(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20250220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250220BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B62D5/04
H02J7/00 302C
B60R16/033 C
(21)【出願番号】P 2020200555
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 俊博
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】半澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功史
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋介
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】日比野 徳亮
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-058769(JP,A)
【文献】特開2002-236503(JP,A)
【文献】特開2018-186674(JP,A)
【文献】特開2008-114678(JP,A)
【文献】特開2009-078744(JP,A)
【文献】特開2008-141855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0149681(US,A1)
【文献】特開2020-138554(JP,A)
【文献】特開2007-223510(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0028967(KR,A)
【文献】特開2013-071550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
H02J 7/00
B60R 16/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の機能を発揮する装置の動作を制御するべく
直流電源である主電源から供給される電力を用いて動作する装置用の制御部と、
前記主電源の別に設けられ当該主電源による電力の供給の状態に応じて前記装置用の制御部への電力の供給を補助するべく機能する
直流電源である補助電源と、
前記補助を実施するように前記補助電源による前記装置用の制御部への電力の供給状態を制御するべく動作する補助電源用の制御部と、を有し、
前記装置用の制御部は、当該装置用の制御部の情報を前記補助電源用の制御部に出力できるように構成されており、
前記主電源は、前記装置の搭載先に搭載される当該装置の搭載先の機能をオンオフする起動スイッチがオンされることによって、前記装置用の制御部へ電力を供給する状態となるとともに、前記起動スイッチがオフされることによって、前記装置用の制御部への電力の供給が停止の状態となり、
前記補助電源は、前記主電源が供給する電力の低下を条件として当該主電源に代わって前記装置用の制御部に対する電力の供給をバックアップすることで前記補助するものであって、前記起動スイッチがオフされたとしても、前記装置用の制御部への電力の供給をバックアップすることによって、前記装置用の制御部が動作し続ける状況を創出するように構成されており、
前記装置用の制御部は、前記起動スイッチのオンオフを判断するべく前記装置用の制御部と前記補助電源用の制御部とは別に前記装置の搭載先に設けられた外部の制御部から前記起動スイッチのオンオフを示す情報を入力できるように構成され、
前記装置用の制御部は、
前記起動スイッチのオンオフに基づいて動作を停止するか否かを判断するなかで、前記起動スイッチのオフを判断する場合に動作を停止することを判断するとともに、動作を停止する際に、前記補助電源用の制御部に対して動作を停止する旨を示す情報を出力するように構成されて
おり、
前記補助電源用の制御部は、前記装置用の制御部から入力する当該装置用の制御部が動作を停止する旨を示す情報を用いて動作を停止するか否かを判断するように構成されている電源システム。
【請求項2】
前記装置用の制御部と前記補助電源用の制御部とは、前
記起動スイッチ
のオフを判断するべく前記主電源が電力の供給の状態を示す情報として電源電圧を使用することができるように構成されて
おり、
前記装置用の制御部は、前記主電源が接続された電源線を通じて検出する電圧を前記電源電圧として検出する機能を有し、
前記補助電源用の制御部は、前記電源電圧を監視する機能を有している請求項
1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記主電源及び前記補助電源と前記装置用の制御部との間に設けられ、当該装置用の制御部に対して電力を供給するべく前記主電源と前記補助電源とのうちの供給する電圧の高い方の電源を選択するように構成される選択回路をさらに備えている請求項1
又は請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記選択回路は、
前記主電源による電力を前記装置用の制御部に供給する際の経路となる第1給電経路に設けられる第1ダイオードと、
前記第1給電経路に設けられる前記第1ダイオードの前記装置用の制御部側に接続されて前記補助電源による電力を前記装置用の制御部に供給する際の経路となる第2給電経路に設けられる第2ダイオードと、を有して構成されている請求項
3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記装置は、車両に搭載されて当該車両に設けられたステアリングホイール及び転舵輪の少なくともいずれかを動作させるべく機能する操舵装置であり、前記装置用の制御部は、前記操舵装置の動作を制御するように構成されている請求項1~
4のいずれか一項に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所望の機能を発揮する装置である、例えば、車両用の電動パワーステアリング装置(以下、EPSという。)の動作を制御する装置用の制御部は、車載される主電源から供給される電力を用いてアシスト制御をしたりする。装置用の制御部では、主電源の別に設けられる補助電源の機能により、当該主電源による電力の供給が補助されるように構成されるものもある。
【0003】
特許文献1には、EPS用の制御部が開示され、当該EPS用の制御部への主電源による電力の供給を補助する態様の一例として、当該電力を昇圧して補助するように動作する補助電源の動作を制御する補助電源用の制御部を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主電源による電力については、供給及び停止が切り替えられるなかで、主電源から供給される電力を用いる装置用の制御部の動作の状態は、主電源による電力の供給の状態に関連付けて設定されることになる。これと同様、主電源による電力の供給を補助する補助電源の動作を制御する補助電源用の制御部の動作の状態は、主電源による電力の供給の状態に関連付けて設定されることになる。ただし、装置用の制御部と、補助電源用の制御部とについては、他の制御部の動作の状態の関係において、停止すべき状況で動作し続けたり、停止すべきでない状況で動作が停止したり、互いの制御部の間で予期しない状況に陥らないようにするための工夫が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電源システムは、所望の機能を発揮する装置の動作を制御するべく主電源から供給される電力を用いて動作する装置用の制御部と、前記主電源の別に設けられ当該主電源による電力の供給の状態に応じて前記装置用の制御部への電力の供給を補助するべく機能する補助電源と、前記補助を実施するように前記補助電源による前記装置用の制御部への電力の供給状態を制御するべく動作する補助電源用の制御部と、を有し、前記装置用の制御部は、当該装置用の制御部の情報を前記補助電源用の制御部に出力できるように構成されており、前記装置用の制御部は、動作を停止する際に、前記補助電源用の制御部に対して動作を停止する旨を示す情報を出力するように構成されている。
【0007】
上記構成によれば、装置用の制御部が動作を停止する際に、補助電源用の制御部は、装置用の制御部から動作を停止する旨を示す情報を入手できる。この場合、補助電源用の制御部は、動作を停止しようとする際に、装置用の制御部が動作を停止するか否かを考慮して動作を停止するべきか動作し続けるべきかを判断できる。これにより、装置用の制御部と補助電源用の制御部とについては、他の制御部の動作の状態の関係において、停止すべき状況で動作し続けたり、停止すべきでない状況で動作が停止したりしないように規則を定めることができる。したがって、装置用の制御部と補助電源用の制御部との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。
【0008】
上記電源システムにおいて、前記主電源は、前記装置の搭載先に搭載される当該装置の搭載先の機能をオンオフする起動スイッチがオンされることによって、前記装置用の制御部へ電力を供給する状態となるとともに、前記起動スイッチがオフされることによって、前記装置用の制御部への電力の供給が停止の状態となり、前記装置用の制御部は、前記起動スイッチのオンオフに基づいて動作を停止するか否かを判断するなかで動作を停止することを判断する場合、前記補助電源用の制御部に対して動作を停止する旨を示す情報を出力するように構成されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、主電源の電力の供給の状態、すなわち起動スイッチのオンオフを考慮して、装置用の制御部と補助電源用の制御部とについての停止すべき状況で動作を停止するように規則を定めることができる。この場合、起動スイッチのオンオフに応じた適切な制御を装置用の制御部が実施するのに効果的である。
【0010】
上記電源システムにおいて、前記装置用の制御部は、前記装置の搭載先に搭載される当該装置の搭載先の機能をオンオフする起動スイッチのオンオフを判断するべく前記装置用の制御部と前記補助電源用の制御部とは別に前記装置の搭載先に設けられた外部の制御部から前記起動スイッチのオンオフを示す情報を入力できるように構成されており、前記装置用の制御部は、動作を停止する際に、前記起動スイッチのオフを判断する場合に前記装置用の制御部が動作を停止する旨を示す情報を前記補助電源用の制御部に対して出力するように構成されており、前記補助電源用の制御部は、前記装置用の制御部から入力する当該装置用の制御部が動作を停止する旨を示す情報を用いて動作を停止するか否かを判断するように構成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、外部の制御部から起動スイッチのオンオフを示す情報を入力できる装置用の制御部を主体として、装置用の制御部と補助電源用の制御部とについての停止すべき状況で動作を停止するように規則を定めることができる。この場合、装置用の制御部と補助電源用の制御部との間で予期しない状況に陥ることをより好適に抑制するのに効果的である。
【0012】
上記電源システムにおいて、前記装置用の制御部と前記補助電源用の制御部とは、前記装置の搭載先に搭載される当該装置の搭載先の機能をオンオフする起動スイッチのオンオフを判断するべく前記主電源が電力の供給の状態を示す情報として電源電圧を使用できるように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、装置用の制御部と補助電源用の制御部とは、例えば、外部の制御部から起動スイッチのオンオフを示す情報を使用できなくても起動スイッチのオンオフを判断できる。なお、起動スイッチのオンオフを判断する際に、主電源の電源電圧に加えて、上述の外部の制御部から入力する起動スイッチのオンオフを示す情報といった、情報源の異なる複数の情報を用いることもできる。この場合、起動スイッチのオンオフを判断する精度を向上できる。
【0014】
上記電源システムにおいて、前記補助電源は、前記主電源が供給する電圧の低下を条件として当該主電源に代わって前記装置用の制御部に対する電力の供給をバックアップすることで前記補助するものであり、前記主電源及び前記補助電源と前記装置用の制御部との間に設けられ、当該装置用の制御部に対して電力を供給するべく前記主電源と前記補助電源とのうちの供給する電圧の高い方の電源を選択するように構成される選択回路をさらに備えていることが好ましい。
【0015】
上記構成の場合、選択回路の機能によって、主電源と補助電源とのうちの供給する電圧の高い方の電源が選択されることになる。この場合、例えば、主電源が供給する電圧の低下を補助電源がバックアップすることを考えると、主電源が電力の供給を停止する状態でも補助電源が主電源に代わって装置用の制御部に対する電力の供給をバックアップすることが考えられる。これに対しては、装置用の制御部が動作を停止する際に、補助電源用の制御部が動作を停止できるように規則を定めることで対処できる。このように、主電源が供給する電圧の低下を補助電源がバックアップする際に、装置用の制御部と補助電源用の制御部との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。
【0016】
上記選択回路は、前記主電源による電力を前記装置用の制御部に供給する際の経路となる第1給電経路に設けられる第1ダイオードと、前記第1給電経路に設けられる前記第1ダイオードの前記装置用の制御部側に接続されて前記補助電源による電力を前記装置用の制御部に供給する際の経路となる第2給電経路に設けられる第2ダイオードと、を有して構成されるように具体化できる。
【0017】
上記電源システムにおいて、前記装置は、車両に搭載されて当該車両に設けられたステアリングホイール及び転舵輪の少なくともいずれかを動作させるべく機能する操舵装置であり、前記装置用の制御部は、前記操舵装置の動作を制御するように構成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成のように、上述の電源システムを採用した操舵装置では、装置用の制御部と補助電源用の制御部との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。この場合、操舵装置の商品性の向上を図るのに効果的である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電源システムによれば、装置用の制御部と補助電源用の制御部との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態について、操舵装置の概略構成を示す図。
【
図2】第1実施形態について、電源システムのブロック図。
【
図3】第1実施形態について、操舵部の電源システムのブロック図。
【
図4】(a)は、起動スイッチのオンオフ、(b)は、各電源電圧の検出、(c),(d)は、車両停止フラグの出力、(e)は、停止許可フラグの出力、(f)は、補助電源用制御部の動作、(g)は、各制御部への電力の供給の各状態を示す図。
【
図5】第2実施形態について、電源システムのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、電源システムの第1実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の電源システムは、車両に搭載される操舵装置2の一部を構成するように適用されている。
【0022】
図1に示すように、操舵装置2は、ステアバイワイヤ式の操舵装置である。操舵装置2は、当該操舵装置2の動作を制御する操舵制御装置1を備えている。操舵装置2は、ステアリングホイール3を介して運転者により操舵される操舵部4と、運転者により操舵部4に入力される操舵に応じて転舵輪5を転舵させる転舵部6とを備えている。本実施形態の操舵装置2は、操舵部4と、転舵部6との間の動力伝達路が機械的に常時分離した構造を有している。
【0023】
操舵部4は、ステアリングホイール3が固定されるステアリング軸11と、運転者の操舵に抗する力である操舵反力をステアリング軸11を介してステアリングホイール3に付与する操舵アクチュエータ12とを備えている。操舵アクチュエータ12は、駆動源となる操舵側モータ13と、操舵側モータ13の回転を減速してステアリング軸11に伝達する操舵側減速機構14とを有している。本実施形態の操舵側モータ13には、例えば三相のブラシレスモータが採用されている。
【0024】
転舵部6は、第1ピニオン軸21と、第1ピニオン軸21に連結された転舵軸としてのラック軸22とを備えている。第1ピニオン軸21とラック軸22とは、所定の交差角をもって配置されている。第1ピニオン軸21に形成されたピニオン歯21aとラック軸22に形成された第1ラック歯22aとを噛み合わせることにより第1ラックアンドピニオン機構23が構成されている。ラック軸22の両端には、タイロッド24が連結されている。タイロッド24の先端は、それぞれ左右の転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
【0025】
転舵部6は、ラック軸22に転舵輪5を転舵させる転舵力を付与する転舵アクチュエータ31を備えている。転舵アクチュエータ31は、第2ピニオン軸32を介してラック軸22に転舵力を付与する。転舵アクチュエータ31は、駆動源となる転舵側モータ33と、転舵側モータ33の回転を減速して第2ピニオン軸32に伝達する転舵側減速機構34とを備えている。第2ピニオン軸32とラック軸22とは、所定の交差角をもって配置されている。第2ピニオン軸32に形成された第2ピニオン歯32aとラック軸22に形成された第2ラック歯22bとを噛み合わせることにより第2ラックアンドピニオン機構35が構成されている。
【0026】
このように構成された操舵装置2では、運転者によるステアリング操作に応じて転舵アクチュエータ31により第2ピニオン軸32が回転駆動され、この回転が第2ラックアンドピニオン機構35によりラック軸22の軸方向移動に変換されることで、転舵輪5の転舵角が変更される。このとき、操舵アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力として、運転者による操舵方向と反対方向へ向けて作用する力がステアリングホイール3に付与される。
【0027】
ちなみに、第1ピニオン軸21を設ける理由は、第1ピニオン軸21と共にラック軸22を図示しないハウジングの内部に支持するためである。すなわち、操舵装置2に設けられる図示しない支持機構によって、ラック軸22は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、第1ピニオン軸21及び第2ピニオン軸32へ向けて押圧される。これにより、ラック軸22はハウジングの内部に支持される。ただし、第1ピニオン軸21を使用せずにラック軸22をハウジングに支持する他の支持機構を設けてもよい。
【0028】
図1に示すように、操舵制御装置1には、操舵側モータ13と転舵側モータ33とが接続されている。操舵制御装置1は、操舵側モータ13の作動と転舵側モータ33の作動とを制御する。つまり、操舵制御装置1は、各モータ13,33の作動の制御を通じて、ステアバイワイヤ式の操舵装置として所望の機能を発揮するべく操舵装置2が動作するように制御する。
【0029】
操舵制御装置1には、ステアリング軸11に付与された操舵トルクThを検出するトルクセンサ41が接続されている。トルクセンサ41は、ステアリング軸11における操舵側減速機構14との連結部分よりもステアリングホイール3側に設けられている。トルクセンサ41は、ステアリング軸11の途中に設けられたトーションバーの捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。
【0030】
操舵制御装置1には、操舵側回転角センサ42及び転舵側回転角センサ43が接続されている。操舵側回転角センサ42は、操舵側モータ13の操舵側回転角θaを360度の範囲内の相対角で検出する。転舵側回転角センサ43は、転舵側モータ33の転舵側回転角θbを360度の範囲内の相対角で検出する。
【0031】
操舵制御装置1には、車速センサ44が接続されている。車速センサ44は、車両の走行速度を示す情報として設定される車速値Vを検出する。
操舵制御装置1には、CAN等の車載ネットワーク50を介して外部制御装置60が接続されている。外部制御装置60は、操舵制御装置1とは別に車両に設けられており、操舵装置2が発揮する機能とは別の所望の機能を発揮する装置の動作を制御するものである。操舵制御装置1は、車載ネットワーク50を介して外部制御装置60から情報を受信する。
【0032】
操舵制御装置1の電気的構成について説明する。
図2に示すように、操舵制御装置1は、操舵側モータ13への給電を制御する操舵側制御部70と、転舵側モータ33への給電を制御する転舵側制御部80とを有している。操舵側制御部70と転舵側制御部80とは、シリアル通信等のローカルネットワーク90を介して情報の送受信を相互に行う。操舵側制御部70は、操舵部4の構成の一部として設けられるものである。また、転舵側制御部80は、転舵部6の構成の一部として設けられている。
【0033】
操舵側制御部70は、上記各種センサの検出結果に基づいて、操舵側モータ13を通じて発生させるべきステアリングホイール3の操舵反力の目標となる反力制御量を演算する。そして、操舵側制御部70は、上記反力制御量に基づいて、操舵側モータ13に対する電力の供給を制御する。また、転舵側制御部80は、上記各種センサの検出結果に基づいて、転舵側モータ33を通じて発生させるべき転舵力の目標となる転舵制御量を演算する。そして、転舵側制御部80は、上記転舵制御量に基づいて、転舵側モータ33に対する電力の供給を制御する。
【0034】
操舵側制御部70は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の処理が実行される。操舵側制御部70は、各種の処理を実行するようにCPUとメモリとを組み合わせてなる制御系統として、メイン制御部70aと、サブ制御部70bとの2系統を有するように構成されている。本実施形態において、操舵側制御部70は、メイン制御部70aをマスター制御部とするとともにサブ制御部70bをスレーブ制御部とするマスター・スレーブ方式の制御方式で動作する。これは、転舵側制御部80についても同様である。つまり、転舵側制御部80は、各種の処理を実行するようにCPUとメモリとを組み合わせてなる制御部として、メイン制御部80aと、サブ制御部80bとの2系統を有し、これらがマスター・スレーブ方式の制御方式で動作するように構成されている。
【0035】
そして、操舵側制御部70の各制御部70a,70bと転舵側制御部80の各制御部80a,80bとは、ローカルネットワーク90を介した通信が可能に構成されている。また、操舵側制御部70の各制御部70a,70bと転舵側制御部80の各制御部80a,80bとは、車載ネットワーク50を介して外部制御装置60が有する外部制御部60aと通信が可能に構成されている。
【0036】
操舵装置2には、主電源100が接続されている。主電源100は、車両に搭載された二次電池であり、各モータ13,33が動作するべく供給される電力の電力源になるとともに、操舵側制御部70及び転舵側制御部80が動作するべく供給される電力の電力源になる。
【0037】
操舵装置2と主電源100との間には、イグニッションスイッチ等の車両の起動スイッチ110が設けられている。起動スイッチ110は、操舵装置2と主電源100との間を接続する2つの電源線L1,L2のうちの電源線L1の接続点P0から分岐している電源線L2の途中に設けられている。起動スイッチ110は、エンジン等の車両の走行用駆動源を作動させて車両の動作が可能になるように各種の機能を起動する際に操作される。起動スイッチ110の操作を通じて電源線L2の導通がオンオフされる。本実施形態において、ステアバイワイヤ式の操舵装置として所望の機能を発揮することができる操舵装置2の動作の状態は、車両の動作の状態と関連付けられている。なお、電源線L1については基本的に導通が常時オンとされているが、操舵装置2の動作の状態に応じて電源線L1の導通が操舵装置2の機能として間接的にオンオフされる。つまり、操舵装置2の動作の状態は、主電源100の電力の供給の状態である各電源線L1,L2の導通のオンオフと関連付けられている。
【0038】
操舵装置2において、操舵側制御部70の特にメイン制御部70aには、補助電源装置120を介して各電源線L1,L2、すなわち主電源100が接続されている。また、操舵側制御部70の特にサブ制御部70bには、補助電源装置120を介さず各電源線L1,L2、すなわち主電源100が直接的に接続されている。これは、転舵側制御部80についても同様であり、転舵側制御部80の特にメイン制御部80aには、補助電源装置120を介して各電源線L1,L2、すなわち主電源100が接続されている。また、転舵側制御部80の特にサブ制御部80bには、補助電源装置120を介さず各電源線L1,L2、すなわち主電源100が直接的に接続されている。つまり、本実施形態において、操舵側制御部70と転舵側制御部80との間では、単一の補助電源装置120を共用するように構成されている。
【0039】
なお、補助電源装置120は、車載ネットワーク50を介して外部制御装置60から情報を受信する機能を有していない。つまり、補助電源装置120は、車載ネットワーク50から物理的に切り離されており、当該車載ネットワーク50を介して外部制御装置60から情報を受信することができないように構成されている。その一方で、補助電源装置120は、操舵側制御部70とのメイン制御部70aと専用の信号線140を介した通信が可能に構成されている。これに対し、補助電源装置120は、転舵側制御部80のメイン制御部80aと専用の信号線を介して通信が可能に構成されていない。これは、本実施形態の補助電源装置120が設けられる位置が、操舵装置2にて、操舵部4と転舵部6との間で比較的に操舵部4の近くに設定されているからである。
【0040】
本実施形態において、補助電源装置120は、操舵側制御部70及び転舵側制御部80、すなわち操舵装置2用の補助電源装置として用意されている。そして、補助電源装置120と操舵側制御部70と転舵側制御部80とは、電源システムSを構成している。電源システムSは、操舵部4及び転舵部6、すなわち操舵装置2の電源システムとして適用されている。
【0041】
以下、電源システムSの構成について詳しく説明する。ここでは、操舵部4に関わる構成を中心に説明し、転舵部6に関わる構成については操舵部4に関わる構成と異なる構成についてのみ説明する。
【0042】
図3に示すように、主電源100の電力は、電源線L1の接続点P11から分岐している電源線L11を介してメイン制御部70aのパワー回路71aに供給される。パワー回路71aは、より大きい電力を取り扱う回路であって、例えば主電源100の直流電力を交流電力に変換するインバータが含まれる。主電源100の電力は、電源線L2の接続点P12から分岐している電源線L21を介してメイン制御部70aの制御回路72aへ供給される。制御回路72aは、操舵側モータ13を制御するための回路であって、例えばCPUやメモリが含まれる。
【0043】
また、主電源100の電力は、電源線L1の接続点P11から分岐している電源線L12を介してサブ制御部70bのパワー回路71bに供給される。なお、パワー回路71bは、パワー回路71aと同一構成を有する。主電源100の電力は、電源線L2の接続点P12から分岐している電源線L22を介してサブ制御部70bの制御回路72bへ供給される。なお、制御回路72bは、制御回路72aと同一構成を有する。
【0044】
また、転舵側制御部80は、操舵側制御部70に対応する構成を有している。すなわち、転舵側制御部80は、メイン制御部80aについて、パワー回路71aと、制御回路72aとに対応する構成を有している。転舵側制御部80は、サブ制御部80bについて、パワー回路71bと、制御回路72bとに対応する構成を有している。つまり、
図3中に示すように、転舵側制御部80は、メイン制御部80aについて、パワー回路81aと、制御回路82aとを有している。これと同様、転舵側制御部80は、サブ制御部80bについて、パワー回路81aと、制御回路82bとを有している。なお、メイン制御部80aについて、制御回路82aは、信号線140を介して補助電源装置120の後述の補助電源用制御部128に対して情報を出力可能に構成されていない点が異なっている。
【0045】
次に、補助電源装置120の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、補助電源装置120は、補助電源121と、電気回路122と、スイッチ123,124,125と、ダイオード126,127と、補助電源用制御部128とを有している。
【0046】
補助電源121は、二次電池同様の機能をする、例えばリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタである。補助電源121は、操舵側モータ13が動作するべく供給される電力の電力源になるとともに、操舵側制御部70が動作するべく供給される電力の電力源になる。これは、転舵部6についても同様であり、補助電源121は、転舵側モータ33に供給される電力の電力源になるとともに、転舵側制御部80に供給される電力の電力源になる。
【0047】
次式(A)で表されるように、補助電源121の電圧V2は、各モータ13,33あるいは各制御部70,80を適切に動作させるために必要とされる電圧V0よりも高く、かつ主電源100の電圧V1よりも低い値に設定されている。
【0048】
V1>V2>V0 …(A)
補助電源装置120の内部において、補助電源121は、電源線L11の接続点P13から分岐している電源線L111を介して電源線L11の接続点P11に接続されている。また、補助電源装置120の内部において、補助電源121は、電源線L11の接続点P14から分岐している電源線L112を介して電源線L11の接続点P11に接続されている。ただし、接続点P14は、接続点P13よりも操舵側制御部70(転舵側制御部80)側である下流側に位置している。補助電源121は、主電源100による電力の供給の状態に応じて操舵側制御部70(転舵側制御部80)への電力の供給を補助するべく機能する。本実施形態において、補助電源121は、主電源100が供給する電力の低下を条件として主電源100に代わって操舵側制御部70(転舵側制御部80)に対する電力の供給をバックアップするものである。
【0049】
電気回路122は、補助電源121の充電及び放電するように電源線L11に対する接続状態を切り替える。また、電気回路122は、補助電源121から電荷が放電されないように補助電源121を切り離すように電源線L11に対する接続状態を切り替える。
【0050】
スイッチ123は、補助電源装置120の内部において、電源線L11の途中に設けられている。スイッチ123は、接続点P13よりも主電源100側である上流側に位置している。スイッチ123は、電源線L11を開閉する。
【0051】
スイッチ124は、補助電源装置120の内部において、電源線L111の途中に設けられている。スイッチ124は、電源線L111を開閉する。
スイッチ125は、補助電源装置120の内部において、電源線L112の途中に設けられている。スイッチ125は、電源線L112を開閉する。
【0052】
電源線L112には、接続点P15が設定されている。補助電源装置120の内部において、電源線L112の接続点P15と電源線L21の接続点P16との間は電源線L113により接続されている。
【0053】
ダイオード126は、電源線L113の途中に設けられている。ダイオード126のカソードは、電源線L21の接続点P16に接続されている。ダイオード126のアノードは、電源線L113の接続点P15に接続されている。
【0054】
ダイオード127は、電源線L21の途中に設けられている。ダイオード127のカソードは、電源線L21の接続点P16に接続されている。ダイオード127のアノードは、電源線L21の接続点P12に接続されている。
【0055】
ダイオード126,127は、アノードからカソードへ向けた電力の流れを許容する一方、カソードからアノードへ向けた電力の流れを規制する。ダイオード126,127は、主電源100と補助電源121とのうちの供給する電圧の大きい方の電力を制御回路72aに供給するOR回路を構成する。ダイオード126,127により構成されるOR回路は、いわゆるワイヤードORである。ダイオード126,127により構成されるOR回路は、操舵側制御部70(転舵側制御部80)に対して電力を供給するべく主電源100と補助電源121とのうちの供給する電圧の大きい方の電力を選択する選択回路に相当する。
【0056】
補助電源用制御部128は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の処理が実行される。
【0057】
具体的には、補助電源用制御部128は、電気回路122の接続状態の切り替えを制御するとともに、スイッチ123,124,125の開閉を制御する。補助電源用制御部128は、主電源100の電圧を監視する。補助電源用制御部128は、次式(B)で表されるように、主電源100の電源電圧Vbが閾値電圧Vth1よりも小さいとき、主電源100の電源電圧Vbが低下した旨判断する。閾値電圧Vth1は、主電源100の電圧低下を判断する際の基準であって、各モータ13,33あるいは各制御部70,80を適切に動作させるために必要とされる電圧V0を基準として設定される。本実施形態において、閾値電圧Vth1は、電圧V0と同じ値に設定される。
【0058】
Vb<Vth1 …(B)
補助電源用制御部128は、主電源100の電圧の低下が検出されないとき、スイッチ123,124をオンした閉状態に維持するとともに、スイッチ125をオフした開状態に維持する。また、補助電源用制御部128は、主電源100の電圧低下が検出されるとき、スイッチ123,124をオンした閉状態からオフした開状態へ切り替える。この後、補助電源用制御部128は、スイッチ125をオフした開状態からオンした閉状態へ切り替える。
【0059】
具体的には、主電源100の電源電圧Vbが低下していない場合、スイッチ123,124はオンした閉状態に維持されるとともに、スイッチ125はオフした開状態に維持される。
【0060】
例えば、操舵部4について、主電源100からの電力は、電源線L11を介して操舵側制御部70におけるパワー回路71aへ供給される。また、主電源100からの電力は、電源線L111を介して補助電源121に充電される。
【0061】
主電源100の電源電圧Vbが低下していない場合、起動スイッチ110がオンされたとき、主電源100の電力は電源線L21を介して操舵側制御部70における制御回路72aへ供給される。ちなみに、主電源100の電源電圧Vbは、補助電源121の電圧V2よりも高く設定されているため、基本的には補助電源121の電力が電源線L113及び電源線L21の一部を介して操舵側制御部70へ供給されることはない。また、ダイオード126によって、電源線L21を経た主電源100の電力が電源線L113を介して補助電源121へ流れ込むことが規制される。
【0062】
主電源100が失陥して主電源100の電源電圧Vbが補助電源121の電圧V2を下回った場合、即時に補助電源121からの電力が電源線L113及び電源線L21の一部分を介して操舵側制御部70における制御回路72aへ供給される。これは、補助電源121の電圧V2が電源線L2に生じる電圧よりも高くなるからである。主電源100の失陥に起因して、たとえ主電源100から操舵側制御部70への給電が途絶した場合であれ、制御回路72aに対する給電が補助電源121によってバックアップされる。
【0063】
主電源100の電源電圧Vbがさらに低下して、主電源100の電源電圧Vbが閾値電圧Vth1を下回った場合、スイッチ123,124がオンした閉状態からオフした開状態へ切り替えられる。この後、スイッチ125がオフした開状態からオンした閉状態へ切り替えられる。これにより、補助電源121の電力が電源線L112及び電源線L11の一部分を介して操舵側制御部70におけるパワー回路71aへ供給される。これは、主電源100の失陥に起因して、補助電源121の電圧V2が電源線L11に生じる電圧よりも高くなるからである。したがって、主電源100の失陥に起因して、たとえ主電源100から操舵側制御部70への給電が途絶した場合であれ、操舵側制御部70におけるパワー回路71aに対する給電が補助電源121によってバックアップされる。
【0064】
ちなみに、電源線L112にはスイッチ125に代えてダイオードを設けることが考えられる。このようにすれば、主電源100が失陥した場合、補助電源121の電力が即時にパワー回路71aへ供給される。しかし、ダイオードでは電力損失が発生する。このため、補助電源121の消耗を抑える観点から、より大きい電力が要求されるパワー回路71aに対して給電するための電源線L112にはダイオードではなくスイッチ125が設けられている。
【0065】
また、電源線L113にはダイオード126に代えてスイッチを設けることも考えられる。しかし、この場合、つぎのようなことが懸念される。すなわち、主電源100が失陥して主電源100からの電力の供給が途絶えてから電源線L113のスイッチがオフからオンへ切り替わるまでには、わずかながらにも時間を要する。このため、電源線L113のスイッチがオフからオンへ切り替わるまでの期間、制御回路72aへの給電が瞬間的に途絶えることによって制御回路72aがリセットされるおそれがある。この点、電源線L113にダイオード126を設けるようにすれば、主電源100が失陥した場合、補助電源121の電力が電源線L113及び電源線L21の一部分を介して制御回路72aへ即時に供給される。制御回路72aへの給電が途絶えることがないため、制御回路72aがその電源電圧の低下に起因してリセットされることもない。
【0066】
なお、本実施形態において、操舵側制御部70及び転舵側制御部80、すなわち操舵制御装置1は、装置用の制御部に相当する。ダイオード127は、第1ダイオードに相当する。ダイオード126は、第2ダイオードに相当する。また、電源線L21は、第1給電経路に相当する。電源線L113は、第2給電経路に相当する。補助電源用制御部128は、補助電源用の制御部に相当する。
【0067】
そして、操舵側制御部70において、制御回路72aは、電源線L21を通じて供給される電力の電圧を主電源100の電源電圧Vig1として検出する機能を有している。電源電圧Vig1は、電源線L21の接続点P16における電源電圧である。また、制御回路72bは、電源線L22を通じて供給される電力の電圧を主電源100の電源電圧Vig2として検出する機能を有している。電源電圧Vig2は、電源線L21の接続点P12における電源電圧である。これと同様、操舵側制御部70と同一構成を有する転舵側制御部80のメイン制御部80aが有する制御回路82aは、電源線L21に対応する電源線を通じて供給される電力の電圧を主電源100の電源電圧Vig3として検出する機能を有する。また、転舵側制御部80のサブ制御部80bが有する制御回路82bは、電源線L22に対応する電源線を通じて供給される電力の電圧を主電源100の電源電圧Vig4として検出する機能を有する。こうして検出された各電源電圧Vig1~Vig4は、ローカルネットワーク90を介して操舵側制御部70の各制御部70a,70b及び転舵側制御部80の各制御部80a,80bに対して出力されることで各制御部70,80に共有されるように構成されている。
【0068】
例えば、メイン制御部70aにおいて、制御回路72aは、ローカルネットワーク90を介して入力される各電源電圧Vig2,Vig4を取得する。
また、メイン制御部70aにおいて、制御回路72aは、車載ネットワーク50を介して入力される車両停止FLG1を取得するとともに、ローカルネットワーク90を介して入力される転舵側車両停止FLG1tを取得する。車両停止FLG1は、外部制御部60aが生成して車載ネットワーク50に対して出力する車両の動作の状態を示す情報である。つまり、車両停止FLG1は、車両の動作の停止、すなわち起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給が停止の状態である旨を示す情報である。なお、外部制御部60aは、例えば、起動スイッチ110のオンオフを検出したり、車速センサ44の車速値Vを検出したりして車両の動作の停止を判断する結果として、車両停止FLG1を生成するように構成されている。転舵側車両停止FLG1tは、転舵側制御部80のメイン制御部80aが有する制御回路82aが車載ネットワーク50を介して取得する車両停止FLG1に基づき生成する情報であって、制御回路72aが制御回路82aからローカルネットワーク90を介して取得する情報である。つまり、転舵側制御部80において、制御回路82aは、制御回路72aと同様、車載ネットワーク50を介して入力される車両停止FLG1を取得する。こうして制御回路82aで取得された車両停止FLG1は、ローカルネットワーク90を介して操舵側制御部70のメイン制御部70aに対して転舵側車両停止FLG1tとして出力される。
【0069】
そして、制御回路72aは、各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2よりも小さいことと、車両停止FLG1を取得したことと、転舵側車両停止FLG1tを取得したこととのいずれも満たすことを条件として、起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給の状態として当該電力の供給が停止の状態である旨判断する。すなわち、制御回路72aは、操舵側制御部70で検出された電源電圧Vig2と転舵側制御部80から取得された電源電圧Vig4とがともに閾値電圧Vth2よりも小さいことを確認している。閾値電圧Vth2は、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断できるとして実験的に求められる範囲の値が主電源100の電力の供給が停止の状態である場合の電源電圧Vig2や、当該電源電圧Vig2と略同一値を示すことが想定される電源電圧Vig4の値を基準として設定されている。
【0070】
本実施形態では、起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断する際に、各電源電圧Vig2,Vig4の条件を加える一方で、各電源電圧Vig1,Vig3の条件を加えないようにしている。これは、起動スイッチ110がオフで各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2に向けて下がるように変位する一方で、起動スイッチ110がオフで各電源電圧Vig1,Vig3が閾値電圧Vth2に向けて下がらない可能性があるからである。なお、起動スイッチ110がオフで各電源電圧Vig1,Vig3が閾値電圧Vth2に向けて下がらないことの理由は、起動スイッチ110がオフでも補助電源121及びダイオード126,127の機能を通じて起動スイッチ110がオンの場合と変わらず電力の供給が維持される場合があるからである。
【0071】
なお、制御回路72aは、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断する際に、電源電圧Vig2と電源電圧Vig4とが略同一値を示すことを想定すれば、電源電圧Vig2と電源電圧Vig4とのうちのいずれか一方の電源電圧を対象として閾値電圧Vth2と比較するように構成してもよい。なお、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断する際に、電源電圧Vig2だけでなく電源電圧Vig1がともに低下していることを検出した場合、起動スイッチ110がオフ以外、例えば電源線L21,L22の断線等の何かしらの電源についての異常が生じていることを推定できる。そして、起動スイッチ110がオフ以外の何かしらの電源についての異常が生じている場合、車両を停止するためのフェールセーフ制御等を優先して実行するように構成できる。また、主電源100の電力の供給が行われる状態で各電源電圧Vig1~Vig4が略同一値を示すことを想定すれば、例えば、電源電圧Vig1と電源電圧Vig2との偏差の絶対値は、起動スイッチ110がオフで電源電圧Vig2が下がるように変位した量を示す情報である。この場合、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨の判断は、電源電圧Vig1と電源電圧Vig2との偏差の絶対値と閾値とを比較して、当該比較の結果を条件として構成してもよい。また、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨の判断は、車両停止FLG1と、転舵側車両停止FLG1tとを比較して、これらの値が一致するか否かを条件として構成してもよい。
【0072】
そして、制御回路72aは、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断すると、操舵側制御部70の動作を停止するべく当該停止に関わる処理を実行する。この場合、すなわち操舵側制御部70の動作を停止する際、制御回路72aは、操舵側制御部70の動作を停止させるために必要な処理を実行した後に、補助電源用制御部128に対して動作を停止する旨を示す情報として停止許可FLG2を生成して信号線140を介して補助電源用制御部128に対して出力する。なお、操舵側制御部70は、制御回路72aによる停止許可FLG2の出力後、何も処理を実行しない状態であってもよいし、主電源100及び補助電源121の電力の供給が急に停止されることになっても影響のない処理であれば何かしらの処理を実行している状態であってもよい。これは、転舵側制御部80についても同様である。つまり、転舵側制御部80は、各電源電圧Vig2,Vig4と、車両停止FLG1とに基づき制御回路82aの処理を通じて、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断する。そして、転舵側制御部80は、制御回路82aが主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断すると、転舵側制御部80の動作を停止するべく当該停止に関わる処理の実行後に、ローカルネットワーク90を介して車両停止FLG1に基づき生成する転舵側車両停止FLG1tを操舵側制御部70に対して出力する。つまり、転舵側車両停止FLG1tは、転舵側制御部80が動作を停止する旨を示す情報である。こうした転舵側車両停止FLG1tを考慮して生成される停止許可FLG2は、転舵側制御部80が動作を停止する旨を示す情報でもある。なお、転舵側制御部80は、制御回路82aによる転舵側車両停止FLG1tの出力後、何も処理を実行しない状態であってもよいし、主電源100及び補助電源121の電力の供給が急に停止されることになっても影響のない処理であれば何かしらの処理を実行している状態であってもよいことは上述の通りである。
【0073】
そして、操舵側制御部70は、制御回路72aによる停止許可FLG2の出力後、実際に補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能が停止されることを通じて、主電源100及び補助電源121の電力の供給が停止されることになる。つまり、停止許可FLG2の出力のタイミングと、操舵側制御部70への主電源100及び補助電源121の電力の供給が停止されるタイミングとの間には、若干の時間差が生じる。この若干の時間差は、停止許可FLG2が出力されてから補助電源用制御部128に入力されるまでの時間や、停止許可FLG2の入力後に補助電源用制御部128が動作を実際に停止させるまでの時間等を含む。
【0074】
一方、制御回路72aは、各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2よりも小さいことと、車両停止FLG1を取得したことと、転舵側車両停止FLG1tを取得したこととのいずれも満たすという条件が成立しない場合、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断しないで、停止許可FLG2を生成及び出力しない。
【0075】
補助電源用制御部128は、信号線140を介して入力される停止許可FLG2を取得したことを条件として、操舵側制御部70の動作を停止するべく当該停止に関わる処理を実行する。この場合、すなわち操舵側制御部70の動作を停止する際、補助電源用制御部128は、補助電源121の電力が供給されることがないように電気回路122の接続状態を切り替えるように制御する。つまり、補助電源装置120は、補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能を停止させることを通じて操舵側制御部70への電力の供給を停止することになる。この場合、補助電源装置120は、補助電源121の残電荷の多少に関係なく、補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能を停止させる。
【0076】
これにより、主電源100の電力の供給が停止する状態の場合に、電気回路122の接続状態の切り替えを通じて補助電源121の電力の供給が回避されるため、操舵側制御部70への電力の供給が停止される。この場合、主電源100の電力の供給が停止状態になることで、操舵側制御部70は動作し続けることなく停止することになる。これは、転舵側制御部80についても同様である。つまり、主電源100の電力の供給が停止する状態の場合に、電気回路122の接続状態の切り替えを通じて補助電源121の電力の供給が回避されるようになり、転舵側制御部80への電力の供給が停止される。この場合、主電源100の電力の供給が停止状態になることで、転舵側制御部80は動作し続けることなく停止することになる。
【0077】
なお、主電源100の電圧低下が検出される状況は、起動スイッチ110がオフである状況と、起動スイッチ110がオンであるなかで主電源100が失陥して主電源100から操舵側制御部70への給電が途絶した状況とを含む。特に、主電源100が失陥した状況では、各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2よりも小さいことになるが、車両停止FLG1と転舵側車両停止FLG1tと停止許可FLG2とがそれぞれ生成及び出力されることはない。そして、主電源100が失陥した状況で、補助電源用制御部128は、その旨を示す情報を操舵側制御部70に対して信号線140を介して出力する。この場合、操舵側制御部70は、主電源100が失陥した状況に応じた制御を実行することになる。なお、転舵側制御部80には、主電源100が失陥した状況を示す情報が操舵側制御部70からローカルネットワーク90を介して入力される。この場合、転舵側制御部80は、主電源100が失陥した状況に応じた制御を実行することになる。
【0078】
本実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、操舵側制御部70及び転舵側制御部80、すなわち操舵制御装置1が動作を停止する際に、補助電源用制御部128は、操舵側制御部70から動作を停止する旨を示す情報として停止許可FLG2を入手できる。この場合、補助電源用制御部128は、動作を停止しようとする際に、各制御部70,80が動作を停止するか否かを考慮して動作を停止するべきか動作し続けるべきかを判断できる。
【0079】
具体的には、
図4(a)は、起動スイッチ110のオンオフの状態、すなわち主電源100から電力が供給されている状態について、時間tの経過に伴って変化する状態を示している。起動スイッチ110がオンの状態では、主電源100が失陥していなければ基本的に操舵装置2、すなわち操舵側制御部70及び転舵側制御部80に対して主電源100の電力が供給される。
【0080】
この場合、
図4(b)~(g)に示すように、例えば、電源システムSにおいて、各電源電圧Vig2,Vig4の検出、車両停止FLG1の出力、転舵側車両停止FLG1tの出力、停止許可FLG2の出力、補助電源用制御部128の動作、各制御部70,80への電力の供給の各状態は、起動スイッチ110のオンの状態を示すことになる。つまり、各電源電圧Vig2,Vig4は、閾値電圧Vth2以上の値として検出される、図中「1」で示す状態である。車両停止FLG1は、外部制御部60aから出力がされていない、図中「0(零)」で示す状態である。転舵側車両停止FLG1tは、転舵側制御部80の制御回路82aから出力がされていない、図中「0(零)」で示す状態である。停止許可FLG2は、メイン制御部70aの制御回路72aから出力がされていない、図中「0(零)」で示す状態である。補助電源用制御部128は、主電源100が供給する電力が低下すれば、補助電源121によるバックアップをすることができるように動作している、図中「オン」で示す状態である。各制御部70,80への電力の供給は、主電源100又は補助電源121が供給する電力を用いて各制御部70,80が動作し続けられるように供給がされている、図中「オン」で示す状態である。
【0081】
そして、
図4(a)に示すように、起動スイッチ110がオフの状態に切り替わると、各制御部70,80に対する主電源100の電力の供給が停止される。
この場合、
図4(b)~(g)に示すように、例えば、電源システムSにおいて、各電源電圧Vig2,Vig4の検出、車両停止FLG1の出力、転舵側車両停止FLG1tの出力、停止許可FLG2の出力、補助電源用制御部128の動作、各制御部70,80への電力の供給の各状態は、起動スイッチ110のオフの状態を示すことになる。つまり、各電源電圧Vig2,Vig4は、閾値電圧Vth2よりも小さい値として検出される、図中「0(零)」で示す状態に移行する。車両停止FLG1は、外部制御部60aから出力がされる、図中「1」で示す状態に移行する。転舵側車両停止FLG1tは、転舵側制御部80の制御回路82aから出力がされる、図中「1」で示す状態に移行する。
【0082】
その後、
図4(e)に示すように、停止許可FLG2は、メイン制御部70aの制御回路72aにより車両停止FLG1が取得されるとともに、転舵側車両停止FLG1tが取得された後、当該制御回路72aから出力がされる、図中「1」で示す状態に移行する。
【0083】
続いて、
図4(f)に示すように、補助電源用制御部128は、停止許可FLG2を取得したことを条件として、補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能を停止するように、図中「オフ」で示す状態に移行する。
【0084】
続いて、
図4(g)に示すように、各制御部70,80への電力の供給は、補助電源用制御部128の動作の停止を通じて、主電源100及び補助電源121が供給する電力を用いて各制御部70,80が動作し続けることがないように供給が停止されている、図中「オフ」で示す状態である。
【0085】
このように、補助電源用制御部128は、例えば、操舵側制御部70の動作の状態の関係において、操舵側制御部70が動作を停止する状況では動作し続けることなく動作を停止することができるし、操舵側制御部70が動作し続ける状況では停止することなく動作し続けることができる。これは、転舵側制御部80についても同様であり、転舵側制御部80の動作の状態の関係において、転舵側制御部80が動作を停止する状況では動作し続けることなく動作を停止することができるし、転舵側制御部80が動作し続ける状況では停止することなく動作し続けることができる。
【0086】
第1実施形態の効果を説明する。
(1-1)例えば、停止許可FLG2の生成及び出力の構成を有さないとすると、主電源100の電力の供給が停止する状態の場合に、各制御部70,80が動作を停止させようとしても、当該各制御部70,80が動作を停止させようとすることを補助電源用制御部128が把握できない可能性がある。そして、主電源100が電力の供給を停止する状態でも補助電源用制御部128が動作し続けようとしてしまうと、補助電源121が主電源100に代わって各制御回路72a,82aに対する電力の供給をバックアップすることになる。この場合、各制御部70,80は、補助電源121から電力が供給され続ける結果、主電源100の電力の供給が停止する状態で動作を停止する状況であるにもかかわらず動作し続けてしまう予期しない状況に陥ることになる。これは、本実施形態のように、主電源100と補助電源121のうちの供給する電圧の大きい方の電力が選択されるダイオードORの機能を有している場合に特に課題となる。
【0087】
これに対して、本実施形態では、各制御部70,80と補助電源用制御部128とについては、他の制御部の動作の状態の関係において、停止すべき状況で動作し続けたり、停止すべきでない状況で動作が停止したりしないように規則を定めることができる。したがって、各制御部70,80と補助電源用制御部128との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。
【0088】
(1-2)各制御部70,80が動作を停止する際には、主電源100の電力の供給の状態、すなわち車両の動作の状態を示す情報である車両停止FLG1を考慮して、各制御部70,80と補助電源用制御部128とについての停止すべき状況で動作を停止するように規則を定めるようにしている。この場合、車両の動作の状態に応じた適切な制御を各制御部70,80が実施するのに効果的である。
【0089】
(1-3)本実施形態によれば、外部制御部60aから車両停止FLG1を入力できる第1制御部としての各制御部70,80を主体として、各制御部70,80と第2制御部としての補助電源用制御部128とについての停止すべき状況で動作を停止するように規則を定めるようにしている。この場合、各制御部70,80と補助電源用制御部128との間で予期しない状況に陥ることをより好適に抑制するのに効果的である。
【0090】
(1-4)操舵側制御部70は、車両の動作の状態を判断する際に、各電源電圧Vig2,Vig4に加えて、外部制御部60aから入手した車両停止FLG1といった、情報源の異なる複数の情報を用いている。この場合、車両の動作の状態を判断する精度を高めることができる。
【0091】
(1-5)本実施形態の電源システムSを採用した操舵装置2では、各制御部70,80と補助電源用制御部128との間で予期しない状況に陥ることを抑制できる。この場合、操舵装置2の商品性の向上を図るのに効果的である。
【0092】
(1-6)例えば、操舵側制御部70、すなわち操舵制御装置1としては、自己診断、いわゆるダイアグの機能を有する場合、ダイアグの結果として検出した異常の種類等を後々の整備時に特定するための情報であるダイアグ情報を生成及び記憶することになる。ダイアグの結果として検出する異常の種類には、例えば、操舵側制御部70と補助電源用制御部128との間で信号線140を介した通信が正常に行われない通信異常が含まれる。この通信異常として検出すべき状況は、操舵側制御部70と補助電源用制御部128との間で信号線140を介した通信が行われるなかで、操舵側制御部70が動作し続ける状況で補助電源用制御部128が動作を停止してしまう等の状況である。
【0093】
この場合、上記効果(1-1)で説明したように、停止許可FLG2の生成及び出力の構成を有さないとすると、主電源100の電力の供給が停止する状態で、操舵側制御部70と補助電源用制御部128との間でお互いの状況を把握することなく動作を停止してしまう。これに起因して、通信異常として検出すべき状況でないにもかかわらずダイアグの結果として通信異常を検出する可能性がある。この場合には、後々の整備時に異常を正しく特定することができなくなり、整備作業の作業効率の低下等を招くことになる。
【0094】
これに対して、本実施形態では、操舵側制御部70については、停止許可FLG2を生成及び出力した際に、補助電源用制御部128との間で通信異常の状況になったとしても、これを通信異常として検出しないように条件を定めることができる。したがって、主電源100の電力の供給が停止する状態で、通信異常として検出すべき状況でダイアグの結果として通信異常が検出されることの発生を抑制できる。
【0095】
<第2実施形態>
以下、電源システムの第2実施形態を図面に従って説明する。なお、既に説明した第1実施形態と同一の構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0096】
本実施形態では、各制御部70,80について、それぞれに対応付けて補助電源装置120を一つずつ個別に設けるように構成し、各制御部70,80の間で単一の補助電源装置120を共用していない点が、上記第1実施形態と異なる。
【0097】
具体的には、
図5に示すように、操舵側制御部70用の補助電源装置として操舵側の補助電源装置120Sが用意されている。そして、操舵側の補助電源装置120Sと操舵側制御部70とは、電源システムSSを構成している。電源システムSSは、操舵装置2における操舵部4の電源システムとして適用されている。これと同様、転舵側制御部80用の補助電源装置として転舵側の補助電源装置120Tが用意されている。そして、転舵側の補助電源装置120Tと転舵側制御部80とは、電源システムSTを構成している。電源システムSTは、操舵装置2における転舵部6の電源システムとして適用されている。
【0098】
そして、操舵側制御部70についての具体的な構成は、補助電源装置120Sを上記第1実施形態の補助電源装置120に置き換えて実現される構成と同様である。例えば、操舵側制御部70のメイン制御部70aには、補助電源装置120Sを介して各電源線L1,L2、すなわち主電源100が接続されている。また、操舵側制御部70のサブ制御部70bには、補助電源装置120Sを介さず各電源線L1,L2、すなわち主電源100が直接的に接続されている。また、補助電源装置120Sは、操舵側制御部70とのメイン制御部70aと専用の信号線140Sを介した通信が可能に構成されている。
【0099】
また、転舵側制御部80についての具体的な構成は、補助電源装置120Tを上記第1実施形態の補助電源装置120に、転舵側制御部80を上記第1実施形態の操舵側制御部70にそれぞれ置き換えて実現される構成と同様である。例えば、転舵側制御部80のメイン制御部80aには、補助電源装置120Tを介して各電源線L1,L2、すなわち主電源100が接続されている。また、転舵側制御部80のサブ制御部70bには、補助電源装置120Tを介さず各電源線L1,L2、すなわち主電源100が直接的に接続されている。また、補助電源装置120Tは、転舵側制御部80とのメイン制御部80aと専用の信号線140Tを介した通信が可能に構成されている。
【0100】
この場合、操舵側制御部70について、制御回路72aは、各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2よりも小さいことと、車両停止FLG1を取得したこととのいずれも満たすことを条件として、起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断して、停止許可FLG2を生成及び出力する。これにより、補助電源装置120Sは、補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能を停止させることを通じて操舵側制御部70への電力の供給を停止する。
【0101】
また、転舵側制御部80について、制御回路82aは、各電源電圧Vig2,Vig4が閾値電圧Vth2よりも小さいことと、車両停止FLG1を取得したこととのいずれも満たすことを条件として、起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断して、停止許可FLG2を生成及び出力する。これにより、補助電源装置120Tは、補助電源121による主電源100の電力の供給のバックアップの機能を停止させることを通じて転舵側制御部80への電力の供給を停止する。
【0102】
こうした第2実施形態によれば、上記第1実施形態に準じた作用及び効果を奏する。
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0103】
・上記第1実施形態において、ダイオード126,127は、操舵側制御部70、すなわち操舵制御装置1の内部において、OR回路を構成するようにしてもよい。このようにしても主電源100と補助電源121とのうちの供給する電圧が大きい方として選択された電力が操舵側制御部70へと供給されることになる。これは、上記第2実施形態の各補助電源装置120S,120Tについても同様である。
【0104】
・上記第1実施形態において、補助電源121には、リチウムイオンキャパシタに代えて、電気二重層キャパシタ又は二次電池を採用してもよい。これは、上記第2実施形態の各補助電源装置120S,120Tの補助電源についても同様である。
【0105】
・上記第1実施形態において、補助電源121の電圧V2は、主電源100の電圧V1と同程度の値に設定してもよいし、主電源100の電圧V1よりも大きく設定してもよい。これは、上記第2実施形態の各補助電源装置120S,120Tの補助電源の電圧V2についても同様である。
【0106】
・上記第1実施形態において、補助電源装置120は、主電源100に代わって各制御部70,80に対する電力の供給をバックアップすることで補助することに加えて、主電源100が供給する電力を昇圧して補助するように動作するものであってもよい。この場合、補助電源装置120では、ダイオード126,127により構成されるOR回路のような選択回路に相当する構成を削除してもよい。これは、上記第2実施形態の各補助電源装置120S,120Tについても同様である。
【0107】
・上記第1実施形態において、操舵側制御部70は、各電源電圧Vig2,Vig4の代わりに、電源電圧Vbを用いて起動スイッチ110がオンオフの状態を判断してもよい。これは、上記第2実施形態の各制御部70,80についても同様である。
【0108】
・上記第1実施形態において、各制御部70,80には、例えば、起動スイッチ110のオンオフを検出したり、車速センサ44の車速値Vを検出したりして車両の動作の停止を判断する結果として、車両停止FLG1に相当する情報を生成する機能を付加してもよい。これは、上記第2実施形態の各制御部70,80についても同様である。
【0109】
・上記第1実施形態において、操舵側制御部70は、起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給の状態として当該電力の供給が停止の状態である旨判断する際、車両停止FLG1、転舵側車両停止FLG1t、及び各電源電圧Vig2,Vig4の少なくともいずれかを用いていればよい。これは、上記第2実施形態の各制御部70,80についても同様である。
【0110】
・上記第1実施形態において、操舵側制御部70は、停止許可FLG2を生成する際に、転舵側車両停止FLG1tを考慮しないようにしてもよい。例えば、操舵側制御部70は、取得した転舵側車両停止FLG1tをそのまま補助電源用制御部128に対して出力するようにすればよい。この場合、補助電源用制御部128は、停止許可FLG2及び車両停止FLG1tの両方を取得したことを条件として、操舵側制御部70の動作を停止するべく当該停止に関わる処理を実行すればよい。
【0111】
・上記第1実施形態において、操舵側制御部70は、取得した車両停止FLG1を補助電源用制御部128に対して信号線140を介して出力することもできる。こうして出力された車両停止FLG1は、操舵側制御部70と補助電源用制御部128との間で共有されることになる。このように車両停止FLG1を共有する観点では、補助電源用制御部128が車載ネットワーク50を通じて車両停止FLG1を取得し、当該取得した車両停止FLG1を操舵側制御部70に対して信号線140を介して出力するように構成してもよい。この場合、操舵側制御部70は、取得した車両停止FLG1を転舵側制御部80に対してローカルネットワーク90を介して出力するように構成すればよい。つまり、補助電源用制御部128は、車載ネットワーク50を介した通信が可能なように接続されるようにしてもよい。この場合、補助電源用制御部128には、車両の動作の停止、すなわち起動スイッチ110がオフで主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断する機能を付加してもよい。また、補助電源用制御部128は、動作を停止する旨を示す停止許可FLG2に相当する情報を生成して操舵側制御部70に対して信号線140を介して出力してもよい。この場合、操舵側制御部70は、取得した停止許可FLG2に相当する情報を転舵側制御部80に対してローカルネットワーク90を介して出力するように構成すればよい。こうした構成によれば、補助電源用制御部128を主体として、各制御部70,80と補助電源用制御部128とについての停止すべき状況で動作を停止するように規則を定めることができる。ただし、補助電源用制御部128は、停止許可FLG2に相当する情報の出力後、各制御部70,80が動作の停止の処理を実行することができる範囲の時間として設定される所定時間の経過後に動作を停止したり、各制御部70,80からも停止許可FLG2等が入力されるように構成したりする。これは、上記第2実施形態の各制御部70,80や、各補助電源装置120S,120Tの補助電源用制御部についても同様である。
【0112】
・上記第1実施形態において、補助電源用制御部128は、転舵側制御部80のメイン制御部80aと信号線140を介した通信が可能に構成されていてもよい。つまり、転舵側制御部80のメイン制御部80aは、上記第1実施形態の停止許可FLG2に相当する情報を生成し、当該情報を補助電源用制御部128に対して直接的に出力することができるように構成してもよい。この場合、補助電源用制御部128は、操舵側制御部70のメイン制御部70aと信号線140を介した通信が可能に構成されていなくてもよい。つまり、操舵側制御部70のメイン制御部70aは、上記第1実施形態の転舵側車両停止FLG1tに相当する情報を生成し、当該情報を転舵側制御部80のメイン制御部80aに対して出力することができるように構成してもよい。
【0113】
・上記第1実施形態において、主電源100の電力の供給が停止の状態である旨判断したり停止許可FLG2を生成及び出力したりする処理機能は、操舵制御装置1の機能として実現されていればよく、操舵側制御部70、すなわちメイン制御部70aの制御回路72aの機能として実現するに限らず、適宜変更可能である。上記処理機能は、操舵側制御部70について、例えば、メイン制御部70aとサブ制御部70bとの両方の機能として持たせることもできるし、サブ制御部70bのみの機能として持たせることもできる。これは、転舵側制御部80のメイン制御部80aとサブ制御部80bとについても同様である。この場合、上記処理機能を、操舵側制御部70のメイン制御部70aあるいか当該メイン制御部70aとサブ制御部70bとの両方の機能として持たせるとともに、転舵側制御部80のメイン制御部80aあるいは当該メイン制御部80aとサブ制御部80bとの両方の機能として持たせることができる。つまり、例えば、各制御部70,80の間では、上記処理機能として判断や停止許可FLG2の生成を実行するとともに、ローカルネットワーク90を通じてそれぞれの実行の結果を共有して調停する手法を採用してもよい。こうした手法は、各制御部70a,70b,80a,80bの間で実現してもよい。これは、上記第2実施形態についても同様であり、各制御部70,80について、各メイン制御部70a,80aと各サブ制御部70b,80bとの両方の機能として持たせることもできるし、各サブ制御部70b,80bのみの機能として持たせることもできる。
【0114】
・上記第1実施形態において、各制御部70,80は、必要な電源電圧のみを検出する機能を有していればよい。すなわち、操舵側制御部70では、電源電圧Vig1を検出する機能を削除して、電源電圧Vig2のみを検出する機能を有していてもよい。また、転舵側制御部80では、電源電圧Vig3を検出する機能を削除して、電源電圧Vig4のみを検出する機能を有していてもよい。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0115】
・上記第1実施形態において、各メイン制御部70a,80aが各電源電圧Vig2,Vig4を検出する機能を有していてもよい。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0116】
・上記第1実施形態において、各制御部70,80では、各サブ制御部70b,80bを削除して各メイン制御部70a,80aの1系統のみの構成としてもよい。この場合、1系統のみの各メイン制御部70a,80aは、必要な電源電圧を検出する機能を有していればよい。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0117】
・上記第1実施形態において、操舵側制御部70には、停止許可FLG2を出力するタイミングで自身で電源線L21を遮断する機能を付加してもよい。これは、転舵側制御部80についても同様であり、転舵側車両停止FLG1tを出力するタイミングで自身で電源線L21を遮断する機能を付加してもよい。この場合、各制御部70,80において、電源線L21の接続点P16と制御回路72aとの間に、当該制御回路72aが切り替え可能なスイッチ等を設けるようにすればよい。これは、上記第2実施形態の各制御部70,80についても同様である。
【0118】
・操舵制御装置1では、操舵側制御部70が操舵側モータ13を動作させる機能と転舵側制御部80が転舵側モータ33を動作させる機能とを集約した機能を有する一の制御部を構成してもよい。
【0119】
・転舵側モータ33は、例えば、ボールねじ機構を用いたベルト式減速機を介してラック軸22に連結されたり、ラック軸22の同軸上に連結されたりしてもよい。
・各制御部70,80やこれらを含む操舵制御装置1は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又は3)それらの組み合わせ、を含む処理回路によって構成してもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち非一時的なコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。これは、補助電源用制御部128やこれを含む補助電源装置120についても同様である。
【0120】
・操舵装置2は、操舵部4と転舵部6との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、
図1に二点鎖線で示すように、クラッチ25により操舵部4と転舵部6との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。また、操舵装置2は、ステアバイワイヤ式の操舵装置に限らず、モータのトルクをステアリング軸11又はラック軸22に付与する電動パワーステアリング装置であってもよい。
【0121】
・上記各実施形態は、操舵制御装置1の機能として実現することに限らず、例えば、エアバッグ装置の制御装置、ブレーキ装置の制御装置、無人搬送車や電気自動車における走行用駆動源となるモータの制御装置であってもよい。なお、上記の実現例としては、車両以外を搭載先とする装置の制御装置でもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…操舵制御装置
2…操舵装置
3…ステアリングホイール
5…転舵輪
70…操舵側制御部
80…転舵側制御部
100…主電源
120,120S,120T…補助電源装置
121…補助電源
126,127…ダイオード
128…補助電源用制御部
140,140S,140T…信号線
S,SS,ST…電源システム