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特許7637446非代替性トークン記録管理システム、非代替性トークン記録管理方法及び非代替性トークン記録管理プログラム
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  • 特許-非代替性トークン記録管理システム、非代替性トークン記録管理方法及び非代替性トークン記録管理プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】非代替性トークン記録管理システム、非代替性トークン記録管理方法及び非代替性トークン記録管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/27 20190101AFI20250220BHJP
【FI】
G06F16/27
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024149353
(22)【出願日】2024-08-30
【審査請求日】2024-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519344969
【氏名又は名称】株式会社PocketRD
(74)【代理人】
【識別番号】230112911
【弁護士】
【氏名又は名称】三和 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】羽野 仁彦
(72)【発明者】
【氏名】籾倉 宏哉
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第2614819(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0110817(US,A1)
【文献】特開2024-099113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容を管理する非代替性トークン記録管理システムであって、
非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成手段と、
前記対象物情報生成手段によって生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力手段と、
前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力手段によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成手段と、
前記追加情報生成手段によって生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする非代替性トークン記録管理システム。
【請求項2】
前記第1情報出力手段によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得手段と、
前記開放系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報であって、前記閉鎖系台帳情報に対応する範囲の情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得手段と、
前記閉鎖系台帳情報取得手段によって取得された前記閉鎖系台帳情報の内容と前記開放系台帳情報取得手段によって取得された前記開放系台帳情報の内容とを比較する情報比較手段と、
をさらに備え、
前記追加情報生成手段は、前記情報比較手段により前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して不足する部分を有すると判定された場合に当該不足する部分に相当する情報を前記追加情報として生成し、前記情報比較手段により前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して余剰な部分を有すると判定された場合に当該余剰部分を解消する情報又は打ち消す情報を前記追加情報として生成することを特徴とする請求項1記載の非代替性トークン記録管理システム。
【請求項3】
前記開放系分散型台帳の記録内容の変動を継続的に監視する開放系台帳情報監視手段をさらに備え、
前記開放系台帳情報取得手段及び前記閉鎖系台帳情報取得手段は、前記開放系台帳情報監視手段にて前記開放系分散型台帳の記録内容の変動を検知した場合にそれぞれ前記開放系台帳情報及び前記閉鎖系台帳情報を取得し、
前記情報比較手段は、取得された前記開放系台帳情報及び前記閉鎖系台帳情報を比較し、
前記追加情報生成手段は、前記情報比較手段にて前記開放系台帳情報の内容と前記閉鎖系台帳情報の内容が相違すると判定された場合に、開放系分散型台帳の記録内容が閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致するよう前記追加情報をさらに生成することを特徴とする請求項2記載の非代替性トークン記録管理システム。
【請求項4】
特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容を管理する非代替性トークン記録管理システムが実行する非代替性トークン記録管理方法であって、
非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成ステップと、
前記対象物情報生成ステップにおいて生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力ステップと、
前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力ステップによって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成ステップと、
前記追加情報生成ステップにおいて生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力ステップと、
を含むことを特徴とする非代替性トークン記録管理方法。
【請求項5】
前記第1情報出力ステップによって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得ステップと、
前記開放系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報であって、前記閉鎖系台帳情報に対応する範囲の情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得ステップと、
前記閉鎖系台帳情報取得ステップにおいて取得された前記閉鎖系台帳情報の内容と前記開放系台帳情報取得ステップにおいて取得された前記開放系台帳情報の内容とを比較する情報比較ステップと、
をさらに含み、
前記追加情報生成ステップにおいて、前記情報比較ステップにより前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して不足する部分を有すると判定された場合に当該不足する部分に相当する情報を前記追加情報として生成し、前記情報比較ステップにより前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して余剰な部分を有すると判定された場合に当該余剰部分を解消する情報又は打ち消す情報を前記追加情報として生成することを特徴とする請求項4記載の非代替性トークン記録管理方法。
【請求項6】
特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容をコンピュータに管理させる非代替性トークン記録管理プログラムであって、
前記コンピュータに対し、
非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成機能と、
前記対象物情報生成機能によって生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力機能と、
前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力機能によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成機能と、
前記追加情報生成機能によって生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力機能と、
を実行させることを特徴とする非代替性トークン記録管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非代替性トークンと対応付けられた分散型台帳における記録内容を管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルアート等のデジタルコンテンツと非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)を関連付けた上で、不特定多数人が参加可能なパブリックブロックチェーン上にてコンテンツに関する取引履歴の管理や、権利の移転・設定等の管理を行う技術が提案されている。取引履歴等の管理をパブリックブロックチェーン上に設定した分散型台帳を用いて行い、新たに台帳に書き込まれる取引等に関する電子情報の真偽を不特定多数のノードによる多数決により判断することにより、台帳に書き込まれる情報の正確性を担保し、非代替性トークン(及びこれと紐づけられるデジタルコンテンツ)の取引履歴、権利の設定・移転・変更等を正確に管理することとしている。このようなパブリックブロックチェーンでは事前に指定されたルールに従い自動的に動作するプログラムを設定することが可能であり(いわゆる「スマートコントラクト」)、たとえば著作物からなるデジタルコンテンツに関して、紐づけられた非代替性トークンが取引されるたびに取引代金の一部が著作者に還元される仕組み等が採用されるなど、従来の取引では実現困難であった枠組みを設定できる利点もある。
【0003】
特許文献1は、デジタル著作物の所有権・使用権についてNFTを設定して管理する取引管理ブロックチェーンに関する技術について開示したものである。また、特許文献2は、管理対象を有体物であるアート作品に拡張した、NFTを用いた取引管理システムに関する技術について開示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-189475号公報
【文献】特許第7033352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パブリックブロックチェーンには不特定多数人が参加可能であるため、たとえば悪意を抱いた参加者が多数決の際に誤った電子情報を真と判定し真実に反する取引履歴等を記録することが懸念される(いわゆる「51%攻撃」)。また、パブリックブロックチェーンは既に一定のプロトコルが定められている関係上、管理システムの設計における自由度に乏しいという問題がある。たとえば、非代替性トークンと紐づけられたデジタルコンテンツないし有体物の譲渡に一定の条件が課せられている場合(たとえば、譲受人には一定の資格を必要とする、等)でも、パブリックブロックチェーンでは正規の所有者から譲受人に譲渡した旨の電子情報(及び所有者が保有する秘密鍵にて暗号化した電子署名)が提供された場合、譲受人が必要な資格を有していなくとも、電子情報に誤りがなければ当該取引は承認され、分散型台帳にその旨が記録されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、設計の自由度及び安全性を確保した非代替性トークンに関する記録管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる非代替性トークン記録管理システムは、特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容を管理する非代替性トークン記録管理システムであって、非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成手段と、前記対象物情報生成手段によって生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力手段と、前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力手段によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成手段と、前記追加情報生成手段によって生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するため、請求項2にかかる非代替性トークン記録管理システムは、上記の発明において、前記第1情報出力手段によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得手段と、前記開放系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報であって、前記閉鎖系台帳情報に対応する範囲の情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得手段と、前記閉鎖系台帳情報取得手段によって取得された前記閉鎖系台帳情報の内容と前記開放系台帳情報取得手段によって取得された前記開放系台帳情報の内容とを比較する情報比較手段とをさらに備え、前記追加情報生成手段は、前記情報比較手段により前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して不足する部分を有すると判定された場合に当該不足する部分に相当する情報を前記追加情報として生成し、前記情報比較手段により前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して余剰な部分を有すると判定された場合に当該余剰部分を解消する情報又は打ち消す情報を前記追加情報として生成することを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、請求項3にかかる非代替性トークン記録管理システムは、上記の発明において、前記開放系分散型台帳の記録内容の変動を継続的に監視する開放系台帳情報監視手段をさらに備え、前記開放系台帳情報取得手段及び前記閉鎖系台帳情報取得手段は、前記開放系台帳情報監視手段にて前記開放系分散型台帳の記録内容の変動を検知した場合にそれぞれ前記開放系台帳情報及び前記閉鎖系台帳情報を取得し、前記情報比較手段は、取得された前記開放系台帳情報及び前記閉鎖系台帳情報を比較し、前記追加情報生成手段は、前記情報比較手段にて前記開放系台帳情報の内容と前記閉鎖系台帳情報の内容が相違すると判定された場合に、開放系分散型台帳の記録内容が閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致するよう前記追加情報をさらに生成することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、請求項4にかかる非代替性トークン記録管理方法は、特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容を管理する非代替性トークン記録管理システムが実行する非代替性トークン記録管理方法であって、非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成ステップと、前記対象物情報生成ステップにおいて生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力ステップと、前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力ステップによって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成ステップと、前記追加情報生成ステップにおいて生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、請求項5にかかる非代替性トークン記録管理方法は、上記の発明において、前記第1情報出力ステップによって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得ステップと、前記開放系分散型台帳の記録内容の全部又は一部の情報であって、前記閉鎖系台帳情報に対応する範囲の情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得ステップと、前記閉鎖系台帳情報取得ステップにおいて取得された前記閉鎖系台帳情報の内容と前記開放系台帳情報取得ステップにおいて取得された前記開放系台帳情報の内容とを比較する情報比較ステップとをさらに含み、前記追加情報生成ステップにおいて、前記情報比較ステップにより前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して不足する部分を有すると判定された場合に当該不足する部分に相当する情報を前記追加情報として生成し、前記情報比較ステップにより前記開放系台帳情報が前記閉鎖系台帳情報に比して余剰な部分を有すると判定された場合に当該余剰部分を解消する情報又は打ち消す情報を前記追加情報として生成することを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、請求項6にかかる非代替性トークン記録管理プログラムは、特定の対象物と関連付けられた非代替性トークンと対応関係を有する分散型台帳の記録内容をコンピュータに管理させる非代替性トークン記録管理プログラムであって、前記コンピュータに対し、非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成機能と、前記対象物情報生成機能によって生成された対象物情報を、前記非代替性トークンと対応関係を有し、予め定めた特定人のみが記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力機能と、前記非代替性トークンと対応関係を有し、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に向けて出力される情報であって、前記開放系分散型台帳の記録内容を前記第1情報出力機能によって出力された前記対象物情報を含む前記閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報である追加情報を生成する追加情報生成機能と、前記追加情報生成機能によって生成された追加情報を前記開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力機能とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設計の自由度及び安全性を確保した非代替性トークンに関する記録管理システムを構築できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムの構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムの処理内容を示すフローチャートである。
図3】実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムの構成を示す模式図である。
図4】実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態においては、本発明の実施の形態として最も適切と考えられる例について記載するものであり、当然のことながら、本発明の内容を本実施の形態にて示された具体例に限定して解すべきではない。同様の作用・効果を奏する構成であれば、実施の形態にて示す具体的構成以外のものであっても、本発明の技術的範囲に含まれることは勿論である。
【0016】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムについて説明する。図1に示すとおり、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムは、取引等の対象物と関連付けられた非代替性トークンを生成するトークン生成部1と、非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する情報である対象物情報を生成する対象物情報生成部2と、生成された対象物情報の適否を検証する情報検証部3と、情報検証部により正しい情報であると検証された対象物情報に基づき、トークン生成部1にて生成された非代替性トークンと関連付けられ特定人のみ記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳内のブロックに格納されるトランザクションである第1トランザクションを生成する第1トランザクション生成部4と、第1トランザクションの内容が適正な手続に従ったものであることを証明するための電子署名である第1電子署名を生成する第1電子署名生成部5と、生成された第1トランザクション及び第1電子署名を閉鎖系分散型台帳に向けて出力する第1情報出力部6と、閉鎖系台帳に格納された情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得部7と、トークン生成部1で生成されたトークンと関連付けられ不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に格納された情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得部8と、閉鎖系台帳情報と開放系台帳情報を比較する台帳情報比較部9と、台帳情報比較部9による比較結果に基づき、閉鎖系台帳情報の内容と同一内容とするための開放系分散型台帳に追加する情報である追加情報を生成する追加情報生成部10と、追加情報に基づき開放系分散型台帳に格納されるトランザクションである第2トランザクションを生成する第2トランザクション生成部11と、第2トランザクションの内容が適正な手続に従ったものであることを証明するための電子署名である第2電子署名を生成する第2電子署名生成部12と、生成された第2トランザクション及び第2電子署名を開放系分散型台帳に向けて出力する第2情報出力部13と、第2電子署名生成部12にて使用する秘密鍵を保管する秘密鍵保管部14とを有する。
【0017】
トークン生成部1は、対象物と対応関係にある非代替性トークンを生成するためのものである。「非代替性トークン」とはいわゆるNFT(Non-Fungible Token)、すなわち固有のデータを備えることで他のトークンと代替不能な性質を有するトークンを意味し、たとえばEthereum(登録商標)の規格であるERC721に基づいて発行されるものである。本実施の形態1にける非代替性トークンは、ERC721またはその他の所定の規格に基づき発行されるものであり、対象物の取引履歴、所有者に関する情報及び対象物の利用権等の権利の設定・移転・変更等の情報等が当該非代替性トークンと対応関係にあるブロックチェーン上の分散型台帳に記録される構成となっている。
【0018】
「ブロックチェーン」とは、分散型ネットワークを構成する複数のコンピュータ間において暗号技術を活用しつつデータ同期を行う技術である。具体的には、合意された取引記録等のトークンに関する情報の集合体と、他のブロックと接続させるための情報(前のブロックの情報)により各ブロックが構成され、当該各ブロックが複数連結されることによってブロックチェーンが構成される。複数のコンピュータの一部でデータ改ざんが行われても他のコンピュータとの間で多数決によって正しいデータが選択されるため、データの破壊・改ざんが極めて難しいという特徴を有している。ブロックチェーンの分類として多数決に参加する者に制限を設けない、すなわち不特定人が分散型台帳への記録処理に関与可能なパブリックブロックチェーンと、複数あるいは単数の特定人のみが多数決に参加できる、すなわちあらかじめ定めた特定人のみが分散型台帳への記録処理に関与可能なコンソーシアムブロックチェーン、プライベートブロックチェーンが存在するところ、前者は本発明における開放系分散型台帳に含まれる概念であり、後者は本発明における閉鎖系分散型台帳に含まれる概念である。本実施の形態1にける非代替性トークンは、開放系分散型台帳と閉鎖系分散型台帳のそれぞれとの間で対応関係が構築されている。
【0019】
非代替性トークンと対象物を紐づける具体的態様としては、非代替性トークンの識別子と対象物の識別情報とを関連付ける形式とする。なお、対象物と非代替性トークンの対応関係については1対1とするのが原則であるが、場合に応じて1の対象物に対し複数の非代替性トークンを設定する構成としてもよい。
【0020】
また、本実施の形態1において、生成された非代替性トークンと対応関係にある分散型台帳を構成するブロックには、非代替性トークンの保有名義(対象物の所有・保有名義と一致させる場合を含む。)の移転等に関する取引記録の他、好ましくは対象物の所有名義・保有名義の移転等や対象物について付与される利用権等の権利の設定や、当該権利を保有する権利者の移転、当該権利の内容の変更等に関する情報が記録されるものとする。もっとも、これら以外の情報が記録される構成としてもよいし、上記列挙した内容の一部のみ記録される構成としてもよい。
【0021】
なお、非代替性トークンの生成については、トークン生成部1が自ら行う態様でもよいし、トークン生成部1と直接的または間接的に接続された外部システムに対し所定の指令を行うことによって、外部システムが生成する態様としてもよい。また、非代替性トークンの具体的形式についても、Ethereum(登録商標)の規格であるERC721に準拠したものに限定されず、非代替性の性質を有し、取引履歴等の情報が開放系分散型台帳・閉鎖系分散型台帳に保存可能なものであれば任意の形式のものとしてよい。
【0022】
対象物情報生成部2は、閉鎖系分散型台帳に向けて出力される第1トランザクションに含まれる対象物情報を生成するためのものである。具体的には、対象物情報生成部2は、好ましくは非代替性トークンと対応関係にある対象物の取引履歴(所有者・保有者の名義変更履歴)、対象物に関し設定される権利の内容、当該権利の移転等の履歴(権利者の名義変更履歴等)、当該権利の内容・移転・変更等に関する情報等からなる対象物情報を生成する。もっとも、対象物情報の内容としては、上記の各要素を全て含むものの他、より簡易な構成として一部のみ含むこととしてもよいし、たとえば対象物と関連付けられた非代替性トークンに関する情報のように上記各要素以外の要素からなることとしてもよい。
【0023】
情報検証部3は、対象物情報生成部2によって生成された対象物情報が、出力先の閉鎖系分散型台帳を含むシステムにて予め定められた基準に従った内容であるか否かを検証するためのものである。具体的には、本実施の形態1における閉鎖系分散型台帳はたとえば特定の複数人の多数決によって正しいデータが選択されるコンソーシアムブロックチェーン上や、特定の単数人又は当該単数人が任命した1以上の人物の多数決等によって正しいデータが選択されるプライベートブロックチェーン上に設定され、不特定多数人が関与可能なパブリックブロックチェーン等とは異なる設計が可能であり、それに伴い分散型台帳に記録される情報の内容に独自の基準が課せられることがある。本実施の形態1では、情報検証部3において、対象物情報生成部2にて生成された対象物情報がかかる基準を満たしているか否かを検証し、基準を満たしていると判断した場合には対象物情報を第1トランザクション生成部4に出力する一方、満たしていないと判断した場合は対象物情報を出力しない、あるいは制限条件を満たす内容に修正した上で第1トランザクション生成部4に出力する機能を有する。情報内容に関する独自の基準の例としては、非代替性トークン及び/又はこれに関連付けられた対象物の所有権・保有権限について譲受人に年齢制限、資格制限を設ける条件の他、設定する権利内容の制限(独占的な利用権限は設定不可、等)等の客観的条件、多数決に関与する特定人による内容確認、承認手続の完了等の手続的条件等が考えられるが、他の類の条件としてもよい。
【0024】
第1トランザクション生成部4は、閉鎖系分散型台帳内のブロックに格納される第1トランザクションを生成するためのものである。具体的には、第1トランザクション生成部4は、対象物情報の内容、たとえば非代替性トークンの保有名義の変更に関する情報や、非代替性トークンに関連付けられる対象物の利用権限の内容等に関する情報である第1トランザクションを生成するものとする。
【0025】
第1電子署名生成部5は、第1トランザクションに含まれる情報が正規のものであることを証明するデータである第1電子署名を生成するためのものである。具体的には、第1電子署名生成部5は、第1トランザクション生成部4によって生成された第1トランザクションのハッシュ値を生成し、秘密鍵にて当該ハッシュ値を暗号化することにより第1電子署名を生成する機能を有する。なお、「ハッシュ値」とは元データに対し一定計算手順を施すことにより得られた固定長の値である。当該計算手順が不可逆なものであるため、ハッシュ値から元データを復元することは不可能とされている。また、「秘密鍵」とは暗号化処理に用いられる数列であって、対応関係にある「公開鍵」により復号することが可能な構成となっている。なお、本実施の形態1においては第1トランザクション生成部4及び第1電子署名生成部5は、トランザクション及び電子署名の作成まで自ら行う構成としているがこれに限定する必要はなく、第1トランザクション生成部4及び第1電子署名生成部5が外部の所定機器に対し第1トランザクション及び第1電子署名の作成を指示するのみの機能を有することとしてもよい。
【0026】
第1情報出力部6は、第1トランザクション生成部4にて生成された第1トランザクション及び第1電子署名生成部5にて生成された第1電子署名を、非代替性トークンと関連付けられた閉鎖系分散型台帳に向けて出力するためのものである。第1情報出力部6は特許請求の範囲における第1情報出力手段の一態様として機能するものであり、本実施の形態では直接的に第1トランザクション及び第1電子署名を出力する構成としているが、他の構成要素(システム外部に設けられたものを含む。)に対し出力するよう指示するのみの構成としてもよい。なお本実施の形態1において第1情報出力部6は閉鎖系分散型台帳が設置されたネットワークに対し直接的または間接的に接続されており、閉鎖系分散型台帳に向けて所定のデータを出力可能な態様にて構成されている。第1情報出力部6から出力されたデータに関しては、第1トランザクションのハッシュ値が生成されるとともに、当該ハッシュ値と第1電子署名を公開鍵にて復号したデータが対比され、両者が異なる値となる場合は正規のトランザクションではないと判定され閉鎖系分散型台帳への登録が拒否され、両者が一致する場合は正規のトランザクションと判定され、トランザクションにより構成される情報が、閉鎖系分散型台帳を構成するブロックに格納される。
【0027】
閉鎖系台帳情報取得部7は、トークン生成部1によって生成された非代替性トークンと対応関係にある閉鎖系分散型台帳に記録された情報の全部又は一部を取得するためのものである。具体的には、閉鎖系台帳情報取得部7は、非代替性トークンと対応関係にある閉鎖系分散型台帳にアクセスし、非代替性トークン及びこれに関連付けられた対象物に関して記録されている情報を取得する機能を有する。取得する情報の内容としては、閉鎖系分散型台帳に記録されている情報の全てとしてもよいし、情報の一部たとえば過去の情報取得時以降に新たに追加された情報のみや、一定の期間に追加された情報のみ又は一定の分野(たとえば、対象物の取引履歴)の情報のみを取得することとしてもよい。
【0028】
開放系台帳情報取得部8は、トークン生成部1によって生成された非代替性トークンと対応関係にある開放系分散型台帳に記録された情報を取得するためのものである。具体的には、開放系台帳情報取得部8は、非代替性トークンと対応関係にある開放系分散型台帳にアクセスし、非代替性トークン及びこれに関連付けられた対象物に関して記録されている情報を取得する機能を有する。取得する情報の内容としては開放系分散型台帳に記録された情報の全部・一部のいずれでもよいが、後述する台帳情報比較部9における情報比較処理との関係で、閉鎖系台帳情報取得部7が取得する情報の範囲と同一の範囲の情報とすることが好ましい。
【0029】
台帳情報比較部9は、閉鎖系台帳情報取得部7及び開放系台帳情報取得部8のそれぞれにて取得された情報を比較し、異なる部分を抽出するためのものである。具体的には、台帳情報比較部9は、閉鎖系台帳情報取得部7によって取得された情報と開放系台帳情報取得部7によって取得された情報との差分値(前者に含まれるが後者に含まれない情報又は後者に含まれるが前者に含まれない情報)を抽出し、追加情報生成部10に出力する機能を有する。本実施の形態1においては、第1情報出力部6より第1トランザクション及び第1電子署名が出力されて閉鎖系分散型台帳の記録内容に変更が生じたタイミングで、閉鎖系台帳情報取得部7及び開放系台帳情報取得部8による情報取得及び台帳情報比較部9による情報比較処理が行われるものとする。
【0030】
追加情報生成部10は、台帳情報比較部9による比較結果に基づき、開放系分散型台帳の記録内容を、第1情報出力部6から出力された対象物情報を含む閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致させる情報であって、新たに開放系分散型台帳に記録すべき情報である追加情報を生成するためのものである。具体的には、追加情報生成部10は、台帳情報比較部9の比較結果が閉鎖系分散型台帳を基準として開放系分散型台帳の記載情報に不足部分があるというものであった場合、当該不足部分に対応する情報を追加情報として生成する。また、追加情報生成部10は、台帳情報比較部9の比較結果が閉鎖系分散型台帳を基準として開放系分散型台帳の記載情報に余剰部分があるというものであった場合、当該余剰部分を解消する内容の情報(たとえば、開放系分散型台帳に対し余剰部分の削除を指示する内容の情報)又は打ち消す内容の情報(たとえば、余剰部分の存在を前提として当該余剰部分を事後的に訂正する内容の情報)を生成する。
【0031】
第2トランザクション生成部11は、開放系分散型台帳内のブロックに格納される第2トランザクションを生成するためのものである。具体的には、第2トランザクション生成部11は、追加情報生成部10によって生成された追加情報を含む第2トランザクションを生成する機能を有する。
【0032】
第2電子署名生成部12は、第2トランザクションに含まれる情報が正規なものであることを証明するデータである第2電子署名を生成するためのものである。具体的には、第2電子署名生成部12は、第2トランザクション生成部11によって生成された第2トランザクションのハッシュ値を生成し、後述する秘密鍵保管部14にて保管されている秘密鍵にて当該ハッシュ値を暗号化することにより第2電子署名を生成する機能を有する。なお、本実施の形態1においては第2トランザクション生成部11及び第2電子署名生成部12は、トランザクション及び電子署名の作成まで自ら行う構成としているがこれに限定する必要はなく、第2トランザクション生成部11及び第2電子署名生成部12が外部の所定機器に対し第2トランザクション及び第2電子署名の作成を指示するのみの機能を有することとしてもよい。
【0033】
第2情報出力部13は、第2トランザクション生成部11にて生成された第2トランザクション及び第2電子署名生成部12にて生成された第2電子署名を、非代替性トークンと関連付けられた開放系分散型台帳に設けて出力するよう指示するためのものである。第2情報出力部13は、第1情報出力部6と同様に、直接的に第2トランザクション及び第2電子署名を出力する構成としてもよいし、他の構成要素に対し出力するよう指示するのみの構成としてもよい。第2情報出力部13より出力されたデータに関しては、第2トランザクションのハッシュ値が生成されるとともに、当該ハッシュ値と第2電子署名を公開鍵にて復号したデータが対比され、両者が異なる値となる場合は正規のトランザクションではないと判定され開放系分散型台帳への登録が拒否される一方、両者が一致する場合は正規のトランザクションと判定され、トランザクションにより構成される情報が、開放系分散型台帳を構成するブロックに格納される。
【0034】
秘密鍵保管部14は、第2電子署名生成部12にて第2電子署名を生成する際に用いられる秘密鍵を保管するためのものである。一般に電子署名作成の際に用いられる秘密鍵は非代替性トークンの保有者が有するものとされるが、本実施の形態1における秘密鍵保管部14は、非代替性トークンの保有者に代わって秘密鍵を独自に保管し、又は非代替性トークンの保有者が有する秘密鍵と同等の機能を有する複製物を保管することとしている。
【0035】
次に、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムの処理内容について、図2のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、取引等記録生成部2によって、対象物に関する情報である対象物情報が生成され(ステップS101)、情報検証部3によって、生成された対象物情報が閉鎖系分散型台帳を含むシステムによって定められた基準に適合したものであるか否かの検証が行われる(ステップS102)。基準に適合しないと判定された場合(ステップS102、No)は、ステップS101に戻って再度対象物情報の生成が行われる(この処理は対象物情報生成部2が行うこととしてもよいし、情報検証部3が自ら行うこととしてもよい。)。基準に適合すると判定された場合(ステップS102、Yes)は、対象物情報に基づき第1トランザクション及び第1電子署名が生成され、閉鎖系分散型台帳に向けて出力される(ステップS103)。
【0036】
その後、閉鎖系台帳情報取得部7及び開放系台帳情報取得部8にてそれぞれの分散型台帳に記録された情報を取得し、台帳情報比較部9にて両者を比較して相違点の有無を判定する(ステップS104)。相違点がない場合(ステップS104、No)は処理を終了し、相違点がある場合(ステップS104、Yes)は、追加情報生成部10によって、開放系分散型台帳の記録内容が閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致するよう開放系分散型台帳に記載すべき内容からなる追加情報を生成し(ステップS105)、追加情報に基づき第2トランザクション及び第2電子署名が生成され、開放系分散型台帳に向けて出力され(ステップS106)、全ての処理が終了する。
【0037】
次に、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムの利点について説明する。まず、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムでは、単一のトークン(及びこれに関連付けられた対象物)に対し閉鎖系分散型台帳及び開放系分散型台帳の両方と対応関係にあり、双方の台帳において非代替性トークン及び/又は対応する対象物の所有権・保有権限の移動、権利の設定・移転・変更等に関する情報を双方に記載する構成を採用する。閉鎖系分散型台帳は特定人のみ関与する構成であるため不特定多数が関与可能なパブリックブロックチェーン等の開放系分散型台帳と異なり独自の制度設計等が可能である。他方で、閉鎖系分散型台帳は特定人のみ関与可能な閉じたネットワークであることから、非代替性トークン及び/又は対応する対象物の取引履歴等の情報を広く一般に開示することができない。そのため本実施の形態1では、対象物情報を含む第1トランザクションを閉鎖系分散型台帳に格納することで制度設計等の自由度を高めたトークン管理システムを実現すると共に、不特定多数人の関与が可能な開放系分散型台帳の記載内容を閉鎖系分散型台帳の記載内容と同期させることによって、対象物情報を広く一般に公開可能な構成としている。
【0038】
また、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムでは、台帳情報比較部9によって閉鎖系分散型台帳に記録された情報と開放系分散型台帳に記録された情報を比較し、異なる部分が存在する場合に開放系分散型台帳に記録された情報の内容が閉鎖系分散型台帳に記録された情報の内容と一致するよう、開放系分散型台帳に記録する追加情報を生成する構成を採用する。かかる構成を採用することにより、閉鎖系分散型台帳に関して対象物情報が追加された場合に速やかに開放系分散型台帳にも反映できるという利点を有する他、もし万が一悪意ある不特定人により偽の情報が多数決で真と判定されて(いわゆる「51%攻撃」)虚偽の情報が記録された場合でも、台帳情報比較部9による比較によって、虚偽の情報の存在を確認でき、閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致するよう追加情報を生成・出力して虚偽の情報を解消・打ち消すことができる。かかる構成を採用することで、本実施の形態1にかかる非代替性トークン記録管理システムは、制度設計の自由度を向上させるだけでなく、虚偽情報の記載抑制という安全性向上という利点も有している。
なお、単一の非代替性トークンに対し閉鎖系分散型台帳及び開放系分散型台帳という複数の分散型台帳が対応づけられていても、ユーザー(たとえば非代替性トークンの保有者やこれを譲り受ける者)に混乱が生ずることはない。たとえば、イーサリアム・ブロックチェーン上でスマートコントラクトを実行するソフトウェア環境であるEVM(Ethereum Virtual Machine)を用いて各システムを構築することで、ユーザーに閉鎖系分散型台帳・開放系分散型台帳の相違を意識させることなく利用させることが可能である。EVMは閉鎖系分散型台帳・開放系分散型台帳の双方について互換性を有するため、たとえば、複数の分散型台帳を利用するシステムにおいて、ユーザーは単一の公開アドレス(Public address)にて全システムを利用することが可能である。
【0039】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムについて説明する。実施の形態2において、実施の形態1と同一名称かつ同一符号を付した構成要素に関しては、特に言及しない限り、実施の形態1における構成要素と同一の機能を発揮するものとする。
【0040】
図3は、実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムの構成を示す模式図である。図3に示すとおり、本実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムは、実施の形態1の構成に加え、開放系分散型台帳の記録内容の変化を継続的に監視する開放系台帳情報監視部16と、記録内容の変化が検出された際に監視結果を閉鎖系台帳情報取得部17及び開放系台帳情報取得部18に対し出力する監視結果通知部19とを備える。
【0041】
開放系台帳情報監視部16は、トークン生成部1によって生成された非代替性トークンと関連付けられた開放系分散型台帳の記録内容の変動について継続的に監視するためのものである。本実施の形態2において開放系台帳情報監視部16は、第2情報出力部13による情報出力の有無とは無関係に、開放系分散型台帳の記録内容の変動の有無を継続的に監視する機能を有する。開放系台帳情報監視部16を新たに設けることによって、開放系分散型台帳に対する非正規の情報書換の有無、すなわち第2情報出力部13から出力された情報以外の情報追加等を検出することとしている。開放系台帳情報監視部16による監視頻度は常時とすることが望ましいが、一定の時間間隔ごとに開放系分散型台帳の記録内容の変化を確認する構成としてもよい。
【0042】
監視結果通知部19は、開放系台帳情報監視部16の監視結果を閉鎖系台帳情報取得部17及び開放系台帳情報取得部18に対し通知するためのものである。具体的には、監視結果通知部19は、開放系台帳情報監視部16が開放系分散型台帳の記録内容に変化が生じたことを検知した際に、閉鎖系台帳情報取得部17等に対しその旨を通知する。監視結果通知部19から通知を受けた閉鎖系台帳情報取得部17及び開放系台帳情報取得部18は、それぞれ閉鎖系分散型台帳・開放系分散型台帳に記録された情報である閉鎖系台帳情報及び開放系台帳情報を取得する処理を行い、取得した情報を台帳情報比較部9に出力する。台帳情報比較部9は、入力された情報に基づき比較処理を行い、追加情報生成部10は、台帳情報比較部9で得られた比較結果に基づき、変化が生じた開放系分散型台帳の記録内容が閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致するよう、追加情報を生成する。生成された追加情報は実施の形態1と同様に、第2トランザクション生成部11及び第2電子署名生成部12にて生成された情報が第2情報出力部13から開放系分散型台帳に向けて出力され、その結果、開放系分散型台帳の記録内容が閉鎖系分散型台帳の記録内容と一致した状態に改められる。
【0043】
次に、本実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムの利点について説明する。本実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムは、開放系分散型台帳の記録内容の変動を継続的に監視する開放系台帳情報監視部16を備える。かかる構成を採用することで本実施の形態2にかかる非代替性トークン記録管理システムは、不特定多数人が関与可能なため悪意に基づく虚偽情報が記録された場合でも速やかにその事実を把握でき、正しい記載内容となるよう追加情報を生成することによってより高度に安全なシステムを実現できるという利点を有する。
【0044】
また、開放系台帳情報監視部16は、閉鎖系分散型台帳に対し対象物情報に基づく第1トランザクション等が出力されて閉鎖系分散型台帳の内容が更新され、これを受けて開放系分散型台帳に対し更新内容に対応した追加情報が生成・出力された場合でも開放系分散型台帳の記載内容に変動が生じたか否か(この場合は、変動が生じることが適正な状態である)を判定し、変動が生じた場合に閉鎖系台帳情報取得部17、開放系台帳情報取得部18にて各分散型台帳の記録内容を取得して台帳情報比較部9にて異同を判定することとしている。これにより、閉鎖系分散型台帳に対する対象物情報の内容に応じた適正な追加情報が生成・出力されたか否かを判定でき(たとえば適正な追加情報が生成等されていれば、台帳情報比較部9の判定結果は「相違なし」となる。)、万が一追加情報に不備があった場合は、閉鎖系分散型台帳の記載内容と一致するよう当該不備を解消する内容の追加情報を新たに作成・出力することで、開放系分散型台帳の記載内容の正確性を向上させられるという利点を有する。
【0045】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムについて説明する。実施の形態3においても、実施の形態1、2と同一名称勝つ同一符号を付した構成要素に関しては原則実施の形態1、2の構成要素と同一の機能を発揮する。
【0046】
図4は、実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムの構成を示す模式図である。図4に示すとおり、本実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムは、実施の形態1の構成に加え、閉鎖系分散型台帳に向けた情報の生成から出力に至るまでの処理内容を記録する生成処理記録部21と、閉鎖系分散型台帳の記録内容の変化を継続的に監視する閉鎖系台帳情報監視部22と、記録内容の変化が検出された際に、当該記録内容の変化に対応する情報の生成から出力に至るまでの処理について検証する生成処理検証部23とを備える。
【0047】
生成処理記録部21は、トークン生成部1によって生成された非代替性トークンと関連付けられた閉鎖系分散型台帳に向けて出力される第1トランザクション及び第1電子署名の生成・出力過程を記録するためのものである。具体的には、生成処理記録部21は、たとえば対象物情報生成部24における対象物情報の生成時における具体的な処理、情報検証部3における対象物情報の検証処理、第1トランザクション生成部4における第1トランザクション生成時における具体的な処理、第1電子署名生成部5における第1電子署名生成時における具体的な処理等の内容を記録する機能を有する。生成処理記録部21にて記録される内容としては、上述したものの全部ではなく一部のみとしてもよいし、上述したもの以外の、たとえば台帳に記録する情報の項目・内容や情報の生成手続等に関し開放系分散型台帳とは異なる独自の制約条件に対応した独自の処理内容に関するものであってもよい。
【0048】
閉鎖系台帳情報監視部22は、トークン生成部1によって生成された非代替性トークンと関連付けられた閉鎖系分散型台帳の記録内容の変動について継続的に監視するためのものである。本実施の形態3において閉鎖系台帳情報監視部22は、第1情報出力部6による情報出力の有無とは無関係に、閉鎖系分散型台帳の記録内容の変動の有無を継続的に監視する機能を有する。閉鎖系台帳情報監視部22による監視頻度は常時とすることが望ましいが、一定の時間間隔ごとに閉鎖系分散型台帳の記録内容の変動の有無を確認する構成としてもよい。
【0049】
生成処理検証部23は、閉鎖系台帳情報監視部22によって閉鎖系分散型台帳の記録内容に変動が生じたと検出された際に、当該変動部分の情報生成・出力処理が予め定められた基準に従ってなされたか否かを検証するためのものである。具体的には、生成処理検証部23は、記録内容の変動部分に対応した情報生成・出力処理の内容を生成処理記録部21より抽出し、情報生成・出力処理内容が予め定めた処理規範に従ったものであるか、資格等の要件を満たしたものであった等、予め定められている当該閉鎖系分散型台帳を含むシステムにて定めた基準を遵守したものであったか否かを検証する。また、生成処理検証部23は、生成処理記録部21から抽出した情報のみならず、公開情報等の別途の情報に基づき検証を行うこととしてもよい。生成処理検証部23は、検証処理の結果として情報生成プロトコルを遵守していない(たとえば譲受人があらかじめ定められていた資格要件(年齢20歳以上等)を満たしていない。)と判定した場合、対象物情報生成部24に対し当該変動部分を打ち消す内容の対象物情報を生成するよう指示する。対象物情報生成部24は当該指示に基づき新たな対象物情報を生成し、第1トランザクション生成部4及び第1電子署名生成部5にて当該対象物情報に基づく第1トランザクション及び第1電子署名が生成され、これらが第1情報出力部6によって出力されることで、閉鎖系分散型台帳の記録内容が、当該変動部分を解消ないし打ち消した内容に変化する。仮に、当該変動部分が開放系分散型台帳の記録内容にも反映されていた場合は、閉鎖系台帳情報取得部17、開放系台帳情報取得部18による情報取得及び台帳情報比較部9によって当該変動部分が反映されている事実を検出し、追加情報生成部10によって当該変動部分を解消ないし打ち消す内容の追加情報が生成され、第2トランザクション生成部11、第2電子署名生成部12によって第2トランザクション及び第2電子署名が生成され、これらの情報が第2情報出力部13によって開放系分散型台帳に向けて出力されることによって、開放系分散型台帳の記載内容においても変動部分を解消ないし打ち消した内容に変化する。
【0050】
次に、本実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムの利点について説明する。本実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムは、閉鎖系分散型台帳の記録内容の変動を継続的に監視する閉鎖系台帳情報監視部22と、記録内容の変動が生じたと判定された場合に当該変動にかかる情報生成・出力が基準に従って生成・出力されたものであるか否かを検証する生成処理検証部23とを備える。閉鎖系分散型台帳の記録内容を基準に記録内容の正誤を判定できる開放系分散型台帳の場合と異なり、閉鎖系分散型台帳では記録内容に変動が生じてもそれが適正な内容変動であるのか、それとも不正アクセス等によってなされた不適正な内容変動を判断することは容易ではない。そのため本実施の形態3では、閉鎖系分散型台帳の記録内容の変動が判明した場合に、変動部分にかかる情報生成・出力の処理が基準に従ってなされたものであるか否かを判定し、基準に従ったものでないと判定した場合には、当該変動部分は不適正なものであるとしてこれを解消ないし打ち消す内容の対象物情報が新たに生成されて閉鎖系分散型台帳の記録内容を修正する。かかる構成を採用することにより本実施の形態3にかかる非代替性トークン記録管理システムは、たとえば外部からの不正アクセスによって記録内容の変動が生じた場合の他、閉鎖系分散型台帳に関与できる特定人の一部による不正がなされた場合を的確に検出することが可能となり、速やかに不適正な状態を解消し閉鎖系分散型台帳の記録内容を適正な状態に維持できし、もってより安全なシステムを実現できるという利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、非代替性トークンと対応付けられた分散型台帳における記録内容を管理する技術として利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 トークン生成部
2、24 対象物情報生成部
3 情報検証部
4 第1トランザクション生成部
5 第1電子署名生成部
6 第1情報出力部
7、17 閉鎖系台帳情報取得部
8、18 開放系台帳情報取得部
9 台帳情報比較部
10 追加情報生成部
11 第2トランザクション生成部
12 第2電子署名生成部
13 第2情報出力部
14 秘密鍵保管部
16 開放系台帳情報監視部
19 監視結果通知部
21 生成処理記録部
22 閉鎖系台帳情報監視部
23 生成処理検証部
【要約】      (修正有)
【課題】非代替性トークンと対応付けられた分散型台帳における記録内容を管理する非代替性トークン記録管理システムを提供する。
【解決手段】非代替性トークン記録管理システムは、非代替性トークンと関連付けられた対象物に関する対象物情報を生成する対象物情報生成部2、特定人のみ記録処理に関与可能な分散型台帳である閉鎖系分散型台帳内のブロックに格納される第1トランザクションを生成する第1トランザクション生成部4、閉鎖系台帳に格納された情報である閉鎖系台帳情報を取得する閉鎖系台帳情報取得部7、不特定人が記録処理に関与可能な分散型台帳である開放系分散型台帳に格納された情報である開放系台帳情報を取得する開放系台帳情報取得部8、閉鎖系台帳情報と開放系台帳情報を比較する台帳情報比較部9及び閉鎖系台帳情報の内容と同一内容とするための開放系分散型台帳に追加する情報である追加情報を生成する追加情報生成部10を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4