすくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりやすく、検出される背圧Pの減少が大きくなる。このため、加工方向が第一加工方向D1と一致する加工(加工内容)においては、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも小さい値に設定する必要がある。
【0047】
一方、工具43aが第二加工方向D2に沿ってワークWを切削加工すると、一点鎖線の矢印により示すように、ワークWが着座部42bの着座面42b1に接近する着座方向に移動しやすくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりにくく、検出される背圧Pの減少が小さくなる。このため、加工方向が第二加工方向D2と一致する加工(加工内容)においては、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも大きい値に設定する必要がある。
【0048】
4-3-3.加工速度が異なる場合
例えば、
図5に示すように、工具43aが第一加工方向D1に沿ってワークWを切削加工する場合、加工速度Vが大きい程、ワークWと工具43aとの摩擦が大きくなり、その結果、破線の矢印により示すように、ワークWが離座方向に移動しやすくなる。従って、加工速度Vが大きい程、ワークWが浮き上がり状態になりやすく、検出される背圧Pの減少が大きくなる。このため、第一加工方向D1である場合、加工速度Vが大きい加工(加工内容)である程、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも小さい値に設定する必要がある。
【0049】
一方、工具43aが第二加工方向D2に沿ってワークWを切削加工する場合、加工速度Vが大きい程、一点鎖線の矢印により示すように、ワークWが着座方向に移動しやすくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりにくく、検出される背圧Pの減少が小さくなる。このため、第二加工方向である場合、加工速度Vが大きい加工(加工内容)である程、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも大きい値に設定する必要がある。
【0050】
4-3-4.加工量が異なる場合
例えば、
図5に示すように、工具43aが第一加工方向D1に沿ってワークWを切削加工する場合、加工量Rが大きい程、ワークWと工具43aとの摩擦が大きくなり、その結果、破線の矢印により示すように、ワークWが離座方向に移動しやすくなる。従って、加工量Rが大きい程、ワークWが浮き上がり状態になりやすく、検出される背圧Pの減少が大きくなる。このため、第一加工方向D1である場合、加工量Rが大きい加工(加工内容)である程、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも小さい値に設定する必要がある。
【0051】
一方、工具43aが第二加工方向D2に沿ってワークWを切削加工する場合、加工量Rが大きい程、一点鎖線の矢印により示すように、ワークWが着座方向に移動しやすくなる。従って、この場合には、ワークWが浮き上がり状態になりにくく、検出される背圧Pの減少が小さくなる。このため、第二加工方向である場合、加工量Rが大きい加工(加工内容)である程、ワークWの着座状態を正確に判定するために、例えば、閾値LVを基準閾値LVbよりも大きい値に設定する必要がある。
【0052】
4-3-5.加工が異なる場合
例えば、工作機械30において、ワークWに対し、
図5に示す切削加工の場合と、
図6に示す削孔加工(ドリル加工)の場合とが施される場合を想定する。削孔加工の場合、工具43a(例えば、ドリルビット)による加工方向は、工具43aが着座面42b1に接近する第二加工方向D2、即ち、着座方向に一致する。このため、切削加工及び削孔加工の加工方向が共に第二加工方向D2である場合を比較すると、工具43aがワークWを着座方向に押圧する力は、削孔加工の方が相対的に大きくなる。
【0053】
即ち、工具43aがワークWに削孔加工すると、
図6にて一点鎖線の矢印により示すように、切削加工の場合に比べて、ワークWが着座方向により移動しやすくなる。従って、削孔加工の場合には、切削加工の場合に比べて、ワークWが浮き上がり状態になりにくく、検出される背圧Pの減少がより小さくなる。このため、加工方向が同一である場合、削孔加工においては、上述した切削加工の異なる加工内容(パラメータ)に応じて設定される各々の閾値LVよりも大きい値に設定する必要がある。
【0054】
上述したように、異なる加工毎(異なる加工内容毎)に設定すべき閾値LVの傾向に従い、作業者は、設定装置62の入力部621を操作して、異なる加工毎(異なる加工内容毎)に閾値LVを設定する。即ち、作業者は、入力部621の表示画面621aにおいて、先ず、選択部621bを用いて「加工(加工内容)」を選択する。続いて、作業者は、対象となる加工(加工内容)について、選択部621cを用いて適切な閾値LVを入力する。これにより、作業者は、「加工No.1」から「加工No.n」までのそれぞれの閾値LV1,LV2,…,LVnを入力する。
【0055】
そして、入力部621は、入力された閾値LV1,LV2,…,LVnを設定部622に出力する。ここで、作業者は、全ての加工において基準となる基準閾値LVbを、例えば、選択部621cを用いて入力することが可能である。尚、基準閾値LVbについては、予め圧力スイッチ615に設定されていても良い。
【0056】
設定部622は、入力部621から閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbを取得する。そして、設定部622は、異なる加工毎(異なる加工内容毎)に、又は、一括して、閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbを圧力スイッチ615に設定する。
【0057】
これにより、検出装置61においては、工作機械30の着座部42bの着座面42b1にワークWが装着されると、背圧計614が背圧Pの検出を開始する。検出装置61においては、圧力スイッチ615が背圧Pと加工毎(加工内容毎)に設定されたそれぞれの閾値LV1,LV2,…,LVn又は基準閾値LVbとを比較する。
【0058】
そして、圧力スイッチ615は、検出された背圧Pが設定された閾値LV以上であれば、デジタル信号としての正常信号Snを制御装置47及び履歴記憶部623に出力する。これにより、制御装置47は、ワークWが着座部42bの着座面42b1に適切に着座しているため、ワークWに対する機械加工を継続する。又、履歴記憶部623は、出力された正常信号Snを更新可能に記憶する。
【0059】
一方、圧力スイッチ615は、検出された背圧Pが設定された閾値LV未満であれば、デジタル信号としての異常信号Saを制御装置47及び履歴記憶部623に出力する。これにより、制御装置47は、着座部42bの着座面42b1に対してワークWの着座状態が浮き上がり状態であるため、ワークWに対する機械加工を停止する。又、履歴記憶部623は、出力された正常信号Snを更新可能に記憶する。
【0060】
以上の説明からも理解できるように、着座判定装置60は、ワークWの着座状態に応じて変化する物理量としての背圧Pを検出する検出装置61と、背圧Pと、ワークWに対する加工中の着座状態を判定するために背圧Pに関して設定された閾値LV1,LV2,…,LVnとに基づいて、着座状態を判定する判定部としての圧力スイッチ615と、ワークWに対する異なる加工毎に、閾値LV1,LV2,…,LVnを設定する設定部622と、を備える。
【0061】
これにより、着座判定装置60では、設定部622によって加工毎(加工内容毎)に閾値LV1,LV2,…,LVnを設定することができる。従って、着座判定装置60では、加工毎(加工内容毎)に、着座状態、即ち、ワークWの浮き上がり状態を細かく常に監視することができ、その結果、ワークWに対する加工の精度を向上させることができる。
【0062】
又、着座判定装置60では、加工毎(加工内容毎)に閾値LV1,LV2,…,LVnを設定することができる。このため、例えば、加工全体で1つの基準閾値LVbしか設定できない場合に比べ、着座判定装置60を工作機械30に設けた場合には、着座状態の異常によって機械加工を停止する頻度を低減することができ、その結果、工作機械30によるワークWの生産性を向上させることができる。
【0063】
5.変形例
5-1.第一変形例
上述した実施形態においては、デジタル着座センサ613を形成する圧力スイッチ615が設定された閾値LVと検出された背圧Pとを比較して判定し、背圧Pが閾値LV未満である場合に異常信号Saを制御装置47に出力するようにした。即ち、上述した実施形態においては、圧力スイッチ615が判定部及び出力部の機能を発揮するようにした。
【0064】
これに代えて、
図7及び
図8に示すように、設定装置62が設定された閾値LVと検出された背圧Pとを比較して判定し、背圧Pが閾値LV未満である場合に異常信号Saを出力することも可能である。以下、第一変形例を説明するが、上述した実施形態と同一部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
第一変形例においては、
図7に示すように、デジタル着座センサ613の圧力スイッチ615が省略され、背圧計614によって検出された背圧P(デジタル信号)が設定装置62に出力されるように変形される。そして、第一変形例においては、
図8に示すように、設定装置62に対して、新たに取得部624、判定部625及び出力部626が設けられる。取得部624は、背圧計614から検出された背圧P(デジタル信号)を取得し、取得した背圧Pを判定部625に出力する。
【0066】
判定部625は、設定部622によって判定用の閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbが設定される。尚、この場合においても、上述した実施形態と同様に、Mコードを用いて開始コード及び終了コードの間に閾値LV(基準閾値LVb)を記述して設定することが可能である。判定部625は、閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbと、取得部624が取得した背圧Pとを比較する。
【0067】
そして、判定部625は、背圧Pが各々の閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVb以上の場合には正常信号Snを出力部626に出力し、背圧Pが各々の閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVb未満の場合には異常信号Saを出力部626に出力する。又、判定部625は、取得部624が取得した背圧Pも出力部626に出力する。
【0068】
出力部626は、判定部625から出力された正常信号Sn、異常信号Sa及び背圧Pを取得する。そして、出力部626は、取得した正常信号Sn又は異常信号Saを制御装置47に出力し、背圧Pを履歴記憶部623に出力する。
【0069】
従って、第一変形例においても、異なる加工毎(異なる加工内容毎)に閾値LV1,LV2,…,LVnを設定することができる。そして、第一変形例においては、判定部625が背圧Pと各々の閾値LV1,LV2,…,LVn及び基準閾値LVbとを比較して判定することにより、正常信号Sn又は異常信号Saを、出力部626を介して制御装置47に出力することができる。従って、第一変形例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
5-2.第二変形例
上述した実施形態においては、デジタル着座センサ613が制御装置47に対して正常信号Sn又は異常信号Saを出力するようにした。又、上述した第一変形例においては、設定装置62が制御装置47に対して正常信号Sn又は異常信号Saを出力するようにした。そして、制御装置47は、異常信号Saを取得した場合、ワークWの着座状態に異常が発生しているため、機械加工を停止するようにした。
【0071】
ところで、工作機械30に設けられる制御装置47は、CNC、PLC、サーボシステム等を主要構成部品とし、加工毎に設定されたNCプログラム等に従い回転駆動部43c、工具台移動装置44等の作動を制御することができる。従って、制御装置47が、上述した実施形態の設定装置62を備えたり、上述した第一変形例の設定装置62を備えたりすることが可能である。
【0072】
この場合、制御装置47は、上述した実施形態の設定装置62と同様に、入力部621、設定部622、履歴記憶部623を備えることができる。これにより、制御装置47は、デジタル着座センサ613の圧力スイッチ615に判定用の閾値LVを加工毎(加工内容毎)に設定することが可能となる。そして、制御装置47は、圧力スイッチ615から異常信号Saを取得した場合、ワークWの着座状態に異常が発生しているため、機械加工を停止することが可能となる。従って、この場合においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
又、制御装置47は、上述した第一変形例の設定装置62と同様に、入力部621、設定部622、履歴記憶部623に加えて、取得部624、判定部625及び出力部626を備えることができる。但し、制御装置47は、必要に応じて、出力部626を省略可能である。
【0074】
これにより、制御装置47は、判定部625に判定用の閾値LVを加工毎(加工内容毎)に設定することが可能となる。そして、制御装置47は、判定部625が背圧計614から取得した背圧Pと、異なる加工毎(異なる加工内容毎)に設定された閾値LV(又は基準閾値LVb)とを比較して判定することにより、異常信号Saを取得した場合、ワークWの着座状態に異常が発生しているため、機械加工を停止することが可能となる。従って、この場合においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
5-3.第三変形例
上述した実施形態、第一変形例及び第二変形例においては、ワークWの着座状態に応じて変化する物理量として、ワークWの背面W1向けて供給される正圧エアの圧力である背圧Pを用いるようにした。しかしながら、物理量は、ワークWの着座状態に応じて変化すれば、背圧Pを用いることに限定されない。例えば、
図9に示すように、機械加工を施す工具43aによりワークWに付与される荷重K、又は、ワークWと着座面42b1との間の距離Lを用いることができる。或いは、単位時間当たりの加工量R(
図5を参照)を用いることができる。
【0076】
5-4.第四変形例
上述した実施形態及び上記各変形例においては、判定部としての圧力スイッチ615及び判定部625が背圧Pの変化に基づいて、ワークWの着座状態を判定するようにした。ところで、上述したように、背圧計614によって検出される背圧Pは、ワークWの着座状態、即ち、浮き上がり状態に依存して変化する。
【0077】
そして、ワークWの浮き上がり状態は、工具43aがワークWに対して機械加工を施す際に生じる加工負荷の大きさ、加工時にチャック42cがワークWを把持する把持力の大きさ、及び、ワークWに機械加工を施す工具43aの異常のうちの少なくとも一つに依存して変化する。つまり、背圧Pは、工具43aがワークWに対して機械加工を施す際に生じる加工負荷の大きさ、加工時にチャック42cがワークWを把持する把持力の大きさ、及び、ワークWに機械加工を施す工具43aの異常のうちの少なくとも一つに依存して変化する。
【0078】
そこで、圧力スイッチ615及び判定部625は、背圧計614によって検出される背圧Pの変化に基づいて、工具43aによるワークWへの加工負荷の大きさ、チャック42cによるワークWの把持力の大きさ、及び、工具43aの欠けや破損等の異常のうちの少なくとも一つを判定することが可能である。そして、ワークWの加工に際して、圧力スイッチ615及び判定部625は、背圧Pの変化に基づいて、例えば、加工負荷が基準加工負荷よりも大きいと判定した場合、異常信号Saを出力することができる。
【0079】
又、ワークWの加工に際して、圧力スイッチ615及び判定部625は、背圧Pの変化に基づいて、例えば、把持力の大きさが基準把持力よりも小さいと判定した場合、異常信号Saを出力することができる。更に、ワークWの加工に際して、圧力スイッチ615及び判定部625は、背圧Pの変化に基づいて、例えば、加工量Rの大きさが基準加工量よりも小さいと判定した場合、工具43aに異常が発生している可能性が高いため異常信号Saを出力することができる。そして、工作機械30においては、異常信号Saの取得に伴い、ワークWの機械加工を停止することができる。
【符号の説明】
【0080】
10…加工システム、20…ベース、30…工作機械、42…主軸台、42a…主軸、42b…着座部、42b1…着座面42b1、43a…工具、47…制御装置、50…多関節ロボット、60…着座判定装置、61…検出装置、611…検出孔、612…エア供給管、613…デジタル着座センサ、614…背圧計、615…圧力スイッチ(判定部、出力部)、62…設定装置、621…入力部、622…設定部、623…履歴記憶部、624…取得部、625…判定部、626…出力部、LV1,LV2,…,LVn…閾値、LVb…基準閾値、Sn…正常信号Sn、Sa…異常信号、A1…第一加工位置、A2…第二加工位置、D1…第一加工方向、D2…第二加工方向、V…加工速度、W…ワーク、W1…背面、P…背圧(物理量)、K…荷重(物理量)、L…距離(物理量)、R…加工量(物理量)