(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-18
(45)【発行日】2025-02-27
(54)【発明の名称】スタンプを形成するスエージ工具及びそれに関連するスタンピング方法
(51)【国際特許分類】
B21J 5/02 20060101AFI20250219BHJP
【FI】
B21J5/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010110
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-01-26
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508289992
【氏名又は名称】メコ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ボナンファン
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン・ウィルマン
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ティリ
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-054843(JP,A)
【文献】特開昭63-130238(JP,A)
【文献】特開昭63-119943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/00 - 5/12
B21J 13/00 ー 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ブランクのためのスタンプを形成するスエージ工具(1)であって、
下側ユニット(2)と上側ユニット(4)を備え、
前記下側ユニットは、前記金属ブランク(12)を受けるように意図されたハウジング(10)を形成することができるように構成しており、
前記上側ユニットには、前記下側ユニット(2)の前記ハウジング(10)における適切な位置において前記金属ブランクに対してスエージを行うように意図されている上側ダイ(26)があり、
前記上側ダイ(26)は、運動軸(B-B')に沿って可動に取り付けられ、
前記下側ユニット(2)には、前記運動軸(B-B')に垂直な平面において、開位置と閉位置の間を運動可能に取り付けられた2つのアーム(16A2、16B2)によって形成されるプライヤー(14)があり、
前記開位置においては、前記プライヤーの2つのアームが離間しており、これら2つのアームの間に金属ブランクを配置することができ、前記閉位置においては、前記プライヤーの2つのアーム(16A2、16B2)が近くにされており、前記運動軸(B-B')に沿って、開口(18)によって分離される前記ハウジング(10)の上側領域と下側領域を定め、
前記開口(18)の寸法は、前記ハウジングの前記下側領域の対応する寸法及び前記上側領域の対応する寸法よりも小さく、
前記閉位置にある2つのアームは、少なくとも前記ハウジングの前記上側領域において、前記金属ブランクのための下側ダイを形成する
ことを特徴とするスエージ工具(1)。
【請求項2】
前記上側ダイ(26)が前記ハウジング(10)における適切な位置において前記金属ブランクに対してスエージを行う前に、前記プライヤー(14)の前記2つのアーム(16A2、16B2)を前記閉位置まで互いに近づけるように構成しているアクチュエーター(6)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスエージ工具(1)。
【請求項3】
前記上側ユニット(4)は、前記下側ユニット(2)に対して、前記運動軸(B-B')に沿って運動可能に取り付けられ、
前記上側ユニット(4)は、前記アクチュエーターを備える
ことを特徴とする請求項2に記載のスエージ工具(1)。
【請求項4】
前記アクチュエーターは、第1のアクチュエーター(6)であり、
前記下側ユニット(2)は、前記第1のアクチュエーターが前記プライヤーに作用していないときに前記プライヤー(14)の前記2つのアーム(16A2、16B2)を開くことができるように構成している第2のアクチュエーター(8)を備え、
これによって、前記第1のアクチュエーターがアクチュエートされていない間に、これら2つのアームを前記開位置に保持する
ことを特徴とする請求項3に記載のスエージ工具(1)。
【請求項5】
前記プライヤー(14)には、2つのアーム(16A2、16B2)と2つのシャンク(16A1、16B1)によってヒンジ接続されて形成される2つのブランチ(16A、16B)があり、
前記2つのブランチは、前記2つのブランチどうしは交差せずに、2つのアームと2つのシャンクとの間に位置する連結部(20)においてヒンジ接続され、
前記2つのシャンクにはそれぞれ、上側にフレアゾーン(22A、22B)が形成され、
前記フレアゾーン(22A、22B)の後に、底側に円筒状ゾーン(24A、24B)が続き、
前記プライヤー(14)の2つの前記フレアゾーンと2つの前記円筒状ゾーンは、互いに向き合うように配置され、
前記第1のアクチュエーター(6)は、前記上側ユニット(4)が前記下側ユニット(2)に近づいたときに、まず、前記プライヤー(14)の2つの前記フレアゾーンを押すことができるように構成している形状であり、
このときに、2つの前記シャンク(16A1、16B1)を離して、前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)を近づけて、閉位置まで動かし、
これによって、前記金属ブランク(12)を受けるためのハウジング(10)の前記上側領域と前記下側領域を定め、その後に、2つの前記アームを閉位置に保持しつつ、前記プライヤー(14)の2つの前記円筒状ゾーン(24A、24B)の間の移動を終了する
ことを特徴とする請求項4に記載のスエージ工具(1)。
【請求項6】
前記下側ユニット(2)に対する前記上側ユニット(4)の運動のトラベル、そして、前記第1のアクチュエーター(6)、前記プライヤー(14)の2つの前記フレアゾーン(22A、22B)及び2つの前記円筒状ゾーン(24A、24B)それぞれの形状は、前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)を互いに近づける運動が、スエージが行われる前に、これら2つのアームが閉位置に到達して前記ハウジングの
前記上側領域と前記下側領域を形成するように、前記上側ユニットの運動のトラベルと同期される
ことを特徴とする請求項5に記載のスエージ工具(1)。
【請求項7】
前記上側ダイ(26)の1つの部分(30)は、2つの前記アーム(16A2、16B2)の閉位置において、2つの前記アーム(16A2、16B2)の上側部分(27A、27B)において摺動することができるように構成しており、
この上側部分(27A、27B)は、前記ハウジング(10)の前記上側領域の上方において延在している
ことを特徴とする請求項6に記載のスエージ工具。
【請求項8】
前記下側ユニット(2)には、さらに、前記金属ブランク(12)を支持し少なくとも初期において前記金属ブランクを軸方向にポジショニングすることができるように構成している支持ロッド(17)があり、
この支持ロッドは、前記運動軸(B-B')に沿って運動可能に取り付けられ、
これによって、前記金属ブランク(12)に対する前記上側ダイ(26)によるスエージの後で、スエージされた金属ブランクからなる最終部品(11)を前記下側ユニット(2)から排出できるようにする
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスエージ工具。
【請求項9】
前記下側ユニット(2)には、さらに、前記金属ブランク(12)を角度的にポジショニングすること及び/又は前記金属ブランク(12)を半径方向に保持することのためのガイド(19)を含む
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスエージ工具。
【請求項10】
前記上側ダイ(26)は、前記金属ブランク(12)に対して前記上側ダイ(26)によるスエージを行うときに、前記金属ブランク(12)の上部主面(15)に、レリーフパターン(38)、特にロゴ、を形成し、前記上部主面(15)の最終的な形状を定めることができるように構成している
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のスエージ工具。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスエージ工具(1)を用いて金属ブランクのスタンプを作るスタンピング方法であって、
前記プライヤー(14)は、初期には、前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)どうしが離れている開位置にあり、
前記方法は、
上側部分(12A)と下側部分(12C)がある金属ブランク(12)を用意するステップと、
前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)の間に前記金属ブランク(12)を配置するステップと、
その後に、前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)を、前記プライヤー(14)の閉位置まで近づけて、前記金属ブランク(12)を受けるための前記ハウジング(10)の上側領域と下側領域と、これらの上側領域と下側領域の間の前記開口(18)とを定めるステップであって、このときに、前記金属ブランク(12)の上側部分(12A)と下側部分(12C)が、前記運動軸(B-B')に沿って前記開口(18)の両側にそれぞれ位置し、したがって、それぞれ前記上側領域と前記下側領域に配置される、ステップと、
前記上側ユニットを前記運動軸(B-B')に沿って前記下側ユニットの方へと動かし、前記金属ブランク(12)に対して前記上側ダイ(26)によるスエージを行うステップと、
前記プライヤーの2つの前記アームを離して、前記プライヤー(14)の開位置にするステップと、
前記下側ユニット(2)から、前記金属ブランクに対してスエージを行った後に得られた最終部品(11)を排出するステップとを備える
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記金属ブランク(12)に対して前記上側ダイ(26)によるスエージを行う前記ステップは、前記プライヤー(14)の2つの前記アーム(16A2、16B2)を閉じることと同期して、
前記プライヤーの2つの前記アームは、前記上側ユニットが前記運動軸(B-B')に沿った運動を開始した後であってスエージを行う前に、前記ハウジング(10)の前記上側領域と前記下側領域を定める、閉位置に到達するようにする
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10に記載のスエージ工具を用い、
前記金属ブランク(12)に対して前記上側ダイ(26)によるスエージを行う前記ステップ中に、前記金属ブランク(12)の上部主面(15)にレリーフパターン(38)、特にロゴ、を形成し、
このスタンピング方法によって得られた最終部品の前記上部主面の最終形状は、このスエージ中に定められる
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記金属ブランク(12)は、計時器用リュウズのブランクであり、
前記金属ブランク(12)の前記上側部分(12A)は、リュウズ頭部を形成するように意図されている
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属ブランク(12)は、計時器用リュウズのブランクであり、
前記金属ブランク(12)の前記上側部分(12A)は、リュウズ頭部を形成するように意図されている
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属ブランク(12)には、前記金属ブランク(12)の前記下側部分(12C)と前記上側部分(12A)を分離する中間部分(12B)があり、
前記金属ブランクの前記下側部分は、複数の縦方向の縦溝(13)がある縦溝部分を形成し、
前記縦溝(13)は、前記金属ブランクの外周にて形成され、スエージの前に機械加工して形成され、
前記中間部分(12B)には、前記金属ブランク(12)の外周において溝が形成される
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ブランク(ebauche)に対してスエージしてこのブランクを塑性変形させるように意図された、スタンプとしても知られているスエージ工具の分野に関する。
【0002】
したがって、本発明は、スタンプを形成する前記のようなスエージ工具、及びそれに関連するスタンピング方法に関する。本発明は、例えば、具体的には、計時器用リュウズ頭部、特に携行型時計(例、腕時計、懐中時計)のワインディング用リュウズ頭部、の上部主面に、レリーフパターン、特にロゴ、を形成するように意図されている。
【背景技術】
【0003】
工業的なスタンピングは、油圧式プレス、機械式プレス、ねじ込み式プレス、又は鍛造ハンマーを用いる「ダイ」を利用して、金属の物体を(元の形状に戻らないように)塑性変形させることを伴う。これらを全体的にスエージ工具(スタンプとも呼ばれる)を形成する。熱間又は周囲温度において行われるこの鍛造プロセスは、いくつかの操作で実行することができる。最初の操作は「ブランク」と呼ばれ、最後の操作は「仕上げ」と呼ばれる。ブランクのおかげで、金属を行き渡らせることができ、この金属は、ほとんどの場合に円筒状や平行直方体の形から開始して、仕上げに近い形になる。最後のブランクは、仕上がりに対して、最大で数ミリメートルの分、鉛直方向の寸法が大きく、水平方向の寸法が小さく、これによって、像の壁における摩擦に起因するエネルギーの損失なしでの鍛造が可能になる。ブランクは通常、仕上がりよりも角が丸まっている。実際に、鍛造においては、角を埋めることが最も難しい。
【0004】
スタンピングの主な利点は、鋼の内部構造が成形され、最終部品の材料の性質を高め、優れた機械的性質をもたらすことである。
【0005】
スタンプは通常、下側ユニットと上側ユニットの2つのユニットによって構成している。これらはそれぞれ、下側ダイと上側ダイ(下側半ダイと上側半ダイも含む用語として用いている)を含む。下側ダイは固定部品であり、上側ダイは、一般的には、可動な落し槌であり、これは、部品にスタンピングして部品を変形させる。
【0006】
仕上げによって、材料の変形が完了する。結果物には、粗い部品とバリが含まれる。後者のバリは、部品のいたるところにある余分な材料であり、これによって、像が正しく充填されることが確実になる。その後に、トリミングという鍛造プロセスによって、粗い部品からバリが分離される。
【0007】
しかし、このようなトリミング操作は、面倒であり、時間がかかり、部品全体の形成プロセスの全体的なコストを大きくしてしまう。部品を仕上げる追加のステップは、面倒であり、最終部品に特定の角が形成されること(例えば、数回の繰り返しによる)、部品の外形を修正する必要性、アンダーカットの形成などを伴うこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の下で、本発明は、最終部品を容易に形成することができ、バリを除去する必要性や部品の外形を修正する必要性がほとんど又は実質的にまったくなく、部品の仕上げが単純で低コストであるような、低コストなスタンピング方法を実行するための(スタンプを形成する)スエージ工具を提供することによって、従来技術の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、金属ブランクのためのスタンプを形成するスエージ工具に関し、下側ユニットと上側ユニットを備え、前記下側ユニットは、前記金属ブランクを受けるように意図されたハウジングを形成することができるように構成しており、前記上側ユニットには、前記下側ユニットの前記ハウジングにおける適切な位置において前記金属ブランクに対してスタンピングを行うように意図されている上側ダイがあり、前記上側ダイは、運動軸に沿って可動に取り付けられる。前記下側ユニットには、前記運動軸に垂直な平面において、開位置と閉位置の間を運動可能に取り付けられた2つのアームによって形成されるプライヤーがあり、前記開位置においては、前記プライヤーの2つのアームが離間しており、これら2つのアームの間に金属ブランクを配置することができ、前記閉位置においては、前記プライヤーの2つのアームが近くにされており、前記運動軸に沿って、開口によって分離される前記ハウジングの上側領域と下側領域を定め、前記開口の寸法は、前記ハウジングの前記下側領域の対応する寸法及び前記上側領域の対応する寸法よりも小さく、前記閉位置にある2つのアームは、少なくとも前記ハウジングの前記上側領域において、前記金属ブランクのための下側ダイを形成する。
【0010】
このように構成している前記プライヤーの存在のおかげで、本発明に係るスエージ工具は、その実質的に最終的な形状を、特にその縁に溝がある、金属ブランクに与えることを可能にし、このスエージは、バリを除去する必要性がほとんど又は実質的にまったくなく、また、部品の外形を修正する必要性がない。実際に、プライヤーの2つのアームが、金属ブランクを受けるためのハウジングの一部とそれらの間の開口を形成するおかげで、それらの寸法は、金属ブランクの上側部分と下側部分の対応する寸法よりも小さく、金属ブランクに対する上側ダイによるスエージは妨げられず、上側部分の形状の形成は、この下側部分の外面、特に縦溝の面、を劣化させることなく、スエージ工具によって実行することができる。したがって、最終的な部品は、スタンピングされた後には、可能性として、プロセスの最後において、再び空にするわずかな動作と研磨しか必要でない(しかし、部品の外形の修正は必要ではない)。特に、上側部分と下側部分を分離する溝を金属ブランクの外周に形成することができ、この溝の上壁は、必要に応じて、スエージによって完成される。
【0011】
本発明の有利な実施形態の1つにおいて、前記ハウジングの前記上側部分を定める2つの前記アームの対応する部分は、金属ブランクのための下側ダイを形成する。したがって、このような下側ダイは、金属ブランクに最終形状を部分的に与えることを可能にする。この実施形態において、前記金属ブランクは、実際に、前記ハウジングの前記上側部分に位置する金属ブランクの部分に対して、最終形状と同じ初期形状を有さず、金属ブランクに対する上側ダイによるスエージは、したがって、上側ダイによるブランクは、ブランクの上側部分(頭部としても知られている)、特に、空欠中間部分の少なくとも1つの上側部分の変形、を誘発させる。なお、「金属ブランクを受けるためのハウジング」という用語は、金属ブランクの初期形状と同じ形状であるものと理解するものではなく、スエージ後に得られる部品の最終的な形状を少なくとも部分的に定める、この金属ブランクを受けるための画定された空間として理解することができる。
【0012】
前記スエージ工具は、さらに、スエージの前にプライヤーのアームを閉じるように構成しているアクチュエーターを備える。
【0013】
本発明の特定の技術的特徴によると、前記上側ユニットは、前記運動軸に沿って前記下側ユニットに対して運動可能に取り付けられ、好ましくは、前記アクチュエーターは、前記上側ユニットに取り付けられ、前記プライヤーの前記アームどうしをそれらの閉位置まで近づけるように構成している。
【0014】
好ましくは、前記上側ユニットに取り付けられた前記アクチュエーターは、第1のアクチュエーターであり、前記下側ユニットは、前記プライヤーの2つのシャンクを接続するばね、特にまっすぐな伸びばね、によって形成される第2のアクチュエーターを備える。
【0015】
本発明の有利な技術的特徴によると、前記下側ユニットに対する前記上側ユニットの運動のトラベル、そして、前記第1のアクチュエーター、前記プライヤーのフレアゾーン及び円筒状ゾーンそれぞれの形状は、前記金属ブランクを部分的に受けるように意図された前記プライヤーの2つの前記アームを互いに近づける運動が、スエージが行われる前に、これら2つのアームが閉位置に到達して前記ハウジングの前記部分を形成するように、前記金属ブランクに対する前記上側ユニットによるスエージと同期される。
【0016】
特定の特徴によると、前記プライヤーには、2つのアームと2つのシャンクによってヒンジ接続されて形成される2つのブランチがあり、前記2つのブランチは、前記2つのブランチどうしは交差せずに、2つのアームと2つのシャンクとの間に位置する連結部においてヒンジ接続され、前記2つのシャンクにはそれぞれ、上側にフレアゾーンが形成され、前記フレアゾーンの後に、底側に円筒状ゾーンが続き、前記プライヤーの2つの前記フレアゾーンと2つの前記円筒状ゾーンは、互いに向き合うように配置される。前記第1のアクチュエーターは、前記上側ユニットが前記下側ユニットに近づいたときに、まず、前記プライヤーの2つの前記フレアゾーンを押すことができるように構成している形状であり、このときに、2つの前記シャンクを離して、前記プライヤーの2つの前記アームを近づけて、閉位置まで動かし、これによって、前記金属ブランクを受けるためのハウジングの前記部分を定め、その後に、2つの前記アームを閉位置に保持しつつ、前記プライヤーの2つの前記円筒状ゾーンの間の移動を終了する。
【0017】
本発明の別の態様は、前記スエージ工具を用いるスタンピング方法に関し、前記プライヤーは、初期には、前記プライヤーの2つの前記アームどうしが離れている開位置にあり、前記方法は、
上側部分と下側部分がある金属ブランクを用意するステップと、
前記プライヤーの2つの前記アームの間に前記金属ブランクを配置するステップと、
その後に、前記プライヤーの2つの前記アームを、前記プライヤーの閉位置まで近づけて、前記金属ブランクを受けるための前記ハウジングの部分を形成するステップであって、この金属ブランクの上側部分と下側部分が、前記運動軸に沿って2つの前記アームの間に形成された、前記開口の両側にそれぞれ位置する、ステップと、
前記上側ユニットを前記運動軸に沿って前記下側ユニットの方へと動かし、前記金属ブランクに対して前記上側ダイによるスエージを行うステップと、
前記プライヤーの2つの前記アームを離して、前記プライヤーの開位置にするステップと、
前記下側ユニットから、前記金属ブランクに対してスエージを行った後に得られた最終部品を排出するステップとを備える。
【0018】
このようなスタンピング方法は、従来技術のプロセスと比べて単純化されており、ほとんど又は実質的にまったくバリを除去することや最終部品の外形を修正することを必要としないために、時間を節約することに貢献し、この最終部品には、その外周に溝があり、随意的に、この溝の下に、縦溝付きの下側部分がある。最終的な部品は、スタンピングされた後には、可能性として、プロセスの最後において、再び空にするわずかな動作と研磨しか必要でない(しかし、部品の外形の修正は必要ではない)。
【0019】
好ましくは、このスタンピング方法は周囲温度で行われる。
【0020】
本発明の有利な技術的特徴によると、前記金属ブランクに対して前記上側ダイによるスエージを行う前記ステップは、前記プライヤーの2つの前記アームを閉じることと同期して、したがって、少なくとも部分的に同時に行われ、前記プライヤーの2つの前記アームは、前記上側ユニットが前記運動軸に沿った運動を開始した後であってスエージを行う前に、前記ハウジングの前記上側領域と前記下側領域を定める、閉位置に到達するようにする。この有利な変異形態は、好ましい。しかし、別の変異形態において、プライヤーを閉じること、すなわち、その2つのアームを閉じることは、スエージステップの前に行うことができる。すなわち、上側ユニットがブランクの方へと連続的に動いてこのブランクのスエージが行われる前に行うことができる。
【0021】
本発明の1つの実施形態の例によると、前記金属ブランクに対して前記上側ダイによるスエージを行う前記ステップ中に、前記金属ブランクの頭部の上部主面にレリーフパターン、特にロゴ、を形成し、この頭部の前記上部主面の最終形状は、前記スエージ中に定められる。
【0022】
好ましくは、前記金属ブランクは、計時器用リュウズのブランクであり、前記金属ブランクの前記上側部分は、リュウズ頭部のブランクを形成する。
【0023】
特定の実施形態において、前記金属ブランクは、全体的に、回転対称性を有する円筒状であり、前記金属ブランクの前記上側部分は、実質的に円形のブランクの頭部を形成し、前記上側部分の半径は、回転軸を中心とする、前記金属ブランクの縦溝付き下側部分の各縦溝の底によって定められる半径よりも小さい。これによって、前記金属ブランクの頭部を劣化させることなく、特にリニアミリング又はドローイングによって、金属ブランクの下側部分において縦溝を容易に形成し、最終部品の頭部にスタンピングによって最終形状を与えることができる。
【0024】
本発明に係るスエージ工具を用いた、このスタンピング方法によって有利に得られた部品の1つは、計時器用リュウズであり、前記金属ブランクは、計時器用リュウズのブランクであり、前記金属ブランクの前記上側部分は、リュウズ頭部を形成する。
【0025】
有利なことに、前記金属ブランクには、前記金属ブランクの下側部分と上側部分を分離する空欠中間部分があり、前記金属ブランクの下側部分には、前記金属ブランクの周部に延在している複数の縦溝がある縦溝付き部分が形成され、前記中間部分には、前記金属ブランクの周部に溝が形成される。
【0026】
特に、前記溝は、前記上側ユニットの運動軸を中心とする、傾斜した「V」字形の横断方向の輪郭を有する。前記溝の下面、特に、水平面に対する角度は、前記金属ブランクの機械加工中に実質的に決まり、前記金属ブランクの前記上側部分の側面にある「V」字における上面は、前記金属ブランクに対する上側ダイによるスエージ中に、最終的に定められる。
【0027】
この文書において、「水平方向」、「鉛直方向」又は「横断方向」、「下側」、「上側」、「上部」、「下部」、「側(側面)」という用語は、本発明に係るスエージ工具の向きに対して定められている。特に、この出願において、「鉛直方向」という用語は、スエージ工具の上側ユニットの運動軸に沿った方向を示しており、「水平方向」という用語は、この運動軸に垂直な方向又は平面を示している。
【0028】
図面に描かれている様々な実施形態についての以下の説明を読むことによって、本発明に係るスエージ工具及びそれに関連するスタンピング方法の目的、利点及び特徴が一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスエージ工具の斜視図であり、このスエージ工具は、2つのアームがあるプライヤーを備え、これらのアームは、プライヤーの開位置とプライヤーの閉位置の間で運動可能に取り付けられている。
【
図3】
図1のスエージ工具を側方から見た図である。
【
図4】
図1のスエージ工具を正面から見た図であり、このスエージ工具には、上側ダイがある上側ユニットと、金属ブランクを受けるように意図された下側ユニットとがある。
【
図5】プライヤーが開位置にある、
図3のスエージ工具の鉛直方向の断面V-Vに沿った断面図である。
【
図6】
図5のスエージ工具の一実施形態の詳細を示している拡大図である。
【
図7】プライヤーが開位置にある、
図4のスエージ工具の鉛直方向の断面VII-VIIに沿った断面図である。
【
図8】
図5のスエージ工具の水平方向の断面VIII-VIIIに沿った断面図であり、このスエージ工具は、第1のアクチュエーター及び第2のアクチュエーターを備える。
【
図9】プライヤーが閉位置にある、
図3のスエージ工具の鉛直方向の断面V-Vに沿った断面図である。
【
図10】
図9のスエージ工具の一実施形態の詳細を示している拡大図である。
【
図11】プライヤーが閉位置にあり、
図4のスエージ工具の鉛直方向の断面VII-VIIに沿った断面図である。
【
図12】
図9のスエージ工具の水平方向の断面XII-XIIに沿った断面図である。
【
図13】
図1のプライヤーの第1のアームの斜視図である。
【
図14】
図1のプライヤーの第2のアームの斜視図である。
【
図15】
図8の第1のアクチュエーターを下方から見た斜視図である。
【
図16】
図15の第1のアクチュエーターの鉛直方向の断面XVI-XVIに沿った断面図である。
【
図18】
図17の上側ダイの、鉛直方向の断面XVIII-XVIIIに沿った断面図である。
【
図19】
図18の上側ダイの一実施形態の詳細を示している拡大図である。
【
図20】スエージ工具によるスタンピング前の、一実施形態の例による
図4の金属ブランクの斜視図である。
【
図21】
図20の金属ブランクの鉛直方向の断面XXI-XXIに沿った断面図である。
【
図22】一実施形態の例による最終部品を形成する、スエージ工具によるスタンピング後の、
図4の金属ブランクの斜視図である。
【
図23】
図22の最終部品の鉛直方向の断面XXIII-XXIIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1~12には、本発明の特定の実施形態に係る、スタンプを形成するスエージ工具1を示している。このスエージ工具1は、下側ユニット2と、上側ユニット4と、第1のアクチュエーター6と、第2のアクチュエーター8とを備える。
【0031】
図5~12に示しているように、下側ユニット2は、金属ブランク12を受けるハウジング10を形成するように構成している。
図20及び21に、このようなブランク12の例を示している。この特定の例によると、金属ブランク12は、リュウズ頭部を形成する上側部分12Aと、縦溝付き下側部分12Cと、上側部分12Aと下側部分12Cを分離する中間部分12Bとがある計時器用リュウズのブランクである。したがって、ブランク12の下側部分12Cには、いくつかの縦溝13があり、これらの縦溝13は、ブランク12の外周に形成されており、この外周において角度的に等分布している。ブランク12の下側部分12Cは、例えば、事前に中空化された中空シリンダー本体を形成する。ブランク12の中間部分12Bには、ブランク12の外周に溝(「アンダーカット」としても知られている)が形成される。金属ブランク12に事前に形成された溝12Bは、鉛直方向に対して傾斜した、具体的には非対称の「V」字形である、縦方向において空欠部分がある輪郭を有する。
図21に示しているように、ブランク12の縦溝付き下側部分12Cの側面における「V」字の面によって形成される、水平面に対する角度α1は、好ましくは45°未満、例えば32°のオーダー、である。ブランク12の上側部分12Aの側面の「V」字の面によって形成される水平面に対する角度α2は、45°より大きい角度、例えば76°のオーダー、である。ブランクの頭部12Aには、実質的にドーム状の上部主面15があり、この上部主面15の端は、わずかに丸まっている。
【0032】
したがって、
図20及び21に示している特定の例において、金属ブランク12は、回転の対称性を形成する全体的に円筒状の形であり、この金属ブランク12の上側部分12Aの上面15は、実質的に円形の頭部を形成し、ブランク12の回転軸A-A'を中心とする、この上側部分12Aの半径R1は、各縦溝13の奥部によって定められる半径R2よりも小さい。金属ブランク12は、例えば、鋼、典型的にはDIN1.4441鋼、からなる。
【0033】
下側ユニット2には、2つのブランチ16A、16Bがあるプライヤー14がある。また、好ましくは、
図5~7及び9~11に示しているように、下側ユニット2には、金属ブランク12の角度的ポジショニング、及び/又は金属ブランク12のラジアル位置における保持、のための支持ロッド17及び外側ガイド19がある。プライヤー14の2つのブランチ16A、16Bは、
図5~8に示しているプライヤー14の開位置と
図9~12に示しているプライヤーの閉位置の間で水平面内において運動可能に取り付けられる。プライヤー14の開位置において、2つのアーム16A2、16B2どうしは離れており、これによって、これら2つのアーム16A2、16B2の間に金属ブランク12を配置することができる。
図10に示しているように、プライヤー14の閉位置において、2つのアーム16A2、16B2どうしは近づいており、このときに、金属ブランク12を受けるためのハウジング10の上側部分とそれらの2つのアーム16A2、16B2の間に開口18を定める。開口18の寸法は、金属ブランク12が下側ユニット2内に配置されプライヤー14が閉位置にあるときに、鉛直方向に沿ってこの開口18の両側に位置する、金属ブランク12の上側部分12Aと下側部分12Cの対応する寸法よりも小さい。「金属ブランクを受けるためのハウジング」という用語は、ブランク12の初期形状と同じ形状であるものと理解すべきではなく、このブランク12を受けるための画定された空間として理解するべきである。
【0034】
図8、12、13及び14に示している特定の実施形態において、プライヤー14の2つのブランチ16A、16Bにはそれぞれ、シャンク16A1、16B1とアーム16A2、16B2がある。しかし、プライヤーの2つのブランチ16A、16Bは、2つのシャンク16A1、16B1と2つのアーム16A2、16B2の間に位置する連結部20にてヒンジ接続されているが、これらの2つのブランチ16A、16Bは交差していない。
図13及び14に示しているように、プライヤーの各ブランチ16A、16Bそれぞれの第1のシャンク16A1、16B1は、その上面にフレアゾーン22A、22Bをそれぞれ定め、これらのフレアゾーン22A、22Bは、実質的に円筒状のゾーン24A、24B内へと下方に延在している。プライヤー14の各ブランチ16A、16Bそれぞれのアーム16A2、16B2は、アームの空欠部分25A、25Bにおいて、金属ブランク12を受けるためのハウジング10の一部、及び開口18の一部を定める。プライヤー14の2つのフレアゾーン22A、22B、及び2つの円筒状ゾーン24A、24Bは、互いに向き合って配置される。以下において詳細に説明するように、第1のアクチュエーター6は、プライヤーをアクチュエートすることができることに適した形状を有する。プライヤー14の各ブランチ16A、16Bのアーム16A2、16B2の一方に属する各空欠部分25A、25Bには、上側部分27A、27Bと下側部分29A、29Bがあり、後者の下側部分29A、29Bは、(ブランクの最終的な溝又はアンダーカット11Bを部分的に形成するように意図されている)半円形の環状体によって形成されている。アーム16A2、16B2の2つの下側部分29A、29Bは、開口18を画定し、プライヤー14がその閉位置にあるときに、上記の金属ブランク12を受けるためのハウジング10の部分を定める。そして、2つのアーム16A2、16B2の2つの下側部分29A、29Bは、ブランク12のための下側ダイを形成する。
【0035】
支持ロッド17は、鉛直方向に運動可能に取り付けられ、イジェクター21(
図5、7、9及び11に示している)に接続されている。支持ロッド17(これに金属ブランク12が初期に配置される)は、金属ブランク12を配置するための内側ガイドを形成し、金属ブランク12に対してスエージした後に下側ユニット2の金属ブランク12を排出することを可能にするように構成している。
【0036】
下側ユニット2(プライヤー14は別として)は、例えば、硬質金属からなる。プライヤー14は、例えば、工具鋼からなる。
【0037】
上側ユニット4は、上側ダイ26を備え、下側ユニット2に対して鉛直方向の運動軸B-B'に沿って運動可能に取り付けられる。このために、上側ユニット4は、例えば、上側ユニット4の鉛直方向の並進運動を可能にする、2つの鉛直方向のボールケージ31(
図1、2、4、5及び9に示している)を介して下側ユニット2に取り付けられる。したがって、上側ユニット4に堅固に接続される上側ダイ26は、この鉛直方向の運動軸B-B'に沿って運動可能に取り付けられ、下側ユニット2のハウジング10における適切な位置において金属ブランク12(具体的にはその頭部12A)に対してスエージを行うように構成している。
【0038】
図10及び17~19に示しているように、上側ダイ26は、例えば、実質的に円錐台状の本体28がある落し槌の形態であり、この本体28には、スエージのときにブランクの頭部12Aと接触するように意図されている端部分30がある。端部分30は、環状リム34(ここでは円形)によって境界が定められる空欠内側ダイ32がある。レリーフパターンの像36、特にロゴの像が、例えば、空欠内側ダイ32の奥部に、形成されている。したがって、上側ダイ26は、ブランクの頭部12Aの上部主面15上にレリーフパターン38(
図22に示している)、特にロゴ、を形成するように構成している。また、上側ダイ26は、金属ブランク12に対する上側ダイ26のスエージ中にこの上部主面15の最終的な形状を定めるように構成している。具体的には、
図10に示しているように、上側ダイ26の端部分30は、プライヤー14がその閉位置にあるときに、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2の上側部分27A、27B内において摺動することができるように構成している。そして、上側ダイ26の端部分30は、プライヤー14の2つのアーム16A、16Bによって定められる、金属ブランク12を受けるためのハウジング10の部分の上方へと延在する。環状リム34は、空欠内側ダイ32とともに、その最終形状の一部を金属ブランク12に与える。上側ダイ26は、例えば、工具鋼からなる。
【0039】
第1のアクチュエーター6は、上側ブロック4に取り付けられ、プライヤー14のアーム16A2、16B2を閉じるように構成している。具体的には、
図8、12、15及び16に示しているように、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14のフレアゾーン22A、22B及び実質的に円筒状のゾーン24A、24Bの形状に対して相補的な形状である。第1のアクチュエーター6は、上側ユニット4が下側ユニット2に近づいたときに、第1のアクチュエーター6がプライヤー14のフレアゾーン22A、22Bをまず押すことができるように構成しているような形状を有する。これは、2つのシャンク16A1及び16B1を離間させ、したがって、プライヤーの2つのアーム16A2、16B2を閉位置まで近づけて、金属ブランクを受けるための前記ハウジングの前記部分を形成し、その後に、プライヤー14の2つの円筒状ゾーン24A、24Bの間の移動を終了する。これは、上側ダイ26が想定されたスエージを行うまで、2つのアームを閉位置に保持しつつ行われる。したがって、上側ユニット4が軸B-B'に沿って下側ユニット2の方へと下に動いて上側ダイ26が金属ブランク12に対してスエージを行うときに、第1のアクチュエーター6は、同時に、プライヤー14の2つのシャンク16A1、16B1の上面の方へと下方に動き、フレアゾーンとアクチュエーター6の横断方向の輪郭に起因する半径方向の力のおかげで、2つのシャンクを分離しつつ、フレアゾーン22A、22B内へと徐々に挿入される。そして、アクチュエーターの形状は、2つのアーム16A2及び16B2を閉位置に保持しつつ、スエージ前における上側ユニットの移動の最終段階において、円筒状ゾーン24A、24Bの間をアクチュエーターが自由に摺動することができるようにされる。
図15及び16に示している好ましい実施形態の例において、第1のアクチュエーター6は、連続的な外面40に沿った鉛直方向の断面における第1のアクチュエーターの輪郭に変曲点P1があるような形状を有する。このことのおかげで、2つのアーム16A2、16B2を徐々に閉じることを可能にすることによって、部分的に金属ブランク12を受けるように意図されたプライヤー14の2つの対向するアーム16A2、16B2を閉じる運動が促進される。
【0040】
好ましくは、下側ユニット2に対する上側ユニット4の運動のトラベルと、第1のアクチュエーター6、プライヤー14のフレアゾーン22A、22Bと円筒状ゾーン24A、24Bの各形状は、スエージが行われる前に、金属ブランク12を部分的に受けるように意図されたプライヤー14の2つのアーム16A2、16B2を閉じる運動が、これら2つのアーム16A2、16B2が閉位置まで到達し互いに押し合って金属ブランク12を受けるためのハウジング10の上側部分を形成するように、金属ブランク12に対する上側ダイ26によるスエージと同期するようにされる。このようにして、上側ユニットが軸B-B'に沿って下側ユニット2の方へと下方に動き、上側ダイ26が金属ブランク12に近づくに従って、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14の2つのシャンク16A1、16B1に作用して、スエージの直前に、2つのアーム16A2、16B2を徐々に閉じて、これら2つのアーム16A2、16B2が一方が他方に対向するようにして閉位置まで到達するようにする。したがって、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2を閉じることは、金属ブランク12に対する上側ダイ26によるスエージと同期される。
【0041】
図2、8及び12に示している特定の実施形態において、第2のアクチュエーター8は、プライヤー14の2つのシャンク16A1、16B1を接続しこれら2つのシャンクに弾性戻し力を与えるばねである。このばね8は、典型的には、まっすぐな伸びばねである。
【0042】
以下、
図4~12を参照して、スエージ工具1によって実行される本発明に係るスタンピング方法について説明する。プライヤー14は、初期には
図4~8に示している開位置にあり、この開位置においては、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2どうしは離れている。上側ユニット4は、下側ユニット2と離れている。この結果、上側ダイ26は、金属ブランク12から特定の距離離れており、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14の2つのシャンク16A1、16B1から離れている。
【0043】
このスタンピング方法は、
図8に示している初期ステップを備え、その間には、金属ブランク12がハウジング10の下側部分に配置され、プライヤーは、初期の開位置にある(すなわち、2つのアーム16A2及び16B2は開位置にある)。具体的には、金属ブランク12の(中空の)下側部分12Cは、一方で、外側ガイド19の内側に配置され、他方で、支持ロッド17の端を包囲するように支持ロッド17に接触するように配置される。
図6に示しているように、金属ブランク12の上側部分12Aと中間部分12Bは、外側ガイド19によって形成されるハウジング10の下側部分から突出しており、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2の間に、特に、開口18を形成するように意図されたこれら2つのアームの下側領域に、配置される。
【0044】
このスタンピング方法は、その後に、鉛直方向の軸B-B'に沿って上側ユニット4を下側ユニット2の方へと鉛直方向に動かすステップを備える。その際に、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14のフレアゾーン22A、22B内に徐々に挿入され、したがって、第2のアクチュエーター8によって与えられる弾性戻し力に対抗するように2つのシャンク16A1、16B1に作用して、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2を徐々に閉じる。そして、これらの2つのアームは、プライヤー14の閉位置まで互いに近づき、金属ブランク12を受けるためのハウジング10の上側部分及び上記の開口18を形成する。そして、この状態において、金属ブランク12の上側部分12Aと下側部分12Cは、前記運動軸B-B'に沿って開口18の両側にそれぞれ位置する。プライヤー14が閉位置にあるときに、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14を閉位置に保持しつつ、プライヤー14の円筒状ゾーン24A、24Bの間の移動を自由に終了させる。
【0045】
このステップと並行して、第1のアクチュエーター6の下降と(したがって、2つのアーム16A2、16B2が閉じることと)同期して、上側ダイ26は、鉛直方向の軸B-B'に沿って動きつつ、金属ブランク12に近づく。
図10に示しているように、プライヤー14が閉位置にあるときに、上側ダイ26の端部分30は、プライヤー14の2つのアーム16A2、16B2の上側部分27A、27Bにおいて摺動する。そして、
図9~12に示しているように、上側ダイ26の端部分30は、このプロセスの後のステップにおいて金属ブランク12に対してスエージを行う。端部分30の環状リム34は、空欠内側ダイ32とともに、その最終形状の一部を金属ダイ12に、すなわち、上側部分12A(リュウズ頭部)の最終形状に、与える。したがって、プライヤー14のアーム16A2、16B2の2つの下側部分29A、29Bと、上側ダイ26の端部分30の環状リム34と空欠内側ダイ32とによって共同で画定される空間は、プライヤー14が閉位置にあるときに、金属ブランク12を受けるためのハウジング10の上側部分を形成する。好ましくは、上側ダイ26は、
図19に示しているその像36のおかげで、このスエージステップ中に、ブランクの頭部12Aの上部主面15にレリーフパターン(特にロゴ)を形成する。また、上側ダイ26は、金属ブランク12のスエージ中に、この上部主面15の最終的な形状を定める。
【0046】
このスタンピング方法は、上側ユニット4を下側ユニット2から鉛直方向に離す後のステップを備える。その際に、第1のアクチュエーター6は、プライヤー14の円筒状ゾーン24A、24Bからそのフレアゾーン22A、22Bの方へと徐々に上に動き、そして、これらのフレアゾーン22A、22Bから出る。そして、プライヤー14のシャンク16A1、16B1は、第2のアクチュエーター8によって与えられる弾性戻し力のために互いに近づき、この第2のアクチュエーター8は、2つのアーム16A2、16B2どうしが分離して、プライヤー14、具体的には2つのアーム、の開放位置になることをトリガーする。
【0047】
このスタンピング方法は、イジェクター21をアクチュエートして、支持ロッド17を鉛直方向上方に動かして、最終部品11の排出をトリガーすることによって、(ブランク12をスタンピングした後に得られた)最終部品11が下側ユニット2から排出される最終ステップを備える。
【0048】
図22及び23に、金属ブランク12をスタンピングした後に得られるこのような最終部品11の例を示している。この特定の例によると、最終部品11は、リュウズ頭部11Aと、縦溝付き下側部分11Cと、上側部分と下側部分11A、11Bを分離する中間部分11Bとがある計時器用リュウズである。この部品11の中間部分11Bは、部品11のエッジに、溝ないし「アンダーカット」を形成する。初期の溝12Bに対して、スタンピング後に形成されるこの最終的な溝11Bは、空欠性がより顕著な縦方向の輪郭、特に、内側角度が小さくなっている非対称の「V」字形の縦方向の輪郭、を有し、この非対称の「V」字の輪郭は、鉛直方向に対して90°傾いている。
図23に示しているように、部品11の、縦溝付き下側部分11Cの側面にある「V」字形の溝の内面によって水平面に対して形成される角度α1は、好ましくは、45°未満であり、この角度α1は、金属ブランク12に対応する角度に実質的に等しい値を維持する。リュウズ頭部11Aの側面における「V」字形の溝の上面によって形成される水平面に対する角度α3は、好ましくは、45°より大きく、例えば、50°のオーダーであり、有利なことに、金属ブランクの対応する角度α2よりも小さい。実際に、頭部12Aに対する上側ダイ26によるスエージ中に、このスエージは、頭部12Aを拡げ、同時に、その高さをわずかに低くし、これによって、この頭部の最終半径R3は、その初期半径R1よりも大きくされる(
図21に示している)。したがって、リュウズ頭部11Aの最終半径R3は、最終部品11の回転軸A-A'を中心とする、各縦溝13の奥部によって定められる半径R2よりも大きくなっている。最終的なリュウズ頭部11Aには、わずかにドーム状の上部主面15があり、これは、丸まった環状バルジ42を端とする。
図19に示しているように、上側ダイ26の端部分30の環状リム34のおかげで、端バルジ42の上側部分の半径を、例えば実質的に0.25mmである、半径R4であるように形成することが可能になる。一方、丸まった環状バルジ42の下側部分は、スタンピング工具の下側ダイを形成するプライヤー14のアーム16A2、16B2の2つの下側部分29A、29Bによって形成される。上側ダイ26の端部分30の空欠内側ダイ32は、リュウズ頭部11Aのわずかにドーム状の上部主面15を形成するように構成している曲がった形を定める。空欠内側ダイ32のこの曲がった形は、中心における半径が半径R5であり、例えば実質的に20mmであり、この半径R5は、有利なことに、ブランク12に対応する半径よりも大きい。
【0049】
図22及び23に示している特定の実施形態において、最終部品11には、リュウズ頭部11Aの上部主面15上に、レリーフパターン38、特にロゴ、が形成される。
【符号の説明】
【0050】
1 スエージ工具
2 下側ユニット
4 上側ユニット
6 第1のアクチュエーター
8 第2のアクチュエーター
10 ハウジング
11 最終部品
12 金属ブランク
12A 上側部分
12B 中間部分
12C 下側部分
13 縦溝
14 プライヤー
15 上部主面
16A、16B ブランチ
16A1、16B1 シャンク
16A2、16B2 アーム
17 支持ロッド
18 開口
19 ガイド
20 連結部
22A、22B フレアゾーン
24A、24B 円筒状ゾーン
26 上側ダイ
27A、27B 上側部分
29A、29B 下側部分
32 空欠内側ダイ
34 環状リム
38 レリーフパターン