(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】香味吸引器
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20250219BHJP
A24F 40/90 20200101ALI20250219BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/90
(21)【出願番号】P 2023567368
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2021046182
(87)【国際公開番号】W WO2023112182
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 竜二
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 篤史
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531015(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084757(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209643863(CN,U)
【文献】特表2021-523682(JP,A)
【文献】特開2020-22154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙可能物を加熱してエアロゾルを生成する香味吸引器であって、
電子素子を備えた第1基板と、
前記第1基板を収容する筐体と、を有し、
前記第1基板は、第1面と、前記第1面と反対であり、前記第1面よりも前記筐体との距離が遠い第2面と、を有し、
前記香味吸引器は、さらに、前記第1基板の前記第2面と対向する部品と、前記第1基板の前記第2面の前記電子素子に対応する部分と前記部品とによって挟み込まれる第1放熱部材と、を有する、香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載された香味吸引器において、
前記電子素子は、バッテリへの充電を制御するための充電ICである、香味吸引器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された香味吸引器において、
前記第1放熱部材は、シリコーンを含む放熱パッドである、香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載された香味吸引器において、
前記第1放熱部材は、前記第1基板の前記第2面と前記部品とによって圧縮される、香味吸引器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された香味吸引器において、
前記部品は、前記第1基板の前記第2面と対向する面を有する第2基板である、香味吸引器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載された香味吸引器において、
前記電子素子は、前記第1基板の前記第1面に配置される、香味吸引器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載された香味吸引器において、
バッテリと、
前記バッテリの表面と前記筐体の内面とによって挟み込まれる第2放熱部材と、を有する、香味吸引器。
【請求項8】
請求項7に記載された香味吸引器において、
前記筐体は、底壁、周壁、及び前記周壁によって画定される開口を備えた第1筐体と、前記開口を閉止する第2筐体と、を含み、
前記第2放熱部材は、前記バッテリの表面と前記底壁の内面とによって挟み込まれる、香味吸引器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味吸引器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料の燃焼をすることなく香味等を吸引するための香味吸引器が知られている。このような香味吸引器では、消耗品を加熱するヒータに対して電力を供給するための再充電可能なバッテリが設けられる。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような香味吸引器において、バッテリの充電時間を短縮することが求められている。バッテリの充電時間を短縮するためにバッテリに供給する電流値を上げると、充電を制御する充電IC(Integrated Circuit)が従来よりも高温に発熱する。この場合、PCB(Printed Circuit board)に搭載された充電ICが局所的に高温になるので、適切に放熱する必要がある。充電ICに限らず、PCBに搭載される電子素子が高温に発熱する場合も同様に適切に放熱する必要がある。このような熱は、香味吸引器の筐体の外側に放熱することが好ましい。そこで、放熱するための部材を、PCB(電子素子)と筐体に接触するようにPCBと筐体の間に配置することが考えられる。しかしながら、PCBやヒータ等は予め組み立てられ、その後筐体に収容されて香味吸引器が組み上げられるので、PCB(電子素子)と筐体に接触するように放熱部材を配置するのは、香味吸引器の組み上げを考慮すると好ましくない。
【0005】
本発明の目的の一つは、香味吸引器の組み上げを阻害することなく電子素子を放熱することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様によれば、喫煙可能物を加熱してエアロゾルを生成する香味吸引器が提供される。この香味吸引器は、電子素子を備えた第1基板と、前記第1基板を収容する筐体と、を有する。前記第1基板は、第1面と、前記第1面と反対であり、前記第1面よりも前記筐体との距離が遠い第2面と、を有する。前記香味吸引器は、さらに、前記第1基板の前記第2面と対向する部品と、前記第1基板の前記第2面の前記電子素子に対応する部分と前記部品とによって挟み込まれる第1放熱部材と、を有する。
【0007】
第1態様によれば、第1基板の電子素子の熱を、第1放熱部材を介して第1基板の第2面と対向する部品に伝達(放熱)することができるので、第1基板に生じる局所的な熱を分散しながら上記部品に伝達できる。これに加えて、第1放熱部材は、上記部品と第1基板とに挟み込まれるので、第1基板、第1放熱部材、及び上記部品を筐体に収容する際に、第1放熱部材が筐体に接触して香味吸引器の組み上げを阻害することが抑制され得る。
【0008】
第2態様は、第1態様において、前記電子素子は、バッテリへの充電を制御するための充電ICである、ことを要旨とする。
【0009】
第2態様によれば、充電ICから上記部品に対して放熱できるので、従来よりも充電時間を短縮するためにバッテリに供給する電流値を上げても、充電ICが高温になることを抑制できる。
【0010】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、前記第1放熱部材は、シリコーンを含む放熱パッドである、ことを要旨とする。
【0011】
第3態様によれば、第1放熱部材が第1基板と上記部品とで挟み込まれることで第1基板から上記部品に第1放熱部材を介して効率よく放熱できる。
【0012】
第4態様は、第3態様において、前記第1放熱部材は、前記第1基板の前記第2面と前記部品とによって圧縮される、ことを要旨とする。
【0013】
シリコーンを含む放熱パッドは、圧縮するように放熱対象物に接触させることで効率よく熱伝達することができる。第4態様によれば、第1放熱部材が第1基板と上記部品とで圧縮されることで第1基板から上記部品に第1放熱部材を介して効率よく放熱できる。
【0014】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記部品は、前記第1基板の前記第2面と対向する面を有する第2基板である、ことを要旨とする。
【0015】
第5態様によれば、第1基板に生じる局所的な熱を分散しながら第2基板の面に対して伝達できるので、第2基板が局所的に高温になることが抑制され得る。
【0016】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記電子素子は、前記第1基板の前記第1面に配置される、ことを要旨とする。
【0017】
第6態様によれば、電子素子の熱が第1基板の第1面から第2面に伝達されるときに、第1基板において面内方向に分散されるので、局所的に発生する電子素子の熱を第1基板が分散しながら第1放熱部材に伝達することができる。
【0018】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、バッテリと、前記バッテリの表面と前記筐体の内面とによって挟み込まれる第2放熱部材と、を有する、ことを要旨とする。
【0019】
バッテリの充電時間を短縮するためにバッテリに供給する電流値を上げると、バッテリも従来よりも高温に発熱する。第7態様によれば、バッテリの熱を、第2放熱部材を介して筐体に伝達(放熱)することができる。
【0020】
第8態様は、第7態様において、前記筐体は、底壁、周壁、及び前記周壁によって画定される開口を備えた第1筐体と、前記開口を閉止する第2筐体と、を含み、前記第2放熱部材は、前記バッテリの表面と前記底壁の内面とによって挟み込まれる、ことを要旨とする。
【0021】
第8態様によれば、開口を通じてバッテリを第1筐体に収容することにより、第2放熱部材をバッテリの表面と底壁の内面とで挟み込むことができる。したがって、第2放熱部材が香味吸引器の組み上げを阻害することが抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本実施形態に係る香味吸引器の概略正面図である。
【
図1B】本実施形態に係る香味吸引器の概略上面図である。
【
図1C】本実施形態に係る香味吸引器の概略底面図である。
【
図3】
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器の概略断面図である。
【
図4】
図1Aに示した矢視4-4における香味吸引器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0024】
図1Aは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略正面図である。
図1Bは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略上面図である。
図1Cは、本実施形態に係る香味吸引器100の概略底面図である。本明細書で説明する図面においては、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は香味吸引器100を水平方向に切断するように配置されており、Y軸は香味吸引器100の正面から裏面へ延出するように配置されている。Z軸は、後述する霧化部30のチャンバ50に収容される消費材の挿入方向ということもできる。また、X軸方向は、消費材の挿入方向に直交する面におけるデバイス長手方向、又は加熱部と電源部とが並ぶ方向ということもできる。Y軸方向は、消費材の挿入方向に直交する面におけるデバイス短手方向ということもできる。
【0025】
本実施形態に係る香味吸引器100は、消費材の喫煙可能物を加熱してエアロゾルを生成するように構成される。具体的には、香味吸引器100は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有するスティック型の消費材を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0026】
図1Aから
図1Cに示されるように、香味吸引器100は、アウタハウジング101(筐体の一例に相当する)と、スライドカバー102と、スイッチ部103と、を有する。アウタハウジング101は、香味吸引器100の最外のハウジングを構成し、ユーザの手に収まるようなサイズを有する。ユーザが香味吸引器100を使用する際は、アウタハウジング101を手で保持して、エアロゾルを吸引することができる。
【0027】
図1B及び
図1Cに示すように、アウタハウジング101は、Y軸方向に分割されるように、アウタパネル70(第2筐体の一例に相当する)と、アウタケース80(第1筐体の一例に相当する)と、を有する。言い換えれば、アウタケース80に対してアウタパネル70をY軸方向に接続することでアウタハウジング101が形成され得る。アウタパネル70は、アウタケース80に対して着脱可能に構成され得る。アウタケース80は、底壁80aと、底壁80aから延びる周壁80bと、周壁80bによって画定される開口OP1(後述する
図4参照)とを有する。アウタパネル70は、アウタケース80の開口OP1(後述する
図4参照)を閉止するように構成される。
【0028】
スライドカバー102は、消費材を挿入するための図示しない開口部を閉じるようにアウタハウジング101にスライド可能に取り付けられる。具体的には、スライドカバー102は、アウタハウジング101の図示しない開口部を閉じる閉位置(
図1A及び
図1Bに示す位置)と、図示しない開口部を開放する開位置との間を、アウタハウジング101の外表面に沿って移動可能に構成される。例えば、ユーザがスライドカバー102を手動で操作することにより、スライドカバー102を閉位置と開位置とに移動させることができる。これにより、スライドカバー102は、香味吸引器100の内部への消費材のアクセスを許可または制限することができる。
【0029】
スイッチ部103は、香味吸引器100の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、ユーザは、消費材を香味吸引器100に挿入した状態でスイッチ部103を操作することで、図示しない加熱部に図示しないバッテリから電力が供給され、消費材を燃焼させずに加熱することができる。なお、スイッチ部103は、アウタハウジング101の外部に設けられるスイッチを有してもよいし、アウタハウジング101の内部に位置するスイッチを有してもよい。スイッチがアウタハウジング101の内部に位置する場合、アウタハウジング101の表面のスイッチ部103を押下することで、間接的にスイッチが押下される。本実施形態では、スイッチ部103のスイッチがアウタハウジング101の内部に位置する例を説明する。
【0030】
香味吸引器100はさらに、図示しない端子を有してもよい。端子は、香味吸引器100を例えば外部電源と接続するインターフェースであり得る。香味吸引器100が備える電源が充電式バッテリである場合は、端子に外部電源を接続することで、外部電源からバッテリに電流を流し、バッテリを充電することができる。また、端子にデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器100の作動に関連するデータを外部装置に送信できるようにしてもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る香味吸引器100で使用される消費材について説明する。
図2は、消費材110の概略側断面図である。本実施形態において、香味吸引器100と消費材110とにより喫煙システムが構成され得る。
図2に示す例においては、消費材110は、喫煙可能物111と、筒状部材114と、中空フィルタ部116と、フィルタ部115と、を有する。喫煙可能物111は、第1の巻紙112によって巻装される。筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115は、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって巻装される。第2の巻紙113は、喫煙可能物111を巻装する第1の巻紙112の一部も巻装する。これにより、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結される。ただし、第2の巻紙113が省略され、第1の巻紙112を用いて筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結されてもよい。第2の巻紙113のフィルタ部115側の端部近傍の外面には、ユーザの唇が第2の巻紙113からくっつきにくくするためのリップリリース剤117が塗布される。消費材110のリップリリース剤117が塗布される部分は、消費材110の吸口として機能する。また、消費材110において冷却セグメント機能を果たす筒状部材114の周方向に、同心状に開孔Vが設けられていてもよい。筒状部材114に設けられる開孔Vは、通常、ユーザの吸引による外部からの空気の流入を促進するための孔であり、この空気の流入により喫煙可能物111から流入する成分や空気の温度を下げることができる。
【0032】
喫煙可能物111は、例えばたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物111を巻く第1の巻紙112は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材114は、紙管又は中空フィルタであり得る。図示の例では、消費材110は、喫煙可能物111、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115を備えているが、消費材110の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部116が省略され、筒状部材114とフィルタ部115とを互いに隣接配置されてもよい。また、消費材110の1本当たりの長軸方向の通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常8mmH2O以上であり、10mmH2O以上であることが好ましく、12mmH2O以上であることがより好ましく、また、通常100mmH2O以下であり、80mmH2O以下であることが好ましく、60mmH2O以下であることがより好ましい。
【0033】
次に、香味吸引器100の内部構造について説明する。
図3は、
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器100の概略断面図である。
図4は、
図1Aに示した矢視4-4における香味吸引器100の概略断面図である。
図3及び
図4に示すように、香味吸引器100のアウタハウジング101の内部には、インナパネル10が収容される。インナパネル10は、例えば、樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。耐熱性や強度の観点からは、インナパネル10はPEEKで形成されることが好ましい。しかしながら、インナパネル10の材料は特に限定されない。インナパネル10は、アウタハウジング101と共に香味吸引器100の筐体を構成し、この筐体の内部空間には、電源部20と、消費材110のための霧化部30と、第1基板60と、第2基板64(部品の一例に相当する)と、が収容される。
図4に示すように、インナパネル10は、第1インナパネル11(第2筐体の一例に相当する)と第2インナパネル12(第1筐体の一例に相当する)を有する。第2インナパネル12に対して第1インナパネル11を着脱することで、インナパネル10が開閉され得る。また、アウタハウジング101は、例えば、樹脂製であり、特に、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得る。
【0034】
電源部20は、バッテリ21を有する。バッテリ21は、例えば、充電式バッテリであり得る。バッテリ21は、第1基板60を介して霧化部30の加熱部40と電気的に接続される。これにより、バッテリ21は、消費材110を適切に加熱するように、加熱部40に電力を供給することができる。
【0035】
霧化部30は、
図3に示すように、消費材110の挿入方向(Z軸方向)に延びるチャンバ50と、チャンバ50の一部を囲う加熱部40と、断熱部32と、略筒状の挿入ガイド部材34と、を有する。チャンバ50は、消費材110を収容するように構成される。チャンバ50は、耐熱性を有し、且つ熱膨張率が小さい材料で形成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等の金属、PEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成され得る。図示のように、チャンバ50の底部には、底部材36が設けられていてもよい。底部材36は、チャンバ50に挿入された消費材110を位置決めするストッパとして機能し得る。底部材36は、消費材110が当接する面に凹凸を有し、消費材110が当接する面に空気を供給可能な空間を画定し得る。底部材36は、例えば、PEEK等の樹脂材料、金属、ガラス、又はセラミック等で構成され得るが、特にこれに限定されない。また、底部材36を構成する材料は、チャンバ50を構成する材料に比べて、熱伝導性が低い材料であってもよい。底部材36をチャンバ50の底部に接合する場合、エポキシ樹脂等の樹脂材料や無機材料で構成され得る接着剤を用いることができる。
【0036】
加熱部40は、チャンバ50の外周面に接触し、チャンバ50に収容された消費材110の喫煙可能物111を加熱するように構成される。具体的には、加熱部40は、例えばヒーティングトラック等の加熱要素と、加熱要素の少なくとも一方の面を覆う電気絶縁シートと、を有し得る。
【0037】
断熱部32は、全体として略筒状であり、チャンバ50を囲うように配置される。断熱部32は、例えばエアロゲルシートを含み得る。挿入ガイド部材34は、例えばPEEK、PC、又はABS等の樹脂材料により形成され、閉位置にあるスライドカバー102とチャンバ50との間に設けられる。また、香味吸引器100は、断熱部32を保持するための第1保持部37及び第2保持部38を有する。第1保持部37及び第2保持部38は、例えば、シリコーンゴム等のエラストマーで形成することができる。
図3に示すように、第1保持部37は、Z軸正方向側の断熱部32の端部を保持する。また、第2保持部38は、断熱部32のZ軸負方向側の端部を保持する。
【0038】
挿入ガイド部材34は、消費材110の挿入をガイドする機能を有する。具体的には挿入ガイド部材34は、スライドカバー102が開位置にあるときに、消費材110を挿入ガイド部材34に挿入することで、チャンバ50への消費材110の挿入を案内する。本実施形態では、挿入ガイド部材34がチャンバ50と接触し得るので、挿入ガイド部材34は、耐熱性の観点からPEEKで形成されることが好ましい。
図3に示すように、スライドカバー102は、方向D1において開位置と閉位置との間を移動可能である。
【0039】
香味吸引器100は、バッテリ21と霧化部30との間をZ軸方向に延びる第1シャシー22と、バッテリ21のスライドカバー102側を覆うように延びる第2シャシー23とを有する。第1シャシー22及び第2シャシー23は、インナパネル10内にバッテリ21が収容される空間を区画するように構成される。
【0040】
図3及び
図4に示すように、第1基板60は、電子素子61を備える。電子素子61は、所定の条件で発熱し得る任意の素子であり得る。第1基板60は、第1面60aと、第1面60aと反対であり、第1面60aよりも筐体(アウタハウジング101及びインナパネル10)との距離が遠い第2面60bとを有する。ここで、第1基板60と筐体との距離は、第1面60a又は第2面60bと直交する方向における距離をいう。また、第2基板64は、第1基板60の第2面60bと対向する。第1基板60及び第2基板64は、例えばPCBであり得る。
【0041】
本実施形態では、第1基板60の電子素子61が発熱した場合に、その熱を放熱するための第1放熱部材62が設けられる。ここで、
図4に示すように、本実施形態では、アウタケース80は、底壁80a及び周壁80bに加えて、周壁80bによって画定される開口OP1を有する。また、第2インナパネル12も、底壁12aと、底壁12aからの延びる周壁12bと、を有し、周壁12bは、開口OP1の一部を画定する。第1基板60は、開口OP1から第2インナパネル12及びアウタケース80内に収容されるので、その収容される方向(ここではY軸方向)が第1面60a及び第2面60bと略平行である。言い換えれば、第1基板60は、第1面60a及び第2面60bが、開口OP1の向き(ここではY軸方向)と略平行である。このため、仮に第1放熱部材62が第1基板60の第1面60aに配置された場合、第1基板60を第2インナパネル12及びアウタケース80内に収容するとき、第1放熱部材62が第2インナパネル12の周壁12bと干渉して、香味吸引器100の組み上げを阻害する恐れがある。
【0042】
これに対して、本実施形態では
図3及び
図4に示すように、第1放熱部材62は、第1基板60の第2面60bの電子素子61に対応する部分と、第2基板64とによって挟み込まれる。これにより、第1基板60の電子素子61の熱を、第1放熱部材62を介して第1基板60の第2面60bと対向する第2基板64に伝達(放熱)することができるので、第1基板60に生じる局所的な熱を分散しながら第2基板64に伝達できる。これに加えて、第1放熱部材62は、第2基板64と第1基板60とに挟み込まれるので、第1基板60、第1放熱部材62、及び第2基板64を筐体に収容する際に、第1放熱部材62が筐体に接触して香味吸引器100の組み上げを阻害することが抑制され得る。なお、本明細書において、「第1基板60の第2面60bの電子素子61に対応する部分」とは、第1面60aに電子素子61が設けられる場合は電子素子61の反対側の第2面60bの部分であり、第2面60bに電子素子61が設けられる場合は、電子素子61が位置する部分をいう。
【0043】
電子素子61は、バッテリ21への充電を制御するための充電ICであることが好ましい。この場合、第1放熱部材62により、充電ICから第2基板64に対して放熱できるので、従来よりも充電時間を短縮するためにバッテリ21に供給する電流値を上げても、充電ICが高温になることを抑制できる。
【0044】
また、
図3及び
図4に示すように、第2基板64は、第1基板60の第2面60bと対向する面64aを有することが好ましい。第1基板60の第2面60bと、第2基板64の面64aとで第1放熱部材62を挟み込むことにより、第1基板60に生じる局所的な熱を分散しながら第2基板64の面64aに対して伝達できるので、第2基板64が局所的に高温になることが抑制され得る。
【0045】
第1放熱部材62は、シリコーンを含む放熱パッドであることが好ましい。このようなシリコーンを含む放熱パッドは、圧縮するように放熱対象物に接触させることで効率よく熱伝達(放熱)することができる。このため、第1放熱部材62は、第1基板60の第2面60bと第2基板64とによって圧縮されることが好ましい。これにより、第1基板60から第2基板64に第1放熱部材62を介して効率よく放熱できる。第1放熱部材62は、可撓性を有することが好ましい。これにより、第1放熱部材を放熱対象物に密着するように貼り付けることができるので、放熱対象物を効率よく放熱できる。また、第1放熱部材62は、弾性を有することが好ましい。これにより、第1放熱部材62を第1基板60の第2面60bと第2基板64とで適切に圧縮することができるので、放熱対象物を効率よく放熱できる。
【0046】
図3及び
図4に示すように、電子素子61は、第1基板60の第1面60aに配置されることが好ましい。この場合、電子素子61の熱が第1基板60の第1面60aから第2面60bに伝達されるときに、第1基板60において面内方向に分散されるので、局所的に発生する電子素子61の熱を第1基板60が分散しながら第1放熱部材62に伝達することができる。
【0047】
バッテリ21の充電時間を短縮するためにバッテリ21に供給する電流値を上げると、バッテリ21も従来よりも高温に発熱する。このため、
図4に示すように、香味吸引器100は、バッテリ21の表面と筐体(第2インナパネル12)の内面とによって挟み込まれる第2放熱部材66を有することが好ましい。これにより、バッテリ21の熱を、第2放熱部材66を介して筐体に伝達(放熱)することができる。なお、バッテリ21は、局所的ではなく全体的に発熱するので、熱容量が比較的大きい筐体に放熱することが好ましい。
【0048】
より具体的には、第2放熱部材66は、バッテリ21の表面と、第2インナパネル12の底壁12aの内面とによって挟み込まれることが好ましい。これにより、開口OP1を通じてバッテリ21をアウタケース80に収容することにより、第2放熱部材66をバッテリ21の表面と底壁12aの内面とで挟み込むことができる。したがって、第2放熱部材66が香味吸引器100の組み上げを阻害することが抑制され得る。なお、底壁12aと第2放熱部材66との間には任意の部材が配置されていてもよい。
【0049】
第2放熱部材66は、例えば第1放熱部材62と同様に、シリコーンを含む放熱パッドであることが好ましい。第1放熱部材62と同様に、第2放熱部材66は、バッテリ21の表面と筐体(第2インナパネル12)の内面とによって圧縮されることが好ましい。これにより、バッテリ21から筐体に第2放熱部材66を介して効率よく放熱できる。第2放熱部材66は、可撓性を有することが好ましい。これにより、
図4に示すように、第2放熱部材66を放熱対象物(バッテリ21)に密着するように貼り付けることができるので、放熱対象物を効率よく放熱できる。また、第2放熱部材66は、弾性を有することが好ましい。これにより、第2放熱部材66をバッテリ21の表面と筐体(第2インナパネル12)の内面とで適切に圧縮することができるので、放熱対象物を効率よく放熱できる。
【0050】
本実施形態では、香味吸引器100がインナパネル10を備えるものとして説明したが、インナパネル10を備えなくてもよい。その場合、第2放熱部材66は、バッテリ21の表面とアウタケース80の底壁80aの内面とによって挟み込まれ得る。
【0051】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、加熱部40は、抵抗加熱型に限らず、誘導加熱型であってもよい。その場合、加熱部40は、誘導加熱によってチャンバ50を加熱することができる。また、消費材110がサセプタを有する場合には、加熱部40が誘導加熱によって消費材110のサセプタを加熱することができる。さらに、加熱部40は、消費材110を内部から加熱する内部加熱式のヒータを有してもよい。消費材110は、液体を収容したタンクであってもよい。この場合、加熱部40は、タンク内の液体を霧化するように構成され得る。
【符号の説明】
【0052】
10 :インナパネル
11 :第1インナパネル
12 :第2インナパネル
12a :底壁
12b :周壁
21 :バッテリ
60 :第1基板
60a :第1面
60b :第2面
61 :電子素子
62 :第1放熱部材
64 :第2基板
64a :面
66 :第2放熱部材
70 :アウタパネル
80 :アウタケース
80a :底壁
80b :周壁
100 :香味吸引器
101 :アウタハウジング
111 :喫煙可能物
OP1 :開口