(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
B41F33/00 210
(21)【出願番号】P 2021176453
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋矢
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-181531(JP,U)
【文献】特開平10-264359(JP,A)
【文献】米国特許第04627350(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキツボからのインキを版胴へ送るための複数のインキローラを有するインキローラ群を備え、前記複数のインキローラのうちの所定インキローラ上のインキを掻き取るブレード及び該ブレードで掻き取ったインキを回収する回収容器を備え、前記ブレードは、前記所定インキローラに接触させて該所定インキローラ上のインキを掻き取る接触位置と該所定インキローラから離間した離間位置とに移動可能に構成され、前記所定インキローラは、該所定インキローラ上のインキを前記ブレードで掻き取るときは第1の回転方向へ回転されるように構成され、前記ブレードの位置変更及び前記所定インキローラの回転を制御する制御部を備え、
前記制御部は、接触位置の前記ブレードを離間位置へ位置変更し、該ブレードの位置変更に伴って前記所定インキローラを
前記ブレードで掻き取る方向である前記第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向に回転させることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記ブレードは、接触位置において先端側が斜め上方を向いた傾斜姿勢で前記所定インキローラに接触するように構成され、前記制御部は、前記ブレードを接触位置に位置変更させてインキの掻き取りを行わせた後、前記所定インキローラの前記第1の回転方向への回転を停止させ、その停止を所定時間維持させてから前記ブレードを接触位置から離間位置へ位置変更させることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記ブレードの離間位置における該ブレードの先端と前記所定インキローラの外周面との離間距離が、該ブレードと前記所定インキローラとの間にインキが垂れ下がることなく保持可能な距離に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記離間距離が、0.5mm~3.0mmの間の任意の値に設定したことを特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インキ部のインキローラ上のインキ量(インキ膜厚)を迅速に低減させるためのインキ掻き取りを行うことが記載されている。このインキ掻き取りは、ブレード(ドクタブレードとも言う)を回転しているインキローラ群のうちの所定のインキローラの外周面に設定時間接触させてインキローラ上のインキを掻き取って回収容器に回収する。設定時間経過後は、ブレードをインキローラの外周面から離間させた離間位置まで移動させる。
【0003】
ところが、ブレードをインキローラから離間させた時に、
図6に示すように、ブレード22の先端22Fと所定のインキローラ41の外周面41Aとの間にインキの糸引き27が発生する。この糸引き27は、離間したブレード22と所定のインキローラ41との間で、インキが延びて垂れ下がった状態であり、インキの粘性に起因して発生する現象である。前記垂れ下がった状態のインキEは自重により千切れてしまい、ブレード22の先端22Fと所定のインキローラ41の外周面41Aとの間から回収容器25外へ落下してしまう(
図6の破線で示している)、あるいはブレード22の裏面22cに回り込んで付着することがあり、清掃の手間が発生してしまうという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、清掃の手間が発生することを抑制することができる印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、インキツボからのインキを版胴へ送るための複数のインキローラを有するインキローラ群を備え、前記複数のインキローラのうちの所定インキローラ上のインキを掻き取るブレード及び該ブレードで掻き取ったインキを回収する回収容器を備え、前記ブレードは、前記所定インキローラに接触させて該所定インキローラ上のインキを掻き取る接触位置と該所定インキローラから離間した離間位置とに移動可能に構成され、前記所定インキローラは、該所定インキローラ上のインキを前記ブレードで掻き取るときは第1の回転方向へ回転されるように構成され、前記ブレードの位置変更及び前記所定インキローラの回転を制御する制御部を備え、前記制御部は、接触位置の前記ブレードを離間位置へ位置変更し、該ブレードの位置変更に伴って前記所定インキローラを前記第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向に回転させることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、インキ掻き取りが終了した接触位置のブレードを離間位置へ位置変更するに伴って所定インキローラを前記第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向に回転させることにより、ブレード先端と所定インキローラの外周面との間に発生する糸引きを形成するインキが、第2の回転方向に回転するインキローラに巻き取られるように移動する。これにより、ブレード先端と所定インキローラの外周面との間に糸引きが発生し難い、又は発生しても速やかに解消するため、インキが回収容器外へ落下してしまう、あるいはブレードの裏面に回り込んで付着することを抑制することができる。また、糸引きに起因する印刷不良の発生を抑制できる。
【0008】
また、本発明に係る印刷機は、前記ブレードが、接触位置において先端側が斜め上方を向いた傾斜姿勢で前記所定インキローラに接触するように構成され、前記制御部は、前記ブレードを接触位置に位置変更させてインキの掻き取りを行わせた後、前記所定インキローラの前記第1の回転方向への回転を停止させ、その停止を所定時間維持させてから前記ブレードを接触位置から離間位置へ位置変更させる構成であってもよい。
【0009】
上記のように、ブレードを接触位置に位置変更させてインキの掻き取りを行わせた後、所定インキローラの第1の回転方向への回転を所定時間停止させることによって、ブレード上に残っている掻き取られたインキが徐々に下方へ流動して回収容器に回収される。これにより、所定時間後にブレードを接触位置から離間位置へ位置変更させた時に、ブレード先端と所定インキローラの外周面との間に糸引きが発生し難くなる。
【0010】
また、本発明に係る印刷機は、前記ブレードの離間位置における該ブレードの先端と前記所定インキローラの外周面との離間距離が、該ブレードと前記所定インキローラとの間にインキが垂れ下がることなく保持可能な距離に設定してもよい。
【0011】
上記のように、ブレードの離間位置におけるブレードの先端と所定インキローラの外周面との離間距離を、ブレードと所定インキローラとの間にインキが垂れ下がることなく保持可能な距離に設定しておけば、糸引き状態のインキが千切れて落下することを防止できる。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、前記離間距離が、0.5mm~3.0mmの間の任意の値に設定することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接触位置のブレードを離間位置へ位置変更するに伴って所定インキローラを第1の回転方向とは反対方向の第2の回転方向に回転させることによって、清掃の手間が発生することを抑制することができる印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】所定インキローラにブレードを接触させてインキの掻き取りを行っている状態を説明する図である。
【
図4】インキの掻き取り後にブレードを所定インキローラから離間させて所定インキローラの回転を停止した状態を説明する図である。
【
図5】
図4の状態から所定インキローラを掻き取り時とは反対方向に回転させている状態を説明する図である。
【
図6】ブレードの先端とインキローラの外周面との間に糸引きが発生している従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る印刷機について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、インキ掻き取り機能を備えた印刷機であり、枚葉オフセット印刷機(以下において単に印刷機という)を示している。この印刷機は、紙積み台から一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙を送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙に印刷を行うための印刷部Bと、印刷部Bで印刷された枚葉紙に表面処理を施す表面処理部Cと、枚葉紙を排紙するための排紙部Dを備えている。ここで印刷部Bは、4色の印刷が行えるように4台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、4色以外の色、つまり1色又は2色又は3色、あるいは5色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は
図1に示されるものに限定されるものではない。
【0017】
前記印刷ユニット5は、版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、圧胴3のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙を爪台と爪とで把持するグリッパを、円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙をスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7及びスイングアーム10にも爪台と爪が設けられている。また、版胴1には、画像が形成された図示しない刷版が巻回され、固定されている。
【0018】
排紙部Dは、2つの排紙胴とグリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成されている。すなわち、表面処理部Cの圧胴3に隣接した第1排紙胴11と、これに隣接した第2排紙胴12が設けられ、そして枚葉紙の搬送方向前側(上流側)に設けられたスプロケット13と枚葉紙の搬送方向後側(下流側)に設けられたスプロケット14の間に無端状のチェーン15が巻回されており、スプロケット13、14の回転により、図示しないチェーンガイドに規制された状態でチェーン15は周回する。第2排紙胴12まで搬送されてきた枚葉紙は、チェーン15に所定間隔で複数固定された図示しないチェーングリッパに把持されて排紙される。
【0019】
図1に示すように、表面処理部Cには圧胴3と対向して当接するニス版胴16が設けられている。また、図示しないが、ニス版胴16に当接してニスを供給するアニロックスローラが設けられている。そして表面処理部Cは、ニス版胴16を圧胴3に対して昇降可能に支持する図示しない胴昇降装置を備えている。
【0020】
図2は、インキ供給部の拡大図である。インキツボ17内のインキが供給されるインキツボローラ18は、図中反時計方向に回転し、隣接するインキ呼出しローラ19を介して下流に位置する多数のインキローラからなるインキローラ群4にインキを供給する。インキ呼出しローラ19は詳細図示しないが、インキツボローラ18と下流側に隣接する横転ローラ20に交互に接離可能に往復動する。すなわち、インキ呼出しローラ19がインキツボローラ18に当接しているときは、インキ呼出しローラ19は横転ローラ20と離反している。この往復動をインキ呼出し動作ともいい、インキ呼出し回数が多いほど、インキローラ群4へのインキ供給量が多くなる。また、インキツボローラ18に対してインキツボ17が備えるインキツボキーKが矢印S方向に移動することにより接離可能となっており、インキツボキーKがインキツボローラ18に対して離間するほど、インキツボキーKの開度が大きくなって多量のインキがインキツボローラ18上に供給されるように構成されている。インキツボキーKは、図示していないインキツボキー駆動モータの駆動により移動する。尚、インキツボキーKについては、想像線で示す矢印R方向に回動することによりインキツボローラ18に対する接離が可能となるように構成することもできる。
図2に示す21は、インキローラ群4を洗浄するための洗浄液をインキローラ群4に供給する洗浄ノズルである。
【0021】
前記インキツボキーKは、インキツボローラ18(
図2参照)の軸方向、つまり印刷物の幅方向(搬送方向と直交する方向)に複数並設されている。インキツボキーKのインキツボローラ18に対する開度は、印刷画像に基づく必要なインキ量によって、インキツボキー毎に決められる。
【0022】
インキローラ群4のうちの1つの所定インキローラ41(
図2では、左端の下から2番目に位置するインキローラ)の左方には、所定インキローラ41上のインキの膜厚を減少させるためのブレード(ドクタブレードとも言う)22が設けられている。ブレード22は、アクチュエータの一例であるエアシリンダ23の伸縮作動によって、矢印T方向へ回動するように構成されている。具体的には、エアシリンダ23のピストンロッド23Aの先端部がアーム24の一端部に連結され、アーム24の他端部にブレード22が取り付けられた回収容器25の下端部が連携されている。したがって、
図2のエアシリンダ23を伸長させることにより、回収容器25を所定インキローラ41の回転軸と平行な軸芯X回りで時計回りに回転させて所定インキローラ41に接触させる接触位置(
図3参照)と、エアシリンダ23を前記とは逆に短縮させることにより、回収容器25を所定インキローラ41の回転軸と平行な軸芯X回りで反時計回りに回転させて所定インキローラ41から離間した離間位置(
図4、
図5参照)とにブレード22を移動可能に構成している。ブレード22の幅方向(
図2の紙面を貫通する方向)の寸法は、所定インキローラ41の幅方向の寸法よりも長い寸法に設定されている。この所定インキローラ41は、インキを送る時には、回転するだけでなく、回転軸方向(
図2の紙面を貫通する方向)にも移動可能に構成されているため、この回転軸方向の移動量をカバーできるようにブレード22の幅方向の寸法が設定されている。尚、回収容器25の幅方向の寸法もブレード22の幅方向の寸法に合わせて設定されている。
【0023】
また、ブレード22は、
図3に示すように、所定インキローラ41の外周面に接触する平板状の刃部22Aと、刃部22Aの下側部を支持する支持部22Bと、を備え、支持部22Bが回収容器25を構成する後述の上側壁部25aの内側に複数のビス26により固定されている。刃部22Aは、硬質の合成樹脂で構成されるとともに先端部が先端に向かうほど厚みが薄くなっており、インキを確実に掻き取ることができる。支持部22Bは、上端部が上端側ほど所定インキローラ41側に位置する傾斜面22bを備えており、刃部22Aで掻き取ったインキが傾斜面22bを通って回収容器25の下方へスムーズに移動案内できるようにしている。
【0024】
回収容器25は、
図3に示すように、断面形状略V字形状に構成され、所定インキローラ41側の板状の第1傾斜壁部25Aと、所定インキローラ41から離間する側の板状の第2傾斜壁部25Bと、第1傾斜壁部25Aの下端と第2傾斜壁部25Bの下端とを連結する下方に凸となる略U字状に湾曲した底壁部25Cと、を備えている。第1傾斜壁部25Aは、ブレード22が取り付けられる直線状の上側壁部25aと、上側壁部25aの下端から底壁部25Cまで直線状に延びる下側壁部25bと、を備えている。上側壁部25aは、下側壁部25bに対して所定インキローラ41側に近づく方向に傾斜している。そして、ブレード22の先端が所定インキローラ41の外周面に接触している状態では、上側壁部25aの上端が所定インキローラ41の外周部から離間するように構成されている。
【0025】
前記のように構成されたブレード22の刃部22Aが、所定インキローラ41の外周面に対して交差する方向、つまり斜め上方に先端側が向いた傾斜姿勢で接触するように構成されている。インキを掻き取るときは、所定インキローラ41は、
図3に示すように、ブレード22の刃部22Aの接触位置において所定インキローラ41上のインキEがブレード22に向かって移動するように反時計回りに回転される。これにより、所定インキローラ41上のインキEをブレード22の刃部22Aで掻き取ることができる。また、刃部22Aで掻き取られたインキEは、上端側ほど所定インキローラ41側に位置するように傾斜した(
図3では右斜め上方に向いた)刃部22Aの上面(表面)22aに沿って回収容器25側へ自重で移動する。
【0026】
印刷機は、ブレード22の位置変更及び所定インキローラ41の回転を制御する制御部F(
図3参照)を備えている。制御部Fは、接触位置のブレード22を離間位置へ位置変更し、ブレード22の位置変更に伴って所定インキローラ41を反時計回りとは反対方向の時計回りに回転させるように所定インキローラ41を駆動回転させるモータ(図示せず)に指示信号を出力する。上記反時計回りが本発明の第1の回転方向に相当し、上記時計回りが本発明の第2の回転方向に相当する。
【0027】
また、制御部Fは、ブレード22を接触位置に位置変更させてインキの掻き取りを行わせた後、所定インキローラ41の回転を停止させ、その停止を所定時間維持させてからブレード22を接触位置から離間位置へ位置変更させる(
図4参照)。前記のように、所定時間、所定インキローラ41の回転を停止させることによって、ブレード22上、特に先端22Fにあるインキが徐々に下方へ流動していく。これにより、所定時間後にブレード22を接触位置から離間位置へ位置変更させた時に、ブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間に糸引きが発生し難くなる、あるいは、発生したとしても糸引き状態となるインキの量を減少させることができる。前記所定時間(所定インキローラ41の回転停止を維持させる時間)の好適値は、インキの粘性によって異なる。一般的に、UVインキは油性インキに比べて粘性が高く流動性が低いため、前記所定時間を長くする必要がある。このため、UVインキを使用するのであれば、10秒程度に設定することが好ましい。また、所定インキローラ41の前記所定時間(停止時間)を任意の時間に設定できる構成にし、例えばUVインキでの停止時間を10秒とし、油性インキでの停止時間を10秒よりも短い時間に設定できるようにしてもよい。
【0028】
本願発明者が行った実験の結果、ブレード22の離間位置におけるブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの離間距離L(
図4参照)については、0.5mm~3.0mmの間の任意の値に設定することが好ましく、特に、2.0mm程度に設定することがより好ましいことがわかった。この実施形態では、離間距離Lを2.0mmとしている。離間距離Lは、ブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間の糸引き状態のインキEが垂れ下がる(
図6参照)ことなく
図4のように保持可能な距離である。
図4では、インキEがブレード22と所定インキローラ41との間に略直線状に掛渡されて保持されている状態の一例を示している。
【0029】
次に、所定インキローラ41上のインキEをブレード22で掻き取ってインキの膜厚を調整することについて説明する。
【0030】
インキ掻き取り用のボタンまたはスイッチ(図示せず)等を押すことによって、制御部Fは、
図2の離間位置に位置しているブレード22を接触位置に移動させるべく、エアシリンダ23を伸長作動させる信号をエアシリンダ23に出力する。エアシリンダ23の伸長作動により回収容器25を時計回りに回転させてブレード22を反時計回りに回転している所定インキローラ41の外周面41Aに接触した接触位置に位置させる(
図3参照)。
図3では、ブレード22に向かって移動してくるインキEが掻き取られて回収容器25に回収されている状態を示している。ブレード22によるインキEの掻き取りを行って膜厚調整が終了すると、制御部Fは、ブレード22が接触位置に位置したまま、所定インキローラ41の回転を停止させる。その停止を所定時間(例えば、UVインキの場合は10秒)維持させる。停止から所定時間が経過すると、制御部Fは、ブレード22を接触位置から離間位置まで移動させる(
図4参照)。ブレード22が離間位置に位置すると、制御部Fは、所定インキローラ41を反時計回りとは反対方向の時計回りに回転させるように所定インキローラ41を駆動回転させるモータに指示信号を出力する。尚、このときの所定インキローラ41の時計回りへの回転量は、糸引き状態のインキが所定インキローラ41に巻き取られるのに必要な回転角度以上であれば良い。例えば、30°以上であれば良い。
【0031】
前記のように、所定インキローラ41を反時計回りとは反対方向の時計回りに回転させることによって、ブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間に発生する糸引きを形成するインキEが、所定インキローラ41によって引っ張られて所定インキローラ41に巻き取られるように移動する(
図5参照)。これにより、ブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間に糸引きが発生し難い、又は発生しても速やかに解消するため、インキEがブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間から回収容器25外へ落下してしまう、あるいはブレード22の刃部22Aの裏面22c(
図5参照)に回り込んで付着することを抑制することができる。
【0032】
この実施形態では、ブレード22が離間位置に移動してから所定インキローラ41を反時計回りとは反対方向の時計回りに回転させるようにしたが、ブレード22が離間位置への移動を開始した時点(開始と同時)、又はブレード22が離間位置への移動を開始してから離間位置に位置するまでの間の任意の位置で所定インキローラ41の反対方向への回転を開始してもよい。
【0033】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0034】
前記実施形態では、所定インキローラ41上のインキの膜厚を調整するために掻き取る場合においてブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間に糸引きが発生し難いように、ブレード22の位置変更及び所定インキローラ41の回転を制御部Fで制御したが、
図2に示す洗浄ノズル21で洗浄液をインキローラ群4に供給して洗浄作業を行う場合においても、ブレード22の先端22Fと所定インキローラ41の外周面41Aとの間に糸引きが発生し難いように、ブレード22の位置変更及び所定インキローラ41の回転を制御部Fで制御してもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、インキローラ群4のうちの左端の下から2番目に位置するインキローラ41においてインキを掻き取るようにしたが、インキローラ群4の他のインキローラにおいてインキを掻き取る構成であってもよい。
【0036】
また、前記実施形態では、回収容器25を回転させることによりブレード22を位置変更させたが、回収容器25を直線的にスライドさせることによりブレード22を位置変更させてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、ブレード22の刃部22Aを平板状に構成したが、湾曲した形状に構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…版胴、2…ゴム胴、3…圧胴、4…インキローラ群、5…印刷ユニット、6…渡し胴、7…給紙胴、8…フィーダーボード、9…口板、10…スイングアーム、11…第1排紙胴、12…第2排紙胴、13,14…スプロケット、15…チェーン、16…ニス版胴、17…インキツボ、18…インキツボローラ、19…ローラ、20…横転ローラ、21…洗浄ノズル、22…ブレード、22A…刃部、22B…支持部、22F…先端、22a…上面(表面)、22b…傾斜面、22c…裏面、23…エアシリンダ、23A…ピストンロッド、24…アーム、25…回収容器、25A…第1傾斜壁部、25B…第2傾斜壁部、25C…底壁部、25a…上側壁部、25b…下側壁部、26…ビス、27…糸引き、41…所定インキローラ、41A…外周面、A…給紙部、B…印刷部、C…表面処理部、D…排紙部、E…インキ、F…制御部、K…インキツボキー、L…離間距離、S,T,R…矢印、X…軸芯