(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】モーターステーターの冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
H02K1/20 C
(21)【出願番号】P 2024004540
(22)【出願日】2024-01-16
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519209037
【氏名又は名称】富田電機股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】張金鋒
(72)【発明者】
【氏名】朱智盟
(72)【発明者】
【氏名】張辰輝
(72)【発明者】
【氏名】陳建勲
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114552851(CN,A)
【文献】中国実用新案第215072020(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0097499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク部及び前記ヨーク部から内側に向けて延伸されている複数のコア歯部を有するステーターコアであって、前記コア歯部のそれぞれは前記ステーターコアの軸方向に沿って延伸されている冷却液流路を有しているステーターコアと、
前記ステーターコアの両端部にそれぞれ貼着されている2つのオイルスプレーリングであって、前記オイルスプレーリングのそれぞれはこれら前記コア歯部に対応する複数の歯部を有し、前記オイルスプレーリングのそれぞれは前記複数の歯部に間隔を置いて設けられている複数のオイル出口穴を有し、前記オイルスプレーリングのそれぞれの外周面には間隔を置いて設けられている複数の凸部を有し、隣接する2つの凸部の間にはガイド溝が形成され、2つの前記オイルスプレーリングが交錯して設置されることでステーターコアの両端部に位置している
一方の前記オイルスプレーリングの前記オイル出口穴
と他方の前記オイルスプレーリングの前記オイル出口穴とが互いに交錯する2つのオイルスプレーリングと、を備えていることを特徴とするモーターステーターの冷却構造。
【請求項2】
前記オイルスプレーリングのそれぞれのこれら前記オイル出口穴及びこれら前記ガイド溝は交錯して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモーターステーターの冷却構造。
【請求項3】
前記ステーターコアのこれら前記コア歯部に周設されているコイルを更に有していることを特徴とする請求項1に記載のモーターステーターの冷却構造。
【請求項4】
2つの前記オイルスプレーリングの外側にそれぞれ設置されている2つのエンドキャップを更に有し、2つの前記エンドキャップの外周面には給油部及びオイル排出部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモーターステーターの冷却構造。
【請求項5】
2つの前記オイルスプレーリングは、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド66(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のモーターステーターの冷却構造。
【請求項6】
2つの前記エンドキャップは、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6-6(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されていることを特徴とする請求項4に記載のモーターステーターの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーターステーターの冷却構造(A motor stator cooling structure)に関し、より詳しくは、モーターステーターの動作時に十分冷却する冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーターの動作過程において発散される熱エネルギーがモーターを昇温させるため、冷却構造を設置してモーターの温度を低下させ、モーターの温度が高くなり過ぎて構造が損壊する状況を防止する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のモーターの放熱方式の多くは冷却液流路を設置し、冷却液をモーターのコイルに噴霧することで冷却効果を達成していた。多くの冷却液流路は一方向性の流路であるため、モーターの両端及び中間部の温度を均一に降温させることができず、中間部の温度が高くなるか、一側の温度が高くなる状況に陥った。
【0004】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モーターステーターの冷却構造を提供し、特に、モーターステーターの動作時に十分冷却する冷却構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のモーターステーターの冷却構造は、ヨーク部及び前記ヨーク部から内側に向けて延伸されている複数のコア歯部を有するステーターコアであって、前記コア歯部のそれぞれは前記ステーターコアの軸方向に沿って延伸されている複数の冷却液流路を有しているステーターコアと、前記ステーターコアの両端部にそれぞれ貼着されている2つのオイルスプレーリングと、を備えている。前記オイルスプレーリングのそれぞれはこれら前記コア歯部に対応する複数の歯部を有し、前記オイルスプレーリングのそれぞれは前記複数の歯部に間隔を置いて設けられている複数のオイル出口穴を有し、前記オイルスプレーリングのそれぞれの外周面には間隔を置いて設けられている複数の凸部を有し、隣接する2つの凸部の間にはガイド溝が形成されている。2つの前記オイルスプレーリングが交錯して設置されることで、ステーターコアの両端部に位置している一方の前記オイルスプレーリングの前記オイル出口穴と他方の前記オイルスプレーリングの前記オイル出口穴とが互いに交錯する。
【0007】
好ましくは、前記オイルスプレーリングのそれぞれのこれら前記オイル出口穴及びこれら前記ガイド溝は交錯して設けられている。
【0008】
好ましくは、前記ステーターコアのこれら前記コア歯部に周設されているコイルを更に有している。
【0009】
好ましくは、2つの前記オイルスプレーリングの外側にそれぞれ設置されている2つのエンドキャップを更に有し、2つの前記エンドキャップの外周面には給油部及びオイル排出部が設けられている。
【0010】
好ましくは、2つの前記オイルスプレーリングは、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド66(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されている。
【0011】
好ましくは、2つの前記エンドキャップは、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6-6(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係るモーターステーターの冷却構造を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るモーターステーターの冷却構造を示す概略分解図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るモーターステーターの冷却構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0014】
理解を容易にするため、本発明はステーターコア10の軸方向を左方向または右方向と呼称し、径方向を上方または下方と呼称する。
【0015】
図1乃至
図5を参照しながら、モーターステーターの冷却構造の詳細について説明する。
【0016】
本発明の一実施例に係るモーターステーターの冷却構造は、ステーターコア10と、前記ステーターコア10の両端部にそれぞれ貼着されている2つのオイルスプレーリング21、22と、を備え、前記ステーターコア10は複数のケイ素鋼板が組み合わせられることで形成されている。前記ステーターコア10はヨーク部13及び前記ヨーク部13から内側に向けて延伸されている複数のコア歯部12を有し、前記コア歯部12のそれぞれの内部には前記ステーターコア10の軸方向に沿って延伸されている冷却液流路11が形成され、コイル15は前記ステーターコア10のこれら前記コア歯部12に周設されている。
【0017】
本実施形態において、2つの前記オイルスプレーリング21、22は、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6-6(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC) 、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されている。2つの前記オイルスプレーリング21、22の材質が前記ステーターコア10の材質と異なることで、モーターステーターの絶縁能力を高めている。
【0018】
図3乃至
図5に示す如く、前記オイルスプレーリング21、22のそれぞれはこれら前記コア歯部12に対応する複数の歯部211、221を有し、前記オイルスプレーリング21、22のそれぞれは前記オイルスプレーリング21、22の周方向に沿って前記複数の歯部211、221に間隔を置いて設けられている複数のオイル出口穴21b、22bを有し、前記オイルスプレーリング21、22のそれぞれの外周面には間隔を置いて設けられている複数の凸部21c、22cを有している。隣接する2つの凸部21c、22cの間にはガイド溝21a、22aが形成され、前記ステーターコア10の両端部に位置している2つのオイルスプレーリング21、22が交錯して設置されることで、これら前記オイル出口穴21b、22bが互いに交錯する。すなわち、前記ステーターコア10の両端部に位置しているオイルスプレーリング21、22のガイド溝21a、22aが交錯して設けられていると共に
図4及び
図5に示す状態が形成されている。前記ガイド溝21a、22aは冷却液を冷却液流路11内に導入するために用いられ、間隔を置く凸部21c、22cはガイド溝21a、22aに連通していない冷却液流路11の入口を封鎖するために用いられている。オイルスプレーリング21、22が交錯すると、同じ軸方向上には1つのガイド溝21a、22aのみ有することになり、ステーターコア10が両端から冷却液が交錯して導入される状態が形成される。
【0019】
詳しくは、2つのエンドキャップ31、32は前記オイルスプレーリング21、22のそれぞれの外側にそれぞれ設置され、2つの前記エンドキャップ31、32の外周面には共に給油部31a、32a及びオイル排出部31b、32bが設けられ、前記給油部31a、32a及び前記オイル排出部31b、32bは同じ直径上に位置されている。より詳しくは、冷却液は左端の前記エンドキャップ31の前記給油部31aから導入されると共にオイルスプレーリング21のガイド溝21aに向けて流された後、冷却液はステーターコア10の冷却液流路11に進入し、右端のオイルスプレーリング22のオイル出口穴22bから流出し、右端の前記エンドキャップ32のオイル排出部32bから導出される。すなわち、同じ軸方向上に位置している前記ガイド溝21a及び前記オイル出口穴22bは前記ステーターコア10の冷却液流路11に互いに連通している。また、隣接する冷却液流路11内には、右端の前記エンドキャップ32の前記給油部32aからオイルスプレーリング22のガイド溝22aに向けて流されて進入し、左端のオイルスプレーリング21のオイル出口穴21bから流出し、左端の前記エンドキャップ31のオイル排出部31bから導出される冷却液を有している。2つの前記エンドキャップ31、32は、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド6-6(PA66)、ポリエステル(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、或いはこれら材料のポリマーブレンドを含む高分子絶縁材料により射出成形されている。
【0020】
図4に示す如く、2つの前記オイルスプレーリング21、22が交錯して設置されると、前記ステーターコア10の右端がガイド溝22aとなり、左端がオイル出口穴21bとなる。隣接する冷却液流路11は左端のガイド溝21a(
図5に示す)及び右端のオイル出口穴22bに連通され、冷却液がステーターコア10の両端部から同時に交錯して冷却液流路11に流入すると共にコイル15に均一に噴霧され、流動方向が完全に反対になる冷却回路が形成され、モーターステーターの両側の温度が相互に交換され、モーターステーターの温度分布が改善され、均一に降温する効果を達成し、モーターステーターの一部が高温になる状況を改善している。
【0021】
本発明はステーターコア10とは材質が異なるオイルスプレーリング21、22によりモーターステーターの絶縁能力を改善し、交錯して設置されているオイルスプレーリング21、22により、冷却液がステーターコア10の両端から同時に交錯して軸方向に沿ってステーターコア10の内部に流入すると共にエンドキャップ31、32のオイル排出部31b、32bから径方向に流出し、均一に降温する効果を達成し、モーターステーターの一部が高温になる状況を改善している。
【0022】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0023】
10 ステーターコア
11 冷却液流路
12 コア歯部
13 ヨーク部
15 コイル
21 オイルスプレーリング
21a ガイド溝
21b オイル出口穴
21c 凸部
211 歯部
22 オイルスプレーリング
22a ガイド溝
22b オイル出口穴
22c 凸部
221 歯部
31 エンドキャップ
31a 給油部
31b オイル排出部
32 エンドキャップ
32a 給油部
32b オイル排出部
【要約】
【課題】モーターステーターの冷却構造を提供する。
【解決手段】ステーターコアと、前記ステーターコアの両端部にそれぞれ貼着されている2つのオイルスプレーリングと、を備え、前記ステーターコアはヨーク部及び前記ヨーク部から内側に向けて延伸されている複数のコア歯部を有している。前記コア歯部のそれぞれの内部には前記ステーターコアの軸方向に沿って延伸されている冷却液流路が形成され、前記オイルスプレーリングのそれぞれには交錯するオイル出口穴及びガイド溝が設けられている。2つの前記オイルスプレーリングが交錯して設置されることでステーターコアの両端部に位置しているオイル出口穴が互いに交錯している。こうすることで、冷却液がステーターコアの両端から同時に交錯して軸方向に沿ってステーターコアの内部に流入し、均一に降温する効果を達成し、モーターステーターの一部が高温になる状況を改善している。
【選択図】
図2