(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】利用状況判定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20250220BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021013232
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 優輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】寺島 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】松枝 直
(72)【発明者】
【氏名】森保 伸也
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009044(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103498(WO,A1)
【文献】特開2021-009553(JP,A)
【文献】特開2007-073017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電波出力手段と資機材に設置された第1特定手段と第2特定手段とを含む利用状況判定システムであって、
前記電波出力手段の各々は、自らの識別情報を表す電波出力手段IDを含む電波を出力し、
前記第1特定手段は、複数の前記電波出力手段の各々から出力された電波のうちの電波強度が最も大きい前記電波出力手段の前記電波出力手段IDと、自らの識別情報を表す第1特定手段IDとを含むID情報を前記第2特定手段へ出力し、
前記第2特定手段は、所定時間内に取得した複数の前記ID情報に基づいて、複数の前記ID情報に含まれる前記電波出力手段IDのうちの、頻度が最大である前記電波出力手段IDを特定し、前記所定時間よりも長い所定の時間区間内において、異なる前記電波出力手段IDが特定されている場合には、前記資機材は利用されていると判定する、
利用状況判定システム。
【請求項2】
前記利用状況判定システムは、端末を更に含み、
前記第2特定手段は、前記資機材の利用状況に関する情報を前記端末へ送信する、
請求項1に記載の利用状況判定システム。
【請求項3】
前記資機材の利用状況に関する情報は、所定期間内における複数の前記資機材の各々の利用率をランキング形式で表した情報である、
請求項2に記載の利用状況判定システム。
【請求項4】
前記資機材の利用状況に関する情報は、複数の前記資機材のアイコンの各々が建設中の建物の平面図へ配置されている情報であって、かつ複数の前記資機材のアイコンの各々の周辺に当該資機材の利用率が配置されている情報である、
請求項2に記載の利用状況判定システム。
【請求項5】
前記電波出力手段は電池によって駆動し、
前記電波出力手段による前記電波の出力のタイミングと、前記第1特定手段による前記電波の受信のタイミングとは同期しておらず、
複数の前記電波出力手段の各々は、所定の時間間隔で前記電波を出力し、
前記第1特定手段は、複数の前記電波出力手段の各々から出力された前記電波を、前記所定の時間間隔よりも短い時間間隔で受信する、ように構成されている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の位置特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用状況判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、資機材の稼働状況を容易に特定する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、対象空間内の資機材の稼働状況を特定するための稼働状況情報を取得し、稼働状況情報に基づいて、資機材の稼働状況を特定するシステムが開示されている(例えば、特許文献1の要約)。
【0003】
また、移動体を管理する事が可能な技術が知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2の技術は、高所作業車に設けられている資機材ビーコン1からの電波を受信する受信端末2の電波の受信結果に基づいて、高所作業車を管理する(例えば、特許文献2の要約)。
【0004】
また、稼働管理情報を演算することを可能にする技術が知られている(例えば、特許文献3)。特許文献3の技術は、高所作業車1の作業床の高さ方向の移動に関する時間に基づく第1情報と、高所作業車1の稼働に関する時間に基づく第2情報とを取得し、第1情報と第2情報との相互間の比率を、高所作業車1の稼働状況を管理するための稼働管理情報として演算する(例えば、特許文献3の要約)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-040271号公報
【文献】特開2019-169040号公報
【文献】特開2020-067792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の技術は、資機材ビーコン30及び鍵ビーコン60からの情報に基づいて、資機材が稼働しているか否か(稼働状況)を特定する。このため、特許文献1の技術は、資機材に設置される資機材ビーコン30とは異なる鍵ビーコン60を用意する必要があり(例えば、特許文献1の
図1)、コストがかかるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示の技術は、稼働状態を特定する際には複数の判定処理を経る必要があり(例えば、特許文献2の
図8)、その処理は複雑である。
【0008】
また、特許文献3の技術も、稼働管理情報を得る際に、高所作業車の移動手段上方停止時間、移動手段移動時間、及びその合計時間等を演算する必要がある。
【0009】
このため、例えば上記特許文献1~3の技術は、資機材の稼働を判定する際に複雑な手法が採用されており、資機材の利用状況を簡易に判定することができない、という課題がある。
【0010】
この点、資機材の利用状況は、なるべく簡易に得られる方が好ましい。例えば、建設現場においては、建設工事を受注した建設会社が資機材のレンタル会社から資機材を借り受け、その資機材を協力会社に提供する場合がある。この場合、建設会社は資機材の管理を直接実施することはできないため、その資機材が協力会社側でどの程度利用されているのかを簡易に判定し、資機材の利用を適正なものにしたいという需要がある。
【0011】
これらの需要に対応するため、建設現場における資機材の利用状況を判定する場合に上記特許文献3のような技術が提案されているものの、資機材の主要稼働部の稼働状況情報を取得しており得られる情報の量は多いものの、その情報を得るためのコストが大きい、という課題があった。
【0012】
本発明は上記事実を考慮して、資機材の利用状況を簡易かつ精度良く判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る第1の態様は、複数の電波出力手段と資機材に設置された第1特定手段と第2特定手段とを含む利用状況判定システムであって、前記電波出力手段の各々は、自らの識別情報を表す電波出力手段IDを含む電波を出力し、前記第1特定手段は、複数の前記電波出力手段の各々から出力された電波のうちの電波強度が最も大きい前記電波出力手段の前記電波出力手段IDと、自らの識別情報を表す第1特定手段IDとを含むID情報を前記第2特定手段へ出力し、前記第2特定手段は、所定時間内に取得した複数の前記ID情報に基づいて、複数の前記ID情報に含まれる前記電波出力手段IDのうちの、頻度が最大である前記電波出力手段IDを特定し、前記所定時間よりも長い所定の時間区間内において、異なる前記電波出力手段IDが特定されている場合には、前記資機材は利用されていると判定する、利用状況判定システムである。これにより、資機材の利用状況を簡易かつ精度良く判定することができる。
【0014】
また、本発明に係る第2の態様の前記利用状況判定システムは、端末を更に含み、前記第2特定手段は、前記資機材の利用状況に関する情報を前記端末へ送信する。これにより、端末を操作するユーザは、資機材の利用状況に関する情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、資機材の利用状況を簡易かつ精度良く判定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の利用状況判定システムの概要を説明するための図である。
【
図2】実施形態に係る利用状況判定システム10の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】固定ビーコン20からの電波の出力のタイミングと移動ビーコン30の電波の受信のタイミングとを説明するための図である。
【
図4】電波強度のゆらぎを説明するための図である。
【
図5】データ記憶部202に格納されるID情報の一例を示す図である。
【
図7】資機材の利用状況の判定を説明するための図である。
【
図8】資機材の利用状況の判定を説明するための図である。
【
図9】資機材の利用状況に関する情報の一例を示す図である。
【
図10】資機材の利用状況に関する情報の一例を示す図である。
【
図11】実施形態の利用状況判定システム10の各機器のコンピュータの構成例を示す図である。
【
図12】利用状況判定システム10の各機器が実行するシーケンスの一例を示す図である。
【
図13】利用状況判定システム10のサーバ50が実行する位置特定処理ルーチンの一例を示す図である。
【
図14】利用状況判定システム10のサーバ50が実行する利用状況判定処理ルーチンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
<利用状況判定システムの構成>
【0019】
図1は、実施形態の利用状況判定システムの概要を説明するための図である。
図1に示されるように、実施形態の利用状況判定システム10は、複数の電波出力手段の一例である複数の固定ビーコン20-1,20-2,20-3と、第1特定手段の一例である移動ビーコン30と、ログ収集機の一例であるゲートウェイ40と、第2特定手段の一例であるサーバ50とを備えている。複数の固定ビーコン20-1,20-2,20-3の各々は、例えば、建設現場における所定の地点に設置される。なお、以下では、特定の固定ビーコンを指し示す以外は、単に「固定ビーコン20」と称する。また、上記
図1の例では、3つの固定ビーコン20-1,20-2,20-3が示されているが、利用状況判定システム10は、より多くの又はより少ない固定ビーコンを備えていてもよい。
【0020】
移動ビーコン30は、例えば、建設現場で用いられる資機材35に設置される。
図1では、建設現場で用いられる資機材35の一例である高所作業車に移動ビーコン30が設置されている。建設現場においては、建設作業で用いる資機材35の位置情報を特定し、その位置情報に基づいて資機材35の利用状況を判定したい場合がある。
【0021】
そこで、本実施形態の利用状況判定システムでは、建設現場で用いられる資機材35に移動ビーコン30を設置し、建設現場の各箇所に固定ビーコン20を設置する。移動ビーコン30は、複数の固定ビーコン20の各々から出力される電波を受信する。そして、移動ビーコン30は、電波の電波強度に基づいて、電波強度が最も大きい固定ビーコンの識別情報である固定ビーコンIDと、自らの識別情報を表す移動ビーコンIDとを含むID情報をサーバ50へ送信する。なお、移動ビーコン30から出力されたID情報は、ゲートウェイ40が一旦受信する。そして、ゲートウェイ40は、移動ビーコン30から送信されたID情報をサーバ50へ送信する。
【0022】
サーバ50は、ゲートウェイ40から送信されたID情報を受信し、ID情報に含まれている固定ビーコンIDに対応する固定ビーコン20の近くに、移動ビーコン30が存在していることを特定する。なお、複数の固定ビーコン20と移動ビーコン30との間においては、例えば、既知の近距離無線通信方式の一例であるBluetooth Low Energy(BLE)(登録商標)により通信が行われる。また、移動ビーコン30とゲートウェイ40との間及びゲートウェイ40とサーバ50との間においては、例えば、既知の無線通信方式の一例であるLong Term Evolution(LTE)(登録商標)により通信が行われる。以下、具体的に説明する。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る利用状況判定システム10の構成の一例を示すブロック図である。利用状況判定システム10は、機能的には、
図2に示されるように、複数の固定ビーコン20と、移動ビーコン30と、ゲートウェイ40と、サーバ50と、管理端末KTとを含んだ構成で表すことができる。
【0024】
(固定ビーコン)
固定ビーコン20は、自らの識別情報を表す固定ビーコンIDを含む電波を出力する。具体的には、固定ビーコン20は、所定時間が経過する毎に電波を出力する。なお、固定ビーコン20が電波を出力するタイミングと、移動ビーコン30が電波を受信するタイミングとは同期していないことが多い。
【0025】
図3に、固定ビーコン20からの電波の出力のタイミングと移動ビーコン30の電波の受信のタイミングとを説明するための図を示す。
【0026】
図3に示されるように、固定ビーコン20は時間間隔t20(例えば、1sec)にて電波を出力する。例えば、固定ビーコン20が電波を出力する時間間隔t20は、固定ビーコン20の電池の減りを抑制するためになるべく長い時間間隔が設定される。一方、移動ビーコン30は、時間間隔t30(例えば、400msec)にて電波を受信する。なお、移動ビーコン30による一回の電波受信Rにおいて電波を受信する時間を表す窓時間(例えば、2.5ms)が設定され、この窓時間内に電波が受信される。
【0027】
このように、複数の固定ビーコン20の各々は所定の時間間隔t20で電波を出力し、移動ビーコン30は、複数の固定ビーコン20の各々から出力された電波を所定の時間間隔t20とは異なる時間間隔t30で受信する。なお、
図3に示されるように、移動ビーコン30は、複数の固定ビーコン20の各々から出力された電波を、所定の時間間隔t20よりも短い時間間隔t30で受信する。
【0028】
図3に示されるように、移動ビーコン30は、時間帯t31において電波を受信し、時間帯t32においてID情報をゲートウェイ40に対して送信する。移動ビーコン30は、
図3に示される、時間帯t31と時間帯t32とを合わせた時間帯t33における処理を繰り返すことにより、ID情報をゲートウェイ40へ逐次送信する。そして、ゲートウェイ40は、時間間隔t40にてID情報を受信し、そのID情報を時間間隔t41にてサーバ50へ送信する。
【0029】
図3に示されるように、固定ビーコン20の電波出力のタイミングと移動ビーコン30の電波受信のタイミングとが同期していない場合には、移動ビーコン30が受信する電波の電波強度にゆらぎが発生しうる。
【0030】
図4に電波強度のゆらぎを説明するための図を示す。
図4に示されるように、複数の固定ビーコン20-1,20-2,20-3,20-4,20-5,20-6が移動ビーコン30の周辺に存在している場合、本来であれば、移動ビーコン30に最も近い固定ビーコン20-6の電波強度が最大となる。
【0031】
しかし、上述したように、固定ビーコン20の電波の発信タイミング及び移動ビーコン30の電波の受信タイミングが同期していない場合には、移動ビーコン30が受信する電波の電波強度にゆらぎが発生し、例えば、固定ビーコン20-3から出力された電波の電波強度が最大となる場合がある。この場合には、サーバ50により特定される移動ビーコン30の位置に誤りが発生する。
【0032】
なお、固定ビーコン20の電波発信の時間間隔t20を短く設定し、移動ビーコン30の時間帯t31を長く設定し、かつ移動ビーコン30による一回の電波受信Rにおける窓時間を長く設定することにより、電波強度のゆらぎに基づく位置特定の誤りの発生を低減させることは可能である。これにより、移動ビーコン30の位置特定の精度を向上させることができる。
【0033】
しかし、固定ビーコン20による電波発信の頻度を高くすることにより、固定ビーコン20の電池消耗は激しくなる。また、移動ビーコン30における電波を受信する時間帯t31及び窓時間を長く設定することにより、移動ビーコン30の電池消耗も激しくなる。この点に関し、建設現場内の各箇所に設置される固定ビーコン20及び資機材35に設置される移動ビーコン30の電池交換の頻度はなるべく減らしたい、という課題がある。
【0034】
そこで、本実施形態の利用状況判定システム10では、固定ビーコン20による電波発信の頻度は低くしたままで、所定時間に亘って移動ビーコン30から送信された固定ビーコンIDを収集し、その所定時間内において出現する頻度が最大の固定ビーコンIDを特定する。そして、利用状況判定システム10は、頻度が最大の固定ビーコンの近くに移動ビーコン30が存在していると特定する。これにより、電波強度にゆらぎが存在している場合であっても、移動ビーコン30自体又は移動ビーコン30が設置された対象物の位置を精度良く特定することができる。詳細は後述する。
【0035】
(移動ビーコン)
移動ビーコン30は、複数の固定ビーコン20の各々から出力された電波のうちの電波強度が最も大きい固定ビーコン20の固定ビーコンIDを特定する。例えば、移動ビーコン30は、自らの周辺に複数の固定ビーコン20が存在した場合、同一の窓時間において複数の固定ビーコン20の各々から出力された電波を受信する場合がある。その際には、移動ビーコン30は、受信した固定ビーコン20のうち電波強度が最も大きい固定ビーコン20の固定ビーコンIDのみを保持する。そして、移動ビーコン30は、自らの識別情報を表す移動ビーコンIDと電波強度が最も大きい固定ビーコン20の固定ビーコンIDとを含むID情報を、ゲートウェイ40を介してサーバ50へ送信する。
【0036】
(ゲートウェイ)
ゲートウェイ40は、固定ビーコン20から出力されたID情報をサーバ50へ送信する。例えば、ゲートウェイ40は、建設現場の各箇所に設置される。
【0037】
(サーバ)
サーバ50は、移動ビーコン30の位置を特定する。サーバ50は、機能的には、
図2に示されるように、データ収集部200と、データ記憶部202と、位置特定部204と、利用状況判定部205と、通知部206とを備えている。
【0038】
データ収集部200は、ゲートウェイ40から送信されたID情報を逐次受信する。そして、データ収集部200は、受信したID情報をデータ記憶部202へ格納する。
【0039】
データ記憶部202には、各時刻に受信されたID情報が格納される。
図5に、データ記憶部202に格納されるID情報の一例を示す。
図5の例では、サーバ50がID情報を受信した受信時刻とID情報とが対応付けられている。
【0040】
位置特定部204は、データ記憶部202に格納されている、所定時間内(例えば、1分間又は15分間)に取得した複数のID情報に基づいて、複数のID情報に含まれる固定ビーコンIDのうちの、頻度が最大である固定ビーコンIDを特定する。例えば、
図5に示されるようなデータがデータ記憶部202に格納されている場合、位置特定部204は、所定時間T内に取得したID情報に含まれる固定ビーコンIDから、固定ビーコンID「00001」を頻度が最大である固定ビーコンIDとして特定する。例えば、
図5に示される例では、所定時間T内において固定ビーコンID「00001」は3回出現しており、固定ビーコンID「00002」は1回出現しており、固定ビーコンID「00003」は1回出現しているため、固定ビーコンID「00001」の頻度が最大であるとして特定される。なお、所定時間Tは予め設定される。
【0041】
そして、位置特定部204は、特定された固定ビーコンIDに対応する固定ビーコンとの間の距離が予め定められた範囲内の箇所に、移動ビーコン30が位置していると特定する。例えば、位置特定部204は、移動ビーコンID「00001」に対応する移動ビーコン30は、固定ビーコンID「00001」に対応する固定ビーコンの近くに存在すると特定する。
【0042】
なお、移動ビーコン30の位置特定結果は、例えば、データ記憶部202に格納される。例えば、位置特定部204は、データ記憶部202に格納されているデータに対して、
図6に示されるように位置特定結果として固定ビーコンID「00001」を付与する。これにより、受信時刻T1~T5の間においては、固定ビーコンID「00001」に対応する固定ビーコンの近くに、移動ビーコン30が存在していたことが特定される。
【0043】
このように、本実施形態の利用状況判定システムによれば、所定時間に亘って移動ビーコン30から送信された固定ビーコンIDを収集し、その所定時間内において出現する頻度が最大の固定ビーコンIDを特定することにより、移動ビーコン30が設置された対象物の位置を簡易かつ精度良く特定することができる。
【0044】
利用状況判定部205は、所定時間Tよりも長い所定の時間区間Tx内において、異なる固定ビーコンIDが特定されている場合には、資機材35は利用されていると判定する。
【0045】
図7に、資機材35の利用状況の判定を説明するための図を示す。例えば、
図7に示されるように、所定時間T-1内における移動ビーコン30の位置特定結果が「00001」であり、所定時間T-2内における移動ビーコン30の位置特定結果が「00004」であった場合には、所定時間Tよりも長い所定の時間区間Tx内において、異なる固定ビーコンIDが特定されている。この場合には、利用状況判定部205は、資機材35は利用されていると判定する。時間区間Tx内において異なる固定ビーコンIDが特定されているということは、資機材35が移動しているということであり資機材35が利用されているということもできるためである。
【0046】
一方、利用状況判定部205は、所定時間Tよりも長い所定の時間区間Tx内において、位置特定結果として特定されている固定ビーコンIDがすべて同一である場合には、利用状況判定部205は、資機材35は利用されていないと判定する。
【0047】
そして、利用状況判定部205は、資機材35の利用状況の判定結果に基づいて、所定期間内の資機材35の利用率を算出する。
図8に、資機材35の利用率を説明するための図を示す。
図8に示されるように、例えば、所定の時間区間Txが1日である場合を考える。この場合、1日のうちに特定された位置特定結果において異なる固定ビーコンIDが存在している場合には、資機材35は「利用」されたと判定される。一方、1日のうちに特定された位置特定結果において異なる固定ビーコンIDが存在しておらず、すべて同一の固定ビーコンIDであった場合には資機材35が「未利用」であったと判定される。
【0048】
利用状況判定部205は、例えば、
図8に示されるような2020/12/01~2020/12/07の期間における資機材35の利用率を算出する。
図8の例では、2/7≒0.286の利用率となる。
【0049】
このように、資機材35の位置特定結果を利用して資機材35が利用されているか否かを判定することにより、資機材35の利用状況を簡易に判定することができる。また、上述したように、資機材35に設置された移動ビーコン30の位置特定結果が精度良く特定されるため、資機材35の利用状況も精度良く判定することができる。
【0050】
通知部206は、利用状況判定部205によって得られた資機材35の利用状況に関する情報を、後述する管理端末KTへ送信する。例えば、通知部206は、資機材35の利用状況に関する情報の一例として、利用状況判定部205によって得られた所定期間における資機材35の利用率を後述する管理端末KTへ送信する。
【0051】
(管理端末)
管理端末KTは、サーバ50と通信可能に接続されており、サーバ50から出力された資機材35の利用状況に関する情報を受信する。そして、管理端末KTは、資機材35の利用状況に関する情報が表す内容をディスプレイ等の表示部(図示省略)に表示させる。これにより、管理ユーザは、資機材35の利用状況を把握することができる。
【0052】
なお、管理端末KTの表示部(図示省略)には、資機材35の利用状況に関する情報として、例えば
図9に示されるような画面が表示さるようにしてもよい。
図9に示されている画面は、資機材35の一例である高所作業車の利用率であり、その利用率の一覧が示されている。
【0053】
また、資機材35の利用状況に関する情報は、
図10に示されるようなものであってもよい。
図10には、資機材35である高所作業車が配置されている建設中の建物の平面図が示されている。例えば、高所作業車35-1は利用率が低いことを表す情報(利用率20%)が付与されており、高所作業車35-2は利用率が高いことを表す情報(利用率90%)が付与されている。
図10に示されるような平面図中に、高所作業車のアイコンと共にその利用率が表示されることにより、利用率が低い高所作業車又は利用率が高い高所作業車はどこに存在するのかが容易に把握可能となる。
【0054】
管理端末KTを操作する管理ユーザ(例えば、建設工事の元請の建設会社の社員)は、
図9又は
図10に示されるような情報を確認し、例えば、利用率の低い資機材35を資機材35の貸主に返却したり、または、利用率の低い資機材35を他の箇所に配置換えをしたりする等の検討を行う。これにより、資機材35の利用状況を適正なものとすることができる。
【0055】
なお、サーバ50から送信される資機材35の利用状況に関する情報は、協力会社が管理する端末(図示省略)に送信されてもよい。協力会社に属するユーザは、サーバ50から送信された資機材35の利用状況に関する情報を参考にし、例えば、資機材35の予約に利用するようにしてもよい。
【0056】
または、例えば、資機材35の予約管理を行う予約管理システム(図示省略)の表示画面に、資機材35の利用状況に関する情報を併せて表示させるようにしてもよい。
【0057】
利用状況判定システム10のサーバ50は、例えば、
図11に示すようなコンピュータ60によって実現することができる。サーバ50を実現するコンピュータ60は、CPU61、一時記憶領域としてのメモリ62、及び不揮発性の記憶部63を備える。また、コンピュータ60は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)64、及び記録媒体69に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部65を備える。また、コンピュータは、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F66を備える。CPU61、メモリ62、記憶部63、入出力I/F64、R/W部65、及びネットワークI/F66は、バス67を介して互いに接続される。
【0058】
記憶部63は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部63には、コンピュータを機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU61は、プログラムを記憶部63から読み出してメモリ62に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0059】
なお、固定ビーコン20、移動ビーコン30、及びゲートウェイ40は、例えば半導体集積回路、より詳しくはApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)等により実現される。また、サーバ50も、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC等により実現されてもよい。固定ビーコン20、移動ビーコン30、及びゲートウェイ40も、
図11に示されるようなコンピュータ60によって実現されてもよい。
【0060】
<利用状況判定システムの作用>
【0061】
次に、利用状況判定システム10の作用を説明する。利用状況判定システム10の各機器は、
図12に示されるようなシーケンスを実行する。
【0062】
ステップS100において、固定ビーコン20は、自らの識別情報を表す固定ビーコンIDを含む電波を所定の発信タイミングで出力する。
【0063】
ステップS102において、移動ビーコン30は、上記ステップS100で固定ビーコン20から出力された電波を所定の受信タイミングで受信する。そして、ステップS102において、移動ビーコン30は、複数の固定ビーコン20の各々から出力された電波のうちの電波強度が最も大きい固定ビーコン20の固定ビーコンIDと、自らの識別情報を表す移動ビーコンIDとを含むID情報をゲートウェイ40へ送信する。
【0064】
ステップS104において、ゲートウェイ40は、上記ステップS102で移動ビーコン30から送信されたID情報をサーバ50へ送信する。
【0065】
ステップS106において、サーバ50のデータ収集部200は、上記ステップS104でゲートウェイ40から送信されたID情報を受信し、データ記憶部202に格納する。
【0066】
次に、サーバ50は、
図13に示されるような位置特定処理ルーチンを実行する。例えば、サーバ50は、所定時間Tが経過するごとに、
図13に示される位置特定処理ルーチンを実行する。
【0067】
ステップS200において、サーバ50の位置特定部204は、データ記憶部202から所定時間T内のID情報を読み出す。
【0068】
ステップS202において、サーバ50の位置特定部204は、上記ステップS200で読み出したID情報に基づいて、複数のID情報に含まれる固定ビーコンIDのうちの、頻度が最大である固定ビーコンIDを特定する。
【0069】
ステップS204において、サーバ50の位置特定部204は、上記ステップS202で特定された固定ビーコンIDに対応する固定ビーコンとの間の距離が予め定められた範囲内の箇所に、移動ビーコン30が位置していると特定する。これにより、移動ビーコン30が設置された機器の位置も特定される。
【0070】
ステップS206において、サーバ50の位置特定部204は、上記ステップS204で特定された移動ビーコン30の位置をデータ記憶部202に格納する。例えば、上記
図6に示されるような形式で、移動ビーコン30の付近に存在する固定ビーコンの固定ビーコンIDが、位置特定結果としてデータ記憶部202に格納される。
【0071】
次に、サーバ50は、上記
図13の位置特定処理ルーチンの実行により得られた位置特定結果に基づいて、資機材35の利用状況の判定を行う。具体的には、例えば、サーバ50は、位置特定が行われた所定時間Tよりも長い所定時間区間Txが経過する毎に、
図14に示される利用状況判定処理ルーチンを実行する。
【0072】
ステップS300において、サーバ50の利用状況判定部205は、データ記憶部202から、1つの移動ビーコン30に対する位置特定結果の系列を読み出す。なお、位置特定結果の系列は、所定時間Tが経過する毎に得られた移動ビーコン30の複数の位置特定結果である。
【0073】
ステップS302において、サーバ50の利用状況判定部205は、上記ステップS300で読み出された複数の位置特定結果に、異なる固定ビーコンIDが含まれているか否かを判定する。複数の位置特定結果に、異なる固定ビーコンIDが含まれている場合には、ステップS304へ進む。一方、複数の位置特定結果に異なる固定ビーコンIDが含まれておらず、すべて同一の固定ビーコンIDである場合には、ステップS306へ進む。
【0074】
ステップS304において、サーバ50の利用状況判定部205は、移動ビーコン30が設置されている資機材35は利用されていると判定する。
【0075】
ステップS306において、サーバ50の利用状況判定部205は、移動ビーコン30が設置されている資機材35は利用されていないと判定する。
【0076】
サーバ50は、上記
図14の利用状況判定処理ルーチンを全ての移動ビーコン30について実行することにより、移動ビーコン30が設置されている資機材の利用状況を判定する。
【0077】
以上説明したように、第1実施形態の利用状況判定システムは、複数の固定ビーコンと移動ビーコンとサーバとを含む利用状況判定システムである。利用状況判定システムの複数の固定ビーコンの各々は、自らの識別情報を表す固定ビーコンIDを含む電波を出力し、移動ビーコンは、複数の固定ビーコンの各々から出力された電波のうちの電波強度が最も大きい固定ビーコンの固定ビーコンIDと、自らの識別情報を表す移動ビーコンIDとを含むID情報をサーバへ向けて出力する。サーバは、所定時間内に取得した複数のID情報に基づいて、複数のID情報に含まれる固定ビーコンIDのうちの、頻度が最大である固定ビーコンIDを特定し、特定された固定ビーコンIDに対応する固定ビーコンとの間の距離が予め定められた範囲内の箇所に、移動ビーコンが位置していると特定する。そして、サーバは、所定時間よりも長い所定の時間区間内において、異なる固定ビーコンIDが特定されている場合には、資機材は利用されていると判定する。これにより、資機材の利用状況を簡易かつ精度良く判定することができる。具体的には、資機材の位置情報に応じてその資機材の利用状況を判定することにより、資機材の利用状況を簡易の判定することができる。また、資機材の位置を特定する際には2段階の位置特定によって資機材の位置が精度良く特定される。このため、資機材の利用状況を簡易かつ精度良く判定することができる。
【0078】
また、第1実施形態の利用状況判定システムによれば、固定ビーコンによる電波の出力タイミングと移動ビーコンによる電波の受信タイミングとが同期していない場合であっても、移動ビーコンの位置を精度良く特定することができる。これにより、固定ビーコンによる電波の発信間隔を長くしたとしても、移動ビーコンの位置を精度良く特定することができる。また、これにより、固定ビーコンによる電波の発信間隔を長くすることが可能となり、固定ビーコンが備える電池の減りを抑制することができる。
【0079】
また、移動ビーコンが自らの位置を特定するための演算処理能力を有していなくとも、サーバによる演算により移動ビーコンの位置を特定することができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0081】
例えば、上記第1実施形態では、ゲートウェイ40を介してID情報がサーバ50へ送信される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図15に示されるような利用状況判定システム310とし、スマートフォン又はタブレット等の情報端末230を介してID情報がサーバ50へ送信されるようにしてもよい。これにより、ゲートウェイ40を建設現場の各箇所に設置することなく、移動ビーコン30が設置された対象物の位置を簡易かつ精度良く特定することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、通信方式としてLTE及びBLEを用いる場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。通信方式はどのようなものであってもよい。また、上記実施形態では、電波出力手段が固定ビーコン20である場合を例に説明したが、電波出力手段はどのようなものを用いてもよい。また、第1特定手段もどのようなものであってもよく、例えば、スマートフォン、又はタブレット等であってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、第2特定手段がサーバ50である場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。例えば、第2特定手段は、第1実施形態のゲートウェイ40、スマートフォン、又はタブレット等であってもよい。この場合には、ゲートウェイ40、スマートフォン、又はタブレットが上記実施形態のサーバ50の機能を有する。
【0084】
また、上記実施形態では、資機材35が高所作業車である場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、建設現場において繰り返し利用される資機材35であればどのようなものであってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、上記
図8に示されるように、例えば1日単位で利用状況を判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。利用状況を判定する時間単位は、資機材35の種類によって異なるため、資機材35の種類に応じて異なるものとしてもよい。例えば、半日単位で資機材35の利用状況を判定するようにしてもよい。
【0086】
また、上記では本発明に係るプログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0087】
10,310 利用状況判定システム
20 固定ビーコン
30 移動ビーコン
40 ゲートウェイ
50 サーバ
60 コンピュータ
200 データ収集部
202 データ記憶部
204 位置特定部
205 利用状況判定部
206 通知部
KT 管理端末