(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】板材の輪郭線の推定装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/13 20170101AFI20250220BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20250220BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20250220BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
G06T7/13
E04B2/56 601Z
E04G21/18 Z
G01B11/24 K
(21)【出願番号】P 2021061013
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】白井 真彦
【審査官】村山 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181244(JP,A)
【文献】特開平6-052292(JP,A)
【文献】特開2020-138317(JP,A)
【文献】特開2019-011666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
E04B 2/56
E04G 21/18
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の固定具を打ち込むことにより、複数枚並んで取付けられた矩形状の板材の輪郭線を推定する推定装置であって、
撮像装置で撮像された前記板材を含む全体画像に対して、複数の固定具の画像を特定する固定具画像特定部と、
前記固定具の画像が特定された前記全体画像に対して、エッジ検出処理を行うエッジ検出処理部と、
エッジ検出処理した前記全体画像に対して、直線検出処理を行う直線検出処理部と、
前記直線検出処理された前記全体画像に対して、前記板材の輪郭線を推定する輪郭線推定部と、を備え、
前記推定装置は、前記固定具画像特定部による前記複数の固定具の画像の特定後、前記直線検出処理部による直線検出処理の前の前記全体画像から、前記固定具の画像を除去する固定具画像除去部をさらに備えることを特徴とする板材の輪郭線の推定装置。
【請求項2】
前記固定具画像除去部は、前記固定具画像特定部で特定した固定具の画像の位置に基づいて、エッジ検出処理した前記全体画像から、前記固定具の画像を除去することを特徴とする請求項1に記載の板材の輪郭線の推定装置。
【請求項3】
前記推定装置は、前記固定具画像特定部で特定した固定具の画像に基づいて、前記板材の輪郭線のうち、前記板材同士の境界線に沿って、前記板材の内側に打ち込まれた固定具の固定具列を特定する固定具列特定部と、
特定された前記固定具列ごとに、複数の固定具の並びに応じた近似直線を算出する近似直線算出部と、
隣接する前記板材の境界線を挟んだ2つの前記固定具列の近似直線に基づいて、2つの前記近似直線と等距離にある直線を、前記輪郭線の推定線として算出する推定線算出部と、
前記推定線算出部で算出した推定線と、前記輪郭線推定部で推定した輪郭線の境界線と、に基づいて、前記推定した境界線の良否を判定する境界線判定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の板材の輪郭線の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の固定具を打ち込むことにより、複数枚並んで取付けられた矩形状の板材の輪郭線を推定する推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、内壁材または天井材等で使用される石膏ボードなどの板材は、ビスなどの複数の固定具を介して、下地に取付けられる。複数の固定具は、板材の少なくとも周縁に沿って、規定された間隔内で、板材に打ち込まれている。板材の施工後には、同じ固定具列の固定具の間隔が、規定された間隔内に収まっているかなど、板材の取付け状態が点検される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような点検は、目視で行うことも可能であるが、複数の固定具により、複数枚取付けられた板材を撮影して、撮像した画像から板材の取付け状態を確認することがある。その際には、各板材の輪郭線(すなわち、周縁部)を特定することは重要である。しかしながら、この輪郭線に沿った近傍には、複数の固定具が存在するため、画像処理により、板材の輪郭線を特定しようとして、これらの固定具の画像により、輪郭線を精度良く特定できないことが想定される。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の固定具により、複数枚取付けられた矩形状の板材に対して、板材の輪郭線を精度良く推定する推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る板材の輪郭線の推定装置は、複数の固定具を打ち込むことにより、複数枚並んで取付けられた矩形状の板材の輪郭線を推定する推定装置であって、撮像装置で撮像された前記板材を含む全体画像に対して、複数の固定具の画像を特定する固定具画像特定部と、前記固定具の画像が特定された前記全体画像に対して、エッジ検出処理を行うエッジ検出処理部と、エッジ検出処理した前記全体画像に対して、直線検出処理を行う直線検出処理部と、前記直線検出処理された前記全体画像に対して、前記板材の輪郭線を推定する輪郭線推定部と、を備え、前記推定装置は、前記固定具画像特定部による前記複数の固定具の画像の特定後、前記直線検出処理部による直線検出処理の前の前記全体画像から、前記固定具の画像を除去する固定具画像除去部をさらに備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、固定具画像除去部は、固定具の画像のうち、板材の内側に打ち込まれた固定具の画像を除去するので、直線検出処理部は、エッジ検出処理した全体画像に対して、直線検出処理を行う際に、固定具の画像の影響を受けずに直線を検出することができる。これにより、輪郭線推定部は、全体画像に対して、板材の輪郭線を精度良く推定することができる。
【0008】
ここで、固定具画像除去部による固定具の画像の除去は、例えば、エッジ検出処理を行う前の全体画像に対して行ってもよく固定具の画像を除去することができるのであれば、固定具の除去を行う画像は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記固定具画像除去部は、前記固定具画像特定部で特定した固定具の画像の位置に基づいて、エッジ検出処理した前記全体画像から、前記固定具の画像を除去する。
【0009】
この態様によれば、エッジ検出処理した全体画像から、固定具画像特定部で特定した固定具の画像の位置に基づいて、固定具の画像を除去するので、正確に固定具の画像を除去することができる。ここで、撮像装置で撮像された板材を含む全体画像に対して、固定具の画像を除去する場合には、エッジ検出および直線検出処理で検出されないように、固定具の画像の色調を、その周りの板材の色調に合わせなければならない。しかしながら、この態様によれば、固定具画像除去部は、エッジ検出処理した固定具の画像を除去するので、固定具の画像の色調を調整することなく、エッジ検出処理した全体画像から簡単に除去することができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記推定装置は、前記固定具画像特定部で特定した固定具の画像に基づいて、前記板材の輪郭線のうち、前記板材同士の境界線に沿って、前記板材の内側に打ち込まれた固定具の固定具列を特定する固定具列特定部と、特定された前記固定具列ごとに、複数の固定具の並びに応じた近似直線を算出する近似直線算出部と、隣接する前記板材の境界線を挟んだ2つの前記固定具列の近似直線に基づいて、2つの前記近似直線と等距離にある直線を、前記輪郭線の推定線として算出する推定線算出部と、前記推定線算出部で算出した推定線と、前記輪郭線推定部で推定した輪郭線の境界線と、に基づいて、前記推定した境界線の良否を判定する境界線判定部と、をさらに備える。
【0011】
この態様によれば、板材の境界線を挟んだ2つの固定具列の近似直線と等距離にある直線を境界線の推定線とし、この推定線と、輪郭線推定部で推定した境界線の輪郭線とに基づいて、推定した境界線の良否を判定するので、精度の良い境界線を求めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の固定具により、複数枚取付けられた矩形状の板材に対して、板材の輪郭線を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るビスピッチの推定装置の模式図である。
【
図2】
図1に示す推定装置の演算装置の制御ブロック図である。
【
図3】
図2に示す境界線決定部の制御ブロック図である。
【
図4】ビスの画像を特定した全体画像を示した図である。
【
図5】
図4のA部における拡大画像であり、(a)は、エッジ検出処理を説明するための図であり、(b)は、ビスの画像を除去する処理を説明するための図であり、(c)は、直線検出処理を説明するための図である。
【
図6】直線検出処理後の全体画像を示した図である。
【
図7】(a)は、隣接する石膏ボードの境界線を挟んだ2つのビス列の近似直線を示した図であり、(b)は、(a)に、境界線の推定線を示した図である。
【
図8】
図1に示す推定装置を用いた推定フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、
図1~
図8を参照しながら、本実施形態に係るビスピッチの推定装置10を説明する。
【0015】
1.板材と固定具について
本実施形態に係る推定装置10は、内壁材または天井材等で使用される複数枚取付けられた矩形状の板材の輪郭を推定する装置であり、本実施形態では、推定装置10は、板材に打ち込まれた固定具のピッチをさらに推定する。ここで、板材の少なくとも周縁に沿って、固定具が所定の間隔で打ち込まれている。板材と固定具の組み合わせとしては、軒天材(軒下の化粧材)とそれを固定する釘、木造住宅等における構造用合板とそれを固定する釘、床の下地材とそれを固定する釘・ビスなどを挙げることができる。
【0016】
以下の実施形態では、板材として、石膏ボード5を例示し、固定具として、ビス6を例示する。したがって、石膏ボード5が、本発明でいうところの「板材」に相当し、ビス6が、本発明でいうところの「固定具」に相当し、たとえば、ビス6のピッチ(ビスピッチ)が、本発明では、固定具の間隔となる。
【0017】
なお、石膏ボード5を固定する固定具は、釘であってもよい。石膏ボード5は、内壁材または天井材等で使用される。石膏ボード5は、法令等で規定されたピッチ以下の条件で、石膏ボード5の長手方向および短手方向に沿ってビス6で固定されている。ここでいう、ビスピッチは、石膏ボード5の長手方向および短手方向に沿って隣接したビス6、6同士の間隔である。なお、内壁材とし石膏ボード5を取り付ける場合には、
図1に示すように、石膏ボード5の長辺を、鉛直方向に沿わせ、石膏ボード5の短手を、水平方向に沿わせて配置される。
【0018】
ここで、複数のビス6、6、…は、石膏ボード5の周縁(輪郭線B)よりも内側において、周縁(輪郭線B)に沿って、規定されたピッチ内で、石膏ボード5に打ち込まれている。石膏ボード5の取付け施工後には、石膏ボード5の取付け状態を確認するために、石膏ボード5の輪郭線Bに沿ったビス6の打ち込まれた位置等を確認する。
【0019】
さらに、本実施形態では、複数のビス6、6、…は、石膏ボード5の幅方向の中央において、石膏ボード5の長手方向に沿って、規定されたピッチ内で、石膏ボード5に打ち込まれている。石膏ボード5の取付け施工後には、ビスピッチが、規定されたピッチ内に収まっているか、ビスピッチが点検される。ビスピッチは、石膏ボード5を正面視した際に、長手方向および短手方向に沿って隣接するビス6の中心間距離である。
【0020】
このような点から、本実施形態では、推定装置10は、撮像装置20で撮像された石膏ボード5を含む画像Gから、石膏ボード5の輪郭線B1を推定し、必要に応じて、隣接するビス6のピッチを推定する。
【0021】
2.推定装置10のハードウエア構成について
推定装置10は、ハードウエアとして、ROM、RAM等で構成され、石膏ボード5の条件、ビスピッチの推定プログラム等が記録された記憶装置10Aと、ビスピッチの推定プログラムを実行する演算装置10Bと、を備えている。
【0022】
推定装置10には、入力装置31と出力装置32とが接続されている。本実施形態では、入力装置31と出力装置32とが一体となったタッチパネルディスプレイであってもよい。入力装置31を介して、石膏ボード5の仕様条件、ビスピッチの推定プログラム等のデータが入力される。本実施形態では、入力装置31を介して、撮像装置20で撮像した画像データが入力されてもよい。入力装置31で入力されたデータは、記憶装置10Aに記憶される。出力装置32では、撮像装置20で撮像された画像データ、演算装置10Bで演算された演算結果等が、表示される。
【0023】
本実施形態では、推定装置10は、記憶装置10Aおよび演算装置10Bで構成されていたが、例えば、入力装置31および出力装置32を備えたものであってもよい。推定装置10は、入力装置31および出力装置32に加えて、撮像装置20をさらに備え、これらが一体となったスマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末であってもよい。
【0024】
3.推定装置10のソフトウエア構成について
本実施形態では、
図2に示すように、推定装置10は、ビス画像特定部(固定具画像特定部)11、エッジ検出処理部12、ビス画像除去部(固定具画像除去部)13、直線検出処理部14、輪郭線推定部15、境界線決定部16、ボード画像抽出部17、およびピッチ算出部18を備えている。
【0025】
3-1.ビス画像特定部11について
ビス画像特定部11は、撮像装置20で撮像された石膏ボード5を含む全体画像G1に対して、複数のビス6の画像を特定する。具体的には、全体画像G1における、各ビス6の位置および範囲を特定する。ビスの形状を機械学習したカスケード分類器などの分類器を用いて、全体画像G1からビス6を識別する。
【0026】
識別されたビス6には、印Mが付される。識別された各ビス6は、全体画像G1の四角枠の印Mで囲まれた内部にあり、ビス6の中心は、印Mの中心に一致する。また、本実施形態では、印Mでビス6を囲っているが、印Mは、丸枠、菱型枠などの他の形状であってもよく、ビス6を塗り潰すように、ビス6の位置に印をプロットしてもよい。ここでは、ビス6の形状から、全体画像G1に対するビス6の位置(座標)が少なくとも特定されればよい。ビス画像特定部11は、変換した正面画像を二値化処理またはグレースケール処理し、周りと画素と所定の明度の差を有した画素数から、ビス6を識別してもよい。
【0027】
3-2.エッジ検出処理部12について
本実施形態では、ビス6の画像が特定された全体画像G1に対して、エッジ検出処理を行う。エッジ検出処理では、Canny法などを利用して、全体画像G1のエッジを検出してもよく、Frei-Chen、Prewitt、Roberts、Sobelなどの画像行列に対して各種カーネルを順番にコンボリューションすることで、全体画像G1のエッジを検出してもよい。これらのエッジ検出は、一般的に知られたエッジ検出処理であるため、詳細な説明は省略する。このようにして、
図5(a)に示すようなエッジ検出処理を行った全体画像G2を得ることができる。全体画像G2には、石膏ボード5の境界線B2およびビス6の境界線が表示される。
図5(a)~(c)は、
図4のA部における拡大画像であり、
図4のビス6は、その位置を明確にするために、
図5(a)に対して、大きく描いている。
【0028】
3-3.ビス画像除去部13について
ビス画像除去部13は、ビス画像特定部11による複数のビス6、6、…の画像の特定後、後述する直線検出処理部14による直線検出処理の前に、ビス6の画像の除去を行う。具体的には、本実施形態では、ビス画像除去部13は、エッジ検出処理を行った全体画像G2から、ビス画像特定部11で特定されたビス6の画像を除去する。
【0029】
ビス6の画像の除去は、ビス6の画像(または、
図4に示す印Mで囲まれた領域の画像)を除去した後、たとえば、一般的に知られた膨張・収縮処理により、ビス6の画像を取り除いた部分の画素に、その周り画像の輝度と同様の輝度の画素で埋めてもよい。このように、エッジ検出処理を行った全体画像G2から、ビス6の存在が取り除かれるような処理であれば、特にその処理は限定されているものではない。
【0030】
このように、エッジ検出処理した全体画像G2から、ビス画像特定部11で特定したビス6の画像の位置に基づいて、ビス6の画像を除去するので、正確にビス6の画像を除去することができる。ビス画像除去部13は、エッジ検出処理したビス6の画像G1を除去するので、ビス6の画像の色調を調整することなく、エッジ検出処理した全体画像G2から簡単に除去することができる。なお、撮像装置20で撮像された石膏ボード5を含む全体画像G1に対して、ビス6の画像を除去してもよいが、この場合には、エッジ検出および直線検出処理で検出されないように、ビス6の画像の色調を、その周りの石膏ボードの色調に合わせなければならない。
【0031】
3-4.直線検出処理部14について
直線検出処理部14は、エッジ検出処理した全体画像G2に対して、直線検出処理を行う。これにより、エッジ処理によるたとえば不連続となった輪郭線B1を、繋げた1つの直線LTとして得ることができる。直線検出処理部14は、一般的に知られたハフ変換により、エッジ検出処理した全体画像G2に対して、直線検出を行うが、たとえば、LSD(Line Segment Detector)により、直線検出を行ってもよい。
【0032】
3-5.輪郭線推定部15について
輪郭線推定部15は、直線検出処理された全体画像G3に対して、石膏ボード5の輪郭線B3を推定する。具体的には、輪郭線推定部15は、直線検出処理部14で検出した直線LTの交点を算出し、4つの交点と4つの直線LTで構成される画像が、石膏ボード5を囲む輪郭線B3と推定する。なお、
図6では、撮像装置20で撮像した全体画像G1に対して、直線LTと輪郭線B3とを示している。
【0033】
本実施形態では、ビス画像除去部13は、ビスの画像のうち、石膏ボード5の輪郭線B2に沿って、石膏ボード5の内側に打ち込まれたビス6も含めたすべてのビス6の画像を除去するので、直線検出処理部14は、エッジ検出処理したG2に対して、直線検出処理を行う際に、ビスの画像の影響を受けずに直線を含む石膏ボード5の輪郭線B3を検出することができる。これにより、輪郭線推定部15は、全体画像G1に対して、石膏ボード5の輪郭線B3を精度良く推定することができる。
【0034】
3-6.境界線決定部16について
境界線決定部16は、推定した輪郭線B3のうち、2枚の石膏ボード5の境界線BLが、適正な境界線であるかを判定し、適正な境界線であれば、これを2枚の石膏ボード5の境界線であると決定する。
図3に示すように、境界線決定部16は、ビス列特定部(固定具列特定部)16a、近似直線算出部16b、推定線算出部16c、および境界線判定部16dを備えている。
【0035】
図4および
図7(a)に示すように、ビス列特定部16aは、ビス画像特定部11で特定したビスの画像に基づいて、全体画像G1の石膏ボード5の輪郭線B1のうち境界線に沿って、石膏ボード5の内側に打ち込まれたビス6のビス列PA、PB、…を特定する。ビス列のPA、PB、…の特定は、たとえば、ビス画像特定部11で特定したビス6に対して、全体画像G1の縦方向沿って並んだ複数のビス6、6、…の個数が規定個数(たとえば10個)以上である場合には、これらの複数のビス列PA、PB、…をビス列のビスであると判定する。
【0036】
図7(a)に示すように、近似直線算出部16bは、ビス列PA、PB、…ごとに、複数のビス6、6、…の並びに応じた近似直線LA、LBを算出する。具体的には、石膏ボード5を含む全体画像G1において、直交座標系を設定し、各ビス列PA、PBのビス6、6、…の中心に対して、最小二乗法により、直線の方程式を求め、この方程式の直線を、近似直線LA、LBとする。
【0037】
図7(b)に示すように、推定線算出部16cは、隣接する石膏ボード5、5の境界線B4を挟んだ2つのビス列LA、LBの近似直線に基づいて、2つの近似直線LA、LBと等距離にある直線を、境界線の推定線Lとして算出する。なお、推定線Lは、推定線Lの任意の点から、近似直線LA、LBに下した垂線が、同じ長さとなる。これにより、ビス列LA、LBのならびに基づいた境界線の推定線Lを算出することができる。
【0038】
境界線判定部16dは、推定線算出部16cで算出した推定線B5と、輪郭線推定部15で推定した輪郭線B3の境界線B4と、に基づいて、推定した境界線B4の良否を判定する。具体的には、推定線B5の傾きに対して、境界線B4の傾きが、規定の範囲内にあり、推定線B5の切片が、境界線B4の切片が、規定の範囲内にある条件で、境界線B4が適正な直線で判定し、これを隣接する石膏ボード5、5の境界線であると決定する。これにより、精度の良い境界線B4を求めることができる。
【0039】
3-7.ボード画像抽出部17について
ボード画像抽出部17は、石膏ボード5を含む画像から、石膏ボード5の全体画像G1から、輪郭線B3で囲まれた石膏ボード5の画像を抽出する。ボード画像抽出部17は、抽出した石膏ボード5の画像を、正面から視た正面画像に射影変換する。抽出した石膏ボード5の画像を、正面から視た正面画像に射影変換することができるのであれば、射影変換の手法は特に限定されるものではない。石膏ボード5の輪郭線B3をより正確に特定したので、射影変換により、より精度の高い石膏ボード5の正面画像を得ることができる。
【0040】
3-8.ピッチ算出部18について
ピッチ算出部18は、まず、射影変換した画像に対して、ビス6の画像を特定し、ピッチ算出部18は、石膏ボード5の長手方向(鉛直方向)および短手方向(水平方向)に判定したビス列に対して、隣り合うビス6、6のビスピッチPx、Pyを算出する(
図1参照)。具体的には、ビス6の中心、または、識別の印の中心の間の距離をピクセル数として算出する。なお、ここで、石膏ボード5の長辺または短辺の長さを予め入力しておけば、この長辺および短辺から、各ピクセルの縦横の実長さを算出でき、この実長さからビスピッチPx、Pyを算出することができる。この他にも、実長さのスケールまたはこれに対応する目印とともに、石膏ボード5の画像を取得すれば、各ピクセルの縦横の実長さを算出することができる。
【0041】
ピッチ算出部18は、算出したビスピッチPx、Pyが、規定の範囲に収まっているかをさらに判定する。測定したビスピッチが、規定の範囲に収まっている場合には、たとえば、対応する2つのビスを同じ色の円で塗りつぶし、規定の範囲に収まっていない場合には、対応する2つのビスを異なる色の円で塗りつぶしてもよく、これらの違いを明確にできれば、特にその手段は限定されるものではない。
【0042】
以下に、
図10を参照して、推定装置を用いた推定フロー図を説明する。
まず、ステップS1では、撮像装置20で、検査対象範囲として、石膏ボード5を含む範囲を撮影し、全体画像G1を取得する。次に、ステップS2では、ビス画像特定部11による11により、ビス6の画像を特定する。ステップS3では、エッジ検出処理部12により、ビス6の画像が特定された全体画像G1に対して、エッジ検出処理を行う。
【0043】
ステップS4では、ビス画像除去部13により、エッジ検出処理を行った全体画像G2から、ビス6の画像のうち、石膏ボード5の輪郭線B1に沿って、石膏ボード5の内側に打ち込まれたビス6を含むすべてのビス6の画像を除去することができる。ステップS5では、直線検出処理部14により、エッジ検出処理した全体画像G2に対して、直線検出処理を行う。ステップS6では、輪郭線推定部15により、直線検出処理された全体画像G3に対して、石膏ボード5の輪郭線B3を推定する。
【0044】
ステップS7では、ビス列特定部16aにより、石膏ボード5の内側に打ち込まれたビス6のビス列PA、PB、…を特定する。ステップS8では、近似直線算出部16bにより、ビス列PA、PB、…ごとに、複数のビス6、6、…の並びに応じた近似直線LA、LBを算出する。ステップS9では、推定線算出部16cにより、2つのビス列LA、LBの近似直線に基づいて、境界線の推定線B3を算出する。ステップS10では、境界線判定部16dは、推定線算出部16cで算出した推定線Lと、輪郭線推定部15で推定した境界線B4と、に基づいて、推定した境界線の良否を判定し、適正である場合には、この境界線B4を、境界線に決定する。
【0045】
ステップS11では、ボード画像抽出部17により、石膏ボード5を含む全体画像G1から、石膏ボード5の画像を抽出し、ステップS12では、石膏ボード5の画像を、必要に応じて、ボード画像抽出部17により、正面画像に射影変換する。
【0046】
次に、ステップS13では、ピッチ算出部18により、ステップS2で特定した射影変換前のビス6の画像(位置)から、射影変換後の正面画像に対するビス6の位置座標を特定する。ステップS14では、ピッチ算出部18により、特定したビス6の画像から、隣り合うビスのビスピッチPx、Pyを算出する。最後に、ステップS15で、ピッチ算出部18により、ビスピッチが、規定の範囲に収まっているかを判定する。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0048】
5:石膏ボード(板材)、6:ビス(固定具)、10:推定装置、11:ビス画像特定部(固定具画像特定部)、12:エッジ検出処理部、13:ビス画像除去部(固定具画像除去部)、14:直線検出処理部、15:輪郭線推定部、16a:ビス列特定部(固定具列特定部)、16b:近似直線算出部、16c:推定線算出部、16d:境界線判定部、20:撮像装置、B1~B3:輪郭線、B4:境界線、L:推定線、PA、PB:ビス列(固定具列)、L:推定線、LA、LB:近似直線、G1~G3:全体画像