(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ウイルスの処置
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20250220BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20250220BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20250220BHJP
C07K 14/195 20060101ALN20250220BHJP
C07K 14/315 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P31/14 ZNA
C12N15/56
C12N15/31
C07K14/195
C07K14/315
(21)【出願番号】P 2020545116
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 GB2019050546
(87)【国際公開番号】W WO2019166802
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-16
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520252745
【氏名又は名称】ニューマゲン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】コナリス ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ポッター ジェーン アレクサンドラ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502086(JP,A)
【文献】PNAS,2014年,Vol.111 ,No.17,pp.6401-6406
【文献】Virus Research,2014年,191,pp.138-142
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症の処置および/または予防に使用するための組成物であって、1つ以上のファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含むシアル酸結合分子を含む、前記組成物。
【請求項2】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症を中和または阻止することに使用するための組成物であって、1つ以上のファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含むシアル酸結合分子を含む、前記組成物。
【請求項3】
細胞を呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に対して非許容性にするインビトロ方法であって、シアル酸結合分子と細胞表面シアル酸/シアロ複合糖質の間の結合を可能にする条件下で、RSV感染に対して感受性または脆弱性である細胞をシアル酸結合分子と接触させるステップまたはインキュベーションするステップを含み、シアル酸結合分子が、1つ以上のファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含む、前記方法。
【請求項4】
粘膜投与用であり、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症の処置および/または予防に使用するための組成物であって、1つ以上のファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含むシアル酸結合分子を含む、前記組成物。
【請求項5】
RSV感染症の予防に予防的に使用するための組成物であって、1つ以上のファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含むシアル酸結合分子を含む、前記組成物。
【請求項6】
シアル酸結合分子がシアリダーゼ活性を示さない、請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
シアル酸結合分子が、ヘパリンともヘパリン硫酸とも結合しない、および/またはヘパリンもしくはヘパリン硫酸と結合するタンパク質のGAG結合ドメインを含まない、請求項1、2、および4~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
シアル酸結合分子が、Vibrio cholerae NanHシアリダーゼのシアル酸結合ドメインおよび/またはStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼのシアル酸結合ドメインを含む、請求項1、2、および4~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
Vibrio cholerae NanHシアリダーゼが、配列番号1または2のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Streptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼが、配列番号3または4のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
シアル酸結合分子が、
Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼのオリゴマー形成ドメインを含
み、前記シュードアミニダーゼが配列番号5のアミノ酸配列からなるか、又は前記オリゴマー形成ドメインが配列番号6のアミノ酸配列からなる、請求項1、2、および4~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
シアル酸結合分子が、Sp2CBM、Sp2CBMTD、Vc4CBM、Vc2CBMまたはVc2CBMTDである、請求項1、2、および4~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
シアル酸結合分子が、1つ以上の改変ファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含
み、
改変が、1つ以上のアミノ酸の変異を含む、請求項1、2、および4~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
1つ以上の改変CBM40が、参照配列に対して1つ以上の変異を含
み、
参照配列が、
(i)野生型ファミリー40CBM配列;
(ii)Vibrio choleraeの野生型CBM40配列;
(iii)Vibrio choleraeのNanHシアリダーゼ配列;
(iv)Streptococcus pneumoniaeの野生型CBM40配列;
(v)Streptococcus pneumoniaeのNanAシアリダーゼ配列;
(vi)配列番号1の配列;
(vii)配列番号2の配列;
(viii)配列番号3の配列;および
(ix)配列番号4の配列
からなる群から選択される、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
変異が、
(i)1つ以上のアミノ酸置換;
(ii)1つ以上のアミノ酸除去;
(iii)1つ以上のアミノ酸付加/挿入;
(iv)1つ以上のアミノ酸/配列反転;および
(v)1つ以上のアミノ酸/配列重複
からなる群から選択される、請求項
14に記載の組成物。
【請求項16】
シアル酸結合分子が、改変オリゴマー形成ドメインを含
み、
オリゴマー形成ドメインが、Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼのオリゴマー形成ドメインであり、前記シュードアミニダーゼが配列番号5のアミノ酸配列からなるか、又は前記オリゴマー形成ドメインが配列番号6のアミノ酸配列からなり、
改変が、1つ以上のアミノ酸の変異を含む、請求項
13~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
シアル酸結合分子が、以下の構造:
CBM1(V239A V246G A162P)--CBM2(V239A V246G A162P)--TD(S342D R403K)
を含み、
CBM1およびCBM2が
それぞれ、Streptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼの炭水化物結合モジュール(CBM)由来であり、
配列番号3に対して、それぞれV239A、V246GおよびA162Pの変異を含み、
TDが
Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼの三量体形成ドメイン由来であ
り、配列番号5に対して、S342DおよびR403Kの変異を含み、
--が、アミノ酸リンカーを示す、請求項1、2および4~
16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
シアル酸結合分子が、以下の配列:
GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARSSSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFATGYYRVRAWI
を含む、請求項1、2および4~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
シアル酸結合分子がシアリダーゼ活性を示さない、請求項3に記載の方法。
【請求項20】
シアル酸結合分子が、ヘパリンともヘパリン硫酸とも結合しない、および/またはヘパリンもしくはヘパリン硫酸と結合するタンパク質のGAG結合ドメインを含まない、請求項3または
19に記載の方法。
【請求項21】
シアル酸結合分子が、Vibrio cholerae NanHシアリダーゼのシアル酸結合ドメインおよび/またはStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼのシアル酸結合ドメインを含む、請求項3、
19および
20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
Vibrio cholerae NanHシアリダーゼが、配列番号1または2のアミノ酸配列を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
Streptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼが、配列番号3または4のアミノ酸配列を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項24】
シアル酸結合分子が、
Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼのオリゴマー形成ドメインを含
み、前記シュードアミニダーゼが配列番号5のアミノ酸配列からなるか、又は前記オリゴマー形成ドメインが配列番号6のアミノ酸配列からなる、請求項3、
19および
20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
シアル酸結合分子が、Sp2CBM、Sp2CBMTD、Vc4CBM、Vc2CBMまたはVc2CBMTDである、請求項3、および
19~
23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
シアル酸結合分子が、1つ以上の改変ファミリー40炭水化物結合モジュール(CBM40)を含
み、
改変が、1つ以上のアミノ酸の変異を含む、請求項3、および
19~
25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
1つ以上の改変CBM40が、参照配列に対して1つ以上の変異を含
み、
参照配列が、
(i)野生型ファミリー40CBM配列;
(ii)Vibrio choleraeの野生型CBM40配列;
(iii)Vibrio choleraeのNanHシアリダーゼ配列;
(iv)Streptococcus pneumoniaeの野生型CBM40配列;
(v)Streptococcus pneumoniaeのNanAシアリダーゼ配列;
(vi)配列番号1の配列;
(vii)配列番号2の配列;
(viii)配列番号3の配列;および
(ix)配列番号4の配列
からなる群から選択される、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
変異が、
(i)1つ以上のアミノ酸置換;
(ii)1つ以上のアミノ酸除去;
(iii)1つ以上のアミノ酸付加/挿入;
(iv)1つ以上のアミノ酸/配列反転;および
(v)1つ以上のアミノ酸/配列重複
からなる群から選択される、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
シアル酸結合分子が、改変オリゴマー形成ドメインを含
み、
オリゴマー形成ドメインが、Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼのオリゴマー形成ドメインであり、前記シュードアミニダーゼが配列番号5のアミノ酸配列からなるか、又は前記オリゴマー形成ドメインが配列番号6のアミノ酸配列からなり、
改変が、1つ以上のアミノ酸の変異を含む、請求項
27または28に記載の方法。
【請求項30】
シアル酸結合分子が、以下の構造:
CBM1(V239A V246G A162P)--CBM2(V239A V246G A162P)--TD(S342D R403K)
を含み、
CBM1およびCBM2が
それぞれ、Streptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼの炭水化物結合モジュール(CBM)由来であり、
配列番号3に対して、それぞれV239A、V246GおよびA162Pの変異を含み、
TDが
Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼの三量体形成ドメイン由来であ
り、配列番号5に対して、S342DおよびR403Kの変異を含み、
--が、アミノ酸リンカーを示す、請求項3および
19~
29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
シアル酸結合分子が、以下の配列:
GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARSSSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFATGYYRVRAWI
を含む、請求項3、および19~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症の処置および/または予防に使用するための組成物であって、以下の配列:
GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARSSSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFATGYYRVRAWI
を含むシアル酸結合分子を含む、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RSV感染症、その症状および関連する病態ならびに場合によっては、発病の過程においてシアル酸含有レセプターと結合しないか、または主としてそれと結合しないウイルス性病原体によって引き起こされるか、もしくはもたらされる感染症の処置または予防のための組成物、薬剤および方法に使用するための分子を提供する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、気道感染症を引き起こす合胞体ウイルスである。これは、ヒトおよび動物において疾患を引き起こし、下気道感染症の主原因であり、とりわけ、子供および高齢者にリスクがある。(ヒトRSV(HRSV)と呼ばれることの多い型を含む)RSVの感染は、防御免疫を誘導するが、研究により、応答は長期にはわたらず(または持続性ではなく)、複数回の感染の症例は珍しくないことが示されている。
他の多くの呼吸器病原体とは異なり、RSVは、細胞侵入および感染のためにシアロ複合糖質(sialoglycoconjugate)とは結合しない3。しかしながら、呼吸器上皮細胞表面複合糖質の末端グリカンとしてシアル酸が遍在し最も多数を占める性質のため、シアル酸結合分子をRSVなどの病原体に対する処置の基礎として活用することができれば有利であろう。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、(シアル酸含有糖タンパク質および細胞表面シアル酸レセプターを含む)細胞表面にあるシアル酸(特に、シアロ複合糖質)に対して親和性(またはそれと結合する能力)を有する分子が、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と関連づけられる症状、感染症、疾患および/または状態の処置および/または予防に有用性を見出したという発見に基づくものである。
本開示は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と関連づけられる症状、感染症、疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するためのシアル酸結合分子を提供する。
RSVと関連づけられる症状、感染症、疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するための薬剤の製造におけるシアル酸結合分子の使用がさらに提供される。
本開示はまた、RSVの症状、疾患、感染症または状態を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のシアル酸結合分子を投与するステップを含む、方法を提供する。
本開示はまた、RSV感染症と関連づけられる症状、疾患および/または状態を処置または予防する方法に使用するための、シアル酸結合分子ならびにシアル酸結合分子を含む薬剤および方法も提供する。
【0004】
本明細書全体をとおして、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」および/または「含む(comprises)」という用語は、特定の特徴を「含む」本発明の態様および実施形態を指すために使用される。当然のことながら、これらの用語は、関連する特徴「から本質的になる」または関連する特徴「からなる」態様および/または実施形態も包含する場合もある。
RSVは、リポタンパク質被膜および直鎖状のマイナスセンスRNAゲノムを含む中程度のサイズ(120~200nm)のエンベロープウイルスである。ゲノムは、F、G、およびSHリポタンパク質をコードする。F(融合)およびG(接着)リポタンパク質(または糖タンパク質)は、宿主細胞膜を標的とし、感染の最初の段階を制御する。これらもRSV分離株間で高度に保存されている。特に、Gタンパク質は、気道の繊毛細胞を標的とし、Fタンパク質は、ビリオン膜を標的細胞膜と融合させる。接着(G)および融合(F)糖タンパク質に対するモノクローナル抗体とのウイルスの反応性に基づいて、RSVは、2つの抗原サブグループ、AおよびBに分類される。本明細書中で使用される場合、「RSV」という用語は、RSVのすべての株、形態および抗原バリアントを含み、ヒト(H)または動物RSVのすべての形態、株およびバリアントを含む。
RSVは、発病の過程においてシアル酸と結合または関連しない病原体であるため、RSVは、宿主細胞のシアル酸(または細胞表面シアロ複合糖質)とは結合しない。したがって、シアル酸結合分子(例えば、CBM40分子(および下で定義されるその他のもの)など)が、発病の過程において細胞表面シアル酸(シアロ複合糖質)を利用しないウイルス性病原体(またはシアル酸との結合が、病原体が細胞と結合する、コロニー形成する、もしくは細胞に進入/感染する主要な手段ではない病原体)の処置に有用性があるという発見は、完全に予想外である。
【0005】
細胞表面シアル酸/シアロ複合糖質と病原体の結合を阻止することができる薬剤としてシアル酸結合分子が使用されてきた先行技術の開示に関して、シアル酸結合分子の有用性は、シアル酸結合分子および病原体の両方がシアル酸と結合するという事実が元であるが、これは、RSVには当てはまらない。RSVはシアル酸と結合しないため、シアル酸結合分子が細胞へのRSV侵入を阻止するために使用できるであろうことを当業者は認識しないであろう。
理論に縛られることを望まないが、細胞表面シアル酸/シアロ複合糖質と結合したとき、シアル酸結合分子が、Gおよび/またはF RSVタンパク質が宿主細胞上の標的に到達するのを妨げることが示唆される。これが、結果として、RSVがコロニー形成し、細胞に感染するのを妨げる。さらに、下で提示されるデータ(特に、実施例6で提示されるデータを参照)は、RSVウイルスの表面が、シアル酸で終わる糖タンパク質を含むことを示しているため、シアル酸結合分子が、これらの糖タンパク質と(シアル酸要素を介して)結合することができ、さらにRSVと宿主細胞の間の結合を阻害することが示唆される。
【0006】
シアル酸結合タンパク質が免疫系を刺激または調節するために使用可能であること、および刺激または調節された免疫応答が、(発病の過程においてシアル酸と結合しないか、または主としてシアル酸と結合しない病原体を含む)多くの異なる病原体の病態に影響を与えることもあることが確かめられてきた可能性もあるが、当業者は、依然としてシアル酸に対して親和性を有する分子(例えば、CBM40型分子などのCBM)がRSV感染を物理的に阻止する、妨げるまたは中和するために使用できるという発見には至っていないであろう。
しかしながら、シアル酸結合分子がRSV感染症を中和または阻止するために使用できるという結果は、RSV感染症を中和または阻止することに使用するためのシアル酸結合分子の提供にまで本開示を拡大する。そのような使用は、インビトロまたはインビボ方法に利用されてもよい。
本開示は、RSV感染症を中和または阻止するための薬剤の製造のためのシアル酸結合分子の使用をさらに提供する。
【0007】
本開示はまた、治療有効量のシアル酸結合分子を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、RSV感染症を中和または阻止する方法に関する。
あるいは、本開示は、細胞をRSVに対して非許容性にするために使用することができる方法を提供する(「非許容性」という用語は、ウイルスの接着もしくはコロニー形成および/またはそれに続く感染およびウイルス複製に抵抗する細胞を意味する)。そのような方法(インビトロまたはインビボにおける方法であってもよい)は、RSV感染に対して感受性または脆弱性である細胞を、本明細書に記載されているシアル酸結合分子と接触させるステップまたはインキュベーションするステップを含んでもよい。接触させるステップまたはインキュベーションするステップは、RSVと接触させる前に、細胞をシアル酸結合分子と接触させるステップまたはインキュベーションするステップを含んでもよい。さらにまたは代替的に、細胞をシアル酸結合分子と接触させるステップまたはインキュベーションするステップは、細胞がRSVと接触しているのと同時に、シアル酸結合分子が細胞と接触しているよう延長されてもよい。
理論に縛られることを望まないが、インキュベーションの期間中、シアル酸含有細胞表面レセプターにシアル酸結合分子が結合することになり、RSV自体は細胞表面のシアル酸部分(シアロ複合糖質)とは結合しないが、驚くべきことに、シアル酸結合分子と細胞表面シアル酸含有レセプター/シアロ複合糖質の間の結合がRSVの細胞との結合を阻害するか、または妨げることがわかった。これは、ひいては、RSVの細胞感染および細胞内RSV複製を妨げる。
【0008】
本開示において報告されている発見は、シアル酸との結合親和性を有する分子の製剤化および投与ならびに続くRSV感染症の処置および/または予防におけるこれらの製剤の使用に重大な関係がある。例えば、シアル酸結合分子(例えば、CBMおよび/またはCBM40型分子)が、RSV感染を予防する(または中和する)ために使用できるという発見は、粘膜投与に適した製剤としてのシアル酸結合分子の使用を可能にする。
粘膜投与用のシアル酸結合分子含有製剤は、
(i)宿主細胞とのRSVの結合を妨げる;および/または
(ii)RSVを阻止もしくは中和する
ために使用されてもよい。
明記したとおり、「阻止する」または「中和する」という用語は、宿主細胞のシアル酸含有レセプター/シアロ複合糖質と結合し、(驚くべきことに)RSVの細胞との結合(およびそれに続く感染)を阻止することがわかったシアル酸結合分子の阻止または中和効果を指す。
したがって、本開示は、RSVと関連づけられる疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するためのシアル酸結合分子を含む、粘膜投与用の組成物を提供する。
【0009】
「粘膜投与」という用語は、例えば、呼吸器表面および同種のものを含む、任意の粘膜表面へ投与するために製剤化された組成物を含むことに留意すべきである。この用語は、吸入によって投与するために製剤化された組成物も含む。粘膜投与に適した(または粘膜投与用に製剤化された)組成物は、鼻腔内に投与されることが意図される組成物を含んでもよい。
したがって、粘膜投与用の組成物は、任意のタイプの粘膜投与に使用するのに適した賦形剤、希釈剤および/またはバッファーとともに製剤化されてもよい。
粘膜(例えば、鼻腔内)投与用の組成物は、投与されるシアル酸結合分子の溶液および/またはエアロゾル分散用もしくは飲用水に分散させるための(同じものを含む)粒子を含んでもよい。分散させられる場合、そのような組成物は、望ましくは、例えば、鼻腔への保持を可能にするために範囲10~200μmの粒径を有するべきであり、これは、必要に応じて、適した粒度の粉末の使用または適切なバルブの選択によって達成することができる。その他の適した組成物としては、鼻に近づけた容器から鼻孔を通して急速に吸入することによる投与のための範囲20~500μmの粒径を有する粗粉末、および水性もしくは油性溶液または懸濁液中に0.2~5%w/vの活性化合物を含む点鼻薬が挙げられる。粘膜投与用の組成物は、液体スプレーの形態で提供されてもよい。
【0010】
一実施形態において、本開示は、免疫応答の刺激または調節によるRSVの処置および/または予防に関連していなくてもよい。
本開示は、予防的に使用するためのシアル酸結合分子をさらに提供してもよい。特に、本明細書に記載されているシアル酸分子は、RSV感染症を予防するために予防的に使用されてもよい。
予防の方法またはRSV感染症を予防する方法は、それを必要とする対象に本開示の組成物を投与するステップを含んでもよい。明記したとおり、本開示の組成物は、粘膜(例えば、鼻腔内)投与用に製剤化された組成物を含んでもよい。
本明細書中で使用される場合およびRSV感染症を予防する任意の方法において、「それを必要とする対象」は、RSV感染症にかかりやすい、感染しやすい、または発症するリスクがある任意の対象であってもよい。対象は、新生児、乳児または小児である場合もある。対象は、高齢者である場合もある。対象は、免疫不全の対象である場合もある。対象は、1つ以上の基礎にあるまたは慢性の健康問題、特に、気道および/または呼吸に影響を及ぼす問題を有する場合もある。例えば、対象は、喘息を患っている場合もある。
【0011】
本明細書全体をとおして、本発明者らは、「シアル酸結合分子」という用語を使用し、この用語は、あらゆる有用なシアル酸結合分子を包含する。有用なシアル酸結合分子は、いかなる形態をとってもよく、および/または分子もしくは化合物のいかなるクラスに属してもよく(例えば、それらは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗体および同種のものであってもよい)、「シアル酸」という用語は、N-、またはO-置換ノイラミン酸のすべての形態を包含し、そのすべての合成、天然および/または改変型を含む。シアル酸は、細胞表面分子、糖タンパク質および糖脂質の構成成分として見られる場合もある。ほとんどの場合、シアル酸は、細胞膜に接続した糖鎖および/またはタンパク質の終端(末端領域)に存在する。例えば、ヒト上気道の一部の細胞は、α-2,6-結合シアル酸レセプターを含み、上気道および下気道の他の細胞は、α-2,3-結合シアル酸レセプターを含む。シアル酸ファミリーは、C4、C5、C7、C8およびC9におけるアセチル化、グリコリル化(glycolylation)、ラクトン化およびメチル化の結果として生じることもある多数(およそ50)の誘導体を包含する。すべてのそのような誘導体は、「シアル酸」という用語に包含されることになる。
【0012】
さらに、シアル酸は、GalおよびGalNAcとのα(2,3)またはα(2,6)あるいは別のシアル酸とのα(2,8)またはα(2,9)結合が見られる。したがって、「シアル酸」という用語は本明細書全体をとおして使用されるが、これが、すべてのその誘導体、類似体またはバリアント(天然に存在するか、または合成的に形成されたかのいずれか)ならびに同じものを含む単量体、二量体、三量体、オリゴマー、重合体またはコンカテマーを包含することを理解することが重要である。
したがって、本開示のシアル酸結合分子(および本明細書に記載されるとおりに使用するための)は、上記のシアル酸のすべての形態および(おそらく、細胞表面レセプターの一部として)細胞、例えば、哺乳動物細胞の表面に存在するあらゆる形態のシアル酸を含む、シアル酸に対して親和性を示す部分を含む。これらのシアル酸のさまざまな形態は、まとめて「シアル酸部分」と呼ばれる場合もある。
本開示のシアル酸結合分子は、シアル酸に対して親和性を示すため、それらは、1つ以上のシアル酸部分と結合する/連結する、および/または関連づけられる場合もある。したがって、「シアル酸結合分子」という用語は、シアル酸部分と結合するか、そうでなければ、連結する、もしくは関連づけられる能力を保持するシアル酸結合分子全体の任意のフラグメントをさらに包含してもよい。
【0013】
使用するためのシアル酸結合分子は、単一のシアル酸結合分子(例えば、単量体または一価の分子)、あるいは、2つ以上のシアル酸結合分子、例えば、高分子または多価の分子を含んでもよく、この2つ以上の分子は、同じであっても、または異なってもよい。
使用するためのシアル酸結合分子は、「炭水化物結合モジュール」(CBM)として知られている1つ以上のシアル酸結合分子を含んでも、それらから本質的になっても、またはそれらからなってもよい。使用するのに適したCBMは、シアル酸に対して親和性を示す。CBMは、複数のファミリーに分類され、ファミリー40CBM(CBM40)のメンバーと分類されるCBMが有用な場合もある。ファミリー40CBMは、およそ200残基の分子を含み、GH33シアリダーゼのN末端に見られることが多い。それらがGH33シアリダーゼのβ-プロペラに挿入されているのが見つかる場合もある。
本開示は、シアル酸結合要素を含む分子、例えば、より大きな分子の使用を含む場合もある。明記したとおり、そのシアル酸結合要素(すなわち、シアル酸結合分子)自体は、CBM、例えば、CBM40を含んでもよい(それからなるか、またはそれから本質的になってもよい)。(非限定)例として、本開示の分子(例えば、シアル酸結合分子)は、シアル酸と結合する能力を示すことができるだけでなく、1つ以上の他の機能を有してもよい。例えば、本分子は、酵素活性を有してもよい。例えば、有用な分子は、(本明細書に記載される)CBMを含み、いくらかのシアリダーゼ活性を示してもよい。
【0014】
有用なシアル酸結合分子は、酵素部分およびシアル酸結合部分を含む融合タンパク質であってもよく、この場合、シアル酸結合部分は、本明細書に記載されるCBMを含む。そのような場合には、酵素部分は、シアル酸結合部分と融合されてもよい。明記したとおり、任意の有用な融合タンパク質の酵素部分は、シアリダーゼ活性を含んでもよい(もしくはそれを有するか、またはそれを示してもよい)。
一実施形態において、本明細書に記載されているさまざまな使用のためのシアル酸結合タンパク質またはCBMは、酵素(例えば、シアリダーゼ)活性を有する分子(例えば、融合タンパク質)の一部として提供されなくても、またはそれに含まれなくてもよい。さらにまたは代替的に、シアル酸結合分子は、(i)ヘパリンともヘパリン硫酸(heparin sulfate)とも結合しなくてもよく、および/または(ii)ヘパリンもしくはヘパリン硫酸部分と結合するタンパク質のGAG結合ドメインを含まなくてもよい。
したがって、本開示は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と関連づけられる疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するためのCBMまたはCBM40を提供する。
【0015】
RSVと関連づけられる疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するための薬剤の製造におけるCBMまたはCBM40の使用がさらに提供される。
本開示はまた、RSV感染症を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のCBMまたはCBM40を投与するステップを含む、方法を提供する。
本開示はまた、RSV感染症と関連づけられる疾患および/または状態を処置または予防する方法に使用するためのCBMまたはCBM40を含むシアル酸結合分子および薬剤および方法を提供する。
本開示はまた、RSV感染症を中和または阻止することに使用するための、CBMまたはCBM40を提供する。
本開示は、RSV感染症を中和または阻止するための薬剤の製造のためのCBMおよび/またはCBM40の使用をさらに提供する。
本開示は、治療有効量のCBMおよび/またはCBM40を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、RSV感染症を中和または阻止する方法に関する。
【0016】
あるいは、本開示は、細胞をRSVに対して非許容性にするために使用することができる方法を提供する(「非許容性」という用語は、ウイルスの接着もしくはコロニー形成および/またはそれに続く感染およびウイルス複製に抵抗する細胞を意味する)。そのような方法(インビトロまたはインビボ方法であってもよい)は、RSV感染に対して感受性または脆弱性である細胞を、本開示のCBMおよび/またはCBM40と接触させるステップまたはインキュベーションするステップを含んでもよい。
粘膜投与用のCBMおよび/またはCBM40含有製剤は、
(i)宿主細胞とのRSVの結合を妨げる;および/または
(ii)RSVを阻止もしくは中和する
ために使用されてもよい。
本開示は、RSVと関連づけられる疾患および/または状態の処置および/または予防に使用するためのCBMおよび/またはCBM40を含む、粘膜投与用の組成物を提供する。明記したとおり、粘膜投与用の組成物は、任意のタイプの粘膜投与に使用するのに適した賦形剤、希釈剤および/またはバッファーとともに製剤化されてもよい。
本開示は、予防的に使用するためのCBMまたはCBM40をさらに提供することができる。特に、本明細書に記載されているCBMまたはCBM40は、RSV感染症を予防するために予防的に使用されてもよい。
【0017】
明記したとおり、本開示の組成物は、粘膜(例えば、鼻腔内)投与用に製剤化された組成物を含んでもよい。
使用するための例となる炭水化物結合モジュール(CBM)は、Vibrio cholerae NanHシアリダーゼのシアル酸結合ドメイン(VcCBM:CBM40)および/またはStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼの対応する(または一致する)ドメイン(SpCBM:またCBM40)を含んでもよい。当然、その他の微生物に存在する類似または一致するシアル酸結合モジュールも、「CBM」という用語の範囲内に包含されることになる。
【0018】
例となるVibrio cholerae NanHシアリダーゼアミノ酸配列は、受託番号(umber)A5F7A4として寄託され、配列番号1(781アミノ酸)として下で再現されている。
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配列番号1のCBM領域は、アミノ酸残基25~216であり、この配列は、配列番号2であってもよい。
【0019】
例となるStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼアミノ酸配列は、受託番号P62575として寄託され、配列番号3(1035アミノ酸)として下で再現されている。
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配列番号3のCBM領域は、アミノ酸残基121~305であり、この配列は、配列番号4であってもよい。
【0020】
したがって、本開示のさまざまな態様および実施形態においてシアル酸結合分子として使用するためのCBMは、配列番号1、2、3もしくは4の配列を有するタンパク質もしくはペプチドまたはそれ由来の配列フラグメントを含んでもよく、これは、シアル酸と結合する能力を有する分子をコード化する(言い換えると、配列番号1、2、3または4のフラグメントのシアル酸結合分子コード化部分)。
有用なシアル酸結合分子は、(配列番号1によって示される)V.choleraeの(シアリダーゼをコードする)nanH遺伝子または別の生物に存在する対応するもしくは一致する遺伝子(例えば、S.pneumoniaeの対応する/一致するnanAシアリダーゼ遺伝子:配列番号3を参照)のシアル酸結合ドメインによってコードされるタンパク質部分を含んでもよい。
使用するためのシアル酸結合分子は、配列番号1および2のV.choleraeシアリダーゼ分子のおよそ残基1、5、10、15、25または30(すなわち、1~30またはその間の任意のアミノ酸残基)からおよそ残基150、175、200、210、216、220~781(その間の任意の残基を含む、150~781までの任意の残基まで)を含んでもよい。例えば、使用するためのシアル酸結合分子は、上の配列番号1の残基25~およそ残基216と対応する配列を有するペプチドを含んでもよい。
【0021】
さらなる適したシアル酸結合分子は、配列番号3または4の配列を有するタンパク質もしくはペプチドまたはそのシアル酸結合フラグメントを含んでもよい。例えば、有用なシアル酸結合分子は、(シアリダーゼをコードする)Streptococcus pneumoniae nanA遺伝子のシアル酸結合ドメインによってコードされるタンパク質部分を含んでもよい。例えば、使用するためのシアル酸結合分子は、配列番号3および4のS.pneumoniaeシアリダーゼ分子のおよそ残基80、90、100、110、120、121~130(すなわち、その間の任意の残基を含む、およそ残基80~130の任意の残基)からおよそ残基250、275、300、305、310、320~1035まで(すなわち、およそその間の任意の残基を含む、およそ250~1035の任意の残基まで)を含んでもよい。例えば、使用するためのシアル酸結合分子は、上の配列番号3の残基121~およそ残基305と対応する配列を有するペプチドを含んでもよい。
【0022】
使用するためのシアル酸結合分子は、1つ以上のCBMを含んでもよい。例えば、適したシアル酸結合分子は、単一のCBM、例えば、単一のVcCBMまたは単一のSpCBMを含んでもよい。あるいは、使用するためのシアル酸結合分子は、多数または複数(すなわち2つ以上)のCBMを含んでもよい。多数のCBMを含むシアル酸結合分子は、「多価シアル酸結合分子」または「多価CBM」と呼ばれる場合もある。多価CBMは、例えば、2つ以上(例えば、3、4、5もしくは6つ)のVcCBMまたは2つ以上のSpCBMを含んでもよい。多価CBMは、異なるCBM、例えば、1つ以上のVcCBMと1つ以上のSpCBMの混合物を含んでもよい。
使用のためのシアル酸結合分子は、オリゴマー形成ドメインをさらに含んでもよい。適したオリゴマー形成ドメインは、自己会合して、多量体構造、例えば、三量体を形成する能力を示してもよい。使用するためのオリゴマー形成ドメインは、上記のオリゴマー形成特性を有する任意の分子または任意のその機能的フラグメントを含んでもよい。例えば、1つ以上(例えば、2つ)のシアル酸結合分子(例えば、CBM)は、オリゴマー形成ドメインと結合、連結または融合されてもよく、得られるシアル酸結合分子::オリゴマー形成ドメイン「融合物」は、その後、(1つ以上の他のそのような「融合物」とともに)細胞成長および/または活性を調節するため、および/または本明細書中で開示されている任意の疾患および/または状態を処置もしくは予防するための分子として使用されてもよい。
【0023】
適したオリゴマー形成ドメインは、例えば、Pseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼ由来であってもよい。例となるPseudomonas aeruginosaシュードアミニダーゼ配列のアミノ酸配列は、受託番号PAO579として寄託され、配列番号5(438アミノ酸)として下で再現されている。
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配列番号5のオリゴマー形成ドメインは、アミノ酸残基333~438であり、この配列は、配列番号6であってもよい。
【0024】
したがって、使用するためのオリゴマー形成ドメインは、配列番号5によって示されるP.aeruginosaシュードアミニダーゼ三量体形成ドメイン(PaTD)のおよそ残基250、275、300、310、320、333、340~350(すなわち、およそその間の任意の残基を含む、およそ残基250~およそ残基350)からおよそ残基400、410、420、430または438(すなわち、およそその間の任意の残基までを含む、およそ残基400残基438のおよそ任意の残基まで)を含んでもよい。例えば、有用なシアル酸結合分子は、配列番号6の残基333~438を含むオリゴマー形成ドメインを利用してもよい。
使用するためのシアル酸結合分子は、
図1に示される1つ以上のCBMベースの分子を含んでもよい。例えば、適したシアル酸結合分子は、任意にオリゴマー形成ドメイン(PaTDまたはそのオリゴマー形成フラグメントなど)と融合された、結びつけられた、または結合された2つ以上のVcCBMを含んでもよい(それから本質的になっても、またはそれからなってもよい)。シアル酸結合分子は、2つの融合した(または結びつけられた)VcCBMを含んでも、それからなっても、またはそれから本質的になってもよく、これは、さらに、オリゴマー形成ドメインと融合される(例えば、
図1に示される分子Vc2CBMTDを参照)。
【0025】
使用するためのその他のシアル酸結合ドメインは、任意にオリゴマー形成ドメイン(PaTDまたはそのオリゴマー形成フラグメントなど)と融合された、結びつけられた、または結合された2つ以上のSpCBMを含んでもよい。使用するためのシアル酸結合分子は、2つの融合した(または結びつけられた)SpCBMを含んでも、それからなっても、またはそれから本質的になってもよく、これは、さらに、オリゴマー形成ドメインと融合される(例えば、
図1に示される分子Sp2CBMTDを参照)。
「シアル酸結合分子」、「CBM」および/または「CBM40」という用語は、本明細書に記載されている任意の分子の改変型を含んでもよい。さらに、「改変された」という用語は、参照配列に対して1つ以上の変異を含む分子を包含する。
「参照配列」は、任意の野生型CBM配列であってもよい。例えば、参照配列は、野生型ファミリー40CBM配列、例えば、Vibrio cholerae NanHシアリダーゼまたはStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼの野生型CBM配列を含んでも、それから本質的になっても、またはそれからなってもよい(その他の微生物に存在する類似または一致するCBM(CBM40を含む)が「CBM」および/またはCBM参照配列という用語の範囲内に包含されることが認識されるべきである)。(本明細書に記載されるとおりの有用な多価CBMを包含する)有用なシアル酸結合分子が由来してもよい参照配列は、本明細書に記載されている特定の配列(例えば、配列番号1、2、3、4および5)のいずれかを含んでもよい。
【0026】
例えば、使用するための改変CBM配列は、一定のまたは特定の野生型CBM由来であってもよい。有用な改変CBM配列は、1つ以上の変異を含む野生型CBM配列を含んでもよい。
1つ以上の変異は、機能的であってもよい。変異は、例えば、使用するためのCBMの一次配列全体を変える場合もあるが、CBMの特性を(実質的に)変えない場合もあり、したがって、改変CBMの配列は、由来する野生型配列と異なる場合もあるが、改変CBMの全体的な機能は野生型CBMのものと(実質的に)一致する。あるいは、1つ以上の変異は、個々に(および/または独立して)あるいはまとめて(例えば、相乗的に)野生型CBM(例えば、改変CBMが由来する野生型CBM)の生理的、生物学的、免疫学的および/または薬理学的特性の1つ以上を調節しても(向上させても、または抑制/阻害しても)よい。特に、1つ以上の変異は、以下であってもよい。
(i)CBMの免疫原性(もしくは抗原性)を変えてもよく;および/または
(ii)(CBMもしくは改変CBMを含む任意の多量体分子の)効力を変えてもよく(例えば、向上させてもよく)および/または
(iii)それらは、CBMの熱安定性を調節してもよい(例えば、向上させてもよい);および/または
(iv)それらは、CBMの溶解性を調節してもよい(例えば、向上させてもよい);および/または
(v)それらは、分子の生体内半減期を調節してもよい(例えば、向上させてもよい)
【0027】
「変異」は、野生型CBM分子に対するいかなる変更を含んでもよい。例えば、「変異」という用語は、例えば、以下を含んでもよい。
(i)1つ以上のアミノ酸置換(ここでは、1つ以上の野生型アミノ酸が別の(異なる)アミノ酸で置き換えられるか、または変えられ、「置換」という用語は、保存的アミノ酸置換を含むであろう);および/または
(ii)1つ以上のアミノ酸除去(ここでは、1つ以上の野生型アミノ酸残基が除去される);および/または
(iii)1つ以上のアミノ酸付加/挿入(ここでは、追加のアミノ酸残基が野生型(もしくは参照)一次配列に付加される);および/または
(iv)1つ以上のアミノ酸/配列反転(通常、ここでは、一次配列中の2つ以上連続的なアミノ酸が反転される;および/または
(v)1つ以上のアミノ酸/配列重複(ここでは、一次アミノ酸配列のアミノ酸もしくはその一部(例えば、一続きの5~10アミノ酸)が繰り返される)
【0028】
したがって、有用な改変CBM(すなわち、本明細書に記載の医学的使用および方法に使用するためのCBM)は、本明細書に記載されている1つ以上の変異を含んでもよい。
非限定例として、以下は、本明細書に記載されているさまざまな実施形態に使用するための(例えば、RSV感染症などを処置または予防する方法に使用するため)六量体シアル酸結合分子を作製するために使用されてもよい(「HEX」単位と呼ばれる)個々の単位を表す。それぞれの場合において、HEX単位は、2つの改変CBM(CBM1およびCBM2と示される)を含み、それぞれのCBMに導入された特定の変異は括弧内に特定されている。「----」記号は、(一方のCBMを別のCBMと、またはCBMをオリゴマー形成ドメインと連結する)アミノ酸リンカーを示すことに留意すべきである。したがって、六量体シアル酸結合分子は、いくつか(例えば、3つ)のHEX単位から構成されてもよい。それぞれの場合において、(「TD」と示される)オリゴマー形成ドメインは、その単位を合わせて三量体として結合する。任意の所与の六量体は、上に、(および下に見出しHEX1、HEX2、HEX3、HEX4、HEX5、HEX6およびHEX17として)記載されている単位の同一のコピーを含んでもよいが、当業者は、さらなる選択肢が利用可能であることを理解するであろう。例えば、HEX単位は、それぞれが異なる変異(本明細書において詳述されている選択肢から選択される1つ以上である変異)を有する2つのCBMから構成されてもよい。
【0029】
(i) HEX1
CBM1 (L170T V239A V246G I286A Y292E)-----CBM2 (L170T V239A V246G I286A Y292E)-----TD (S342D L348D R403K)
(ii) HEX2
CBM1 (V239A V246G I286A Y292E)----CBM2 (V239A V246G I286A Y292E)----TD (S342D R403K)
(iii) HEX3
CBM1 (V239A V246G I286A)-----CBM2 (V239A V246G I286A)-----TD (S342D R403K)
(iv) HEX4
CBM1 (V239A V246G)-----CBM2 (V239A V246G)-----TD (S342D)
(v) HEX5
CBM1 (V239A V246G)-----CBM2 (V239A V246G)-----TD (R403K)
(vi) HEX6
CBM1 (V239A V246G)-----CBM2 (V239A V246G)-----TD (S342D R403K)
(vii) HEX17
CBM1 (V239A V246G A162P)-----CBM2 (V239A V246G A162P)-----TD (S342D R403K)
【0030】
なお、HEX6およびHEX17は、追加のA162P変異を除いて一致する。このプロリン変異(残基162にある野生型アラニンの置換)は、熱安定性を向上させることが示された(単一のCBM Tmが3~4℃だけ)。プロリン変異の使用に関するさらなる情報は、一般的なアプローチを記載しているFu 2009, ’Increasing protein stability by improving beta-turns’(DOI 10.1002/prot.22509)から導き出すことができる。プロリン変異は、CBM分子の予測される免疫原性に影響を及ぼさず(増加または低下させず)、他の変異、NもしくはC末端またはリガンド結合部位の近くに位置しない。むしろ予想外にも、熱安定性の中程度の向上を超えて、A162P変異が、インビボ実験において、特に、3×Hex6単位を含む六量体分子を使用して行われたそうした同じ実験と比較して著しい向上を示す六量体CBM(すなわち、3×HEX17単位を含む分子)をもたらすことが確認された。例えば、改変分子(特に、3×HEX17単位を含む分子)は、例えば、IL-8を含む、炎症促進サイトカインに対する調節を示す。実際に、3×HEX17単位を含む分子によるIL-8の産生に対する調節効果(特に、阻害効果)は、他の試験された改変分子を超えて向上した。
【0031】
Sp2CBMTD(別名「SpOrig」)アミノ酸配列と比較した、HEX6およびHEX17分子のアミノ酸配列は以下である。
SpOrig GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
HEX6 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSAT
Hex17 GAMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAFYNLFSVSSAT
SpOrig KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
HEX6 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
Hex17 KKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKG
SpOrig RVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
HEX6 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
Hex17 RARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALT
SpOrig PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
HEX6 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAF
Hex17 PEEVQKRSGGGSGVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDPKAPAF
SpOrig YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
HEX6 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
Hex17 YNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTV
SpOrig EKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
HEX6 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
Hex17 EKPTAELPKGRARLYVNGGLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIR
SpOrig NLTVYNRALTPEEVQKRSGGALGVPDFESDWFSVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
HEX6 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
Hex17 NLTVYNRALTPEEVQKRSGGSLGVPDFESDWFDVSSNSLYTLSHGLQRSPRRVVVEFARS
SpOrig SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIRLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
HEX6 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
Hex17 SSPSTWNIVMPSYFNDGGHKGSGAQVEVGSLNIKLGTGAAVWGTGYFGGIDNSATTRFAT
SpOrig GYYRVRAWI
HEX6 GYYRVRAWI
Hex17 GYYRVRAWI
【0032】
したがって、本開示のさまざまな態様および実施形態(使用、使用するためのシアル酸結合分子、方法および薬剤)は、
(i)1つ以上のVcCBM;
(ii)1つ以上のSpCBM;
(iii)1つ以上の改変CBM;
(iv)HEX17分子;および
(iii)多価CBM
からなる群から選択されるシアル酸結合分子を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になるシアル酸結合分子を利用してもよい。
【0033】
したがって、本開示は、RSV感染症の処置および/または予防に使用するための
Sp2CBM;
HEX17;
Vc2CBM;および/または
Vc4CBM;
を提供する。
RSV感染症の処置および/または予防に使用するための薬剤の製造におけるVc2CBMまたはVc4CBMの使用がさらに提供される。
本開示はまた、RSV感染症の処置および/または予防に使用するための薬剤の製造におけるHEX17の使用も提供する。
【0034】
本開示はまた、RSVを処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の
HEX17;
Sp2CBM;
Vc2CBM;および/または
Vc4CBM
を投与するステップを含む、方法に関する。
誤解を避けるために、HEX17は、上記のとおりの多価改変CBMである。Vc2CBMは、合わせて連結されたか、結びつけられたか、または結合された2つのVibrio cholerae NanHシアリダーゼCBM単位を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。例となるVc2CBM配列は、以下を含んでも、それから本質的になっても、またはそれからなってもよい。
GAMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGDALNGSMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGD
【0035】
Vc4CBMは、合わせて連結されたか、結びつけられたか、または結合された4つのVibrio cholerae NanHシアリダーゼCBM単位を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。例となるVc4CBM配列は、以下の配列を含んでも、それから本質的になっても、またはそれからなってもよい。
GAMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGDALNGSMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGDLQALGMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGDGGNSGMALFDYNATGDTEFDSPAKQGWMQDNTNNGSGVLTNADGMPAWLVQGIGGRAQWTYSLSTNQHAQASSFGWRMTTEMKVLSGGMITNYYANGTQRVLPIISLDSSGNLVVEFEGQTGRTVLATGTAATEYHKFELVFLPGSNPSASFYFDGKLIRDNIQPTASKQNMIVWGNGSSNTDGVAAYRDIKFEIQGD
【0036】
Sp2CBMは、合わせて連結されたか、結びつけられたか、または結合された2つのStreptococcus pneumoniae NanAシアリダーゼ単位を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。例となるSp2CBM配列は、2コピーの以下の配列を含んでも、それから本質的になっても、またはそれからなってもよい。
GSMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRS
2コピーの上記の配列は、本明細書に記載されているペプチドリンカー配列のいずれか1つを介して連結されてもよい。例えば、Sp2CBM配列は、以下を含んでも、それから本質的になっても、またはそれからなってもよい。
GSMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRS[xxxxx][xxxxxxxxxx][xxxxxxxxxxxxxxx]GSMVIEKEDVETNASNGQRVDLSSELDKLKKLENATVHMEFKPDAKAPAFYNLFSVSSATKKDEYFTMAVYNNTATLEGRGSDGKQFYNNYNDAPLKVKPGQWNSVTFTVEKPTAELPKGRVRLYVNGVLSRTSLRSGNFIKDMPDVTHVQIGATKRANNTVWGSNLQIRNLTVYNRALTPEEVQKRS
ここで、[xxxxx]、[xxxxxxxxxx]および[xxxxxxxxxxxxxxx]は、下で概略を述べるとおりのリンカーペプチド配列の選択肢を表す。両CBM配列は、本明細書に記載されている5、10または15アミノ酸リンカー配列の1つによって連結されるであろう。
【0037】
Vc2CBMおよびVc4CBMは、V.choleraeのシアリダーゼをコードするnanH遺伝子のファミリー40シアル酸結合ドメイン(CBM)に基づくタンデムリピート多価タンパク質として示される場合もある。Sp2CBMは、S.pneumoniaeのシアリダーゼをコードするnanA遺伝子のファミリー40シアル酸結合ドメイン(CBM)に基づくタンデムリピート多価タンパク質として示される場合もある。
(本明細書に記載の使用および方法のための)本開示の分子は、PCRベースのクローニング技術を使用して形成されてもよく、このタイプの多価分子の形成に適した方法は、例えば、Connaris et al, 2009 (Enhancing the Receptor Affinity of the Sialic Acid-Binding Domain of Vibrio cholerae Sialidase through Multivalency; J. Biol. Chem; Vol.284(11); pp 7339-7351)に記載されている。例えば、HEX17、Vc2CBM、Vc4CBMおよびSp2CBMのようなものを含む多価CBM分子は、アミノ酸/ペプチドリンカーによって連結された複数のCBMを含むコンストラクトとして作製されてもよい。それぞれのCBM(例えば、VcCBM)は、例えば、5、10または15アミノ酸を含むペプチドによって別のものと連結されてもよい。例として任意の1つ以上の以下のペプチドが、2つ以上のCBMを連結するために使用されて、多価CBMが生成されてもよい。
(i)5アミノ酸リンカー: ALXGS
LQALG
GGXSG
GGALG
GGGGS
(ii)10アミノ酸リンカー: ALXGSGGGSG
LQALGGGGSL
(iii)15アミノ酸リンカー:ALXGSGGGSGGGGSG
ここで、「X」は、任意のアミノ酸である。
【0038】
例となるVc4CBMは、以下の形態をとってもよい。
【化1】
【0039】
この概略図は、以降、一般式1と呼ぶこととする。
したがって、Vc4CBM分子は、上記の一般式1と一致してもよく、この場合、ペプチドリンカーA、Bおよび/またはCは、上で(i)、(ii)および/または(iii)として提示されたリンカーの選択肢から選択される。「VcCBM40」という用語は、Vibrio cholerae(NanHシアリダーゼ)由来の完全なファミリー40CBMだけでなく、それ由来のシアル酸結合フラグメントも含むことに留意すべきである。実際に、一般式1で示されるVcCBM単位のそれぞれは、
(i)Vibrio cholerae NanHシアリダーゼCBM;および
(ii)そのVibrio cholerae NanHシアリダーゼCBMシアル酸結合フラグメント
からなる群から選択されてもよい。
【0040】
したがって、一般式1で示される分子のVcCBM単位のそれぞれは、同じであっても、または異なってもよい。
さらに、本明細書に記載されているさまざまな使用、方法および薬剤が本明細書に記載されている1つ以上のシアル酸結合分子を利用してもよいことに留意すべきである。例えば、2つ以上の異なるシアル酸結合分子は、対象に、一緒、同時または別々に投与されてもよい。
本開示は、本明細書に記載のさまざまな使用、薬剤および方法に使用するための組成物を提供することができる。したがって、本明細書に記載されている任意のシアル酸結合分子が、使用のために製剤化されてもよい。例えば、シアル酸結合分子は、治療用または医薬組成物として製剤化されてもよい。さまざまな組成物は、本明細書に記載されている1つ以上のシアル酸結合分子を含んでもよく、任意の所与の処置は、これらの組成物の1つ以上の投与(一緒、同時または別々)が必要とされる場合もある。
【0041】
本発明による医薬組成物、特に粘膜または鼻腔内投与用のそれらの製剤は、医薬品に通例使用される物質を含み、例えば、Remington’s The Sciences and Practice of Pharmacy, 22nd Edition (Pharmaceutical Press 2012)および/またはHandbook of Pharmaceutical Excipients, 7th edition (compiled by Rowe et al, Pharmaceutical Press, 2012)に記載されているとおりに従来どおり調製されてもよく、これらの文献および参考文献のすべての内容全体を参照により組み込んだものとする。
【0042】
任意の適切な量のシアル酸結合分子(例えば、CBM40を含む、本明細書に記載されている任意のCBMタイプの分子)が使用されてもよい。例えば、シアル酸結合分子を含む組成物(例えば、Sp2CBMまたはVc2CBMTDなどのCBM)が静脈内投与されるか、または粘膜(例えば、鼻腔内)投与されるかのいずれにせよ、シアル酸結合分子の用量は、約0.1μg~約1000μgの間のいずれかで含んでもよい。例えば、約(例えば、+/-0.5μg)0.1μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、20μg、30μg、40μg、50μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μgまたは950μgのシアル酸結合分子の用量が使用されてもよい。これらの量は、任意の適した体積の賦形剤、希釈剤またはバッファー中において提供されてもよい。例えば、シアル酸結合分子の量は、約1μl~約5mlの間のいずれかで賦形剤、希釈剤またはバッファー中において提供されてもよい。例えば、シアル酸結合分子の必要とされる量は、約5μl、10μl、15μl、20μl、25μl、30μl、35μl、40μl、45μl、50μl、55μl、60μl、65μl、70μl、75μl、80μl、85μl、90μl、95μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1ml、2ml、3mlまたは4mlと組み合わされてもよい(または製剤化されてもよい)。1ml(賦形剤、希釈剤またはバッファー)当たり0.1~1mg(シアル酸結合タンパク質)の濃度が最も有用な場合もある。
本発明は、以下のことを示す以下の図を参照して詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】多価CBM型の構成単位およびそれらのシアル酸に対する親和性を示す図である。a、VcCBM、球として描かれるα-2,3-シアリルラクトースを伴うV.choleraeシアリダーゼ(PDB:1w0p)の残基25~216。b、SpCBM、α-2,3-シアリルラクトース(PDB:4c1w)を伴うS.pneumoniae NanAシアリダーゼの残基121~305。c、TD、三量体形成ドメイン、虹色のP.aeruginosaシュードアミニダーゼ(PDB:2w38)の残基333~438;単色のその他の2つの単量体。d、多価型:それらの分子量、価数および25℃における表面プラズモン共鳴(SPR)によって求められるα2,3-シアリルラクトースに対する結合親和性(VcCBM、Vc2CBMおよびVc3CBMに関するK
D値は、以前に報告されている
7)。タンデムリピートCBM、およびTDと融合したオリゴマーCBMは、5-アミノリンカーによって連結される。
【
図2-1】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の予防効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)の添加前に1時間インキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図2-2】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の予防効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)の添加前に1時間インキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図2-3】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の予防効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)の添加前に1時間インキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図2-4】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の予防効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)の添加前に1時間インキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図3-1】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、細胞に添加する前にRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)を伴う、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにインキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図3-2】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、細胞に添加する前にRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)を伴う、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにインキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図3-3】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、細胞に添加する前にRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)を伴う、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにインキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図3-4】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、細胞に添加する前にRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)を伴う、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかとともにインキュベーションした。感染後24h、48h、72hおよび90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~d)、およびVc2CBMTD(e~h)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図4-1】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の治療効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、RSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)とともにインキュベーションした後、感染後24h、48hまたは72hの時点にさまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかを添加した。感染後90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~c)、およびVc2CBMTD(d~f)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図4-2】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の治療効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、RSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)とともにインキュベーションした後、感染後24h、48hまたは72hの時点にさまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかを添加した。感染後90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~c)、およびVc2CBMTD(d~f)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図4-3】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の治療効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、RSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)とともにインキュベーションした後、感染後24h、48hまたは72hの時点にさまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかを添加した。感染後90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~c)、およびVc2CBMTD(d~f)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図4-4】RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の治療効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、RSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)とともにインキュベーションした後、感染後24h、48hまたは72hの時点にさまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のSp2CBMTDまたはVc2CBMTDのいずれかを添加した。感染後90hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したSp2CBMTD(a~c)、およびVc2CBMTD(d~f)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図5】抗原性ペプチドのProPred予測を示す図である。A.SpCBM配列。B.PaTD配列。予測されるバインダーは青で色づけされ、それぞれの結合領域の最初の残基は赤で示されている。Nordic Biopharma(緑のバー)およびProimmune(紫のバー)によって予測される抗原性ペプチドを配列の下に示す。
【
図6】野生型および変異ドメインの発現試験を示す図である。レーン1、M12標準物質;レーン2、WTSpCBM;レーン3~11、Im15~Im23;レーン12~15、Im24~Im27;レーン16、WT PaTD。A)全細胞抽出物、B)可溶性抽出物。
【
図7】SpCBM構造におけるペプチド167~181の位置を示す図である。
【
図8】バリアントIm28~Im34の発現およびNi-NTAプルダウンを示す図である。
【
図9】六量体構造上のHEX17変異の部位を示す図である。個々のSpCBM(pdbコード4c1x)およびPaTD(pdbコード2w38)の結晶構造を組み合わせて六量体(すなわち、1分子当たり6コピーのSpCBMおよび3コピーのPaTD)を作ることによってHEX17の四次構造のモデルを作った。結合したリガンド(α2,3-シアリルラクトース)の位置を棒状(オレンジ)に示している。変異の位置も以下のように示す:青、A162P変異の部位;水色、他の2つのCBM変異の部位;マゼンダ、TD変異の部位。
【
図10】IL-8刺激を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Hex17)の添加によってA549細胞を刺激した。24または48hの時点において細胞上清を採取し、IL-8含有量をELISAによって求めた。対照と処理細胞との間の統計的有意性を、Tukey多重比較検定を使用した一元配置分散分析法を用いて判断した。
【
図11A】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図11B】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図11C】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図11D】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図11E】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図11F】炎症性メディエーターの多重分析を示すグラフである。10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6またはHEX17)の添加によってA549細胞を刺激した。6h、24または48hの時点において細胞上清を採取し、ヒトCytokine 12-plexアッセイを使用して炎症性メディエーターを分析した。対照および/またはWT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図12】インフルエンザ菌株PR8により致死的攻撃をした場合のCBM処置マウスおよび未処置マウスの生存パーセンテージを示すグラフである。CBM2、CBM3およびCBM4は、それぞれHEX17、HEX6およびWT(SpOrig)を表す。CBMを単回投与した動物には、PR8による致死的攻撃の1日前に100μgのCBMを与え、反復投与された動物にはPR8攻撃の3日および1日前に2×0.1μgのCBMを与えた。
【
図13】PR8感染中のCBM処置マウスおよび未処置マウスの臨床スコアを示すグラフである。CBM2、CBM3およびCBM4は、それぞれHEX17、HEX6およびWT(SpOrig)を表す。1~5の上昇する臨床スコアは、それぞれ症状のない(1)から昏睡および死亡(5)を示す。
【
図14】PR8感染中のCBM処置マウスおよび未処置マウスの体重減少パーセンテージを示すグラフである。CBM2、CBM3およびCBM4は、それぞれHex17、Hex6およびWT(SpOrig)を表す。
【
図15】PR8攻撃マウス試験からの21日目の肺ホモジネートおよび血清組織の抗mCBM抗体分析を示すグラフである。WT六量体と六量体バリアントとの間の統計的有意性を、一元配置分散分析法(Tukey多重比較検定)を使用して判断した。
【
図16A】Sp2CBMTDのRSVとの相互作用を示すためのELISA結果のグラフである。
【
図16B】Vc2CBMTDのRSVとの相互作用を示すためのELISA結果のグラフである。
【
図17A】GFP-Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDのRSVとの結合を示すためのアッセイのイメージである。対照アッセイには使用されるPBS。
【
図17B】GFP-Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDのRSVとの結合を示すためのアッセイのイメージである。対照アッセイには使用されるPBS。
【
図17C】GFP-Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDのRSVとの結合を示すためのアッセイのイメージである。対照アッセイには使用されるPBS。
【
図18A-18B】Sp2CBMTDおよびSp2CBMTD-R274Q(0.1μgおよび10ng)のRSVとの間の相互作用を示すためのELISA結果のグラフである。
【
図19A】Sp2CBMTDのノイラミニダーゼ処理したRSVとの相互作用を示すためのELISA結果のグラフである。
【
図19B】Vc2CBMTDのノイラミニダーゼ処理したRSVとの相互作用を示すためのELISA結果のグラフである。
【
図20A】3’-SL処理したSp2CBMTDとRSVの間の相互作用を示すためのデータのグラフである。
【
図20B】3’-SL処理したVc2CBMTDとRSVの間の相互作用を示すためのデータのグラフである。
【
図21A】CBM(Sp2CBMTD)によるRSVからの哺乳動物細胞(Hep2:NPro細胞)の保護が、細胞がノイラミニダーゼを使用して処理された後に低下することを示すデータのグラフである。
【
図21B】CBM(Vc2CBMTD)によるRSVからの哺乳動物細胞(Hep2:NPro細胞)の保護が、細胞がノイラミニダーゼを使用して処理された後に低下することを示すデータのグラフである。
【
図22】(パネルA~F):RSV感染哺乳動物細胞株におけるmCBM40の効果を示すグラフである。Hep2:NPro細胞を、細胞に添加する前にRSV(各ウェル当たり1.5×10
3PFU)を伴う、さまざまな量(0.1~100μg/ウェル)のVc4CBMまたはHEX17のいずれかとともにインキュベーションした。感染後24h、48h、および72hの時点で測定した、未処理の感染細胞と比較したVc4CBM(A、CおよびE)、およびHEX17(B、DおよびF)処理細胞に関する感染細胞の吸光度示数を示す。バーは、6回の反復からの平均吸光度変化±SDを示す。すべての値は、以下のとおりに示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
【
図23】ウイルスのみの感染細胞と比較した、感染後48hの時点におけるCBM処理した感染MucilAirインサートのRSV-Bウイルスゲノムコピー数定量のグラフである。A)Sp2CBMTD、B)Vc2CBMTD。
【発明を実施するための形態】
【0044】
方法および結果
【実施例】
【0045】
(実施例1)
CBM40タンパク質、Sp2CBMTD、Vc2CBMTDおよびVc4CBM(エンドトキシンを含まない)をConnaris et al (2014)1に記載されているとおりに作製した。Hex17を上記のとおり作製した。哺乳動物細胞株Hep2:NPro(IFNに応答するだけで、IFNを産生しないBVDV N末端プロテアーゼフラグメント、Nproを構成的に過剰発現するよう設計された細胞株)をATCC4から購入した。細胞を、T75フラスコにおいて、DMEM/10%FBS(1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む)中に維持し、37℃および5%CO2でインキュベーションした。RSV-A2株を、SF-DMEM中、1.5×104PFU/mlに対応する10-2の希釈物に調製した。
感染試験のために、96ウェルプレート(Nunc)に、DMEM/10%FCS中の100μLの細胞(2.5×105細胞/ウェル)を播き、細胞が80~90%の培養密度に達するまで、37℃および5%CO2で24hインキュベーションした。CBM40タンパク質(100μL、SF-DMEM中の10mg/ml原液の10倍段階希釈)は、RSV(100μL、各ウェル当たり1.5×103PFU、SF-DMEM中)感染前に細胞に添加するか、細胞に添加する前にRSVと氷上で1時間混合するか、またはRSV感染後に細胞に添加するかのいずれかとした。それぞれの場合において、CBM40および/またはRSVを除去前に1時間そのまま置いた。その後、細胞を300μLのAVICELで覆い、プレートを37℃および5%CO2で24、48、72、または90hのいずれかインキュベーションしたまま置いた。
【0046】
感染後の細胞中のRSVのレベルを求めるために、AVICELを除去し、細胞をPBS中の10%PFAで室温において10分固定した後、マウス抗RSV F一次抗体(1:200希釈、Serotec)に続いてヤギ抗・マウスHRP IgG抗体(1:2000、Santa Cruz)を用いて免疫染色した。RSVの存在を、発色基質TMB(Sigma)を使用して検出した。波長450nmにおける吸光度を測定した(基準として使用される波長620nm)。
統計分析。一元配置分散分析法およびダネットの多重比較検定を使用して群比較を行った。すべての分析にGraphPad Prism 7(GraphPad Software)を使用した。p<0.05の検定を統計学的に有意と考えた。別に明記されない限り、すべての値は、以下のとおり示される統計結果とともに平均±SDとして示す:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、および
****p<0.0001。
概要
図2、3、4および22に結果の概要を示す。
1.mCBM40の単回投与は、Hep2:NPro哺乳動物細胞株においてRSVに先立って、またはそれと同時に与えられる場合、細胞とのRSVの接着を低減または阻害するようであった。
2.RSVと同時に与えられる場合、最大0.1~1mg/ml濃度のすべてのmCBM40が、細胞が感染後最大90h試験された場合、予防的な投薬と比較して、RSV感染の低下に有意な効果を有したようであった。
3.RSV感染の24h後のmCBM40の投与は、最高用量で与えられた場合にウイルス感染の低下を示した。最高用量のVc2CBMTDは、RSV投与後24h、48hおよび72hの時点で与えられた場合に、Hep2:NPro哺乳動物細胞株中のRSVレベルに有利な影響を及ぼすようであった。
4.試験したmCBM40のうち、Vc2CBMTDが哺乳動物細胞株におけるRSV感染に対して最も有効なようであった。
参考文献
【0047】
(実施例2)
Sp2CBMTD:免疫原性領域の予測
Nordic Biopharmaインシリコスクリーニング
インシリコT細胞エピトープスクリーニングは、4つの顕著な免疫原性集団および2つの境界の免疫原性集団を特定した。
顕著:
ドメイン 残基範囲 配列
SpCBM 245~254 GVLSRTSLRS
PaTD 340~349 WFSVSSNSLY
PaTD 351~359 LSHGLQRSP
PaTD 398~406 GSLNIRLGT
境界:
ドメイン 残基範囲 配列
SpCBM 167~178 FYNLFSVSSATK
SpCBM 239~251 VRLYVNGVLSRTS
【0048】
ProimmuneヒトドナーT細胞増殖アッセイ
Proimmune調査は、抗原性が高い2つの領域および抗原性が中程度の2つの領域を強調した。
抗原性が高い:
ドメイン 残基範囲 配列
SpCBM 236~250 KGRVRLYVNGVLSRT
PaTD 392~406 GAQVEVGSLNIRLGT
抗原性が中程度:
ドメイン 残基範囲 配列
SpCBM 167~181 FYNLFSVSSATKKDE
PaTD 338~352 SDWFSVSSNSLYTLS
【0049】
ProPredインシリコ解析
さらなるインシリコツール、オンラインProPredサーバ
4も使用した。ProPredサーバの結果を
図5に示す。Nordic Biopharma/Proimmuneエピトープの相対的な位置も強調され、3つの方法間で妥当な一致を示している。ProPredは、上で挙げたエピトープに加えて、SpCBMドメインに別の1つの免疫原性エピトープを強く予測した。
ドメイン 残基範囲 配列
SpCBM 286~294 IRNLTVYNR
個々のCBMおよびTDドメインにある変異
免疫原性を低下させるであろう変異の設計を導くために、ProPredを使用して、これらのペプチドの各残基をすべて代替残基に替える影響を試験した。アレルバインダー(allele binder)の予測される数を最も減少させたものが確認された。SpCBMおよびTDドメインの両方の結晶構造はわかっているため、タンパク質構造を明らかに妨害するであろう変異を導入する可能性を低下させるようこれらの変異のモデルも作った。
【0050】
初めに、SpCBMに9つの単一の変異およびPaTDに4つの単一の変異を導入し、それを以下に列挙する(「Im」は、免疫原性変異体の略である)。
注:Im1~Im14(示さず)は、Proimmuneデータが利用可能になる前にコドン最適化されていないバックグラウンドに変異誘発によって導入された。
【0051】
WTおよび変異コンストラクトの合成
WT SpCBM、WT PaTDおよびバリアントIm15~Im27をコードする遺伝子をE.coli発現のためにコドン最適化し、GeneArtによって合成した。その遺伝子を、その後、6Hisタグ付きタンパク質としての発現のために社内でpHISTEVベクターにクローン化した。
発現および生物物理学的キャラクタリゼーション
溶解性を評価するために最初の発現試験を実施した。結果は、すべてが発現したが、すべてが溶解性な訳ではなかったことを示している(
図6)。注:溶解性(またはその欠如)が必ずしも有用性の予測因子ではない。当業者は、タンパク質を製造または生産するとき、特定のプロセスには、(封入体および同種のものから)容易に精製されるため、不溶性材料の使用が必要とされることを理解するであろう。下流のプロトコルは、その後、溶解性などの特徴を調節するためにタンパク質を再構築してもよい。
【0052】
発現試験の結果は、以下のことを示している。
・Im16(L170A)は、不溶性であるか、または非常に難溶性である
・Im25(TD、S345D)は、不溶性である
・Im15(Y168W)およびIm17(L170T)は、低下した溶解性を有する
・Im18(V173G)およびIm22(I286A)は、わずかに低下している。
・残りは、可溶性発現を示す。
13の可溶性タンパク質をE.coliにおいて発現させ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)に続く6Hisタグを除去するためのTEV消化、その後、リバースIMAC(reverse IMAC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
精製された10のドメイン(WTSp、Im19、Im20、Im21、Im22、Im23、WTTD、Im24、Im26およびIm27)は、以下によってさらに特徴づけられた。
(i)融解温度(Tm)を測定するためのThermofluor
(ii)三次構造をWTと比較するための近紫外円二色性(CD)
(iii)溶液中のオリゴマー状態を調べるための動的光散乱(DLS)
(iv)シアリルラクトースに対する結合親和性を測定するための表面プラズモン共鳴(SPR)
(v)IL-8サイトカイン刺激の測定
【0053】
その結果の概要を表1に示す。
【表1】
表1.WTドメインおよびそれらのバリアントの生物物理学的キャラクタリゼーションの定性的概要。色分けは、(緑’、オレンジおよび黄色を含む)緑から赤であり、ここでは、緑は、バリアントがその特定の特徴に関してそのWT対応物とよく類似していることを示し、淡緑色(緑’)または黄色は、差の程度の増加を示す。赤またはオレンジは、顕著な差を示す。N/A:タンパク質の溶解性/純度が不十分なため、これらのキャラクタリゼーションが実施されなかった。N/D:未決定。
【0054】
Spペプチド167~181:
Im15、Im16、Im17、Im18はすべて、不溶性または難溶性である(明記したとおり、これは、必ずしもタンパク質の有用性に影響を与える訳ではない)。これらは、「中程度に」抗原性の領域167~181(FYNLFSVSSATKKDE)にある。この領域は、明らかに変化に非常に影響されやすい。
前の結果は、L170(およびI286)に隣接したM156FがTmを約4℃上昇させることを示している。
【0055】
したがって、これはL170Tと組み合わせることができるであろう。M156Fは、予測される免疫原性を増加させない。
M185Iは、Tmを5℃上昇させ、L170に平行する(
図7)。この変異も含むことができるであろう。なお、M156Fのように、M185Iは予測される免疫原性を増加させないが、予測されるアレルバインダーの数をわずかに減少させる。
Spペプチド236~250:
Im19、Im20、Im21はすべて、WTと同様に挙動した。これらは、「高度に」抗原性の領域236~250(KGRVRLYVNGVLSRT)にある。
トレオニン変異(Im20、V239T)よりもIm19(V239A)を選択した。予測される免疫原性に差はないが、Im19は、WT Thermofluor Tmおよび近紫外スペクトルとより一致している。これは、Im21(V246G)と組み合わされるであろう。
【0056】
Spペプチド286~294:
Im22(I286A)は、WTと大まかに類似しているが、Im23(Y292E)は、低いリガンド親和性を示すようである。この領域、286~294IRNLTVYNRは、Proimmuneによってはフラグが立たなかったが、ProPredによっては免疫原性であると強く予測されている。
Im22がWTよりも低いTmを有するいくつかの指標がある。この残基は、M156に隣接しているため、M156Fが含まれた場合、異なるように挙動する可能性がある。
TDペプチド338~352:
Im24(S342D)およびIm26(L348D)は、WT三量体形成ドメインと類似の特徴を示すが、Im26のTmの低下がいくらか示唆される。これらは、「中程度に」抗原性の領域338~352SDWFSVSSNSLYTLSにある。WT配列は、9つのアレルと結合することが予測されたが、Im24は、2つのアレルを予測し、Im24/Im26二重変異体は、1つのアレルを予測する。
TDペプチド392~406:
Im27(R403K)は、WTと類似している。これは、「高度に」抗原性の領域392~406GAQVEVGSLNIRLGTの一部である。この変異が導入されると、予測されるアレルは、21から3に減少する。
【0057】
複数の変異の組み合わせIm28~34の合成
以下の変異を導入した。
i)M156F/L170T
ii)M156F/L170T/M185I:ProPredにおいて、この領域に関して予測されるアレルは、WTの31からこの組み合わせの19に減少している。
iii)V239A/V246G:ProPredにおいて、この領域に関するアレルは、44から3に減少している。
iv)I286A/Y292E:ProPredにおいて、アレルは、41から1に減少している。
v)V239A/V246G/I286A/Y292Eは、先行する前の二重のものを組み合わせている。
vi)M156F/L170T/M185I/V239A/V246G/I286A/Y292Eは、すべてのSp変異を組み合わせている
vii)TD:S342D/L348D/R403K:予測されるアレルは、TDペプチド338~352に関しては9から1に減少しており、ペプチドTDペプチド392~406に関するアレルは、21から3に減少している。この三重変異体は、すべてのTD変異体を組み合わせている。これらはすべて、表面に露出し、TDのN末端の遠位にあるため、六量体型のSpCBMを妨げないことが予想されるであろう。
【0058】
コンストラクトは、Im28~Im34と呼ぶ。
(SpCBM)バリアント 変異
Im28 M156F/L170T
Im29 M156F/L170T/M185I
Im30 V239A/V246G
Im31 I286A/Y292E
Im32 V239A/V246G/I286A/Y292E
Im33 M156F/L170T/M185I/V239A/V246G/I286A/Y292E
(PaTD)バリアント 変異
Im34 S342D/L348D/R403K
【0059】
2.5 Im28~Im34の発現および生物物理学的キャラクタリゼーション
単一の変異と同様に、組み合わせIm28~Im34をGeneArtによって合成し、発現解析のためにpHISTEVにサブクローニングした。Hisタグ付き可溶性抽出物に対するニッケルビーズプルダウンも実施した(
図8)。
六量体型
六量体コンストラクトHEX1~HEX17の設計
六量体型(HEX1~HEX17と呼ぶ)をコードする遺伝子をGeneArtによって合成した。
Sp2CBMTD
【0060】
タンデム型CBMコピーの反復配列を合成することに関連する問題を回避するために六量体型を2つの部分で合成した。第1の遺伝子は、第1のCBMを含み、第2の部分は、第2のCBMプラスTDを包含した。これらは、その後、同時にpHISTEVにクローン化して、発現時に三量体を形成するSp2CBMTDコンストラクトを作り出すことができた。
第1の六量体、HEX1は、CBMに変異L170T/V239A/V246G/I286A/Y292EおよびTDにS342D/L348D/R403Kを含んでいた。
個々のドメインの溶解性データは、HEX1が可溶性ではなさそうであったことを示した(繰り返すが、必ずしも分子の有用性を反映する訳ではない)。さらなるコンストラクト、HEX3を合成した。なおHEX2には、HEX3と同じ変異が含まれたが、Y292Eが追加された。
【0061】
HEX3を合成し、pHISTEVベクターにサブクローニングした。発現は、すべての試験条件(変動する温度、IPTG濃度、誘導時の細胞密度、熱ショックあり、またはなし)下において不溶性であった。同じ3つの変異(V239A V246G I286A)を含むCBMのみのドメインは、可溶性である。二重変異体(V239A V246G)は、WTと極めて類似して挙動する。よって、I286Aを含まず、一方または両方のいずれかのTD変異を含むさらなるバリアント(HEX4、HEX5およびHEX6)を設計し、PCR/ライゲーションによって構築した。
HEX6に対する研究の間、HEX6変異の異なる組み合わせを含むいくつかの他のバージョンを設計した(HEX7~HEX16の番号を付けた;特徴づけされていない)。
HEX17は、追加のA162P変異とともにHEX6変異を含む。このプロリン変異は、単一のCBM Tmを3~4℃上昇させることが示された。プロリン変異は、他の変異、NもしくはC末端またはリガンド結合部位に近くない。
【0062】
六量体バリアントのキャラクタリゼーション
発現、精製およびキャラクタリゼーションの結果を表2に示す。これらの結果に基づいて、HEX6およびHEX17を前に進めた。六量体上のHEX17変異の位置を
図9に示す。
【表2】
表2.六量体Sp2CBMTDバリアントの生物物理学的キャラクタリゼーションの定性的概要。色分けは、緑から赤であり、ここでは、緑は、バリアントがその特定の特徴に関してそのWT対応物とよく類似していることを示し、淡緑色(緑’)または黄色は、差の程度の増加を示す。赤またはオレンジは、顕著な差を示す。N/A:タンパク質の溶解性/純度が不十分なため、これらのキャラクタリゼーションが実施されなかった。N/D:未決定。
【0063】
(実施例3)
炎症性メディエーター。
目的:経時的に炎症性メディエーターのレベルを分析することによってmCBM処理ヒト肺上皮細胞(A549)の自然免疫応答を評価すること。
Sp2CBMTDの哺乳動物細胞への投与は、インビトロおよびインビボの両方において炎症促進応答を刺激した1、2。これが改変六量体シアル酸結合分子を用いても依然として観察されるかどうかを判断するために、10μgの生物学的製剤(Sp2CBMTD(別名SpOrig)、HEX6(すなわち、3×HEX6単位を含むシアル酸結合分子)またはHEX17(すなわち、3×HEX17単位を含むシアル酸結合分子)の添加によって哺乳動物A549細胞を刺激し、投与後の特定の時点に細胞培養培地を採取した。炎症性メディエーターの濃度をELISAおよび多重アッセイの両方によって測定した。
【0064】
ヒト1×Mouse CXCL1/KC Quantikine ELISA Kit(R&D BioSystems)を使用したヒトIL-8(試験のための基準サイトカイン)応答。刺激したA549細胞からのIL-8の濃度レベルを
図10に示す。A549細胞が改変六量体HEX17により刺激されると、IL-8レベルがSp2CBMTD(別名SpOrig)刺激細胞と比較した場合よりも有意に低いことが明らかである。
ヒトCytokine 12-plexアッセイ(Bio-Plex Pro(商標)、Bio-Rad)を使用した炎症性メディエーター応答。
図11は、Sp2CBMTD(WT、別名SpOrig)、HEX6およびHEX17(バリアント)によるA549細胞刺激後の特定の時点(6h、24h、48h)における培養培地からの12の炎症性メディエーターの分析を示す。分析に先立って、サンプルを解凍し、ヒトHS Cytokine-12 plexアッセイ(R&D Systems)を使用する前にPBS中で1:4に希釈した。このデータは、以下のことを示している。
・HEX17は、SpOrigおよびHEX6と比較して、試験したほぼすべてのサイトカインのレベルに影響を及ぼしている。SpOrigおよびHEX6と比較した場合に、48hの時点で分析物IL-6、IL-8、GM-CSFおよびIFN-ガンマの観察された濃度(pg/ml)が有意に低下している。
・48hの時点の対照と比較した場合、HEX17は、IL-5、およびVEGF(まだ確認されていない)を除く試験したすべてのサイトカインのレベルを増加させたようである。
・HEX6は、48hの時点においてSpOrigと比較してIL-6刺激の低下のみを示した。
【0065】
(実施例4)
インビボにおけるPR8マウスデータ。
試験の目的は、致死性インフルエンザ感染症のマウスモデルにおいてSp2CBMTD(SpOrig)およびそのバリアントの効力を評価することであった。単独で病的状態または大量死を引き起こすかどうかを評価するために各候補タンパク質をインフルエンザ感染症でない状態でも投与した。
生存、臨床スコアおよび体重減少。
この結果は、CBM2(HEX17)、CBM3(HEX6)またはCBM4(WT、SpOrig)のいずれも、単独でいかなる明白な病的状態または大量死も引き起こさなかったことを示している。PR8インフルエンザウイルスによる致死的攻撃の1日前のCBM2(HEX17)、CBM3(HEX6)およびCBM4(WT、SpOrig)のいずれかの単回の100μg用量の投与がPR8感染から保護し、最大の効力はHEX17(100%生存)で見られ、続いて、SpOrig、次にHEX6であった(
図12)。臨床スコアも、SpOrigおよびHEX6と比較してHEX17で低かった(
図13)。生き延びた単回高用量処置群のマウスはすべて、ピーク感染時に体重が減少したが、未処置の感染マウスとは対照的にすぐに回復した(
図14)。
【0066】
PR8攻撃マウス試験からの肺ホモジネートおよび血清組織の抗mCBM抗体分析。
この試験の目的は、Sp2CBMTD(SpOrig)の改変されたバリアントの改変された免疫原性エピトープがPR8攻撃試験のマウスにおいて抗体レベルの低下を示せるかどうかを判定することであった(エピトープは、ヒトMHCクラスII結合情報に基づいて改変されたことに留意すべきである)。これに関して、PR8攻撃試験から生き延びたマウスを21日目に選別し、肺および血清を採取し、ELISA方式で被覆抗原SpOrig(1μg/ウェル)に対する抗mCBM抗体、IgG、IgA、IgEおよびIgMに関して試験した。
図15に示したデータは、以下のことを示した。
・改変タンパク質HEX17は、SPORIGと比較してマウス肺IgMレベルの有意な(p<0.05)低下を示した。HEX6処置については生き残っているマウスが1匹のみのため、HEX17およびSpOrigのデータのみを統計分析した。
・SpOrigと比較して改変CBMで処置したマウスにおいて抗体レベルのわずかな低下傾向(肺IgAおよびIgM)のいくつかの指標がある。
【0067】
(実施例5)
以下の実験の目的は、無細胞系においてCBM(Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD)とヒトRSVの間に直接的な相互作用があるかどうかを判断することである。ELISA実験を以下のとおり設計した。
実験1
96ウェルプレートを、さまざまな濃度のRSV(株タイプA2)、CBM、Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDならびにPBS(ビヒクル、陰性対照)で4℃において一晩プレコートした。ウェルをブロッキングバッファー(BB、1%w/v BSAを含むPBS)でブロッキングした。さまざまな濃度のCBMをBB中で希釈し、その後、コーティング抗原を除去し、プレートを吸い取った後のウェルに添加した。そのプレートを、室温で1hインキュベーションしたまま置いた。その後、ウェルを洗浄バッファー(WB、0.5%(v/v)Tween-20を加えたPBS)で洗浄した後、一次抗体(ウサギ抗SpCBM抗体またはウサギ抗VcCBM抗体、BB中で1:5000希釈、Eurogentec)を添加し、室温で1~2hインキュベーションしたまま置いた。ヤギ抗ウサギIgG-HRP(BB中で1:2500希釈、Sigma)を二次抗体として使用し、基質にTMB(Sigma)を使用した。RSVとのCBMの結合は、TMB(HRPに対する基質)との反応後の処理ウェル対未処理対照ウェルの450nmにおける吸光度(バックグラウンド基準として620nm)を比較することによって判定した。
この結果は、Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDがともにRSVと用量依存的な様式で直接的に相互作用することを示している(
図16AおよびBを参照)。
【0068】
実験2
96ウェルプレートを、コーティング抗原として10μgのGFP-Sp2CBMTD、GFP-Vc2CBMTD、GFP、GFP-Sp2CBMTD-R274Q(Sp2CBMTDのシアル酸結合変異体)または32000PFU RSVのいずれかおよびPBS(ビヒクル、陰性対照)でプレコートした。ウェルを関連タンパク質とともに室温で1hインキュベーションした。GFP蛍光結合のイメージを、10倍の対物レンズを備えた顕微鏡(EVOS FL Cellular Imaging SystemのGFPチャネルにおいて)を使用して記録した。
この結果は、GFP-Sp2CBMTDおよびGFP-Vc2CBMTDがともにRSVと直接結合することができることを示している。RSVとのごくわずかな結合がシアル酸結合変異体GFP-Sp2CBMTD-R274Qで観察された(
図17A~Eを参照)
【0069】
(実施例6)
以下の実験の目的は、CBM(Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD)とRSVの間の相互作用がシアル酸で終わるウイルス表面糖タンパク質とCBMの結合に基づくという所見を裏付けることである。したがって、3つのELISA実験を設計した。
実験1
野生型Sp2CBMTDおよび変異Sp2CBMTD-R274Q(シアル酸結合変異体)の両方を実施例5の実験1に記載されているELISAの形式で使用した。この結果は、野生型Sp2CBMTDが同じ濃度の変異Sp2CBMTD-R274Qと比較してはるかに高い親和性でRSVと結合することを示している(
図18AおよびBを参照)。
【0070】
実験2
Clostridium perfringens(Sigma)のノイラミニダーゼ(Nu)は、細胞表面シアル化複合糖質から末端のシアル酸を切断することができるグリコシダーゼであり、α-2,3、α-2,6、α-2,8結合Gal、GlcNac、GalNAc、AcNeu、GlcNeu、オリゴ糖、糖脂質または糖タンパク質に対して結合特異性を有する。これがウイルス表面糖タンパク質に対して当てはまるかどうかを試験するために、CBMの添加に先立ってノイラミニダーゼを用いておよび用いずにRSVを処理した。実施例5の実験1と同様のELISA実験を計画した。96ウェルプレートを、さまざまな濃度のRSV、CBM(陽性対照として)およびPBS(陰性対照として)でプレコートした。一部のRSVコーティングウェルに対しては、ノイラミニダーゼ(30mU/ウェル)を1h添加し、続いてCBM(100ngまたは10ng)を添加した。CBMの結合は、計画1に記載されているとおり抗CBM抗体に続いて検出抗IgG・HRPを使用して評価した。
この結果は、ノイラミニダーゼ処理をしていない場合、前に観察されたとおり、Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDがともにRSVと用量依存的な様式で相互作用することを示す(下、および実施例5の実験1)。Sp2CBMTDの存在下においてRSVをノイラミニダーゼ処理した後、相互作用は、ある程度消失するが、相互作用パートナーとしてVc2CBMTDを使用した場合ほぼ完全に消失する(
図19AおよびBを参照)。
このデータは、RSV表面糖タンパク質がシアル化されていることのエビデンスを示し、このことは、RSV感染においてCBMが直接抗ウイルスの役割を果たす可能性を示唆する。
【0071】
実験3:
競合リガンドがCBMのシアル酸結合部位をブロックし、RSVとのCBMの相互作用を妨げる可能性があるかどうかを判断するために、CBM(Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD、100ng/ウェル)を、異なる濃度のα2,3シアリルラクトース(3’-SL、10mM、100mM、Glycotech)とともに室温で1hプレインキュベーションした。この混合物を、対照(PBS、CBMのみ)とともにRSV(32000PFU/ウェル)でコーティングした96ウェルプレートに添加した。CBMを、実施例5のとおりのELISA実験のとおりにウェルに添加した。この試験における反復回数はn=3とした、未処理データを、GraphPad Prismを使用して一元配置分散分析法によって分析した。<0.05のp値を統計学的に有意と考慮した(
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001;
****p<0.0001)。
この結果は、競合シアロシド、3’-SLがRSVとSp2CBMTDおよびVc2CBMTDの間の相互作用を用量依存的な様式で低下させることが可能であることを示している(
図20AおよびBを参照)。
【0072】
(実施例7)
CBM(Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD)によるRSVからの哺乳動物Hep2:NPro細胞の保護が、細胞がノイラミニダーゼを使用して処理された後に低下することを実証するためにインビトロ試験に着手した。
この実験は、96ウェルプレートに接着したHep2:NPro細胞を、ノイラミニダーゼを伴いまたは伴わすに37℃、5%CO2で1h、続いてCBM(100μg/ウェル)とともにさらに1h、最後に、RSV(3000PFU/ウェル)を添加して1hインキュベーションすることによって設計した。その後、プレートをAVICEL(登録商標)(Sigma)培地で覆い、37℃、5%CO2で96hインキュベーションしたまま置いた。RSV感染細胞を、マウス抗RSV F抗体(1:200希釈、MCA490、BioRad)、続いて抗マウスIgG・HRP二次抗体(1:2000希釈、Cell Signalling Technology)を使用して細胞に感染したRSVの量を評価することによって判定した。RSV感染性の阻害は、TMB(HRPに対する基質)との反応後のノイラミニダーゼ処理ウェル対未処理対照ウェルの450nmにおける吸光度(バックグラウンド基準として620nm)を比較することによって判断した。反復n=4、未処理データを、GraphPad Prismを使用して一元配置分散分析法によって分析した。<0.05のp値を統計学的に有意と考慮した(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001)。
【0073】
RSVのみの対照に対する、この結果は、ノイラミニダーゼ処理細胞と未処理細胞の間にいかなる感染性の差も示していない(グラフの最初の2つのバー)。しかしながら、細胞のノイラミニダーゼ処理後の両CBMからの細胞の保護は、低下している(グラフの4番目のバー)が、初めにCBM、続いてRSVにより処理した細胞と同じ程度までではなく、これは、Vc2CBMTDでより明白である。このデータは、CBMも細胞表面シアル酸を標的とすることによってRSVから細胞を保護することを示唆する(
図21AおよびBを参照)。
【0074】
(実施例8)
ヒト呼吸器上皮のインビトロ3Dモデルを使用したRSV-B感染に対する操作された炭水化物結合モジュールタンパク質(Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD)の有用性。
この試験の目的は、ヒト呼吸器上皮の3DモデルにおけるRSV複製時のmCBM40、Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDの効果を評価することである。このアッセイは、鼻、気管または気管支の生検試料から新たに単離された初代ヒト上皮細胞で構成されるヒト気道上皮の完全に分化した、すぐに使える3DモデルであるMucilAir(商標)(Epithelix)を使用して実施した。感染試験のために、RSV-B株(106ゲノムコピー/ml RSV、Geneva臨床株、2017)を使用し、0日目に(PBSにより)予め洗浄したMucilAirインサートの頂端側につけた。mCBM処理(n=3)については、Sp2CBMTDおよびVc2CBMTD(10μgまたは100μg用量)は、ウイルス感染の1時間前の単回投与として、またはb)ウイルス感染の1日および1時間前の反復投与としてのいずれかで頂端につけた。両処理計画では、感染後(p.i)3.5hの時点でmCBMにさらに曝露した。未処理の感染MucilAir(n=2)を対照として使用した。感染後3.5hの時点、その後、感染後24、48および96hの時点で頂端洗浄液(200μL)を採取した。
【0075】
ウイルスゲノムコピー数は、QIAampR Viral RNAキット(Qiagen)を使用したウイルスRNA抽出のために20μLの頂端洗浄液を使用して求めた。ウイルスRNAは、5μLのウイルスRNAおよび2つのRSV-B特異的プライマーを使用したQuantiTect Probe RT-PCR(Qiagen)を使用して定量した。測定値のデータを希釈係数に対して補正し、1ml当たりのゲノムコピー数として示した。Prism 6.0 GraphPadソフトウェアを使用して統計分析を実施した。2セットのデータを比較するために独立スチューデントt検定を使用した、この場合、*p<0.05である。
【0076】
概要
Sp2CBMTDおよびVc2CBMTDはともに、RSV感染したヒト気道上皮細胞の頂端のウイルス量を減少させることが示された。減少の程度は、mCBMのタイプおよび投与される用量の数により左右された。感染したMucilAirインサートをSp2CBMTDに曝露しても、データのばらつきのためウイルス複製に対して有意な効果は示されなかったが、ウイルス感染対照と比較して、最高用量(100μg)の感染後48hの時点の2用量後(
図23Aを参照)、および感染後96hの時点の3用量後にわずかな減少が観察された。10μgの投与計画を使用するよりもVc2CBMTD(100μg)への曝露が、両投与計画ともRSVウイルス複製を低減するのにより有効であった。統計学的に有意ではないが、感染後48hの時点におけるウイルス量の減少は、1logよりも大きな減少が観察された(
図23B)。
【配列表】