(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】フィルム、積層体および前駆体組成物、ならびにポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250220BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20250220BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250220BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20250220BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B32B27/34
C08G73/10
C08K3/38
C08L79/08 Z
(21)【出願番号】P 2024543510
(86)(22)【出願日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2024006503
(87)【国際公開番号】W WO2024181294
(87)【国際公開日】2024-09-06
【審査請求日】2024-07-23
(31)【優先権主張番号】P 2023027913
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391059399
【氏名又は名称】株式会社アイ.エス.テイ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】森内 幸司
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-113306(JP,A)
【文献】特開2020-006691(JP,A)
【文献】特開2019-214159(JP,A)
【文献】特開2020-073305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03、3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂と、
ホウ酸とアルミナゾルから得られる酸化物と
を含有し、
420nmの波長における光線透過率が74%以上であり、
黄色度(YI)が6.0以下である
フィルム。
【請求項2】
熱膨張係数が50ppm/℃以下である
請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
熱伝導率が0.231W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内である
請求項
1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンからなるポリアミック酸をイミド化して得られ、
前記ポリアミック酸の溶液の固形分に対してホウ酸が2.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内で前記溶液に添加されている
請求項
1に記載のフィルム。
【請求項5】
酸二無水物とジアミンからなるポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミド樹脂と、
ホウ素元素を含む酸化物と
を含有し、
前記ポリアミック酸の溶液に対してアルミナゾルがさらに添加されていると共に、前記溶液の固形分に対してホウ酸が2.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内で前記溶液に添加されており、
前記ホウ酸に対する前記アルミナゾルの固形分の質量比が0.5以上1.5以下の範囲内であり、
熱膨張係数が50ppm/℃以下である
フィルム。
【請求項6】
ポリイミド樹脂と、
ホウ素元素を含む酸化物と
を含有し、
全量に対するホウ素元素の配合割合が0.5質量%以上1.6質量%以下の範囲内であり、
全量に対するアルミニウム元素の配合割合が1.5質量%以上4.6質量%以下の範囲内である
フィルム。
【請求項7】
ガラス基板と、
請求項1
から6のいずれか1つに記載のフィルムと
を備える、積層体。
【請求項8】
ポリアミック酸と、
ホウ酸と、
アルミナゾルと
を含有する、前駆体組成物。
【請求項9】
ホウ酸およびアルミナゾルを有効成分とするポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い熱膨張係数を有するフィルムに関する。また、本発明は、そのフィルムとガラス基板との積層体にも関する。また、本発明は、そのフィルム作製に必要となる前駆体組成物にも関する。また、本発明は、ポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有すると共に軽くて柔軟性を有する素材として、ポリイミド樹脂が着目されている。ポリイミド樹脂は、現在ではパソコン、スマートフォン、自動車、テレビ等の電子機器に欠かせない化学材料となっている。ところで、ポリイミド樹脂製のフィルム(あるいは膜)(以下「ポリイミドフィルム」という。)は、耐熱性と絶縁性を兼ね備えることから、高い熱的寸法安定性が求められるフレキシブルプリント配線基板のベースフィルムや半導体の層間絶縁膜などとして使用されている。
【0003】
ところで、通常、ポリイミドフィルムの熱膨張係数は一般的に20ppm/℃程度と言われているが、これは特定の化学構造を有するポリイミドフィルムの熱膨張係数であるにすぎない。ポリイミドフィルムの中には、無色透明であるものや、接着性に優れるもの等、特徴的なポリイミドフィルムが存在するが、このようなポリイミドフィルムには、熱膨張係数が50ppm/℃を超えるものが多い。近年、フレキシブルプリント配線基板や半導体などの製造において、このような特徴的なポリイミドフィルムが注目されているが、その熱膨張係数の大きさからその使用が控えられている。なお、これは、フレキシブルプリント配線基板や半導体などの製造において、熱膨張係数が50ppm/℃を超えるポリイミドフィルムを使用した場合、フレキシブルプリント配線基板や半導体などに反りや界面剥離などが発生しやすくなるからである。
【0004】
このような状況において、上述の特徴的なポリイミドフィルムに代えて、その特徴的なポリイミドフィルムの熱膨張係数よりも熱膨張係数が低く寸法変化の小さい液晶ポリマー製のフィルム等が使用されている。しかし、液晶ポリマー製のフィルムはポリイミドフィルムに比べて耐熱性や加工性に劣るという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、熱膨張率が比較的高いポリイミドフィルムの熱膨張係数を下げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るフィルムは、ポリイミド樹脂、および、ホウ素元素を含む酸化物を含有する。なお、同フィルムは、ポリイミド樹脂、および、ホウ素元素を含む酸化物から成っていてもよい。また、ホウ素元素を含む酸化物は、ホウ酸とアルミナゾルから得られることが好ましい。なお、このアルミナゾルにはアルミナ(酸化アルミニウム)が含まれており、そのアルミナは、主に、アルミニウム元素と酸素元素とから構成されている。また、このホウ素元素を含む酸化物は、ホウ素元素およびアルミニウム元素を含む酸化物であることが好ましい。さらに、ホウ素元素を含む酸化物は、ポリイミド樹脂のマトリックス中に分散されていることが好ましい。また、ポリイミド樹脂は、フィルムの主成分であることが好ましい。
【0008】
また、上述のフィルムの熱膨張係数は、その厚みが25μmであるとき、50ppm/℃以下であることが好ましい。
【0009】
また、上述のフィルムの420nmの波長における光線透過率は、その厚みが25μmであるとき、74%以上であることが好ましい。
【0010】
また、上述のフィルムの黄色度(YI)は、その厚みが25μmであるとき、6.0以下であることが好ましい。
【0011】
また、上述のフィルムの熱伝導率は0.231W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上述のポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンからなるポリアミック酸をイミド化して得られることが好ましい。かかる場合、ポリアミック酸の溶液の固形分に対してホウ酸が2.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内で添加されていることが好ましい。また、かかる場合、上述の溶液に対してアルミナゾルがさらに添加されており、ホウ酸に対するアルミナゾルの固形分の質量量の比が0.5以上1.5以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、上述のフィルムにおいて、全量に対するホウ素元素の配合割合が0.5質量%以上1.6質量%以下の範囲内であり、全量に対するアルミニウム元素の配合割合が1.5質量%以上4.6質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の他の局面に係る積層体は、ガラス基板および上述のフィルムを備える。
【0015】
本発明のさらに他の局面に係る前駆体組成物は、ポリアミック酸、ホウ酸およびアルミナゾルを含有する。
【0016】
本発明のさらに他の局面に係るポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物は、ホウ酸およびアルミナゾルを有効成分とする。なお、この熱膨張係数低下用組成物には、ポリアミック酸が含まれていてもよい。
【0017】
なお、この発明は、以下のように表現することもできる。
ホウ酸およびアルミナゾルを含有するポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物。なお、この熱膨張係数低下用組成物には、ポリアミック酸が含まれていてもよい。
【0018】
ポリアミック酸溶液にホウ酸およびアルミナゾルを添加した後に前記ポリアミック酸溶液を加熱して、得られるポリイミド樹脂の熱膨張係数を低下させる方法。
【0019】
ポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物の製造のためのホウ酸およびアルミナゾルの使用。なお、この熱膨張係数低下用組成物には、ポリアミック酸が含まれていてもよい。
【0020】
ポリイミド樹脂の熱膨張係数低下用組成物の製造のための、ホウ酸およびアルミナゾルを含有するポリアミック酸溶液の使用。
【0021】
ポリイミド樹脂の熱膨張係数を低下させるためのホウ酸およびアルミナゾルの使用。
【0022】
ポリイミド樹脂の熱膨張係数低下剤として使用するホウ酸およびアルミナゾル。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るフィルムは、ポリイミド樹脂、および、ホウ素元素を含む酸化物を含有しており、同じポリイミド樹脂のみから成るポリイミドフィルムよりも低い熱膨張係数を示す。具体的には、同フィルムの厚みが25μmであるとき、同フィルムの熱膨張係数は50ppm/℃以下とすることができる。また、上述のポリイミド樹脂が、無色透明性に優れるフィルムを構成するポリイミド樹脂である場合、そのフィルムの光線透過率の低下や黄色度(YI)の増加を抑制しつつ、そのフィルムの熱膨張係数を下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態に係るフィルムは、主に、ポリイミド樹脂、および、ホウ素元素を含む酸化物から成っている。なお、ここで、ポリイミド樹脂は、フィルムの主成分であることが好ましい。また、ホウ素元素を含む酸化物は、ポリイミド樹脂のマトリックス中に分散されていることが好ましい。ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンからなるポリアミック酸溶液を加熱イミド化して得られる。また、ここで、ホウ素元素を含む酸化物とは、ポリアミック酸溶液にホウ酸とアルミナゾルを混合させてそれを加熱することにより、ポリイミド樹脂中に形成される。すなわち、本発明の実施の形態に係るフィルムにはホウ素元素およびアルミニウム元素が含まれる。なお、ホウ素元素は、例えば、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、メチレンブルー吸光光度法、アゾメチンH吸光光度法、エネルギー分散型蛍光X線分析法、黒鉛炉原子吸光分析法などにより検出することができる。また、アルミニウム元素は、例えば、X線回折法、X線光電子分光法、蛍光X線分析法、ICP発光分光分析法、原子吸光分析法、赤外線分光法などにより検出することができる。
【0025】
また、本発明の実施の形態に係るフィルムにおいて、フィルムの全量に対するホウ素元素の配合割合が0.5質量%以上1.6質量%以下の範囲内であり、且つ、全量に対するアルミニウム元素の配合割合が1.5質量%以上4.6質量%以下の範囲内であることが好ましく、フィルムの全量に対するホウ素元素の配合割合が0.7質量%以上1.6質量%以下の範囲内であり、且つ、全量に対するアルミニウム元素の配合割合が2.0質量%以上4.3質量%以下の範囲内であることがより好ましく、フィルムの全量に対するホウ素元素の配合割合が0.8質量%以上1.5質量%以下の範囲内であり、且つ、全量に対するアルミニウム元素の配合割合が2.3質量%以上4.1質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0026】
ところで、ポリアミック酸溶液にホウ酸とアルミナゾルを混合させる方法としては、例えば、(a)ポリアミック酸溶液に直接ホウ酸とアルミナゾルを混合させる方法、(b)有機溶媒中にホウ酸とアルミナゾルを加えて溶液を調製してから、その溶液をポリアミック酸溶液に加える方法が挙げられる。
【0027】
本発明の実施の形態に係るフィルムの作製に用いられるホウ酸の純度は99.5%以上であることが好ましい。また、アルミナゾルとしては、10質量%以上の固形分を有するものであることが好ましい。なお、ホウ酸の純度およびアルミナゾルの固形分は、目的とするフィルムの熱膨張係数や光線透過率、黄色度(YI)に応じて適宜選択することができる。また、ポリアミック酸溶液の固形分に対するホウ酸の添加量は1.0質量%以上30.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、2.0質量%以上20.0質量%以下の範囲内であることがより好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0028】
また、本発明の実施の形態に係るフィルムの作製において、ホウ酸に対するアルミナゾルの固形分の質量比は、0.5以上1.5以下の範囲内であることが好ましく、0.6以上0.9以下の範囲内であることがより好ましい。
【0029】
ところで、本発明の実施の形態に係るフィルムは、上述のポリアミック酸溶液にホウ酸とアルミナゾルを添加したもの(以下、添加物含有ポリアミック酸溶液と称する場合がある。)を公知の方法で加熱成形することができる。例えば、添加物含有ポリアミック酸溶液を支持体上に塗布してその塗膜を乾燥させ、その乾燥塗膜を加熱することによって本発明の実施の形態に係るフィルムを作製することができる。
【0030】
本発明の実施の形態に係るポリアミック酸溶液の調製に用いることができる酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9-ビス[4-(3,4’-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、4,5’-オキシビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、5,5-[1,4-フェニレンビス(オキシ)]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、4,4’-[2,1-フェニレンビス(オキシ)]ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、3,3’-(p-フェニレンジオキシ)二フタル酸無水物、5,5’-[1,2-フェニレンビス(オキシ)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、5,5’-[1,3-フェニレンビス(オキシ)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、4,4’-[m-フェニレンビス(オキシ)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、4,5’-[1,4-フェニレンビス(オキシ)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)、1,4-ビス(ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物が挙げられる。なお、これらの酸二無水物を2種以上混合して使用することもできる。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係るポリアミック酸溶液の調製に用いることができるジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(トリフルオロメチル)-4、4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、ジアミノベンゾトリフルオロライド、ビス(トリフルオロメチル)フェニレンジアミン、ジアミノテトラ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジアミノ(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ビス(アミノフェノキシ)ジ(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス〔(トリフルオロメチル)アミノフェノキシ〕ベンゼン、ビス〔(トリフルオロメチル))アミノフェノキシ〕ビフェニル、ビス{〔(トリフルオロメチル))アミノフェノキシ〕フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス{4-(p-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、2,2-ビス{4-(m-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、2,2-ビス{4-(o-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、2-{4-(p-アミノフェノキシ)フェニル}-2-{4-(m-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、2-{4-(m-アミノフェノキシ)フェニル}-2-{4-(o-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、2-{4-(o-アミノフェノキシ)フェニル}-2-{4-(p-アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。なお、これらのジアミンを2種以上混合して使用することもできる。
【0032】
ところで、本発明の実施の形態に係るフィルムに対して耐久性(例えば、屈曲耐久性など)の機械的特性を付与する観点から、酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を採用すると共に、ジアミンとしてp-フェニレンジアミンを採用するか、酸二無水物として3,3’,4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を採用すると共に、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを採用することが好ましい。また、本発明の実施の形態に係るフィルムに対して、例えば、ディスプレイ部品などとしての透明性を付与する観点から、酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)を採用すると共に、ジアミンとして2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)を採用することが好ましい。なお、本発明の主旨を損ねない範囲で、上述の酸二無水物およびジアミンに対して他の酸二無視物および他のジアミンを添加してもよい。
【0033】
本発明の実施の形態に係るフィルムの厚みが25μmであるとき、そのフィルムの熱膨張係数は50.0ppm/℃以下であることが好ましい。また、この熱膨張係数は、45ppm/℃以下であることがより好ましく、44ppm/℃以下であることがさらに好ましく、43ppm/℃以下であることがさらに好ましく、42ppm/℃以下であることがさらに好ましく、41ppm/℃以下であることがさらに好ましく、40ppm/℃以下であることが特に好ましい。なお、その下限値は17ppm/℃である。また、その下限値は20ppm/℃であってもよく、25ppm/℃であってもよく、30ppm/℃であってもよく、35ppm/℃であってもよく、39ppm/℃であってもよい。また、この熱膨張係数は、ホウ酸およびアルミナゾルの添加量を調整することによって、用途や基材(相手材)に適切なものとすることができる。
【0034】
また、本発明の実施の形態に係るフィルムの厚みが25μmであるとき、そのフィルムの420nm波長の光線透過率は74%以上であることが好ましい。また、この光線透過率は、75%以上であることがより好ましく、76%以上であることがさらに好ましく、77%以上であることがさらに好ましく、78%以上であることがさらに好ましく、79%以上であることが特に好ましい。なお、その上限値は100%である。このような光線透過率を有するフィルムは、低い熱膨張係数を示し、ディスプレイ用途などに好適に使用することができる。
【0035】
さらに、本発明の実施の形態に係るフィルムの厚みが25μmであるとき、そのフィルムの黄色度(YI)は6.0以下であることが好ましい。また、この黄色度は、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましく、4.0以下であることがさらに好ましく、3.5以下であることが特に好ましい。なお、その下限値は2.0である。また、その下限値は2.5であってもよいし、3.0であってもよい。このような黄色度を有するフィルムは、低い熱膨張係数を示し、ディスプレイ用途などに好適に使用することができる。
【0036】
また、本発明の実施の形態に係るフィルムの引張強度は50MPa以上250MPa以下の範囲内であることが好ましい。また、この引張強度は、100MPa以上200MPa以下の範囲内であることがより好ましい。本発明の実施の形態に係るフィルムは、ホウ素元素を含む酸化物を含むことで低い熱膨張係数を示しつつ、ポリイミドフィルムが本来有する引張強度と同程度の引張強度を示すことができる。
【0037】
さらに、本発明の実施の形態に係るフィルムの引張弾性率は3.0GPa以上5.0GPa以下の範囲内であることが好ましい。また、この引張弾性率は、3.5GPa以上4.5GPa以下の範囲内であることがより好ましい。本発明の実施の形態に係るフィルムは、ホウ素元素を含む酸化物を含むことで低い熱膨張係数を示しつつ、ポリイミドフィルムが本来有する引張弾性率と同程度あるいはそれ以上の引張弾性率を示すことができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係るフィルムの引張伸びは10%以上40%以下の範囲内であることが好ましい。また、この引張伸びは、13%以上35%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0039】
さらに、本発明の実施の形態に係るフィルムの熱伝導率は0.231W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることが好ましい。また、この熱伝導率は、0.231W/mK以上0.243W/mK以下の範囲内であることがより好ましい。また、この熱伝導率は0.240W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であってもよく、0.245W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることがより好ましく、0.250W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.255W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.260W/mK以上0.275W/mK以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0040】
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を紹介して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
1.添加物含有ポリアミック酸溶液の調製
12.07gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、5.34gの2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)と、8.22gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と、6.37gの3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)とを、74.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させ、固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0042】
次に、26.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中に2.56gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテスク株式会社製)および11.18gのアルミナゾル(固形分20.0wt%、日産化学社製)を加えて、ホウ酸とアルミナゾル混合溶液(以下、単に「混合溶液」という。)を調製し、その混合溶液を上述のポリアミック酸溶液に加えて添加物含有ポリアミック酸溶液を調製した。
【0043】
2.フィルムの成形
上述の添加物含有ポリアミック酸溶液をガラス基板上に塗布して塗膜を形成した後、その塗膜を80℃のオーブンに入れ、15分乾燥させて前駆体フィルム得た。次いで、その前駆体フィルムをガラス基板より剥離した後、同前駆体フィルムの端部を枠体で固定した状態で、同前駆体フィルムを温度180℃のオーブンに入れて10分間維持した。その後、オーブンの温度を280℃まで昇温させた。なお、このとき、オーブンの温度を180℃から280℃まで22分で昇温させ、オーブンの温度が280℃に達してから5分間維持した。その結果、ガラス基板上にフィルムが形成された。この後、フィルムの端部を固定していた治具を外して厚み25μmのフィルムを得た。
【0044】
なお、ホウ酸中のホウ素元素およびアルミナゾル中のアルミニウム元素、ならびにホウ素元素を含む化合物、アルミニウム元素を含む化合物および両元素を含む化合物は280℃でも揮発することはない。この事実に基づいて上述のホウ酸およびアルミナゾルの添加量ならびにポリアミック酸の固形分濃度から最終的に得られるフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を算出したところ、前者は1.3質量%であり、後者は3.5質量%であった。
【0045】
3.フィルムの物性測定
得られた厚み25μmのフィルムの熱膨張係数、光線透過率、黄色度(YI)、引張強度、引張弾性率、引張伸び、および、熱伝導率を、以下に示す通りにして求めた。
【0046】
(1)フィルムの熱膨張係数
島津製作所製熱分析装置(TMA-60)に、3.5mm×13.0mmに切り出したフィルム片を固定した後に、昇温速度5.0℃/minで300℃まで昇温して温度に対する同フィルムの寸法変化、すなわちTMA曲線を記録した。得られたTMA曲線から、100℃から200℃までの平均熱膨張係数を求めた結果、同フィルムの熱膨張係数は40.5ppm/℃であった(表1参照)。
【0047】
(2)フィルムの光線透過率
分光光度計UV-2550(島津製作所)に、50.0mm×50.0mmに切り出したフィルム片を固定した後に、同フィルムに対して重水素ランプから420nm波長の光線を照射した結果、同フィルムに対する同光線の透過率は76%であった(表1参照)。
【0048】
(3)フィルムの黄色度(YI)
分光光度計UV-2550(島津製作所)に、50.0mm×50.0mmに切り出したフィルム片を固定した後に、同フィルムの黄色度(YI)を測定した結果、同フィルムの黄色度(YI)は4.4であった(表1参照)。
【0049】
(4)フィルムの引張物性
島津製作所製オートグラフAGS-10KNGにおいて上下のチャック間距離を30mmに設定した後、その上下のチャックに、JIS3号ダンベル(JIS K6301)で打ち抜いたフィルム片を固定して、引張速度50mm/分で同フィルム片を引っ張りながら、上側のチャックの変位に対する荷重をロードセルで測定して応力歪み曲線を記録した。得られた応力歪み曲線から同フィルムの引張強度、引張弾性率および引張伸びを求めたところ、同フィルムの引張強度は133MPaであり、引張弾性率は4.3GPaであり、引張伸びは28.6%であった(表2参照)。
【0050】
(5)フィルムの熱伝導率
JIS R2616を参考にして、上述のフィルムから2cm×2cmのフィルム片を切り出した。次いで、フィルム片の片面に熱伝導グリスを介してトランジスタを設けた。また、その反対の面に熱伝導グリスを介してアルミニウム製のヒートシンクを設けた。次に、トランジスタの温度が60℃になるまでトランジスタに電流をかけてトランジスタを昇温させて3分間60℃で維持させた。この間に熱電対を用いてトランジスタ表面の温度A、および、フィルム片のヒートシンク配設側の面の温度Bを測定した。また、その際の消費電力を測定した。続いて、各表面の温度A,Bおよび消費電力を下記の式に代入して熱抵抗を算出した。
熱抵抗=(トランジスタ表面の温度A-フィルム片のヒートシンク配設側の面の温度B)/消費電力
最後に、上述の通りに求めた熱抵抗、フィルム片の厚みおよびトランジスタの断面積を下記の式に代入して目的の熱伝導率を算出した。
熱伝導率=フィルム片の厚み/(トランジスタの断面積×熱抵抗)
その結果、このフィルムの熱伝導率は0.259W/mKであった(表1参照)。
【0051】
また、上述の添加物含有ポリアミック酸溶液をガラス基板上に塗布して塗膜を形成した後、その塗膜を80℃のオーブンに入れ、15分経過後にそのオーブンを150℃まで昇温させた。なお 、このとき、オーブンの温度が70℃から150℃に達するのに20分を要した。オーブンの温度が150℃に達してからその温度を10分間維持し、その後、オーブンを300℃まで昇温させた。なお、このとき、オーブンの温度が150℃から300℃に達するのに25分を要した。オーブンの温度が300℃に達してからその温度を5分間維持した。その結果、ガラス基板上に厚み25μmのフィルムが形成された。
【0052】
ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例2】
【0053】
アルミナゾルの添加量を11.18gから12.78gに変更した以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は1.3質量%であり、後者は4.0質量%であった。
【0054】
また、得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は39.1ppm/℃であり、420nm波長の光線透過率は74%であり、黄色度(YI)は4.8であり、引張強度は129MPaであり、引張弾性率は4.2GPaであり、引張伸びは27.3%であり、熱伝導率は0.271W/mKであった(表1および表2参照)。
【0055】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例3】
【0056】
アルミナゾルの添加量を11.18gから7.99gに変更した以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は1.3質量%であり、後者は2.5質量%であった。
【0057】
また、得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は41.3ppm/℃であり、420nmの透過率は78%であり、黄色度(YI)は5.9であり、引張強度は123MPaであり、引張弾性率は4.1GPaであり、引張伸びは30.0%であり、熱伝導率は0.252W/mKであった(表1および表2参照)。
【0058】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例4】
【0059】
ホウ酸の添加量を2.56gから1.59gに変更すると共に、アルミナゾルの添加量を11.18gから7.99gに変更した以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は0.9質量%であり、後者は2.6質量%であった。
【0060】
また、得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は43.2ppm/℃であり、420nmの透過率は79%であり、黄色度(YI)は3.5であり、引張強度は145MPaであり、引張弾性率は3.9GPaであり、引張伸びは35.0%であり、熱伝導率は0.245W/mKであった(表1および表2参照)。
【0061】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例5】
【0062】
1.添加物含有ポリアミック酸溶液の調製
11.67gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、5.16gの2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)と、12.70gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と、2.46gの3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)とを、74.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させ、固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0063】
次に、26.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中に1.59gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテスク株式会社製)および7.99gのアルミナゾル(固形分20.0wt%、日産化学社製)を加えて、ホウ酸とアルミナゾル混合溶液(以下、単に「混合溶液」という。)を調製し、その混合溶液を上述のポリアミック酸溶液に加えて添加物含有ポリアミック酸溶液を調製した。
【0064】
2.フィルムの成形
実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は0.9質量%であり、後者は2.6質量%であった。
【0065】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は44.5ppm/℃であり、420nmの透過率は78%であり、黄色度(YI)は5.9であり、引張強度は123MPaであり、引張弾性率は4.1GPaであり、引張伸びは30.0%であり、熱伝導率は0.243W/mKであった(表1および表2参照)。
【0066】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例6】
【0067】
1.添加物含有ポリアミック酸溶液の調製
17.85gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、12.15gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とを、70.0gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させ、固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0068】
次に、23.0gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中に1.50gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテスク株式会社製)および7.50gのアルミナゾル(固形分20.0wt%、日産化学社製)を加えて、ホウ酸とアルミナゾル混合溶液(以下、単に「混合溶液」という。)を調製し、その混合溶液を上述のポリアミック酸溶液に加えて添加物含有ポリアミック酸溶液を調製した。
【0069】
2.フィルムの成形
実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は0.9質量%であり、後者は2.6質量%であった。
【0070】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は42.7ppm/℃であり、引張強度は158MPaであり、引張弾性率は4.3GPaであり、引張伸びは20.9%であり、熱伝導率は0.245W/mKであった(表1および表2参照)。
【0071】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【実施例7】
【0072】
1.添加物含有ポリアミック酸溶液の調製
12.07gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、5.34gの2,2-ビス[3,4-(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)と、8.22gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と、6.37gの4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)とを、74.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中で反応させ、固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0073】
次に、26.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中に2.56gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテスク株式会社製)および11.18gのアルミナゾル(固形分20.0wt%、日産化学社製)を加えて、ホウ酸とアルミナゾル混合溶液(以下、単に「混合溶液」という。)を調製し、その混合溶液を上述のポリアミック酸溶液に加えて添加物含有ポリアミック酸溶液を調製した。
【0074】
2.フィルムの成形
実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は1.3質量%であり、後者は3.5質量%であった。
【0075】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は45.3ppm/℃であり、420nmの透過率は74%であり、黄色度(YI)は5.5であり、引張強度は124MPaであり、引張弾性率は3.0GPaであり、引張伸びは18.8%であり、熱伝導率は0.256W/mKであった(表1および表2参照)。
【0076】
また、実施例1に示される方法と同じ方法でフィルムとガラス板の積層体を形成し、ガラス板に対するフィルムの接着性を確認したところ、ガラス板に対してフィルムが良好に接着されていることが確認された。
【0077】
(比較例1)
1.添加物含有ポリアミック酸溶液の調製
実施例1に示される方法と同じ方法で固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0078】
次に、26.5gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中に2.56gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテスク株式会社製)を加えて、ホウ酸溶液を調製し、そのホウ酸溶液を上述のポリアミック酸溶液に加えてホウ酸含有ポリアミック酸溶液を調製した。
【0079】
2.フィルムの成形
添加物含有ポリアミック酸溶液をホウ酸含有ポリアミック酸溶液に代えた以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は1.4質量%であり、後者は0質量%であった。
【0080】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は150ppm/℃であり、420nm波長の光線透過率は11%であり、黄色度(YI)は62であり、引張強度は113MPaであり、引張弾性率は3.9GPaであり、引張伸びは3.2%であった(表1および表2参照)。
【0081】
(比較例2)
2.56gの純度99.5%ホウ酸(ナカライテクス株式会社製)を11.18gのアルミナゾル(固形分20.0wt%、日産化学社製)に代えた以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。なお、実施例1に記載される事実に基づいてフィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合を求めたところ、前者は0質量%であり、後者は3.7質量%であった。
【0082】
また、得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は51.0ppm/℃であり、420nmの透過率は79%であり、黄色度(YI)は3.4であり、引張強度は141MPaであり、引張弾性率は3.8GPaであり、引張伸びは30.0%であった(表1および表2参照)。
【0083】
(比較例3)
1.ポリアミック酸溶液の調製
実施例1に示される方法と同じ方法で固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0084】
2.フィルムの成形
添加物含有ポリアミック酸溶液を上述のポリアミック酸溶液に代えた以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。すなわち、フィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合は共に0質量%であった。
【0085】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は51.0ppm/℃であり、420nm波長の光線透過率は80%であり、黄色度(YI)は3.2であった(表1参照)。
【0086】
(比較例4)
1.ポリアミック酸溶液の調製
実施例6に示される方法と同じ方法で固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0087】
2.フィルムの成形
添加物含有ポリアミック酸溶液を上述のポリアミック酸溶液に代えた以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。すなわち、フィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合は共に0質量%であった。
【0088】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は51.0ppm/℃であった(表1参照)。
【0089】
(比較例5)
1.ポリアミック酸溶液の調製
実施例7に示される方法と同じ方法で固形分30質量%のポリアミック酸溶液を調製した。
【0090】
2.フィルムの成形
添加物含有ポリアミック酸溶液を上述のポリアミック酸溶液に代えた以外は実施例1に示される方法と同じ方法で目的のフィルムを得た。すなわち、フィルムの全量に対するホウ素元素およびアルミニウム元素の含有割合は共に0質量%であった。
【0091】
3.フィルムの物性測定
得られたフィルムの物性を実施例1に示される方法と同じ方法で測定したところ、熱膨張係数は55.7ppm/℃であり、420nm波長の光線透過率は78%であり、黄色度(YI)は4.6であった(表1参照)。
【0092】
【0093】
【0094】
以上の実施例および比較例に示された結果から、本実施例で得られたフィルムは、ホウ酸、アルミナゾル、あるいはその両方が添加されていないポリイミドフィルムに比べてその熱膨張係数が抑えられていることが明らかとなった。また、本実施例で得られたフィルムは、ホウ酸、アルミナゾル、あるいはその両方が添加されていないポリイミドフィルムと同等の引張特性を示すことが明らかとなった。また、実施例1~5で得られたフィルムは、ホウ酸およびアルミナゾルの両方が添加されていないポリイミドフィルムと同等の無色透明性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係るフィルムは、同じポリイミド樹脂のみから成るポリイミドフィルムよりも低い熱膨張係数を示し、例えば、電気機器や電子機器の部品や部材、耐熱テープ、太陽電池(例えば、シリコン太陽電池やペロブスカイト太陽電池など)を構成する基材、基板、カバーレイなどとして利用することができる。なお、基板としては、例えば、発光素子実装用の回路基板や、バーコード印刷用基板などが挙げられる。また、電気機器や電子機器としては、例えば、コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォン、自動車制御装置、カーナビゲーション装置など)、テレビ受像器、ウェアラブルデバイス(例えば、AR/VRグラス、スマートウォッチなど)、照明機器、ディスプレイ装置(例えば、コンピュータ用のディスプレイや、大型ディスプレイ装置、大型ビジョン装置、LEDディスプレイ装置、LEDビジョン装置)が挙げられる。また、電気機器や電子機器の部品や部材としては、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)、アンテナ、リフレクターなどが挙げられる。