(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】容器及び容器の蒸気排出方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20250220BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D51/16 300
(21)【出願番号】P 2021117247
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】相馬 克彦
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-058809(JP,A)
【文献】実開昭49-090501(JP,U)
【文献】登録実用新案第3214710(JP,U)
【文献】特開2011-093540(JP,A)
【文献】特開2011-093594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0019878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する容器本体
と、
前記容器本体の開口部を覆う天面部と、前記容器本体の本体縁部に着脱可能に固定される蓋縁部とを
有する蓋と、を備える
容器であって、
前記天面部は、加熱時の内圧によって局所的な変形を促す変形部を有し、
前記蓋縁部は、前記本体縁部に嵌合する嵌合部と、前記嵌合部に挟まれて配置された1つ以上の蒸気排出部とを有し、
前記蒸気排出部は、前記変形部よりも上方に突出し、
前記蒸気排出部は、前記変形部の変形に伴って上方に変位し、前記容器本体の内面に対向し、
前記変形部の変形前に前記容器本体の内面に当接して延びる対向面を含む仕切部を有
し、
前記天面部のうち前記変形部の周縁が、前記蒸気排出部において前記嵌合部に対してよりも高い位置に達し前記仕切部に接続され、
前記変形部は、前記容器本体の対称軸を含む断面視において、前記周縁に向かって、前記容器本体の対称軸の下方から上方に向かう方向で傾斜が増加するように湾曲傾斜する、容器。
【請求項2】
前記蒸気排出部は、前記対向面を含む内壁と、前記本体縁部を挟んで前記内壁の反対側に配置される外壁と、前記内壁及び前記外壁の上部を繋ぐ頂部とを有し、
前記頂部は、前記内壁から前記外壁に向かって上方に傾斜する、請求項1に記載の
容器。
【請求項3】
前記内壁は、前記容器本体の内面に当接し又は近傍に配置されて延び、前記外壁は、前記本体縁部との間に隙間を有する、請求項
2に記載の
容器。
【請求項4】
前記仕切部は、前記変形部の変形に伴って変形して形成される排気口形成部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の
容器。
【請求項5】
前記対向面は、前記容器本体の対称軸に対して傾斜する、請求項1~4のいずれか一項に記載の
容器。
【請求項6】
前記天面部は、前記
断面視において、中心から半径方向外側に向かって前記容器本体の対称軸の下方に傾斜した後、上方へ傾斜する、請求項1~5のいずれか一項に記載の
容器。
【請求項7】
前記天面部は、前記変形部よりも前記中心側に支持部を有
する、
請求項6に記載の
容器。
【請求項8】
前記変形部は、湾曲部及び屈曲部のいずれかである、請求項1~7のいずれか一項に記載の
容器。
【請求項9】
食品を収容する容器本体と、前記容器本体の開口部を覆う天面部と、前記容器本体の本体縁部に着脱可能に固定される蓋縁部とを有する蓋と、を備える容器の蒸気排出方法であって、
前記天面部は、加熱時の内圧によって局所的な変形を促す変形部を有し、
前記蓋縁部は、前記本体縁部に嵌合する嵌合部と、前記嵌合部に挟まれて配置された1つ以上の蒸気排出部とを有し、
前記蒸気排出部は、前記変形部よりも上方に突出し、
前記蒸気排出部は、前記変形部の変形に伴って上方に変位し、前記容器本体の内面に対向し、
前記変形部の変形前に前記容器本体の内面に当接して延びる対向面を含む仕切部を有し、
加熱時の前記変形部の変形に伴い、前記仕切部が前記容器本体の内面から蒸気排出可能に離れることにより前記容器内部から蒸気が排気され
、
前記天面部のうち前記変形部の周縁が、前記蒸気排出部において前記嵌合部に対してよりも高い位置に達し前記仕切部に接続され、
前記変形部は、前記容器本体の対称軸を含む断面視において、前記周縁に向かって、前記容器本体の対称軸の下方から上方に向かう方向で傾斜が増加するように湾曲傾斜する、容器の蒸気排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を収容する容器及び容器並びに容器の蒸気排出方法に関し、特に、閉蓋状態で電子レンジ等により加熱調理可能な容器等に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を収容する容器には、電子レンジ等により加熱調理する際に発生する蒸気を排気する機能を備えるものがある。蒸気を排気できる容器として、加熱時における容器の内圧と容器素材の剛性低下とによって蓋が弾け飛ばないように、蓋の天面部にU字形状やC字形状に打ち抜かれた弁等の蒸気孔を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。また、蓋の側壁に突出部を設けることにより、排気を促すサイドエアーを設けたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、蒸気を排気できる別の容器として、蓋の天面部に凹部又は湾曲部を設け、凹部又は湾曲部にスリット又は切れ込み(スリット弁)を設け、加熱により容器の内圧がかかることでスリット弁が開口して蒸気を排気するものがある(例えば、特許文献3~6参照)。また、別の容器として、レーザー照射によって形成された多数の細孔を設け、その細孔から蒸気を排気するものがある(例えば、特許文献7参照)。
【0004】
特許文献1、2、及び7の容器のように、蒸気孔、サイドエアー、細孔等の排気口を設ける構成では、排気口のサイズや個数により虫の侵入や埃の混入等の異物混入を抑制する効果は期待できるが、これらを完全に防ぐことはできない。また、特許文献3~6の容器のように、スリット弁によって排気口を設ける構成では、排気口が塞がった状態から加熱時の容器内圧によってスリット弁が開口する方式であり、排気口が完全に塞がった状態を維持できれば異物混入防止を図れるものの、外圧によって容易に隙間が生まれるため、万能ではない。また、蒸気孔やスリット弁に低粘着ラベルや切り込みラベルを貼り付けて上記問題を改善する方法があるが、コストアップと工数が増加することが問題となる。
【0005】
また、容器への異物混入を防止するために、別の容器として、蓋の天面部に蒸気排出用の孔を設けず、加熱により発生する蒸気により軟化した蓋フランジ部が本体フランジ部の上面から浮上することにより、蒸気を排気するものがある(例えば、特許文献8参照)。具体的には、特許文献8の容器は、蓋内嵌合面部の外面に蒸気の通路となる複数の連通用凹溝を有し、閉蓋状態において、蓋フランジ部に設けられた環状の下向き凸条のみが本体フランジ部の上面に当接している。容器は、下向き凸条の内側において蓋フランジ部と本体フランジ部と下向き凸条とで形成された環状の内側離間空間部を有する。加熱時において蒸気は連通用凹溝に進入し、内側離間空間部に充満する。この充満した蒸気で蓋フランジ部が加熱され、蓋フランジ部の樹脂が軟化する。樹脂の軟化により蓋フランジ部が容易に上方に浮上し、下向き凸条と本体フランジ部の上面との間に隙間が形成され、その隙間から蒸気が外部に排気される。
【0006】
特許文献8の容器では、高出力電子レンジ等の加熱による容器の急激な内圧上昇によって発生した蒸気が連通用凹溝に一気に進入した場合、蓋フランジ部の浮上が間に合わずに蒸気が一気に漏れ出すおそれがある。
【0007】
また、別の容器として、蓋の外周部又は容器本体の嵌合部に蒸気排出用の溝を形成し、容器の内圧上昇によって蓋を押し上げて閉塞された溝部分を開放し、開放された溝部分から蒸気を排気するものがある(例えば、特許文献9~11参照)。特許文献9~11の容器においても、特許文献8と同様の問題が起こりうる。また、特許文献11の容器では、蓋が上方に可動し、排気部を形成するため、シュリンク包装等に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-191161号公報
【文献】特開2010-58809号公報
【文献】特開2019-167158号公報
【文献】登録実用新案第3220615号公報
【文献】特開2019-81612号公報
【文献】特開2019-147574号公報
【文献】特開2018-20851号公報
【文献】特開2020-132240号公報
【文献】特開2001-80682号公報
【文献】特開平10-316177号公報
【文献】特開2010-215259号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、孔を有しない構成であっても、電子レンジ等による加熱調理時に容器から外れずに蒸気の排出が可能な容器及び容器の蒸気排出方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するための容器の蓋は、食品を収容する容器本体の開口部を覆う天面部と、容器本体の本体縁部に着脱可能に固定される蓋縁部とを備える容器の蓋であって、天面部は、加熱時の内圧によって局所的な変形を促す変形部を有し、蓋縁部は、本体縁部に嵌合する嵌合部と、嵌合部に挟まれて配置された1つ以上の蒸気排出部とを有し、蒸気排出部は、変形部よりも上方に突出し、蒸気排出部は、変形部の変形に伴って上方に変位し、容器本体の内面に対向し、容器本体の内面に当接して延びる対向面を含む仕切部を有する。
【0011】
上記容器の蓋によれば、天面部が加熱時に変形可能な変形部を有することにより、加熱時の容器内の内圧上昇を緩やかにすることができる。また、蓋縁部が蒸気排出部を有し、蒸気排出部が仕切部を有することにより、虫や埃等の異物の混入を抑制することができる。蒸気排出部は、変形部の変形に伴って開口し、蒸気を排気する。
【0012】
また、本発明の具体的な態様では、容器の蓋において、蒸気排出部は、対向面を含む内壁と、本体縁部を挟んで内壁の反対側に配置される外壁と、内壁及び外壁の上部を繋ぐ頂部とを有し、頂部は、内壁から外壁に向かって上方に傾斜する。この場合、加熱時において、嵌合部による嵌合を維持しつつ、変形部の変形に伴い蒸気排出部が変形しつつ変位して容器の外縁部のうち蒸気排出部の位置において排気のための隙間が形成されやすくなる。これにより、高出力かつ長時間の加熱調理の場合でも容器から蓋が外れずに排気機能を維持することができる。また、蒸気排出部の上方傾斜により、シュリンクフィルムを包装した容器において、シュリンクフィルムによる蒸気排出部の変形抑制を防止することができる。つまり、シュリンクフィルム等が蒸気排出用の排気口の出現を妨げることを防止する。
【0013】
また、本発明の別の態様では、内壁は、容器本体の内面に当接し又は近傍に配置されて延び、外壁は、本体縁部との間に隙間を有する。この場合、加熱時に蒸気排出部と容器本体との間に隙間を形成しやすくすることができる。
【0014】
また、本発明のさらに別の態様では、仕切部は、変形部の変形に伴って変形して形成される排気口形成部を有する。この場合、排気口形成部は、蒸気排出部が加熱時の容器の内圧及び温度上昇により変形又は変位することで蒸気排出部と本体縁部との間に排気口を形成する。排気口は、シュリンクフィルムや帯ラベル等で蓋が固定されている場合にも発現する。
【0015】
また、本発明のさらに別の態様では、対向面は、容器本体の対称軸に対して傾斜する。この場合、蒸気排出部の変位をより促進することができ、排気口又は隙間の形成が確実なものとなる。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様では、天面部は、容器本体の対称軸を含む断面視において、中心から半径方向外側に向かって容器本体の対称軸の下方に傾斜した後、上方へ傾斜する。この場合、加熱時の容器内の内圧上昇に伴う天面部の変形において、部分的上昇が生じて空間が広くなり、蒸気を溜めやすくして容器内の内圧上昇をより抑えることができる。
【0017】
また、本発明のさらに別の態様では、天面部は、変形部よりも中心側に支持部を有し、変形部は、断面視において、支持部の外縁から蓋縁部に向かって、対称軸の下方から上方に向かう方向に湾曲傾斜する。この場合、支持部を設けることにより、天面部全体の下方から上方への傾斜変化を大きくすることができ、加熱時の天面部の変形領域を変形部だけでなく支持部の外側まで拡張することができる。また、支持部を設けることにより、シュリンクフィルムを包装した容器において、シュリンクフィルムによる蒸気排出部の変形抑制を防止することができる。
【0018】
また、本発明のさらに別の態様では、変形部は、湾曲部及び屈曲部のいずれかである。この場合、天面部を変形しやすくすることができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明に係る容器の蒸気排出方法は、食品を収容する容器本体と、容器本体の開口部を覆う天面部と、容器本体の本体縁部に着脱可能に固定される蓋縁部とを有する蓋と、を備える容器の蒸気排出方法であって、天面部は、加熱時の内圧によって局所的な変形を促す変形部を有し、蓋縁部は、本体縁部に嵌合する嵌合部と、嵌合部に挟まれて配置された1つ以上の蒸気排出部とを有し、蒸気排出部は、変形部よりも上方に突出し、蒸気排出部は、変形部の変形に伴って上方に変位し、容器本体の内面に対向し、容器本体の内面に当接して延びる対向面を含む仕切部を有し、加熱時の変形部の変形に伴い、仕切部が容器本体の内面から蒸気排出可能に離れることにより容器内部から蒸気が排気される。
【0020】
上記容器の蒸気排出方法によれば、天面部が加熱時に変形可能な変形部を有することにより、加熱時の容器内の内圧上昇を緩やかにすることができる。また、蓋縁部が蒸気排出部を有し、蒸気排出部が仕切部を有することにより、加熱前には虫や埃等の異物の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)及び(B)は、実施形態に係る容器を説明する概念的な平面図及び正面図である。
【
図2】(A)は、
図1(A)に示す容器の断面図であり、(B)は、容器の蓋の断面図であり、(C)は、容器本体の断面図である。
【
図3】(A)~(D)は、
図1(A)に示す容器の蓋を説明する概念的な部分拡大断面図であり、(A)はA-A断面図であり、(B)は、B-B断面図であり、(C)は、C-C断面図であり、(D)は、D-D断面図である。
【
図4】(A)は、
図3(A)~3(C)に示す蓋の断面図を重ねて示した図であり、(B)は、加熱時の容器の概念的な断面図であり、(C)は、容器の側面のうち蓋の蒸気排出部を含む部分拡大図であり、(D)は、蒸気排出部の拡大断面図である。
【
図5】容器を積み重ねる例を説明する概念図である。
【
図6】(A)は、加熱調理前の容器の状態を示す概念図であり、(B)は、加熱調理時の容器の状態を示す概念図である。
【
図7】(A)及び(B)は、蓋の嵌合部を説明する断面図である。
【
図8】(A)~(C)は、
図1(A)に示す容器の蓋の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施形態〕
以下、
図1(A)等を参照しつつ本発明に係る蓋20を取り付けた容器100について説明する。容器100は、食品又は食材を収容するものである。容器100は、容器本体10内に収容した食品を、蓋20を閉じた状態、すなわち閉蓋状態のままで電子レンジ等によって加熱調理する用途に用いることができる。
【0023】
図1(A)、1(B)、及び
図2(A)に示すように、容器100は、容器本体10と、蓋20とを備える。
図1(B)及び
図2(A)は、容器100全体をシュリンクフィルム30で包装した状態を示す。容器100は、平面視において、円形、楕円形、矩形、多角形等の様々な形状を有する。
図1(A)等の容器100は、平面視で円形の外形を有する例を示す。なお、図示は省略するが、容器100の形状が矩形や多角形である場合、容器100の辺部は、直線状でも曲線状でもよい。容器100の形状が矩形や多角形である場合、容器100の角部は、丸みを有することが好ましい。以下、容器100が平面視で円形である例について説明する。
【0024】
図1(A)、1(B)、
図2(A)、及び2(C)に示すように、容器本体10は、上側に開口部11を有する丼型の器であり、底面部12と、本体側面部13と、本体縁部14とを有する。底面部12は、平面視で略円形を有する。底面部12の下部には、脚部15が設けられている。なお、脚部15は省略してもよい。本体側面部13は、円筒状であり、より詳細には底面部12の周縁12aから上方に向けて拡がるように延びるテーパ形状を有する。本体縁部14は、本体側面部13の上端13aの外側に突出して設けられている。本体縁部14は、容器本体10の開口部11の全周に設けられている。本体縁部14と後述する蓋縁部22の嵌合部23とが嵌合可能となっている。本体縁部14は、容器本体10の周縁をカールして形成してもよいし、突起として成形してもよい。容器本体10は、紙又は樹脂等で形成される。容器本体10の材料は電子レンジによる加熱に耐えうる耐熱性を有する。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等が挙げられる。
【0025】
図1(A)、1(B)、
図2(A)、及び2(B)に示すように、蓋20は、天面部21と、蓋縁部22とを有する。蓋20は、容器本体10の形状に対応しており、容器本体10に嵌合可能となっている。
【0026】
蓋20は、紙又は樹脂等で形成される。蓋20の材料は電子レンジによる加熱に耐えうる耐熱性を有する。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン等が挙げられる。また、蓋20は、加熱又は加熱調理時に、容器100の内圧及び熱により変形可能な程度の厚さとなっている。蓋20は、例えば、真空成形、圧空成形等によって成形される。
【0027】
天面部21は、容器本体10の開口部11を覆うものである。天面部21は、平面視で略円形を有する。
【0028】
図3(A)~3(D)は、
図1(A)等に示す蓋20を説明する概念的な部分拡大断面図である。
図3(A)は、
図1(A)のA-A断面図であり、
図3(B)は、B-B断面図であり、
図3(C)は、C-C断面図であり、
図3(D)は、D-D断面図である。
図4(A)は、
図3(A)~3(C)に示す蓋20の断面図を重ねて示した図であり、
図4(B)は、加熱時の容器100の概念的な断面図である。また、
図4(C)は、容器100の側面のうち蓋20の蒸気排出部24を含む部分拡大図である。また、
図4(D)は、蒸気排出部24の拡大断面図である。
図3(A)等に示すように、天面部21は、容器本体10の対称軸OAを通る中心又は中央から半径方向外側に向かって順に、平坦部21aと、支持部21bと、変形部21cとを有する。
【0029】
平坦部21aは、平面視で略円形であり、対称軸OAを中心として配置される。支持部21bは、平坦部21a及び変形部21cよりも対称軸OA方向に関して上方に突出している。これに対応して、支持部21bは、円筒状面と、環状の平面と、テーパ面とを有する。支持部21bは、シュリンクフィルム30を支持してフィルムによる、後述する蒸気排出部24の変形抑制を防止し、排気口24eを確実に発現することができる。また、支持部21bは、他の蓋20を積層する際に他の蓋20を支持することができる。
図3(D)に示すように、支持部21bは、他の蓋20を積層した場合に、蓋20同士が重なって剥がし難くなるのを防止するための凹部Cを有する。
【0030】
変形部21cは、支持部21bの外縁から半径方向外側に延びている。変形部21cは、加熱時の容器100の内圧によって蓋20の局所的な変形を促すものである。変形部21cは、曲面を有する湾曲部BEとなっている。湾曲部BEにより、天面部21を変形しやすくすることができる。変形部21cは、対称軸OAを含む断面視において、支持部21bの外縁から半径方向外側にある蓋縁部22に向かって、対称軸OAの下方から上方に向かう方向に湾曲傾斜している。図示の例では、変形部21cは、内側に設けられた段差21dの部分で下に窪み、段差21dから外側に向かって上方に湾曲傾斜している。天面部21は、支持部21bと併せて全体的に見ても、中心から半径方向外側に向かって対称軸OAの下方に傾斜した後、上方へ傾斜している。天面部21が上記傾斜を有することにより、加熱時の容器100内の内圧上昇に伴う天面部21の変形において、部分的上昇が生じて空間が広くなり、蒸気を溜めやすくして容器100内の内圧上昇をより抑えることができる。特に、支持部21bを設けることにより、天面部21全体の下方から上方への傾斜変化を大きくすることができ、加熱時の天面部21の変形領域を変形部21cだけでなく支持部21bの外側まで拡張することができる。
【0031】
天面部21は、容器100を段積み可能にするストッパーST1,ST2を有する。外側のストッパーST1は、変形部21cに設けられた段差21dによって形成されている。内側のストッパーST2は、支持部21bと変形部21cとの境界によって形成されている。
図5は、蓋20に容器100を積み重ねた例を説明する図である。
図5に示すように、容器100が第1及び第2の容器規格の容器101,102である場合、ストッパーST1によって蓋20の上部に乗せた容器100の横方向、すなわち水平方向の移動を抑制する。容器100が第3の容器規格の容器103である場合、ストッパーST2によって蓋20の上部に乗せた容器100の横方向、すなわち水平方向の移動を抑制する。
【0032】
図2(A)等に戻って、蓋縁部22は、容器本体10の本体縁部14に着脱可能に固定されるものである。蓋縁部22は、円筒状であり、天面部21の周縁21eから本体縁部14を覆いつつ下方に向けて拡がるように延びている。蓋縁部22は、容器本体10の本体縁部14に嵌合する嵌合部23(
図3(B)~3(D)参照)と、嵌合部23に挟まれて配置された1つ以上の蒸気排出部24(
図3(A)参照)とを有する。
図1(A)の例では、蒸気排出部24は、対称軸OAと直交する直線上に2箇所設けられている。蒸気排出部24は、蓋縁部22の外周領域において、全周のうち5%~30%、好ましくは10%~20%の範囲に亘って設けられている。また、蓋縁部22は、最も外側の外縁の全周において、嵌合部23又は蒸気排出部24から略水平方向に延びる平坦なつば状の外縁部25を有する。図示を省略するが、外縁部25には、端部の鋭利性を緩和するために複数の凹凸が形成されていてもよい。
【0033】
図3(B)、3(C)、
図4(A)、及び4(C)等に示すように、嵌合部23は、上部に環状部23aを有し、中間部に第1溝部23bと第2溝部23cとを有し、下部に裾部23dを有する。
【0034】
環状部23aは、容器本体10の内面、具体的には、容器本体10の本体側面部13の上端内壁及び本体縁部14の上部の形状に略沿った形状を有し、これらを蓋縁部22の略全周(具体的には、蒸気排出部24に対応する部分を除いた領域)に亘って覆う。環状部23aは、本体縁部14の幅(横方向又は水平方向の長さ)よりも若干小さく形成されており、本体縁部14を変形させて嵌める。裾部23dは、第1及び第2溝部23b,23cから外縁部25まで外方向に拡がりつつ湾曲して延びている。
【0035】
第1及び第2溝部23b,23cは、全体として、環状部23aから下側に延び、蓋縁部22の中間部で部分的に半径が絞られた環状の溝であり、嵌合部23の略全周に亘って交互に形成されている。第1溝部23bと第2溝部23cとは、本体縁部14の下部で本体縁部14と嵌合する。第1及び第2溝部23b,23cの対称軸OAを含む断面形状は、角張ったコの字形状でも円弧形状でもよい。第1溝部23bは、第2溝部23cよりも浅く形成されており、容器本体10に比較的緩く嵌合する。これにより、蓋20を容器本体10から適度に外しやすくすることができる。第2溝部23cは、第1溝部23bよりも深く形成されており、容器本体10に比較的きつく嵌合する。これにより、加熱調理時に蓋20から容器本体10から外れにくくすることができる。第1及び第2溝部23b,23cの配置、大きさ、及び形状は、加熱前後の蓋20の嵌合状態を考慮したものとなっており、嵌合しやすく、かつ加熱時に蓋20が外れにくい条件となっている。加熱時の蒸気と変形部21cの変形とによって促されて蒸気が排出されても、嵌合部23によって、容器本体10と蓋20とが嵌合しているため、蓋20が容器本体10から外れることがない。第1及び第2溝部23b,23cの上側の傾斜角度や長さを適宜設定することで、変形部21cの変形や排気口24eの出現によっても嵌合部23が外れないようにしている。
【0036】
図3(A)、
図4(A)、4(C)、及び4(D)等に示すように、蒸気排出部24は、変形部21cよりも上方に突出し、変形部21cの変形に伴って上方に変位するものである。蒸気排出部24は、容器本体10の内面に対向し、容器本体10の内面に当接して延びる対向面FAを含む内壁24aと、本体縁部14を挟んで内壁24aの反対側に配置される外壁24bと、内壁24a及び外壁24bの上部を繋ぐ頂部24cとを有する。
【0037】
内壁24aは、容器本体10の内面に当接し又は近傍に配置されて延び、外壁24bは、本体縁部14との間に隙間を有する。これにより、加熱時に蒸気排出部24と容器本体10との間に隙間を形成しやすくすることができる。頂部24cは、断面視において、内壁24aから外壁24bに向かって上方に傾斜する。加熱時において、嵌合部23による嵌合を維持しつつ、変形部21cの変形に伴い蒸気排出部24が変形しつつ変位して容器100の外縁部のうち蒸気排出部24の位置において排気のための隙間が形成されやすくなる。これにより、高出力かつ長時間の加熱調理の場合でも容器100から蓋20が外れずに排気機能を維持することができる。また、蒸気排出部24の上方傾斜により、シュリンクフィルム30を包装した容器100において、シュリンクフィルム30による蒸気排出部24の変形抑制を防止することができる。
【0038】
蒸気排出部24は、容器本体10の内面に対向し、容器本体10の内面に当接して延びる対向面FAを含む仕切部24dを有する。対向面FAは、容器本体10の対称軸OAに対して傾斜することが望ましい。具体的には、対向面FAは、対称軸OAの上方に向けて拡がるように延びている。これにより、蒸気排出部24の変位をより促進することができ、排気口24e又は隙間の形成が確実なものとなる。仕切部24dは、内壁24aの一部又は全部であり、蒸気排出部24において内側の上下の段差を利用して局所的に容器100内部と外部とを仕切る。仕切部24dは、容器本体10の内面、具体的には、容器本体10の本体側面部13の上端内壁又は本体縁部14の内壁に沿いつつ当接している。仕切部24dが容器本体10の内壁に当接した形状を有することにより、虫や埃等の異物の混入を防ぐことができる。仕切部24dは、異物の混入を防ぐ程度に容器本体10と接していればよい。なお、蓋縁部22において、蒸気排出部24のない部分は、嵌合部23によって虫や埃等の異物の混入を防いでいる。仕切部24dの高さHは、例えば、1mmである。
図4(B)に示すように、蒸気排出部24の仕切部24dは、変形部21cの変形に伴って変形して形成される排気口形成部VEを有する。これにより、排気口形成部VEは、蒸気排出部24が加熱時の容器100の内圧及び温度上昇により変形又は変位することで蒸気排出部24と本体縁部14との間に排気口24eを形成する。排気口24eは、シュリンクフィルム30や帯ラベル等で蓋20が固定されている場合にも発現する。
【0039】
以下、
図6(A)及び6(B)を参照しつつ、加熱調理による蓋20の状態変化について説明する。
【0040】
図6(A)に示すように、加熱調理前の容器100において、蓋20の蒸気排出部24の仕切部24dは、容器本体10の本体側面部13の上端内壁に当接している。つまり、蒸気排出部24の内壁24aは、容器本体10の本体側面部13の上端内壁に当接している。蓋縁部22において、蒸気排出部24を設けた部分は、仕切部24dによって容器100の内部に異物が混入することを防止している。また、蓋縁部22において、蒸気排出部24のない部分は、嵌合部23によって異物が混入することを防止している。
【0041】
図6(B)に示すように、電子レンジ等による加熱調理において、容器100の内圧が上昇すると、圧力増加と蓋20の軟化とにより天面部21の変形部21cが上方に膨らむように変形する。この変形に伴い、蒸気排出部24の仕切部24dが容器100の上方に移動又は変形することにより蒸気排出部24の排気口形成部VEにより排気口24eが形成される。その後、排気口24eから蒸気が排気される。上述した容器100の蒸気排出方法によって、加熱時の変形部21cの変形に伴い、蒸気排出部24の仕切部24dが容器本体10の内面から蒸気排出可能に離れることにより容器100内部から蒸気が排気される。図示は省略するが、加熱調理後において、蓋20は、容器100の内圧減少により、元の状態又は元の状態に近い形状に戻る。
【0042】
(実施例)
以下、本実施形態の実施例について説明する。
図7(A)及び7(B)は、蓋縁部22の嵌合部23の形状及び寸法を説明する図である。
図7(A)及び7(B)において、符号X1は蓋20の嵌合部23の直径である嵌合径であり、符号X2は第1溝部23bの半径方向の長さ(溝深さ)であり、符号X3は第2溝部23cの半径方向の長さ(溝深さ)である。符号θ1は第1及び第2溝部23b,23cがコの字形状である場合の上側の傾斜角度であり、符号θ2は下側の傾斜角度である。
【0043】
以下、実施例に用いる試料の寸法、形状、及び加熱後の状態評価を示す。「嵌合・開封」は、加熱前の蓋20の嵌合状態を示す。「レンジ評価」は、電子レンジによる加熱後の蓋の嵌合状態を示す。「レンジ評価」では、試料の容器100に、100g又は300gの水を入れ、1520Wで90分間加熱した後の蓋20の嵌合状態を評価した。
【0044】
(試料1)
嵌合径X1:141.2mm
第1及び第2溝部の形状:コの字形状(
図7(A)参照)
第1溝部の長さX2:0.4mm
第2溝部の長さX3:0.4mm
上側傾斜角度θ1:30°
下側傾斜角度θ2:45°
嵌合・開封:比較的良好
レンジ評価:蓋外れなし
(試料2)
嵌合径X1:140.9mm
第1及び第2溝部の形状:コの字形状(
図7(A)参照)
第1溝部の長さX2:0.4mm
第2溝部の長さX3:0.5mm
上側傾斜角度θ1:30°
下側傾斜角度θ2:45°
嵌合・開封:比較的嵌合しにくい
レンジ評価:蓋外れなし
(試料3)
嵌合径X1:141.2mm
第1及び第2溝部の形状:コの字形状(
図7(A)参照)
第1溝部の長さX2:0.4mm
第2溝部の長さX3:0.4mm
上側傾斜角度θ1:45°
下側傾斜角度θ2:45°
嵌合・開封:比較的良好
レンジ評価:蓋外れ発生
(試料4)
嵌合径X1:141.2mm
第1及び第2溝部の形状:円弧形状(
図7(B)参照)
第1溝部の長さX2:0.5mm
第2溝部の長さX3:0.4mm
嵌合・開封:良好
レンジ評価:蓋外れ発生
【0045】
試料1~3からわかるように、第1及び第2溝部23b,23cの上側の傾斜角度が小さいほど、及び溝長さが大きいほど、加熱後の蓋20が外れにくくなることがわかる。また、試料1及び4からわかるように、第1及び第2溝部23b,23cの形状に関して、コの字形状の方が円弧形状よりも加熱後の蓋20が外れにくくなることがわかる。
【0046】
以上説明した容器100の蓋20によれば、天面部21が加熱時に変形可能な変形部21cを有することにより、加熱時の容器100内の内圧の上昇を緩やかにすることができる。また、蓋縁部22が蒸気排出部24を有し、蒸気排出部24の内壁24aが仕切部24dを有することにより、虫や埃等の異物の混入を抑制することができる。蒸気排出部24は、変形部21cの変形に伴って開口し、蒸気を排気する。
【0047】
以上では、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0048】
例えば、容器本体10の形状や蓋20の形状は、本実施形態の範囲内で適宜変更することができる。
図8(A)に示すように、天面部21の変形部21cのうち蒸気排出部24に対応する延長領域のみに段差21dを設ける構成としてもよい。
図8(B)に示すように、天面部21に支持部21bを設けない構成としてもよい。
図8(C)に示すように、天面部21に支持部21b及び変形部21cの段差21dを設けない構成としてもよい。
【0049】
上記実施形態において、変形部21cを湾曲部BEとしたが、断面視が湾曲でなく角張ったような屈折部であってもよい。
【0050】
上記実施形態において、容器100は、平面視で矩形に限らず、様々な多角形とできる。また、容器100は、楕円型でもよい。
【0051】
上記実施形態において、蒸気排出部24を2箇所設ける例を挙げたが、蓋20の嵌合機能を維持する程度に、1箇所又は3箇所以上設けてもよい。
【0052】
上記実施形態において、嵌合部23は容器本体10の内面に対向する対向面を含む内壁が容器本体10の内面に沿ったものに限らず、嵌合部23の内壁と容器本体10の内壁との間に隙間があってもよい。
【0053】
上記実施形態において、対向面FAは、容器本体10の内面形状に依存しており、容器本体10の対称軸OAに対して傾斜ぜすに平行でもよい。
【0054】
上記実施形態において、蒸気排出部24の頂部24cは、内壁24aから外壁24bに向かって上方に傾斜する形状としたが、嵌合しない程度に容器本体10の本体縁部14の形状に沿った形状や傾斜しない形状としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…容器本体、 11…開口部、 12…底面部、 12a…周縁、 13…本体側面部、 13a…上端、 14…本体縁部、 15…脚部、 20…蓋、 21…天面部、 21a…平坦部、 21b…支持部、 21c…変形部、 21d…段差、 21e…周縁、 22…蓋縁部、 23…嵌合部、 23a…環状部、 23b…第1溝部、 23c…第2溝部、 23d…裾部、 24…蒸気排出部、 24a…内壁、 24b…外壁、 24c…頂部、 24d…仕切部、 24e…排気口、 25…外縁部、 30…シュリンクフィルム、 100…容器、 BE…湾曲部、 C…凹部、 FA…対向面、 OA…対称軸、 ST1,ST2…ストッパー、 VE…排気口形成部