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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/00 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
A01B35/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021099385
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190878
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田副 隼
(72)【発明者】
【氏名】大村 英昭
(72)【発明者】
【氏名】上杉 拓也
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-188722(JP,A)
【文献】特開平06-225601(JP,A)
【文献】特開2011-062179(JP,A)
【文献】特開2009-112239(JP,A)
【文献】特開2015-015936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0083886(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
前記盛土体の側方を覆うサイドカバー手段とを備え、
前記サイドカバー手段は、
上限位置及び下限位置間で移動可能な第1状態と、前記盛土体に対するメンテナンス作業が可能な保持位置に保持される第2状態とに切り換え可能なサイドカバー体と、
前記サイドカバー体を支持する支持部とを有し、
前記サイドカバー体は、操作体の操作に基づいて前記第1状態及び前記第2状態に切り換え可能であり、
前記支持部は、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体が前記下限位置よりも下方に移動するのを規制する下限規制用係合部と、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体が前記上限位置よりも上方に移動するのを規制する上限規制用係合部と、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体の少なくとも下方への移動を規制して当該サイドカバー体を前記保持位置に保持する保持用係合部とを有する
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
前記盛土体の側方を覆うサイドカバー手段とを備え、
前記サイドカバー手段は、
上限位置及び下限位置間で移動可能な第1状態と、前記盛土体に対するメンテナンス作業が可能な保持位置に保持される第2状態とに切り換え可能なサイドカバー体と、
前記サイドカバー体を支持する支持部とを有し、
前記サイドカバー体は、操作体の操作に基づいて前記第1状態及び前記第2状態に切り換え可能であり、
前記支持部は、上下方向に回動可能な上下のリンク部材を有し、
前記上下のリンク部材のうち上側のリンク部材は、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体が前記下限位置よりも下方に移動するのを規制する下限規制用係合部と、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体が前記上限位置よりも上方に移動するのを規制する上限規制用係合部と、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体の少なくとも下方への移動を規制して当該サイドカバー体を前記保持位置に保持する保持用係合部とのうち少なくともいずれか一つを有する
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項3】
土を耕耘して盛り上げる盛土体と、
土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、
前記盛土体の側方を覆うサイドカバー手段とを備え、
前記サイドカバー手段は、
上限位置及び下限位置間で移動可能な第1状態と、前記盛土体に対するメンテナンス作業が可能な保持位置に保持される第2状態とに切り換え可能なサイドカバー体と、
前記サイドカバー体を支持する支持部とを有し、
前記サイドカバー体は、操作体の操作に基づいて前記第1状態及び前記第2状態に切り換え可能であり、
前記支持部は、上下方向に回動可能な上下のリンク部材を有し、
前記上下のリンク部材のうち上側のリンク部材は、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体が前記下限位置よりも下方に移動するのを規制する下限規制用係合部と、
前記操作体との係合により前記サイドカバー体の少なくとも下方への移動を規制して当該サイドカバー体を前記保持位置に保持する保持用係合部とを有する
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項4】
サイドカバー手段は、操作体を位置決めする位置決め部を有し、
前記位置決め部は、
前記操作体を第1状態に対応する第1位置に位置決めする第1位置決め部と、
前記操作体を第2状態に対応する第2位置に位置決めする第2位置決め部とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の畦塗り機。
【請求項5】
支持部は、上下方向に回動可能な上下のリンク部材を有し、
前記上下のリンク部材のうち上側のリンク部材には、下限規制用係合部、上限規制用係合部及び保持用係合部が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項6】
サイドカバー体が保持される第2状態での保持位置は、第1状態での上限位置と同じである
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り作業をする畦塗り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された畦塗り機が知られている。
【0003】
この従来の畦塗り機は、例えばトラクタ等の走行車に連結された状態でその走行車の走行により移動しながら畦塗り作業をするもので、土を耕耘して盛り上げる盛土体(前処理体)と、土を締め固めて畦を形成する畦形成体(整畦体)と、耕耘時に土の飛散を防止するサイドカバーとを備えている。また、そのサイドカバーは、一対のリンク部材で支持されたもので、上限位置(上端位置)及び下限位置(下端位置)間で移動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-15936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の畦塗り機では、盛土体に対するメンテナンス作業の際にサイドカバーが邪魔になるため、作業者の負担が大きいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者の負担軽減を図ることができる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る畦塗り機は、土を耕耘して盛り上げる盛土体と、土を締め固めて畦を形成する畦形成体と、前記盛土体の側方を覆うサイドカバー手段とを備え、前記サイドカバー手段は、上限位置及び下限位置間で移動可能な第1状態と、前記盛土体に対するメンテナンス作業が可能な保持位置に保持される第2状態とに切り換え可能なサイドカバー体を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業者の負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面図である。
図2】同上畦塗り機の側面図(サイドカバー体が下限位置に位置した状態)である。
図3】同上畦塗り機の側面図(サイドカバー体が上限位置に位置した状態)である。
図4】同上畦塗り機の側面図(サイドカバー体が保持位置に位置した状態)である。
図5】(a)及び(b)は同上畦塗り機のサイドカバー手段(ガイド装置)を示す斜視図で、(c)は上側のリンク部材の一部を示す側面図である。
図6】(a)ないし(c)は同上サイドカバー手段を示す側面図である。
図7】散水装置のタンクへの給水作業の様子を示す側面図である。
図8】2本のピンを使用する例を説明するための図である。
図9】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機のサイドカバー手段を示す図で、(a)はサイドカバー体が上限位置に位置した状態の側面図、(b)はA-A断面図である。
図10】同上サイドカバー手段を示す図で、(a)はサイドカバー体が保持位置に位置した状態の側面図、(b)はB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態について図1ないし図8を参照して説明する。
【0011】
図中の1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、走行車であるトラクタ2の後部の3点リンク3に連結されて使用される農作業機である。そして、畦塗り機1は、トラクタ2の走行により、畦に沿って移動しながら畦塗り作業(畦修復作業)をする。なお、トラクタ2の後部の3点リンク(3点支持装置)3の種類は、任意であり、例えば標準3点リンク及び特殊3点リンクのいずれでもよい。
【0012】
畦塗り機1は、図1図2等に示すように、トラクタ2の後部の3点リンク3に着脱可能に連結される機体6と、この機体6に設けられ、トラクタ2に対する所望のオフセット位置で畦塗り作業をする作業手段(オフセット作業手段)7と、この作業手段7に液体である水を供給する液体供給手段である散水装置8とを備えている。
【0013】
機体6は、トラクタ2の後部の3点リンク3に着脱可能に連結される固定機枠11と、この固定機枠11に対して左右方向に移動可能(トラクタに対してオフセット可能)な可動機枠12とを有している。可動機枠12は、2本の回動アーム13,14を有した連結手段15を介して固定機枠11に連結されており、この可動機枠12に作業手段7が設けられている。なお、可動機枠12は、畦塗り機1の後側に位置する回動支点10を中心として、回動アーム14に対して回動可能となっている。
【0014】
そして、例えば電動油圧シリンダ等の伸縮駆動手段であるシリンダ18の伸縮に基づいて、可動機枠12が固定機枠11に対して移動することで、作業手段7は少なくとも作業状態(前進作業状態)及び格納状態に選択的に切り換わる。そして、作業手段(作業部)7は、格納状態ではトラクタ2の後方領域に位置するが、作業状態(オフセット状態)ではその後方領域から側方にずれたオフセット位置に位置する。なお、シリンダ18の伸縮によって、作業状態でのオフセット量も調整可能である。また、例えば手動で切り換える構成や、リターン作業状態(後進作業状態)に切り換え可能な構成等でもよい。
【0015】
固定機枠(前フレーム)11は、例えば図示しないカプラを介して3点リンク(3点ヒッチ部)3に着脱可能に連結される3点連結部20を有している。3点連結部20は、1本のトップマスト21と、2本のロワアーム22と、トップマスト21の先端部に取り付けられたトップピン(上側ピン)23と、ロワアーム22の先端部に取り付けられたロワピン(下側ピン)24とを有している。
【0016】
そして、トップピン23は、左右方向に軸方向を有する丸軸状の部材からなるもので、3点連結部20のトップマスト21の先端部に形成された複数の取付孔部25の中から選択された一の取付孔部25に着脱可能に取り付けられている。トップマスト21の基端部は、マスト取付部28に取り付けられている。なお、マスト取付部28には、右側の回動アーム14の前端部が回動可能に取り付けられている。
【0017】
固定機枠11は、例えば図示しないPTO軸に接続した動力伝達用のジョイントに着脱可能に接続され、トラクタ2のPTO軸の回転時にそのトラクタ2からの動力を入力する入力軸26を有している。
【0018】
そして、入力軸26によって入力された動力は、動力伝達手段27を介して作業手段7に伝達される。作業手段7は、その伝達された動力に基づいて作業を行う。なお、入力軸26の上方は、入力軸カバー17で覆われている。
【0019】
固定機枠11は、左右方向に細長い長手状のフレーム部30を有している。フレーム部30の長手方向の両端部には、スタンド(図示せず)を着脱可能に取り付けるコ字枠状のスタンドホルダー部31が設けられている。フレーム部30の長手方向中間の2箇所には取付板部32が固設され、この各取付板部32にはロワアーム22の基端部(上端部)が取り付けられている。
【0020】
また、長手状のフレーム部30のうち、左側の取付板部32の近傍に位置する部分からは、長手状の突出フレーム部33が後斜め下方に向かって突出している。そして、突出フレーム部33の後端部には、左側の回動アーム13の前端部が回動可能に取り付けられている。なお、突出フレーム部33は、水(液体)が貯留される容器状の液体貯留部であるタンク71の側方近傍に配置されている。
【0021】
作業手段7は、所定方向に回転しながら田面及び畦(元畦)を耕耘して土を盛り上げる盛土体36と、所定方向に回転しながら盛土体36による盛土(耕耘土)を締め固めて畦(新畦)を形成する畦形成体37と、所定方向に回転しながら畦(元畦)の上面を削る上面削り体38とを有している。これら盛土体36、畦形成体37及び上面削り体38は、いずれも可動機枠12に回転可能に設けられている。
【0022】
また、可動機枠12には、盛土体カバー41、畦形成体カバー42及び上面削り体カバー43が設けられている。そして、盛土体カバー41の右側(外側)の側板部44には、盛土体36の側方(右側方)を覆う土飛散防止用のサイドカバー手段50が設けられている。
【0023】
ここで、盛土体36は、可動機枠12で支持された回転軸51と、この回転軸51に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪(盛土用爪)52とを有している。なお、回転軸51は、左右方向に延在する丸軸状の軸本体部51aと、この軸本体部51aに径方向外方に突出するように設けられた複数の爪取付部51bとを有し、この各爪取付部51bに耕耘爪52が取付具(例えばボルト及びナット等)49によって着脱可能に取り付けられている。
【0024】
上面削り体38は、可動機枠12で支持された回転軸53と、この回転軸53に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪(削り用爪)54とを有している。なお、これら盛土体36及び上面削り体38の作業深さ(耕耘深さ)は、例えば電動油圧シリンダ等の伸縮駆動手段であるシリンダ55の伸縮によって調整可能(手動で調整可能な構成でもよい)となっている。
【0025】
畦形成体37は、可動機枠12で支持された回転軸56と、この回転軸56に着脱可能に取り付けられた畦形成部材57とを有している。畦形成部材57は、畦側面を形成する段差付きの円錐台状の畦側面形成部58と、畦上面を形成する段差付きの円筒状の畦上面形成部59とで構成されている。
【0026】
畦側面形成部58は、ベース61と、このベース61に着脱可能に装着された複数(例えば8枚)の畦側面形成板(面板)62とを有する。各畦側面形成板62は、例えば扇形状でかつ外面側に凸の湾曲板状に形成されている。畦上面形成部59は、上面ローラ63からなり、この上面ローラ63の外周面には、複数の螺旋状の段差部64が形成されている。
【0027】
散水装置8は、例えば粘りが強い土質である場合に畦形成体37への土付着を抑制するために、畦形成体37に対して水を散水して供給するものである。例えばトラクタ2の運転席に乗った作業者は、リモコンを操作して散水装置8のポンプを制御することにより、散水量(ゼロを含む)を調整できる。なお、例えばコックを操作して散水量を調整する構成や、畦形成体37の表面に付着した土を検知して散水量を自動調整する構成等でもよい。
【0028】
そして、散水装置8は、機体6の固定部である固定機枠11に着脱可能に取り付けられたタンク支持体70と、このタンク支持体70によって支持され、少なくとも一部(少なくとも半分以上)、すなわち例えば全体(略全体を含む)が固定機枠11のトップピン23の中心よりも下方に位置するタンク71と、このタンク71の底部に形成された接続口(液体出口部)72に基端側が接続されかつ先端側が畦形成体37まで延在して当該畦形成体37の近傍に位置する配管であるホース73とを有している。
【0029】
また、散水装置8は、タンク71の上部に形成された開口部である上面開口部(液体入口部)77を開閉する開閉蓋(キャップ)78を有し、この開閉蓋78は、タンク71の上部に着脱可能に装着されている。
【0030】
さらに、散水装置8は、可撓性を有した細長いホース73の途中に設けられたモータ駆動式のポンプ(図示せず)と、ホース73の先端側に取り付けられ、畦形成体37と対向する複数の散水ノズル74とを有している。散水ノズル74は、可動機枠12に取り付けられたノズル取付部材75に向き調整可能に取り付けられている。
【0031】
ここで、タンク71は、例えば前後左右の4つの側面を有した直方体状の容器部材からなるもので、当該タンク71内に水を入れるための円形状の上面開口部77を上面(上端)に有し、この上面開口部77は開閉蓋78で開閉可能である。
【0032】
具体的には、タンク(容器部材)71は、水を貯留する本体部79と、この本体部79の上面部に上方に向かって突設された短円筒状の円筒部80とを有し、この円筒部80の上端面開口によって上面開口部(円形空間)77が構成され、この上面開口部77が円筒部80に装着された開閉蓋78で開閉可能に閉鎖されている。
【0033】
そして、タンク71の本体部79の内部に水を入れるための上面開口部(給水口)77は、タンク71の水平姿勢(畦塗り機の作業姿勢)において、トップピン23の中心(換言するとトップピンの軸芯を通る左右方向の中心軸線X)よりも下方に位置する。また一方、タンク71の底部の接続口72は、ロワピン24の中心よりも下方(換言するとロワピンの軸芯を通る左右方向の中心軸線Y)よりも下方に位置する。なお、この状態で入力軸26の水平方向に対する傾斜角度αは、例えば5度である。
【0034】
また、この状態において、平面視で、オフセットした作業状態の作業手段7が前後方向の入力軸26よりも一側方(右側)に位置し、かつ、水平姿勢のタンク71が前後方向の入力軸26よりも他側方(左側)に位置する(図1参照)。
【0035】
このとき、図1から明らかなように、平面視で、タンク71は、畦塗り機1の前側の位置(固定機枠側の位置)であって盛土体36の側方に位置しており、これらタンク71及び盛土体36は平面視で左右方向に並んだ状態となっている。つまり、タンク71は、畦塗り機1の後側の回動支点10よりも前方に位置しており、可動機枠12と一緒に回動しない位置に配置されている。
【0036】
また、タンク71の左側面(左端部)71aは、左側のスタンドホルダー部(固定機枠の左端部)31よりも外側方に突出して位置する。つまり、平面視で、タンク71の少なくとも一部(左側部)が機体6の左端部よりも左側方に突出して位置する。さらに、タンク71の後方には、給水作業をする作業者が立ってその作業をするための作業用スペース60が存在する(図1及び図5参照)。
【0037】
そして、このようにタンク71を固定機枠11側の位置(畦塗り機の前側位置)に固定的に支持するタンク支持体70は、固定機枠11の左側に着脱可能に取り付けられ、互いに離間対向する左右一対のL字状の取付部材(2つのステー)81,82と、これら取付部材81,82間に架設され、タンク71を支持する支持部材(1つのタンク台)83とを有している。支持部材83は板部材87を左側に有している。
【0038】
また一方、図5及び図6にも示すように、サイドカバー手段50は、作業手段7による畦塗り作業時に盛土体36の側方を覆って耕耘土の側方への飛散(吐き出し)を防止する上下動可能な板状のサイドカバー体(ガイド板)91を有している。
【0039】
サイドカバー体91は、作業者によって操作される操作体92の操作(例えば位置変更)に基づいて、畦塗り作業時に上限位置及び下限位置間で移動可能な第1状態(作業状態)と、メンテナンス作業時に盛土体36に対するメンテナンス作業が可能な保持位置(サイドカバー体を持ち上げた持上位置であって下限位置よりも上方の位置)に保持される第2状態(保持状態)とに選択的に切り換え可能である。
【0040】
当該図5及び図6に図示した例では、操作体92は、例えば丸軸状の1本のピン(操作部材)93のみで構成されている。なお、操作体92として、複数、例えば2本のピン(少なくとも2つの操作部材)93,94を使用する例については後述する(図8参照)。
【0041】
そして、サイドカバー体91は、操作体92を構成する1本のピン93が位置決め部である位置決め体96によって第1位置(第1状態に対応する位置)に位置決めされた第1状態では、畦(元畦)の上面に追従するように上限位置及び下限位置間で上下動可能である。
【0042】
他方、サイドカバー体91は、当該サイドカバー体91が持ち上げられて1本のピン93が位置決め体96によって第2位置(第2状態に対応する位置)に位置決めされた第2状態では、作業者が盛土体36に対するメンテナンス作業を行えるように所望の保持位置(上げ位置)に少なくとも下動規制された状態で保持される。
【0043】
そして、このサイドカバー体91の第2状態時においては、図4に示すように、盛土体36は、側方に向かって露出した状態(盛土体の側方がサイドカバー体で覆われない状態)となる。それゆえ、作業者は、盛土体36に対するメンテナンス作業、すなわち例えば耕耘爪52を交換する作業、耕耘爪52の表面や盛土体カバー41の内面に付着した土を落とす作業等を容易に行うことができる。
【0044】
この図4に示す第2状態での保持位置は、図3に示す第1状態での上限位置と同じ(略同じを含む)である。具体的には、この保持位置は、側面視で第2状態のサイドカバー体91と盛土体36の耕耘爪52とが重ならない位置(サイドカバー体が盛土体の耕耘爪よりも上方に位置する位置)である。
【0045】
ここで、図5に示すように、操作体92を位置決めする位置決め体(ピン取付板)96は、サイドカバー体91に取り付けられた取付板部97と、この取付板部97の上部に突設され、サイドカバー体91の上方に位置する断面L字状の突出板部98とを有している。取付板部97の上部には、前後方向に並ぶピン挿入用の第1孔部101及び第2孔部102が形成されている。同様に、突出板部98にも、前後方向に並ぶピン挿入用の第1孔部103及び第2孔部104が形成されている。
【0046】
そして、互いに離間対向する2つの第1孔部101,103によって、操作体92のピン93を第1状態に対応する第1位置に位置決めする第1位置決め部106が構成されている。互いに離間対向する2つの第2孔部102,104によって、操作体92のピン93を第2状態に対応する第2位置に位置決めする第2位置決め部107が構成されている。
【0047】
それゆえ、サイドカバー体91は、ピン93が第1位置決め部106に挿入されて第1位置に位置する場合には第1状態であるが、当該サイドカバー体91が所定の高さ位置まで持ち上げられた状態でピン93が第2位置決め部107に挿入されて第2位置に位置すると第2状態になる。つまり、ピン93の差し替えに基づいて、サイドカバー体91を第1状態及び第2状態に選択的に切り換え可能である。そして、例えば、サイドカバー体91を上限位置(略上限位置を含む)まで持ち上げた状態でのピン93の差し替えのみで、サイドカバー体91を第1状態から第2状態に切り換えることもできる。
【0048】
なお、ピン93は、丸軸部93aと、この丸軸部93aの端部に設けられた頭部93bとを有し、その丸軸部93aには、抜け止め用のRピン105を挿入する孔部93cが形成されている。
【0049】
また、サイドカバー体91は、支持部である支持体110によって上下動可能に支持されている。支持体110は、盛土体カバー41に対して上下方向に回動可能な上下一対で2本の長手状のリンク部材(回動アーム)111,112を有している。
【0050】
各リンク部材111,112の前端部は、盛土体カバー41の側板部44に取り付けられた取付板113に軸部(回動支点)114を介して回動可能に連結されている。各リンク部材111,112の後端部は、サイドカバー体91に軸部(回動支点)115を介して回動可能に連結されている。そして、サイドカバー体91は、両リンク部材111,112の回動に基づいて、畦(元畦)の上面に追従するように盛土体(盛土体カバー)36に対して上下動する。
【0051】
両リンク部材111,112のうち上側のリンク部材111には、下限規制用係合部(下げ止め当接部)116、上限規制用係合部(上げ止め当接部)117及び保持用係合部(固定当接部)118がそれぞれ異なる位置に設けられている。
【0052】
下限規制用係合部116は、第1位置に位置決めされたピン93との係合(当接)によりサイドカバー体91が下限位置よりも下方に移動するのを規制する部分である(図6(a)を参照)。上限規制用係合部117は、第1位置に位置決めされたピン93との係合によりサイドカバー体91が上限位置よりも上方に移動するのを規制する部分である(図6(b)を参照)。保持用係合部(固定用係合部)118は、第1位置とは異なる第2位置に位置決めされたピン93との係合によりサイドカバー体91の少なくとも下方への移動(自重に基づく下動)を規制して当該サイドカバー体91を保持位置に保持する部分である(図6(c)を参照)。
【0053】
ここで、上側のリンク部材111は、直線状で板状の長手部121と、この長手部121の後端部に上方に向かって突出するように一体に設けられた板状の突出部122とを有し、この突出部122には、後方側に向かって開口する凹部分123が切欠き形成されている。
【0054】
そして、下限規制用係合部116は、突出部122の一方面(前側の面)の下部に凹状に形成されている。上限規制用係合部117は、突出部122の一方面の上部に凹状に形成されている。保持用係合部118は、突出部122の他方面(後側の面)の上部に形成されている。換言すると、この保持用係合部118は、突出部122の凹部分123の上部に形成されている。
【0055】
また、サイドカバー体91の後端部には、弾性板であるゴム板126を介して可動カバー体127が取り付けられている。そして、サイドカバー体91と可動カバー体127とがなす角度は、角度調整手段128によって調整可能となっている。角度調整手段128は、複数のピン用孔129が形成された調整板130を有し、調整ピン131を挿入するピン用孔の選択により両カバー体がなす角度を調整可能である。
【0056】
次に、畦塗り機1の作用等を説明する。
【0057】
例えば粘りが強い土質の畦に対して畦塗り作業をする場合には、その強い粘土質の土が畦形成体37の表面に付着してしまうため、その土付着を抑制すべく散水装置8で散水を行う必要がある。
【0058】
このような場合、畦塗り作業の開始前に、作業者は、図7に示すように、トラクタ2の3点リンク3で畦塗り機1を当該図7に示す作業姿勢(タンクの水平姿勢)に設定して、散水装置8のタンク71に対して給水作業を行う。
【0059】
つまり、作業者は、畦塗り機1を田面に接地させた図5に示す作業姿勢にしてから、開閉蓋78をタンク71から一旦取り外して、タンク71の上面開口部(給水口)77を上方に開口させた状態で、例えばポリタンク等の容器90を用いて、当該容器90内の水を上面開口部77からタンク71内に所定量(例えば20リットル或いは30リットル等)まで入れる。
【0060】
このとき、上方に開口した上面開口部77は、固定機枠11の3点連結部20の上部のトップピン23よりも低い低位置に位置するため、作業者はその給水作業を容易に行うことが可能である。
【0061】
そして、給水作業が完了した後、トラクタ2の走行により畦塗り機1を畦に沿って前方(進行方向)に移動させつつ、散水装置8により畦形成体37に向けて散水しながら、畦塗り作業を行う。
【0062】
具体的には、上面削り体38が畦の上面側を耕耘して削り、その後方で盛土体36が田面及び畦を耕耘して土を盛り上げ、その後方で畦形成体37が盛土体36による盛土(耕耘土)を締め固めて畦を形成する。
【0063】
この際、散水ノズル74がタンク71内の水を畦形成体37に向けて散水することで、所望量の水が畦形成体37に供給される。それゆえ、粘りが強い土質であっても、畦形成体37の畦形成部材57における畦側面形成部58及び畦上面形成部59の各表面には土が付着しにくい。なお、例えば土の水分が少なく畦をきれいに塗れない場合等において、散水装置8で土に水を供給してもよい。
【0064】
また、このような畦塗り作業時において、サイドカバー体91は、盛土体36に対して上下動可能な第1状態となっているため、盛土体36の側方を覆った状態で畦の上面に追従して移動し、耕耘爪52からの土が側方へ排出されるのを防止する。その結果、所望量の土が畦形成体37に供給され、仕上りが良好な畦が形成される。
【0065】
また一方、例えば盛土体36に対するメンテナンス作業を行う場合等には、作業者は、まず、例えばサイドカバー体91が下限位置(下限位置から少し持ち上げた位置でもよい)に位置した状態で、ピン93を第1位置決め部106から一旦抜き、その後、サイドカバー体91を所定の高さ位置(具体的には例えば保持位置よりも高い位置)まで人力で持ち上げた状態で、そのピン93を第2位置決め部107に差し込む。
【0066】
このような操作体92である1本のピン93の差し替え(第1位置から第2位置への位置変更)に基づいて、サイドカバー体91の状態が第1状態から第2状態へと切り換えられる。
【0067】
その結果、第2状態となったサイドカバー体91は、盛土体36よりも上方に位置する上げ位置である保持位置に保持されるため、作業者は、盛土体36に対するメンテナンス作業(例えば爪交換や土落とし等)を容易に行うことが可能である。
【0068】
そして、畦塗り機1によれば、散水装置8のタンク71の上面開口部77は、機体6の固定機枠11の3点連結部20の上部のトップピン23の中心よりも下方に位置するため、従来に比べて、タンク71内に水を入れる給水作業がやりやすく、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0069】
また、畦塗り機1で畦塗り作業をする作業時において、平面視で、トラクタ2に対してオフセットした作業状態の作業手段7が入力軸26よりも一側方に位置し、かつ、タンク71が入力軸26よりも他側方に位置するとともに当該タンク71が畦塗り機1の前側に位置するため、全体の重量バランスが良好で、畦塗り作業がやりやすく、作業者の負担軽減をより一層図ることができる。
【0070】
さらに、タンク71を支持するタンク支持体70は、固定機枠11に取り付けられた対をなす取付部材81,82と、これら取付部材81,82間に架設された支持部材83とを有するものであるから、簡単な構成のタンク支持体70によって、タンク71をその全体が固定機枠11のトップピン23よりも下方に位置しかつ可動機枠12の回動支点10よりも前方に位置するように適切に支持できる。
【0071】
また、サイドカバー体91は、操作体92の操作に基づいて第1状態及び第2状態に選択的に切り換え可能であるから、メンテナンス作業の際にサイドカバー体91を第2状態にして所望の上限位置に保持できるため、サイドカバー体91が邪魔にならず、この点からも作業者の負担軽減を図ることができる。
【0072】
さらに、サイドカバー体91は、操作体92を構成する1本のピン93の差し替えに基づいて第1状態及び第2状態に選択的に切り換え可能であるから、作業者は、サイドカバー体91を所定の高さ位置まで持ち上げた状態でピン93を第2位置決め部107に差し込むだけで、サイドカバー体91を第1状態から第2状態へと容易に切り換えることができる。
【0073】
なお、図8に示すように、操作体92として、複数、例えば2本のピン93,94を使用してもよい。
【0074】
この場合、一方のピン93は、第1位置決め部106に挿入されたままであり、他方のピン94は、第2位置決め部107に対して抜き差し(挿入出)される。つまり、サイドカバー体91は、操作体92を構成するピン94の抜き差しに基づいて第1状態及び第2状態に選択的に切り換え可能である。そして、作業者は、サイドカバー体91を所定の高さ位置まで持ち上げた状態でピン94を第2位置決め部107に差し込むだけで、サイドカバー体91を第1状態から第2状態へと容易に切り換えることができる。
【0075】
また、サイドカバー手段50は、図9及び図10に示すような構成のものでもよい。
【0076】
図9及び図10に示す操作体92は、例えば1本のU字ピン(操作部材)141のみで構成されている。U字ピン141は、サイドカバー体91に取り付けられたコ字枠状のピン保持体142によって、前後方向に回動可能でかつ左右方向(水平方向)に移動可能に保持されている。そして、U字ピン141の下側の端部に装着された止め輪143と、ピン保持体142のバネ受け部144との間には、U字ピン141をサイドカバー体91側に向けて付勢する付勢手段であるバネ145が設けられている。
【0077】
また、U字ピン141を位置決めする位置決め部である位置決め体96は、図5に示すものとは形状が異なり、サイドカバー体91に取り付けられた取付板部146と、この取付板部146の上端部に設けられたコ字状部147とを有している。コ字状部147は、互いに離間対向する一対の対向板148,149を有し、一方の対向板148には、前後方向に並ぶピン挿入用の第1孔部151及び第2孔部152が形成されている。他方の対向板149には、前後方向に延在する円弧状のピン案内用の長孔部153が形成されている。
【0078】
そして、第1孔部151によって操作体92のU字ピン141を第1状態に対応する第1位置に位置決めする第1位置決め部106が構成されている。第2孔部152によって操作体92のU字ピン141を第2状態に対応する第2位置に位置決めする第2位置決め部107が構成されている。
【0079】
それゆえ、サイドカバー体91は、U字ピン141が第1位置決め部106に挿入されて第1位置に位置する場合には第1状態であるが、当該サイドカバー体91が所定の高さ位置まで持ち上げられた状態でU字ピン141が第2位置決め部107に挿入されて第2位置に位置すると第2状態になる。つまり、U字ピン141の差し替えに基づいて、サイドカバー体91を第1状態及び第2状態に選択的に切り換えることが可能である。そして、例えば、サイドカバー体91を上限位置(略上限位置を含む)まで持ち上げた状態でのU字ピン141の差し替えのみで、サイドカバー体91を第1状態から第2状態に切り換えることもできる。
【0080】
なお、上記各実施の形態では、第2状態での保持位置(固定位置)は、第1状態での上限位置と同じ(略同じを含む)である場合について説明したが、これには限定されず、上限位置よりも低い位置でもよく、例えば側面視で第2状態のサイドカバー体91と取付具(爪交換の際に作業者が操作する部材)49とが重ならない位置(サイドカバー体が盛土体の爪用の取付具よりも上方に位置する位置)でもよい。また、保持位置は、例えば上限位置よりも高い位置等でもよい。
【0081】
また、2つの位置決め部、すなわち例えば第1位置決め部106及び第2位置決め部107を備えた構成には限定されず、例えば1つの位置決め部(第1位置決め部106又は第2位置決め部107)のみを備えた構成でもよい。
【0082】
また、サイドカバー体と位置決め体とが別体である構成には限定されず、例えば孔等の位置決め部がサイドカバー体の一部に一体に設けられた構成等でもよい。
【0083】
さらに、液体供給手段は、例えば液状の除草剤等の薬剤(液体)や土を固める薬液等を土や作業手段に散布して供給するものでもよい。
【0084】
また、液体供給手段のタンクは、その全体がトップピンの中心よりも下方に位置する構成には限定されず、例えばタンクの一部(例えば液体をタンク内に入れるための開口部)がトップピンの中心よりも下方に位置する構成等でもよい。なお、液体供給手段は必ずしも必要ではなく、液体供給手段を備えない構成でもよい。
【0085】
さらに、畦塗り機は、圃場の隅部でリターン作業可能なリターン式のものでもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 畦塗り機
36 盛土体
37 畦形成体
50 サイドカバー手段
91 サイドカバー体
92 操作体
96 位置決め部である位置決め体
106 第1位置決め部
107 第2位置決め部
110 支持部である支持体
111,112 リンク部材
116 下限規制用係合部
117 上限規制用係合部
118 保持用係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10