(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】車両及びその駆動装置
(51)【国際特許分類】
B62D 7/14 20060101AFI20250220BHJP
B62D 7/15 20060101ALI20250220BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20250220BHJP
B60W 10/20 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B62D7/14 A
B62D7/15 D
B60W10/00 134
B60W10/04
B60W10/20
(21)【出願番号】P 2024527751
(86)(22)【出願日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2024016598
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524032736
【氏名又は名称】輝翠TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】シガリンギン ジェフリ アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】鄭 育丞
(72)【発明者】
【氏名】ブルーム タミル
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-104331(JP,A)
【文献】特開2018-019537(JP,A)
【文献】国際公開第2007/141841(WO,A1)
【文献】特開2023-111214(JP,A)
【文献】特開2006-199107(JP,A)
【文献】特開2018-176798(JP,A)
【文献】特開2019-091148(JP,A)
【文献】特開平07-291143(JP,A)
【文献】国際公開第2020/080200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
B60K 7/00
B62D 6/00, 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して個々に連結され個々に衝撃を吸収するための複数のサスペンション装置にそれぞれ対応するように連結されるとともに、左右一対の各駆動輪が連結ロッドを介して互いに連結されることで互いに連動して左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、
前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪の内側に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機と、
前記複数の電動機のうちの各電動機の回転軸をそれぞれ支持するとともに、前記連結ロッドの一端と他端にそれぞれ連結されることで、前記左右一対の各駆動輪を連動して回転するように構成された複数のナックル装置と、
を含む車両。
【請求項2】
前記各駆動輪は、前記複数のサスペンション装置のそれぞれに対応して設置された前記複数のナックル装置のそれぞれを介して、前記複数のサスペンション装置のそれぞれに連結される、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
本体に対して個々に連結され個々に衝撃を吸収するための複数のサスペンション装置にそれぞれ対応するように連結されるとともに、左右一対の各駆動輪が連結ロッドを介して互いに連結されることで互いに連動して左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、
前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪の内側に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機と、
を含む車両であって、
前記複数の駆動輪は、前記本体の前方に設置された一対の前側駆動輪と、前記本体の後方に設置された一対の後側駆動輪とを含む、
車両。
【請求項4】
前記一対の前側駆動輪は連結ロッドを介して互いに連結され、互いに連動して前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、請求項
3に記載の車両。
【請求項5】
前記一対の後側駆動輪は連結ロッドを介して互いに連結され、互いに連動して前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するとともに、前記一対の前側駆動輪と連動して前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、請求項
4に記載の車両。
【請求項6】
前記一対の後側駆動輪は連結ロッドを介して互いに連結され、互いに連動して前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するとともに、前記一対の前側駆動輪からは独立して前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、請求項
4に記載の車両。
【請求項7】
前記一対の前側駆動輪は左前側駆動輪と右前側駆動輪とを含み、
前記左前側駆動輪及び前記右前側駆動輪は、互いに同じ位置を中心とする円に沿って前記左方向及び前記右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、
請求項
3に記載の車両。
【請求項8】
前記一対の前側駆動輪は左前側駆動輪と右前側駆動輪とを含み、
前記一対の後側駆動輪は左後側駆動輪と右後側駆動輪とを含み、
前記左前側駆動輪、前記右前側駆動輪、前記左後側駆動輪及び前記右後側駆動輪は、互いに同じ位置を中心とする円に沿って前記左方向及び前記右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、
請求項
3に記載の車両。
【請求項9】
本体に対して個々に連結され個々に衝撃を吸収するための複数のサスペンション装置にそれぞれ対応するように連結されるとともに、左右一対の各駆動輪が連結ロッドを介して互いに連結されることで互いに連動して左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、
前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪の内側に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機と、
を含む車両であって、
前記複数の駆動輪は、前記本体に設置された制御装置からの制御情報に基づいて前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方への回転、又は前方向及び後方向の少なくともいずれか一方への回転が制御されるように構成された、
車両。
【請求項10】
前記複数の駆動輪の各々は前記制御情報に基づいて、互いに独立して、前記前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された、請求項
9に記載の車両。
【請求項11】
本体に対して個々に連結され個々に衝撃を吸収するための複数のサスペンション装置にそれぞれ対応するように連結されるとともに、左右一対の各駆動輪が連結ロッドを介して互いに連結されることで互いに連動して左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、
前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪の内側に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機と、
を含む車両であって、
前記本体は、前記本体の周辺の外部環境情報を検出するためのセンサーを含み、
前記複数の駆動輪の各々は、前記センサーで検出された外部環境情報に基づいて前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方への回転、又は前記前方向及び後方向の少なくともいずれか一方への回転が制御されるように構成された、
車両。
【請求項12】
前記本体は動物又は物品を載置可能な運搬台を連結可能である、請求項
1、3、9及び11のいずれかに記載の車両。
【請求項13】
農地で収穫された農作物の運搬のための、請求項
1、3、9及び11のいずれかに記載の車両。
【請求項14】
本体に対して個々に連結され個々に衝撃を吸収するための複数のサスペンション装置にそれぞれ対応するように連結されるとともに、左右一対の各駆動輪が連結ロッドを介して互いに連結されることで互いに連動して左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、
前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪の内側に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機と、
を含む駆動装置
であって、
前記複数の駆動輪は、前記本体に設置された制御装置からの制御情報に基づいて前記左方向及び右方向の少なくともいずれか一方への回転、又は前方向及び後方向の少なくともいずれか一方への回転が制御されるように構成された、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の駆動輪を含む車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車輪をモータ等の電動機で直接駆動する、いわゆるインホイルモータ方式の車両が知られている。例えば、特許文献1には、「左右の車輪22L、22Rのそれぞれに独立して制駆動力を付与する制駆動部としてのインホイルモータ32L、32Rが設けられた牽引車両12」が記載されている。このような牽引車両12においては、左右のインホイルモータ32L、32Rは、独立して制御可能とされ、牽引車両12の旋回動作は、左右のインホイルモータ32L、32Rのトルクに差を設けることによって制御可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、様々な実施形態により、より走行性能に優れた車両及びその駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「本体に設置され、各駆動輪が左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪に対して設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機とを含む車両」が提供される。
【0006】
本開示の一態様によれば、「各駆動輪が左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪に対して設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機とを含む駆動装置」が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、様々な実施形態により、より走行性能に優れた車両及びその駆動装置を提供することができる。
【0008】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成の例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成の例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る車両1の制御装置100で実行される処理フローを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る車両1の駆動装置200の構成を示す平面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態に係る車両1の旋回状態を簡略的に示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一実施形態に係る車両1の旋回状態を簡略的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態に係る車両1の車輪機構250の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態に係る車両1の車輪機構250の構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態に係る車両1のナックル装置220の構成を示す斜視図である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の一実施形態に係る車両1のナックル装置220の一部の構成を示す斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、本開示の一実施形態に係る車両1のナックル装置220の一部の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、本開示の一実施形態に係る車両1の本体300の構成を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、本開示の一実施形態に係る車両1に運搬台900が連結された状態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、本開示の一実施形態に係る車両1に連結される運搬台900の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.車両1の構成
本開示に係る車両は、本体に設置された複数の駆動輪を有する。より具体的には、当該車両は、各駆動輪が左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪を有する。これにより、当該車両は左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に旋回することが可能である。また、当該車両は、複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪に設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機を有する。これにより、当該車両は、前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に進行させることが可能である。
【0011】
このような車両は、一例としては、人を含む動物及び物品のうちの少なくともいずれかを載置して運搬するか、人を含む動物及び物品のうちの少なくともいずれかを牽引して運搬するために用いられる。当該車両は、好ましくは人、家畜及び愛玩動物等の動物、並びに農作物、農業用資材(例えば、種苗、肥料、飼料、農薬又は包装資材等)、農業用装置、工業製品、工業資材、工業用装置、実験・試験用資材、実験・試験用装置、商品、商品用材料、及び配送物等の物品を運搬するために用いられ、より好ましくは農作物、農業用資材(例えば、種苗、肥料、飼料、農薬又は包装資材等)及び農業用装置を運搬するために用いられる。なお、ここに例示する動物及び物品は、当該車両によって運搬されるものの一例であるにすぎず、当然他のものを運搬してもよい。また、載置や牽引は運搬方法の一例であるにすぎず、当然他の方法により運搬してもよい。
【0012】
当該車両は、地球上に限らず宇宙空間においても利用することが可能である。また、当該車両は、屋内及び屋外のいずれでも利用することが可能である。また、当該車両は、整地及び不整地を問わず利用することが可能である。このような車両は、一例としては、水田、畑、果樹園、穀物農場、牧草地、山林、建設現場、被災地、工場、ビル、集合住宅又は一般家屋などで用いられ、好ましくは水田、畑、果樹園、穀物農場、牧草地、建設現場、被災地又は工場などの作業地で用いられ、さらに好ましくは水田、畑、果樹園、穀物農場又は牧草地などの農業用地で用いられ、特に好ましくは果樹園で用いられる。果樹園のように、路面の凹凸やぬかるみ、傾斜などの不整地においては、駆動輪を個々に制御し柔軟な操縦が求められるところ、当該車両であれば走行性能に優れ良好に用いることが可能である。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成の例を示す斜視図である。
図1によれば、本体300に設置された複数の駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c、及び右後側駆動輪250d)と、複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪に対して設けられた複数の電動機(電動機290a~電動機290d)を含む車両1が示されている。すなわち、車両1は、車両1の前方に設置された前側駆動装置200aと、車両1の後方に設置された後側駆動装置200bと、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの上面に設置された本体300と、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの少なくともいずれか一方を制御するための制御装置100(
図1において図示しない。)とを含む。
【0014】
前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bのうちの少なくともいずれかは、車両1を前方又は後方へ移動させるための推進力を発生するとともに、車両1を左方向又は右方向へ旋回させることが可能な駆動部として機能する。前側駆動装置200aは、車両1が前進する方向に垂直な方向において一対に設けられた駆動輪(左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250b)と、左前側駆動輪250aに連結され左前側駆動輪250aを支持するためのナックル装置220aと、右前側駆動輪250bに連結され右前側駆動輪250bを支持するためのナックル装置220bと、ナックル装置220aに連結され車両1の走行中や運搬対象物の載置中などの衝撃を吸収するためのサスペンション装置260aと、ナックル装置220bに連結され車両1の走行中や運搬対象物の載置中などの衝撃を吸収するためのサスペンション装置260bと、左前側駆動輪250aのホイール内に収容され左前側駆動輪250aを前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるための電動機290aと、右前側駆動輪250bのホイール内に収容され右前側駆動輪250bを前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるための電動機290bと、ナックル装置220a及びナックル装置220bの少なくともいずれか一方に連結され左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bを旋回させるためのステアリング装置280aとを含む。
【0015】
また、後側駆動装置200bは、車両1が前進する方向に垂直な方向において一対に設けられた駆動輪(左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)と、左後側駆動輪250cに連結され左後側駆動輪250cを支持するためのナックル装置220cと、右後側駆動輪250dに連結され右後側駆動輪250dを支持するためのナックル装置220dと、ナックル装置220cに連結され車両1の走行中や運搬対象物の載置中などの衝撃を吸収するためのサスペンション装置260cと、ナックル装置220dに連結され車両1の走行中や運搬対象物の載置中などの衝撃を吸収するためのサスペンション装置260dと、左後側駆動輪250cのホイール内に収容され左後側駆動輪250cを前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるための電動機290cと、右後側駆動輪250dのホイール内に収容され右後側駆動輪250dを前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるための電動機290dと、ナックル装置220c及びナックル装置220dの少なくともいずれか一方に連結され左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dを旋回させるためのステアリング装置280bとを含む。
【0016】
なお、
図1においては、前側駆動装置200aにステアリング装置280aを連結し、後側駆動装置200bにステアリング装置280bを連結する場合について説明しているが、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bのいずれか一方のみにステアリング装置を連結し、いずれか一方のみにより車両1が旋回するようにしてもよい。
【0017】
本体300は、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dによって、ナックル装置220a~ナックル装置220dを介して、支持される本体部として機能する。すなわち、本体300は、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれを連結し、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bと一体となって車両1を構成する。
【0018】
本体300は、一例としては、アルミニウムや鋼又はそれらの合金等の金属材料、繊維強化樹脂や硬質ウレタン等の樹脂材料、及びこれらの組み合わせなど、好ましくはアルミニウム又はその合金により構成される。アルミニウム又はその合金で構成することにより、軽量化と剛性を両立することが可能となる。
【0019】
本体300は、車両1が前進する方向にその長手方向が沿うように構成された本体シャーシ310と、本体シャーシ310の長手方向に本体シャーシ310上をスライド可能に設置された載置台360とを含む。本体シャーシ310は、その長手方向の前方に前側駆動装置200aが、その長手方向の後方に後側駆動装置200bがそれぞれ連結されている。具体的には、本体シャーシ310の前方には、本体シャーシ310を挟んで一対の左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bが互いに対称な位置になるように配置されている。また、同様に、本体シャーシ310の後方には、本体シャーシ310を挟んで一対の左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dが互いに対称な位置になるように配置されている。
【0020】
また、載置台360は、上記のとおり、本体シャーシ310の長手方向に沿ってスライドするように、本体シャーシ310に対して連結されている。すなわち、載置台360は、本体シャーシ310の長手方向の任意の位置に移動して設置することが可能である。載置台360は、本体シャーシ310の短手方向に沿って横長板状の構造を有する。横長板状に形成された載置台360は、典型的には、運搬対象となる動物又は物品を載置可能な運搬台がその上部に設置される。また、載置台360には、運搬台以外にも、農薬散布装置、耕運機、草刈り機又はこれらの組み合わせなどの各種付属装置が主に設置されるようにしてもよい。
【0021】
図2は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成の例を示す平面図である。具体的には、
図2は車両1を上面から見た場合の構成を示す図である。
図2によれば、本体300の本体シャーシ310の長手方向の前方に前側駆動装置200aが、その長手方向の後方に後側駆動装置200bがそれぞれ連結されている。前側駆動装置200aには、本体シャーシ310を挟んで対称となるように、本体シャーシ310の左右に左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bがそれぞれ設置されている。
【0022】
ここで、左前側駆動輪250aは、走行路に接触する弾性を有するゴム製(ただし、その材料はゴム製以外であってもよい)のタイヤと、当該タイヤを装着する円筒状の金属製(ただし、その材料は金属製以外であってもよい)のホイルとを含む。また、左前側駆動輪250aのホイルの内側には電動機290aが配置されている。電動機290aは、いわゆるインホイルモータとも呼ばれ、駆動力付与部として機能する。すなわち、電動機290aは、電動機290aが対応するように設置された左前側駆動輪250aに対して、車両1の前進方向(すなわち前方向であり、
図2において矢印T1で示す方向)に左前側駆動輪250aを回転させるための駆動トルクを発生する。また、同様に、電動機290aは、当該左前側駆動輪250aに対して、車両1の後進方向(すなわち後方向であり、
図2において矢印T1で示す方向)に左前側駆動輪250aを回転させるための駆動トルクを発生する。
【0023】
具体的には、電動機290aは、左前側駆動輪250a側に固定されたロータと、本体300側に当該ロータに対応する位置に固定されたステータとを含む。ステータは、電動機290aの回転軸の軸周りに環状に設定されている。また、電動機290aの回転軸は、ベアリングや軸受けなどの部材を介して、ホイルの回転軸に連結されている。したがって、電動機20aは、車両バッテリやオルタネータからステータに対して電力が供給されることにより、当該ステータと上記ロータとの間に電磁力を発生させるが、当該電磁力によりステータの周囲をロータが回転することで左前側駆動輪250aを回転させるための駆動トルクを生成する。なお、当該電動機290aの仕組みは単なる一例であって当然に他の構成によって駆動トルクを生成するようにしてもよい。
【0024】
また、同様に、右前側駆動輪250bは、走行路に接触する弾性を有するゴム製(ただし、その材料はゴム製以外であってもよい)のタイヤと、当該タイヤを装着する円筒状の金属製(ただし、その材料は金属製以外であってもよい)のホイルとを含む。また、右前側駆動輪250bのホイルの内側には電動機290bが配置されている。電動機290bは、いわゆるインホイルモータとも呼ばれ、駆動力付与部として機能する。すなわち、電動機290bは、電動機290bが対応するように設置された右前側駆動輪250bに対して、車両1の前進方向(すなわち前方向であり、
図2において矢印T2で示す方向)に右前側駆動輪250bを回転させるための駆動トルクを発生する。また、同様に、電動機290bは、当該右前側駆動輪250bに対して、車両1の後進方向(すなわち後方向であり、
図2において矢印T2で示す方向)に右前側駆動輪250bを回転させるための駆動トルクを発生する。
【0025】
なお、電動機290bが右前側駆動輪250bを回転させるための駆動トルクを発生する仕組みは電動機290aと同様であるため、その説明は省略する。
【0026】
左前側駆動輪250aと右前側駆動輪250bとは、連結部として機能する連結ロッド210aによって連結されることにより、互いに連動して車両1の前進方向に対して垂直な方向(すなわち、左方向及び右方向の少なくともいずれか一方であり、
図2において矢印S1及び矢印S2で示す方向)に回転する。具体的には、ナックル装置220aとサスペンション装置260aとを連結し、左前側駆動輪250aの左右方向の回転軸となるための連結部221aと、ナックル装置220bとサスペンション装置260bとを連結し、右前側駆動輪250bの左右方向の回転軸となるための連結部221bとが形成されている。連結ロッド210aは、当該連結部221aから左前側駆動輪250aに近づく方向に延伸したアームの先端と連結ロッド210aの左端部が、当該連結部221bから右前側駆動輪250bに近づく方向に延伸したアームの先端と連結ロッド210aの右端部がそれぞれ連結された棒状の形状を有する。なお、左前側駆動輪250aと右前側駆動輪250bと互いに連動して矢印S1及び矢印S2の方向に回転する仕組みの詳細については
図5において後述する。
【0027】
また、後側駆動装置200bには、本体シャーシ310を挟んで対称となるように、本体シャーシ310の左右に左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dがそれぞれ設置されている。
【0028】
ここで、左後側駆動輪250cは、走行路に接触する弾性を有するゴム製(ただし、その材料はゴム製以外であってもよい)のタイヤと、当該タイヤを装着する円筒状の金属製(ただし、その材料は金属製以外であってもよい)のホイルとを含む。また、左後側駆動輪250cのホイルの内側には電動機290cが配置されている。電動機290cは、いわゆるインホイルモータとも呼ばれ、駆動力付与部として機能する。すなわち、電動機290cは、電動機290cが対応するように設置された左後側駆動輪250cに対して、車両1の前進方向(すなわち前方向であり、
図2において矢印T3で示す方向)に左後側駆動輪250cを回転させるための駆動トルクを発生する。また、同様に、電動機290cは、当該左後側駆動輪250cに対して、車両1の後進方向(すなわち後方向であり、
図2において矢印T3で示す方向)に左後側駆動輪250cを回転させるための駆動トルクを発生する。
【0029】
なお、電動機290cが左後側駆動輪250cを回転させるための駆動トルクを発生する仕組みは電動機290aと同様であるため、その説明は省略する。
【0030】
また、同様に、右後側駆動輪250dは、走行路に接触する弾性を有するゴム製(ただし、その材料はゴム製以外であってもよい)のタイヤと、当該タイヤを装着する円筒状の金属製(ただし、その材料は金属製以外であってもよい)のホイルとを含む。また、右後側駆動輪250dのホイルの内側には電動機290dが配置されている。電動機290dは、いわゆるインホイルモータとも呼ばれ、駆動力付与部として機能する。すなわち、電動機290dは、電動機290dが対応するように設置された右後側駆動輪250dに対して、車両1の前進方向(すなわち前方向であり、
図2において矢印T4で示す方向)に右後側駆動輪250dを回転させるための駆動トルクを発生する。また、同様に、電動機290dは、当該右後側駆動輪250dに対して、車両1の後進方向(すなわち後方向であり、
図2において矢印T4で示す方向)に右後側駆動輪250dを回転させるための駆動トルクを発生する。
【0031】
なお、電動機290dが右後側駆動輪250dを回転させるための駆動トルクを発生する仕組みは電動機290aと同様であるため、その説明は省略する。
【0032】
左後側駆動輪250cと右後側駆動輪250dとは、連結部として機能する連結ロッド210bによって連結されることにより、互いに連動して車両1の前進方向に対して垂直な方向(すなわち、左方向及び右方向の少なくともいずれか一方であり、
図2において矢印S3及び矢印S4で示す方向)に回転する。具体的には、ナックル装置220cとサスペンション装置260cとを連結し、左後側駆動輪250cの左右方向の回転軸となるための連結部221cと、ナックル装置220dとサスペンション装置260dとを連結し、右後側駆動輪250dの左右方向の回転軸となるための連結部221dとが形成されている。連結ロッド210bは、当該連結部221cから左後側駆動輪250cに近づく方向に延伸したアームの先端と連結ロッド210bの左端部が、当該連結部221dから右後側駆動輪250dに近づく方向に延伸したアームの先端と連結ロッド210bの右端部がそれぞれ連結された棒状の形状を有する。なお、左後側駆動輪250cと右後側駆動輪250dと互いに連動して矢印S3及び矢印S4の方向に回転する仕組みの詳細については
図5において後述する。
【0033】
このように、
図2に示す例においては、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれに対応するように、電動機290a、電動機290b、電動機290c、及び電動機290dがそれぞれ設置されている。そして、制御装置100(
図2において図示しない。)からの制御情報を受けて、電動機290a、電動機290b、電動機290c、及び電動機290dがそれぞれ独立して制御される。これにより、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dは、それぞれが独立して前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させることが可能となる。このように、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれに電動機を設置し、各駆動輪を独立して制御可能にすることで、特に不整地などの悪路においてより円滑な走行が可能となる。
【0034】
なお、
図2に示す例においては、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれに対応するように各電動機を設置しているが、車両1の前側の左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bのみに各電動機が設置されてもよいし、車両1の後側の左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのみに各電動機が設置されてもよい。電動機が設置されない場合は、駆動輪とはならずに単なる走行輪として機能することとなる。
【0035】
また、
図2に示す例においては、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dが互いに連動するように矢印S1~矢印S4の方向にそれぞれ回転するように構成されている。しかし、これに代えて、車両1の前側の左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bのみが矢印S1及び矢印S2の方向に回転し、車両1の後側の左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dは矢印S3及び矢印S4の方向に回転しないようにしてもよい。また、同様に、車両1の後側の左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのみが矢印S3及び矢印S4の方向に回転し、車両1の前側の左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bは矢印S1及び矢印S2の方向に回転しないようにしてもよい。
【0036】
また、
図2に示す例においては、また、
図2に示す例においては、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dが互いに連動するように矢印S1~矢印S4の方向にそれぞれ回転するように構成されている。しかし、これに代えて、左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bを含む前側駆動装置200aと、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dを含む後側駆動装置200bは、それぞれ独立して、矢印S1及び矢印S2の方向、又は矢印S3及び矢印S4の方向に回転するようにしてもよい。これは、制御装置100からの制御情報を各駆動装置が独立して受信し、当該制御情報に基づいて制御されることにより可能である。例えば、不整地などでは障害物や凹凸、ぬかるみなどの存在によりいずれか一つの駆動輪のみに駆動上の不都合が生じる場合があるが、このように構成することにより、より円滑な走行を実現することが可能である。
【0037】
2.車両1の制御
図3は、本開示の一実施形態に係る車両1の構成を示すブロック図である。具体的には、
図3は、車両1の各構成要素を制御するための制御装置100とそれによって制御される各構成要素の構成を示す図である。
図3によると、車両1の制御装置100は、プロセッサ111、メモリ112、入力インターフェイス113、出力インターフェイス114及び通信インターフェイス115を含む。これらの各構成要素は、互いに、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。なお、制御装置100は、
図3に示す構成要素のすべてを備える必要はなく、一部を省略して構成することも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。制御装置100は、
図3に記載する他の構成要素や、遠隔に設置された他の処理装置やサーバ装置と有線又は無線ネットワークを介して通信可能なものであればいずれでもよく、スマートフォン装置、タブレット装置、ラップトップPC装置、デスクトップPC装置、撮影装置などを利用することも可能である。
【0038】
プロセッサ111は、メモリ112に記憶された処理プログラムに基づいて車両1の他の構成要素の制御を行う制御部として機能する。具体的には、プロセッサ111は、メモリ112に記憶された処理プログラムに基づいて、「入力インターフェイス113を介して走行を開始する旨の指示入力をユーザから受け付ける処理」、「制御装置100と通信インターフェイス115を介して接続されたセンサー600から外部環境情報を受信する処理」、「受信した外部環境情報に基づいて車両1の制御情報を生成する処理」、及び「通信インターフェイス115を介して、生成された制御情報を駆動装置に含まれる電動機290(電動機290a~電動機290d)、ステアリング装置280(ステアリング装置280a及びステアリング装置280b)、付属装置800又はそれらの組み合わせに対して送信する処理」などを実行する。プロセッサ111は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUやFPGAなどを組み合わせてもよい。
【0039】
メモリ112は、RAM、ROM、不揮発性メモリ、HDD、SSD等から構成され、記憶部として機能する。メモリ112は、本実施形態に係る車両1の様々な制御のための指示命令を処理プログラムとして記憶する。具体的には、メモリ112は、「入力インターフェイス113を介して走行を開始する旨の指示入力をユーザから受け付ける処理」、「制御装置100と通信インターフェイス115を介して接続されたセンサー600から外部環境情報を受信する処理」、「受信した外部環境情報に基づいて車両1の制御情報を生成する処理」、及び「通信インターフェイス115を介して、生成された制御情報を駆動装置に含まれる電動機290(電動機290a~電動機290d)、ステアリング装置280(ステアリング装置280a及びステアリング装置280b)、付属装置800又はそれらの組み合わせに対して送信する処理」などをプロセッサ111が実行するための処理プログラムを記憶する。
【0040】
入力インターフェイス113は、車両1に対するユーザの指示入力を受け付ける入力部として機能する。入力インターフェイス113の一例としては、ハンドル、ブレーキペダル及びアクセスペダルなどのほかにも、物理キーボタンや、ディスプレイの表示座標系に対応する入力座標系を有するタッチパネル、マウス、キーボードなどが挙げられる。なお、入力インターフェイス113は、常に制御装置100に物理的に備えられる必要はなく、有線や無線ネットワークを介して必要に応じて接続されてもよい。
【0041】
出力インターフェイス114は、車両1における走行状態を示す情報やセンサー600によって検出された外部環境情報など出力するための出力部として機能する。出力インターフェイス114の一例としては、液晶パネル、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等から構成されるディスプレイが挙げられる。しかし、必ずしも制御装置100そのものにディスプレイが備えられている必要はない。例えば、有線又は無線ネットワークを介して制御装置100と接続可能なディスプレイ等と接続するためのインターフェイスが、当該ディスプレイ等に表示データを出力する出力インターフェイス114として機能することも可能である。
【0042】
通信インターフェイス115は、有線又は無線ネットワークを介して接続されたセンサー600、電動機290(電動機290a~電動機290d)、ステアリング装置280(ステアリング装置280a及びステアリング装置280b)、付属装置800、遠隔に設置された他の処理装置、サーバ装置又はこれらの組み合わせとの間で制御情報等の各種情報を送受信したりするための通信部として機能する。通信インターフェイス115の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、LTE等の広帯域無線通信、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子など、様々なものが挙げられる。
【0043】
センサー600は、通信インターフェイスを介して制御装置100と通信可能に接続され、本体300の周辺の外部環境情報を検出するための検出部として機能する。当該センサーにより検出される外部環境情報は、プロセッサ111による処理を受けて車両1の制御情報を生成するために用いられる。そのため、センサー600の一例としては、カメラ(画像センサー)、赤外線センサー、紫外線センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、レーダ、超音波センサー又はこれらの組み合わせが、好ましくはカメラ(画像センサー)、赤外線センサー、紫外線センサー、レーダ、超音波センサー又はこれらの組み合わせが挙げられる。このようなセンサー600を用いることによって、人、はしご、農機具、かご、フェンス、支柱、岩、落ちた枝、又はこれらの組み合わせ等の障害物や、凹凸、傾斜、ぬかるみ又はこれらの組み合わせ等の走行路の路面状況など外部環境情報を検出する。
【0044】
電動機290(電動機290a~電動機290d)は、対応して設置された各駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)に対して、独立して駆動トルクを付与するための駆動力付与部として機能する。すなわち、電動機290(電動機290a~電動機290d)は、制御装置100において生成された制御情報に基づいて、各駆動輪に対して付与する駆動トルクの大きさ(強さ)とその方向を調整する。
【0045】
ステアリング装置280(ステアリング装置280a及びステアリング装置280b)は、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの少なくともいずれかに設置され、各駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)を連動して左右方向(
図2の矢印S1~矢印S4の方向)に回転させるための回転制御部として機能する。ステアリング装置280は、制御装置100において生成された制御情報に基づいて車両1を旋回させるために、各駆動輪が回転する方向とその量を調整する。
【0046】
付属装置800は、本体300にアタッチメントとして付属され、本体300又は車両1の機能や用途を拡張するための付属部として機能する。付属装置800の一例としては、農薬散布装置、耕運機、草刈り機又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。すなわち、制御装置100において生成された制御情報に基づいて、農薬散布の開始や終了、散布方向、及びその散布量を調整したりすることが可能である。
【0047】
なお、特に図示はしていないものの、車両1は運搬台900を設置することも可能である。この場合、制御装置100は、当該運搬台900の昇降や傾斜などを制御するための制御信号を生成することも可能である。
【0048】
図4は、本開示の一実施形態に係る車両1の制御装置100で実行される処理フローを示す図である。具体的には、
図4は、車両1の走行を制御するときに制御装置100で実行される処理フローを示す図である。当該処理フローは、主に制御装置100のプロセッサ111がメモリ112に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0049】
図4によると、プロセッサ111は、入力インターフェイス113を介して走行を開始(発進)する旨の指示入力をユーザから受け付ける(S111)。当該処理の一例として、プロセッサ111は、出力インターフェイス114を介してディスプレイに表示されたスタートアイコンに対して、ユーザの指示入力を入力インターフェイス113を介して受け付ける。
【0050】
次に、プロセッサ111は、受け付けた指示入力に基づいて、車両1を発信するための制御信号を生成する(S112)。当該処理の一例として、プロセッサ111は、電動機290(電動機290a~電動機290d)の各々に対して、対応する各駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)を前進する方向(
図2の矢印T1~矢印T4のうち前方)に回転さるための駆動トルクを発生させるための制御信号を生成する。また、S111において、指示入力として、車両1のスピードや進行方向に関する指示入力も受け付けた場合には、駆動トルクの大きさ(強さ)や、各駆動輪を前進する方向に垂直な方向に回転させる方向及びその量を調整するための制御信号を生成する。
【0051】
次に、プロセッサ111は、通信インターフェイス115を介して、S112で生成された制御信号を電動機290及びステアリング装置280のうちの少なくともいずれかに送信する(S113)。
【0052】
次に、プロセッサ111は、例えば所定周期で、通信インターフェイス115を介してセンサー600から外部環境情報を受信する(S114)。このようなセンサー600としては、上記の通り、例えば、カメラ(画像センサー)、赤外線センサー、紫外線センサー、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、レーダ、超音波センサー又はこれらの組み合わせが用いられる。すなわち、プロセッサ111は、外部環境情報として、画像データ、赤外線検出データ、紫外線検出データ、温度、湿度、加速度、レーダ受信データ、超音波データ又はこれらの組み合わせを受信する。なお、ここで例示する外部環境情報は単なる一例であって、車両1の制御情報の生成に利用可能なものであればいずれであってもよい。
【0053】
次に、プロセッサ111は、S114で受信した外部環境情報に基づいて車両1を移動するための制御情報を生成する(S115)。例えば、外部環境情報を介して障害物が検知された場合には、車両1は当該障害物を避ける必要がある。このような場合、プロセッサ111は、障害物を避ける方向に車両1を旋回すべく、各駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)が連動して前進する方向に垂直な方向に回転させるための制御信号を生成する。また、例えば、外部環境情報を介して走行路の傾斜が検出された場合には、車両1のスピードが遅くなりすぎないように制御する必要がある。このような場合、プロセッサ111は、各駆動輪(左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)に対応して設けられた電動機290(電動機290a~電動機290d)に対して駆動トルクを大きくするための制御信号を生成する。また、例えば、外部環境情報を介して左前側駆動輪250aと右後側駆動輪250dのみが“ぬかるみ”の上に位置することが検知された場合には、これら駆動輪の回転スピードが遅くなることが予想される。このような場合、プロセッサ111は、左前側駆動輪250aと右後側駆動輪250dに対して駆動トルクを大きくするための制御信号を生成する。
【0054】
次に、プロセッサ111は、通信インターフェイス115を介して、S115で生成された制御信号を電動機290及びステアリング装置280のうちの少なくともいずれかに送信する(S116)。
【0055】
次に、プロセッサ111は、入力インターフェイス113を介して走行を終了(停止)する旨の指示入力をユーザから受け付けたか否かを判断する(S117)。当該処理の一例として、プロセッサ111は、出力インターフェイス114を介してディスプレイに表示されたストップアイコンに対して、ユーザの指示入力を入力インターフェイス113を介して受け付ける。この場合、プロセッサ111は、停止のための制御信号、具体的には電動機290(電動機290a~電動機290d)に対して駆動トルクをゼロにするための制御信号を生成して、通信インターフェイス115を介して当該制御信号を電動機290に送信する。これにより当該処理フローを終了する。
【0056】
なお、プロセッサ111は、上記指示入力を受け付けていないと判断した場合には再びS114に戻り、外部環境情報を受信する。すなわち、この場合、外部環境情報を所定周期で受信することで、車両1を自動的に制御することが可能である。
【0057】
また、
図4において特に図示はしていないが、車両1の進行方向やスピードについて、入力インターフェイス113を介してユーザによる操作入力を受け付けて制御することも可能である。また、
図4において特に図示はしていないが、車両1の進行方向やスピードについて、あらかじめユーザ等によって入力された走行予定情報(例えば、地図情報)を取得し、当該走行予定情報に基づいて制御することも可能である。
【0058】
3.車両1の旋回
図2などで説明した通り、車両1は、対応する左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれに前後方向への回転のための駆動トルクを供給するための電動機290a~電動機290dを有する。すなわち、車両1は、各駆動輪に連結された各電動機によって前後方向へ移動することが可能である。これに加えて、
図2などで説明した通り、車両1は、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dのそれぞれを左右方向へ回転させるためのステアリング装置280a及びステアリング装置280bを有する。すなわち、車両1は、ステアリング装置280a及びステアリング装置280bにより左右方向へ旋回することが可能である。
【0059】
図5は、本開示の一実施形態に係る車両1の駆動装置200の構成を示す平面図である。具体的には、
図5は、車両1を旋回させるための制御信号を制御装置100から受信した前側駆動装置200aが動作する様子を示した図である。
図5によれば、前側駆動装置200aは、制御信号の受信により伸縮可能に構成されたステアリング装置280a、ステアリング装置280aの一端に連結されたナックル装置220a、ナックル装置220aにおいてステアリング装置280aの一端が連結された端部とは反対側の端部に連結された連結ロッド210a、連結ロッド210aにおいてナックル装置220aと連結された端部とは反対側の端部に連結されたナックル装置220bとを含む。
【0060】
ステアリング装置280aは、本体300に固定された固定端と、ナックル装置220aに連結された連結端を有する棒状の装置である。ステアリング装置280aは固定端側の雄シャフト及び連結端側の雌シャフトを含む。雌シャフトは、制御装置100からの制御信号(車両1を旋回させるための制御信号)を受けて、ステアリング装置280aの軸線方向(すなわち、矢印M1の方向又はその逆方向)に移動する。すなわち、ステアリング装置280aは、制御信号に基づいて、ステアリング装置280aの軸線方向(すなわち、矢印M1の方向又はその逆方向)に伸縮可能に構成されている。なお、ステアリング装置280aの伸縮機構は、らせん構造を有する雌シャフトが当該らせん構造に嵌合するよう形成された内壁を有する雄シャフトの内側に回転されることによって挿入されたり挿出されるように構成しているが、車両1を旋回させる角度を含む制御信号に応じてその伸縮量を調整可能な構造であればいずれでもよい。したがって、当該伸縮機構は、油圧式や空圧式のシリンダ機構により構成することも可能である。また、このようなステアリング装置としては、
図5に示すもの以外にも、ラックアンドピニオン方式やボールナット方式など、種々の方式を採用することが可能である。
【0061】
ナックル装置220aは、左前側駆動輪250aに連結された基部を中心に、ステアリング装置280a側に延伸した第1アーム225aと、連結ロッド210a側に延伸した第2アーム222aとを含む。ナックル装置220aの基部は、左前側駆動輪250aに連結された左側端部と、本体300にサスペンション装置260aを介して左右方向(すなわち、車両1の前進する方向に対して垂直な方向)に回転連結された右側端部とを有する。すなわち、ナックル装置220aの左側端部に連結された左前側駆動輪250aは、サスペンション装置260aに回転可能に連結された右側端部(連結部221a)を回転軸として左右方向に回転する。
【0062】
第1アーム225aは、基部側に固定された基端部とステアリング装置280aの連結端に回転可能に連結された他端部224とを含む。すなわち、ステアリング装置280aが伸縮すると、当該他端部224を介してその力がナックル装置220aに伝達されることになる。
【0063】
第2アーム222aは、基部側に固定された基端部と連結ロッド210aの端部に回転可能に連結された他端部223aとを含む。ここで、第2アーム222aの他端部223aは、
図2に示されているように、左前側駆動輪250aが左右に回転していない直進方向を向いている場合に、左前側駆動輪250aの回転軸となる基端部の右側端部(連結部221a)から車両1が前進する方向に沿って伸びる仮想的な直線から外側(すなわち、左前側駆動輪250aの側)に位置するように形成されている。すなわち、第2アーム222aの他端部223aは、車両1を上面から見た場合に、基端部の右側端部に対して外側に位置している。
【0064】
ナックル装置220bは、本体300の中心軸を中心として、ナックル装置220aと略対称となるように構成されている。すなわち、ナックル装置220bは、右前側駆動輪250bに連結された基部を中心に、第1アーム225bと、連結ロッド210a側に延伸した第2アーム222bとを含む。ナックル装置220bの基部は、右前側駆動輪250bに連結された右側端部と、本体300にサスペンション装置260bを介して左右方向(すなわち、車両1の前進する方向に対して垂直な方向)に回転連結された左側端部とを有する。すなわち、ナックル装置220bの右側端部に連結された右前側駆動輪250bは、サスペンション装置260bに回転可能に連結された左側端部を回転軸(連結部221b)として左右方向に回転する。
【0065】
第1アーム225bは、基部側に固定された基端部と何も連結されていない開放端とを含む。第2アーム222aは、基部側に固定された基端部と連結ロッド210aの端部に回転可能に連結された他端部223bとを含む。ここで、第2アーム222bの他端部223bは、
図2に示されているように、右前側駆動輪250bが左右に回転していない直進方向を向いている場合に、右前側駆動輪250bの回転軸(連結部221b)となる基端部の左側端部から車両1が前進する方向に沿って伸びる仮想的な直線から外側(すなわち、右前側駆動輪250bの側)に位置するように形成されている。すなわち、第2アーム222bの他端部223bは、車両1を上面から見た場合に、基端部の左側端部に対して外側に位置している。
【0066】
連結ロッド210aは、一端(左端部)がナックル装置220aの他端部223aに回転可能に連結され、当該一端に相対する他端(右端部)がナックル装置220bの他端部223bに回転可能に連結された棒状の部材である。当該連結ロッド210aにより左右のナックル装置220a及びナックル装置220bとが連結されることで、左前側駆動輪250aと右前側駆動輪250bとが互いに連動するように左右に回転することが可能となる。
【0067】
すなわち、例えば、
図5において、車両1を右方向に旋回させるための制御信号が制御装置100において生成された場合、当該制御信号に基づいてステアリング装置280aは所定の伸縮量でその軸線方向に沿って矢印M1の方向に伸びる。すると、ステアリング装置280aの連結端に対して回転可能に連結されたナックル装置220aは、全体として矢印M2の方向に、左前側駆動輪250aと共に回転する。また、当該回転に伴って、ナックル装置220aの第2アームの他端部223aに連結された連結ロッド210aは、矢印M3の方向に移動する。すると、連結ロッド210aの他端(右端部)に連結されたナックル装置220bは、全体として矢印M4の方向に、右前側駆動輪250bと共に回転する。これにより、左前側駆動輪250aと右前側駆動輪250bとが互いに連動するように右方向に回転することが可能となる。
【0068】
また、
図5において、車両1を左方向に旋回させるための制御信号が制御装置100において生成された場合、当該制御信号に基づいてステアリング装置280aは所定の伸縮量でその軸線方向に沿って矢印M1とは反対の方向に縮む。すると、ステアリング装置280aの連結端に対して回転可能に連結されたナックル装置220aは、全体として矢印M2の反対方向に、左前側駆動輪250aと共に回転する。また、当該回転に伴って、ナックル装置220aの第2アームの他端部223aに連結された連結ロッド210aは、矢印M3の反対方向に移動する。すると、連結ロッド210aの他端(右端部)に連結されたナックル装置220bは、全体として矢印M4の反対方向に、右前側駆動輪250bと共に回転する。これにより、左前側駆動輪250aと右前側駆動輪250bとが互いに連動するように左方向に回転することが可能となる。
【0069】
ここで、連結ロッド210aは、その長手方向の長さとして、左前側駆動輪250aの回転軸となるナックル装置220aの基部の右側端部(連結部221a)と、右前側駆動輪250bの回転軸となるナックル装置220bの基部の左側端部(連結部221b)とを結ぶ直線の長さよりも長くなるように構成されている。すなわち、連結ロッド210aの左側端部と、連結ロッド210bの右前側端部と、ナックル装置220aの基部の右側端部(連結部221a:左前側駆動輪250aの回転軸となる位置)と、ナックル装置220bの基部の左側端部(連結部221b:右前側駆動輪250bの回転軸となる位置)との4点により四角形を形成している。具体的には、当該四角形は、左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bが左右に回転していない直進方向を向いている場合において、連結ロッド210aの左側端部と連結ロッド210bの右前側端部とを結ぶ辺を長辺とし、ナックル装置220aの基部の右側端部とナックル装置220bの基部の左側端部とを結ぶ辺を短辺とする台形を形成する。これにより、車両1は、より円滑に旋回することが可能となる。
【0070】
図6Aは、本開示の一実施形態に係る車両1の旋回状態を簡略的に示す説明図である。具体的には、車両1が右方向に旋回する場合の、左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bの角度を示す図である。
図6Aによると、ある角度で右方向に車両1を旋回させる場合、左前側駆動輪250aは、円G1に沿うように、ナックル装置220aの基部の右側端部(連結部221a)を回転軸として右方向に回転する。当該円G1は、左後側駆動輪250cと右後側駆動輪250dの回転軸の延長線上であって車両1の旋回する円の内部の任意の位置C1を中心とし、位置C1と左前側駆動輪250aとを結ぶ線を半径とする円である。また、右前側駆動輪250bは、円G2に沿うように、ナックル装置220bの基部の左側端部を回転軸(連結部221b)として右方向に回転する。当該円G2は、円G1の中心と同じ位置である位置C1を中心とし、位置C1と右前側駆動輪250bとを結ぶ線を半径とする円である。
【0071】
したがって、
図6Aに示すように、車両1を右方向に旋回させる場合は、左前側駆動輪250aの回転角度R1(すなわち、直進時の左前側駆動輪250aに対して右方向に回転した左前側駆動輪250aがなす角度)に対して、内側の車輪となる右前側駆動輪250bの回転角度R2(すなわち、直進時の右前側駆動輪250bに対して右方向に回転した右前側駆動輪250bがなす角度)の方が大きくなるように構成されている。これにより、車両1が、特に低速での旋回時に、より滑らかに旋回することが可能となる。
【0072】
なお、
図6Aでは、車両1を右側に旋回させる場合について説明したが、左側に旋回させる場合には、円の中心が車両1の左側に位置し、各駆動輪の回転角度の大きさが反対になることを除けば、右側に旋回させる場合と同様の仕組みである。また、各駆動輪の円G1及びG2の中心(位置C1)は、制御信号によって設定される車両1の旋回する角度に応じて左後側駆動輪250cと右後側駆動輪250dの回転軸の延長線上を移動するようにしてもよい。
【0073】
再び
図5に戻り、連結ロッド210a等により形成される四角形が、左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bが左右に回転していない直進方向を向いている場合において、連結ロッド210aの左側端部と連結ロッド210bの右前側端部とを結ぶ辺を長辺とし、ナックル装置220aの基部の右側端部とナックル装置220bの基部の左側端部とを結ぶ辺を短辺とする台形として形成される。これにより、車両1を旋回させる場合に、
図6Aに示すように、旋回の内側となる駆動輪の回転角度を旋回の外側となる駆動輪の回転角度に対してより大きな角度とすることが可能となる。よって、車両1が、特に低速での旋回時に、より滑らかに旋回することが可能となる。
【0074】
なお、
図5の例では、連結ロッド210aの左側端部と連結ロッド210bの右前側端部とを結ぶ辺を長辺とし、ナックル装置220aの基部の右側端部とナックル装置220bの基部の左側端部とを結ぶ辺を短辺とする台形となるように、連結ロッド210aの長さを調整した。しかし、これに限らず、連結ロッド210aの左側端部と連結ロッド210bの右前側端部とを結ぶ辺を短辺とし、ナックル装置220aの基部の右側端部とナックル装置220bの基部の左側端部とを結ぶ辺を長辺とする台形となるように、連結ロッド210aの長さを調整することも可能である。この場合、連結ロッド210aは、ナックル装置220aの基部の右側端部とナックル装置220bの基部の左側端部とを結ぶ辺よりも内側(すなわち、車両1の後側駆動装置200b側)に位置することとなる。
【0075】
また、
図5の例では、前側駆動装置200aが動作する様子を説明したが、後側駆動装置200bも同様に車両1の前進する方向に対して垂直な方向に回転させることも可能である。この場合、前側駆動装置200aの回転を制御するための制御信号を受信すると、後側駆動装置200bも同様に回転されることなる。すなわち、後側駆動装置200bは、前側駆動装置と同様に、制御信号の受信により伸縮可能に構成されたステアリング装置280b、ステアリング装置280bの一端に連結されたナックル装置220c、ナックル装置220cにおいてステアリング装置280bの一端が連結された端部とは反対側の端部に連結された連結ロッド210b、連結ロッド210aにおいてナックル装置220cと連結された端部とは反対側の端部に連結されたナックル装置220cとを含む。また、ナックル装置220cは左後側駆動輪250cと、ナックル装置220dは右後側駆動輪250dと連結されている。したがって、
図5で説明した動作と同様に、ステアリング装置280bの伸縮につれて、ナックル装置220c、連結ロッド210b、及びナックル装置220dが動作することにより、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dが連動するように回転する。その動作の詳細な説明は、前側駆動装置200aと同様であるため省略する。
【0076】
図6Bは、本開示の一実施形態に係る車両1の旋回状態を簡略的に示す説明図である。具体的には、車両1が右方向に旋回する場合の、左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dの角度を示す図である。すなわち、
図6Aでは左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bのみが回転する場合について説明したが、
図6Bでは左前側駆動輪250a、右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dの4輪全てが回転する場合について説明する。
【0077】
図6Bによると、ある角度で右方向に車両1を旋回させる場合、左前側駆動輪250a及び左後側駆動輪250cは、円G3に沿うように、ナックル装置220aの基部の右側端部、及びナックル装置220cの基部の右端部をそれぞれ回転軸として右方向に回転する。当該円G3は、各駆動輪により形成される四角形の重心位置から車両1が前進する方向に対して垂直な方向に延伸した直線上であって車両1の旋回する円の内部の任意の位置C2を中心とし、位置C2と左前側駆動輪250a及び左後側駆動輪250cとを結ぶ線を半径とする円である。また、右前側駆動輪250b及び右後側駆動輪250dは、円G4に沿うように、ナックル装置220bの基部の左側端部、及びナックル装置220dの基部の左側端部をそれぞれ回転軸として右方向に回転する。当該円G4は、円G3の中心と同じ位置である位置C2を中心とし、位置C2と右前側駆動輪250b及び右後側駆動輪250dとを結ぶ線を半径とする円である。位置C2は、左前側駆動輪250a及び右前側駆動輪250bの前後方向の回転軸の延長線、及び左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250dの前後方向の回転軸の延長線の中間となる線上に位置するのが好ましい。
【0078】
したがって、
図6Bに示すように、車両1を右方向に旋回させる場合は、左前側駆動輪250aの回転角度R3(すなわち、直進時の左前側駆動輪250aに対して右方向に回転した左前側駆動輪250aがなす角度)及び左後側駆動輪250cの回転角度R5(すなわち、直進時の左後側駆動輪250cに対して右方向に回転した左後側駆動輪250cがなす角度)に対して、内側の車輪となる右前側駆動輪250bの回転角度R4(すなわち、直進時の右前側駆動輪250bに対して右方向に回転した右前側駆動輪250bがなす角度)及び右後側駆動輪250dの回転角度R6(すなわち、直進時の右後側駆動輪250dに対して右方向に回転した右後側駆動輪250dがなす角度)の方が大きくなるように構成されている。これにより、車両1が、特に低速での旋回時に、より滑らかに旋回することが可能となる。また、4輪全ての駆動輪を回転させることにより、より小さな半径で車両1を回転させることが可能となる。
【0079】
なお、
図6Bでは、車両1を右側に旋回させる場合について説明したが、左側に旋回させる場合には、円の中心が車両1の左側に位置し、各駆動輪の回転角度の大きさが反対になることを除けば、右側に旋回させる場合と同様の仕組みである。また、各駆動輪の円G3及びG4の中心(位置C2)は、制御信号によって設定される車両1の旋回する角度に応じて同じ直線上を移動するようにしてもよい。
【0080】
また、
図6Aの例では前側駆動装置200aのみを回転させ、
図6Bの例では前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの両方を回転させる場合について説明した。しかし、当然に後側駆動装置200bのみを回転させることも可能である。
【0081】
図6A及び
図6Bに示すように、各駆動輪を中心を共通にする円(円G1及び円G2、又は円G3及び円G4)に沿うように回転させることによって、地面に対する接地力を低減し、特に不整地などにおけるハンドリング性能や走行性能をより高めることが可能である。
【0082】
4.車輪機構の構成
図7は、本開示の一実施形態に係る車両1の車輪機構250の構成を示す斜視図である。具体的には、
図7は、車両1の左前側駆動輪250aなどを含む左前側の車輪機構250の構成を示す図である。なお、他の車輪機構(すなわち、右前側の車輪機構250、左後側の車輪機構250及び右後側の車輪機構250)について図示はしないものの、他の車輪機構も車輪機構250と同様の構成を有する。
【0083】
図7によれば、左前側の車輪機構250は、左前側駆動輪250a、ナックル装置220a、及びサスペンション装置260aを少なくとも含む。左前側駆動輪250aの構成は
図1及び
図2などで説明した通りである。ナックル装置220aは、
図5で説明した通り、左前側駆動輪250aが連結された左側端部226a及びサスペンション装置260aに対して左右方向(すなわち、車両1の前進する方向に対して垂直な方向)に回転可能に連結された右側端部(連結部221a)を少なくとも含む。すなわち、ナックル装置220aの連結部221aは、左前側駆動輪250aの左右方向の回転軸となる直線H1に沿うように延伸した軸芯227aを有し、当該軸芯227aを中心にナックル装置220aが回転可能に構成されている。
【0084】
ナックル装置220aは、一例としては、アルミニウムや鋼又はそれらの合金等の金属材料、繊維強化樹脂や硬質ウレタン等の樹脂材料、及びこれらの組み合わせなど、好ましくは鋼又はその合金、より好ましくは炭素鋼又はその合金により構成される。ナックル装置220aは車両1に載置される人又は物品による荷重を支える重要な構成要素となるが、炭素鋼又はその合金で構成することにより、十分な剛性を確保することが可能となる。
【0085】
サスペンション装置260aは、ナックル装置220aの連結部221aを上下に挟むように構成された上下一対の連結アーム268a及び連結アーム269aと、弾性機構261aとを少なくとも含む。連結アーム268aは、左前側駆動輪250aの左右方向の回転軸となる直線H1を中心とする孔を有する一端部263aを有する。当該一端部263aにはナックル装置220aの軸芯227aが挿入されることにより、当該軸芯227aを中心としてサスペンション装置260aがナックル装置220aに対して回転可能に連結される。また、連結アーム268aは、一端部263aと相対する位置に、本体300に対して上下方向(すなわち、重力方向)に回転可能に連結された一対の下側連結部262aを有する。下側連結部262aは、車両1の前進する方向に沿って孔が形成されている。すなわち、当該孔の内部に本体300の軸芯が挿入されることで、本体300に対してサスペンション装置260aが上下方向に回転可能に連結される。また、連結アーム268aは、一端部263aと一対の下側連結部262aの間の位置(すなわち、連結アーム268aの略重心となる位置)に弾性機構261aの下側端部が結合される結合部を有する。
【0086】
連結アーム269aは、左前側駆動輪250aの左右方向の回転軸となる直線H1を中心とする孔を有する一端部264aを有する。当該一端部264aにはナックル装置220aの軸芯227aが挿入されることにより、当該軸芯227aを中心としてサスペンション装置260aがナックル装置220aに対して回転可能に連結される。また、連結アーム269aは、一端部264aと相対する位置に、本体300に対して上下方向(すなわち、重力方向)に回転可能に連結された一対の上側連結部265aを有する。上側連結部265aは、車両1の前進する方向に沿って孔が形成されている。すなわち、当該孔の内部に本体300の軸芯が挿入されることで、本体300に対してサスペンション装置260aが上下方向に回転可能に連結される。
【0087】
弾性機構261aは、上下方向(すなわち、重心方向)に伸縮可能な弾性部材により構成されている。このような弾性部材は、一例としては、コイルばね、ゴム、トーションバー、渦巻きばねなど、種々のものを利用することが可能である。弾性機構261aは、下側端部がサスペンション装置260aの連結アーム268aの下側連結部262aに結合されている。また、弾性機構261aは、上側端部が本体300に結合されている。したがって、本体300に対して下方向(重力方向)の荷重がかかった場合、連結アーム268aの一端部263a及び連結アーム269aの一端部264aはそれぞれ反対の方向に移動しようとするが、当該弾性機構261aの働きによりその急激な移動を緩和することが可能となる。すなわち、弾性機構261aにより、重力方向の荷重や、その逆方向の荷重を緩和し、車両1に対する振動等を効果的に抑制することができる。
【0088】
図8は、本開示の一実施形態に係る車両1の車輪機構250の構成を示す斜視図である。具体的には、
図8は、左前側の車輪機構250のうち、左前側駆動輪250aの構成を示す図である。なお、
図8では左前側駆動輪250aの構造を示すが、他の駆動輪(右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)も同様の構成を有する。
【0089】
図8によれば、左前側駆動輪250aは、タイヤと、当該タイヤを装着する円筒状の金属製のホイルを含む。また、当該ホイルの内側には、電動機290a(例えば、インホイルモータ)が配置されている。電動機290aには、信号線291aが接続されている。当該信号線291aを介して、制御装置100からの制御信号やバッテリなどからの電磁力が供給される。
【0090】
ここで、電動機290は、
図8において図示はしないものの、左前側駆動輪250a側に固定されたロータと、本体300側に当該ロータに対応する位置に固定されたステータとを有する。当該ステータは、電動機290aの回転軸292aの軸周りに環状に設定されている。また、電動機290aの回転軸292aは、ベアリングや軸受けなどの部材を介して、ホイルの回転軸に連結されている。
【0091】
ステータの回転軸292aは、
図8に示すように、車両1を前進又は後進させる方向に左前側駆動輪250aを回転させる場合の左前側駆動輪250aの回転軸と同じ回転軸となるように形成されている。すなわち、回転軸292aは、当該回転軸に沿って本体300の方向に突出した形状を有する。回転軸292aの突出した部分は、全体として円柱状に形成されているものの、少なくとも一部が平坦に形成された平坦部293aを有する。このように構成された回転軸292aがナックル装置220aに挿入されることにより、ナックル装置220aに対して回転軸292aが回転しないように結合される。また、回転軸292aは、円柱状に形成することにより、重力方向又はその逆方向からの荷重を平坦部293aで受け止めることにより、より強固に本体300を軸支することが可能となる。なお、
図8では、平坦部293aが一面しか形成されていないものの、平坦部293aの相対する側において同様にもう一面平坦部が形成されている。
【0092】
このように、ステータの回転軸292aは、ナックル装置220a等に連結されることにより、回転しないように本体300等に対して固定されている。他方、ロータは左前側駆動輪250aのホイル等に固定されている。したがって、ステータは回転軸292aの周囲に環状に形成されているところ、当該ロータは環状に形成されたステータに沿うように回転される。これにより、ロータが固定されたホイルを含む左前側駆動輪250aが回転される。
【0093】
図9は、本開示の一実施形態に係る車両1のナックル装置220の構成を示す斜視図である。また、
図10A及び
図10Bは、本開示の一実施形態に係る車両1のナックル装置220の一部の構成を示す斜視図である。具体的には、
図9は、左前側の車輪機構250のうちナックル装置220aの構造を示す図である。また、
図10Aは、ナックル装置220aを構成する第1ナックル本体230の構造を示す図である。また、
図10Bは、ナックル装置220aを構成する第2ナックル本体240の構造を示す図である。なお、
図9、
図10A及び
図10Bでは、左前側駆動輪250aの構造を示すが、他の駆動輪(右前側駆動輪250b、左後側駆動輪250c及び右後側駆動輪250d)も同様の構成を有する。
【0094】
図9によると、ナックル装置220aは、第1ナックル本体230と、第2ナックル本体240と、第1ナックル本体230及び第2ナックル本体240とによって形成された軸受け229とを少なくとも含む。
【0095】
第1ナックル本体230と第2ナックル本体240は、重力方向に沿うように形成された面において互いに接するように固定されている。具体的には、第1ナックル本体230は、第2ナックル本体240と接する面235a、及び当該面235aと相対する面235bを横断するように形成された一対の挿入孔231a及び挿入孔231bを含む。また、第2ナックル本体240は、第1ナックル本体230と接する面245a、及び当該面245aと相対する面245b(ただし、
図9において図示されていない。)を横断するように形成された一対の挿入孔241a及び挿入孔241b(ただし、
図9において図示されていない。)を含む。一対の挿入孔231a及び挿入孔231bと、一対の挿入孔241a及び挿入孔241bは、挿入孔231aと挿入孔241aとが、また挿入孔231bと挿入孔241bとが互いに対応する位置であり同じ軸線上に形成されている。したがって、第1ナックル本体230と第2ナックル本体240とは、挿入孔231aと挿入孔241aとに跨るように固定芯材が、また挿入孔231bと挿入孔241bとに跨るように固定芯材が挿入されることによって、互いに固定される。
【0096】
図9及び
図10Aによると、第1ナックル本体230は、面235aにおいて回転軸292aが挿入される方向に直交する方向に窪むように形成された第1凹部232を含む。当該第1凹部232は、その上面の少なくとも一部が平坦に形成された第1上側平坦部233aと、その下面の少なくとも一部が平坦に形成された第1下側平坦部233bと、第1上側平坦部233aと第1下側平坦部233bとを結ぶように形成された円弧状側面部とを含む。
【0097】
また、
図9及び
図10Bによると、第2ナックル本体240は、面245aにおいて回転軸292aが挿入される方向に直交する方向に窪むように形成された第2凹部242を含む。当該第2凹部242は、その上面の少なくとも一部が平坦に形成された第2上側平坦部243aと、その下面の少なくとも一部が平坦に形成された第2下側平坦部243bと、第2上側平坦部243aと第2下側平坦部243bとを結ぶように形成された円弧状側面部とを含む。
【0098】
そして、第1ナックル本体230と第2ナックル本体240とが、面235a及び面245aで互いに接するように固定されることにより、互いに対応する位置に構成された第1凹部232と第2凹部242とが一体となって軸受け229を形成する。また、このとき、第1上側平坦部233aと第2上側平坦部243aとは一体となって同じ平面を形成する。さらに、第1下側平坦部233bと第2下側平坦部243bとは一体となって同じ平面を形成する。したがって、軸受け229は、全体として中空に形成された内表面を有する。また、軸受け229の内表面は、第1上側平坦部233aと第2上側平坦部243aとが一体となって形成された上面平坦部と、第1下側平坦部233bと第2下側平坦部243bとが一体となって形成された下面平坦部とを有する。
【0099】
軸受け229には、このように形成された上面平坦部に対して回転軸292aの上側の平坦部293aが接するように、また下面平坦部に対して回転軸292aの下側の平坦部293aが接するように、回転軸292aが挿入される。これにより、軸受け229は、回転軸292aを軸支すると共に、平坦部において重力方向又はその逆方向から加えられる力を分散して支えることが可能となり、より強固な構造体を構成することができる。
【0100】
また、
図10A及び
図10Bによると、第1ナックル本体230の面235aは、一対の嵌合凸部(嵌合凸部234a及び嵌合凸部234b)を有する。嵌合凸部234a及び嵌合凸部234bは、面235aから外側方向に突出するように構成されている。また、嵌合凸部234a及び嵌合凸部234bの略中心には、挿入孔231a及び挿入孔231bが形成されている。
【0101】
さらに、第2ナックル本体240の面245aは、一対の嵌合凹部(嵌合凹部244a及び嵌合凹部244b)を有する。嵌合凹部244a及び嵌合凹部244bは、嵌合凸部234a及び嵌合凸部234bに対応する位置に、面245aからその内部に窪むように構成されている。また、嵌合凹部244a及び嵌合凹部244bの略中心には、挿入孔241a及び挿入孔241b(いずれも
図10Bにおいて図示されていない)が形成されている。したがって、第1ナックル本体230と第2ナックル本体240とは、嵌合凸部234aが嵌合凹部244aに、嵌合凸部234bが嵌合凹部244bに対応するように嵌合することにより、互いに位置決めして固定される。また、このとき、挿入孔231aと挿入孔241aの両方に同じ固定芯材が、挿入孔231bと挿入孔241bの両方に同じ固定芯材がそれぞれ挿入されることにより、より強固に第1ナックル本体230と第2ナックル本体240とを固定することが可能である。
【0102】
すなわち、
図9、
図10A及び
図10Bによると、ナックル装置220aは、左前側駆動輪250aの前方向及び後方向の少なくともいずれか一方への回転の回転軸292aに沿う方向に中空に構成され、当該回転軸292aを挿入することにより当該左前側駆動輪250aを固定するように構成された軸受け229と、当該回転軸292aと直交する方向を回転軸として回転可能に本体300に対して連結され、左前側駆動輪250aを左方向及び右方向の少なくともいずれか一方へ回転させるように構成された回転軸部(連結部221a)とを含む。
【0103】
当該軸受け229は、中空に形成された内表面の上面側及び下面側の少なくとも一部が平坦に形成された平坦部を有する。また、ナックル装置220aは、第1ナックル本体230と、当該第1ナックル本体230の重力方向に沿うように形成された面において接するように固定される第2ナックル本体240とを含む。また、第1ナックル本体は第2ナックル本体240と接する面に回転軸292aに直交する方向に窪むように形成された第1凹部232を含み、第2ナックル本体240は第1ナックル本体230と接する面に回転軸292aに直交する方向に窪むように形成された第2凹部242を含む。また、軸受け229は、第1凹部232と第2凹部242により形成される。
【0104】
第1ナックル本体230は、第2ナックル本体240と接する面から突出するように形成された嵌合凸部(嵌合凸部234a及び嵌合凸部234bの少なくともいずれか)を含み、第2ナックル本体240は第1ナックル本体230と接する面において当該嵌合凹部が嵌合するように形成された嵌合凹部(嵌合凹部244a及び嵌合凹部244bの少なくともいずれか)を含み、当該嵌合凸部と当該嵌合凹部により、第1ナックル本体230及び第2ナックル本体240は互いに位置決めして固定される。
【0105】
なお、
図9、
図10A及び
図10Bにおいて、嵌合凹部や嵌合凸部の個数、挿入孔の個数などは、任意の個数形成することが可能である。また、その形状も、例えば凹部と凸部を逆に構成したり、突出形状を三角錐状にするなど、任意の形状を採用することが可能である。
【0106】
また、
図9、
図10A及び
図10Bにおいて、軸受け229の形状を全体として略中空状に形成し、その内表面の上面側及び下面側に平坦部を形成することで、回転軸292aを回転しないように固定している。しかし、これに限らず、回転軸292aをねじ状に形成し、軸受け229をねじ穴状に形成するなど、回転軸292a及び軸受け229は任意の形状を採用することが可能である。
【0107】
5.本体の構成
図11は、本開示の一実施形態に係る車両1の本体300の構成を示す斜視図である。本体300は、車両1が前進する方向にその長手方向が沿うように構成された本体シャーシ310と、本体シャーシ310の長手方向に本体シャーシ310上をスライド可能に設置された載置台360とを含む。本体シャーシ310は、左前側の車輪機構250が連結される左前領域320aを左前側に、右前側の車輪機構250が連結される右前領域320bを右前側に、左後側の車輪機構250が連結される左後領域320cを左後側に、右後側の車輪機構250が連結される右後領域320dを右後側にそれぞれ有する。
【0108】
左前領域320aは、サスペンション装置260aの下側連結部262aを重力方向又はその逆方向に回転可能に連結するための下側軸部311aと、サスペンション装置260aの上側連結部265aを重力方向又はその逆方向に回転可能に連結するための上側軸部312aと、サスペンション装置260aの弾性機構261aの上側端部が結合される結合部313aを含む。下側軸部311a、上側軸部312a及び結合部313aは、連結されるサスペンション装置260aの各部が回転する際の回転軸となるように、軸芯をそれぞれ有する。すなわち、下側軸部311aの軸芯がサスペンション装置260aの下側連結部262aの孔に挿入されることにより、サスペンション装置260aの下側連結部262aを本体300に対して回転可能に連結する。また、上側軸部312aの軸芯がサスペンション装置260aの上側連結部265aの孔に挿入されることにより、サスペンション装置260aの上側連結部265aを本体300に対して回転可能に連結する。また、結合部313aの軸芯がサスペンション装置260aの弾性機構261aの孔に挿入されることにより、サスペンション装置260aの弾性機構261aの上側端部を本体300に対して回転可能に連結する。
【0109】
なお、右前領域320b、左後領域320c及び右後領域320dは、それぞれ左前領域320aと同様の構成を有し、サスペンション装置260b~サスペンション装置260dをそれぞれ回転可能に連結するが、その詳細は同様であるため省略する。
【0110】
載置台360は、本体シャーシ310の短手方向に沿って横長板状の構造を有する。載置台360は、本体シャーシ310の短手方向に沿って、下面側にスライドレール361を有する。スライドレール361は、載置台360の長手方向の辺に沿って一対に形成されている。当該スライドレール361には、任意の付属装置の少なくとも一部が摺動可能に連結される。すなわち、付属装置がスライドレール361状を摺動することによって、車両1の側面側から付属装置を設置することが可能である。このように、スライドレール361を介して載置台360の下面側に設置される付属装置としては、一例として、耕運機、草刈り機、種蒔き機などが挙げられる。
【0111】
なお、
図11では、載置台360の下面側への付属装置の設置をスライドレール361で行ったが、当然に、ねじ止めなどの他の方法により行うことも可能である。また、
図11では、スライドレール361が車両1の側方から摺動されるように設けられているが、車両1の前方又は後方から摺動されるように設けられてもよい。
【0112】
載置台360は、その上面側に載置面362を有し、載置面362上にも運搬台や任意の付属装置を設置することが可能である。当該載置面362は、載置される運搬台や任意の付属装置を固定するための、ねじ穴363a~ねじ穴363dを含む。
【0113】
ここで、
図12は、本開示の一実施形態に係る車両1に運搬台900が連結された状態を示す側面図である。また、
図13は、本開示の一実施形態に係る車両1に連結される運搬台900の構成を示す斜視図である。具体的には、
図12は、
図11に示す載置台360の上面側の載置面362に、
図13に示す運搬台900が載置された状態を示す図である。
図12によれば、載置台360の上面側に運搬台900が載置され、その内部に人を含む動物や農作物などの物品を載置可能に構成されている。このように、本体300に運搬台900を設置することによって、車両1を運搬用車両や運搬用ロボットとして効果的に運用することが可能となる。
【0114】
また、
図13に示すように、運搬台900は、下面、前側面、後側面、左側面及び右側面が壁部材によって覆われた構造を有する。したがって、開口した上面側から動物や物品などをその内部に収容することが可能となる。
【0115】
再び
図11に戻り、このような運搬台900を載置面362に設置することで車両1の効果的な利用が可能となる。なお、載置面362には運搬台900に代えて、任意の付属装置を固定することも可能である。このような付属装置には、農薬散布装置、水やり機などの様々な装置が例として挙げられる。
【0116】
また、
図11では、運搬台900や付属装置は、ねじ穴363a~ねじ穴363dにねじを嵌入することで載置面362に固定する。しかし、これに限らず、スライドレール状のものを利用したり、ビスを利用するなど、任意の方法で固定することが可能である。
【0117】
また、
図11において図示はしていないものの、本体300の載置台360又は本体シャーシ310のいずれかの位置には、制御装置100及びセンサー600が設置される。
【0118】
以上、本実施形態においては、より走行性能に優れた車両及びその駆動装置を提供することができる。
【0119】
6.変形例
図1~
図13において、車両1は、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの両方において、車両1の前進方向又は後進方向に回転するように、各駆動輪に対応して電動機を設置した。しかし、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bのいずれかにおいて一対の電動機が設置されればよい。すなわち、車両1の前側駆動装置200aの一対の駆動輪に対してそれぞれ対応する電動機が設けられ、後側駆動装置200bの車輪は単なる回転輪として設置することも可能であるし、その逆も可能である。
【0120】
図1~
図13において、車両1は、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bの両方において、左右方向に回転するようにした。しかし、前側駆動装置200a及び後側駆動装置200bのいずれか一方が左右方向に回転すればよく、必ずしも両方が回転する必要はない。
【0121】
図1~
図13において、孔と軸芯、凹部と凸部など一対の構造物を種々占めていているが、これらは
図1~
図13に示す組み合わせで用いられる必要はない。例えば、嵌合凸部234aは面235aに設けられ、嵌合凹部244aは面245aに設けられているが、嵌合凸部が面245aに設けられ、嵌合凹部が面235aに設けられてもよい。
【0122】
図1~
図13において、車両1は4輪の車両を例に挙げて説明しているが、2輪や3輪であってもよいし、5輪以上であってもよい。また、
図1~
図13において車両1は運搬台等を載置する場合について説明しているが、運搬台等を牽引するものであってもよい。
【0123】
本明細書で説明される処理及び手順は、実施形態において明示的に説明されたものによってのみならず、ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせによっても実現可能である。具体的には、本明細書で説明された処理及び手順は、集積回路、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気ディスク、光ストレージ等の媒体に、当該処理に相当するロジックを実装することによって実現される。また、本明細書で説明される処理及び手順は、それらの処理・手順をコンピュータプログラムとして実装し、処理装置やサーバ装置を含む各種のコンピュータに実行させることが可能である。
【0124】
本明細書中で説明される処理及び手順が単一の装置、ソフトウェア、コンポーネント、モジュールによって実行される旨が説明されたとしても、そのような処理又は手順は、複数の装置、複数のソフトウェア、複数のコンポーネント、及び/又は、複数のモジュールによって実行されるものとすることができる。また、本明細書中で説明される各種情報が単一のメモリや記憶部に格納される旨が説明されたとしても、そのような情報は、単一の装置に備えられた複数のメモリ又は複数の装置に分散して配置された複数のメモリに分散して格納されるものとすることができる。さらに、本明細書において説明されるソフトウェア及びハードウェアの要素は、それらをより少ない構成要素に統合して、又は、より多い構成要素に分解することによって実現されるものとすることができる。
【符号の説明】
【0125】
1 :車両
100 :制御装置
200 :駆動装置
200a :前側駆動装置
200b :後側駆動装置
210a :連結ロッド
210b :連結ロッド
220 :ナックル装置
220a :ナックル装置
220b :ナックル装置
220c :ナックル装置
220d :ナックル装置
221a :連結部
221b :連結部
221c :連結部
221d :連結部
222a :第2アーム
222b :第2アーム
223a :他端部
223b :他端部
224 :他端部
225a :第1アーム
225b :第1アーム
226a :左側端部
227a :軸芯
229 :軸受け
230 :第1ナックル本体
231a :挿入孔
231b :挿入孔
232 :第1凹部
233a :第1上側平坦部
233b :第1下側平坦部
234a :嵌合凸部
234b :嵌合凸部
235a :面
235b :面
240 :第2ナックル本体
241a :挿入孔
241b :挿入孔
242 :第2凹部
243a :第2上側平坦部
243b :第2下側平坦部
244a :嵌合凹部
244b :嵌合凹部
245a :面
245b :面
250 :車輪機構
250a :左前側駆動輪
250b :右前側駆動輪
250c :左後側駆動輪
250d :右後側駆動輪
260a :サスペンション装置
260b :サスペンション装置
260c :サスペンション装置
260d :サスペンション装置
261a :弾性機構
262a :下側連結部
263a :一端部
264a :一端部
265a :上側連結部
268a :連結アーム
269a :連結アーム
280 :ステアリング装置
280a :ステアリング装置
280b :ステアリング装置
290 :電動機
290a :電動機
290b :電動機
290c :電動機
290d :電動機
291a :信号線
292a :回転軸
293a :平坦部
300 :本体
310 :本体シャーシ
311a :下側軸部
312a :上側軸部
313a :結合部
320a :左前領域
320b :右前領域
320c :左後領域
320d :右後領域
360 :載置台
361 :スライドレール
362 :載置面
363a :ねじ穴
363d :ねじ穴
600 :センサー
800 :付属装置
900 :運搬台
【要約】
【課題】 より走行性能に優れた車両及びその駆動装置を提供する。
【解決手段】 本体に設置され、各駆動輪が左方向及び右方向の少なくともいずれか一方に回転するように構成された複数の駆動輪と、前記複数の駆動輪のうち対応する各駆動輪に対して設けられ、対応する各駆動輪を前方向及び後方向の少なくともいずれか一方に回転させる駆動トルクを発生させるように構成された複数の電動機とを含む車両が提供される。
【選択図】
図1