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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】物品開口部のテープ状開閉具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44B 99/00 20100101AFI20250220BHJP
【FI】
A44B99/00 611L
A44B99/00 601A
A44B99/00 601Q
A44B99/00 601Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022518049
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016588
(87)【国際公開番号】W WO2021221005
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020079256
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】市川 淳也
(72)【発明者】
【氏名】中塚 芳樹
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2002-0022338(KR,A)
【文献】実開昭58-015620(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0075869(US,A1)
【文献】登録実用新案第3214660(JP,U)
【文献】特開昭62-058606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品開口部のテープ状開閉具の製造方法であって、
熱収縮可能な樹脂チューブ(12)を用意する工程と、
前記樹脂チューブ(12)の中に一定間隔を置いて複数の磁石(13)を配置する工程を有し、
前記樹脂チューブ(12)の中に一定間隔を置いて複数の磁石(13)を配置する工程が、前記磁石(13)を接着剤により付着させた状態のテープ(23)を作成し、これを前記樹脂チューブ(12)の中に封入する工程を有し、
さらに前記チューブを加熱して熱収縮させて前記磁石を固定する工程を有する
方法において、
前記の磁石(13)を付着させた状態のテープ(23)を作成し、これを前記チューブ(12)の中に封入する工程が、次の(a)~(h)を有するものである方法。
(a)治具(20)上に一定間隔を置いて設定された複数の固定磁石(21)の上に、第1テープ(22)を載せる。
(b)前記第1テープ(22)の上に複数の磁石(13)を置いて、前記前記第1テープ(22)を介して、前記固定磁石(21)に付着させる。
(c)前記前記第1テープ(22)上の磁石(13)に粘着性を与える。
(d)前記第1テープ(22)上の磁石(13)の上に第2テープ(23)を載せて、粘着性のある前記磁石(13)に付着させる。
(e)前記第1テープ(22)と前記第2テープ(23)を前記固定磁石(21)から引きはがす。
(f)前記第1テープ(22)と前記第2テープ(23)を互いに引きはがし、前記磁石(13)が付着した前記第2テープ(23)のみを取り出す。
(g)前記磁石(13)が付着した前記第2テープ(23)に錘(25)を取り付ける。
(h)前記錘(25)を先頭にして前記樹脂チューブ(12)の中に前記磁石(13)が付着した前記第2テープ(23)を挿入する。
【請求項2】
さらに前記樹脂チューブ(12)の長手方向両末端においても溶着部(14,15;14A,15A;14B,15B)を形成する工程
を有する請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品開口部のテープ状開閉具とその製造方法並びにこの開閉具を使用した物品に関する。「物品」は例えば、衣服、カバン、靴、開閉可能な容器などである。
【背景技術】
【0002】
物品開口部のテープ状開閉具は多種類のものが知られている。テープに一定間隔を置いて複数のスナップボタンを設定したもの、務歯とスライドファスナー引手を組み合わせたもの、テープ状にした面ファスナー等が周知である。
【0003】
以下に説明する本発明では、複数の永久磁石小片をテープ状に配置したものを使用する。この種の先行従来技術としては、例えば、実開昭59-70508、実開平4-74010、特開平11-269713、特開2001-137015、特表2013-538435などがある。
【0004】
本発明に最も近いと思われる特表2013-538435の封入装置によれば、第1可撓性ストリップ10(本段落および次段落における符号はこの従来技術文献記載のものである)と、第2可撓性ストリップ20を有する。前者には磁石片18を組み込むことができる空洞16が、後者には磁石28片を組み込むことができる空洞26がそれぞれ設けられている。第1膜19により磁石18片が空洞16に埋め込まれ、第2膜29より磁石28片が空洞16に埋め込まれる。第1ストリップ10及び第2ストリップ20は、互いに接触して、磁石片18及び28が磁気的に互いに引き付けられる。
【0005】
第1膜19と第1可撓性ストリップ10、および、第2膜29と第2ストリップ20は、「機械的に接続」([0187])、または「高周波溶接、超音波溶接、熱溶接、縫い込み、シールテープ、接着又はこれらの組合せで構成される群から選択」([0188])して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭59-70508
【文献】実開平4-74010
【文献】特開平11-269713
【文献】特開2001-137015
【文献】特表2013-538435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特表2013-538435(特許文献5)によれば、磁石片を埋め込むために、ストリップ本体と磁石片の表面を覆う膜を機械的または化学的に接着させる。そして、その接着により、磁石が空洞の中に位置固定される。いちいち紹介しないが、残りの特許文献1~4もこの点では同様である。
【0008】
上記従来技術の方法では、ストリップ本体と磁石片の表面を覆う膜の接着が十分に行われなかったときには、隙間から水分が侵入して磁石に錆を生じさせたり、接合部が破損して、極端なケースでは磁石が飛び出したりすることがありうる。本発明は、樹脂を熱収縮させて磁石をしっかりと位置固定させることにより、これらの問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、物品開口部のテープ状開閉具の製造方法であって、熱収縮可能な樹脂チューブを用意する工程と、前記樹脂チューブの中に一定間隔を置いて複数の磁石を配置する工程を有し、前記樹脂チューブの中に一定間隔を置いて複数の磁石を配置する工程が、前記磁石を接着剤により付着させた状態のテープを作成し、これを前記樹脂チューブの中に封入する工程を有し、さらに前記チューブを加熱して熱収縮させて前記磁石を固定する工程を有するものにおいて、前記の磁石を付着させた状態のテープを作成し、これを前記チューブの中に封入する工程が、次の(a)~(h)を有するものである方法である
(a)治具上に一定間隔を置いて設定された複数の固定磁石の上に、第1テープを載せる。
(b)前記第1テープの上に複数の磁石を置いて、前記前記第1テープを介して、前記固定磁石に付着させる。
(c)前記前記第1テープ上の磁石に粘着性を与える。
(d)前記第1テープ上の磁石の上に第2テープを載せて、粘着性のある前記磁石に付着させる。
(e)前記第1テープと前記第2テープを前記固定磁石から引きはがす。
(f)前記第1テープと前記第2テープを互いに引きはがし、前記磁石が付着した前記第2テープのみを取り出す。
(g)前記磁石が付着した前記第2テープに錘を取り付ける。
(h)前記錘を先頭にして前記樹脂チューブの中に前記磁石が付着した前記第2テープを挿入する。
【0010】
別の態様では、前記チューブの中に複数の磁石だけでなく、これらの磁石を付着させた状態のテープも併せて封入する。このテープは、テープ状開閉具を製造する一実施態様の方法において必要とされるものである。
【0011】
好ましくは、前記熱収縮可能な樹脂チューブは長手方向に切開部のない完全チューブを使用する。
【0012】
別の形態では、前記熱収縮可能な樹脂チューブとして長手方向に1筋の溶着部を有するチューブを使用する。
【0013】
さらに別な形態では、前記熱収縮可能な樹脂チューブとして長手方向に2筋の溶着部を有するチューブを使用する。
【0014】
前記各態様の前記熱収縮可能な樹脂によるチューブは長手方向両末端においても溶着部を有する。
【0015】
本発明は物品開口部のテープ状開閉具の製造方法でもある。第1の方法によれば、熱収縮可能な樹脂チューブを用意する工程と、前記チューブの中に一定間隔を置いて複数の磁石を配置する工程と、前記チューブを加熱して熱収縮させて前記磁石を固定する工程を有し、前記樹脂チューブの中に一定間隔を置いて複数の磁石を配置する工程が、前記磁石を接着剤により付着させた状態のテープを作成し、これを前記樹脂チューブの中に封入する工程を有することを特徴とする。
【0016】
第2の方法によれば、第1の方法に加えて、前記樹脂チューブの長手方向両末端においても溶着部を形成する工程を有することを特徴とする。
【0017】
第3の方法によれば、前記の磁石を付着させた状態のテープを作成し、これを前記チューブの中に封入する工程が、後記[0021]にて記載する工程(a)~(h)を有するものである。
【0018】
好ましくは、前記各方法において、長手方向両末端においても加熱して溶着部を形成する工程をさらに有する。この工程は、可能であれば前記各方法における溶着工程と同時に行うことが経済的である。
【0019】
前記第1の方法において、「前記チューブの中に一定間隔を置いて複数の磁石を配置する工程」は、好ましくは、磁石を付着させた状態のテープを作成し、これを前記チューブの中に封入することからなる。
【0020】
好ましくは、「前記磁石を付着させた状態のテープを作成し、これを前記チューブの中に封入する方法」は次のようにして行う。
【0021】
(a)治具上に一定間隔を置いて設定された複数の固定磁石の上に、第1テープを載せる。
(b)前記第1テープの上に複数の磁石を置いて、前記前記第1テープを介して、前記固定磁石に付着させる。
(c)前記前記第1テープ上の磁石頭部にテープに対する粘着性を与える。
(d)前記第1テープ上の磁石の上から第2テープを載せて、粘着性のある前記磁石頭部に付着させる。
(e)前記第1テープと前記第2テープを前記固定磁石から引きはがす。
(f)前記第1テープと前記第2テープを互いに引きはがし、前記磁石頭部が付着した前記第2テープのみを取り出す。
(g)前記磁石頭部が付着した前記第2テープに錘を取り付ける。
(h)前記錘を先頭にしてチューブの中に前記磁石頭部が付着した前記第2テープを挿入する。
【0022】
使用するチューブ用の樹脂としては、熱収縮および熱溶着が可能な樹脂であればどのようなものでもよい。そのような樹脂としては、ポリオレフィン系、シリコン系、フッ素樹脂系などそれ自体周知のものを用いることができる。
【0023】
使用する磁石としては周知の永久磁石を使用することができる。永久磁石としては、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石などそれ自体周知のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の物品開口部のテープ状開閉具は、熱収縮可能な樹脂によるチューブと、このチューブの中に一定間隔を置いて配置される複数の磁石を有する。前記磁石は熱収縮後の前記樹脂により封入されているので、一定間隔で位置固定するのが容易であり、水分の侵入による磁石のさび発生やテープ内の磁石の破損の危険を減少させることができる。
【0025】
特に樹脂として、切開部のないチューブを使用すると、両端部を除き途中に溶着部がなくなるため、外観が美しく手触りも滑らかで、衣服やカバン開口部に取り付けやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明実施例1のテープ状開閉具を開閉部に使用したカバンの斜視図である。
図2】本発明実施例1のテープ状開閉具の(a)側面図、(b)平面図、(c)前記(b)の横断面図、(d)前記(a)の横断面図である。
図3】本発明実施例1のテープ状開閉具の製法工程(a)(b)を示す斜視図である。
図4】本発明実施例11のテープ状開閉具製法において、着磁方法を示す斜視図である。
図5】本発明実施例2のテープ状開閉具の製法工程(a)(b)(c)を示す斜視図である。
図6】本発明実施例4のテープ状開閉具の製法工程(a)(b)を示す斜視図である。
図7】本発明実施例1のテープ状開閉具の磁極配置例(a)(b)を示す平面図である。
図8】本発明実施例2のテープ状開閉具の磁極配置例(a)(b)を示す平面図である。
図9-1】実施例1のテープ状開閉具の製造段階(a)~(d)を示す各側面図である。
図9-2】実施例1のテープ状開閉具の製造段階(e)(f)を示す各側面図である。
図9-3】実施例1のテープ状開閉具の製造段階(g)~(i)を示す各側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0028】
図1は本発明実施例1のテープ状開閉具1を開口部11に使用したカバンBの斜視図である。このカバン開口部11は、開閉具1の磁石が設置されていない任意の場所で指を開口部11に差し込むことができ、そこから指の力で磁石の吸着力に逆らって開口部11を大きく開くことができる。指を離せば磁石の吸着力によりたちまち開口部11は自動的に閉鎖する。そのため、不注意により開口部を閉めるのを忘れ、開けっ放し状態になって、スリに中身を抜き取られるというようなことがなくなる。
【0029】
図示しないが、カバンB以外にも一般に開閉部を有する物品に使用することができる。例えば、ズボンやスカートの開閉部、ポケットの開閉部、袖、手袋の挿入口、靴、ブーツ、開閉可能な容器などである。例えばズボンに使用した場合、用を足した後、前側開口部を閉め忘れて恥ずかしい思いをするようなことがなくなる。
【実施例1】
【0030】
図1で使用されているテープ状開閉具1は本発明実施例1に係るものである。図2に示すように、チューブ状樹脂12の中に円板状の磁石13が複数個、一定間隔で設定されており、その位置は収縮変形した樹脂により固定されている。
【0031】
このテープ状開閉具1は、両末端14,15が閉鎖されているので、密封状態であり、水分の侵入を許さない。磁石13同士の間は空気以外に何もない空間である。装飾その他の必要に応じて、各磁石の間を色彩付き粉末等で充填させることもできる。
【0032】
樹脂12としては、熱収縮および熱溶着が可能な樹脂であればどのようなものでもよい。そのような樹脂としては、ポリオレフィン系、シリコン系、フッ素樹脂系などそれ自体周知のものを用いることができる。
【0033】
磁石13としては周知の永久磁石を使用することができる。永久磁石としては、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石などそれ自体周知のものを用いることができる。
【0034】
使用する磁石13の数は用途に応じて自由に設定することができる。数メートルから数十メートルの長尺の磁石付きテープを用意しておき、用途に応じて作業現場で切断して必要な数の磁石を有する長さのテープとすることもできる。
【0035】
磁石13同士の間隔も用途に応じて長短自由に設定することができる。通常必要とされる間隔は8mm~50mmで十分であろう。50mmを超えると開口部11を必ずしも十分に閉鎖することができなくなる。
【0036】
磁石13の大きさは使用する使用目的やチューブの直径との兼ね合いで決定すればよい。一般に直径が3mm~15mmあれば十分である。チューブの直径は、熱収縮前の状態において、磁石の最大径部分よりも1~2mm程度大きなものを使用する。
【0037】
磁石13の形状は円板に限らず、どのようなものでもよいが、接触面積が大きい平面を有するもの(立方体、直方体、など)が好ましい。球体など接触面積が少ないものは適当とは言えない。
【0038】
複数の磁石13の磁極配置も用途や必要に応じて自由である。図5に磁極配置例を示した。(a)ではテープの裏表ともにS極とN極を交互に配置してする。(b)ではテープの表側はS極ばかりとし、裏側はN極ばかりとしている。
【0039】
なお、テープ状開閉具1の中には着磁前の磁化していない金属片を設定しておき、位置固定させた後で着磁させることも可能である。このようにすることにより、熱収縮前に磁石同士が付着してしまい、一定間隔を維持できなくなるような事態を避けることができる。着磁している様子を図4に示す。(a)のようにして配置して着磁すれば、S極とN極を交互に設定することができ、(b)のようにして配置して着磁すれば、S極とN極を1個おきに着磁することができる。
【0040】
このテープ状開閉具1を製造するには、図3に示すように、チューブ12の一端から一定間隔をあけるようにして円板状磁石13を押し込んだ後、ヒートガンや熱風などで加熱し、熱収縮させることができる。この実施例ではチューブ12の直径は7mm、円板状磁石13の直径は6mm、高さは3mmであった。実施例1の作業は手作業で行ったが、機械化によって大量生産することが可能である。両末端14,15も同様に熱処理して密封する。
【0041】
磁石をチューブに封入する際、手作業で磁石を並べるのは時間がかかると共に磁石の配置が不正確になりがちである。正確に一定間隔を置いて磁石をチューブに封入するには次のような方法を用いることが好ましい。
【0042】
(a)図9(a)(b)に示すように、治具20上に一定間隔を置いて設定された複数の固定磁石21の上に、第1テープ22を載せる。第1テープ22は固定磁石21の上に載せているだけであり、固定はしない。
(b)図9(c)に示すように、第1テープ22の上に複数の磁石13を置いて、第1テープ22を挟むように固定磁石21に磁力で付着させる。
(c)図9(c)の状態のときに、前記第1テープ22上の磁石13の頭部にテープに対する粘着性を与える。その方法は、例えば、磁石13の頭部131に接着剤(図示せず)を塗布したり、次記する第2テープとして粘着テープを使用したりすることである。
(d)第1テープ22上の磁石13の上から第2テープ23を載せて、磁石13に付着させる。
(e)第1テープ22と第2テープ23を固定磁石21から引きはがす。第1テープ22を使用したのは、第2テープ23上の磁石13が固定磁石21に直接付着して容易に離れなくなるのを防止するためである。図9-2(e)のように、第1テープ22を持ち上げれば、磁石13付きの第2テープは固定磁石21から離れて持ち上がる。
(f)図9-2(e)(f)に示すように、第1テープ22と第2テープ23を互いに引きはがし、磁石13が付着した第2テープ23のみを取り出す。前記第1テープ22はここで用済みとなるので取り除く。
(g)磁石13が付着した第2テープ23に、錘24付きの導入糸25を取り付ける。
(h)チューブ12の中に磁石13が付着した前記第2テープ23を挿入する。このとき、チューブ12を縦にして、錘25の重力を利用し導入糸24と磁石13付きの第2テープ23をチューブの中に挿入する。それ以後の工程(図9-3(i))は前記のとおりである。
【0043】
この方法では、磁石13だけでなく、これを付着させた第2テープ23が完成品のテープ状開閉具の中に残ることになる。チューブ12が透明な場合、中のテープ23が見栄えを悪くすることもあるかもしれないが、チューブ23を不透明とすることにより、それは避けられる。また、後記するように、完成品のテープ状開閉具は、カバンなどのパイピングと呼ばれる袋状の通路(図示せず)の中に収納されることが多いので、通路の中に隠れてしまい外観はあまり問題とならない。
【0044】
この実施例で使用したチューブは住友電気工業株式会社製の「スミチューブV(300V)」(同社の登録商標)として知られる透明難燃収縮チューブであり、難燃性ポリ塩化ビニル樹脂からなる。収縮率/内径収縮率は50%以上、長さ変化率-30%以上であった。
【0045】
このテープ状開閉具1を図1のカバンBに取り付けるには、カバンの左右開口部にこのテープ状開閉具1を収納するためのパイピングを設け、その中に設置した。左右テープ状開閉具の磁石13の位置がほぼ一致し、かつS極とN極を対向させるように設置したのはもちろんである。
【実施例2】
【0046】
図5は実施例2に係るテープ状開閉具1Aの製造方法を示している。この実施例では、熱収縮可能なチューブ12Aの長手方向に1本の切開部16Aを設け、この切開部16Aを通して、複数の磁石13Aを一定間隔で設定し(a)(b)、切開部16Aの縁17A同士を溶着させた後、樹脂全体を熱収縮させた(c)。両末端14A,15Aも溶着させる。このようにして、図7に示すような、1筋の溶着部17Aを有するテープ状開閉具1Aが得られた。
【0047】
実施例2に係るテープ状開閉具1Aを物品に取り付けるには実施例1のように袋状通路の中を通すだけでなく、切開部の溶着部17Aを利用して物品開口部に縫着したり接着したりすることができる。
【実施例3】
【0048】
実施例2では長手方向に1本の切開部を有するチューブを使用したが、やや幅広の平坦な熱収縮可能な樹脂板に置き換えることができる。その樹脂板を長手方向の中心線に沿って折りたたみ、実施例2と同様に磁石を封入して、長手方向の縁同士および両末端を溶着させ、その後、全体を熱収縮させる。実施例2と実施例3との相違点は屈曲部があらかじめ形成されているか、折り畳みにより後で形成されるかの違いだけで、実質的に同じである。
【実施例4】
【0049】
実施例4では、図6に示すように、2枚の熱収縮可能な樹脂板12B1,12B2を使用する。両者の間に複数の磁石13Bを一定間隔で設定し(a)、2枚の樹脂板の長手方向左右端部同士17B1,17B2を溶着させた後、樹脂全体を熱収縮させた。このようにして、図6(b)に示すような、2筋の溶着部17B1,17B2を有するテープ状開閉具1Bが得られた。両末端14B,15Bも溶着して密封する。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B テープ状開閉具
11 開閉部
12, チューブ状樹脂.
12A 切開部を有するチューブ状樹脂
12B1,12B2 2枚の平坦な樹脂
13,13A ,13B 磁石
14,15;14A,15A;14B,15B 両末端
16A 切開部
17A 切開縁(1筋の溶着部)
17B1,17B2 左右端部(2筋の溶着部)
20 治具
21 固定磁石
22 第1テープ
23 第2テープ
24 錘
25 導入糸
B カバン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】