(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】レーザ照射装置、情報処理方法、プログラム、及び学習モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20250220BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20250220BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20250220BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20250220BHJP
H01S 3/10 20060101ALN20250220BHJP
B23K 26/00 20140101ALN20250220BHJP
B23K 26/073 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01S3/00 B
H01L21/20
H01L21/268 J
H01L21/02 Z
H01S3/10
B23K26/00 M
B23K26/00 P
B23K26/073
(21)【出願番号】P 2021128501
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521476506
【氏名又は名称】JSWアクティナシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑三郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 玲
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119512(JP,A)
【文献】特開2015-152933(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030885(WO,A1)
【文献】特開2017-164801(JP,A)
【文献】特開2009-065146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
B23K 26/00
B23K 26/073
H01L 21/02
H01L 21/20
H01S 3/00
H01S 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光の基板への照射に関する制御を行う制御部とを備えるレーザ照射装置であって、
前記制御部は、
前記レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、
運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、
導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力
し、
前記学習モデルを用いて導出した予想品質情報は、前記製品の歩留まりに関する情報を含み、
前記制御部は、前記製品の歩留まりが予め定められた閾値未満である場合、歩留まりが閾値未満である旨を示す報知信号を出力し、
前記予想品質情報を含む管理画面を出力し、
前記管理画面は、前記学習モデルによって推定された歩留まりの経過時間変位を含む
レーザ照射装置。
【請求項2】
前記検出部は、OEDセンサー、ムラモニター、バイプラナ光電管及びプロファイラーカメラの少なくとも1つを含み、
前記OEDセンサーは、前記基板上の結晶表面に関する情報を検出し、
前記ムラモニターは、前記基板の表面形状の散乱光に関する情報を検出し、
前記バイプラナ光電管は、前記レーザ光源から出射されたレーザ光のパルス波形を検出し、
前記プロファイラーカメラは、ラインビーム状に整形されたレーザ光の形状に関する情報を検出する
請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記検出部は、所定の周期にて複数の検出値を取得し、
前記運転パラメータは、複数の検出値に基づき算出された標準偏差を含む
請求項1
又は請求項2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記運転パラメータは、前記レーザ光源の状態に関するパラメータ、及び前記基板が載置されるレーザ照射室の状態に関するパラメータの少なくとも1つを含む
請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
前記運転パラメータは、前記レーザ照射装置を制御する制御パラメータを含み、
前記制御パラメータは、前記レーザ光源の制御に関するパラメータ、前記レーザ光源が出射したレーザ光を整形する光学系の制御に関するパラメータ、及び前記基板が載置されるレーザ照射室の制御に関するパラメータの少なくとも1つを含む
請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項6】
前記制御部は、
導出した予想品質情報よりも、高い品質となる目標品質情報を設定し、
設定した前記目標品質情報に対応する制御パラメータを導出し、
導出した制御パラメータに基づき、レーザ光の前記基板への照射に関する制御を行
い、
前記目標品質情報に対応する制御パラメータを導出するにあたり、
現時点の運転パラメータを基準にパラメータを段階的に変化させることにより、候補となる複数の候補運転パラメータを生成し、
生成した複数の前記候補運転パラメータそれぞれを前記学習モデルに入力し、複数の予想品質情報を取得し、
前記取得した複数の予想品質情報のうち、前記現時点の運転パラメータによって前記学習モデルが出力した予想品質情報よりも高い予想品質情報を、前記目標品質情報として設定する
請求項
5に記載のレーザ照射装置。
【請求項7】
コンピュータに、
レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、
運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、
導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力
し、
前記学習モデルを用いて導出した予想品質情報は、前記製品の歩留まりに関する情報を含み、
前記製品の歩留まりが予め定められた閾値未満である場合、歩留まりが閾値未満である旨を示す報知信号を出力し、
前記予想品質情報を含む管理画面を出力し、
前記管理画面は、前記学習モデルによって推定された歩留まりの経過時間変位を含む
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、
運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、
導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力
し、
前記学習モデルを用いて導出した予想品質情報は、前記製品の歩留まりに関する情報を含み、
前記製品の歩留まりが予め定められた閾値未満である場合、歩留まりが閾値未満である旨を示す報知信号を出力し、
前記予想品質情報を含む管理画面を出力し、
前記管理画面は、前記学習モデルによって推定された歩留まりの経過時間変位を含む
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射装置、情報処理方法、プログラム、及び学習モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン薄膜を形成するためのレーザアニール装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のレーザアニール装置は、レーザ光パルスの波形を整形する波形整形装置を含み、当該波形整形装置によってライン状に成形されたレーザ光がアモルファスシリコン膜に照射されることにより、多結晶シリコン薄膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のレーザアニール装置は、レーザアニール装置の運転パラメータに基づき、当該レーザアニール装置によって製造された製品の品質情報(予想品質情報)を推定する点について考慮されていない。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、レーザアニール装置の運転パラメータに基づき、当該レーザアニール装置によって製造された製品の品質情報(予想品質情報)を推定するレーザ照射装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様に係るレーザ照射装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光の基板への照射に関する制御を行う制御部とを備えるレーザ照射装置であって、前記制御部は、前記レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力する。
【0007】
本態様に係る情報処理方法は、コンピュータに、レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力する処理を実行させる。
【0008】
本態様に係るプログラムは、コンピュータに、レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、運転パラメータを入力した場合にレーザ光が照射された基板が含まれる製品の予想品質情報を出力する学習モデルに、取得した前記運転パラメータを入力することによって、予想品質情報を導出し、導出した予想品質情報と、取得した前記運転パラメータを関連付けて出力する処理を実行させる。
【0009】
本態様に係る学習モデルの生成方法は、レーザ照射装置に設けられた検出部からの検出値が含まれる運転パラメータを取得し、該運転パラメータを用いて制御したレーザ照射装置によって加工された基板が含まれる製品の品質情報を取得し、前記取得した運転パラメータから成る問題データと、前記取得した品質情報から成る回答データとを含む訓練データを用いて、運転パラメータを入力した場合にレーザ照射装置によって加工される基板が含まれる製品の品質情報を出力する学習モデルを生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本発明によれば、レーザアニール装置の運転パラメータに基づき、当該レーザアニール装置によって製造された製品の品質情報(予想品質情報)を推定するレーザ照射装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係るレーザアニール装置等を含むシステム構成例を示す図である。
【
図2】レーザアニール装置の構成例を示す図である。
【
図3】レーザアニール装置に含まれる制御装置の構成例を示す図である。
【
図5】制御部の処理手順(学習モデルの学習時)の一例を示すフローチャートである。
【
図6】制御部の処理手順(学習モデルの運用時)の一例を示すフローチャートである。
【
図7】レーザアニール装置の管理画面の一例を説明する図である。
【
図8】実施形態2に係る制御部の処理手順(運転パラメータの導出)の一例を示すフローチャートである。
【
図9】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図10】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図11】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図12】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【
図13】その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施形態1に係るレーザアニール装置等を含むシステム構成例を示す図である。レーザアニール装置1(レーザ照射装置)は、例えば、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Poly-Silicon)膜を形成するエキシマレーザアニール(ELA:Excimer laser Anneal)装置である。
【0013】
レーザアニール装置1は、多結晶のシリコン膜が形成されたガラス基板などの半導体用基板(基板8)を製造する製造工場に載置されており、製造された基板8は、当該基板8を組み込んだ最終製品を製造する最終製品工場に出荷される。最終製品工場には、当該最終製品の品質情報を保存管理する製品サーバSSが載置されている。
【0014】
レーザアニール装置1に含まれる制御装置9は、例えば、インターネット等の外部ネットワークGNを介して製品サーバSSから、最終製品の品質情報を取得する。このように制御装置9を含むレーザアニール装置1と、外部ネットワークGNを介して通信可能に接続される複数の製品サーバSSにより、最終製品の品質情報を取得する品質情報取得システムが構成される。製品サーバSSとレーザアニール装置1とが、異なる拠点にある場合に限定されず、製品サーバSSとレーザアニール装置1とは、同じ拠点(最終製品工場)に設置されるものであってもよい。この場合、製品サーバSSとレーザアニール装置1とは、当該最終製品工場のLAN(工場内ネットワーク)により接続される。
【0015】
品質情報には、最終製品に組み込まれた基板8の歩留まり率、不良発生頻度、不良位置情報、及び評価情報等が含まれている。制御装置9は、取得した最終製品の品質情報を用いて、後述する学習モデル921の生成、又は当該学習モデル921を用いて基板8の生産段階における最終製品の品質情報(予想品質情報)の推定等の各種処理を行う。当該最終製品の品質情報の管理基準が、複数の最終製品工場それぞれにおいて異なる場合、制御装置9は、これら最終製品工場(基板8の出荷先)毎の学習モデル921を生成及び運用するものであってもよい。又は、複数の最終製品工場から取得した品質情報を正規化、標準化又は平均化した情報を用いて、これら個々の最終製品工場に対し汎用的に適用できる学習モデル921を生成するものであってもよい。
【0016】
図2は、レーザアニール装置の構成例を示す図である。
図3は、レーザアニール装置に含まれる制御装置9の構成例を示す図である。レーザアニール装置1は、レーザ光を基板8上に形成されたシリコン膜に照射する。これにより、非晶質のシリコン膜(アモルファスシリコン膜:a-Si膜)を多結晶のシリコン膜(ポリシリコン膜:p-Si膜)に変換することができる。基板8は半導体用基板である。
【0017】
本実施形態における図示のとおり、XYZ三次元直交座標系において、Z方向は、鉛直方向となり、基板8に垂直な方向である。XY平面は、基板8のシリコン膜が形成された面と平行な平面である。例えば、X方向は、矩形状の基板8の長手方向となり、Y方向は基板8の短手方向となる。Z軸を中心に0°から90°に回転可能なΘ軸ステージ71を使用する場合、X方向は基板8の短手方向となり、Y方向は基板8の長手方向となりうる。
【0018】
レーザアニール装置1は、アニール光学系11、レーザ照射室7、及び制御装置9を備える。レーザ照射室7は、ベース72と、ベース72上に配置されたステージ71とを収容する。レーザアニール装置1において、ステージ71により基板8を+X方向に搬送しながら、シリコン膜201にレーザ光が照射される。更に、出射されたレーザ光に関する情報を検出する検出部として、バイプラナ光電管62、OEDセンサー63、ムラモニター64、及びプロファイラーカメラ66を備える。
【0019】
アニール光学系11は、基板8に形成されたアモルファスシリコン膜を結晶化し、ポリシリコン膜に変換するためのレーザ光を生成し、当該アモルファスシリコン膜に照射するための光学系である。アニール光学系11は、レーザ光源2、アッテネータ3、偏光比制御ユニット4、ビーム整形光学系5、落射ミラー61、及びプロジェクションレンズ65を含み、ライン状のレーザ光を出射する。
【0020】
レーザ光源2は、アモルファスシリコン膜(被処理体)に照射するためのレーザ光として、パルスレーザ光を発生させるレーザ発生装置である。発生させるレーザ光は、基板8上の非結晶膜を結晶化して結晶化膜を形成するためのレーザ光であり、例えば、中心波長308nmのエキシマレーザ光等のガスレーザ光である。又はガスレーザ光は、エキシマレーザ光に限定されず、Co2レーザなど、その他のガスレーザでもよい。
【0021】
レーザ光源2には、チャンバ内にキセノン等のガスが封入されると共に、2枚の共振器ミラーがガスを挟んで対向するように配置されている。一方の共振器ミラーは全ての光を反射する全反射ミラーであり、他方の共振器ミラーは一部の光を透過する部分反射ミラーである。ガスによって励起されたガス光が共振器ミラーの間で反射を繰り返し、増幅された光が共振器ミラーからレーザ光として放出される。レーザ光源2は、パルス状のレーザ光を、例えば500Hzから600Hzの周期で繰り返し放出する。レーザ光源2は、レーザ光をアッテネータ3に向けて出射する。
【0022】
アッテネータ3は、入射されたレーザ光を減衰して、所定のエネルギー密度に調整する。これらアッテネータは、特性として、入射されたレーザ光に対し、出射するレーザ光の比率を示す透過率を有し、当該透過率は、制御装置9からの信号に基づき可変となるように構成されている。アッテネータ3は、レーザ光源2からビーム整形光学系5に至る光路の途中に設けられている。アッテネータ3は、レーザ光源2が出射したレーザ光を、透過率に応じて減衰する。
【0023】
アッテネータ3から出射されるエネルギー密度(E)は、レーザ光源2から出射されるレーザ光のエネルギー密度(E0)に、アッテネータ3の透過率(T)を乗算した値(E=E0×T)となる。詳細は後述するが、制御装置9は、アッテネータ3から出射されるエネルギー密度が最適エネルギー密度となるように、アッテネータ3の透過率を特定(導出)し変更する。
【0024】
偏光比制御ユニット4は、アッテネータ3の出射側に配置されている。偏光比制御ユニット4は、例えば1/2波長板(λ/2板)及び偏光ビームスプリッタにて構成され、入射されたレーザ光のP偏波とS偏波との偏光比を変更する。すなわち、アッテネータ3から出射されたレーザ光の偏光比は、偏光比制御ユニット4によって変更される。偏光比制御ユニット4は、制御装置9から出力された制御信号に基づき、偏光比を変更(可変)するように構成されている。
【0025】
アッテネータ3の透過率を変更した場合、アッテネータ3から出射されるレーザ光の偏光比は、当該透過率に応じて変更される。これに対し、制御装置9は、変更された透過率に応じて、偏光比制御ユニット4の偏光比を変更することにより、偏光比制御ユニット4から出射されたレーザ光の偏光比が一定となるように制御する。
【0026】
制御装置9は、偏光比制御ユニット4の偏光比を変更するにあたり、例えばテーブル形式にて制御装置9の記憶部92に記憶されている情報(偏光比テーブル)を参照し、透過率に応じて偏光比を特定(導出)するものであってもよい。当該偏光比テーブルは、各透過率に対応する偏光比それぞれが定義されている。
【0027】
ビーム整形光学系5には偏光比制御ユニット4から出射されたレーザ光が入射され、当該ビーム整形光学系5は、入射されたレーザ光を整形して、シリコン膜への照射に適したビーム形状のレーザ光を生成する。ビーム整形光学系5は、Y方向に沿ったライン状のラインビームを生成する。
【0028】
ビーム整形光学系6は、例えば、レンズアレイから構成されるホモジナイザによって、1つのビームを複数のビームに分割(Z方向に並んだ複数のラインビーム)する。複数のビームに分割後、コンデンサーレンズによって合成することでラインビーム状にすることができる。ビーム整形光学系6は、生成(整形)したライン状のレーザ光を落射ミラー61に出射する。
【0029】
落射ミラー61は、Y方向に延びる矩形状の反射ミラーであり、ビーム整形光学系6が生成した複数のラインビームであるレーザ光を反射する。落射ミラー61は、例えば、ダイクロイックミラーであり、一部の光を透過する部分反射ミラーである。落射ミラー61は、ライン状のレーザ光を反射させて反射光を生成すると共に、当該ライン状のレーザ光一部を透過させて透過光を生成する。落射ミラー61は、反射光であるレーザ光を基板8のシリコン膜に照射し、透過光でレーザ光を、例えばバイプラナ光電管等のパルス計測器へ出射する。
【0030】
プロジェクションレンズ65は、基板8の上方に配置されている。プロジェクションレンズ65は、レーザ光を基板8、すなわち、シリコン膜に投射するための複数のレンズを有している。プロジェクションレンズ65は、レーザ光を基板8に集光している。基板8上において、レーザ光がY方向に沿ったライン状の照射領域を形成する。すなわち、基板8上において、レーザ光は、Y方向を長手方向とするラインビームとなっている。また、+X方向に基板8を搬送しながら、レーザ光がシリコン膜に照射される。これにより、Y方向における照射領域の長さを幅とする帯状の領域にレーザ光を照射することができる。
【0031】
落射ミラー61に照射されるラインビーム状のレーザ光は、短軸幅が広がったビーム形状となり、すなわちコンデンサーレンズから出射された以降、当該短軸幅が多少広がり、崩れた形状となっている。落射ミラー61によって反射されたレーザ光は、プロジェクションレンズ65を通過することによって、短軸幅が1/5程度のラインビーム状のレーザ光に整形される。
【0032】
バイプラナ光電管62は、ビーム整形光学系6に隣接して、アニール光学系11の端部に設けられており、落射ミラー61を透過した透過光に基づき、レーザ光源2から出射されたレーザ光のパルス波形を検出する。バイプラナ光電管62は、検出したパルス波形を制御装置9に出力(送信)する。
【0033】
OEDセンサー63は光センサーを含み、レーザ光源2とは別個の光源(別光源)から出射された光の反射光(基板8にて反射された反射光)を検出して、基板8上の結晶表面に関する情報を取得する。OEDセンサー63は、検出した反射光の輝度(検出値)を、制御装置9に出力(信号として送信)する。
【0034】
ムラモニター64はラインカメラを含み、レーザ光が照射された基板8の注目領域を当該ラインカメラで撮像し、撮像した画像に含まれる当該注目領域の平均輝度を検出して、基板8の表面形状の散乱光に関する情報を取得する。ムラモニター64は、検出した基板8(注目領域)の平均輝度(検出値)を制御装置9に出力(信号として送信)する。
【0035】
プロファイラーカメラ66は、プロジェクションレンズ65によってラインビーム状に整形されたレーザ光の形状に関する情報を検出するセンサー(ラインビームセンサー)であり、例えばビームプロファイラーである。プロファイラーカメラ66は、例えば、ステージ71の側面部に設けられており、プロファイラーカメラ66の上面と、ステージ71に載置される基板8とが同じ高さになるように位置合わせされている。当該プロファイラーカメラ66の上面に、アニール光学系11によってラインビーム状に整形されたレーザ光が、照射される。プロファイラーカメラ66は、例えばCMOSカメラ等の撮像部を含み、当該撮像部によってラインビーム状に整形されたレーザ光を撮像することにより、画像(撮像画像)等、レーザ光の形状に関する情報(データ)を取得する。プロファイラーカメラ66は、ラインビーム状に整形されたレーザ光の形状に関する情報として、例えば、矩形状を成すラインビームの短軸形状及び長軸形状の軸幅、軸線の歪み又は窪み、当該ラインビームを立体視した場合における傾き、隣接する面間の角度又は曲率に関する情報を検出するものであってもよい。プロファイラーカメラ66は、更にラインビームに整形される前のRawビーム形状に関する情報を検出するものであってもよい。本実施形態によるプロファイラーカメラ66に加えて更に、レーザ光の形状に関する情報を取得するラインビームセンサーが、例えばバイプラナ光電管62の近傍にて、当該バイプラナ光電管62とY軸方向を異ならせて設けられているものであってもよい。
【0036】
制御装置9は、レーザアニール装置1の全体的又は統合的な制御又は管理を行うパソコン又はサーバ装置等の情報処理装置である。制御装置9は、制御部91、記憶部92、通信部93及び入出力I/F94を含み、当該通信部93又は入出力I/F94を介して、レーザ光源2又はアニール光学系11における各光学系を制御する制御デバイス(他の制御装置)と通信可能に接続されている。制御装置9は、レーザアニール装置1に含まれるパルス計測器、光検出器等の各種計測装置と通信可能に接続されており、これら各種計測装置から出力された計測データに基づき、レーザ光源2又はアニール光学系11に対する種々の制御を行う。
【0037】
制御部91は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等、計時機能を備えた演算処理装置を有し、記憶部92に記憶されたプログラムP(プログラム製品)を読み出して実行することにより、種々の情報処理及び、レーザ光源2又はアニール光学系11に含まれる各光学系に対する制御処理等を行う。
【0038】
記憶部92は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶部92には、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部92に記憶されたプログラムPは、制御部91が読み取り可能な記録媒体920から読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部92に記憶させたものであってもよい。記憶部92には、後述する学習モデル921の実態ファイルが記憶されている。当該学習モデル921の実態ファイルは、プログラムP(プログラム製品)に含まれるモジュールとして構成されるものであってもよい。
【0039】
通信部93は、例えばイーサネット(登録商標)の規格に準拠した通信モジュール又は通信インターフェイスであり、当該通信部93にはイーサネットケーブルが接続される。通信部93は、当該イーサネットケーブル等の有線である場合に限定されず、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の狭域無線通信モジュール、又は4G、5G等の広域無線通信モジュール等の無線通信に対応した通信インターフェイスであってもよい。制御装置9は、当該通信部93を介して、例えば外部ネットワークGNに接続されている製品サーバSSと通信するものであってもよい。
【0040】
入出力I/F94は、例えばRS232C又はUSB等の通信規格に準拠した通信インターフェイスである。入出力I/F94には、キーボード等の入力装置、又は液晶ディスプレイ等の表示装置941が接続される。制御装置9は、入出力I/F94を介して、バイプラナ光電管62、OEDセンサー63、ムラモニター64又はプロファイラーカメラ66等の検出部から、各種検出値を取得するものであってもよい。
【0041】
図4は、学習モデル921の一例を示す説明図である。制御装置9の制御部91は、訓練データを用いてニューラルネットワークを学習させ、レーザアニール装置1の運転パラメータを入力した場合、レーザ光が照射された基板8が含まれる製品の品質情報(予想品質情報)を出力する学習モデル921を生成する。予想品質情報とは、学習モデル921により予想(推定)された品質情報である。
【0042】
運転パラメータは、レーザアニール装置1に設けられたOEDセンサー63等の検出部からの検出値(パラメータ)が含まれている。当該検出値は所定の周期で検出されており、運転パラメータは、当該所定の周期で検出された複数の検出値の標準偏差又は平均値を含むものであってもよい。レーザ光が照射された基板8が含まれる製品とは、例えば液晶ディスプレイ又はスマートホン等の携帯端末の最終製品である。最終製品の品質情報とは、最終製品に基板8が組み込まれる際、検出された基板8の不良に関するものであり、例えば、歩留まり率、不良の発生頻度、又は不良の発生個所を含む。更に、当該品質情報には、例えば最終製品工場の品質管理者等によって付与された評価情報等の定性的な情報が含まれるものであってもよい。
【0043】
運転パラメータは、OEDセンサー63等の検出部からの検出値に加え、更にレーザアニール装置1の状態に関するパラメータ(状態パラメータ)、及びレーザアニール装置1の制御に関するパラメータ(制御パラメータ)を含むものであってもよい。状態パラメータは、例えば、レーザ光源2の状態に関するパラメータ、及び基板8が載置されるレーザ照射室7(プロセスチャンバー)の状態に関するパラメータを含む。制御パラメータは、例えば、レーザ光源2の制御に関するパラメータ、レーザ光源2が出射したレーザ光を整形する光学系(アニール光学系11)の制御に関するパラメータ、及び基板8が載置されるレーザ照射室7(プロセスチャンバー)の制御に関するパラメータを含む。
【0044】
運転パラメータに含まれる各種パラメータは上記の内容に限定されず、例えば、後述するレーザアニール装置1の管理画面(
図7)に含まれる全てのデータが、運転パラメータに含まれるデータと成り得る。制御装置9の制御部91は、OEDセンサー63等の検出部、レーザアニール装置1の各所に設けられた温度センサー、振動センサー、圧力センサー及びカメラ等の各種センサーからの検出値の取得、及び記憶部92に記憶されている運転ログデータ等を参照することにより、運転パラメータを取得する。
【0045】
当該訓練データは、OEDセンサー63等の検出部からの検出値、状態パラメータ、及び制御パラメータを含む運転パラメータから成る問題データと、歩留まり率等を含む製品の品質情報から成る回答データから構成され、これら問題データと回答データとが関連付けられて、制御装置9の記憶部92に記憶されている。これら訓練データの問題データとなる元データは、例えば複数のレーザアニール装置1の稼働実績データを集約することにより、生成することができる。
【0046】
訓練データの回答データとなる元データは、上述のとおり、レーザアニール装置1によって加工された基板8が組み込まれた最終製品の品質情報等を保存管理する製品サーバSSから、例えば外部ネットワークGNを介して取得することができる。又は、レーザアニール装置1の制御装置9は、当該最終製品の品質情報が記憶された記憶メディアを参照することにより、品質情報を取得するものであってもよい。
【0047】
訓練データを用いて学習されたニューラルネットワーク(学習モデル921)は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとして利用が想定される。学習モデル921は、制御装置9にて用いられるものであり、このように演算処理能力を有するこのように演算処理能力を有する制御装置9にて実行されることにより、ニューラルネットワークシステムが構成される。
【0048】
学習モデル921は、DNN(Deep Neural Network)にて構成され、検出値等を含む運転パラメータの入力を受け付ける入力層と、当該運転パラメータの特徴量を抽出する中間層と、品質情報(予想品質情報)を出力とする出力層とを有する。
【0049】
入力層は、検出値等を含む運転パラメータの入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された値を中間層に受け渡す。中間層は、ReLu関数又はシグモイド関数等の活性化関数を用いて定義され、入力されたそれぞれの値の特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した特徴量を出力層に受け渡す。当該活性化関数の重みづけ係数及びバイアス値等のパラメータは、誤差逆伝播法を用いて最適化される。出力層は、例えば全結合層により構成され、中間層から出力された特徴量に基づいて、歩留まり率等を含む品質情報(予想品質情報)を出力する。
【0050】
本実施形態では、学習モデル921は、DNNであるとしたがこれに限定されず、DNN以外のニューラルネットワーク、トランスフォーマー、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long-short term model)、CNN、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、線形回帰、回帰木、重回帰、ランダムフォレスト、アンサンブルなど、他の学習アルゴリズムで構築された学習モデル921であってよい。
【0051】
レーザアニール装置1に含まれる制御装置9が学習モデル921を生成するとしたが、これに限定されず、学習モデル921は、当該制御装置9以外となるクラウドサーバ等の外部のサーバ装置等によって、学習及び生成されるものであってもよい。学習モデル921は、制御装置9にて用いられるものとしたが、これに限定されず、制御装置9は、通信部93を介して、例えばインターネット等に接続されるクラウドサーバ等と通信し、当該クラウドサーバに実装された学習モデル921によって出力された予想品質情報(歩留まり率等)を取得するものであってもよい。
【0052】
図5は、制御部91の処理手順(学習モデル921の学習時)の一例を示すフローチャートである。レーザアニール装置1に含まれる制御装置9の制御部91は、例えば入出力に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0053】
制御装置9の制御部91は、運転パラメータを取得する(S11)。制御装置9の制御部91は、OEDセンサー63等の検出部、レーザアニール装置1の各所に設けられた温度センサー、振動センサー、圧力センサー及びカメラ等の各種センサーからの検出値の取得、及び記憶部92に記憶されている運転ログデータ等を参照することにより、これらデータが含まれる運転パラメータを取得する。
【0054】
制御装置9の制御部91は、最終製品の品質情報を取得する(S12)。制御装置9の制御部91は、レーザアニール装置1によって加工された基板8が組み込まれた最終製品の品質情報等を保存管理する製品サーバSSから、取得する。又は、レーザアニール装置1の制御装置9は、当該最終製品の品質情報が記憶された記憶メディアを参照することにより、品質情報を取得するものであってもよい。
【0055】
制御装置9の制御部91は、取得した運転パラメータ及び最終製品の品質情報を用いて、訓練データを生成する(S13)。制御装置9の制御部91は、運転パラメータを問題データとし、品質情報を回答データとする訓練データを生成する。制御装置9の制御部91は、当該訓練データを生成するにあたり、複数時点の検出値による標準偏差処理、平均処理、標準化処理又は次元削減処理等を行うものであってもよい。
【0056】
制御装置9の制御部91は、生成した訓練データを用いて、学習モデル921を生成する(S14)。制御装置9の制御部91は、生成した訓練データを用いて、例えばニューラルネットワークを学習させることにより、学習モデル921を生成する。
【0057】
基板8の出荷先となる最終製品工場が複数ある場合、制御装置9の制御部91は、これら最終製品工場それぞれに対応して、異なる学習モデル921を生成するものであってもよい。又は、制御装置9の制御部91は、基板8が組み込まれる最終製品の区分又は種別に応じて異なる学習モデル921を生成するものであってもよい。又は、最終製品工場と最終製品の区分等との組み合わせに応じて異なる学習モデル921を生成するものであってもよい。
【0058】
各最終製品工場の製品サーバSSから取得した品質情報の管理基準が異なる場合、又は当該品質情報に定性的な評価情報等が含まれる場合、制御装置9の制御部91は、これら各最終製品工場から取得及び集約した品質情報を正規化、標準化又は平均化等を行うものであってもよい。制御装置9の制御部91は、当該正規化等をした品質情報を用いて、これら個々の最終製品工場に対し汎用的に適用できる学習モデル921を生成するものであってもよい。
【0059】
図6は、制御部91の処理手順(学習モデル921の運用時)の一例を示すフローチャートである。レーザアニール装置1に含まれる制御装置9の制御部91は、例えば入出力に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0060】
制御装置9の制御部91は、運転パラメータを取得する(S101)。制御装置9の制御部91は、OEDセンサー63等の検出部、レーザアニール装置1の各所に設けられた温度センサー、振動センサー、圧力センサー及びカメラ等の各種センサーからの検出値の取得、及び記憶部92に記憶されている運転ログデータ等を参照することにより、これらデータが含まれる運転パラメータを取得(生成)する。
【0061】
制御装置9の制御部91は、取得した運転パラメータを学習モデル921に入力し、最終製品の予想品質情報を取得する(S102)。制御装置9の制御部91は、取得した運転パラメータを学習モデル921に入力する。学習モデル921は、当該入力された運転パラメータに応じて、歩留まり等の最終製品の予想品質情報を出力(推定)する。制御装置9の制御部91は、学習モデル921が出力した予想品質情報(歩留まり等)を取得することにより、当該予想品質情報を導出することができる。
【0062】
制御装置9の制御部91は、学習モデル921から取得した最終製品の予想品質情報を出力する(S103)。制御装置9の制御部91は、学習モデル921から取得した最終製品の予想品質情報と運転パラメータとを関連付けて、例えば表示装置941に出力することにより、現時点における運転パラメータから推測される歩留まり等の最終製品の予想品質情報を、レーザアニール装置1の管理者等に報知する。
【0063】
制御装置9の制御部91は、予想品質情報に含まれる歩留まり率が、予め定められた閾値未満であるか否かを判定する(S104)。予想品質情報に含まれる歩留まり率に対する閾値は、例えば制御装置9の記憶部92に記憶されている。制御装置9の制御部91は、記憶部92に記憶されている閾値を参照し、予想品質情報に含まれる歩留まり率が当該閾値未満であるか否かを判定する。
【0064】
閾値未満でない場合(S104:NO)、すなわち予想品質情報に含まれる歩留まり率が、閾値以上である場合、制御装置9の制御部91は、再度S101の処理を実行すべく、ループ処理を行う。歩留まり率が閾値未満でない場合、すなわち閾値以上である場合、制御装置9の制御部91は、現時点の運転パラメータは適切(好適)であると判断し、再度S101の処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0065】
閾値未満である場合(S104:YES)、制御装置9の制御部91は、歩留まり率が閾値未満である旨を示す報知信号を出力する(S105)。歩留まり率が閾値未満である場合、制御装置9の制御部91は、現時点の運転パラメータは不適切である(好適ではない)と判断し、歩留まり率が閾値未満である旨を示す報知信号を、例えば表示装置941又はレーザアニール装置1の管理者の携帯端末等に出力する。
【0066】
制御装置9の制御部91は、S105の処理の実行後、再度S101の処理を実行すべく、ループ処理を行うことにより、最終製品の品質情報の観点からの運転パラメータの適正性に関するモニタリングを継続するものであってもよい。
【0067】
図7は、レーザアニール装置1の管理画面の一例を説明する図である。制御装置9の制御部91は、取得した運転パラメータ、及び導出(推定)した予想品質情報を用いて、本実施形態にて一例として示される管理画面(画面データ)を生成し、例えば表示装置941等に出力する。
【0068】
レーザアニール装置1の管理画面は、レーザに関するデータ、光学系に関するデータ、プロセスチャンバーに関するデータ、及び基板観察に関するデータをリスト形式で示すそれぞれの表示エリアと、推定される予想品質情報を表示するエリアを含む。
【0069】
レーザに関するデータの表示エリアは、レーザ出力系、制御系、レーザガス系、メンテナンス系、及びユーティリティ系の表示区分を含む。レーザ出力系の表示区分には、レーザパルスエネルギー、レーザパルスエネルギーの標準偏差(σ)、及びパルス波形が表示される。制御系の表示区分には、電極電圧、発振周波数、及び共振器温度が表示される。レーザガス系の表示区分には、ガス比率及び圧力が表示される。メンテナンス系の表示区分には、消耗品の交換状況、及びコンデションが表示される。ユーティリティ系の表示区分には、チラー冷却温度、流量、及び電源電圧が表示される。
【0070】
光学系に関するデータの表示エリアは、ラインビーム短軸形状、ラインビーム長軸形状、Rawビーム形状の表示区分、透過率及び偏光比の表示項目を含む。ラインビーム短軸形状の表示区分には、短軸幅、肩幅、短軸幅内の標準偏差(σ)、及び傾きが表示される。ラインビーム長軸形状の表示区分には、長軸幅、及び長軸幅内の標準偏差(σ)が表示される。Rawビーム形状の表示区分の表示区分には、形状、位置、出射角度、及び強度が表示される。透過率の表示項目には、アッテネータ3の透過率が表示される。偏光比の表示項目には、偏光比制御ユニット4の偏光比が表示される。
【0071】
プロセスチャンバーに関するデータの表示エリアは、プロセス速度、照射雰囲気、ステージ面平坦度、及びプロセスチャンバー振動の表示項目を含む。プロセス速度の表示区分には、ステージの速度、及び速度安定性(リップル)が表示される。照射雰囲気の表示区分には、酸素濃度、分布、及び窒素(N2)流量が表示される。ステージ面平坦度の表示区分には、変位センサー値が表示される。プロセスチャンバー振動には、床振動、及びステージ内の振動が表示される。基板観察に関するデータの表示エリアは、ムラモニター64検出値、及びOEDセンサー63検出値の表示項目を含む。
【0072】
推定される予想品質情報を表示するエリアは、歩留まり率の経過時間変位が表示されるグラフ表示エリアと、推定される予想品質情報をリスト形式で示すリスト表示エリアを含む。歩留まり率の経過時間変位を表示するグラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は歩留まり率を示す。歩留まり率には、予め閾値が設定されている。予想品質情報を示すリスト表示エリアは、歩留まり率、不良の頻度、及び基板8上の不良の位置情報の表示項目を含む。
【0073】
このようにレーザアニール装置1の運転に応じて取得される運転パラメータと、当該運転パラメータに基づき導出(推定)される歩留まり率(基板8が組み込まれる最終製品の予想品質情報)とを関連付けて画面表示することにより、レーザアニール装置1の管理者等による視認性を向上させることができる。
【0074】
本実施形態によれば、学習モデル921を用いることにより、検出部から取得した検出値が含まれる運転パラメータに基づき導出(推定)される予想品質情報(基板8が含まれる最終製品の予想品質情報)を取得及び出力する。これにより、レーザ光が照射された基板8が含まれる製品の品質情報の観点から、当該検出値(運転パラメータ)の適正性を判定(状態診断)し、レーザアニール装置1(レーザ照射装置)の管理者等に報知することができる。すなわち、検出値を含む運転パラメータに基づき、レーザアニール装置1(レーザ照射装置)によって製造された基板8が含まれる製品(最終製品)の品質情報(予想品質情報)を推定することにより、当該運転パラメータと製品の予想品質情報との関連付けを行い、当該関連付けに応じて運転パラメータの適正化を図り、レーザ光に関する制御を効率的に行うことができる。
【0075】
本実施形態によれば、学習モデル921を用いて導出した予想品質情報に含まれる製品の歩留まり(歩留まり率)が、予め定められた閾値未満である場合、その旨を示す報知信号を出力するため、レーザアニール装置1の管理者等に対し、当該レーザアニール装置1の運転継続等の判断に関する喚起を促すことができる。
【0076】
本実施形態によれば、検出部は、OEDセンサー63、ムラモニター64、バイプラナ光電管62及びプロファイラーカメラ66等の各種の検出部を含むため、これら検出部による複数種類の検出値を学習モデル921への入力データとして用いることができ、当該学習モデル921による推定精度を向上させることができる。学習モデル921に入力される運転パラメータは、所定の周期で検出された複数の検出値に基づき算出された標準偏差を含むため、当該学習モデル921による推定精度を向上させることができる。
【0077】
本実施形態によれば、学習モデル921に入力される運転パラメータは、レーザ光源2の状態に関するパラメータ、及び基板8が載置されるレーザ照射室7(プロセスチャンバー)の状態に関するパラメータを含むため、当該学習モデル921による推定精度を向上させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、学習モデル921に入力される運転パラメータは、レーザ光源2の制御に関するパラメータ、光学系の制御に関するパラメータ、及びレーザ照射室7(プロセスチャンバー)の制御に関するパラメータを含むため、当該学習モデル921による推定精度を向上させることができる。
【0079】
(実施形態2)
【0080】
図8は、実施形態2に係る制御部91の処理手順(運転パラメータの導出)の一例を示すフローチャートである。レーザアニール装置1に含まれる制御装置9の制御部91は、例えば入出力に接続されるキーボード等による操作者の操作を受付け、当該受け付けた操作に基づき、以下の処理を行う。
【0081】
制御装置9の制御部91は、運転パラメータを取得する(S201)。制御装置9の制御部91は、取得した運転パラメータを学習モデル921に入力し、最終製品の予想品質情報を取得する(S202)。制御装置9の制御部91は、学習モデル921から取得した最終製品の予想品質情報を出力する(S203)。制御装置9の制御部91は、予想品質情報に含まれる歩留まり率が、予め定められた閾値未満であるか否かを判定する(S204)。制御装置9の制御部91は、歩留まり率が閾値未満である旨を示す報知信号を出力する(S205)。制御装置9の制御部91は、実施形態1の処理S101からS105と同様に、S201からS205までの処理を行う。
【0082】
S205の処理の実行後、制御装置9の制御部91は、運転パラメータを変更するにあたり、候補となる複数の運転パラメータを生成する(S206)。制御装置9の制御部91は、現時点の運転パラメータに対し、当該運転パラメータに含まれる値を所定の範囲内にて段階的に異ならせた複数の運転パラメータを、候補となる運転パラメータ(候補パラメータ)として生成する。制御装置9の制御部91は、当該複数の候補パラメータを生成するにあたり、現時点の運転パラメータを基準に、例えば、電極電圧又は発振周波数等のレーザ光源2の制御パラメータ、透過率又偏光比等のアニール光学系11の制御パラメータ、又は、プロセス速度等のレーザ照射室7に関する制御パラメータを段階的に変化させ、これら段階的に変化させた各種パラメータを組み合わせるものであってもよい。
【0083】
制御装置9の制御部91は、複数の候補パラメータを学習モデル921に入力し、複数の予想品質情報を取得する(S207)。制御装置9の制御部91は、生成した複数の候補パラメータそれぞれを、学習モデル921に繰り返し入力することにより、これら候補パラメータそれぞれに対応した複数の予想品質情報を取得することができる。
【0084】
制御装置9の制御部91は、取得した複数の予想品質情報の内、最も高い予想品質情報を目標品質情報として設定する(S208)。制御装置9の制御部91は、これら候補パラメータに基づき推定した予想品質情報それぞれにおいて、例えば歩留まり率が最も高い予想品質情報を、目標品質情報として設定する。設定される目標品質情報(目標歩留まり率)は、現時点の運転パラメータによって学習モデル921が出力(推定)した予想品質情報(歩留まり率)よりも高いものであることは、言うまでもない。
【0085】
制御装置9の制御部91は、設定した目標品質情報に対応する運転パラメータを特定する(S209)。制御装置9の制御部91は、目標品質情報を学習モデル921が出力(推定)した際の入力データである運転パラメータを特定することにより、当該目標品質情報に対応する運転パラメータを導出する。
【0086】
制御装置9の制御部91は、特定した運転パラメータを用いて運転を再開する(S210)。制御装置9の制御部91は、レーザアニール装置1が基板8を入れ替える際、又は複数の基板8が収納されたカセットを入れ替える際に、現時点の運転パラメータから、S209で特定した運転パラメータに変更することにより照射条件を変えて、基板8へのレーザ光の照射を再開する。
【0087】
本実施形態によれば、制御装置9の制御部91は、現時点の運転パラメータに基づき学習モデル921が推定した予想品質情報よりも、高い品質となる目標品質情報を設定する。制御装置9の制御部91は、現時点の運転パラメータに対し、当該運転パラメータに含まれる値を所定の範囲内にて段階的に異ならせた複数の運転パラメータを、候補となる運転パラメータ(候補パラメータ)として生成する。制御装置9の制御部91は、生成した複数の候補パラメータそれぞれを、学習モデル921に入力することにより、これら候補パラメータそれぞれに対応した予想品質情報を取得することができる。
【0088】
制御装置9の制御部91は、これら候補パラメータに基づき推定した予想品質情報それぞれにおいて、例えば歩留まり率が最も高い予想品質情報を目標品質情報として設定し、当該目標品質情報を学習モデル921が出力(推定)した際の入力データである運転パラメータを特定する。制御装置9の制御部91は、目標品質情報に対応する運転パラメータに基づき、レーザ光の基板8への照射に関する制御を行うため、レーザアニール装置1によって製造された基板8が組み込まれた最終製品の歩留まり率を向上させ、当該最終製品の品質情報を高めることができる。
【0089】
(その他の実施形態)
図9、
図10、
図11、
図12及び
図13は、その他の実施形態(半導体装置の製造方法)に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。その他の実施の形態として、上記実施の形態に係るレーザアニール装置1を用いた半導体装置の製造方法について説明する。以下の半導体装置の製造方法のうち、非晶質の半導体膜を結晶化させる工程において、実施の形態1から2に係るレーザアニール装置1を用いたアニール処理を実施している。
【0090】
半導体装置は、TFT(Thin Film Transistor)を備える半導体装置であり、この場合は、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射して結晶化し、ポリシリコン膜85を形成することができる。ポリシリコン膜85は、TFTのソース領域、チャネル領域、ドレイン領域を有する半導体層として用いられる。
【0091】
上記で説明した実施の形態に係るレーザアニール装置1は、TFTアレイ基板の製造に好適である。以下、TFTを有する半導体装置の製造方法について説明する。
【0092】
まず、
図9に示すように、ガラス基板81(基板8)の上に、ゲート電極82を形成する。ゲート電極82は、例えば、アルミニウムなどを含む金属薄膜を用いることができる。次に、
図10に示すように、ゲート電極82の上に、ゲート絶縁膜83を形成する。ゲート絶縁膜83は、ゲート電極82を覆うように形成される。その後、
図11に示すように、ゲート絶縁膜83の上に、アモルファスシリコン膜84を形成する。アモルファスシリコン膜84は、ゲート絶縁膜83を介して、ゲート電極82と重複するように配置されている。
【0093】
ゲート絶縁膜83は、窒化シリコン膜(SiNx)、酸化シリコン膜(SiO2膜)、又はこれらの積層膜等などである。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート絶縁膜83とアモルファスシリコン膜84とを連続成膜する。アモルファスシリコン膜84付のガラス基板81がレーザアニール装置1(レーザ照射装置)における半導体膜となる。
【0094】
そして、
図12に示すように、上記で説明したレーザアニール装置1を用いてアモルファスシリコン膜84にレーザ光L3を照射してアモルファスシリコン膜84を結晶化させて、ポリシリコン膜85を形成する。これにより、シリコンが結晶化したポリシリコン膜85がゲート絶縁膜83上に形成される。
【0095】
その後、
図13に示すように、ポリシリコン膜85の上に層間絶縁膜86、ソース電極87a、及びドレイン電極87bを形成する。層間絶縁膜86、ソース電極87a、及びドレイン電極87bは、一般的なフォトリソグラフィー法や成膜法を用いて形成することができる。これ以降の製造工程については、最終的に製造するデバイスによって異なるので説明を省略する。
【0096】
上記で説明した半導体装置の製造方法を用いることで、多結晶半導体膜を含むTFTを備える半導体装置を製造することができる。このような半導体装置は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの高精細ディスプレイの制御用に好適である。上記のようにポリシリコン膜85のムラを抑制することで、表示特性の優れた表示用装置を高い生産性で製造することができる。
【0097】
これら一連の加工工程を行うにあたり、レーザアニール装置1の制御装置9は、取得した運転パラメータに基づき、基板8が含まれる最終製品の予想品質情報を導出し、当該予想品質情報を表示装置941に出力する。これにより、当該運転パラメータと製品の予想品質情報との関連付けを行い、最終製品の品質情報の観点からの運転パラメータの適正性に関するモニタリングが可能となり、運転パラメータの適正化を支援してレーザアニール装置1に関する制御を効率的に行うことができる。
【0098】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、において、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射してポリシリコン膜85を形成する例に限らず、アモルファスシリコン膜84にレーザ光を照射してマイクロクリスタルシリコン膜を形成してもよい。また、シリコン膜以外の非晶質膜にレーザ光を照射して、結晶化膜を形成してもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
GN 外部ネットワーク
SS 製品サーバ
1 レーザアニール装置(レーザ照射装置)
11 アニール光学系
2 レーザ光源
3 アッテネータ
4 偏光比制御ユニット
5 ビーム整形光学系
61 落射ミラー
62 バイプラナ光電管
63 OEDセンサー
64 ムラモニター
65 プロジェクションレンズ
66 プロファイラーカメラ(ラインビームセンサー)
7 レーザ照射室
71 ステージ
72 ベース
8 基板
9 制御装置
91 制御部
92 記憶部
920 記録媒体
P プログラム(プログラム製品)
921 学習モデル
93 通信部
94 入出力I/F
941 表示装置
81 ガラス基板
82 ゲート電極
83 ゲート絶縁膜
84 アモルファスシリコン膜
85 ポリシリコン膜
86 層間絶縁膜
87a ソース電極
87b ドレイン電極