(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】泡状エアロゾル発生材料を含む使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24F 40/42 20200101AFI20250220BHJP
【FI】
A24F40/42
(21)【出願番号】P 2022500915
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 EP2020080455
(87)【国際公開番号】W WO2021084038
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-03
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディラン‐ハイド, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーラーン, テオ
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515486(JP,A)
【文献】特表2017-519492(JP,A)
【文献】特表2019-521667(JP,A)
【文献】特表2019-521664(JP,A)
【文献】特表2016-530883(JP,A)
【文献】特表2019-524079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A24B 15/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡状エアロゾル発生材料を含む成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品(100)であって、前記成形カートリッジが使い捨てであり、基部(15)、上部(25)、内壁(20)、及び外壁(10)を含み、前記カートリッジの前記基部(15)及び前記上部(25)が前記内壁(20)及び前記外壁(10)とつながっており、前記内壁(20)が、前記泡状エアロゾル発生材料がない及び前記泡状エアロゾル発生材料を通り抜けて延びる、1つ以上の長手方向チャネル(50)を画定して
おり、
前記基部(15)は、熱発生要素(140)に接触して加熱される、エアロゾル発生物品(100)。
【請求項2】
前記1つ以上の長手方向チャネル(50)は、前記基部(15)から前記上部(25)に延びる第1チャネルと、前記基部(15)から前記外壁(10)に延びる第2チャネルとを含む、請求項1に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項3】
前記第1チャネルは、前記成形カートリッジの底部領域においてじょうご形状を有する、請求項2に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項4】
前記1つ以上の長手方向チャネルが、前記カートリッジの前記基部から、前記カートリッジの前記上部及び/又は前記外壁まで延びる、請求項1に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項5】
前記1つ以上の長手方向チャネルが、前記カートリッジの長手方向軸にほとんど平行に延びるか、又は前記カートリッジの前記長手方向軸をほとんど取り巻いて延びる、請求項1
~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項6】
前記1つ以上の長手方向チャネル(50)が、加熱装置の
前記熱発生要素(140)の周囲と嵌合するように構成されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項7】
前記1つ以上の長手方向チャネル(50)が、直線状であるか、又はらせん状である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項8】
前記1つ以上の長手方向チャネル(50)の前記長手方向軸に垂直な断面の形状が、円形、エッジングされた形状、楕円形、又は不規則形状である、請求項1~
7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項9】
前記カートリッジの前記外壁(10)に垂直な断面の形状が、円形、正方形、長方形、三角形、リッジ若しくはスポーク、多角形、又は不規則形状である、請求項1~
8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項10】
加熱装置の
前記熱発生要素(140)との接触箇所を増やすように、前記カートリッジの前記基部(15)が、ほぼ平らである及び/又はエッジングされている、請求項1~
9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項11】
前記カートリッジに熱を伝えるための、前記基部(15)と
前記熱発生要素(140)との接触箇所が増えるように、前記カートリッジの前記基部が、加熱装置の前記熱発生要素(140)の
形状と相補的な表面を有している、請求項1~
10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項12】
前記カートリッジが、耐熱性ポリマー発泡体、多孔質セラミック、又は無方向性ファイバを含む材料で作られている、請求項1~
11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項13】
エアロゾル発生タバコ含有基材及び担体マトリックス
を含む材料で埋めるための1つ以上の開口が前記カートリッジに設けられている、請求項1~
12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項14】
前記成形カートリッジが空気透過性である及び/又はメッシュ構造を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項15】
1つ以上の個別区画が前記カートリッジに設けられており、前記区画が、エアロゾル発生タバコ含有基材及び/又は堅い担体マトリックスを含む、同じ材料又は異なる材料で埋められている、請求項1~
14のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項16】
前記カートリッジの総体積の10~33%が、前記泡状エアロゾル発生材料がない長手方向チャネルからなる、請求項1~
15のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品(100)と、
前記カートリッジ内で前記1つ以上の長手方向チャネル(50)の内側と嵌合するように構成された熱発生要素(140)を含むベーピング装置と、
を含む、ベーピングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タバコ製品及びベーピング製品の技術分野に関し、特にエアロゾル発生システムに関し、これは、成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品を含み、これは、使い捨て成形カートリッジに収容されたエアロゾル発生材料を含む。本発明はまた、使い捨て成形カートリッジを含むエアロゾル発生物品の、エアロゾル発生システムにおける使用に関し、使い捨てカートリッジは泡状エアロゾル発生タバコ含有物質を収容する。
【背景技術】
【0002】
タバコ含有物質を含み、通常は、再構成タバコの積層シートが集められてスティック形状に巻かれるか又は大まかに揃えられて形成される、エアロゾルを形成するタバコ含有消耗品が燃やされずに加熱されるエアロゾル発生装置が、当該技術分野において既に知られている。そのようなエアロゾル発生装置は、総称して「非燃焼加熱式」(HNB)装置と呼ばれ、それとともに使用される、対応する消耗品スティックもそのように呼ばれる。それらは加熱器構成により、スティック形式のエアロゾル発生材料を摂氏300度超まで加熱して、ニコチン含有エアロゾルを生成する。
【0003】
既存のHNB消耗品はまた、積層シートの代わりに発泡タバコ基材を含んでもよい。製造プロセスは、通常、細かくすり潰したタバコ粒子から発泡体形成剤及び発泡体安定剤とともに再構成タバコシートを形成すること、引き続いて再構成シートを細断すること、及び天然タバコ断片とブレンドすることを含む。これらの発泡体は、再構成タバコを使用するタバコの代替品としての燃焼による使用を意図している。
【0004】
非燃焼加熱式のエアロゾル発生材料及びエアロゾル発生物品を含む既存のベーピングシステムは、ますます普及しつつあるが、消費者は同時に、それらが紙巻タバコ又は葉巻等の従来の喫煙物品に匹敵する味及び感覚的経験を提供しないことを認識している。特に、消費者は、現在入手可能な製品では本物のタバコの味がしないと感じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本物のタバコにより近い、より好ましい味覚体験を消費者に提供するとともに、エアロゾルを発生させて消費するための吸入の手間が少なくてすむ、喫煙(吸入のための吸気)が容易なエアロゾル発生物品及びエアロゾル発生材料を消費者に提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、請求項に記載するとおりの新規且つ発明的なエアロゾル発生物品により、上述の問題に対する解決策を見出した。
【0007】
従って、本発明の第1の態様は、泡状エアロゾル発生材料を含む成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品を提供することであり、成形カートリッジは使い捨てであり、基部、上部、内壁、及び外壁を含み、カートリッジの基部及び上部は内壁及び外壁とつながっており、内壁は、泡状エアロゾル発生材料がない及び泡状エアロゾル発生材料を通り抜けて延びる1つ以上の長手方向チャネルを形成するように設けられている。
【0008】
本発明の第2の態様はエアロゾル発生システムに関し、エアロゾル発生システムは、本発明による成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品と、エアロゾル発生物品のカートリッジ内で1つ以上の長手方向チャネルの内側と嵌合するように構成された熱発生要素を含むエアロゾル発生装置のベーピング装置と、を含む。
【0009】
本発明の第3の態様は、本発明による、成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の使用に関する。
【0010】
本明細書で説明する新規なエアロゾル発生物品のおかげで、加熱装置の加熱器から、使い捨て成形カートリッジに収容されている泡状(ムース)材料、即ち、エアロゾル発生基材(又は材料)まで熱を運ぶことの効率は向上する。これは、エアロゾル発生基材の加熱が、カートリッジの特定の場所(例えば、熱発生要素の周囲の領域)だけに限定されずに、均一に行われるためである。そしてこれによって、1つの消耗品からのエアロゾルがより高密度、均質、且つ均一になり、これによって、エアロゾル発生基材のカートリッジ/カプセルの有用性が最大化される。
【0011】
この目的のために、「カートリッジ」という用語は「カプセル」及び「コンテナ」等の用語と区別なく使用されてよいことを強調しておきたい。本明細書における開示によれば、カプセルの泡状エアロゾル発生材料の利用率を最大化するためには、長手方向チャネルがカートリッジ内に設けられることが不可欠であり、近位端から反対側の遠位端まで延びることが好ましく、或いは、チャネルが、泡状エアロゾル発生材料との接触面を増やすために、湾曲しているか又はらせん状であることが好ましい。
【0012】
更に、加熱された空気がカートリッジ内により深く入り込むことも可能になり、それによって、より高密度且つ均一なエアロゾルが生成されて、より心地よい経験がもたらされる。
【0013】
一実施形態では、1つ以上の長手方向チャネルは、カートリッジの基部から、カートリッジの上部及び/又は外壁まで延びる。分かっていることとして、長手方向チャネルがカートリッジの基部から上部まで延びている場合、熱発生要素からの熱がカートリッジの高さ全体に届くように伝わることが可能であり、それによって、カートリッジ内の材料の全体積が均一に加熱されることが可能である。長手方向チャネルがカートリッジの基部から外壁まで延びている場合、熱発生要素からの熱がカートリッジの側部まで伝わることが可能であり、それによって、空気循環の効率が高まることが可能である。
【0014】
この目的のために、予想されうることとして、1つ以上の長手方向チャネルが成形カートリッジに設けられてよく、並びに、カートリッジの中身(例えば、エアロゾル発生材料、タバコ含有材料)の加熱の効率を高め、且つ、空気流の循環を増やすために、長手方向チャネルが枝分かれしてもよい。
【0015】
別の実施形態では、1つ以上の長手方向チャネルは、カートリッジの長手方向軸にほとんど平行に延びる。この実施形態は最も効率的である。それは、カートリッジ内に収容されているエアロゾル発生基材、例えば、泡状材料又はムース材料が、中心部に空気チャネルが形成されながら、熱発生要素に近い領域からカートリッジの向こう側まで均一に加熱されることが可能なためである。言い換えると、使い捨て成形カートリッジは、空気が中心部を通って流れるドーナツ形カートリッジに似ていてもよい。
【0016】
一実施形態によれば、1つ以上の長手方向チャネルは、加熱装置の熱発生要素を受け入れるように構成されている。成形カートリッジは、接触箇所を増やすように、熱発生要素と相補的な形状を有するように設計されている。この実施形態の利点は、カートリッジの中身を均一に加熱して、より高密度且つ均一なエアロゾルを発生させることに役立つことである。
【0017】
更に別の実施形態によれば、1つ以上の長手方向チャネルは直線状か又はらせん状である。直線状のチャネルであれば、シンプルな使い捨て成形カートリッジを製造することが可能であり、らせん状のチャネルであれば、カートリッジの中身の(例えば、熱発生要素又は加熱空気によって)加熱される体積を増やすことが可能である。
【0018】
別の実施形態によれば、1つ以上の長手方向チャネルの長手方向軸に垂直な断面の形状が、円形、エッジングされた形状、楕円形、又は不規則形状である。これらの形状は特に、成形カートリッジが熱発生要素と接触する領域(例えば、カートリッジの底部又は側部)に設けられることに適しており、効率的な熱伝導のために接触箇所を増やすように、これらの形状は熱発生要素の表面形状と相補的である。
【0019】
別の実施形態では、カートリッジの外壁に垂直な断面の形状が、円形、正方形、長方形、三角形、リッジ又はスポーク、多角形、又は不規則形状である。これらの形状は特に、エアロゾル発生装置の形状に応じてカスタマイズされることに適する。
【0020】
特定の好ましい一実施形態では、カートリッジの基部は、加熱装置の熱発生要素との接触箇所を増やすように、ほぼ平らである且つ/又はエッジングされている。カートリッジの基部が平らであるか、且つ/又はそのコーナーが(円形又は楕円形のエッジではなく)エッジングされている場合には、これによって、カートリッジと熱発生要素との接触箇所が増える。
【0021】
別の好ましい実施形態では、カートリッジに熱を伝えるための、基部と熱発生要素との接触箇所を増やすように、カートリッジの基部は、加熱装置の熱発生要素の形状と相補的な表面を有している。面接触箇所が多いほど、カートリッジの中身のより多くが加熱されることが可能になり、それによって、より高密度且つ均一な風味が生成されることが可能になる。
【0022】
別の実施形態によれば、基部は、カートリッジの水平面に垂直な、カートリッジの長手方向断面から見て、V形、N形、U形、n形、Λ形、及びω形のうちの1つ以上の形状を有する。これらの形状によって接触面が増えて、熱発生要素からカートリッジの中身への伝熱の効率が高まる。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、カートリッジは、耐熱性ポリマー発泡体材料で作られている。カートリッジは、弾性であり変形可能な材料で作られてよい。
【0024】
別の実施形態では、エアロゾル発生タバコ含有基材及び/又は担体マトリックス等の材料で埋めるための1つ以上の開口がカートリッジに設けられている。開口は、(使用時に)カートリッジの上部及び/又は側部に設けられてよい。もちろん、開口は他の任意の場所に設けられてもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、成形カートリッジは空気透過性であるか且つ/又はメッシュ構造を有する。
【0026】
好ましい一実施形態によれば、1つ以上の個別区画がカートリッジに設けられており、これらの区画は、エアロゾル発生タバコ含有基材及び/又は堅い担体マトリックスを含む、同じ材料又は異なる材料で埋められている。
【0027】
更に幾つかの変形形態によれば、カートリッジの総体積の10~33%が、泡状エアロゾル発生材料がない長手方向チャネルからなる。これらの値は、泡状エアロゾル発生材料のほぼ全体を使い切ってエアロゾルを放出することが可能なように、泡状エアロゾル発生材料との最適な接触面を有するのに十分な体積のチャネルがカートリッジ内に配置されることを保証する。好ましくは、少なくとも5。
【0028】
所与の数値に関する「約」又は「およそ」は、指定された値から10%以内の数値を含むことを意味する。本開示において与えられる全ての値は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、用語「約」によって補完されると理解されるべきである。
【0029】
不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、複数を除外せず、従って広い意味で扱うべきである。
【0030】
特に定義しない限り、本明細書中で用いる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
本明細書中で用いるところでは、用語「長手方向」は、カートリッジの上部と底部との間に延在するカートリッジの主な長手方向軸に対応する方向、即ち矢状面を指す。使用中、空気は、使い捨て成形カートリッジ内を通って長手方向に(即ち、カートリッジの基部から上部又は側部にかけて)直線状に又はらせん状に、チャネル又は煙突まで引っ張られる。用語「横方向」は、長手方向軸に対して垂直な方向を指す。
【0032】
使い捨て成形カートリッジの「断面」への言及は全て、特に断らない限り、矢状断面への言及である。
【0033】
タバコ含有材料は、人工的に含まれるか又はタバコ中に自然に含有される、タバコの構成物質、例えばタバコ、タバコ粒子、タバコフレーバー及び/又はニコチンを含有且つ/又は保持する任意の化合物、混合物、粒子物質、及び/又は溶液であってよい。対照的に、人工的に添加される非タバコ特有フレーバーについての例は、メントールであろう。
【0034】
本明細書中で用いるところでは、用語「エアロゾル発生物品」は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく、加熱されるように意図されるエアロゾル発生材料を含むエアロゾルを生成するためのエアロゾル発生物品を指す。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、泡状エアロゾル発生材料を中に収容するようにカートリッジの形態で提供される。エアロゾル発生物品は、カートリッジに接続される他の構成要素(例えば、マウスピース、フィルタ等)を含んでよい。
【0035】
本明細書中で用いるところでは、用語「エアロゾル発生材料」は、加熱時にエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出することができる材料を指す。本明細書で説明するエアロゾル発生物品のエアロゾル発生材料から発生するエアロゾルは、可視又は不可視であり得、蒸気(例えば、室温で通常液体又は固体である気体状態の物質の微粒子)並びに気体及び凝縮した蒸気の液滴を含み得る。材料は、タバコ含有材料又は基材を含んでも又は含まなくてもよい。
【0036】
エアロゾル形成剤は、例えば、加熱された場合且つ/又はタバコ構成要素含有剤との混合物においてエアロゾルを形成することができる任意の化合物、混合物及び/又は溶液であり得る。周知の例としては、グリセリン及びプロピレングリコールなどの保湿剤、エタノールなどの他のアルコール等が挙げられる。
【0037】
本明細書では用語「発泡体」は「ムース」と同一視され、ムースは、開放孔を有する実質的な固体、即ち、自重以外の外力がかからない状態で形状及び完全性を維持できる非流体材料に関連付けられる。「発泡体」は、流体、特に保湿剤/液体エアロゾル形成基材と空気との混合物を含有できる複数の相互接続細孔(発泡体安定剤、タバコ粒子などの固体成分及び幾らかの溶媒等などの相互作用する成分と連携する発泡体形成剤に由来する構造材料から形成された)で形成されていると考えられる。
【0038】
本発明において言及されるような、電子タバコ(e-タバコ)、又は電子パイプ又は非燃焼加熱式装置のような類似の装置は、特に限定されず、吸入するためのエアロゾルをユーザに提供するために使用されてよい。それは、特定の実施形態によれば、マウスピース、加熱器、受け部、例えばポッド、スティック、カプセル、及びケーシングを含むことができる。
【0039】
本明細書で用いるところでは、特に明記しない限り、容積%は、発泡体の全容積を基準とする容積パーセントとして理解されたい。本開示において、特定の発泡体において容積%で示される全ての量は、合計100容積%になる。容積パーセントは、従って、特に示さないか又は文脈から明らかでない限り、各成分の容積を発泡体の全容積で割ることによって計算される。
【0040】
本明細書中で用いるところでは、特に明記しない限り、重量%は、物質の総重量を基準とする重量パーセントとして理解されたい。本開示において、特に明確に述べるか又は文脈から明らかでない限り、全ての量は重量%単位で示される。本開示において、更に、重量%単位で示される全ての量は合計100重量%になる。重量パーセントは、従って、特に示さないか又は文脈から明らかでない限り、各成分の質量を、例えば発泡体の全質量で割ることによって計算される。
【0041】
用語「使い捨て」は、1回の使用後か又は複数回の使用後かにかかわらず、使用後に廃棄されるように設計された製品を意味する。本文脈での使い捨てカートリッジは、使用後に廃棄されることを意図されたカートリッジである。
【0042】
用語「カートリッジ」は、何かを保持することに、特に運搬又は貯蔵に使用可能な中空物体(箱等)を意味する。これはまた、エアロゾル発生材料等の材料を中に収容する別個の要素では必ずしも作られていないカートリッジ又はコンテナを意味してよい。本発明によるカートリッジは、タバコムース等のエアロゾル発生タバコ含有基材で構成されてもよく、即ち、カートリッジはムース材料で構成される。ムースは、例えば、様々な種類の構造及びテクスチャを有してよく、例えば、コルク状であってよく(比較的堅くてよく)、或いは、より軽くてふわふわした粘稠度(比較的スポンジ状)であってよい。
【0043】
用語「長手方向チャネル」は、主流煙が成形カートリッジの長手方向チャネルの一端から他端に(例えば、カートリッジの基部から上部に、及び上部から基部に)流れる経路を意味する。チャネルは、加熱された空気が移動すること、並びに加熱装置の熱発生要素を受け入れることのための通路として働く。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の第1の実施形態の、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視図である。
【
図2a】本発明の第2の実施形態の、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視透明図である。
【
図3a】本発明の第3の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視透明図である。
【
図3b】本発明の第3の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略矢状断面斜視図である。
【
図3c】本発明の第3の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略矢状断面図である。
【
図4a】本発明の第4の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の矢状断面斜視図である。
【
図4b】本発明の第4の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略矢状断面図である。
【
図5a】本発明の第5の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の矢状断面斜視図である。
【
図5b】本発明の第5の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略上面図である。
【
図6a】本発明の第6の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視図である。
【
図6b】本発明の第6の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視透明図である。
【
図6c】本発明の第6の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略矢状断面図である。
【
図7a】本発明の第7の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視図である。
【
図7b】本発明の第7の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略正面図である。
【
図8a】本発明の第8の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略斜視図である。
【
図8b】本発明の第8の実施形態による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明による、使い捨て成形カートリッジの形態のエアロゾル発生物品100の一例示的実施形態を示す。使い捨て成形カートリッジは、ほとんど円筒形である。図解を簡潔明瞭にするために、本明細書で示している全ての図面のカートリッジの最上層25(
図3c、4b、及び8bを参照)を省略しており、使い捨て成形カートリッジの長手方向チャネル50が見えるようになっている。
【0046】
図1に示すように、内壁20は、1つの長手方向チャネル50を形成するように設けられている。長手方向チャネル50は、カートリッジの垂直軸(長手方向軸Y)に平行である。長手方向チャネル50は、カートリッジの基部15からカートリッジの形態のエアロゾル発生物品100の上部25まで延びる。
【0047】
全ての実施形態の円筒形カートリッジの径に対する長手方向チャネルの径の比は、1:30~1:2、好ましくは1:20~1:3又は1:10~1:4、最も好ましくは1:5であってよい。カートリッジの高さは、10~100mm、好ましくは15~50mm、最も好ましくは25mm前後であってよい。
【0048】
本発明による使い捨て成形カートリッジは、耐熱性ポリマー材料で作られてよい。これらの耐熱性ポリマーは、例えば、ポリイミド及びそのコポリマー、ポリアミド及び関連コポリマー、ポリエステル、芳香性ポリエステル及びその誘導体、ベンズイミダゾール、並びにラダーポリマーである。なお、他にも合成により開発された又は商業的に成功した(さほど重要ではない)耐熱性ポリマーが多数存在し、これらは、本明細書では言及していないが、全てが本技術分野において公開されている書籍及びレビュー誌に完全に記述されており、それらも使い捨てカートリッジの材料として使用されてよいことに留意されたい。
【0049】
本明細書における開示によると、幾つかの実施形態によれば、ハンドリング時にカートリッジに指がくっつかないように、ムースの側部(の一部又は全体)が(薄い)コーティングで覆われてもよい。このコーティングは、耐熱性であってよいが、揮発性であってもよく、加熱されると消えてよい。コーティング(プラスチック等の層)は外周部上にのみあってよい。代替として、コーティング材料の代わりに、使用前に取り外されてよい薄い層であってよい。例えば、そのような材料は、非耐熱性の紙であってよく、加熱前に取り外されてよい。
【0050】
更に、同じ材料が様々な密度で使用されてよい。例えば、ムースは、外側が比較的高密度である一方で、中心がより軽やかであってよい。これにより、手で触れる部分には剛性が与えられる一方で、残りの部分を通る空気の流れがよくなる。
【0051】
耐熱性ポリマー材料以外では、多孔質セラミック、例えば、孔径(d)が10μmを超える多孔質セラミックが、使い捨てカートリッジの材料として使用されてよい。一般に、多孔質セラミックは、機械的強度、耐摩耗性、化学的安定性、及び熱安定性等の特性が良好である。こうした多孔質網セラミック構造はまた、比較的、低密度であり、低質量であり、低熱伝導率である。本明細書における開示によれば、セラミックは、例えば、ムースを保持するために(底に穴がある)カップ形状であってよい。代替として、セラミックはまた、孔の内側にトラップされたエアロゾル及びタバコを保持するように、非常に開放的な孔であってよい。
【0052】
使い捨てカートリッジの別の代替材料は、ゆるい無方向性ファイバであってよく、このようなファイバは、カートリッジを形成することに使用されるだけでなく、カートリッジの中身(例えば、泡又はムース)を支持する構造としても使用されてよい。本発明での使用に適する無方向性ファイバの例として、例えば、欧州特許出願公開第3039060A1号明細書に記載のものがある。例えば、それらのファイバは、ムースで満たされることになる非常に開放的なマトリックスを形成することが可能である。
【0053】
図2a及び2bは本発明の第2の実施形態であり、ここでは、カートリッジの形態のエアロゾル発生物品100が、外壁10及び内壁20を有する三角形の形態である。
図2bに見られるように、カートリッジの垂直軸Yに平行な内壁20から形成された長手方向チャネル50がカートリッジの中心領域に設けられて、基部15から上部25(図示せず)まで延びている。
【0054】
図3a、3b、及び3cは、エアロゾル発生物品100の別の変形形態を他の使い捨て成形カートリッジの形態で示しており、ここでは、長手方向チャネル50は、カートリッジの底部領域15においてじょうご形状15bを有する。この実施形態の利点は、より加熱された空気がカートリッジの壁に接して流れうることである。
【0055】
図3a~3cに示した例に対する別の変形形態を
図4a及び4bに示しており、ここでは、カートリッジの基部15にリッジ15cが設けられており、リッジ15cは、長手方向チャネル50の底部15に設けられたじょうご形状15bのリムを取り巻いている。
【0056】
上述の利点以外では、使い捨て成形カートリッジのこれらの変形形態は、熱発生要素上にバルジが存在する熱発生要素の表面領域に対して相補的であるように使用されることに特に適する。言い換えると、これらのカートリッジは、加熱装置の熱発生要素の輪郭に対して相補的であるように選択又は設計されてよく、それによって、それらの間の最適な表面接触が達成されうる。
【0057】
更に、本明細書における開示によれば、じょうご形状15b及びリッジ15cを設けることにより、加熱された空気の温度を下げることが可能であり、それによって、タバコの泡又はムースに最適な低温(例えば、250℃)を達成することが可能であり、それによって、カートリッジ内に収容されたエアロゾル発生基材を最適に加熱することが可能である。
【0058】
図5aは、使い捨て成形カートリッジに複数の長手方向チャネル50が設けられてもよいことを示している。言い換えると、それぞれが長手方向チャネル50を形成する複数の内壁20がカートリッジに設けられてよい。この複数の長手方向チャネルは、エアロゾル発生物品及びエアロゾル発生装置からの蒸気を吸い出すように働く。これによって更に、より管理された蒸気がカートリッジを通って流れることが可能になる。チャネルの開口は基部15から上部25までであることが好ましいが、壁10に設けられてもよい。
【0059】
更にカートリッジは、円筒形、正方形、三角形、又は多角形以外に、カートリッジの外壁10が花のようなモザイクの形状又は不規則形状であってもよい(
図5bを参照)。長手方向チャネル50は、
図6a、6b、及び6cに示すように、直線状であってもよく、又はらせん状であってもよく、又は絡み合っていてもよい。この実施形態では、長手方向チャネル50がらせん状であると、加熱された空気がカートリッジのうちのより多くの範囲に届くことが可能になり、それによって、より均質且つ均一なエアロゾルが生成可能になる。これは、カートリッジ内の材料がより均一に加熱されることが可能なためである。
【0060】
本明細書では繰り返しになるが、カートリッジの基部15並びに他の側部は、平らであるだけでなく、他の形状であってもよく、例えば、熱発生要素140と互いに隣接したときに熱発生要素140の表面形状とぴったり合うような形状であってよい。例えば、基部は、カートリッジの水平軸に垂直な、カートリッジの垂直断面から見て、V形、N形、U形、n形、Λ形、及びω形のうちの1つ以上の形状を有してよい。
図7a及び7bは、例えば、カートリッジの基部が複数の「V」と逆「V」を有してよいことを示しており、これらは、
図7bに示すように、熱発生要素140の表面形状とぴったり合う。同様に、カートリッジは複数の「U」と逆「U」の中に設けられてよく、これらは、
図8a及び8bに示すように、加熱装置の熱発生要素140の表面形状とぴったり合う。熱発生要素140の表面形状と相補的な表面形状を使い捨て成形カートリッジに持たせることにより、より多くの接触面が形成されて、より高密度且つより均一なエアロゾルの放出が可能になる。
【0061】
この目的のために、場合によっては、カートリッジのうちの熱発生要素140と接触している表面が、ムース(例えば、蒸発している材料の一部)が消耗した結果として加熱中に変形する可能性があることに注意されたい。そのため、カートリッジがつぶれるのを防ぐために、上述のカートリッジの材料として、より高剛性の担体マトリックスが使用されてよい。
【0062】
本発明の目的は、加熱装置の加熱器からエアロゾル発生タバコ含有基材(例えば、成形カートリッジに収容されているタバコムース)まで熱を運ぶことの改善である。この目的は、例えば、成形カートリッジの底部における接触面を増やすことか、又は成形カートリッジ内に1つ以上の長手方向チャネルを設けることによって達成され、長手方向チャネルは、効率的な熱伝達のための最適な面接触が達成されるように、加熱要素の形状にあわせて成形される。更に、加熱要素が成形カートリッジの長手方向チャネルに届かない幾つかの場合には、加熱要素から発生して長手方向チャネルを通っていく加熱された空気又はエアロゾルが、エアロゾル発生タバコ含有基材のより広い表面積を加熱することが可能である。本発明のこれらの特徴により、エアロゾル発生タバコ含有基材をより均一に加熱して、1回だけ使用する使い捨ての消耗品から、より高密度且つより均一なエアロゾルを発生させることが可能になる。