(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20250220BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20250220BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20250220BHJP
G01N 27/414 20060101ALI20250220BHJP
C12Q 1/20 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
C12M1/34 B
G01N27/22 B
G01N27/00 J
G01N27/414 301U
C12Q1/20
(21)【出願番号】P 2020187606
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】満仲 健
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正二郎
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0150082(US,A1)
【文献】特開2018-000158(JP,A)
【文献】国際公開第2020/204075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
G01N 27/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板上に配列された複数個のセンサICと、
各センサICの計測対象の前記液体を収容するために各センサICの表面の周縁を覆うように前記基板上に各センサICに対応して形成された複数個のマイクロウェルとを備え
、
前記複数個のマイクロウェルのそれぞれに対応する前記センサICが、前記液体の物性を感知する複数個のセンサ素子を有することを特徴とするセンサモジュール。
【請求項2】
前記複数個のマイクロウェルのうちの
前記一つに収容された液体の前記複数個のマイクロウェルのうちの他の一つに収容された液体への混入を防止するために、互いに隣接するマイクロウェルの間に形成された溝をさらに備える請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
基板上に実装された電子部品をさらに備え、
前記マイクロウェルが、前記電子部品を覆うように形成される請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記基板が、その表面に形成される電極を有し、
前記センサICの表面と前記電極とを接続するワイヤボンドをさらに備え、
前記マイクロウェルが、前記ワイヤボンドを覆うように形成される請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
各センサICが、
前記複数個のセンサ素子を制御するための制御回路
を有し、
各制御回路と通信することにより、前記センサ素子により感知された前記液体の物性を表すデータを取得する外部制御部をさらに備える請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記複数個のマイクロウェルの高さが互いに等しい請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記基板は、短辺が20mm以上30mm以下、長辺が70mm以上80mm以下の長方形に形成されている請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記液体の物性が、第1物性と第2物性とを含み、
前記複数個のセンサICのうちの一部の複数個のセンサ素子が、前記液体の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサICのうちの他の一部の複数個のセンサ素子が、前記液体の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子である請求項5に記載のセンサモジュール。
【請求項9】
前記液体の物性が、第1物性と第2物性とを含み、
前記センサICの複数個のセンサ素子のうちの一部が、前記液体の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサ素子のうちの他の一部が、前記液体の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子である請求項5に記載のセンサモジュール。
【請求項10】
前記第1物性が前記液体の誘電率を含み、
前記第2物性が前記液体のイオン感応性を含む請求項8又は請求項9に記載のセンサモジュール。
【請求項11】
前記センサ素子が、前記液体の誘電率に応じて発振周波数を変化させる発振回路と、前記液体中の特定イオンを検知するイオン感応性電界効果トランジスタとの少なくとも一方を含む請求項
1に記載のセンサモジュール。
【請求項12】
微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板の一方の主面から他方の主面に貫通する複数の貫通孔の他方の主面側を覆うように配列された複数個のセンサICと、
各センサICの計測対象の前記液体を収容するために各センサICに対応する前記貫通孔の内壁により形成される複数個のマイクロウェルとを備え
、
前記複数個のマイクロウェルのそれぞれに対応する前記センサICが、前記液体の物性を感知する複数個のセンサ素子を有することを特徴とするセンサモジュール。
【請求項13】
微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板上に配列された複数個のセンサICと、
各センサICの計測対象の前記液体を収容するために各センサICの表面の周縁を覆うように前記基板上に各センサICに対応して形成された複数個のマイクロウェルとを備え、
各センサICが、前記液体の物性を感知する複数個のセンサ素子と、
前記複数個のセンサ素子を制御するための制御回路とを有し、
各制御回路と通信することにより、前記センサ素子により感知された前記液体の物性を表すデータを取得する外部制御部をさらに備えることを特徴とするセンサモジュール。
【請求項14】
前記液体の物性が、第1物性と第2物性とを含み、
前記複数個のセンサICのうちの一部の複数個のセンサ素子が、前記液体の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサICのうちの他の一部の複数個のセンサ素子が、前記液体の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子である請求項13に記載のセンサモジュール。
【請求項15】
前記液体の物性が、第1物性と第2物性とを含み、
前記センサICの複数個のセンサ素子のうちの一部が、前記液体の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサ素子のうちの他の一部が、前記液体の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子である請求項13に記載のセンサモジュール。
【請求項16】
前記第1物性が前記液体の誘電率を含み、
前記第2物性が前記液体のイオン感応性を含む請求項14又は請求項15に記載のセンサモジュール。
【請求項17】
前記センサ素子が、前記液体の誘電率に応じて発振周波数を変化させる発振回路と、
前記液体中の特定イオンを検知するイオン感応性電界効果トランジスタとの少なくとも一方を含む請求項13に記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するためのセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
細菌などの微生物は食品や医療において様々な利害をもたらす。細菌が病原の場合には、効果的な薬剤を投入して細菌の繁殖抑制を行うことにより、薬剤を治療に活用することができる。
【0003】
細菌の繁殖抑制に効果的な薬剤を評価するには薬剤感受性(耐性)試験を行う。薬剤感受性試験は、一般的には、ディッシュ内に細菌を挿入した培養液を挿入し、固形薬剤の周囲に現れる細菌培養による増殖に対する阻止円を測定する。これにより薬剤の抗菌活性を評価できる。効果がある薬剤の周りには、細菌増殖が起こらないことを示す阻止円を観察できるためである。
【0004】
この阻止円判定の方法とは別に、薬剤感受性の有無と薬剤の至適濃度とを効率的に評価する薬剤感受性試験の方法として、微量液体希釈法が利用されることもある。この微量液体希釈法は、複数のウェルを有するマルチウェル内における細菌増殖による濁度変化で薬剤感受性を評価する検査システムであり、例えば薬剤毎に、薬液濃度を考慮した薬剤感受性を評価することができる。
【0005】
この微量液体希釈法は、マルチウェル内における濁度観察が評価基準であり、微生物が増殖した結果を確認するため、細菌が増殖するための時間がかかるという問題がある。また、解像度の高い顕微鏡や画像判別が必要であることや、リアルタイム観察ができず定量性に欠けているという問題もある。さらに、微量液体希釈法で利用するマルチウェルは96穴や384穴などのように利用できるウェルの数が決まっており、試験数や薬液数が柔軟に変化するときには、無駄な空穴が存在することがある。
【0006】
濁度を評価する微量液体希釈法の代わりに、蛍光試薬を挿入することで、タンパク質等の組成が変化したときに現れる蛍光を評価する薬剤感受性試験の方法もある。しかしながら、この蛍光を評価する方法は、評価物の変化を確認するために解像度や蛍光感度の高い顕微鏡、画像判別が必要になるという問題がある。
【0007】
いずれにしても、上記微量液体希釈法等の方法によって薬剤感受性試験を行うためには細菌増殖を行うことでタンパク質組成の変化を確認する必要があるため、リアルタイム観察が難しいという問題がある。
【0008】
近年、集積回路(IC、Integrated Circuit)技術を用いたバイオセンサの開発が活発である。例えば、特許文献1は、IC表面に評価ターゲットとなる液体を載せることで、液体の複素誘電率の変化を計測するセンサICを開示している。このセンサICは、IC内に30GHz~200GHzの範囲内で発振動作を行うLC発振器が設けられる。LC発振器の発振周波数変化から評価ターゲットである液体の誘電率変化をセンサICはセンシングする。
【0009】
さらに、特許文献2に記載されたセンサICは、ほぼ均一な性能特性を持つLC発振器のセンサ素子をアレイ状に並べることで、センサ素子が評価したセンシング結果のみならず、その分布、平均、標準偏差、経時変化等のデータを得ることができる。
【0010】
また、特許文献3は、センサIC表面にある液体のイオン量を評価し、浮遊ゲートなどの電荷感応性コンポーネントを有するイオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)を用いたセンサ素子を用いたセンサICを開示している。このセンサICは、ターゲットとなる液体がもつ種々の分析物濃度をセンシングする。
【0011】
特許文献1に記載したセンサICは、液体の誘電率変化をセンシングする。また、特許文献3に記載したセンサICは、液体のイオン濃度変化をセンシングする。これらのセンサICでは、細菌が増殖する前の細菌そのものの組成変化が誘電率変化やイオン濃度変化に表われる。このため、細菌が増殖するための時間がかかるという問題が解消され、リアルタイム観察が可能である。また、センシングした数値を出力するセンサICで評価するため、経時的かつ感度高く評価できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第6416398号明細書(2018年10月12日登録)
【文献】特許第6671063号明細書(2020年03月05日登録)
【文献】特開2017-166972号公報(2017年09月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1及び特許文献3に記載のセンサICは、半導体で作成されるICであるため、平坦構成であることが多い。このため、単一のIC上に単一のウェルを作成して評価することになるので、基準となる液体培地のみの培養液、薬剤未投入の細菌の培養液、薬剤を投入した細菌の培養液などを同一条件で評価することが困難であるという課題があった。
【0014】
特許文献2に記載のセンサICは、ウェルを必要とせず、細菌を寒天培地のような固形物に塗布し、センサICの表面に寒天培地を張り付けて評価する。しかしながら、多量の薬剤を評価する薬剤感受性試験を行うためには、寒天培地を複数用意する必要がある。センサICは一般的に面積が小さいため、寒天培地を複数用意するためには、センサICよりもさらに小さい寒天培地を用意し、センサICに張り付ける必要があり実現が容易ではないという課題があった。このように、薬剤毎に薬液濃度を考慮した薬剤感受性を一度に評価するためには、寒天培地での対応は不可能である。
【0015】
本発明の一態様は、薬剤毎に薬液濃度を考慮した薬剤感受性を一度に評価することができるセンサモジュールを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサモジュールは、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板上に配列された複数個のセンサICと、各センサICの計測対象の前記液体を収容するために各センサICの表面の周縁を覆うように前記基板上に各センサICに対応して形成された複数個のマイクロウェルとを備えることを特徴とする。
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る他のセンサモジュールは、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板の一方の主面から他方の主面に貫通する複数の貫通孔の他方の主面側を覆うように配列された複数個のセンサICと、各センサICの計測対象の前記液体を収容するために各センサICに対応する前記貫通孔の内壁により形成される複数個のマイクロウェルとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、薬剤毎に薬液濃度を考慮した薬剤感受性を一度に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係るセンサモジュールの斜視図である。
【
図2】
図1に示される面A´B´に沿った断面図である。
【
図3】上記センサモジュールに形成されたマイクロウェルに液体が収容された状態を示す断面図である。
【
図4】上記マイクロウェルから溢れ出した液体がマイクロウェル間に形成された溝に溜まった状態を示す断面図である。
【
図5】上記マイクロウェルと、上記センサモジュールのセンサICが形成された基板に実装されたチップ部品との間の関係を示す断面図である。
【
図6】上記センサICの表面の構成を説明するための図である。
【
図7】上記マイクロウェルの上に蓋を載せた状態を示す断面図である。
【
図8】上記マイクロウェルの上に他の蓋を載せた状態を示す断面図である。
【
図9】上記センサモジュールの外形を説明するための平面図である。
【
図10】上記センサモジュールの変形例を示す平面図である。
【
図11】上記センサモジュールの他の変形例を示す平面図である。
【
図12】上記センサモジュールのさらに他の変形例を示す平面図である。
【
図13】実施形態2に係るセンサモジュールの平面図である。
【
図14】上記センサモジュールの変形例を示す平面図である。
【
図15】上記センサモジュールの変形例を示す平面図である。
【
図16】実施形態3に係るセンサモジュールに設けられたセンサチップの断面図である。
【
図17】上記センサチップが複数個搭載されたセンサモジュールの断面図である。
【
図18】樹脂部を追加した上記センサモジュールの断面図である。
【
図19】実施形態4に係るセンサICの平面図である。
【
図20】上記センサICに形成されたセンサ素子の概略構成を示すブロック図である。
【
図21】実施形態5に係るセンサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図22】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図23】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図24】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図25】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図26】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図27】上記センサICにマイクロウェルを形成したセンサチップ上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。
【
図28】実施形態6に係るイオン感応性電界効果トランジスタが設けられたセンサICの平面図である。
【
図29】上記イオン感応性電界効果トランジスタの断面図である。
【
図30】実施形態7に係るセンサモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は実施形態1に係るセンサモジュール1の斜視図である。
図2は
図1に示される面A´B´に沿った断面図である。
図3はセンサモジュール1に形成されたマイクロウェル102A・102Bに被検査体106A・106B(液体)が収容された状態を示す断面図である。
図4はマイクロウェル102A・102Bから溢れ出した被検査体106A・106Bがマイクロウェル102A・102B間に形成された溝105に溜まった状態を示す断面図である。
図5はマイクロウェル102A・102Bと、センサモジュール1のセンサIC103A~103Fが形成された基板100に実装されたチップ部品109(電子部品)との間の関係を示す断面図である。
【0021】
センサモジュール1は、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板100上に2行3列に配列された6個のセンサIC103A~103Fと、各センサIC103A~103Fの計測対象の被検査体106A・106B(液体)を収容するために各センサIC103A~103Fの表面の周縁を覆うように基板100上に各センサIC103A~103Fに対応して2行3列に形成された6個のマイクロウェル102A・102Bとを備える。
【0022】
本実施形態では1つのセンサモジュール1に6個のセンサIC103A~103Fを搭載する例を説明するが、搭載するセンサICの個数は、目的とする薬剤感受性試験などに必要な数に組むことが出来るので、センサICを効率的に、かつ柔軟に搭載し対応することが出来る。センサICの個数は、複数個であればいくつでも良い。
【0023】
センサモジュール1は、マイクロウェル102Aに収容された被検査体106Aのマイクロウェル102Bに収容された被検査体106Bへの混入を防止するために、互いに隣接するマイクロウェル102A・102Bの間に形成された溝105をさらに備える。
【0024】
センサモジュール1は、基板100上に実装されたチップ部品109をさらに備える。マイクロウェル102A・102Bは、チップ部品109を覆うように形成される。
【0025】
マイクロウェル102A・102Bの基板100からの高さは互いに等しい。
【0026】
センサモジュール1は、外部制御部110との通信により制御される。
【0027】
各センサIC103A~103Fは、電源供給や外部との通信のために、例えば複数のワイヤボンド104A・104Bを介して基板100上の配線と接続する。外部との通信や電源との接続は、基板100上の配線に繋がるコネクタ(図示せず)等を利用し、外部制御部110とデータのやり取りを行う。
【0028】
マイクロウェル102A・102Bと一体に形成された樹脂部101が基板100上に配置される。この樹脂部101は、基板100と、センサIC103A~103Fの表面の周縁と、ワイヤボンド104A・104Bとを覆うように形成される。樹脂部101は、後述する被検査体106A・106Bとワイヤボンド104A、104Bとの接触防止、及び、センサモジュール1の剛性を高めるために配置される。
【0029】
本実施形態では、センサIC103A~103Fの表面の周縁を除いた箇所はマイクロウェル102A・102Bで覆わない。これは、センサIC103A~103Fの表面に後述するセンサ素子108が配置されているためである。センサIC103A~103Fの表面の周縁にはウェル102A・102Bが形成される。このウェル102A・102Bは、センサIC103A~103F上に被検査体106A・106Bを留めるために設けられる。そして、ウェル102A・102B間に溝105が形成される。
【0030】
被検査体106A・106Bは、ウェル102A・102Bの内部に、
図3に示すように、適量注入される。そして、センサIC103A~103Fに形成されるセンサ素子108(
図6、
図20)により被検査体106A・106Bの特性が評価される。
【0031】
被検査体106A・106Bをウェル102A・102Bに注入した時に、多く注入し過ぎたなどで、
図4に示すように、ウェル102A・102Bから被検査体106A・106Bが溢れた場合、溢れ出した被検査体106A・106Bは被検査体107として溝105に溜まる。このため、ウェル102A内に収容された被検査体106Aとウェル102B内に収容された被検査体106Bとが互いに混ざり合うことは無い。従って、被検査体106A・106Bの溶液のコンタミネーション(汚染)を防ぐことが出来る。
【0032】
また、樹脂部101は、ワイヤボンド104A・104B及びチップ部品109を覆うように基板100上に形成されているので、ウェル102A・102Bから溢れ出した被検査体106A・106Bが、ワイヤボンド104A・104B及びチップ部品109と接触することを防止することができる。
【0033】
図6はセンサIC103A・103Bの表面の構成を説明するための図である。センサIC103Aは、被検査体106Aの物性を感知する複数個のセンサ素子108と、複数個のセンサ素子108を制御するための制御回路111とを有する。センサIC103Aは、センサ素子108がアレイ上にN個配置されたセンサアレイを構成する。
【0034】
センサIC103B~103FもセンサIC103Aと同様に構成される。
【0035】
センサモジュール1は、各制御回路111とバス112を介して通信することにより、センサ素子108により感知された被検査体106A・106の物性を表すデータを取得する外部制御部110をさらに備える。
【0036】
各制御回路111は、I2Cなどのシリアルバス・インターフェースを含み、個々のセンサ素子108の制御、データ取得、データ転送などを実行し、バス112を通して外部制御部110との通信を行う。外部制御部110は、センサIC103A~103Fにそれぞれ固有アドレスを割り当て、当該固有アドレスを指定してシリアル通信を行うことで、個々のセンサIC103A~103Fに設けられたセンサ素子108のデータを取得する。
【0037】
図7はマイクロウェル102A・102Bの上に蓋120を載せた状態を示す断面図である。蓋120は、被検査体106A・106Bの物性を長時間に亘って計測する間に、被検査体106A・106Bが蒸発することを防ぐために利用する。この場合、蓋120は板状であるため、ウェル102A・102Bの基板100からの高さは均一であることが望ましい。
【0038】
図8はマイクロウェル102A・102Bの上に他の蓋121を載せた状態を示す断面図である。
図8に示すように、被検査体106A・106Bの上面に向かって突出して当該上面に接触するような形状を有する蓋121を形成しても良い。この場合もウェル102A・102Bの基板100からの高さが均一であると蓋121を形成するのに都合が良い。
【0039】
図9はセンサモジュール1の外形を説明するための平面図である。センサモジュール1の基板100の外形は、短辺が20mm以上30mm以下、長辺が70mm以上80mm以下程度の寸法で構成されている。このため、センサモジュール1は、一般的なスライドガラスを利用する正立光学顕微鏡の試料を載せるステージにセットすることができる。従って、センサモジュール1は、上側から正立光学顕微鏡で観察するために最適な寸法を有しており、汎用性が高くなる。
【0040】
図10はセンサモジュール1の変形例を示す平面図である。
図11はセンサモジュール1の他の変形例を示す平面図である。
図12はセンサモジュール1のさらに他の変形例を示す平面図である。
【0041】
前述したセンサモジュール1では、
図9に示すように、ウェル102A・102Bの外周及び内周を正方形状に形成した例を図示したが、
図10に示すように、円形状にウェル102A・102Bの外周及び内周を形成しても良い。また
図11に示すように、内周の角が丸みを帯びた形状にウェル102A・102Bを形成しても良い。さらに、
図12に示すように、内周の角に加えて外周の角も丸みを帯びた形状に形成しても良い。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0043】
図13は実施形態2に係るセンサモジュール1Aの平面図である。前述した実施形態1のセンサIC103A~103Fは、すべて同一のセンサ素子108をアレイ形状に並べて構成したものとして説明した。実施形態2に係るセンサモジュール1Aでは、
図13に示すように、異なる種類のセンサ素子108・108a・108b・108c・108dをアレイ形状に並べて、各センサICを構成する。例えば、
図13に示す例では、最も左側の列には複数のセンサ素子108をアレイ状に並べたセンサICが3個配列される。そして、左から2番目の列には複数のセンサ素子108aをアレイ状に並べたセンサICが3個配列される。そして、左から3番目の列には複数のセンサ素子108bをアレイ状に並べたセンサICが3個配列され、左から4番目の列には複数のセンサ素子108cをアレイ状に並べたセンサICが3個配列され、一番右側の列には複数のセンサ素子108dをアレイ状に並べたセンサICが3個配列される。
【0044】
このように、それぞれ異なるセンサ素子108・108a・108b・108c・108dが並べられたセンサICが5列並べて配置される(並べ方は5列に限らない)。この場合、5種類の異なるセンサICがセンサモジュール1Aに存在するため、被検査体について同じ時間に同じ経時変化を確認する場合に、例えば、センサ素子108の列の被検査体では誘電率の変化を測定し、センサ素子108aの列の被検査体ではイオン感応性変化を測定するなどができる。このため、被検査体について異なる視点から複合的な情報を取得することができる。
【0045】
図14及び
図15はセンサモジュール1Aの変形例を示す平面図である。1個のセンサICの上に互いに異なる複数種類のセンサ素子を配列してもよい。例えば、
図14及び
図15に示す例では、1個のセンサICの上に複数のセンサ素子108と複数のセンサ素子108aとが配列される。
【0046】
この場合は、同じウェル内の同じ評価条件で、被検査体について薬剤感受性試験に関する複数の複合的な情報を取得することができる。このため、微生物の新たな特性を見分けられることが可能になる。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0048】
図16は実施形態3に係るセンサモジュール1Bに設けられたセンサチップ10の断面図である。
図17はセンサチップ10が複数個搭載されたセンサモジュール1Bの断面図である。
図18は樹脂部101を追加したセンサモジュール1Bの断面図である。
【0049】
センサモジュール1Bは、基板100の上に搭載される複数のセンサチップ10を備える。各センサチップ10は、センサIC103と、基板100に実装される複数の電極118と、センサIC103の表面と電極118とを接続する複数のワイヤボンド114と、センサIC103の表面の周縁と複数のワイヤボンド114と複数の電極118とを覆うように形成されたマイクロウェル102とを含む。このように、センサチップ10は、マイクロウェル102内のセンサIC103の表面に被検査体の溶液を収容できるように構成される。
【0050】
このように、単一のセンサモジュール1Bに複数のセンサチップ10を搭載することができる。搭載するセンサチップ10は、目的とする薬剤感受性試験等に必要な数に組むことが出来るので、センサIC103を効率的に、かつ柔軟に搭載し対応することが出来る。
【0051】
図18に示すように、樹脂部101を基板100の上のセンサチップ10のマイクロウェル102の間に追加してもよい。これにより、液体など被検査体(図示せず)がマイクロウェル102から溢れても、基板100には直接かからない構成になるので、漏電などのリスクを減らすことができる。
【0052】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0053】
(センサ素子108の構成)
図19は実施形態4に係るセンサIC103の平面図である。
図20はセンサIC103に形成されたセンサ素子108の概略構成を示すブロック図である。
【0054】
センサIC103は、前述したセンサIC103A~103Fに相当する。前述したセンサIC103A~103Fのセンサ素子108は、発振回路130により構成することができる。発振回路130は、インダクタ14とキャパシタ15とを含む共振器13及び差動回路19を備える。
【0055】
発振回路130は、被検査体の物性(誘電率)に応じて発振周波数を変化させ、物性を感知するセンサ部として機能する。共振器13は、差動回路19の差動入力間に形成されたLC回路である。差動回路19は、例えば、互いにクロスカップルされたトランジスタから成る差動回路のような、公知の差動回路を適宜用いてよい。センサIC103は、センサ素子108である発振回路130をアレイ状に配置することで、センサIC103の表面における被検査体の物性の評価結果の分布図などを取得することができる。
【0056】
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0057】
図21~
図27はセンサIC103にマイクロウェル102を形成したセンサチップ10上で薬剤感受性評価を行う手順を示す断面図である。簡便のために、
図21に示すセンサIC103にマイクロウェル102を形成したセンサチップ10上で薬剤感受性評価を行う場合を説明する。
【0058】
まず、菌を含む参照液体116Aを
図22に示すようにウェル102に注入する。次に、参照液体116Aに薬剤Aを投薬して
図23に示すように混合溶液116Bを生成する。そして、混合溶液116Bの周辺温度や状態が安定したことを確認した後、初期状態として評価する。
図20に示したセンサ素子108である発振回路130の場合、有効な各発振回路130の発振周波数を記録する。この初期状態から、薬剤Aの効果がない菌は増殖を行っているので、時間が経つについて、薬剤Aの効果が確認できるようになる。
【0059】
図24では、薬剤Aにより細菌増殖が抑えられた例を示す。この場合、数時間及び数日経っても、溶液116Cは溶液116Bとさほど変化はないため、
図20に示す発振回路130で溶液116Cを評価した発振周波数は、
図23の溶液116Bを評価した発振回路130の発振周波数と大きな違いは見られない。従って、薬剤Aは細菌増殖の抑制に効果があると判定される。
【0060】
次に、細菌増殖が抑えられない例を示す。
【0061】
まず、菌を含む参照液体116Aを
図25に示すようにウェル102に注入した後、参照液体116Aに薬剤Bを投薬して
図26に示すように混合溶液117Bを生成する。そして、混合溶液117Bの周辺温度や状態が安定したことを確認した後、初期状態として評価する。次に、数時間及び数日経つと、細菌増殖により溶液117Cは溶液117Bと比較して大きな変化がみられ、
図20に示す発振回路130で評価した発振周波数は、
図26の混合溶液117Bを評価した発振回路130の発振周波数と大きな違いがみられる。この2つの混合溶液117B・117Cの発振周波数の差があらかじめ実験により決定した周波数よりも大きい発振回路130を含むセンサIC103上に投薬した薬剤Bは細菌増殖を抑えられないと判定される。
【0062】
〔実施形態6〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0063】
図28は実施形態6に係るイオン感応性電界効果トランジスタ131(ISFET、Ion Sensitive Field Effect Transistor)が設けられたセンサIC103の平面図である。
図29は上記ISFET131の断面図である。
【0064】
センサIC103にアレイ状に配置される複数のセンサ素子108は、液体中の特定イオン量を検知する複数のISFET131であってもよい。センサ素子108となるISFET131は、液体中の特定イオンに選択的に応答し、その特定イオンの濃度に対応する電極電位をゲート電極132に発生させるセンサである。ISFET131は、ソース電極133・ドレイン電極134の間をチャンネル135を通って流れる電流値を検知することで、液体中の特定イオン量を検知することができる。
【0065】
複数のISFET131をアレイ状にセンサIC103に配置することで、センサIC103上の表面における評価結果の分布図などを取得することができる。
【0066】
〔実施形態7〕
図30は実施形態7に係るセンサモジュール1Cの断面図である。
図30では、センサIC103A・103Bの
図1に示される面A´B´に沿った別の一例の断面が示されている。
【0067】
センサモジュール1Cは、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板100Cの一方の主面から他方の主面に貫通する複数の貫通孔136の他方の主面側を覆うように配列された複数個のセンサIC103A・103Bと、各センサIC103A・103Bの計測対象の液体を収容するために各センサIC103A・103Bに対応する貫通孔136の内壁により形成される複数個のマイクロウェル102C・102Dとを備える。
【0068】
センサモジュール1Cでは、基板100Cに貫通穴136を開け、その貫通穴136を覆うようにセンサIC103A・103Bを基板100Cの裏側から複数のバンプ141にて実装する。そして、そのバンプ141の周りを樹脂などで作成するアンダーフィル142で埋めることでバンプ141に浸水することを防ぐ。センサモジュール1Cに形成されるマイクロウェル102A・102Bは、基板100Cにあけた貫通穴136となる。マイクロウェル102A・102Bとなる貫通穴136の周りにレジストなどで形成された壁143を、貫通穴136を囲うように配置して、マイクロウェル102C・102Dの間に溝105を形成する。図示しない被検査体(液体)をマイクロウェル102C・102Dへ収容したときに、マイクロウェル102C・102Dから被検査体が溢れ出したとしても、マイクロウェル102C・102D間に形成された溝105に被検査体を溜めることができる。
【0069】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体(被検査体106A・106B)の物性を計測するために、基板100上に配列された複数個のセンサIC103、103A~103Fと、各センサIC103、103A~103Fの計測対象の前記液体(被検査体106A・106B)を収容するために各センサIC103、103A~103Fの表面の周縁を覆うように前記基板100上に各センサIC103、103A~103Fに対応して形成された複数個のマイクロウェル102・102A・102Bとを備える。
【0070】
この特徴によれば、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測する複数個のセンサICが基板上に配列される。そして、各センサICの計測対象の液体を収容するために各センサICの表面の周縁を覆う複数個のマイクロウェルが基板上に各センサICに対応して形成される。このため、計測対象の複数種類の薬剤と微生物とを含む複数種類の液体を複数個のセンサICに対応する複数個のマイクロウェルに収容することができる。従って、薬剤毎に薬液濃度を考慮した薬剤感受性を一度に評価することができる。
【0071】
本発明の態様2に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、前記複数個のマイクロウェルのうちの一つ(マイクロウェル102A)に収容された液体(被検査体106A)の前記複数個のマイクロウェルのうちの他の一つ(マイクロウェル102B)に収容された液体(被検査体106B)への混入を防止するために、互いに隣接するマイクロウェル102A・102Bの間に形成された溝105をさらに備えることが好ましい。
【0072】
上記構成によれば、マイクロウェルから溢れた液体を溝に溜めることができる。
【0073】
本発明の態様3に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、基板100上に実装された電子部品(チップ部品109)をさらに備え、前記マイクロウェル102・102A・102Bが、前記電子部品(チップ部品109)を覆うように形成されることが好ましい。
【0074】
上記構成によれば、マイクロウェルから溢れた液体が電子部品と接触することを防止することができる。
【0075】
本発明の態様4に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、前記基板100が、その表面に形成される電極118を有し、前記センサIC103、103A~103Fの表面と前記電極118とを接続するワイヤボンド104A・104Bをさらに備え、前記マイクロウェル102・102A・102Bが、前記ワイヤボンド104A・104Bを覆うように形成されることが好ましい。
【0076】
上記構成によれば、マイクロウェルから溢れた液体がワイヤボンドと接触することを防止することができる。
【0077】
本発明の態様5に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、各センサIC103、103A~103Fが、前記液体(被検査体106A・106B)の物性を感知する複数個のセンサ素子108と、前記複数個のセンサ素子108を制御するための制御回路111とを有し、各制御回路111と通信することにより、前記センサ素子108により感知された前記液体(被検査体106A・106B)の物性を表すデータを取得する外部制御部110をさらに備えることが好ましい。
【0078】
上記構成によれば、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を複数個のセンサ素子により計測することができる。
【0079】
本発明の態様6に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、前記複数個のマイクロウェル102・102A・102Bの高さが互いに等しいことが好ましい。
【0080】
上記構成によれば、長時間の計測時に液体が蒸発することを防ぐための蓋を単純な構成で設けることができる。
【0081】
本発明の態様7に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様1において、前記基板100は、短辺が20mm以上30mm以下、長辺が70mm以上80mm以下の長方形に形成されていることが好ましい。
【0082】
上記構成によれば、基板が顕微鏡で観察するのに最適なサイズとなり、センサモジュールの汎用性が高まる。
【0083】
本発明の態様8に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様5において、前記液体(被検査体106A・106B)の物性が、第1物性と第2物性とを含み、前記複数個のセンサIC103、103A~103Fのうちの一部の複数個のセンサ素子108が、前記液体の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサIC103、103A~103Fのうちの他の一部の複数個のセンサ素子108が、前記液体(被検査体106A・106B)の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子であることが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、第1物性と第2物性とを計測できるので、異なる視点から液体の複合的な情報を取得することができる。
【0085】
本発明の態様9に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様5において、前記液体(被検査体106A・106B)の物性が、第1物性と第2物性とを含み、前記センサIC103、103A~103Fの複数個のセンサ素子108のうちの一部が、前記液体(被検査体106A・106B)の第1物性を計測するように構成されたセンサ素子であり、前記複数個のセンサ素子108のうちの他の一部が、前記液体(被検査体106A・106B)の第2物性を計測するように構成されたセンサ素子であることが好ましい。
【0086】
上記構成によれば、同じマイクロウェル内の同じ評価条件で、液体について薬剤感受性試験に関する複数の複合的な情報を取得することができる。このため、微生物の新たな特性を見分けられることが可能になる。
【0087】
本発明の態様10に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様9において、前記第1物性が前記液体(被検査体106A・106B)の誘電率を含み、前記第2物性が前記液体(被検査体106A・106B)のイオン感応性を含むことが好ましい。
【0088】
上記構成によれば、誘電率とイオン感応性とを計測できるので、異なる視点から液体の複合的な情報を取得することができる。
【0089】
本発明の態様11に係るセンサモジュール1・1A・1Bは、上記態様5において、前記センサ素子108が、前記液体(被検査体106A・106B)の誘電率に応じて発振周波数を変化させる発振回路130と、前記液体(被検査体106A・106B)中の特定イオンを検知するイオン感応性電界効果トランジスタ131との少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0090】
上記構成によれば、誘電率とイオン感応性との少なくとも一方を計測することができる。
【0091】
本発明の態様12に係るセンサモジュールは、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測するために、基板100Cの一方の主面から他方の主面に貫通する複数の貫通孔136の他方の主面側を覆うように配列された複数個のセンサIC103A・103Bと、各センサIC103A・103Bの計測対象の前記液体を収容するために各センサIC103A・103Bに対応する前記貫通孔136の内壁により形成される複数個のマイクロウェル102C・102Dとを備える。
【0092】
この特徴によれば、微生物の繁殖を抑制する薬剤の薬剤感受性を評価するための液体の物性を計測する複数個のセンサICが、基板の一方の主面から他方の主面に貫通する複数の貫通孔の他方の主面側を覆うように配列される。そして、各センサICの計測対象の液体を収容するために各センサICに対応する前記貫通孔の内壁により複数個のマイクロウェルが形成される。このため、計測対象の複数種類の薬剤と微生物とを含む複数種類の液体を複数個のセンサICに対応する複数個のマイクロウェルに収容することができる。従って、薬剤毎に薬液濃度を考慮した薬剤感受性を一度に評価することができる。
【0093】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 センサモジュール
100 基板
103、103A~103F センサIC
102、102A、102B、102C、102D マイクロウェル
104A ワイヤボンド
104B ワイヤボンド
105 溝
106A 被検査体(液体)
106B 被検査体(液体)
108 センサ素子
109 チップ部品(電子部品)
110 外部制御部
111 制御回路
118 電極
130 発振回路(センサ素子)
131 イオン感応性電界効果トランジスタ(センサ素子)
136 貫通孔