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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】複合梁
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/29 20060101AFI20250220BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
E04C3/29
E04B1/30 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020197345
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085586
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 徹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 嵩明
(72)【発明者】
【氏名】梅津 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】金澤 和寿美
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】梁田 真史
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118674(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109914691(CN,A)
【文献】中国実用新案第201933692(CN,U)
【文献】中国実用新案第211735796(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105952058(CN,A)
【文献】中国実用新案第208733920(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/29
E04B 1/26,1/30
E04B 1/58
E04B 5/12,5/16-5/38,5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部と中間部とからなり、前記端部の梁成が前記中間部の梁成より高く、前記端部が逆ドロップハンチ形状とされている木質梁部と、
前記木質梁部の前記中間部の上面に設けられたコンクリート造梁部と、
前記木質梁部と前記コンクリート造梁部との境界面に設けられたせん断力伝達部と、
前記コンクリート造梁部に形成され前記コンクリート造梁部の梁幅方向へ貫通する貫通孔と、を備え、
梁長方向における前記中間部の断面は、一方の前記端部から他方の前記端部まで同様とされており、
前記せん断力伝達部は、前記梁長方向に間隔をあけて配置される複数のドリフトピンにより構成され、前記中間部の端部に配置されている前記ドリフトピンは、前記中間部の中間部に配置されている前記ドリフトピンよりも前記梁長方向で密に配置されている複合梁。
【請求項2】
前記コンクリート造梁部の上端部から前記コンクリート造梁部の梁幅方向へ張り出すようにスラブが設けられている請求項1に記載の複合梁。
【請求項3】
前記コンクリート造梁部は、プレキャスト部材により構成されている請求項1又は2に記載の複合梁。
【請求項4】
梁長方向の両端部と、前記両端部との間に前記両端部に隣接して形成された中間部とを備え、少なくとも一方の前記端部の梁成が前記中間部の梁成より高く、少なくとも一方の前記端部の上面が、前記中間部の上面よりも上方に位置する木質梁部と、
前記木質梁部の前記中間部の上面に設けられたコンクリート造梁部と、
前記木質梁部と前記コンクリート造梁部との境界面に設けられたせん断力伝達部と、
前記コンクリート造梁部に形成され前記コンクリート造梁部の梁幅方向へ貫通する貫通孔と、を備え、
前記梁長方向における前記中間部の断面は、一方の前記端部から他方の前記端部まで同様とされており、
前記せん断力伝達部は、前記梁長方向に間隔をあけて配置される複数のドリフトピンにより構成され、前記中間部の端部に配置されている前記ドリフトピンは、前記中間部の中間部に配置されている前記ドリフトピンよりも前記梁長方向で密に配置されている複合梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質部材を有する複合梁に関する。
【背景技術】
【0002】
集成材等の木質材料により形成された木質梁に設備用の貫通孔を設けることが要求されることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-75458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、木質材料はせん断強度が低いので、木質梁に大口径の貫通孔を設けることは困難となる。また、耐火上、貫通孔の内面を耐火被覆する必要があるので、耐火被覆の厚さ分だけ貫通孔の有効径(実際に使用できる貫通孔の大きさの径)が小さくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、大きな貫通孔が複数設けられた、木質部材を有する複合梁を構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る複合梁は、端部の梁成が中間部の梁成より高い木質梁部と、前記木質梁部の前記中間部の上面に設けられたコンクリート造梁部と、前記木質梁部と前記コンクリート造梁部との境界面に設けられたせん断力伝達部と、前記コンクリート造梁部に形成され前記コンクリート造梁部の梁幅方向へ貫通する貫通孔と、を有する。
【0007】
第1態様に係る複合梁によれば、木質梁部の梁成の低い中間部の上面にコンクリート造梁部を設けるとともに、せん断力伝達部により木質梁部とコンクリート造梁部との間でのせん断力伝達を可能とすることによって、木質梁部とコンクリート造梁部とが一体化される。これにより、剛性及び耐力が向上した複合梁を構成することができる。また、木質梁部とコンクリート造梁部との合成効果を得ることができ、複合梁の梁成を小さくすることができる。
【0008】
また、地震時に、木質梁部とコンクリート造梁部とが水平方向へずれようとするが、コンクリート造梁部の端面が木質梁部の端部の梁成が高い部分に当たっているので、せん断力伝達部と協働して木質梁部とコンクリート造梁部との水平方向へのずれを抑制することができる。
【0009】
さらに、設備配管等を通す貫通孔をコンクリート造梁部に形成しているので、大きな貫通孔を形成することができ、また、貫通孔の内面を耐火被覆する必要がないので、形成した貫通孔が小さくならない。これらにより、大きな貫通孔が複数設けられた、木質部材を有する複合梁を構成することができる。
【0010】
第2態様に係る複合梁は、第1態様に係る複合梁において、前記コンクリート造梁部の上端部から前記コンクリート造梁部の梁幅方向へ張り出すようにスラブが設けられている。
【0011】
第2態様に係る複合梁によれば、木質梁部とコンクリート造梁部とスラブとの合成効果を得ることができる。これにより、複合梁の梁成を小さくすることができる。
【0012】
第3態様に係る複合梁は、第1又は第2態様に係る複合梁において、前記コンクリート造梁部は、プレキャスト部材により構成されている。
【0013】
第3態様に係る複合梁によれば、現場で複合梁を効率よく施工することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、大きな貫通孔が複数設けられた、木質部材を有する複合梁を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る複合梁を示す側面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5】一実施形態に係る柱梁接合構造を示す斜視図である。
図6】一実施形態に係る載荷試験により得られた載荷点たわみに対するモーメントの値を示す線図である。
図7】一実施形態に係る載荷試験に用いられた試験体Bを示す側面図である。
図8】一実施形態に係る複合梁のバリエーションを示す横断面図である。
図9】一実施形態に係る複合梁のバリエーションを示す側面図である。
図10】一実施形態に係る木質梁部のバリエーションを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る複合梁について説明する。
【0017】
(複合梁)
図1の側面図、図1の2ー2線断面図である図2図1の3-3線断面図である図3、及び図1の4-4線断面図である図4に示すように、複合梁10は、木質梁部12、コンクリート造梁部14、せん断力伝達部16、及び複数の貫通孔18、20を有して構成されている。
【0018】
木質梁部12は、木質梁部下部材34と、木質梁部下部材34の端部上面に設けられた木質梁部上部材36とを有して構成されている。木質梁部下部材34及び木質梁部上部材36は、木質材料である集成材により形成されている。
【0019】
木質梁部12は、端部22、24の梁成が中間部26の梁成より高くなっている。すなわち、木質梁部12は、端部22、24が、端部22、24と中間部26とを変断面とする所謂逆ドロップハンチ形状になっている。
【0020】
コンクリート造梁部14は、鉄筋コンクリートにより形成されており、木質梁部12の中間部26の上面に設けられている。コンクリート造梁部14は、木質梁部12の中間部26の上面に、場所打ちコンクリートを打設することによって形成されている。
【0021】
せん断力伝達部16は、木質梁部12の中間部26とコンクリート造梁部14との境界面28付近に設けられている。せん断力伝達部16は、下端部が木質梁部12に埋設され、上端部がコンクリート造梁部14に埋設されたシアキーとしての複数のドリフトピン30により構成されている。
【0022】
複数のドリフトピン30は、複合梁10、木質梁部12及びコンクリート造梁部14の梁長方向となる方向(以下、「梁長方向Y1」とする)に対して、所定の間隔をあけて配置されている。これにより、木質梁部12とコンクリート造梁部14との間で梁長方向Y1に対するせん断力の伝達を可能としている。
【0023】
また、木質梁部12の中間部26の端部に配置されているドリフトピン30は、木質梁部12の中間部26の中間部に配置されているドリフトピン30よりも梁長方向Y1に対して密に(短い間隔で)配置されている。これは、木質梁部12の中間部26の端部上面(境界面28)付近に発生するせん断力が、木質梁部12の中間部26の中間部上面(境界面28)付近に発生するせん断力よりも大きくなるためであり、これによって、木質梁部12とコンクリート造梁部14との間で梁長方向Y1に対するせん断力を効率よく伝達することができる。
【0024】
貫通孔18、20は、木質梁部12の中間部26の上方に位置するコンクリート造梁部14に形成されている。貫通孔18、20は、複合梁10、木質梁部12及びコンクリート造梁部14の梁幅方向となる方向(以下、「梁幅方向X1」とする)へコンクリート造梁部14を貫通するようにして、木質梁部12の中間部26の上面(境界面28)付近に形成されている。
【0025】
複合梁10には、コンクリート造梁部14の上端部から梁幅方向X1へ張り出すように鉄筋コンクリート造のスラブ32が設けられている。スラブ32は、場所打ちコンクリートを打設することによって形成されている。
【0026】
図1図2、及び図5の斜視図に示すように、木質梁部下部材34は、木質梁部12の全長に渡る四角柱状の部材である。木質梁部下部材34の端部には、端部上面の梁幅方向X1中央部から端部下面の梁幅方向X1中央部へ向けて木質梁部下部材34を貫通し、端面側で開口する垂直スリット38が形成されている。また、木質梁部下部材34の端部には、木質梁部下部材34を梁幅方向X1へ貫通する複数の貫通孔40が円形状に配置されるようにして形成されている。
【0027】
木質梁部上部材36は、木質梁部12の端部22、24全長に渡る四角柱状の部材である。木質梁部上部材36には、上面の梁幅方向X1中央部から下面の梁幅方向X1中央部に向けて木質梁部上部材36を貫通し、端面側で開口する垂直スリット42が形成されている。また、木質梁部上部材36には、この木質梁部上部材36を梁幅方向X1へ貫通する複数の貫通孔44が円形状に配置されるようにして形成されている。
【0028】
木質梁部下部材34の端部と木質梁部上部材36とは、木質梁部下部材34の端部上面と木質梁部上部材36の下面とを接着剤により接着することにより接合されて一体化されている。木質梁部下部材34の端部と木質梁部上部材36とが接合されて一体化された状態で、木質梁部下部材34の垂直スリット38と木質梁部上部材36の垂直スリット42とは、連通して1つの垂直スリット46を構成している。
【0029】
複合梁10は、柱梁接合構造48によって、柱50に接合されている。柱50は、上柱52と下柱54とが仕口部材58により上下につなげられて構成されている。上柱52及び下柱54は、木質材料である集成材により形成されている。
【0030】
柱梁接合構造48は、接合部材56と仕口部材58とを有して構成されている。接合部材56は、H形鋼60と、上端部を突出させてH形鋼60の端面に接合された鋼製の平板62とを有して構成されている。
【0031】
H形鋼60のウェブ64には、このウェブ64を梁幅方向X1へ貫通する複数の貫通孔66、68が円形状に配置されるように形成されている。また、平板62の上端部には、この平板62を梁長方向Y1へ貫通する複数の貫通孔70が形成されている。
【0032】
木質梁部12は、木質梁部12の端面が平板62の背面(H形鋼60側の面)と僅かな隙間を有して対向するところまで、H形鋼60のウェブ64が木質梁部12の垂直スリット46に挿入されるようにして横移動させてH形鋼60の下フランジ72上面に配置する。そしてこの状態で、連通する、木質梁部12の貫通孔40、44とH形鋼60の貫通孔66、68とにドリフトピン74を嵌入して、木質梁部12の端部を接合部材56に固定するとともに、木質梁部12の端面と平板62の背面との間の隙間にグラウトを充填する。
【0033】
仕口部材58は、H形鋼76と、平面視にてH形鋼76のウェブ78の上端部から左右へ水平に張り出して設けられた鋼製の平板80と、平板80上に設けられるとともに、H形鋼76のウェブ78と平面視にて十字状になるように、このウェブ78に接合された鋼製の平板82と、を有して構成されている。
【0034】
H形鋼76のフランジ84の上端部には、このフランジ84を柱50の柱成方向(以下、「柱成方向Y2」とする)へ貫通する複数の貫通孔86が形成されている。また、H形鋼76のウェブ78には、このウェブ78を柱50の柱幅方向(以下、「柱幅方向X2」とする)へ貫通する複数の貫通孔88、90が形成されている。
【0035】
下柱54の上端部には、下柱54の上端面における下柱54の柱幅方向X2中央部から下方へ向けて垂直スリット92が形成されている。また、下柱54の上端部には、この下柱54を柱幅方向X2へ貫通する複数の貫通孔94が形成されている。
【0036】
上柱52の下端部には、上柱52の下端面から上方へ向けて平面視にて十字状の垂直スリット96が形成されている。また、上柱52の下端部には、この上柱52を柱幅方向X2へ貫通する複数の貫通孔98が形成されている。
【0037】
仕口部材58は、平板80の下面が下柱54の上端面と僅かな隙間を有して対向するところまで、H形鋼76のウェブ78が下柱54の垂直スリット92に挿入されるようにして下方へ移動させて配置する。そしてこの状態で、連通する、下柱54の貫通孔94とH形鋼76のウェブ78の貫通孔90とに、ドリフトピン100を嵌入して、下柱54の上端部を仕口部材58に固定するとともに、平板80の下面と下柱54の上端面との間の隙間にグラウトを充填する。
【0038】
上柱52は、上柱52の下端面が平板80の上面と僅かな隙間を有して対向するところまで、H形鋼76のウェブ78及び平板82が上柱52の垂直スリット96に挿入されるようにして下方へ移動させて配置する。そしてこの状態で、連通する、上柱52の貫通孔98とH形鋼76のウェブ78の貫通孔88とに、ドリフトピン100を嵌入して、上柱52の下端部を仕口部材58に固定するとともに、上柱52の下端面と平板80の上面との間の隙間にグラウトを充填する。
【0039】
仕口部材58と接合部材56とは、仕口部材58のフランジ84のフランジ面に、接合部材56の平板62の板面を合わせた状態で、ボルト102をフランジ84の貫通孔86と平板62の貫通孔70とに通してナット104にねじ込み締め付けることにより、接合されている。
【0040】
図1に示すように、接合部材56を構成するH形鋼60の上フランジ106の上面には、この上面に鉄筋コンクリートによって形成されたコンクリート造梁部108に埋設されるようにして複数のスタッドボルト110が設けられており、接合部材56とコンクリート造梁部108との一体化が高められている。なお、図5に示されている接合部材56には、スタッドボルト108が省略されている。
【0041】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0042】
本実施形態の複合梁10によれば、図1に示すように、木質梁部12の梁成の低い中間部26の上面にコンクリート造梁部14を設けるとともに、せん断力伝達部16により木質梁部12とコンクリート造梁部14との間でのせん断力伝達を可能とすることによって、木質梁部12とコンクリート造梁部14とが一体化される。これにより、剛性及び耐力が向上した複合梁を構成することができる。また、木質梁部12とコンクリート造梁部14との合成効果を得ることができ、複合梁10の梁成を小さくすることができる。
【0043】
図6のグラフには、本実施形態の複合梁10と同様の構成の試験体A(不図示)と、比較例としての試験体Bとに対して行った載荷試験の結果が示されている。値112は、試験体Aの中央を載荷したときのこの載荷点における載荷点たわみσに対するモーメントMを示したものであり、値114は、試験体Bの中央を載荷したときのこの載荷点における載荷点たわみσに対するモーメントMを示したものである。
【0044】
図7の側面図に示すように、試験体Bは、本実施形態の複合梁10の木質梁部12(図1を参照のこと)を、両端がドロップハンチ形状になっていない、全梁長に渡って等横断面となっている木質梁部116としたものであり、他の構成は複合梁10とほぼ同様である。
【0045】
すなわち、試験体Bは、木質梁部下部材34のみによって構成された木質梁部116と、この木質梁部116の上面に全梁長に渡って形成されたコンクリート造梁部14と、せん断力伝達部16と、複数の貫通孔18、20とを有して構成され、コンクリート造梁部14の上端部からコンクリート造梁部14の梁幅方向へ張り出すようにスラブ32が設けられている。
【0046】
図6の値112、114から、試験体Aの方が試験体Bよりも剛性及び耐力が大きくなっており、このことから本実施形態の複合梁10は、剛性及び耐力が向上した複合梁であることがわかる。
【0047】
また、本実施形態の複合梁10によれば、図1に示すように、地震時に、木質梁部12とコンクリート造梁部14とが水平方向へずれようとするが、コンクリート造梁部14の端面が木質梁部12の端部の梁成が高い部分(木質梁部上部材36)に当たっているので、せん断力伝達部16と協働して木質梁部12とコンクリート造梁部14との水平方向へのずれを抑制することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の複合梁10によれば、図1に示すように、設備配管等を通す貫通孔18、20をコンクリート造梁部14に形成しているので、大きな貫通孔を形成することができ、また、この貫通孔の内面を耐火被覆する必要がないので形成した貫通孔が小さくならない。これらにより、大きな貫通孔が複数設けられた、木質部材(木質梁部12)を有する複合梁を構成することができる。
【0049】
また、本実施形態の複合梁10によれば、図1に示すように、設備配管等を通す貫通孔18、20を木質梁部12の上面付近、すなわち複合梁10の中立軸付近の大きな応力が発生しない所に形成しているので、貫通孔の補強を軽減又は不要とすることができ、また、大きな貫通孔を形成することができる。
【0050】
さらに、本実施形態の複合梁10によれば、図1~4に示すように、コンクリート造梁部14の上端部からコンクリート造梁部14の梁幅方向(梁幅方向X1)へ張り出すようにスラブ32が設けられているので、木質梁部12とコンクリート造梁部14とスラブ32との合成効果を得ることができる。これにより、複合梁10の梁成を小さくすることができる。
【0051】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0052】
上記実施形態では、図1に示すように、木質梁部12を集成材により形成した例を示したが、木質梁部12は、木製の部材であればよい。例えば、図8の横断面図に示すように、木質梁部12を、荷重支持部となる木製の梁心材118と、梁心材118の周囲に設けられた燃え止まり層120と、燃え止まり層120の周囲に設けられた木製の燃え代層122とを有して構成するようにしてもよい。燃え止まり層120は、木板124とモルタル板126とを交互に配置して構成されている。
【0053】
この木質梁部12では、火災が発生したときに燃え代層122が燃焼して炭化し、この炭化した燃え代層122によって、燃え代層122の外側から梁心材118への熱伝達が抑えられる。さらに、燃え代層122の外側から梁心材118への火炎や熱の進入が、燃え止まり層120によって抑えられる。これらにより、火災時及び火災終了時における梁心材118の温度上昇を抑えて、梁心材118を燃え止まらせることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、図1に示すように、木質梁部12の両端部(端部22、24)がドロップハンチ形状になっている例を示したが、木質梁部12の少なくとも一方の端部がドロップハンチ形状になっていればよい。
【0055】
例えば、図9の側面図に示す複合梁128のように、木質梁部12の端部22をドロップハンチ形状とし、木質梁部12の端部24を、端部24の梁長方向Y1全長に渡って中間部26の横断面と端部24の横断面とが等しい形状としてもよい。
【0056】
この例では、複合梁128の右端部が、接合部材132により木製の梁130に接合されている。接合部材132は、梁130の側面にラグスクリュー等のねじ部材134により取り付けられた接合プレート136と、接合プレート136のプレート面にこのプレート面から張り出すようにして設けられたガセットプレート138とを有して構成されている。
【0057】
複合梁128の右端部は、木質梁部12の端面に形成されたスリット(不図示)に挿入された接合部材132のガセットプレート138に、ドリフトピン140により木質梁部12を固定することによって、梁130に接合されている。なお、梁130は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造等の他の構造の部材であってもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態では、図1に示すように、木質梁部下部材34と木質梁部上部材36とを組み合わせて木質梁部12を構成した例を示したが、組み合わせて木質梁部12を構成する部材はどのような形状の部材であってもよい。
【0059】
例えば、図10の側面図に示すように、木質梁部12の中間部26を構成する木質梁部中間部材142と、木質梁部12の端部22、24を構成する木質梁部端部材144とを接合部材146で一体化して木質梁部12を構成するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、図1に示すように、コンクリート造梁部14を鉄筋コンクリートにより形成した例を示したが、コンクリート造梁部14は、耐火性を有するコンクリートにより形成されていればよい。例えば、コンクリート造梁部14は、CT形鋼を用いた鉄骨鉄筋コンクリート造の部材であってもよいし、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等のプレキャストコンクリート部材であってもよい。コンクリート造梁部14をプレキャスト部材とすれば、現場で複合梁10を効率よく施工することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、図1に示すように、せん断力伝達部16をドリフトピン30により構成した例を示したが、せん断力伝達部16は、木質梁部12とコンクリート造梁部14との間で梁長方向Y1に対するせん断力の伝達を可能にするものであればよい。例えば、せん断力伝達部16は、ラグスクリュー、頭付きスタッドボルト、コッター等により構成してもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、図1に示すように、スラブ32を場所打ちコンクリートにより形成した鉄筋コンクリート造のスラブとした例を示したが、スラブ32は、プレキャストコンクリートスラブ、デッキスラブ等の他の構造のものであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、図1に示すように、柱50(上柱52及び下柱54)を集成材により形成した木造の部材とした例を示したが、柱50は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の他の構造の部材であってもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、図1に示すように、複合梁10を柱50に接合した例を示したが、複合梁10は、梁に接合してもよい。この場合、梁は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造等のさまざまな構造の部材であってもよい。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10、128 複合梁
12 木質梁部
14 コンクリート造梁部
16 せん断力伝達部
18、20 貫通孔
22、24 端部
26 中間部
28 境界面
30 ドリフトピン(せん断力伝達部)
32 スラブ
X1 梁幅方向(コンクリート造梁部の梁幅方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10