(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】帽子と、帽子用部品及び帽子の加工方法
(51)【国際特許分類】
A42B 1/018 20210101AFI20250220BHJP
A42B 1/22 20060101ALI20250220BHJP
A42B 1/24 20210101ALI20250220BHJP
【FI】
A42B1/018 T
A42B1/22 A
A42B1/24 N
(21)【出願番号】P 2024130619
(22)【出願日】2024-08-07
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324008135
【氏名又は名称】有限会社ドラマティック・マリー
(74)【代理人】
【識別番号】110002446
【氏名又は名称】弁理士法人アイリンク国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 牧子
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-050128(JP,U)
【文献】登録実用新案第3051609(JP,U)
【文献】登録実用新案第3049348(JP,U)
【文献】特開2011-047075(JP,A)
【文献】特開2000-192316(JP,A)
【文献】実開昭50-116610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/018
A42B 1/22
A42B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子本体と、
帯状をなし長さ方向に複数の挿通孔が設けられ、上記帽子本体の被り口の内周面に設けられた保持部材と、
上記挿通孔に挿通可能な棒状又は板状をなし、当該帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される挟持片と
を備え、
上記複数の挿通孔は、
上記帽子本体の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように上記保持部材に設けられ、
上記挟持片は、
上記保持部材の挿通孔に挿通されることによって、当該挟持片の一部分が上記保持部材で保持され、当該挟持片の他の部分が上記帽子本体の内部に露出する帽子。
【請求項2】
上記挟持片は、上記被り口の内周寸法の2分の1以上かつ10分の9未満の長さを有するU字又はC字状をなし、
当該挟持片の長さ方向の中間部分が上記保持部材で保持される
請求項1に記載の帽子。
【請求項3】
帯状をなし長さ方向に複数の挿通孔が設けられ、帽子の帽子本体の被り口の内周面に取り付けられる保持部材と、
上記挿通孔に挿通可能な棒状又は板状をなし、上記帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される挟持片と
を備え、
上記複数の挿通孔は、
上記帽子本体の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように上記保持部材に設けられ、
上記挟持片は、
両端が間隔を保ったC字又はU字状であり、
上記保持部材の挿通孔に挿通されることによって、当該挟持片の一部分が上記保持部材で保持され、当該挟持片の他の部分を上記帽子本体の内部に露出させる
帽子用部品。
【請求項4】
帯状をなし長さ方向に間隔を保って複数の挿通孔が設けられた保持部材の挿通孔を、帽子の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置させて、上記保持部材を当該帽子の被り口の内周面に取り付けるとともに、上記帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される棒状又は板状の挟持片を、上記保持部材の上記挿通孔に挿通して、上記挟持片の一部分を上記保持部材で保持させ、上記挟持片の他の部分を上記帽子本体の内部に露出させる
帽子の加工方法。
【請求項5】
所定の長さを有する帯本体と、
長さ方向に所定の間隔を保って配置された複数の孔位置マークが表示されたシールを備え、
上記帯本体に上記シールを重ね、孔位置マークに沿って上記挿通孔を形成する
請求項4に記載の帽子の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風が吹いても飛ばない帽子と、帽子用部品及び帽子の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、強い風によって帽子が飛ばされないようにするため、様々な工夫がなされている。例えば、顎紐やゴムを顎にかけて、脱げた帽子が飛んで行かないようにすることが行なわれている。しかし、顎紐の装着はファッション性が劣るため、乳幼児用などを除いては、ほとんど採用されていない。
【0003】
一方、顎紐の代わりに、着用者の頭部を挟持する挟持片を用いることも考えられている。
特許文献1の帽子は、
図7に示すもので、本体2とつば3とからなる帽子1の被り口4の内周面に袋部5を設け、この袋部5の中に、頭の寸法に応じて弾性変形する挟持片7が収容されている。
挟持片7は、
図8に示すようなC字状の弾性部材で、両端を広げて内径を大きくして、帽子1の着用者の頭に被せられるようにしている。
【0004】
上記袋部5は、被り口4の内周に沿って設けられたリボン6に、本体2の後頭部側を残して布製の帯部材を縫い付けて形成され、その両端に挿入孔5a,5bを開口させている。これら挿入孔5a,5bから挟持片7を挿入したり取り外したりできるようにしていた。挿入孔5a,5bは挟持片7の両端に対応する位置にあって、挿入時には、挟持片7の全長が袋部5内に収容される。
したがって、帽子1を被るときには、袋部5とともに挟持片7を開いて、本体2を頭部に装着すると、挟持片7の弾性力で着用者の頭部が軽く押さえ付けられ、風が吹いても帽子1が飛ばないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の飛ばない帽子1は、挟持片7を広げて被り、装着中は、頭部に軽い締め付け力が作用するようにしたものである。したがって、被り口4の内周は、袋部5に挿入された状態の挟持片7を広げたときに一緒にその内径が大きくなるような余裕をもった寸法を備えている。
このように、本体2の被り口4の内径は、変化する挟持片7の外径に対して余裕をもって作られているため、挟持片7と一体的に拡径しない部分では、被り口4の外周に皺が寄ってしまう。
特に、着用者の頭部に対して余裕を保った寸法の帽子では、挟持片7で締め付けられない部分の長さが長いので、被り口4の外周の皺が目立ってファッション性が損なわれてしまう。
【0007】
この発明の目的は、デザインやファッション性を維持しながら、強い風が吹いても飛ばない帽子と、その帽子用部品及び帽子の加工方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の帽子は、帽子本体と、帯状をなし長さ方向に複数の挿通孔が設けられ、上記帽子本体の被り口の内周面に設けられた保持部材と、上記挿通孔に挿通可能な棒状又は板状をなし、当該帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される挟持片とを備え、上記複数の挿通孔は、上記帽子本体の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように上記保持部材に設けられ、上記挟持片は、上記保持部材の挿通孔に挿通されることによって、当該挟持片の一部分が上記保持部材で保持され、当該挟持片の他の部分が上記帽子本体の内部に露出する。
【0009】
第2の発明の帽子は、上記挟持片が、上記被り口の内周寸法の2分の1以上かつ10分の9未満の長さを有するU字又はC字状をなし、当該挟持片の長さ方向の中間部分が上記保持部材で保持されている。
【0010】
第3の発明の帽子用部品は、帯状をなし長さ方向に複数の挿通孔が設けられ、帽子の帽子本体の被り口の内周面に取り付けられる保持部材と、上記挿通孔に挿通可能な棒状又は板状をなし、上記帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される挟持片とを備え、上記複数の挿通孔は、上記帽子本体の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように上記保持部材に設けられ、上記挟持片は、両端が間隔を保ったC字又はU字状であり、上記保持部材の挿通孔に挿通されることによって、当該挟持片の一部分が上記保持部材で保持され、当該挟持片の他の部分を上記帽子本体の内部に露出させる。
【0012】
第4の発明の帽子の加工方法は、帯状をなし長さ方向に間隔を保って複数の挿通孔が設けられた保持部材の挿通孔を、帽子の被り口の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置させて、上記保持部材を当該帽子の被り口の内周面に取り付けるとともに、上記帽子の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される棒状又は板状の挟持片を、上記保持部材の上記挿通孔に挿通して、上記挟持片の一部分を上記保持部材で保持させ、上記挟持片の他の部分を上記帽子本体の内部に露出させる。
【0013】
第5の発明の帽子の加工方法は、所定の長さを有する帯本体と、長さ方向に所定の間隔を保って配置された複数の孔位置マークが表示されたシールを備え、上記帯本体に上記シールを重ね、孔位置マークに沿って上記挿通孔を形成する。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、保持部材を介して帽子本体に保持された挟持部材が頭部を挟持することで、風によって帽子本体が飛ぶこと防ぐことができる。特に、帽子本体の被り口の前方領域が挟持片によって押さえられるので、前方から吹く風に強く、走っているときに帽子本体が浮き上がることもない。
また、挟持片の一部分のみが被り口に沿った保持部材に挿通されるので、挟持片と、被り口の内周寸法とが一致していなくても、被り口の外周に皺が寄るなど、帽子本体の外観へ影響を与えることがない。したがって、被り口の内周寸法が異なっていても、そのデザインやファッション性を損なうことなく被ることができる。
【0015】
第2の発明によれば、着用者の頭部外周の2分の1以上が挟持片で囲まれ、挟持片の両端が対向する開口部分の長さが頭部の直径よりも小さいので、風などで挟持片に力が作用しても、上記開口部分が開いて頭部から挟持片が外れることはない。また、挟持片の両端部分が開いているので、後頭部において被り口の内周が頭部に押し付けられることがなく、装着時に締め付けられるような違和感を低減させることができる。
【0016】
第3の発明によれば、保持部材と挟持片とを用いて、ファッション性を維持し、風で飛ばない帽子を作成したり、既存の帽子を加工したりすることができる。
【0017】
第4,5の発明によれば、既存の帽子を、ファッション性を維持した風で飛ばない帽子に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態の帽子の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の帽子の底面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の保持部材の部分拡大図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の挟持片の平面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の保持部材の正面図である。
【
図8】
図8は、従来の帽子に用いる挟持片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の帽子の外観斜視図である。
図2は、第1実施形態の底面図である。
図3は第1実施形態の保持部材の部分拡大図、
図4は挟持片の平面図である。
第1実施形態の帽子10は、帽子本体11の周囲につば12を備えている。
また、
図2の底面図に示すように、帽子本体11の被り口13の内周面には被り口13に沿って帯状の保持部材14が設けられ、この保持部材14で挟持片15が保持されている。
なお、
図1,2において、Fは帽子10の前方(着用者の正面側)、Rは後方(着用者の背中側)を示している。
そして、被り口13を2分する中心線L1を境にして、F側の領域を前方領域といい、R側の領域を後方領域ということにする。
【0020】
保持部材14は、
図3に示すような布製の帯の幅方向両端を、被り口13の内周に沿って取り付けることによって構成されている。保持部材14には後で説明する挟持片15を挿通可能にする複数の、ここでは2個の挿通孔14a,14bが保持部材14の長さ方向に沿って設けられている。
これら挿通孔14a,14bは、帽子本体11の前方領域内に位置している。具体的には、上記挿通孔14aと14bとの中心(
図3に示す中心線L2)を、帽子本体11の正面(F)に合わせている。
保持部材14は、被り口13の全周と同等の長さであってもよいし、前方領域の一部のみに対応する長さでもよい。上記挿通孔14a,14bが、被り口13の内周面で内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように設けられればよく、保持部材14の長さは限定されない。
【0021】
第1実施形態の帽子10は、帽子10の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形する挟持片15を備えている。挟持片15は、従来の挟持片7と同様に、棒状又は板状、例えば略C字のバネ状の樹脂製部材である。C字の開口部分に当たる端部15a,15bを矢印方向に開くと、
図4に示すように、二点鎖線のように弾性変形する。
また、挟持片15のC字に沿った全長は、被り口13の内周寸法の2分の1以上かつ10分の9未満の長さを有する。
なお、挟持片15は、装着者の頭部の外周に沿って弾性変形可能であれば、C字の形状は限定されない。例えば、挟持片15は、U字の形状でもよいし、その他の形状でもよい。
【0022】
実施形態の帽子10では、上記挟持片15の一部分が、保持部材14で保持されている。
具体的には、挟持片15の一方の端部15aを、保持部材14に形成された一方の挿通孔14aから保持部材14内に挿入し、もう一方の挿通孔14bから引き出して、
図2に示すように、挟持片15の中間部分である中央部15cのみが保持部材14で保持されるようにする。したがって、挟持片15において上記中央部15c以外の部分は、保持部材14から、被り口13の内側すなわち帽子本体11の内部に露出している。
【0023】
[作用・効果等]
第1実施形態の帽子10を被る際には、挟持片15を開いて前方から頭部に嵌めつつ、帽子本体11を上から押さえるようにする。
帽子10は、帽子本体11の内部で、挟持片が着用者の頭部を挟持することで、風によって帽子本体11が飛ぶこと防ぐことができる。特に、帽子本体11の被り口13の前方領域が挟持片15によって押さえられるので、前方から吹く風に対する抵抗力が強く、走っているときに帽子本体11が浮き上がることもない。
【0024】
この帽子10では、挟持片15の一部分(中央部15c)のみが被り口13に沿った保持部材14に挿通されるので、挟持片15と、被り口13の内周寸法とが一致していなくても、被り口13の外周に皺が寄るなど、帽子本体11の外観へ影響を与えることがない。したがって、被り口13の内周寸法が異なっていても、そのデザインやファッション性を損なうことなく被ることができる。また、挟持片15と被り口13の内周寸法とが一致していなくても、帽子本体11が浮き上がることもなく、そのデザインやファッション性を損なうこともないので、着用者は、被り口13の内周寸法が広めでヘアスタイルを崩さない帽子を安心して選ぶことができる。
【0025】
また、挟持片15の長さを、被り口13の内周寸法の2分の1以上にして、両端部15a,15bの開口部分の長さが頭部の直径よりも小さくしている。すなわち、両端部15a,15bが後頭部に位置されるようになるので、風などで挟持片15に力が作用しても、上記開口部分が開いて頭部から挟持片15が外れることはない。また、頭部外周の2分の1以上が囲まれるので、挟持片15の弾性による締め付け力が一部に集中することがなく、挟持片15の装着による違和感も少ない。
【0026】
さらに、挟持片15の長さを、被り口13の内周寸法の10分の9未満にしているので、挟持片15を被り口13に沿わせて頭部に装着した状態で、後頭部に挟持片15の端部15aと端部15bとの間隔が維持される。挟持片の両端部の間が開いているので、後頭部において被り口13の内周が頭部に押し付けられることがなく、装着時に締め付けられるような違和感を低減させることができる。
特に、挟持片15の両端部15a,15bが重なった状態で、帽子本体11で押さえられると、押圧力が集中して後頭部が痛くなることもあるが、この実施形態では、挟持片15の両端部15a,15bの間隔が保たれるので、そのようなことはない。
【0027】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の帽子に設けられた保持部材16の正面図である。
第2実施形態の帽子は、保持部材16が、保持部材14と異なるが、その他の構成は第1実施形態と同じである。したがって、以下でも、第1実施形態を示した
図1,2を参照する。第2実施形態は、
図1,2の保持部材14を保持部材16に替えたものとなる。
【0028】
保持部材16は、4個の挿通孔16a,16b,16c,16dが形成されている。そして、図中左側の挿通孔16a,挿通孔16bの間隔d1と、右側の挿通孔16c,16dの間隔d2とを等しくし、間隔d1,d2を中央の挿通孔16b,16cの間隔d3より小さくしている。
【0029】
第2実施形態においても、保持部材16は帽子本体11の被り口13の内周に沿って設けられ、上記挿通孔16a,16b,16c,16dが、被り口13の内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するようにされている。例えば、挿通孔16bと挿通孔16cとの中央が帽子本体11の正面に来るようにしている。
また、4個の挿通孔16a,16b,16c,16dのいずれか2個に、挟持片15を挿通し、挟持片15の一部分(中間)が保持部材16で保持されている。
【0030】
[作用・効果等]
第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、挟持片15を頭部に装着することによって、帽子10が風で飛ばないようにすることができる。しかも、挟持片15の一部分のみを保持するようにしているため、帽子本体11に皺が寄るようなこともなく、ファッション性を維持できる点も、第1実施形態と同じである。
【0031】
さらに、挿通孔16a,16b,16c,16dの数を多くしているため、どの挿通孔に挟持片15を挿通させるかによって、挟持片15の保持長さを調整することができる。例えば、両端の挿通孔16aと挿通孔16dに挟持片15を挿通させた場合には、挟持片15を保持する保持長さが最長となり、挿通孔16a,16bに挿通させた場合には、保持長さが最短となる。中央の挿通孔16b,16cに挿通させた場合は、保持長さが最短距離より少し長くなり、挿通孔16a,16cに挿通させた場合には、保持長さがそれより少し長くなる。このように、挟持片15を挿通させる挿通孔の組み合わせによって、挟持片15の保持長さを調整することができる。
【0032】
このように挟持片15の保持長さを調整することで、帽子本体11に対する押さえ力を調整することができる。例えば、挟持片15を両端の挿通孔16a,16dに挿通させて保持長さを長くすれば、被り口13の長い範囲が押さえられ、帽子本体11をより確実に保持することができる。このとき、挟持片15は、両端の挿通孔16a,16dのみに挿通させてもよいし、保持部材16を縫うように、挿通孔16a,16b,16c,16dの全てに挿通させてもよい。
【0033】
また、挟持片15と被り口13の寸法や形状の差が大きい場合には、挟持片15の保持長さを小さめにすることで、帽子本体11の外周に皺が寄ることを抑制することができる。したがって、被り口13の大きさや形状と、挟持片15とのバランスによって、挟持片15の保持長さを選択することが好ましい。
この実施形態では、挿通孔16b,16cの中央を正面に位置させて、配置を左右対称にしているので、保持長さが短くなる挿通孔16b,16cの組や保持長さが長くなる挿通孔16a,16dの組を選択的に用いるようにすれば、バランスよく、帽子本体11を保持することができる。
さらに、保持部材16の挿通孔16a,16b,16c,16dの間隔は、特に限定されず、被り口13の寸法などに合わせて設定することができる。例えば、成人用Mサイズの帽子の場合、
図5に示す間隔d1,d2を約3〔cm〕、間隔d3を約4〔cm〕とすることが好ましい。
【0034】
なお、上記第1、第2実施形態は、保持部材14,16及び挟持片15を備えた帽子本体11であるが、上記保持部材14,16及び挟持片15を帽子用部品として用意してもよい。
上記帽子用部品を用いることによって、様々なデザインの帽子を、風で飛ばない帽子に加工することができる。さらに、上記した加工方法により、帽子の着用者が既存の帽子を加工することもできる。
【0035】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態の保持部材を構成するための帽子用部品の平面図である。
帽子用部品は、帽子本体に取り付けて保持部材を構成する布製の帯本体19と、シール17と、挟持片15(
図3参照)とをセットとして構成されている。
図6(A)に示すように、シール17は、裏面の接着層によって剥離紙18に貼付された紙製の帯で、所定の間隔を保って複数の孔位置マーク17a,17b,17c,17dが表示されている。これらの孔位置マーク17a,17b,17c,17dは、挟持片15を挿通可能な挿通孔に対応するものである。孔位置マークは一般的な寸法の帽子本体において適当な挟持片の保持長さを基準に設定されている。例えば、孔位置マーク17a,17dの間隔はLサイズ用、孔位置マーク17b,17cの間隔はSサイズ用などとすることもできる。
【0036】
帽子用の保持部材を作成する際には、上記シール17を剥離紙18から剥がし、
図6(B)に示すように、帯本体19に貼り付ける。その後、シール17の上からカッターなどで孔位置マーク17a,17b,17c,17dに沿ってシール17とともに帯本体19に挿通孔を形成する。このとき、全ての孔位置マーク17a,17b,17c,17dに対応した挿通孔を開口させてもよいし、着用者の頭部のサイズなどに合わせて必要個所のみを開口させてもよい。
帯本体19に挿通孔が形成されたら、帯本体19を帽子本体11の被り口13の内周に沿って設け、保持部材とすることができる。
上記シール17があれば、帯本体19に適切は挿通孔を簡単に形成することができる。
また、帽子本体の内周面に予め設けられている、汗止めリボンを保持部材用の帯本体の代わりとして、用いてもよく、その場合に上記シール17を用いれば、誰でも、適切な位置に挿通孔を開口させることができる。
【0037】
なお、帽子用部品としての挟持片15を、保持部材から着脱可能にして、帽子ごとに用意せず、複数の帽子で兼用することもできる。但し、挟持片15を、保持部材を介して帽子本体11に固定化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
様々な帽子のファッション性を損なうことなく、風で飛ばされないようにすることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 帽子
11 帽子本体
13 被り口
14,16 保持部材
14a,14b,16a,16b,16c,16d 挿通孔
15 挟持片
15c (一部分)中央部
17 シール
17a,17b,17c,17d 孔位置マーク
19 帯本体
F 前方
d1,d2,d3 間隔
【要約】
【課題】 デザインやファッション性を維持しながら、強い風が吹いても飛ばない帽子を提供することである。
【解決手段】 帽子本体11と、帯状をなし長さ方向に複数の挿通孔14a,14bが設けられ、帽子本体11の被り口13の内周面に設けられた保持部材14と、挿通孔14a,14bに挿通可能な棒状又は板状をなし、当該帽子10の着用者の頭部の寸法に応じて弾性変形して当該着用者の頭部に装着される挟持片15とを備え、複数の挿通孔14a,14bは、帽子本体11の被り口13の内周面でその内周寸法の2分の1以下の前方領域に位置するように保持部材14に設けられ、挟持片15は、保持部材14の挿通孔14a,14bに挿通されることによって、当該挟持片15の一部分15cが保持部材14で保持され、挟持片15の他の部分が帽子本体11の内部に露出する。
【選択図】
図2