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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】減圧乾燥装置および減圧乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/04 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
F26B5/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022203982
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024088931
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】安陪 裕滋
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 知輝
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-038284(JP,A)
【文献】特開2006-324506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、
前記基板を収容するチャンバと、
前記チャンバ内において前記基板を支持する支持部と、
前記支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却する冷却部と、
前記チャンバから気体を吸引して、前記チャンバ内の圧力を低下させる減圧機構と、
前記チャンバ内へ気体を供給して、前記チャンバ内の圧力を上昇させる給気機構と、
減圧状態にある前記チャンバ内へ前記給気機構から所定量の気体を供給した後に、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を前記給気機構から供給するように前記給気機構を制御する制御部と、
を備え
前記減圧機構は、真空ポンプと、前記チャンバと前記真空ポンプとの間の少なくとも1つの真空バルブと、を含み、
前記制御部は、
前記所定量の気体を供給する際に、前記真空ポンプと前記チャンバとの間が遮断されるように前記少なくとも1つの真空バルブを制御し、
前記所定量の気体を供給した後、かつ、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を前記給気機構から供給する前に、前記真空ポンプが前記チャンバを排気するように前記少なくとも1つの真空バルブを制御する減圧乾燥装置。
【請求項2】
前記給気機構は、気体の給気源と、前記チャンバと前記給気源との間の第1バッファ部と、前記チャンバと前記第1バッファ部との間の第1給気バルブと、前記第1バッファ部と前記給気源との間の第2給気バルブと、を含み、
前記制御部は、前記所定量の気体を供給するために、前記第2給気バルブが閉状態に保たれつつ前記第1給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御する、
請求項1に記載の減圧乾燥装置。
【請求項3】
前記給気機構は、前記第2給気バルブと前記給気源との間の第2バッファ部と、前記第2バッファ部と前記給気源との間の第3給気バルブと、を含み、
前記制御部は、前記所定量の気体を供給するために、前記第2給気バルブが閉状態に保たれつつ前記第1給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御した後に、前記第2給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御する、
請求項2に記載の減圧乾燥装置。
【請求項4】
基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、
チャンバ内の支持部によって支持された前記基板の前記上面に間隔を空けて対面する冷却面を冷却した状態で、前記チャンバから気体を吸引することによって前記チャンバ内の圧力を低下させて、前記基板上の前記塗布膜から溶媒を蒸発させて前記冷却面で凝縮させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記チャンバ内へ所定量の気体を供給することによって前記チャンバ内の圧力を増大させて、前記冷却面の溶媒を蒸発させて前記冷却面を乾燥させる第2工程と、
前記第2工程の後に、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を供給する第3工程と、
を備え
前記第2工程を実行する際に、前記チャンバ内の気体の吸引が止められ、
前記第2工程を実行した後、かつ、前記第3工程を実行する前に、前記チャンバ内の気体の吸引が再開される、減圧乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減圧乾燥装置および減圧乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の基板に塗布されたフォトレジスト等の塗布膜を減圧乾燥する減圧乾燥装置が知られている。各種の基板には、例えば、各種のデバイスを形成するためのガラス基板、セラミック基板、半導体ウエハ、電子デバイス基板または印刷用の印刷版等の種々の基板が適用される。各種のデバイスには、例えば、半導体装置、表示パネル、太陽電池パネル、磁気ディスク、または光ディスク等が適用される。表示パネルには、例えば、液晶表示パネル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネル、プラズマ表示パネル、または電界放出ディスプレイ等が適用される。
【0003】
減圧乾燥装置を用いて塗布膜を乾燥する際には、例えば、チャンバ内において複数のピンが基板を支持している状態で、チャンバの底部の排気口を介して真空ポンプでチャンバ内から排気を行う。該排気により、チャンバ内の圧力が低下する。チャンバ内の圧力が低下すると、塗布膜の溶媒が蒸発するので、塗布膜を乾燥させることができる。そして、例えば、真空度が所定値に到達するとチャンバ内からの排気を停止し、チャンバ内に気体を供給することでチャンバ内を大気圧に戻す。気体には、例えば、窒素気体等の不活性気体または空気等が適用される。
【0004】
ところで、減圧乾燥装置では、減圧初期においてチャンバ内の圧力を急激に低下させると、基板上の塗布膜に突沸が生じる可能性がある。突沸が発生すると、例えば、塗布膜の膜厚がばらつき得る。
【0005】
特許文献1に記載された減圧乾燥装置は、このような突沸の発生を抑制することができる。特許文献1に記載の減圧乾燥装置では、基板を支持する支持ピンを昇降させる昇降部が設けられている。昇降部は減圧初期において支持ピンを上昇させることにより、基板とチャンバの天井面との間隔を狭くする。これにより、基板と天井面との間の圧力の低下速度が小さくなり、突沸の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-086766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板と天井面との間隔が狭くなると、基板上の塗布膜からの溶媒蒸気が基板と天井面との間の空間に滞留してしまう。特に、塗布膜の中央付近からの溶媒蒸気は滞留しやすい。つまり、塗布膜の周縁付近からの溶媒蒸気は、濃度拡散により、水平方向で外側に流れ得るものの、塗布膜の中央付近では濃度勾配が小さいのでそのまま滞留してしまう。このため、塗布膜の溶媒は、その中央部分よりも周縁部分において蒸発しやすくなる。つまり、塗布膜の乾燥ムラを招いてしまう。乾燥ムラは、例えば、乾燥した塗布膜の膜厚のばらつきを生じさせる、という問題がある。
【0008】
上記問題を解決するために、本発明者は、上記天井面を冷却することによって冷却面とする技術について検討している。この技術によれば、冷却面に凝集された液状の溶媒の作用によって、上記乾燥ムラを抑制することができる。一方で、本発明者は、天井面を単純に冷却面にしただけでは、冷却面に液状の溶媒が過度に蓄積されることがあるという新たな問題を見出している。特に、工業用途では、長いインターバルを空けることなく減圧乾燥装置を繰り返し動作させる必要があるのが通常であり、その結果、1回の動作では蓄積量が少なくとも、動作が繰り返されるにつれて、冷却面に液状の溶媒が過度に蓄積されやすい。過度に蓄積された液状の溶媒は、減圧乾燥の実施において悪影響を及ぼすことがあり、例えば、基板上に落下すると、当該基板を用いた製品の品質が損なわれてしまう。過度に蓄積された液状の溶媒は、減圧下での乾燥時間を十分に長くすることによって除去可能ではあるものの、これは生産性の過度な低下につながりやすい。
【0009】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、生産性の過度な低下を避けつつ、冷却部の冷却面に液状の溶媒が過度に蓄積されることを避ける技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様は、基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥装置であって、前記基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内において前記基板を支持する支持部と、前記支持部によって支持された前記基板の前記上面と対面する冷却面を冷却する冷却部と、前記チャンバから気体を吸引して、前記チャンバ内の圧力を低下させる減圧機構と、前記チャンバ内へ気体を供給して、前記チャンバ内の圧力を上昇させる給気機構と、減圧状態にある前記チャンバ内へ前記給気機構から所定量の気体を供給した後に、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を前記給気機構から供給するように前記給気機構を制御する制御部と、を備える。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係る減圧乾燥装置であって、前記給気機構は、気体の給気源と、前記チャンバと前記給気源との間の第1バッファ部と、前記チャンバと前記第1バッファ部との間の第1給気バルブと、前記第1バッファ部と前記給気源との間の第2給気バルブと、を含み、前記制御部は、前記所定量の気体を供給するために、前記第2給気バルブが閉状態に保たれつつ前記第1給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御する。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に係る減圧乾燥装置であって、前記給気機構は、前記第2給気バルブと前記給気源との間の第2バッファ部と、前記第2バッファ部と前記給気源との間の第3給気バルブと、を含み、前記制御部は、前記所定量の気体を供給するために、前記第2給気バルブが閉状態に保たれつつ前記第1給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御した後に、前記第2給気バルブが閉状態から開状態に切り替えられるように前記給気機構を制御する。
【0013】
第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る減圧乾燥装置であって、前記減圧機構は、真空ポンプと、前記チャンバと前記真空ポンプとの間の少なくとも1つの真空バルブと、を含み、前記制御部は、前記所定量の気体を供給する際に、前記真空ポンプが前記チャンバを排気するように前記少なくとも1つの真空バルブを制御する。
【0014】
第5の態様は、第1から第3のいずれかの態様に係る減圧乾燥装置であって、前記減圧機構は、真空ポンプと、前記チャンバと前記真空ポンプとの間の少なくとも1つの真空バルブと、を含み、前記制御部は、前記所定量の気体を供給する際に、前記真空ポンプと前記チャンバとの間が遮断されるように前記少なくとも1つの真空バルブを制御する。
【0015】
第6の態様は、第5の態様に係る減圧乾燥装置であって、前記制御部は、前記所定量の気体を供給した後、かつ、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を前記給気機構から供給する前に、前記真空ポンプが前記チャンバを排気するように前記少なくとも1つの真空バルブを制御する。
【0016】
第7の態様は、基板の上面に塗布された塗布膜を乾燥させる減圧乾燥方法であって、チャンバ内の支持部によって支持された前記基板の前記上面に間隔を空けて対面する冷却面を冷却した状態で、前記チャンバから気体を吸引することによって前記チャンバ内の圧力を低下させて、前記基板上の前記塗布膜から溶媒を蒸発させて前記冷却面で凝縮させる第1工程と、前記第1工程の後に、前記チャンバ内へ所定量の気体を供給することによって前記チャンバ内の圧力を増大させて、前記冷却面の溶媒を蒸発させて前記冷却面を乾燥させる第2工程と、前記第2工程の後に、前記チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体を供給する第3工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
上記各態様によれば、第1に、チャンバ内の圧力が大気圧となる量の気体が供給される前に、減圧状態にあるチャンバ内へ気体が供給される。これにより、冷却部の冷却面に凝縮されていた溶媒の蒸発が促進される。よって、冷却部の冷却面に液状の溶媒が過度に蓄積されることが避けられる。第2に、供給される気体の量が所定量とされる。これにより、供給される気体の量を、上記の蒸発の促進に必要十分な量に抑えることができる。よって、供給される気体の量が過剰であることに起因しての生産性の過度な低下を避けることができる。以上から、生産性の過度な低下を避けつつ、冷却部の冷却面に液状の溶媒が過度に蓄積されることを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の横断面の一例を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を示す図である。
図4】基板の一例を示す斜視図である。
図5】基板の一部分の縦断面の一例を示す図である。
図6】制御部において実現される機能を概念的に示したブロック図である。
図7】第1実施形態に係る減圧乾燥方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】第1減圧処理におけるチャンバ内の様子の一例を概略的に示す図である。
図9】第1減圧処理におけるチャンバ内のうちの冷却面および基板の近傍を拡大して示す図である。
図10】比較構造に係るチャンバの天板部および基板を拡大して示す図である。
図11】比較構造における上部空間内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。
図12】冷却部が冷却している状態での上部空間内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。
図13】第2減圧処理におけるチャンバ内の様子の一例を概略的に示す図である。
図14】第1実施形態に係る減圧乾燥におけるチャンバ圧力の時間変化を例示するグラフ図である。
図15】比較例の減圧乾燥におけるチャンバ圧力の時間変化を例示するグラフ図である。
図16】第2実施形態の減圧乾燥におけるチャンバ圧力の時間変化を例示するグラフ図である。
図17】第3実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図18】第3実施形態に係る減圧乾燥におけるチャンバ圧力の時間変化を例示するグラフ図である。
図19】第4実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図20】第5実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図21】第6実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
図22】第7実施形態に係る減圧乾燥装置の縦断面の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態および各種変形例について、図面を参照しつつ説明する。図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。また、本明細書において、下方向は、重力方向であり、上方向は、重力方向とは逆の方向である。上方向および下方向を総称して上下方向とも言う。平面視は平面レイアウトを意味する。何らかの部材の平面レイアウトは、当該部材を平面へ射影することによって得られる2次元的レイアウトのことである。当該平面は、上下方向に垂直な面であってよい。
【0020】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を概略的に示す図である。図2は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の横断面の一例を概略的に示す図である。図3は、第1実施形態に係る減圧乾燥装置1の縦断面の一例を概略的に示す図である。図1の縦断面と図3の縦断面とは、約90度異なる方向からそれぞれ見たときの減圧乾燥装置1の構成を示している。図3では、図面の煩雑化を避けるために、後述する減圧機構30、給気機構60、圧力計70および制御部80に関する構成が便宜的に省略されている。
【0021】
減圧乾燥装置1は、基板9の上面に形成された塗布膜90(図5参照)を乾燥させる装置である。
【0022】
基板9には、例えば、ガラス基板、半導体ウエハ、またはセラミック基板等が適用される。基板9は、例えば、第1主面としての第1面F1(図4および図5参照)と、この第1面F1とは逆の第2主面としての第2面F2(図5参照)と、を有する平板状の基板である。例えば、減圧乾燥装置1では、基板9の第1面F1が基板9の上面とされ、基板9の第2面F2が基板9の下面とされる。ここでは、基板9に矩形のガラス基板が適用された具体例を適宜挙げて説明する。基板9の第1面F1には、例えば、予め有機材料および溶媒を含む処理液が塗布されることで、塗布膜90が部分的に形成されている。処理液の塗布は、例えば、スリットコータまたはインクジェット装置等で行われる。処理液には、例えば、ポリイミド前駆体と溶媒とを含む液(PI液ともいう)またはレジスト液等の塗布液が適用される。ポリイミド前駆体には、例えば、ポリアミド酸(ポリアミック酸)等が適用される。溶媒には、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン:N-Methyl-2-Pyrrolidone)が適用される。また、例えば、減圧乾燥装置1が有機ELディスプレイの製造工程に適用される場合には、塗布膜90が、減圧乾燥装置1で乾燥されることによって有機ELディスプレイパネルの正孔注入層、正孔輸送層、または発光層となる態様が採用されてもよい。
【0023】
図4は、基板9の一例を示す斜視図である。図5は、基板9の一部分の縦断面の一例を示す図である。図4に示されるように、基板9は、例えば、平面視において、縦横の長さが異なる長方形状の形態を有する。基板9には、デバイス等が形成される領域(被形成領域とも塗布領域ともいう)A1が、複数配列されていてよい。図4の例では、上面視において、基板9には、4つの矩形状の塗布領域A1が、2行2列のマトリックス状に配列されている。ただし、塗布領域A1の形状、数、配置は、この例に限定されるものではない。塗布膜90は、減圧乾燥装置1による減圧乾燥工程よりも前の塗布工程において、スリットコータまたはインクジェット装置等によって、各塗布領域A1の上面に、所望のパターンに従って形成される。所望のパターンには、例えば、回路のパターンが適用される。なお図4においては、パターンを捨象して塗布膜90が示されている。パターンを捨象せずに考慮すると、図5で示されるように、各塗布領域A1の上面としての第1面F1は、塗布膜90に覆われた領域(被覆領域ともいう)A3と、塗布膜90に覆われていない露出した領域(露出領域ともいう)A4と、を有してよい。また、基板9のうちの塗布領域A1の周囲および隣り合う塗布領域A1の間の領域は、上面としての第1面F1に塗布膜90が形成されていない領域(非塗布領域ともいう)A2となっている。非塗布領域A2は、塗布膜90に覆われていない露出した領域(露出領域)A4でもある。
【0024】
<1-1.減圧乾燥装置の構成の概要>
次に減圧乾燥装置1の構成について概説する。図1および図2に示されるように、減圧乾燥装置1は、チャンバ10と、支持部20と、減圧機構30と、冷却部40と、給気機構60と、制御部80とを含んでいる。
【0025】
チャンバ10は、基板9を収容するための部分である。支持部20はチャンバ10内に設けられており、基板9を水平姿勢で支持する。ここでいう水平姿勢とは、基板9の厚み方向が上下方向に沿う姿勢である。
【0026】
減圧機構30はチャンバ10内の気体を吸引して、気体をチャンバ10の外部に排出する。この吸引により、チャンバ10内の圧力が低下する。チャンバ10内の圧力が低下することにより、基板9の第1面F1上の塗布膜90の溶媒が蒸発し、塗布膜90が乾燥する。
【0027】
冷却部40は冷却面40aを冷却する。冷却面40aは、支持部20によって支持された基板9の第1面F1と上下方向において対面する面である。図1の例では、冷却面40aはチャンバ10の天井面に相当する。冷却面40aは平面視において基板9よりも大きいサイズを有してもよい。つまり、冷却面40aは、基板9の第1面F1の全面と対面することができる程度のサイズを有していてもよい。冷却面40aは例えば水平な平坦面である。冷却部40が冷却面40aを冷却することにより、冷却面40aの温度を低下させることができる。
【0028】
基板9の第1面F1上の塗布膜90から蒸発した溶媒の蒸気(以下、溶媒蒸気と呼ぶ)は、冷却面40aにおいて冷却されて凝縮し得る。このため、冷却面40aには液状の溶媒91(後に説明する図8も参照)が付着し得る。この凝縮によって、後に詳述するように、塗布膜90の乾燥ムラの発生を抑制することができる。また、チャンバ10内の圧力のさらなる低下により、冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進させることもできる。この凝縮および蒸発についても後に詳述する。
【0029】
給気機構60はチャンバ10内に気体を供給する。これにより、チャンバ10内の圧力を上昇させることができる。詳しくは後述するが、給気機構60は圧力を、大気圧未満の値まで上昇させることもできるし、また、大気圧まで上昇させることもできる。
【0030】
また、図1の例では、減圧乾燥装置1は第1昇降部100をさらに含んでいる。第1昇降部100は支持部20を昇降させる。具体的には、第1昇降部100は上昇位置H1と下降位置H2との間で支持部20を昇降させる。上昇位置H1は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるときの支持部20の位置である。図1の例では、上昇位置H1に位置する支持部20および基板9を仮想線で示している。下降位置H2は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔よりも広い第2間隔となるときの支持部20の位置である。つまり、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態との間で、支持部20を昇降させる。第1間隔は例えば10mm以下であり、より具体的な一例として5mm程度である。第2間隔は例えば第1間隔の5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。数値の具体例を説明すると、第2間隔は例えば50mm以上であり、より具体的な一例として、80mm程度である。
【0031】
後に詳述するように、減圧初期において、第1昇降部100は支持部20を上昇位置H1に位置させる。その後、第1昇降部100は支持部20を下降位置H2に下降させる。この技術的意義についても後に詳述する。
【0032】
また、図1および図2の例では、減圧乾燥装置1は、底面整流板50と、側面整流板51と、圧力計70と、をさらに含んでいる。底面整流板50および側面整流板51はチャンバ10内に設けられており、チャンバ10内の気流を整える。圧力計70はチャンバ10内の圧力を計測し、その計測結果を示す電気信号を制御部80に出力する。制御部80は上述の減圧乾燥装置1の各種構成を制御する。
【0033】
次に、減圧乾燥装置1の各構成の詳細な一例について述べる。
【0034】
<1-1-1.チャンバ10>
チャンバ10には、基板9を収容するための内部空間10sを有する耐圧容器が適用される。チャンバ10は、例えば、図示を省略した装置フレーム上に固定されている。チャンバ10の形状は、例えば、扁平な直方体状である。チャンバ10は、例えば、略正方形状の底板部11と、4つの側壁部12と、略正方形状の天板部13と、を有する。4つの側壁部12は、例えば、底板部11の4つの端辺と、天板部13の4つの端辺とを、上下方向に接続している。例えば、4つの側壁部12のうちの1つの側壁部12には、搬入出口14と、この搬入出口14を開閉するゲート部(ゲートバルブともいう)15と、が設けられている。ゲート部15は、例えば、開閉駆動部16に連結もしくは接続されている。図3では、図面の煩雑化を避けるために、開閉駆動部16が概念的に示されている。開閉駆動部16には、例えば、エアシリンダ等の駆動装置が適用される。ここでは、例えば、開閉駆動部16の動作によって、ゲート部15は、搬入出口14を閉鎖している位置(閉鎖位置ともいう)と、搬入出口14を開放している位置(開放位置ともいう)との間で移動することができる。
【0035】
ここで、例えば、ゲート部15が閉鎖位置に位置する状態では、チャンバ10の内部空間10sが密閉される。例えば、ゲート部15が開放位置に位置する状態では、搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。
【0036】
<1-1-2.支持部20>
支持部20は、チャンバ10の内部空間10sに位置しており、チャンバ10の内部空間10sに収容された基板9を下方から支持することができる。支持部20は、例えば、複数の支持プレート21と、複数の支持ピン22と、を有する。複数の支持プレート21は、例えば、水平方向に間隔をあけて配列されている。各支持プレート21の上面には、複数の支持ピン22が立設されている。複数の支持ピン22は平面視において2次元的に分散配置される。複数の支持プレート21は、支持部20のベースとなる部分である。基板9は複数の支持プレート21の上方に配置され、複数の支持ピン22の上端部が基板9の下面としての第2面F2に接触することで、基板9が水平姿勢で支持される。
【0037】
<1-1-3.減圧機構30>
図1および図2に示されるように、チャンバ10の底板部11のうち基板9と上下方向において対向する部分には、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dが設けられている。減圧機構30は、排気配管31と、真空ポンプ32と、チャンバ10と真空ポンプ32との間の少なくとも1つの真空バルブとを有する。図1の例では、この少なくとも1つの真空バルブとして、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdと、主バルブVmとが設けられている。排気配管31は、例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dと、1つの主配管31eと、を有する。例えば、個別配管31aの一端は、排気口16aに接続しており、個別配管31bの一端は、排気口16bに接続しており、個別配管31cの一端は、排気口16cに接続しており、個別配管31dの一端は、排気口16dに接続している。例えば、4つの個別配管31a,31b,31c,31dのそれぞれの他端は、合流して主配管31eの一端に接続されている。例えば、主配管31eの他端は、真空ポンプ32に接続している。例えば、個別バルブVaは、個別配管31aの経路上に設けられており、個別バルブVbは、個別配管31bの経路上に設けられており、個別バルブVcは、個別配管31cの経路上に設けられており、個別バルブVdは、個別配管31dの経路上に設けられている。例えば、主バルブVmは、主配管31eの経路上に設けられている。
【0038】
ここで、例えば、ゲート部15によって搬入出口14を閉鎖した状態で、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの少なくとも1つと、1つの主バルブVmとを開状態とし、真空ポンプ32を動作させると、チャンバ10内の気体が、排気配管31を介してチャンバ10の外部へ排出される。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sの圧力を低下させることができる。これによりチャンバ10は減圧状態とされる。4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの排気量(吸引流量)を、個別に調節するためのバルブである。4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開状態と閉状態との間で切り替えられる弁(開閉弁ともいう)が適用される。主バルブVmは、例えば、4つの排気口16a,16b,16c,16dからの合計の排気量を調整するためのバルブである。主バルブVmには、例えば、制御部80からの指令に基づいて開度が調節され得る弁(開度制御弁ともいう)が適用される。本第1実施形態においては、後述するように給気機構60がチャンバ10内へ所定量の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが制御部80によって制御される。
【0039】
<1-1-4.第1昇降部100>
第1実施形態では、第1昇降部100はチャンバ10内において支持部20を昇降させる。換言すれば、第1昇降部100は、支持部20を昇降させることができる機構(昇降機構ともいう)を有する。図1では、図面の煩雑化を避けるために、第1昇降部100が概念的に示されている。第1昇降部100には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。図3に示されるように、第1昇降部100は、例えば、本体部100aと、移動部100bと、を有する。本体部100aは、例えば、チャンバ10の外部において、図示を省略した装置フレームに固定されている。移動部100bは、例えば、本体部100aに対して、上下方向に移動することができる。移動部100bには、例えば、棒状の部材等が適用される。移動部100bは、例えば、チャンバ10の底板部11の貫通孔11hに挿通された状態で位置している。そして、例えば、移動部100bの上端部に、支持部20が固定されている。ここでは、例えば、底板部11の下面と移動部100bとの間にベローズ等が設けられれば、底板部11と移動部100bとの隙間が密閉され得る。例えば、支持部20が複数の支持プレート21を有する場合には、移動部100bは、支持プレート21ごとに支持プレート21に固定されており且つ底板部11の貫通孔11hに挿通された棒状の部分(棒状部ともいう)と、複数の棒状部を連結している部分(連結部ともいう)と、連結部に接続されており且つ本体部100aに摺動可能に支持された部分(摺動部ともいう)と、を有する。第1昇降部100が支持部20を昇降させることにより、支持部20によって支持された基板9も昇降する。
【0040】
<1-1-5.冷却部40>
冷却部40の具体的な構成は特に制限されないものの、図1の例では、冷却部40は、冷却部材41と、第1冷媒配管42と、第2冷媒配管43と、冷媒冷却源44とを含む。なお図3では、図面の煩雑化を避けるために、冷却部40の構成を簡易的に示している。冷却部材41は板状形状を有する。この場合、冷却部材41は冷却板とも呼ばれ得る。冷却部材41は、その厚み方向が上下方向に沿う姿勢で、天板部13の上面に取り付けられている。冷却部材41は平面視において例えば長方形状を有する。冷却部材41の下面は天板部13の上面に密着しているとよい。冷却部材41は熱伝導率の高い材料(例えば金属など)によって形成され得る。
【0041】
図1の例では、冷却部材41の内部には冷媒流路41aが形成されている。冷媒流路41aは例えば平面視において蛇行していてもよく、渦巻き状に延びていてもよい。図1の例では、冷媒流路41aの流入口41bおよび流出口41cは冷却部材41の上面に形成されている。流入口41bは第1冷媒配管42の下流端に接続され、流出口41cは第2冷媒配管43の上流端に接続される。第1冷媒配管42の上流端および第2冷媒配管43の下流端は、冷媒冷却源44に接続されている。
【0042】
冷媒冷却源44には第2冷媒配管43の下流端から冷媒が流入する。冷媒は、液体であってもよく、気体であってもよい。具体的な一例として、冷媒には水を適用することができる。冷媒冷却源44は冷媒を冷却し、冷却後の冷媒を第1冷媒配管42の上流端に供給する。冷媒冷却源44は例えばヒートポンプであってもよい。冷媒冷却源44によって冷却された冷媒は第1冷媒配管42の上流端に流入し、第1冷媒配管42を通じて冷媒流路41aに流入する。低温の冷媒が冷媒流路41aを流れることにより、冷媒が冷却部材41と熱交換して冷却部材41を冷却する。この冷却部材41は天板部13と熱交換するので、天板部13も冷却される。冷媒流路41aを流れて温められた冷媒は第2冷媒配管43を通じて再び冷媒冷却源44に流入し、冷媒冷却源44によって再び冷却される。
【0043】
冷却部40がチャンバ10の天板部13を冷却すると、天板部13の下面(つまり、チャンバ10の天井面)である冷却面40aも冷却される。図1の例では、冷却部材41は平面視において基板9よりも大きなサイズを有する。つまり、平面視において冷却部材41の輪郭は基板9の輪郭を囲う。冷却部材41が平面視において長方形状を有している場合には、冷却部材41の長辺は基板9の長辺よりも長く、冷却部材41の短辺は基板9の短辺よりも長い。これにより、冷却部材41は、基板9の第1面F1の全面と対向する冷却面40aの全面を適切に冷却することができる。上記長方形状は、正方形状であってもよい。この場合、冷却部材41の1辺は基板9の短辺よりも長くてもよい。これによれば、支持部20上に配置される基板9の向きにかかわらず、平面視において、冷却部材41は基板9よりも大きい。このため、基板9の向きにかかわらず、冷却部材41は、基板9の第1面F1の全面と対向する冷却面40aの全面を適切に冷却することができる。
【0044】
<1-1-6.底面整流板50>
底面整流板50は、減圧機構30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、底面整流板50は、支持部20に支持される基板9と、チャンバ10の底板部11との間に位置するように配置されている。底面整流板50は、例えば、チャンバ10の底板部11に、図示を省略した複数の支柱を介して固定されている。図2に示されるように、例えば、底面整流板50は、平面視において正方形状の形状を有する。そして、例えば、底面整流板50の平面視における各辺の長さは、長方形状の基板9の短辺よりも長い。このため、例えば、支持部20上に配置される基板9の向きにかかわらず、平面視において、底面整流板50は、基板9よりも大きい。また、底面整流板50は、例えば、第1昇降部100の移動部100bが挿通された状態にある貫通孔50hを有している。貫通孔50hにおいて、底面整流板50と移動部100bとは、ごく小さな間隔をあけて位置している。
【0045】
<1-1-7.側面整流板51>
側面整流板51は、底面整流板50とともに、減圧機構30によるチャンバ10内の減圧時に、内部空間10sにおける気体の流れを規制するためのプレートである。例えば、側面整流板51は、下降位置H2に位置した支持部20によって支持される基板9と、チャンバ10の側壁部12との間に位置するように配置されている。ここでは、例えば、支持部20に支持される基板9の周囲を囲むように、4つの側面整流板51が配置されている。例えば、4つの側面整流板51は、全体として、基板9を包囲する四角筒状の整流板を形成している。また、例えば、底面整流板50および4つの側面整流板51は、全体として、有底筒状の箱状の整流板を形成している。なお、図1の例では、側面整流板51の上端は、上昇位置H1に位置した支持部20によって支持される基板9の第2面F2よりも下方に位置している。このため、支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9は4つの側面整流板51によって包囲されていない。
【0046】
ここで、例えば、支持部20が下降位置H2に位置した第2状態でのチャンバ10内の減圧時には、基板9の直上の気体は主として側面整流板51の上端に向かって流れる(後に説明する図13も参照)。該気体は、側面整流板51と側壁部12との間の空間、底面整流板50と底板部11との間の空間、および排気口16a,16b,16c,16dをこの記載の順に通って、チャンバ10の外部へ排出される。このように、気体が基板9から離れた空間を流れることで、基板9の近傍に気流が形成されにくくなる。そして、基板9の周縁部において集中的な気流の発生が生じにくくなる。これにより、例えば、基板9の上面に形成された塗布膜90の乾燥ムラの発生が抑制され得る。
【0047】
また、ここで、例えば、図2に示されるように、平面視において、4つの排気口16a,16b,16c,16dが、いずれも正方形状の底面整流板50の対角線52上に位置している構成が採用される。この場合には、例えば、各排気口16a,16b,16c,16dによって、底面整流板50の中央(2本の対角線52の交点)に対して対称な気流が形成され得る。これにより、例えば、チャンバ10の内部空間10sにおいて、より均一な気流が形成され得る。
【0048】
<1-1-8.給気機構60>
給気機構60は、チャンバ10内に気体を供給する動作(給気ともいう)を行う部分である。図1で示されるように、チャンバ10の底板部11には、例えば、給気口16fが設けられている。給気口16fは、例えば、底面整流板50の下方に位置している。給気機構60はチャンバ10の給気口16fに取り付けられている。給気機構60は、気体の給気源62と、チャンバ10の給気口16fと給気源62との間のバッファ部63(第1バッファ部)と、チャンバ10の給気口16fとバッファ部63との間の給気バルブV1(第1給気バルブ)と、バッファ部63と給気源62との間の給気バルブV2(第2給気バルブ)とを有している。なおこれら部材間は、給気配管61によって接続されていてよい。図1においては、給気配管61の一端は、給気口16fに接続しており、給気配管61の他端は給気源62に接続しており、バッファ部63および給気バルブV1,V2は給気配管61の経路上に設けられている。
【0049】
ここで、第1に、給気バルブV1,V2の両方を開状態とすると、給気源62から給気配管61とバッファ部63と給気口16fを介して、チャンバ10の内部空間10sに気体が供給される。これにより、チャンバ10内の圧力を上昇させることができ、当該圧力を大気圧まで上昇させることもできる。第2に、チャンバ10が減圧状態にあるときに、給気バルブV2を閉鎖しつつ給気バルブV1を閉状態から開状態に切り替えると、バッファ部63内に貯められていた所定量の気体が、バッファ部63から給気配管61と給気口16fを介してチャンバ10の内部空間10sに供給される。これにより、チャンバ10内の圧力を上昇させることができる。バッファ部63内に貯められている気体は、チャンバ10の内部空間10sへ供給され始める前の時点において、給気源62からの給気圧力に相当する圧力を有していてよい。バッファ部63は、給気源62から供給された所定量の気体を一時的に貯めることができる一種の容器であり、例えば、給気タンク、または、十分な内部容積を有する程度に十分に長い配管である。バッファ部63の体積は、チャンバ10の体積よりも小さくてよい。上記所定量は、十分な減圧状態にあるチャンバ10を大気圧に到達させることができる量よりも少ない量であってよい。
【0050】
給気源62から供給される気体は、例えば、窒素気体等の不活性気体であってもよいし、クリーンドライエアであってもよい。クリーンドライエアは、例えば、一般的な環境における空気に対してパーティクルおよび水分を除去する清浄化を施すことで準備され得る。
【0051】
減圧状態にあるチャンバ10内へ給気機構60から上記所定量の気体を供給するために、給気バルブV2が閉状態に保たれつつ給気バルブV1が閉状態から開状態に切り替えられるように給気機構60は制御部80によって制御される。なお、前述したように本第1実施形態においては、上記所定量の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように減圧機構30が制御部80によって制御される。つまり、チャンバ10内への上記所定量の気体の供給と、チャンバ10からの排気とが、同時に行われる。減圧状態にあるチャンバ10内へ給気機構60から所定量の気体を上記のように供給した後に、チャンバ10内の圧力が大気圧となる量の気体を給気機構60から供給するように給気機構60は制御部80によって制御される。
【0052】
<1-1-9.圧力計70>
圧力計70は、チャンバ10内の圧力、言い換えればチャンバ10の内部空間10sの圧力、を計測するセンサである。なお、チャンバ10内に混合気体がある場合、ここで言う圧力は全圧を意味する。図1に示されるように、圧力計70はチャンバ10の一部分に取り付けられている。圧力計70はチャンバ10の内部空間10sの圧力を計測し、その計測結果を制御部80へ出力することができる。
【0053】
<1-1-10.制御部80>
制御部80は、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御するためのユニット(電子回路)である。制御部80は、減圧機構30、冷却部40、給気機構60および第1昇降部100等の構成を制御することができる。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ801、RAM(Random Access Memory)等のメモリ802、およびハードディスクドライブ等の記憶部803を有するコンピュータによって構成されている。記憶部803には、例えば、減圧乾燥方法を実行させるためのコンピュータプログラム(プログラムともいう)803pおよび各種のデータが記憶されている。記憶部803は、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。制御部80は、例えば、記憶部803からメモリ802にプログラム803pおよびデータを読み出して、プロセッサ801においてプログラム803pおよびデータに従った演算処理を行うことで、減圧乾燥装置1の各部の動作を制御する。このため、例えば、プログラム803pは、減圧乾燥装置1において制御部80に含まれるプロセッサ801によって実行されることで、減圧乾燥方法を実行することができる。
【0054】
また、制御部80には、例えば、入力部804、出力部805、通信部806およびドライブ807が接続されていてもよい。入力部804は、例えば、ユーザの動作等に応答して各種の信号を制御部80に入力する部分である。入力部804には、例えば、ユーザの操作に応じた信号を入力する操作部、ユーザの音声に応じた信号を入力するマイク、およびユーザの動きに応じた信号を入力する各種センサ等が含まれ得る。出力部805は、例えば、各種の情報をユーザが認識可能な態様で出力する部分である。出力部805には、例えば、表示部、プロジェクタ、およびスピーカ等が含まれ得る。表示部は、入力部804と一体化されたタッチパネルであってもよい。通信部806は、例えば、有線もしくは無線の通信手段等によってサーバ等の外部の装置との間で各種の情報の送受信を行う部分である。例えば、通信部806によって外部の装置から受信したプログラム803pが記憶部803に記憶されてもよい。ドライブ807は、例えば、磁気ディスクまたは光ディスク等の可搬性の記憶媒体807mの着脱が可能な部分である。このドライブ807は、例えば、記憶媒体807mが装着されている状態で、この記憶媒体807mと制御部80との間におけるデータの授受を行う。例えば、プログラム803pが記憶された記憶媒体807mがドライブ807に装着されることで、記憶媒体807mから記憶部803内にプログラム803pが読み込まれて記憶されてもよい。ここでは、記憶媒体807mは、例えば、プログラム803pを記憶し、コンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体としての役割を有する。
【0055】
図6は、制御部80において実現される機能を概念的に示したブロック図である。図6に示されるように、制御部80は、例えば、開閉駆動部16、第1昇降部100、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vd、主バルブVm、真空ポンプ32、給気バルブV1,V2、冷却部40および圧力計70と、それぞれ電気的に接続されている。制御部80は、例えば、圧力計70から出力される計測値を参照しつつ、上記各部の動作を制御することができる。
【0056】
図6に概念的に示したように、制御部80は、実現される機能的な構成として、例えば、開閉制御部81、昇降制御部82、切替制御部83、排気制御部84、ポンプ制御部85、給気制御部86および冷却制御部87を有する。例えば、開閉制御部81は、開閉駆動部16の動作を制御する。例えば、昇降制御部82は、第1昇降部100の動作を制御する。例えば、切替制御部83は、4つの個別バルブVa,Vb,Vc,Vdの開閉状態を個別に制御する。例えば、排気制御部84は、主バルブVmの開閉状態および開度を制御する。例えば、ポンプ制御部85は、真空ポンプ32の動作を制御する。例えば、給気制御部86は、給気バルブV1,V2の開閉状態を制御する。例えば、冷却制御部87は、冷却部40の動作を制御する。制御部80における各部の機能は、例えば、上述したプログラム803p等に従った演算処理をプロセッサ801が行うことで実現される。
【0057】
<1-2.減圧乾燥方法>
次に、減圧乾燥装置1を用いての、基板9の上面に塗布された塗布膜90を乾燥させる減圧乾燥方法について説明する。図7は、第1実施形態に係る減圧乾燥方法の流れの一例を示すフローチャートである。この減圧乾燥方法のフローは、例えば、制御部80に含まれるプロセッサ801においてプログラム803pが実行されることで実現される。ここでは、例えば、図7のステップS10からステップS60の処理がこの記載の順に行われる。
【0058】
ステップS10にて、基板9をチャンバ10内に搬入する。このとき、基板9の第1面F1には、未乾燥の塗布膜90が形成されている状態にある。ステップS10では、例えば、ゲート部15が制御部80の制御下で搬入出口14を開放し、図示を省略した搬送ロボットが、フォーク状のハンドに基板9を載置しつつ、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の内部空間10sへ基板9を搬入する。この時点では、支持部20は、例えば、下降位置H2に位置している。なお、側面整流板51が搬送ロボットと干渉しないように、側面整流板51が移動可能に構成されてもよい。搬送ロボットは、例えば、支持部20の複数の支持プレート21の間へフォーク状のハンドを挿入しつつ、支持部20上に基板9を載置し、その後、チャンバ10の外部にフォークを退避させる。そして、ゲート部15は制御部80の制御下で搬入出口14を閉鎖する。以上のように、ステップS10では、チャンバ10内に配置された複数の支持ピン22に基板9を載置する工程(載置工程ともいう)が行われる。なお、ステップS10の時点でのバルブの状態を例示すると、個別バルブVa~Vd、主バルブVm、給気バルブV1,V2が閉状態とされている。
【0059】
ステップS20にて、チャンバ10内の支持部20によって支持された基板9の上面に間隔を空けて対面する冷却面40aを冷却した状態で、チャンバ10から気体を吸引することによってチャンバ10内の圧力を低下させて、基板9上の塗布膜90から溶媒を蒸発させて冷却面40aで凝縮させる。具体的には、以下の処理が行われる。
【0060】
制御部80が冷却部40を動作させることにより、冷却部40が冷却面40aを冷却し、冷却面40aの温度を低下させる。冷却部40は冷却面40aの温度を目標温度まで低下させる。目標温度は例えば摂氏5度以上かつ摂氏20度以下である。より具体的な一例として、目標温度は摂氏15度程度である。冷却部40は、基板9に対する処理が完了するまで冷却面40aに対する冷却動作を継続してもよい。なお、冷却部40によるこの冷却動作は、ステップS10よりも前に開始されてもよい。
【0061】
次に、減圧乾燥装置1は第1間隔調整処理を行う。第1間隔調整処理は、基板9と冷却面40aとの間隔を第1間隔にする処理である。具体的には、制御部80が第1昇降部100を制御して、支持部20を上昇位置H1に上昇させる。支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9は側面整流板51の上端よりも上方に位置する(図1も参照)。
【0062】
次に、真空ポンプ32を動作させながら個別バルブVa~Vdの少なくともひとつと主バルブVmとを開状態とすることによって、減圧乾燥装置1は第1減圧処理を行う。第1減圧処理は、チャンバ10内の圧力を第1圧力(以下、第1目標圧力と呼ぶ)まで低下させる処理である。第1目標圧力は標準大気圧よりも低く、例えば10kPa以上に設定される。具体的には、制御部80は減圧機構30にチャンバ10内の気体を小さい第1吸引流量で吸引させることにより、チャンバ10内の圧力を低下させる。例えば、制御部80が主バルブVmの開度を後述の第2減圧処理時の開度よりも小さくしてもよい。これによれば、第1減圧処理において、チャンバ10内の圧力はより低い低下速度で低下する。なお、この処理中のバルブの状態を例示すると、個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが開状態とされており、給気バルブV1,V2が閉状態とされている。なお、例えば、制御部80が、複数の個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれの開閉状態を個別に適宜制御してもよい。これにより、基板9の乾燥ムラの発生を抑制するように、チャンバ10内の気流を制御することができる。
【0063】
図8および図9は、第1減圧処理におけるチャンバ10内の様子の一例を概略的に示す図である。図8は、チャンバ10の全体を示しており、図9は、チャンバ10内のうちの冷却面40aおよび基板9の近傍を拡大して示している。
【0064】
図8に示されるように、第1減圧処理において、支持部20が上昇位置H1に位置する第1状態では、基板9と冷却面40aとの間隔は非常に狭い。そのため、上部空間10s1内の圧力の低下速度がより低くなり、基板9の第1面F1上の塗布膜90における突沸の発生を抑制することができる。
【0065】
一方で、第1状態では、支持部20によって支持された基板9は側面整流板51の上端よりも上方に位置している。このため、側面整流板51による整流機能は、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1にはほとんど作用しない。従って、側面整流板51による乾燥ムラの発生抑制効果はあまり招来できない。第1状態では、基板9よりも下方の下部空間10s2は広いので、下部空間10s2内の気体は速やかに排出される。具体的には、下部空間10s2内の気体は側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間を通って、チャンバ10から排出される。図8では、この気流を模式的に破線の矢印で示している。
【0066】
第1減圧処理によって、チャンバ10内の圧力は低下するので、基板9の第1面F1上の塗布膜90の溶媒は蒸発する。図9では、塗布膜90からの溶媒蒸気の流れを破線の矢印で模式的に示している。第1減圧処理においては、冷却部40が冷却面40aを冷却しているので、塗布膜90からの溶媒蒸気は冷却面40aにおいて冷却されて凝縮する。つまり、図9に示されるように、冷却面40aに液状の溶媒91が付着する。言い換えれば、冷却面40aの目標温度は、チャンバ10内の圧力が第1目標圧力となる状態で、溶媒蒸気が凝縮する程度の温度に設定される。より具体的な一例として、冷却面40aの目標温度は、溶媒の蒸気圧曲線において圧力が第1目標圧力となるときの温度以下に設定される。これにより、冷却面40aのうち塗布膜90と対面する領域には、溶媒91がほぼ均一に一様に付着し得る。このように、上部空間10s1内の溶媒蒸気が冷却面40aで凝縮することにより、上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度が低下し、その上面視における溶媒蒸気の濃度分布がより均一化される。
【0067】
比較のために、冷却部40が設けられていない比較構造について説明する。図10は、比較構造に係るチャンバ10の天板部13および基板9を拡大して示す図である。図9の例では、チャンバ10の天板部13の下面13aは冷却部40によって冷却されていない。天板部13の下面13aの温度は例えばおおむね常温である。
【0068】
第1減圧処理においては、基板9と下面13aとの間隔は狭いので、塗布膜90からの溶媒蒸気はすぐに天板部13の下面13aに衝突する。このため、上部空間10s1のうちの塗布膜90の中央部分と対向する中央領域では、溶媒蒸気が留まりやすい。一方、上部空間10s1のうちの塗布膜90の周縁部分と対向する周縁領域では、濃度拡散により溶媒蒸気は水平方向に流出することができる。そのため、塗布膜90の周縁部分は中央部分に比べて蒸発しやすくなる。つまり、塗布膜90に乾燥ムラが生じ得る。
【0069】
図11は、比較構造における上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。図11(a)は、上面視における溶媒蒸気の濃度分布を示し、図11(b)は、側面視における溶媒蒸気の濃度分布を示している。図11(a)では、溶媒蒸気の濃度分布を等高線T1から等高線T10で示している。等高線T1から等高線T10は、その符号の数字が小さいほど高い濃度を示している。つまり、等高線T1が等高線T1から等高線T10の間で最も高い濃度を示している。図11(b)では、溶媒蒸気の濃度分布を等高線T11から等高線T21で示している。等高線T11から等高線T21は、その符号の数字が小さいほど高い濃度を示している。つまり、等高線T11が等高線T11から等高線T21の間で最も高い濃度を示している。
【0070】
図11(a)から理解できるように、比較構造では、塗布膜90の周囲から外側に溶媒蒸気が流れている。また、図11(b)に示されているように、上部空間10s1のうちの塗布膜90の周縁部分と対面する周縁領域10rでは、溶媒蒸気の濃度は塗布膜90の外側に向かうにつれて低下する。このため、塗布膜90の周縁部分は中央部分に比べてより蒸発しやすくなることが分かる。
【0071】
図12は、冷却部40が冷却している状態での上部空間10s1内の溶媒蒸気の濃度分布の一例を示す図である。図12(a)は、上面視における溶媒蒸気の濃度分布を示し、図12(b)は、側面視における溶媒蒸気の濃度分布を示している。図12(a)から理解できるように、溶媒蒸気は塗布膜90の周囲から外側にはあまり流れ出ていない。これは、塗布膜90からの溶媒蒸気が冷却面40aにおいて冷却されて凝縮するからである。つまり、塗布膜90のうちの中央部分からの溶媒蒸気も周縁部分からの溶媒蒸気も、冷却面40aとの温度差に応じた上昇気流で上方に流れて、冷却面40aで凝縮するのである(図9も参照)。このように周縁部分からの溶媒蒸気も冷却面40aにおいて凝縮するので、溶媒蒸気の外側への流れはあまり生じない。また、塗布膜90からの溶媒蒸気は上部空間10s1においてあまり滞留しない。
【0072】
図12(b)に示されているように、周縁領域10rにおいても、溶媒蒸気の濃度は上下方向において塗布膜90から離れるに従って低下するものの、水平方向においてはほぼ均一である。
【0073】
従って、塗布膜90の中央部分における蒸発量と周縁部分における蒸発量との差を低減させることができ、乾燥ムラの発生を抑制することができる。また、冷却面40aでの溶媒蒸気の凝縮により、上部空間10s1における溶媒蒸気の濃度を低下させるので、塗布膜90の蒸発を促進させることもできる。このため、減圧乾燥方法におけるスループットを向上させることもできる。
【0074】
上記ステップS20の後、ステップS30にて、塗布膜90から溶媒をさらに蒸発させる。ステップS20からステップS30への移行は、例えば、チャンバ10内の圧力が第1目標圧力に達したときに行われる。具体的には、この蒸発を促進させるために、以下の処理が行われる。
【0075】
減圧乾燥装置1は第2間隔調整処理を行う。第2間隔調整処理は、基板9と冷却面40aとの間隔を第2間隔とする処理である。具体的には、制御部80は第1昇降部100を制御して、支持部20を下降位置H2に下降させる。支持部20が下降位置H2に位置する第2状態では、基板9は側面整流板51の上端よりも下方に位置している。
【0076】
次に、減圧乾燥装置1は第2減圧処理を行う。第2減圧処理は、チャンバ10内の圧力を第1目標圧力よりも低い第2圧力(以下、第2目標圧力と呼ぶ)に低下させる処理である。具体的には、制御部80は減圧機構30にチャンバ10内の気体を第1吸引流量よりも大きい第2吸引流量で吸引させることにより、チャンバ10内の圧力を低下させる。例えば、制御部80が主バルブVmの開度を第1減圧処理時の開度よりも大きくしてもよい。チャンバ10内の圧力は、第1減圧処理時の低下速度よりも高い低下速度で第2目標圧力まで低下する。第2減圧処理では、減圧乾燥装置1はチャンバ10内の圧力を所定期間に亘って第2目標圧力で維持させてもよい。第2目標圧力は例えば10kPa未満かつ0.1Pa以上である。
【0077】
ステップS30においても、例えば、制御部80が、複数の個別バルブVa,Vb,Vc,Vdのそれぞれの開閉状態を個別に適宜制御してもよい。これにより、基板9の乾燥ムラを抑制するように、チャンバ10内の気流を制御することができる。
【0078】
図13は、第2減圧処理におけるチャンバ10内の様子の一例を概略的に示す図である。図13に示されるように、支持部20が下降位置H2に位置する第2状態では、基板9と冷却面40aとの間隔は広い。言い換えれば、上部空間10s1の高さは大きい。このため、第1減圧処理とは異なって、塗布膜90からの溶媒蒸気は上方にも流れやすく、溶媒蒸気の滞留を招きにくい。上部空間10s1が大きいので、上部空間10s1内の圧力をより適切かつ速やかに第2目標圧力に低下させることができる。
【0079】
また、第2状態では、支持部20によって支持された基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。このため、側面整流板51による整流機能が基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1に作用する。つまり、基板9の周縁部への気流の集中を側面整流板51によって抑制することができる。従って、気流による塗布膜90の乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0080】
チャンバ10内の圧力が第2目標圧力に達すると、塗布膜90の溶媒が沸騰して塗布膜90の乾燥がより高い速度で進行する。減圧機構30はチャンバ10内の圧力が第2目標圧力で略一定となるようにチャンバ10内の気体を吸引してもよい。つまり、減圧機構30は所定期間に亘ってチャンバ10内の圧力を第2目標圧力に維持してもよい。なお第2減圧処理において、冷却面40aの目標温度は、チャンバ10内の圧力が第2目標圧力となる状態で、溶媒が蒸発する程度の温度に設定されてよく、それにより、冷却面40aに付着した溶媒91も蒸発する。より具体的な一例として、冷却面40aの目標温度は、溶媒の蒸気圧曲線において圧力が第2目標圧力となるときの温度以上に設定されてよい。
【0081】
塗布膜90および冷却面40aからの溶媒蒸気は、側面整流板51の上端側から、側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間の空間へ流入し、排気口16a,16b,16c,16dを通じて外部に排出される。図13では、これらの溶媒蒸気の流れを破線の矢印で模式的に示している。
【0082】
塗布膜90の沸騰が終了すると、つまり、所定期間が経過すると、減圧機構30はチャンバ10内の圧力をさらに低下させてもよい。言い換えれば、減圧機構30はチャンバ10内の圧力を第2目標圧力よりも低い第3目標圧力まで低下させてもよい。これにより、塗布膜90の乾燥、冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を、より促進させることができる。
【0083】
以上のように、第2減圧処理においては、第1昇降部100が支持部20を下降位置H2に下降させ、かつ、減圧機構30がチャンバ10内の圧力を第2目標圧力以下とする。これにより、減圧乾燥装置1は第2減圧処理において、基板9の第1面F1上の塗布膜90を乾燥させることができる。またこれにより、冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進させることができる。しかしながら溶媒91の蒸発の進行は比較的緩やかであり、よって、第2減圧処理のみに頼って冷却面40aを十分に乾燥させようとしたとすると、第2減圧処理を長時間実施しなければならず、その結果、生産性が低下してしまう。そこで、より短時間で冷却面40aを乾燥させることを目的として、以下のステップS40が行われることになる。
【0084】
ステップS40にて、チャンバ10内へ所定量の気体を供給することによってチャンバ10内の圧力を増大させて、冷却面40aの溶媒を蒸発させて冷却面40aを十分に乾燥させる。具体的には、減圧状態にあるチャンバ10内へ給気機構60から上記所定量の気体を供給するために、給気バルブV2が閉状態に保たれつつ給気バルブV1が閉状態から開状態に切り替えられる。本第1実施形態においては、上記所定量の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように減圧機構30が制御される。つまり、チャンバ10内への上記所定量の気体の供給と、チャンバ10からの排気とが、同時に行われる。
【0085】
減圧状態にあるチャンバ10内へ気体が供給されると、第1に、チャンバ10内において溶媒の蒸気が当該気体と混ざることによるエントロピーの増大が生じ、このことは、冷却面40aに付着した液状の溶媒91が蒸気へと変化することを促進すると考えられる。第2に、供給された気体によりチャンバ10内の温度の上昇が生じ、このことも冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進すると考えられる。第3に、本第1実施形態においては、気体が供給されながら排気されることによって、チャンバ10内からの溶媒蒸気の排気が促され、このことも冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進すると考えられる。気体の上記所定量は、溶媒91の蒸発が十分に促進される程度に多い量とされる。
【0086】
図14は、ステップS20の終わりから、後述するステップS60までの、チャンバ10内の圧力の時間変化を例示するグラフ図である。ステップS40において、上記所定量の気体が供給されることによって圧力がピークを有している。当該ピークの直前から当該ピークにかけて、チャンバ10内の圧力は、冷却面40aの温度での溶媒の蒸気圧p図14における破線を参照)よりも低い状態から高い状態へと変化してよいが、その場合、当該ピークの直後に、再度、蒸気圧pよりも低い状態へと戻されることが好ましい。よって、ステップS40の全体に要する時間を過度に長くしないためには、ステップS40におけるピーク圧力を過度に高めないことが望ましい。このピーク圧力は、大気圧に比して低く、また、前述した第1目標圧力より低くてよい。このような圧力条件が満たされるように、気体の上記所定量は、過度とならないようにされることが好ましい。
【0087】
図15は、本第1実施形態のステップS30およびステップS40(図14)に代わって、ステップS30Cが行われる比較例における圧力の時間変化を示すグラフ図である。ステップS30C(図15)は、ステップS30(図14)の時間を、ステップS40(図14)の時間分延長したものである。よって、本第1実施形態と比較例とでは、1回の減圧乾燥方法に要する時間は同じである。比較例のステップS30Cの特に後半においては、チャンバ10内に溶媒蒸気以外の気体がほとんど存在せず、溶媒91の蒸発速度は、本第1実施形態におけるステップS40より遅くなる。その結果、ステップS30Cの終了時点でも、冷却面40aに液状の溶媒91が残存しやすい。この残存が1回の減圧乾燥方法の実行後には無視できる程度のものであったとしても、減圧乾燥方法が繰り返し実行されると、冷却面40aに液状の溶媒91が蓄積されていく。蓄積された液状の溶媒91が基板9上に落下すると、当該基板9を用いた製品の品質が損なわれてしまう。この問題は、ステップS30Cの時間を延長することによって解決することもできるが、これは生産性の大幅な低下につながりやすい。
【0088】
ステップS50にて、チャンバ10内の圧力が大気圧となる量の気体を供給する。具体的には、個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmを真空ポンプ32とチャンバ10との間が遮断されるように制御した状態で、給気バルブV1だけでなく給気バルブV2も開状態とする。これにより、給気源62からチャンバ10の内部空間10sへ気体が供給される。その結果、チャンバ10内の圧力が、再び大気圧まで上昇する。
【0089】
ステップS60にて、基板9をチャンバ10内から搬出する。例えば、まず、ゲート部15が制御部80の制御下で搬入出口14を開放し、図示を省略した搬送ロボットが、支持部20に載置された乾燥済みの基板9を、チャンバ10の搬入出口14を介して、チャンバ10の外部へ搬出する。これにより、1枚の基板9に対する処理が終了し得る。
【0090】
<1-3.効果>
本第1実施形態によれば、第1に、チャンバ10内の圧力が大気圧となる量の気体が供給される前に、減圧状態にあるチャンバ10内へ気体が供給される。これにより、冷却部40の冷却面40aに凝縮されていた溶媒の蒸発が促進される。よって、冷却部40の冷却面40aに液状の溶媒が過度に蓄積されることが避けられる。第2に、供給される気体の量が所定量とされる。これにより、供給される気体の量を、上記の蒸発の促進に必要十分な量に抑えることができる。よって、供給される気体の量が過剰であることに起因しての生産性の過度な低下を避けることができる。以上から、生産性の過度な低下を避けつつ、冷却部40の冷却面40aに液状の溶媒が過度に蓄積されることを避けることができる。
【0091】
なお、減圧乾燥装置1(図1)から、仮にバッファ部63および給気バルブV2が省略されていたとすると、減圧状態にあるチャンバ10内へ本第1実施形態のように所定量の気体を供給することは、供給される気体の量を安定的に制御しにくいことから困難である。気体の量が不足すると、当該気体による上述した効果が十分に得られない。そこでこの量を十分に確保しようとして気体を大量に供給しようとすると、それによって生じた気流が、基板9を正常な位置からずらしてしまったり、落下させてしまったり、破損させてしまったりしやすい。
【0092】
また本第1実施形態においては、所定量の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気している。これにより、気体の供給によって上昇したチャンバ10内の圧力を、速やかに低下させることができる。
【0093】
また、制御部80は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態においてチャンバ10内の圧力を第1圧力とした後、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態においてチャンバ10内の圧力を第2圧力とするように、第1昇降部100および減圧機構30を制御してよい。
【0094】
具体的には、まず第1減圧処理において、冷却部40が冷却面40aを冷却し、かつ、第1昇降部100が支持部20を上昇位置H1に上昇させた状態で、減圧機構30がチャンバ10内の圧力を第1目標圧力まで低下させてよい。第1減圧処理では、支持部20が上昇位置H1に位置しているので、基板9と冷却面40aとの間隔は狭い。このため、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1内の圧力の急激な低下を抑制することができ、塗布膜90の突沸の発生を抑制することができる。
【0095】
また、第1減圧処理において、冷却部40が冷却面40aを冷却していてよい。より具体的には、冷却部40は、第1目標圧力下で溶媒蒸気が凝縮する程度の目標温度まで冷却面40aの温度を低下させてよい。このため、基板9上の塗布膜90からの溶媒蒸気が冷却面40aで凝縮する。従って、上部空間10s1(特に中央領域)における溶媒蒸気の滞留を抑制することができ、塗布膜90の乾燥ムラの発生を抑制することができる。
【0096】
一方、第1減圧処理の後の第2減圧処理においては、第1昇降部100が支持部20を下降位置H2に下降させた状態で、減圧機構30がチャンバ10内の圧力を第2目標圧力以下に低下させてよい。支持部20が下降位置H2に位置しているので、基板9と冷却面40aとの間隔は広い。これにより、チャンバ10内の圧力をより適切かつ速やかに低下させることができる。従って、塗布膜90をより適切かつ速やかに乾燥させることができる。なお、第2減圧処理では、基板9と冷却面40aとの間隔は広いので、溶媒蒸気の滞留は生じにくく、乾燥ムラの発生を招きにくい。
【0097】
また、第2減圧処理において、冷却面40aの温度は、第2目標圧力下で溶媒が蒸発する程度の温度であってよい。このため、第2減圧処理において、基板9上の塗布膜90のみならず冷却面40aをも乾燥させることができる。従って、次の基板9に対する処理を行う前に、冷却面40aの乾燥処理を別途に行う必要がなく、次の基板9に対する処理を速やかに行うことができる。これによれば、複数の基板9に対する処理のスループットを向上させることができる。
【0098】
また、第1実施形態では、チャンバ10の天井面が冷却面40aに相当してよい。このため、冷却部40をチャンバ10の上面に外付けすれば、既設のチャンバ10をそのまま流用することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、冷却部材41が天板部13を冷却することで、天板部13の下面である冷却面40aを冷却していてよい。上面視における冷却部材41内の温度分布は、冷媒流路41aの延在形状に応じてややばらつき得るものの、天板部13内の熱伝達により、温度分布のばらつきは冷却面40aに向かうにつれて緩和される。つまり、天板部13の冷却面40aにおける温度分布をより均一化することができる。このため、基板9の第1面F1上の塗布膜90からの溶媒蒸気を、より均一に冷却面40aにおいて凝縮させることができる。従って、上部空間10s1における溶媒蒸気の濃度分布の均一性を高めることができる。これにより、乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0100】
また、第1実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔調整に、支持部20を昇降させる第1昇降部100を用いていてよい。このため、既設の第1昇降部100をそのまま流用することができる。
【0101】
<2.第2実施形態>
図16は、第2実施形態の減圧乾燥におけるチャンバ10内の圧力の時間変化を例示するグラフ図である。本第2実施形態においては、ステップS40(図7)が、ステップS40a,S40b(図16)を有している。ステップS40a(図16)として、給気機構60がチャンバ10内へ所定量の気体を供給する際に、前述した第1実施形態とは異なり、真空ポンプ32とチャンバ10との間が遮断されるように個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが制御部80によって制御される。例えば、個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが閉状態とされる。そして、上記所定量の気体を給気機構60からチャンバ10内へ供給する。その後、ステップS40b(図16)として、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが制御部80によって制御される。例えば、個別バルブVa~Vdおよび主バルブVmが開状態とされる。気体の供給(ステップS40a)および排気(ステップS40b)はチャンバ10内を置換する作用を有する。なおステップS40の後は、第1実施形態と同様にステップS50およびステップS60が行われる。
【0102】
本第2実施形態によれば、所定量の気体を供給する際に、真空ポンプ32とチャンバ10との間が遮断されている。これにより、供給された気体の作用を、より確実に発現させることができる。
【0103】
<3.第3実施形態>
<3-1.減圧乾燥装置の構成の概要>
図17は、第3実施形態に係る減圧乾燥装置1Tの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Tの給気機構60M(図17)は、減圧乾燥装置1の給気機構60(図1:第1実施形態)の構成に加えて、給気バルブV2と給気源62との間のバッファ部64(第2バッファ部)と、当該バッファ部64と給気源62との間の給気バルブV3(第3給気バルブ)と、を含む。
【0104】
減圧乾燥装置1Tの制御部80は、所定量の気体を供給するために、給気バルブV2が閉状態に保たれつつ給気バルブV1が閉状態から開状態に切り替えられるように給気機構60Mを制御した後に、給気バルブV2が閉状態から開状態に切り替えられるように給気機構60Mを制御する。これにより、第1に、給気バルブV2を閉状態に保ちつつ給気バルブV1を閉状態から開状態に切り替えることによって、減圧状態にあるチャンバ10内へバッファ部63から、所定量のうちの一部の気体が供給される。その後、給気バルブV3が閉状態に保たれつつ、給気バルブV2を閉状態から開状態に切り替えることによって、減圧状態にあるチャンバ10内へバッファ部64から、所定量のうちの他部の気体が供給される。バッファ部64内に貯められている気体は、チャンバ10の内部空間10sへ供給され始める前の時点において、給気源62からの給気圧力に相当する圧力を有していてよい。
【0105】
なお上記以外の特徴については、上述した第1または第2実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0106】
<3-2.減圧乾燥方法>
図18は、第3実施形態に係る減圧乾燥におけるチャンバ10内の圧力の時間変化を例示するグラフ図である。減圧乾燥装置1Tを用いた減圧乾燥方法においては、ステップS40(図7)が、ステップS40h,S40iを有している。
【0107】
ステップS40hにて、減圧状態にあるチャンバ10内へ給気機構60Mから、上記所定量のうちの一部の気体を供給するために、給気バルブV2が閉状態に保たれつつ給気バルブV1が閉状態から開状態に切り替えられる。これにより、バッファ部63に貯められていた気体がチャンバ10内へ供給される。本第3実施形態においては、所定量のうちの一部の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように減圧機構30が制御される。つまり、チャンバ10内への所定量のうちの一部の気体の供給と、チャンバ10からの排気とが、同時に行われる。
【0108】
その後、ステップS40iにて、減圧状態にあるチャンバ10内へ給気機構60Mから、上記所定量のうちの他部の気体を供給するために、給気バルブV3が閉状態に保たれつつ、給気バルブV1に加えて給気バルブV2が閉状態から開状態に切り替えられる。これにより、バッファ部64に貯められていた気体がチャンバ10内へ供給される。本第3実施形態においては、所定量のうちの他部の気体を供給する際に、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように減圧機構30が制御される。つまり、チャンバ10内への所定量のうちの他部の気体の供給と、チャンバ10からの排気とが、同時に行われる。
【0109】
<3-3.効果>
本第3実施形態によれば、第1実施形態において説明した作用を、1回ではなく2回、発現させることができる。これにより、第1実施形態で説明した効果を、より高めることができる。
【0110】
<3-4.変形例>
本第3実施形態の技術は、前述した第1実施形態に代わって、第2実施形態に適用されてもよい。具体的には、ステップS40の際、所定量のうちの一部の気体が供給される第1の供給期間と、所定量のうちの他部の気体が供給される第2の供給期間との各々において、真空ポンプ32とチャンバ10との間が遮断されるように減圧機構30が制御される。また、第1の供給期間と第2の供給期間との間のタイミングと、第2の供給期間の後のタイミングと、の各々において、真空ポンプ32がチャンバ10を排気するように減圧機構30が制御される。本変形例によれば、第2実施形態で説明した効果を、より高めることができる。
【0111】
<4.第4実施形態>
図19は、第4実施形態に係る減圧乾燥装置1Aの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Aは第2昇降部45を除いて、減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。第2昇降部45は、冷却部40の冷却部材41を冷却位置H3と離間位置H4との間で昇降させる。冷却位置H3は、冷却部材41の下面がチャンバ10の天板部13の上面に接する位置であり、離間位置H4は、冷却部材41が天板部13から離れた位置である。図19の例では、離間位置H4に位置する冷却部材41が仮想線で模式的に示されている。第2昇降部45には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。
【0112】
第4実施形態に係る減圧乾燥方法は、第1実施形態のものに対して、冷却部材41の位置制御が行われる点で相違している。冷却部材41は初期的には、冷却位置H3に位置している。そして、前述した第1実施形態に係る減圧乾燥における第2間隔調整処理と第2減圧処理との間のタイミングで、減圧乾燥装置1Aは冷却部離間処理を行う。冷却部離間処理は、冷却部40を離間位置H4へ移動させる処理である。具体的には、制御部80は第2昇降部45を制御して、冷却部材41を冷却位置H3から離間位置H4へ上昇させる。冷却部材41が離間位置H4へ上昇することにより、冷却面40aに対する冷却動作は実質的に中断され得る。
【0113】
以上のように、第4実施形態によれば、第1減圧処理において、冷却部材41は冷却位置H3に下降しており、天板部13の下面である冷却面40aを冷却する。このため、減圧乾燥装置1Aは第1減圧処理において溶媒蒸気をより確実に冷却面40aで凝縮させることができる。しかも、第4実施形態によれば、第2減圧処理において、冷却部材41は離間位置H4に上昇している。このため、第2減圧処理において、冷却面40aに対する冷却動作は実質的に中断され得る。冷却部材41が冷却面40aから遠ざかることにより、冷却面40aの温度は時間の経過とともに上昇するので、冷却面40aに付着した溶媒91の蒸発を促進させることができる。
【0114】
<5.第5実施形態>
図20は、第5実施形態に係る減圧乾燥装置1Bの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Bは、冷却部40の内部構成を除いて減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。
【0115】
図20に示されるように、減圧乾燥装置1Bの冷却部40の一部は、チャンバ10の天板部13に埋設されている。ここでは、天板部13が冷却部材41として機能する。天板部13は熱伝導率の高い材料(例えば金属)によって形成されてもよい。図20の例では、天板部13の内部には、冷却部40の一部である冷媒流路41aが形成されている。冷媒流路41aは例えば平面視において天板部13の内部を蛇行していてもよく、渦巻き状に延びていてもよい。図20の例では、冷媒流路41aの流入口41bおよび流出口41cは天板部13の上面に形成されている。流入口41bは第1冷媒配管42の下流端に接続され、流出口41cは第2冷媒配管43の上流端に接続される。
【0116】
冷媒冷却源44が冷媒を冷却しつつ循環させることにより、チャンバ10の天板部13を冷却することができる。つまり、天板部13の下面である冷却面40aが冷却される。なお、天板部13に埋設される冷却部40の一部は、天板部13から熱を吸収する低温部分であり、例えば、冷却部40がペルチェ素子等の冷却素子を有している場合には、該冷却素子が天板部13に埋設される。
【0117】
減圧乾燥装置1Bを用いた減圧乾燥方法の流れの一例は第1または第2実施形態における減圧乾燥方法と同様である。また変形例として、本第5実施形態に、第3実施形態の給気機構60M(図17)が適用されてもよい。
【0118】
本第5実施形態によれば、天板部13が冷却部材41として機能するので、減圧乾燥装置1Bの部品点数が低減される。よって、減圧乾燥装置1Bのサイズおよび製造コストを低減させることができる。また、冷媒流路41aと冷却面40aとの間隔を低減させることができるので、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0119】
<6.第6実施形態>
図21は、第6実施形態に係る減圧乾燥装置1Cの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Cは、冷却部40の内部構成を除いて減圧乾燥装置1と同様の構成を有している。
【0120】
図21に示されるように、減圧乾燥装置1Cの冷却部40の一部は、チャンバ10の内部空間10sに位置している。具体的には、冷却部材41がチャンバ10の内部空間10sに位置している。冷却部材41は、チャンバ10内において、支持部20によって支持された基板9の第1面F1と対面する位置に設けられている。つまり、冷却部材41は支持部20によって支持された基板9よりも上方に設けられている。冷却部材41は、チャンバ10内において、その厚み方向が上下方向に沿う姿勢で設けられる。冷却部材41は不図示の固定部を通じてチャンバ10に固定される。冷却部材41は例えばネジ等の固定部によってチャンバ10の天板部13に固定されていてもよい。第6実施形態では、冷却部材41の下面が冷却面40aに相当する。
【0121】
図21の例では、第1冷媒配管42および第2冷媒配管43は天板部13を貫通しており、冷媒冷却源44はチャンバ10の外部に設けられている。冷媒冷却源44が冷媒を冷却しつつ冷媒を循環させることにより、冷却部材41が冷却される。つまり、冷却部材41の冷却面40aが冷却される。
【0122】
図21の例では、冷却部材41は平面視において基板9よりも大きなサイズを有する。冷却部材41の冷却面40aは平面視において基板9と同様の長方形状を有してもよい。この場合、冷却面40aの長辺は基板9の長辺よりも長く、冷却面40aの短辺は基板9の短辺よりも長い。これによれば、冷却面40aは上下方向において基板9の第1面F1の全面と対面することができる。また、冷却面40aは平面視において正方形状を有していてもよい。この場合、冷却面40aの1辺は基板9の短辺よりも長くてもよい。これによれば、支持部20上に配置される基板9の向きにかかわらず、平面視において、冷却面40aは基板9よりも大きい。このため、基板9の向きにかかわらず、冷却面40aは、基板9の第1面F1の全面と対向することができる。
【0123】
減圧乾燥装置1Cを用いた減圧乾燥方法の流れの一例は第1または第2実施形態における減圧乾燥方法と同様である。また変形例として、本第6実施形態に、第3実施形態の給気機構60M(図17)が適用されてもよい。
【0124】
本第6実施形態によれば、冷却面40aは、チャンバ10とは別体の冷却部材41の下面である。このため、冷却面40aを有する冷却部材41の材料をチャンバ10への仕様要求とは別に選定することができる。つまり、冷却部材41の材料の選択性を向上させることができる。また、冷却面40aは冷却部材41の下面であるので、冷却部40の低温部分(ここでは冷媒流路41a)と冷却面40aとの間隔を狭くすることができる。このため、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0125】
<7.第7実施形態>
図22は、第7実施形態に係る減圧乾燥装置1Dの縦断面の一例を概略的に示す図である。減圧乾燥装置1Dは、第1昇降部100の昇降対象を除いて減圧乾燥装置1C(図21:第6実施形態)と同様の構成を有している。図22に示されるように、第1昇降部100は冷却部40を昇降させる。具体的には、第1昇降部100は冷却部40の冷却部材41を上昇位置H11と下降位置H12との間で昇降させる。下降位置H12は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるときの冷却部材41の位置である。図22では、下降位置H12に位置する冷却部材41を仮想線で示している。上昇位置H11は、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となるときの冷却部材41の位置である。つまり、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態との間で、冷却部材41を昇降させる。
【0126】
図22に示されるように、支持部20は、第1実施形態から第6実施形態でいう下降位置H2に位置している。つまり、支持部20によって支持された基板9は側面整流板51の上端よりも低い位置にあり、4つの側面整流板51によって包囲されている。第7実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態、および、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となる第2状態の両方において、基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。
【0127】
下降位置H12は、冷却部材41の冷却面40aが側面整流板51の上端よりも下方となる位置であってもよい。つまり、冷却部材41は、平面視において、4つの側面整流板51によって囲まれた空間よりも小さいサイズを有する。
【0128】
上昇位置H11は、冷却部材41の冷却面40aが側面整流板51の上端よりも上方となる位置である。冷却部材41が上昇位置H11に位置する状態で、冷却面40aと側面整流板51の上端との間隔は、例えば、第1間隔の2倍以上であってもよく、5倍以上であってもよい。これによれば、基板9の直上の気体が側面整流板51の上端側から側面整流板51とチャンバ10の側壁部12との間の空間に流入しやすい。
【0129】
第1昇降部100には、例えば、直動型モータまたはエアシリンダ等の駆動装置が適用される。第1昇降部100の本体部100aは、例えば、チャンバ10の外部において、図示を省略した装置フレームに固定される。第1昇降部100の移動部100bは、例えば、本体部100aに対して、上下方向に移動することができる。移動部100bには、例えば、棒状の部材等が適用される。移動部100bは、例えば、チャンバ10の天板部13の貫通孔13hに挿通された状態で位置している。そして、例えば、移動部100bの下端部に、冷却部材41が固定されている。ここでは、例えば、天板部13の上面と移動部100bとの間にベローズ等が設けられれば、天板部13と移動部100bとの隙間が密閉され得る。
【0130】
減圧乾燥装置1Dを用いた減圧乾燥方法の流れの一例は第1または第2実施形態における減圧乾燥方法と同様である。ただし、第1間隔調整処理では、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となるように、冷却部材41を下降位置H12に下降させる。また、第2間隔調整処理では、第1昇降部100は、基板9と冷却面40aとの間隔が第2間隔となるように、冷却部材41を上昇位置H11に上昇させる。また変形例として、本第7実施形態に、第3実施形態の給気機構60M(図17)が適用されてもよい。
【0131】
本第7実施形態によれば、冷却部材41がチャンバ10とは別体である。このため、第6実施形態と同様に、冷却部材41の材料の選択性を向上させることができる。また、冷却面40aは冷却部材41の下面であるので、第6実施形態と同様に、冷却部40はより高い効率で冷却面40aを冷却することができる。
【0132】
また、第7実施形態では、基板9と冷却面40aとの間隔がより狭い第1間隔となる第1状態においても、支持部20によって支持された基板9は4つの側面整流板51によって包囲される。このため、第1減圧処理においても、4つの側面整流板51による整流機能が、基板9と冷却面40aとの間の上部空間10s1にも作用する。従って、乾燥ムラの発生をさらに抑制することができる。
【0133】
<8.変形例>
本開示は、上述の諸実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良等が可能である。
【0134】
上記各実施形態では、第1昇降部100は支持部20または冷却部40を昇降させているものの、支持部20および冷却部40の両方を昇降させてもよい。要するに、第1昇降部100は、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔となる第1状態と、支持部20によって支持された基板9と冷却面40aとの間隔が第1間隔よりも広い第2間隔となる第2状態との間で、支持部20および冷却面40aの少なくともいずれか一方を昇降させればよい。
【0135】
上記各実施形態では、例えば、チャンバ10が、4つの排気口16a,16b,16c,16dを有していたが、これに限られない。例えば、チャンバ10が有する排気口の数は、1つから3つおよび5つ以上のいずれであってもよい。また、例えば、個別バルブVa,Vb,Vc,Vdは、なくてもよい。
【0136】
上記各実施形態では、減圧乾燥装置1,1T,1A~1Dは、基板9上の塗布膜90を乾燥させるために減圧の作用を利用するが、さらに他の作用が併用されてもよく、例えば加熱の作用が併用されてよい。
【0137】
上記各実施形態では、チャンバ10の側壁部12に、基板9の搬入出口14が設けられていたが、これに限られない。例えば、チャンバ10の4つの側壁部12および天板部13が一体の蓋部を構成しており、この蓋部が底板部11から分離して上方へ退避することができる構造が採用されてもよい。この場合には、例えば、蓋部が開閉駆動部16等によって上下に移動されてもよい。そして、チャンバ10は、蓋部がOリング等のシール材を介して底板部11に接触して内部空間10sを密閉している状態(密閉状態)と、蓋部が底板部11から上方へ分離して内部空間10sを開放している状態(開放状態)と、に選択的に設定され得る。ここで、チャンバ10が開放状態にあれば、チャンバ10の内部空間10sへの基板9の搬入およびチャンバ10の内部空間10sからの基板9の搬出を行うことができる。チャンバ10が閉鎖状態にあれば、内部空間10sからの排気および内部空間10sへの給気によって、基板9上の塗布膜90を減圧によって乾燥させることができる。
【0138】
上記各実施形態では、例えば、支持部20は種々の形態を有していてもよい。例えば、複数の支持プレート21は、一体的な1つの支持プレート21であってもよい。
【0139】
上記各実施形態では、例えば、底面整流板50がなくてもよいし、側面整流板51がなくてもよい。
【0140】
上記各実施形態では、例えば、減圧乾燥装置1,1T,1A~1Dにおける各種の動作は、例えば、入力部804に対するユーザの動作もしくは通信部806に対して外部の装置から入力された信号等に応答して、開始あるいは終了されてもよい。
【0141】
上記各実施形態では、例えば、制御部80において、実現される機能的な構成の少なくとも一部が、専用の電子回路等のハードウェアで構成されていてもよい。
【0142】
なお、上記諸実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0143】
1,1T,1A~1D 減圧乾燥装置
10 チャンバ
20 支持部
30 減圧機構
40 冷却部
40a 冷却面
60 給気機構
63 第1バッファ部
64 第2バッファ部
80 制御部
9 基板
90 塗布膜
F1 上面
V1~V3 第1~第3給気バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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