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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/663 20180101AFI20250220BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20250220BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20250220BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20250220BHJP
   B60Q 1/12 20060101ALI20250220BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20250220BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20250220BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20250220BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20250220BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20250220BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/143
F21S41/153
F21S41/43
B60Q1/12 100
F21W102:155
F21W102:20
F21W102:145
F21Y105:10
F21Y115:10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022505925
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2021007658
(87)【国際公開番号】W WO2021182151
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020041325
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020041324
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】望月 一磨
(72)【発明者】
【氏名】杉本 篤
(72)【発明者】
【氏名】大野 智之
(72)【発明者】
【氏名】寺山 尚志
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-040528(JP,A)
【文献】特開2015-013512(JP,A)
【文献】特開2011-063070(JP,A)
【文献】特開2004-327188(JP,A)
【文献】特開2019-010962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/663
F21S 41/143
F21S 41/153
F21S 41/43
B60Q 1/12
F21W 102/155
F21W 102/20
F21W 102/145
F21Y 105/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の光出射部がマトリックス状に配置されて前記複数の光出射部から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成する配光パターン形成部を有する第1灯具ユニットと、
特定の配光パターンを有する光を出射する第2灯具ユニットと、
制御部と、
を備え、
前記第1灯具ユニットから出射する光と前記第2灯具ユニットから出射する光とによって、エルボー点から左右方向の一方側に水平方向に延在する水平カットオフラインと前記エルボー点から左右方向の他方側に斜め上方に向かって延在する傾斜カットオフラインとを有するロービームの配光パターンを形成し、
前記ロービームの配光パターンのうち、前記第1灯具ユニットからの光を含む光によって形成される所定領域には前記エルボー点が含まれ、前記所定領域を左右方向に挟む第1側方領域及び第2側方領域は前記第2灯具ユニットから出射する光によって形成され
前記制御部は、前記複数の光出射部から出射する光の光量を調節し、前記所定の配光パターンを前記エルボー点が左右方向の所定側に所定距離移動する配光パターンに変化させ、
前記エルボー点が移動する前の第1状態での前記所定領域のうち前記所定側と反対側の縁から前記所定側に前記所定距離離れた位置までの範囲と一致する固定領域は、前記エルボー点が移動した後の第2状態での前記所定領域内に位置し、
前記固定領域内の任意の点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度未満、かつ前記任意の点を通り左右方向に延在する直線と前記固定領域の前記所定側と反対側の縁との交点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度以上である
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記所定の配光パターンの少なくとも一部と前記特定の配光パターンの一部とは、互いに重なる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記第1側方領域における上縁の少なくとも一部は、前記水平カットオフラインより上方に位置する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記第2側方領域における上縁の少なくとも一部は、前記水平カットオフラインより上方に位置する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記特定の配光パターンは、少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンにおける前記第1側方領域となる第1領域と、前記第1領域と離隔し少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンにおける前記第2側方領域となる第2領域と、を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記特定の配光パターンは、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し前記第1領域及び前記第2領域に接続する第3領域を更に有し、
前記第3領域における上縁は、前記第1領域及び前記第2領域の上縁より下方に位置する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記第1領域における前記第3領域側の上縁は、前記第3領域側に向かって下方に傾斜し前記第3領域における上縁に接続し、
前記第3領域における上縁は直線状に水平方向に延在し、
前記第2領域における前記第3領域側の上縁は、前記第3領域側に向かって下方に傾斜し前記第3領域における上縁に接続する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記所定の配光パターンの一部と前記特定の配光パターンの一部とが互いに重なり、
前記特定の配光パターンにおける上縁の一部は、直線状に水平方向に延在して前記所定の配光パターンを横切る
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記第2灯具ユニットは、光を出射する光源部と、前記光源部から出射する光の一部を遮るシェードとを有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
光を出射する第3灯具ユニットを更に備え、
前記第1灯具ユニットから出射する光と前記第2灯具ユニットから出射する光と前記第3灯具ユニットから出射する光とによってハイビームの配光パターンを形成する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
前記任意の点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の点を通り左右方向に延在する直線と前記固定領域の前記所定側と反対側の縁との交点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度と同じである
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項12】
前記所定領域にはホットゾーンが含まれ、
前記エルボー点とともに前記ホットゾーンが前記所定側に前記所定距離移動する
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項13】
前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記固定領域の前記所定側の縁から前記ホットゾーンに向かって、徐々に高くなる
ことを特徴とする請求項12に記載の車両用前照灯。
【請求項14】
前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記固定領域の前記所定側と反対側の縁から前記ホットゾーンに向かって、徐々に高くなる
ことを特徴とする請求項12または13に記載の車両用前照灯。
【請求項15】
前記第1状態での前記所定領域の前記所定側の縁は、前記第2状態での前記所定領域内に位置し、
前記第1状態での前記所定領域の前記所定側の縁と一致する基準線上の任意の参照点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の参照点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度以上、かつ前記第1状態での前記所定の配光パターンが前記所定側に前記所定距離移動した場合での、前記任意の参照点における前記第1灯具ユニットからの光の強度以下である
ことを特徴とする請求項から14のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項16】
前記任意の参照点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の参照点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度と同じである
ことを特徴とする請求項15に記載の車両用前照灯。
【請求項17】
前記所定領域にはホットゾーンが含まれ、
前記エルボー点とともに前記ホットゾーンが前記所定側に前記所定距離移動し、
前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記基準線から前記ホットゾーンに向かって徐々に高くなる
ことを特徴とする請求項15または16に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表される車両用前照灯として、複数の発光素子がマトリックス状に配置された発光部を有し、当該発光部から出射する光によってロービームの配光パターンを形成するものが知られている。下記特許文献1には、このような車両用前照灯が記載されている。
【0003】
下記特許文献1に記載の車両用前照灯は、複数の発光素子がマトリックス状に配置された発光部と、それぞれの発光素子から出射する光の光量を調節する制御部と、を備える。この車両用前照灯は、制御部によって発光部におけるそれぞれの発光素子から出射する光の光量を調節することで、ロービームの配光パターンを形成できるとされている。
【0004】
【文献】国際公開第2018/186187号
【発明の概要】
【0005】
上記特許文献1に記載の車両用前照灯では、制御部によって発光素子から出射する光の光量を調節できるため、ロービームの配光パターンにおける光の強度分布を調節できる。このような車両用前照灯は、複数の発光素子を有するため、光源から出射する光をリフレクタで反射してロービームの配光パターンを形成するものや、光源から出射する光の一部をシェードによって遮ることによってロービームの配光パターンを形成するものと比べて、製造コストが高くなる傾向にある。一方、これらの車両用前照灯は、特許文献1に記載の車両用前照灯と比べて、ロービームの配光パターンにおける光の強度分布を細かく調節しにくい傾向にある。ロービームの配光パターンにおけるエルボー点を含む領域は、左右方向においてこの領域より一方側の領域及び他方側の領域と比べて、光の強度の変化率が大きい。このため、上記の領域における光の強度分布を細かく調節したいという要請がある。
【0006】
そこで、本発明は、ロービームの配光パターンにおけるエルボー点を含む所定領域における光の強度分布を細かく調節し得るとともに製造コストを低減し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的の達成のため、本発明の車両用前照灯は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の光出射部がマトリックス状に配置されて前記複数の光出射部から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成する配光パターン形成部を有する第1灯具ユニットと、特定の配光パターンを有する光を出射する第2灯具ユニットと、を備え、前記第1灯具から出射する光と前記第2灯具ユニットから出射する光とによって、エルボー点から左右方向の一方側に水平方向に延在する水平カットオフラインと前記エルボー点から左右方向の他方側に斜め上方に向かって延在する傾斜カットオフラインとを有するロービームの配光パターンを形成し、前記ロービームの配光パターンのうち、前記第1灯具ユニットからの光を含む光によって形成される所定領域には前記エルボー点が含まれ、前記所定領域を左右方向に挟む第1側方領域及び第2側方領域は前記第2灯具ユニットから出射する光によって形成されることを特徴とする。
【0008】
この車両用前照灯では、ロービームの配光パターンにおけるエルボー点を含む所定領域は、光出射部がマトリックス状に配置された配光パターン形成部を有する第1灯具ユニットから出射する光を含む光によって形成される。このため、この車両用前照灯は、例えば、それぞれの光出射部から出射する光の光量を調節することで、この所定領域における光の強度分布を細かく調節できる。ここで、ロービームの配光パターンのうち、上記の第1側方領域及び第2側方領域は、上記の所定領域と比べて光の強度の変化率が小さく、これら第1側方領域及び第2側方領域における光の強度分布は、所定領域と比べて細かい調節が要求されない。このため、第2灯具ユニットは、第1灯具ユニットと比べて、出射する特定の配光パターンにおける光の強度分布を細かく調節できなくてもよく、このような灯具ユニットは、第1灯具ユニットと比べて簡易な構成にし得る。したがって、この車両用前照灯は、第1灯具ユニットから出射する光のみによってロービームの配光パターンを形成する場合と比べて、製造コストを低減し得る。
【0009】
前記所定の配光パターンの少なくとも一部と前記特定の配光パターンの一部とは、互いに重なることとしてもよい。
【0010】
このような構成にすることで、ロービームの配光パターンに意図せず暗くなる領域ができることを抑制し得る。
【0011】
前記第1側方領域における上縁の少なくとも一部は、前記水平カットオフラインより上方に位置することとしてもよい。
【0012】
このような構成にすることで、第1側方領域における上縁が水平カットオフラインより下方に位置する場合と比べて、左右方向における一方側の視認性を向上し得る。
【0013】
前記第2側方領域における上縁の少なくとも一部は、前記水平カットオフラインより上方に位置することとしてもよい。
【0014】
このような構成にすることで、第2側方領域における上縁が水平カットオフラインより下方に位置する場合と比べて、左右方向における他方側の視認性を向上し得る。
【0015】
前記特定の配光パターンは、少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンにおける前記第1側方領域となる第1領域と、前記第1領域と離隔し少なくとも一部が前記ロービームの配光パターンにおける前記第2側方領域となる第2領域と、を有することとしてもよい。
【0016】
この場合、前記特定の配光パターンは、前記第1領域と前記第2領域との間に位置し前記第1領域及び前記第2領域に接続する第3領域を更に有し、前記第3領域における上縁は、前記第1領域及び前記第2領域の上縁より下方に位置することとしてもよい。
【0017】
この場合、前記第1領域における前記第3領域側の上縁は、前記第3領域側に向かって下方に傾斜し前記第3領域における上縁に接続し、前記第3領域における上縁は直線状に水平方向に延在し、前記第2領域における前記第3領域側の上縁は、前記第3領域側に向かって下方に傾斜し前記第3領域における上縁に接続することとしてもよい。
【0018】
前記所定の配光パターンの一部と前記特定の配光パターンの一部とが互いに重なり、前記特定の配光パターンにおける上縁の一部は、直線状に水平方向に延在して前記所定の配光パターンを横切ることとしてもよい。
【0019】
このような構成にすることで、所定の配光パターンの一部と特定の配光パターンの一部とが重なる領域における上縁が水平方向に延在する直線状となる。このため、重なる領域における上縁が曲線状である場合と比べて、例えば、配光パターン形成部の光出射部から出射する光の光量の調節が複雑になることを抑制し得る。
【0020】
前記第2灯具ユニットは、光を出射する光源部と、前記光源部から出射する光の一部を遮るシェードとを有することとしてもよい。
【0021】
上記の車両用前照灯は、光を出射する第3灯具ユニットを更に備え、前記第1灯具から出射する光と前記第2灯具ユニットから出射する光と前記第3灯具ユニットから出射する光とによってハイビームの配光パターンを形成することとしてもよい。
【0022】
上記の車両用前照灯は、制御部を更に備え、前記制御部は、前記複数の光出射部から出射する光の光量を調節し、前記所定の配光パターンを前記エルボー点が左右方向の所定側に所定距離移動する配光パターンに変化させ、前記エルボー点が移動する前の第1状態での前記所定領域のうち前記所定側と反対側の縁から前記所定側に前記所定距離離れた位置までの範囲と一致する固定領域は、前記エルボー点が移動した後の第2状態での前記所定領域内に位置し、前記固定領域内の任意の点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度以下、かつ前記任意の点を通り左右方向に延在する直線と前記固定領域の前記所定側と反対側の縁との交点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度以上であることを特徴とするものである。
【0023】
この車両用前照灯では、上記のように、制御部は、複数の光出射部から出射する光の光量を調節し、所定の配光パターンをエルボー点が左右方向の所定側に所定距離移動する配光パターンに変化させる。このため、この車両用前照灯によれば、車両の進行方向の変化に応じてエルボー点を左右方向に移動させ得、進行方向の視認性を向上させ得る。また、例えば、エルボー点が右側に移動する場合、上記の固定領域は、エルボー点が移動する前の第1状態での所定領域のうち左側の縁から右側に所定距離離れた位置までの範囲と一致する領域である。そして、この固定領域内の任意の点におけるエルボー点が移動した後の第2状態での第1灯具ユニットからの光の強度は、当該任意の点における第1状態での第1灯具ユニットからの光の強度以下、かつ当該任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域の左側の縁との交点における第1状態での第1灯具ユニットからの光の強度以上である。例えば、所定の配光パターンを左右方向に移動させることでエルボー点を左右方向に移動させる場合、この固定領域には、第1灯具ユニットからの光が照射されなくなる。このため、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、固定領域における光の強度の変化量を小さくでき、運転者が固定領域に違和感を覚えることを抑制し得る。したがって、この車両用前照灯によれば、上記の場合と比べて、エルボー点を移動させたときに運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0024】
上記の車両用前照灯が制御部を備える場合、前記任意の点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の点を通り左右方向に延在する直線と前記固定領域の前記所定側と反対側の縁との交点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度と同じであることとしてもよい。
【0025】
このような構成にすることで、固定領域における第2状態での第1灯具ユニットからの光の強度は左右方向において一定となり、制御部による複数の光出射部から出射する光の光量の調節を簡易にし得る。
【0026】
上記の車両用前照灯が制御部を備える場合、前記所定領域にはホットゾーンが含まれ、前記エルボー点とともに前記ホットゾーンが前記所定側に前記所定距離移動することとしてもよい。
【0027】
このような構成によれば、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0028】
この場合、前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記固定領域の前記所定側の縁から前記ホットゾーンに向かって、徐々に高くなることとしてもよい。
【0029】
このような構成にすることで、エルボー点及びホットゾーンを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0030】
上記の所定領域にホットゾーンが含まれる場合、前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記固定領域の前記所定側と反対側の縁から前記ホットゾーンに向かって、徐々に高くなることとしてもよい。
【0031】
このような構成にすることで、エルボー点及びホットゾーンを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0032】
上記の車両用前照灯が制御部を備える場合、前記第1状態での前記所定領域の前記所定側の縁は、前記第2状態での前記所定領域内に位置し、前記第1状態での前記所定領域の前記所定側の縁と一致する基準線上の任意の参照点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の参照点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度以上、かつ前記第1状態での前記所定の配光パターンが前記所定側に前記所定距離移動した場合での、前記任意の参照点における前記第1灯具ユニットからの光の強度以下であることとしてもよい。
【0033】
このような構成にすることで、所定の配光パターンを左右方向に移動させることでエルボー点を左右方向に移動させる場合と比べて、上記の線上での光の強度の変化量が大きくならないようにでき、運転者がこの基準線上での光量の変化に違和感を覚えやすくなることを抑制できる。
【0034】
この場合、前記任意の参照点における前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記任意の参照点における前記第1状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度と同じであることとしてもよい。
【0035】
このような構成にすることで、上記の基準線上では、エルボー点を移動させたときに第1灯具ユニットからの光の強度が変化しないため、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0036】
第1状態での所定領域の所定側の縁が第2状態での所定領域内に位置する場合、前記所定領域にはホットゾーンが含まれ、前記エルボー点とともに前記ホットゾーンが前記所定側に前記所定距離移動し、前記第2状態での前記第1灯具ユニットからの光の強度は、前記基準線から前記ホットゾーンに向かって徐々に高くなることとしてもよい。
【0037】
このような構成にすることで、エルボー点及びホットゾーンを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。
図2図1に示す第1灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図3図2に示す配光パターン形成部を概略的に示す正面図である。
図4図1に示す第2灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図5図4に示す光源部を概略的に示す正面図である。
図6図1に示す第3灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図7図6に示す配光パターン形成部を概略的に示す正面図である。
図8】第1実施形態における車両用前照灯を含むブロック図である。
図9】第1実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。
図10図9に示すロービームの配光パターンを形成する際に第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを示す図である。
図11】第2灯具ユニットから出射する光の特定の配光パターンを示す図である。
図12】ハイビームの配光パターンを示す図である。
図13】第1実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
図14】車両の操舵角に応じてロービームの配光パターンのエルボー点及びホットゾーンが移動された状態の一例を示す図である。
図15図14に示すロービームの配光パターンを形成する際に第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを示す図である。
図16図14に示すロービームの配光パターンを形成する際に第2実施形態の第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを図15と同様の方法で示す図である。
図17】第1の変形例に係るロービームの配光パターンを示す図である。
図18】第1の変形例に係る第2灯具ユニットから出射する光の特定の配光パターンを示す図である。
図19】第2の変形例に係る第2灯具ユニットから出射する光の特定の配光パターンを示す図である。
図20】第3の変形例に係る第1灯具ユニットを図2と同様の視点で示す図である。
図21】第4の変形例に係る第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを図16と同様の方法で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0040】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。図1に示すように車両100は、前方の左右方向のそれぞれに一対の車両用前照灯1を備える。車両100に備わる一対の車両用前照灯1は、互いに左右方向に対称な形状とされる。本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10と、第2灯具ユニット20と、第3灯具ユニット30とを備える。これら灯具ユニット10,20,30は、互いに横並びに並べられており、第1灯具ユニット10が車両100の最も中心側に配置され、第2灯具ユニット20が車両100の最も外側に配置され、第3灯具ユニット30が第1灯具ユニット10と第2灯具ユニット20との間に配置される。本実施形態では、以下に説明するように、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20はロービーム用の灯具とされ、第3灯具ユニット30はハイビーム用の灯具ユニットとされる。このため、車両用前照灯1は、制御部によって光を出射する灯具ユニットを切り替えることによって、出射する光をロービームとハイビームとに切り替え可能とされている。
【0041】
図2は、図1に示す第1灯具ユニット10を概略的に示す側面図である。図2に示すように、第1灯具ユニット10は、第1出射ユニット11と、筐体16とを主な構成として備え、ロービームの一部を出射する灯具ユニットとされる。なお、図2において、筐体16は鉛直断面にて示されている。
【0042】
筐体16は、ランプハウジング17、フロントカバー18及びバックカバー19を主な構成として備える。ランプハウジング17の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー18がランプハウジング17に固定されている。また、ランプハウジング17の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー19がランプハウジング17に固定されている。
【0043】
ランプハウジング17と、当該ランプハウジング17の前方の開口を塞ぐフロントカバー18と、当該ランプハウジング17の後方の開口を塞ぐバックカバー19とによって形成される空間は灯室10Rであり、この灯室10R内に第1出射ユニット11が収容されている。第1出射ユニット11は、配光パターン形成部12と、投影レンズ15とを主な構成として備える。
【0044】
図3は、図2に示す配光パターン形成部12を概略的に示す正面図である。図2図3に示すように、本実施形態の配光パターン形成部12は、光を出射する光出射部としての複数の発光素子13と、複数の発光素子13が実装される回路基板14とを有する。複数の発光素子13は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。複数の発光素子13は出射する光の光量を個別に変更可能とされている。本実施形態では、配光パターン形成部12は、左右方向に並ぶ96個の発光素子22aから成る発光素子群を32個有し、これら発光素子群が上下方向に並んでいる。また、これら発光素子13はマイクロLED(Light Emitting Diode)とされ、配光パターン形成部12は所謂マイクロLEDアレイである。なお、それぞれの発光素子群における発光素子13の数や、発光素子群の数は、特に限定されるものではない。
【0045】
このような配光パターン形成部12は、光を出射させる発光素子13を選択することで所定の配光パターンを形成することができる。また、配光パターン形成部12は、それぞれの発光素子13から出射する光の光量を調節することで所定の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。つまり、配光パターン形成部12は、複数の発光素子13から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。
【0046】
投影レンズ15は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ15は、配光パターン形成部12よりも前方に配置され、配光パターン形成部12から出射する光が入射し、この光の発散角が投影レンズ15で調節される。投影レンズ15は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、投影レンズ15の後方焦点は、配光パターン形成部12におけるいずれかの発光素子13の光の出射面上またはその近傍に位置している。このような投影レンズ15で発散角が調節された光がフロントカバー18を介して第1灯具ユニット10から車両100の前方へ向けて出射する。
【0047】
図4は、図1に示す第2灯具ユニット20を概略的に示す側面図である。図4に示すように、第2灯具ユニット20は、第2出射ユニット21と、筐体26とを主な構成として備え、ロービームの他の一部を出射する灯具ユニットとされる。なお、図4において、筐体26は鉛直断面にて示されている。筐体26は、第1灯具ユニット10の筐体16と同様の構成とされ、ランプハウジング27、フロントカバー28及びバックカバー29を主な構成として備え、筐体26によって形成される灯室20R内に第2出射ユニット21が収容されている。第2出射ユニット21は、光源部22と、シェード23と、投影レンズ25とを主な構成として備える。
【0048】
図5は、図4に示す光源部22を概略的に示す正面図である。なお、図5には、シェード23も記載されている。図4図5に示すように、本実施形態の光源部22は、光を出射する発光素子22aと、発光素子22aが実装される回路基板22bとを有する。本実施形態では、発光素子22aは、光を出射する出射面が左右方向に長尺な概ね長方形状のLEDとされ、前方に向かって光を出射する。
【0049】
シェード23は、遮光部23aと固定部23bとを有する。本実施形態では、遮光部23aと固定部23bは、板状部材を曲げ加工することで一体に成形されている。遮光部23aは、光源部22の発光素子22aより前方において左右方向に延在しており、上端部には固定部23bが接続されている。固定部23bは、遮光部23aの上端部から後方に向かって延在しており、固定部23bの遮光部23a側と反対側の端部が回路基板22bに固定される。遮光部23aは、発光素子22aの光軸より上方に位置しており、遮光部23aの下端部の左右方向における中央部には、下方に向かって概ね等脚台形状に突出する突起23cが設けられている。このようなシェード23の遮光部23aは、発光素子22aから出射する光の一部を遮る。
【0050】
投影レンズ25は、投影レンズ15と同様に、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ25は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、シェード23よりも前方に配置される。投影レンズ25の後方焦点は、発光素子22aにおける光の出射面上またはその近傍に位置している。上記のように、発光素子22aから出射する光の一部はシェード23の遮光部23aによって遮光され、発光素子22aから出射する光の他の一部が投影レンズ25に入射し、遮光部23aの形状に応じた特定の配光パターンの光が投影レンズ25から出射する。このように投影レンズ25から出射する特定の配光パターンを有する光がフロントカバー28を介して第2灯具ユニット20から車両100の前方へ向けて出射する。
【0051】
図6は、図1に示す第3灯具ユニット30を概略的に示す側面図である。図6に示すように、第3灯具ユニット30は、第3出射ユニット31と、筐体36とを主な構成として備え、ハイビームの一部を出射する灯具ユニットとされる。なお、図6において、筐体36は鉛直断面にて示されている。筐体36は、第1灯具ユニット10の筐体16と同様の構成とされ、ランプハウジング37、フロントカバー38及びバックカバー39を主な構成として備え、筐体36によって形成される灯室30R内に第3出射ユニット31が収容されている。第3出射ユニット31は、配光パターン形成部32と、投影レンズ35とを主な構成として備える。
【0052】
図7は、図6に示す配光パターン形成部32を概略的に示す正面図である。図6図7に示すように、本実施形態の配光パターン形成部32は、光を出射する複数の発光素子33a~33eと、複数の発光素子33a~33eが実装される回路基板34とを有する。また、これら発光素子33a~33eは、第1灯具ユニット10における発光素子13より大きく、光を出射する出射面が上下方向に長尺な概ね長方形状のLEDとされる。また、これら発光素子33a~33eは、左右方向に一列に並んで配置され、配光パターン形成部32は所謂LEDアレイであり、本実施形態では5個のLDEが配列されている。なお、発光素子の数は、特に限定されるものではなく、複数の発光素子はマトリックス状に配置されていてもよい。
【0053】
このよう配光パターン形成部32は、光を出射させる発光素子33a~33eを選択することで所定の配光パターンを形成することができる。また、配光パターン形成部32は、それぞれの発光素子33a~33eから出射する光の光量を調節することで所定の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。つまり、配光パターン形成部32は、複数の発光素子33a~33eから出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。
【0054】
投影レンズ35は、投影レンズ15と同様に、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ35は、配光パターン形成部32よりも前方に配置され、配光パターン形成部32から出射する光が入射し、この光の発散角が投影レンズ35で調節される。投影レンズ35は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、投影レンズ35の後方焦点は、配光パターン形成部32における発光素子33cの光の出射面上またはその近傍に位置している。このような投影レンズ35で発散角が調節された光がフロントカバー38を介して第2灯具ユニット20から車両100の前方へ向けて出射する。
【0055】
図8は、本実施形態における車両用前照灯1を含むブロック図である。図8に示すように、本実施形態では、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12、第2灯具ユニット20の光源部22、第3灯具ユニット30の配光パターン形成部32、ライトスイッチ51、ステアリングセンサ52、メモリME等が制御部COに電気的に接続される。この制御部COは、車両100の電子制御装置の一部とされてもよい。また、ライトスイッチ51及びステアリングセンサ52は、車両100の電子制御装置を介して制御部COに電気的に接続されてもよい。
【0056】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。そして、以下に説明するように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12、第2灯具ユニット20の光源部22、及び第3灯具ユニット30の配光パターン形成部32が制御部COにより制御される。
【0057】
ライトスイッチ51は、ロービームの出射、ハイビームの出射、ロービーム及びハイビームの非出射のいずれかを選択するスイッチである。例えば、ライトスイッチ51は、ロービームの出射が選択された場合にロービームの出射を示す信号を制御部COに出力し、ハイビームの出射が選択された場合にハイビームの出射を示す信号を制御部COに出力する。また、ライトスイッチ51は、ロービーム及びハイビームの非出射が選択された場合に制御部COに信号を出力しない。
【0058】
ステアリングセンサ52は、車両100のステアリングホイールの回転角度、つまり車両100の操舵角を検知するセンサであり、右の操舵角と左の操舵角とを異なる操舵角と識別しつつこれらの操舵角を検知する。ステアリングセンサ52は、車両100の直進時を基準とした操舵角に応じた信号を制御部COに出力する。
【0059】
メモリMEは、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。このメモリMEには、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12における複数の発光素子13のそれぞれから出射する光の光量に関する情報と、車両100の操舵角とが関連付けられたテーブルが格納される。複数の発光素子13のそれぞれから出射する光の光量に関する情報として、例えば、複数の発光素子13のそれぞれに供給される電流値が挙げられる。詳細については後述するが、本実施形態の車両用前照灯1は、出射するロービームにおけるエルボー点の左右方向の位置が車両100の操舵角に応じた位置となるように構成される。換言すれば、本実施形態の車両用前照灯1は、車両100の操舵角に応じたロービームを出射するように構成される。
【0060】
次に、車両用前照灯1から出射するロービームについて説明する。
【0061】
本実施形態では、上記のように、車両用前照灯1の第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20はロービーム用の灯具ユニットとされ、第1灯具ユニット10から出射する光と第2灯具ユニット20から出射する光とによってロービームの配光パターンが形成される。
【0062】
図9は、本実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。図9において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。本実施形態のロービームの配光パターンPLは、上縁に、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1と、傾斜カットオフラインとしてのカットオフラインCL2とともに、カットオフラインCL3,CL4,CL5を有する。水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1は、水平線Sより下方かつ鉛直線V上またはその近傍に位置するエルボー点EPから左右方向の一方側である右側に水平方向に延在する。傾斜カットオフラインとしてのカットオフラインCL2は、エルボー点EPから左右方向の他方側である左側に斜め上方に向かって延在し、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL3は、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。カットオフラインCL4は、カットオフラインCL1におけるエルボー点EP側と反対側の端から左右方向の一方側に斜め上方に向かって延在し、カットオフラインCL4におけるカットオフラインCL1側と反対側の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL5は、カットオフラインCL4におけるカットオフラインCL1側と反対側の端から、左右方向の一方側に水平方向に延在する。このカットオフラインCL5とカットオフラインCL3とは、概ね同じ高さに位置している。また、ロービームの配光パターンPLにおける光の強度が最も高い領域であるホットゾーンHZLは、エルボー点EPの近傍に位置している。ここで、配光パターンの外形は、例えば、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が所定の割合の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。本実施形態の配光パターンの外形は、当該配光パターンにおける光の最大強度値に対して光の強度が1.5%の値となる点の集まりによって形成される等強度線によって定義される。しかし、配光パターンの外形の定義は特に制限されるものではない。
【0063】
図10は、図9に示すロービームの配光パターンを形成する際に第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンおける光の強度分布とを示す図である。図10において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンP1が太線で示される。なお、図10には、ホットゾーンHZLの位置、及び第1灯具ユニット10が光を照射可能な領域AP1が点線で示されている。また、図10に示される光の強度分布は、ホットゾーンHZLを通り左右方向に延在する直線SL1上における分布であり、太線で示される。なお、直線SL1は、水平方向と平行である。本実施形態の所定の配光パターンP1は、上縁に、カットオフラインCL11,CL12,CL13を有する。カットオフラインCL11は、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL1に対応しており、上記のエルボー点EPから左右方向の一方側である右側に水平方向に延在する。カットオフラインCL12は、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL2に対応しており、エルボー点EPから左右方向の他方側である左側に斜め上方に向かって延在し、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL13は、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL3に対応しており、カットオフラインCL12におけるエルボー点EP側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。また、図10に示すように、所定の配光パターンP1における光の強度は、左右方向において、ホットゾーンHZLに近づくにつれて徐々に高くなっている。制御部COは、第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンP1の外形、位置、及び光の強度分布がこのようになるように、配光パターン形成部12におけるそれぞれの発光素子から出射する光の光量を調節する。
【0064】
図11は、第2灯具ユニット20から出射する光の特定の配光パターンを示す図である。図11において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される特定の配光パターンP2が太線で示される。なお、図11には、図10に示す第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1が点線で示されている。本実施形態の特定の配光パターンP2は、第1領域A1と、第2領域A2と、第3領域A3とを有する。第1領域A1は左右方向における一方側に位置する。第2領域A2は第1領域A1と離隔し左右方向における他方側に位置する。第3領域A3は左右方向において第1領域A1と第2領域A2との間に位置して第1領域A1及び第2領域A2に接続している。なお、図11には、第1領域A1と第3領域A3との境界、及び第2領域A2と第3領域A3との境界が二点鎖線で示されている。
【0065】
特定の配光パターンP2における上縁は、シェード23の遮光部23aの下端の形状に対応しており、カットオフラインCL21,CL22,CL23,CL24,CL25を有する。カットオフラインCL21は、第3領域A3の上縁であり、上記のエルボー点EPより下方において水平方向に延在する。カットオフラインCL21の一端は、左右方向においてエルボー点EPより一方側に位置し、カットオフラインCL21の他端は、左右方向においてエルボー点EPより他方側に位置する。
【0066】
カットオフラインCL22は、第2領域A2の上縁の一部であり、カットオフラインCL21の左右方向における他方側の端から他方側に斜め上方に向かって延在する。カットオフラインCL23は、第2領域A2の上縁の他の一部であり、カットオフラインCL22におけるカットオフラインCL21側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。このため、第2領域A2における上縁は、カットオフラインCL22,CL23であり、第3領域A3の上縁であるカットオフラインCL21は、これらカットオフラインCL22,CL23より下方に位置する。また、第2領域A2における第3領域A3側の上縁は、カットオフラインCL22であり、第3領域A3側に向かって下方に傾斜し第3領域A3における上縁に接続していると理解できる。
【0067】
カットオフラインCL24は、第1領域A1の上縁の一部であり、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL4に対応している。カットオフラインCL24は、カットオフラインCL21の左右方向における一方側の端から一方側に斜め上方に向かって延在する。カットオフラインCL24におけるカットオフラインCL21側は、所定の配光パターンP1内に位置している。カットオフラインCL25は、第1領域A1の上縁の他の一部であり、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL5に対応している。カットオフラインCL25は、カットオフラインCL24におけるカットオフラインCL21側と反対側の端から、左右方向の一方側に水平方向に延在する。このため、第1領域A1における上縁は、カットオフラインCL24,CL25であり、第3領域A3の上縁であるカットオフラインCL21は、これらカットオフラインCL24,CL25より下方に位置する。また、第1領域A1における第3領域A3側の上縁は、カットオフラインCL24であり、第3領域A3側に向かって下方に傾斜し第3領域A3における上縁に接続していると理解できる。
【0068】
本実施形態では、このような特定の配光パターンP2の一部と所定の配光パターンP1の一部とが互いに重なっている。具体的には、所定の配光パターンP1における左右方向の一方側が特定の配光パターンP2の第1領域A1の一部と重なっている。所定の配光パターンP1における左右方向の他方側が特定の配光パターンP2の第2領域A2の一部と重なっている。また、所定の配光パターンP1における左右方向の中央部の下方側が特定の配光パターンP2の第3領域A3の一部と重なっている。そして、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL12の全体は、所定の配光パターンP1内に位置している。また、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL22の全体は、所定の配光パターンP1内に位置している。また、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL23は、所定の配光パターンP1におけるCL13と概ね同じ高さに位置し、カットオフラインCL23のカットオフラインCL22側はCL13と重なっている。
【0069】
そして、第1灯具ユニット10から出射する上記の所定の配光パターンP1を有する光と、第2灯具ユニット20から出射する上記の特定の配光パターンP2を有する光とによって図9に示すロービームの配光パターンPLが形成される。また、図9に示すように、ロービームの配光パターンPLのうち、第1灯具ユニット10からの光を含む光によって形成される所定領域CAには、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが含まれる。なお、この所定領域CAは、所定の配光パターンP1と重なる領域である。また、ロービームの配光パターンPLのうち、左右方向においてこの所定領域CAより一方側の第1側方領域SA1及び他方側の第2側方領域SA2と、所定領域CAの下方かつ第1側方領域SA1及び第2側方領域SA2の間に位置する下方領域UAには、第2灯具ユニット20から出射する光のみが照射される。つまり、第1側方領域SA1と第2側方領域SA2とによって所定領域CAは左右方向に挟まれ、第1側方領域SA1、第2側方領域SA2、及び下方領域UAは、第2灯具ユニット20から出射する特定の配光パターンP2を有する光の他の一部によって形成される。なお、図9では、これら領域CA,SA1,SA2,UAの境界が点線で示されている。第1側方領域SA1は、第2灯具ユニット20から出射する光の特定の配光パターンP2における第1領域A1の一部であり、第2側方領域SA2は、特定の配光パターンP2における第2領域A2の一部である。また、下方領域UAは、特定の配光パターンP2における第1領域A1の他の一部、第2領域A2の他の一部、及び第3領域A3の一部から形成される。
【0070】
また、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL1は、第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1におけるカットオフラインCL11から形成され、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL2は、所定の配光パターンP1におけるカットオフラインCL12から形成される。
【0071】
また、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL3は、所定の配光パターンP1におけるカットオフラインCL13及び特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL23から形成される。このカットオフラインCL3は、第2側方領域SA2における上縁であり、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1より上方に位置している。
【0072】
また、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL4は、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL24から形成され、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL5は、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL25から形成される。カットオフラインCL5は、第1側方領域SA1における上縁の一部であり、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1より上方に位置している。
【0073】
次に、車両用前照灯1から出射するハイビームについて説明する。
【0074】
本実施形態では、上記のように、車両用前照灯1の第3灯具ユニット30はハイビーム用の灯具ユニットとされ、第1灯具ユニット10から出射する光と、第2灯具ユニット20から出射する光と、第3灯具ユニット30から出射する光とによってハイビームの配光パターンが形成される。
【0075】
図12は、ハイビームの配光パターンを示す図である。図12において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビームの配光パターンPHが太線で示される。本実施形態では、ハイビームの配光パターンPHにおける光の強度が最も高い領域であるホットゾーンHZHは、水平線Sと鉛直線Vとの交点上またはその近傍に位置している。なお、図12において、第3灯具ユニット30における複数の発光素子33a~33eから出射する光が照射される領域PHa~PHe、及び第1灯具ユニット10が光を照射可能な領域AP1も示されている。これら領域PHa~PHeは左右方向に並んでおり、領域PHaには発光素子33aから出射する光が照射され、領域PHbには発光素子33bから出射する光が照射され、領域PHcには発光素子33cから出射する光が照射され、領域PHdには発光素子33dから出射する光が照射され、領域PHeには発光素子33eから出射する光が照射される。つまり、第3灯具ユニット30は、これらPHa~PHeに照射される光を出射する。なお、これら領域PHa~PHeは隣接する他の領域と重なっていてもよい。また、上記のホットゾーンHZHは、領域PHc及び領域AP1と重なっている。
【0076】
本実施形態では、車両用前照灯1からハイビームを出射する際、第1灯具ユニット10における全ての発光素子13から光が出射され、第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンの外形は、領域AP1と同じとなる。この第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンにおける光の強度分布は、例えば、ホットゾーンHZHから離れるほど強度が低くなる分布とされ、このような分布となるように、制御部COによって第1灯具ユニット10におけるそれぞれの発光素子13から出射する光の光量が調節される。また、第2灯具ユニット20は、ロービームを出射する場合と同様に、上記の特定の配光パターンP2を有する光を出射する。このように第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30から光が出射されることで、車両用前照灯1からハイビームが出射される。
【0077】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。図13は、本実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。図13に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP11~ステップSP15を含んでいる。
【0078】
(ステップSP11)
まず、制御部COは、ライトスイッチ51からロービームの出射を示す信号が入力するか否かを判断する。この信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP12に進める。一方、この信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは制御フローをステップSP13に進める。このため、制御部COの判断とは、このように入力する信号に応じて場合分けをして次に進むステップを変更することと理解できる。
【0079】
(ステップSP12)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1からロービームが出射するとともに、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EPの位置が車両100の操舵角に応じた位置となるように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12及び第2灯具ユニット20の光源部22を制御する。本実施形態では、制御部COは、エルボー点EPとともにホットゾーンHZLの位置が車両100の操舵角に応じた位置となるように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12及び第2灯具ユニット20の光源部22を制御する。具体的には、制御部COは、ステアリングセンサ52から出力される車両100の操舵角に応じた信号に基づいて、メモリMEに格納されているテーブルを参照する。そして、制御部COは、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12における複数の発光素子13に図示しない電源部から供給される電力を調節して、それぞれの発光素子13から出射する光の光量を操舵角に応じた光量にする。このため、操舵角に応じた所定の配光パターンP1を有する光が第1灯具ユニット10から車両100の前方へ向けて出射する。また、制御部COは、第2灯具ユニット20の光源部22に図示しない電源部から所定の電力を供給させ、当該光源部22から光を出射させる。このため、図11に示す特定の配光パターンP2を有する光が第2灯具ユニット20から出射する。そして、第1灯具ユニット10からの光と第2灯具ユニット20からの光とによって車両100の操舵角に応じたロービームの配光パターンが形成され、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。
【0080】
本実施形態では、制御部COは、操舵角が基準角度以下である場合、図9に示すロービームの配光パターンPLが形成されるように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12における複数の発光素子13から出射する光の光量を調節する。この基準角度は、例えば、5°とされる。また、制御部COは、操舵角が基準角度を超える左への操舵角である場合、複数の発光素子13から出射する光の光量を調節し、第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1を、エルボー点EP及びホットゾーンHZLの位置が図9に示す位置から左側に操舵角に応じた所定距離ずれた位置となるような配光パターンする。また、制御部COは、操舵角が基準角度を超える右への操舵角である場合、複数の発光素子13から出射する光の光量を調節し、第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1を、エルボー点EP及びホットゾーンHZLの位置が図9に示す位置から右側に操舵角に応じた所定距離ずれた位置となるような配光パターンする。この操舵角に応じた所定距離は、操舵角が小さい場合には短く、操舵角が大きい場合には長く、本実施形態では、操舵角が大きくなるにつれて段階的に長くなる。つまり、メモリMEに格納されるテーブルは、所定距離が上記のようになるようなテーブルとされている。従って、制御部COは、このようなテーブルに基づいて複数の発光素子13から出射する光の光量を調節して所定の配光パターンP1を変化させ、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLを車両100の操舵角に応じて左右方向に移動させる。なお、所定距離は、操舵角が大きくなるにつれて徐々に長くなってもよい。
【0081】
図14は、車両100の操舵角に応じてロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動された状態の一例を示す図である。なお、図14には、図9に示すロービームに配光パターンのエルボー点EP及びホットゾーンHZLが破線で示されている。図14に示される状態は、車両の操舵角が基準角度を超える右への操舵角である状態である。このため、本実施形態では、ステップSP12において、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLの位置が右側に所定距離D移動した位置に変更される。エルボー点EP及びホットゾーンHZLの鉛直方向の位置は、移動の前後において概ね同じである。また、傾斜カットオフラインであるカットオフラインCL2も右側に移動する。カットオフラインCL2の水平方向に対する傾斜角度は、移動の前後において概ね同じである。
【0082】
図15は、図14に示すロービームの配光パターンPLを形成する際に第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを示す図である。図15において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンP12が太線で示される。また、図15には、図14に示すロービームの配光パターンPLにおけるホットゾーンHZLの位置が点線で示され、図10に示す所定の配光パターンP1及び所定の配光パターンP1の光の強度分布が二点鎖線で示されている。なお、この所定の配光パターンP1は、理解を容易にするため、下方に僅かにずらして示されている。また、図15に示される光の強度分布は、図10に示す光の強度分布と同様に、ホットゾーンHZLを通り左右方向に延在する直線SL1上における分布であり、太線で示される。なお、直線SL1は、水平方向と平行である。
【0083】
前述のように、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動する前である第1状態における所定領域CAは、図10に示す所定の配光パターンP1の外縁及び当該外縁より内側の領域である。図15では、この第1状態での所定領域CAに基づく固定領域61にハッチングが施されている。固定領域61は、第1状態での所定領域CAのうち所定側と反対側の縁から所定側に所定距離D離れた位置までの範囲と一致する領域である。図15に示す例では、エルボー点EP及びホットゾーンHZLは右側に所定距離D移動するため、左右方向の所定側は右側である。このため、固定領域61は、第1状態での所定領域CAのうち左側の縁E1から右側に所定距離D離れた位置までの範囲と一致する領域である。なお、第1状態での所定領域CAの左側の縁E1と固定領域61の左側の縁61E1とは同じである。また、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが所定距離D移動した後である第2状態での所定領域CAは、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動するように変化した図15に示す所定の配光パターンP12の外縁及び当該外縁より内側の領域である。そして、第2状態での所定領域CA内には、上記の固定領域61と、第1状態での所定領域CAの右側の縁E2とが位置している。本実施形態では、第1状態から第2状態に変わる際、所定領域CAの左側の縁E1、右側の縁E2、及び下側の縁E3の位置は、変化しない。このため、第2状態では、第1状態と同様に、所定の配光パターンP12の一部と特定の配光パターンP2の一部とは、互いに重なっている。
【0084】
固定領域61における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、固定領域61における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以下である。具体的には、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以下である。また、固定領域61の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以上である。例えば、この任意の点が直線SL1上に位置する場合、任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、直線SL1と縁61E1との交点61Pにおける第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度d1以上である。
【0085】
また、第1状態での所定領域CAの右側の縁E2と一致する基準線62上の任意の参照点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の参照点における第1状態での前記第1灯具ユニット10からの光の強度以上である。例えば、この任意の参照点が直線SL1と基準線62との交点62Pである場合、この交点62Pにおける第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この交点62Pにおける第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度d2以上である。また、基準線62上の任意の参照点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、第1状態での所定の配光パターンP1が右側に所定距離D移動した場合での、この任意の参照点における第1灯具ユニット10からの光の強度以下である。例えば、この任意の参照点が直線SL1と基準線62との交点62Pである場合、この交点62Pにおける第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、第1状態での所定の配光パターンP1が右側に所定距離D移動した場合での、この交点62P点における第1灯具ユニット10からの光の強度d3以下である。
【0086】
本実施形態では、固定領域61の左側の縁61E1上の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度と同じである。また、基準線62上の任意の参照点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の参照点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度と同じである。また、第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、固定領域61の左側の縁61E1からホットゾーンHZLに向かって徐々に高くなっている。しかし、この第1灯具ユニット10からの光の強度は、縁61E1からホットゾーンHZLに向かって段階的に高くなっていてもよい。また、第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、基準線62からホットゾーンHZLに向かって徐々に高くなっている。しかし、この第1灯具ユニット10からの光の強度は、基準線62からホットゾーンHZLに向かって段階的に高くなっていてもよい。また、交点61Pにおける第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度d1は、交点62Pにおける第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度d2より高いが、特に制限されるものではない。
【0087】
制御部COは、第2状態での所定の配光パターンP12の外形、位置、及び光の強度分布が上記のようになるように、配光パターン形成部12の複数の発光素子13から出射する光の光量を調節する。
【0088】
(ステップSP13)
本ステップでは、制御部COは、ライトスイッチ51からハイビームの出射を示す信号が入力するか否かを判断する。この信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP14に進める。一方、この信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは制御フローをステップSP15に進める。
【0089】
(ステップSP14)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1からハイビームが出射するように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12、第2灯具ユニット20の光源部22、及び第3灯具ユニット30の配光パターン形成部32を制御する。具体的には、制御部COは、第2灯具ユニット20の光源部22から光を出射させ、第3灯具ユニットの配光パターン形成部32における複数の発光素子33a~33eから光を出射させる。また、制御部COは、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12における複数の発光素子13のそれぞれから出射する光の光量をハイビームに応じた光の光量にする。そして、第1灯具ユニット10からの光と第2灯具ユニット20からの光と第3灯具ユニット30からの光とによってハイビームの配光パターンが形成され、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。
【0090】
(ステップSP15)
本ステップでは、ライトスイッチ51から制御部COに信号は入力されていない。このため、ライトスイッチ51においてロービーム及びハイビームの非出射が選択された状態である。制御部COは、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30からの光が非出射となるように、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12、第2灯具ユニット20の光源部22、及び第3灯具ユニット30の配光パターン形成部32を制御する。具体的には、制御部COは、第1灯具ユニット10の配光パターン形成部12における複数の発光素子13、第2灯具ユニット20の光源部22、及び第3灯具ユニット30の配光パターン形成部32における複数の発光素子33a~33eからの光を非出射とし、制御フローをステップSP11に戻す。
【0091】
このように、本実施形態の車両用前照灯1では、車両100の操舵角に応じて、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLが左右方向に移動する。なお、制御部COの制御フローは特に限定されるものではない。また、車両用前照灯1は、車両100の操舵角に応じてハイビームの配光パターンPHにおけるホットゾーンHZHを左右方向に移動させてもよい。また、車両用前照灯1は、車両100の操舵角に応じて、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させなくてもよく、車両100の操舵角に応じてハイビームの配光パターンPHにおけるホットゾーンHZHを移動させなくてもよい。
【0092】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10と、第2灯具ユニット20と、を備える。第1灯具ユニット10は、出射する光の光量を個別に変更可能な光出射部としての複数の発光素子13がマトリックス状に配置されて複数の発光素子13から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成する配光パターン形成部12を有する。第2灯具ユニット20は、特定の配光パターンP2を有する光を出射する。また、第1灯具ユニット10から出射する光と第2灯具ユニット20から出射する光とによって、ロービームの配光パターンPLが形成される。このロービームの配光パターンPLは、エルボー点EPから左右方向の一方側に水平方向に延在する水平カットオフラインであるカットオフラインCL1、及びエルボー点EPから左右方向の他方側に斜め上方に向かって延在する傾斜カットオフラインであるカットオフラインCL2を有する。また、ロービームの配光パターンPLのうち、第1灯具ユニット10からの光を含む光によって形成される所定領域CAにはエルボー点EPが含まれる。このため、本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10におけるそれぞれの発光素子13から出射する光の光量を調節することで、この所定領域CAにおける光の強度分布を細かく調節できる。また、ロービームの配光パターンPLのうち、所定領域CAを左右方向に挟む第1側方領域SA1及び第2側方領域SA2は第2灯具ユニット20から出射する光によって形成される。ここで、これら第1側方領域SA1及び第2側方領域SA2は、上記の所定領域CAと比べて光の強度の変化率が小さい。これら第1側方領域SA1及び第2側方領域SA2における光の強度分布は、所定領域CAと比べて細かい調節が要求されない。このため、第2灯具ユニット20は、第1灯具ユニット10と比べて、出射する特定の配光パターンP2における光の強度分布を細かく調節できなくてもよい。本実施形態では、第2灯具ユニット20は、光を出射する光源部22と、シェード23とを有し、光源部22から出射する光の一部をシェード23によって遮ることで特定の配光パターンP2を形成する。このような構成の第2灯具ユニット20は、配光パターン形成部12を有する第1灯具ユニット10と比べて簡易な構成である。したがって、本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10から出射する光のみによってロービームの配光パターンPLを形成する場合と比べて、製造コストを低減し得る。
【0093】
本実施形態の車両用前照灯1では、所定の配光パターンP1の一部と特定の配光パターンP2の一部とは、互いに重なる。このため、ロービームの配光パターンPLに意図せず暗くなる領域ができることを抑制し得る。
【0094】
本実施形態の車両用前照灯1では、第1側方領域SA1における上縁であるカットオフラインCL4,CL5は、水平カットオフラインであるカットオフラインCL1より上方に位置する。このため、第1側方領域SA1における上縁がカットオフラインCL1より下方に位置する場合と比べて、左右方向における一方側の視認性を向上し得る。なお、左右方向における一方側の視認性を向上し得る観点では、第1側方領域SA1における上縁の少なくとも一部がカットオフラインCL1より上方に位置していればよい。
【0095】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2側方領域SA2における上縁であるカットオフラインCL3は、水平カットオフラインであるカットオフラインCL1より上方に位置する。このため、第1側方領域SA1及び第2側方領域SA2におけるそれぞれの上縁がカットオフラインCL1より下方に位置する場合と比べて、右側方及び左側方の視認性を向上し得る。なお、左右方向における他方側の視認性を向上し得る観点では、第2側方領域SA2における上縁の少なくとも一部がカットオフラインCL1より上方に位置していればよい。
【0096】
本実施形態の車両用前照灯1は、制御部COを更に備え、所定領域CAにはエルボー点及びホットゾーンHZLが含まれる。制御部COは、複数の発光素子13から出射する光の光量を調節し、所定の配光パターンP1をエルボー点EP及びホットゾーンHZLが左右方向の所定側に所定距離D移動する配光パターンに変化させる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、車両100の進行方向の変化に応じて、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを左右方向に移動させ得、進行方向の視認性を向上させ得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、例えば、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが右側に所定距離D移動する場合、固定領域61は、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動する前である第1状態での所定領域CAのうち左側の縁E1から右側に所定距離D離れた位置までの範囲と一致する領域である。そして、この固定領域61内の任意の点におけるエルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動した後である第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、当該任意の点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以下、かつ当該任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以上である。例えば、所定の配光パターンP1を左右方向に移動させることでエルボー点EP及びホットゾーンHZLを左右方向に移動させる場合、この固定領域61には、第1灯具ユニット10からの光が照射されなくなる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、固定領域61における光の強度の変化量を小さくでき、運転者が固定領域61に違和感を覚えることを抑制し得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合と比べて、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。なお、所定領域CAにおける光の強度分布を細かく調節できるようにするとともに製造コストを低減する観点では、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、特に制限されない。例えば、エルボー点EP及びホットゾーンHZLが右側に所定距離D移動する場合、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、当該任意の点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度を超えていてもよい。また、この光の強度は、この任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度未満であってもよい。
【0097】
本実施形態の車両用前照灯1では、第1状態での所定領域CAの右側の縁E2は、第2状態での所定領域CA内に位置する。また、この縁E2と一致する基準線62上の任意の参照点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の参照点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以上、かつ第1状態での所定の配光パターンP1が右側に所定距離D移動した場合での、この任意の参照点における第1灯具ユニット10からの光の強度以下である。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、所定の配光パターンP1を左右方向に移動させることでエルボー点EP及びホットゾーンHZLを左右方向に移動させる場合と比べて、基準線62上での光の強度の変化量が大きくならないようにでき、運転者がこの基準線62上での光量の変化に違和感を覚えやすくなることを抑制できる。
【0098】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、固定領域61の左側の縁61E1からホットゾーンHZLに向かって、徐々に高くなる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0099】
本実施形態の車両用前照灯1では、基準線62上の任意の参照点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、当該任意の参照点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度と同じである。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、基準線62上では、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに第1灯具ユニット10からの光の強度が変化しないため、運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0100】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、基準線62からホットゾーンHZLに向かって徐々に高くなる。このため、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0101】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図16を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0102】
図16は、図14に示すロービームの配光パターンを形成する際に本実施形態の第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを図15と同様の方法で示す図である。図16に示す所定の配光パターンP12は、車両100の操舵角に応じてエルボー点EP及びホットゾーンHZLが移動されたロービームの配光パターンPLを形成する際に第1灯具ユニット10から出射する光の所定の配光パターンである。そして、本実施形態では、所定の配光パターンP12における光の強度分布が第1実施形態における所定の配光パターンP12における光の強度分布と異なる。このため、本実施形態のロービームの配光パターンPLにおける光の強度分布は、第1実施形態のロービームの配光パターンPLにおける光の強度分布と異なる。なお、本実施形態の所定の配光パターンP12における外形、ロービームの配光パターンPLのエルボー点EP及びホットゾーンHZLの位置は、第1実施形態と同じである。
【0103】
図16に示すように、本実施形態では、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度と同じである。例えば、この任意の点が直線SL1上に位置する場合、直線SL1と縁61E1との交点61Pにおける第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度d1と同じである。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1実施形態と同様に、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1によれば、固定領域61における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は左右方向において一定となり、制御部COによる複数の発光素子13から出射する光の光量の調節を簡易にし得る。
【0104】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態での前記第1灯具ユニット10からの光の強度は、固定領域61の右側の縁61E2からホットゾーンHZLに向かって、徐々に高くなる。このため、エルボー点EP及びホットゾーンHZLを移動させたときに運転者が違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0105】
また、本実施形態では、固定領域61の右側の縁61E2から基準線62までの範囲における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度分布は、第1状態での所定の配光パターンP1が右側に所定距離D移動した場合における当該範囲の強度分布と同じである。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、当該範囲における第2状態での光の強度分布が、第1状態の所定の配光パターンP1が右側に所定距離D移動した場合における当該範囲の光の強度分布と異なる場合と比べて、制御部COによる複数の発光素子13から出射する光の光量の調節を簡易にし得る。
【0106】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
例えば、上記実施形態では、上縁に、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1と、傾斜カットオフラインとしてのCL2と、カットオフラインCL3,CL4,CL5を有するロービームの配光パターンPLを例に説明した。しかし、ロービームの配光パターンPLは、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1と、傾斜カットオフラインとしてのCL2とを有していればよく、例えば図17に示される配光パターンであってもよい。
【0108】
図17は、第1の変形例に係るロービームの配光パターンを示す図である。図17において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。本変形例におけるロービームの配光パターンPLの上縁は、上記実施形態におけるロービームの配光パターンPLの上縁と異なる。本変形例におけるロービームの配光パターンPLは、上縁に、水平カットオフラインとしてのカットオフラインCL1aと、傾斜カットオフラインとしてのCL2aと、カットオフラインCL3a,CL4a,CL5aを有する。なお、カットオフラインCL1a,CL2aは、上記実施形態におけるカットオフラインCL1,CL2と同じであるため、カットオフラインCL1a,CL2aについての説明は省略する。カットオフラインCL3aは、カットオフラインCL2aにおけるエルボー点EP側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。カットオフラインCL4aは、カットオフラインCL3aにおけるエルボー点EP側と反対側の端から下方に向かって延在する。カットオフラインCL4aのカットオフラインCL3a側と反対側の端は、水平線Sより下方に位置する。カットオフラインCL5aは、カットオフラインCL4aにおけるカットオフラインCL3a側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。このカットオフラインCL5aとカットオフラインCL1aとは、概ね同じ高さに位置している。
【0109】
このロービームの配光パターンPLにおける所定領域CAの上縁は、カットオフラインCL1aの一部、カットオフラインCL2a、及びカットオフラインCL3aである。また、第1側方領域SA1の上縁は、カットオフラインCL1aの他の一部であり、第2側方領域SA2の上縁は、カットオフラインCL5aである。
【0110】
このようなロービームの配光パターンPLは、例えば、第2灯具ユニット20から出射する光の配光パターンを図18に示される特定の配光パターンにすることで形成される。図18は、第1の変形例に係る第2灯具ユニット20から出射する光の特定の配光パターンを示す図である。図18において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される特定の配光パターンP2が太線で示される。なお、図18には、第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1が点線で示されており、この所定の配光パターンP1は、上記実施形態における所定の配光パターンP1と同じである。
【0111】
本変形例における特定の配光パターンP2の上縁は、上記実施形態における特定の配光パターンP2の上縁と異なり、直線状に水平方向に延在するカットオフラインCL21aから成る。このような特定の配光パターンP2の一部と所定の配光パターンP1の一部とが互いに重なっている。具体的には、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL21aは、左右方向に所定の配光パターンP1を横切っており、所定の配光パターンP1におけるカットオフラインCL11と重なっている。そして、所定の配光パターンP1におけるカットオフラインCL11より下方側の領域が特定の配光パターンP2の一部と重なっている。そして、所定の配光パターンP1を有する光と特定の配光パターンP2を有する光とによって図17に示すロービームの配光パターンPLが形成される。本変形例における所定領域CAには、上記実施形態と同様に、エルボー点EPとともにホットゾーンHZLが含まれる。この所定領域CAは、上述のように第1灯具ユニット10から出射する光を含む光によって形成される領域であり、所定領域CAの外形と所定の配光パターンP1の外形とが一致する。また、特定の配光パターンP2におけるカットオフラインCL21aは、ロービームの配光パターンPLにおけるカットオフラインCL1a,CL5aを形成している。本変形例における特定の配光パターンP2は、例えば、上記実施形態のシェード23の遮光部23aにおける突起23cを非形成とすることで形成できる。
【0112】
本変形例では、上記のように、所定の配光パターンP1の一部と特定の配光パターンP2の一部とが互いに重なり、特定の配光パターンP2における上縁であるカットオフラインCL21aは、直線状に水平方向に延在して所定の配光パターンP1を横切っている。このため、所定の配光パターンP1の一部と特定の配光パターンP2の一部とが重なる領域における上縁は水平方向に延在する直線状となる。したがって、この重なる領域における上縁が曲線状である場合と比べて、例えば、配光パターン形成部12の光出射部としての発光素子13から出射する光の光量の調節が複雑になることを抑制し得る。なお、光量の調節が複雑になることを抑制する観点では、所定の配光パターンP1の一部と特定の配光パターンP2の一部とが互いに重なり、特定の配光パターンP2における上縁の一部は、直線状に水平方向に延在して所定の配光パターンP1を横切っていればよい。
【0113】
また、上記実施形態では、第1領域A1、第2領域A2、及び第3領域を有する特定の配光パターンP2を例に説明した。しかし、特定の配光パターンは特に限定されるものではない。第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンを有する光と第2灯具ユニット20から特定の配光パターンを有する光とによって、水平カットオフラインと傾斜カットオフラインとを有するロービームの配光パターンを形成できればよい。例えば、特定の配光パターンは、図19に示される配光パターンであってもよい。
【0114】
図19は、第2の変形例に係る第2灯具ユニット20から出射する光の特定の配光パターンを示す図である。図19において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される特定の配光パターンP2が太線で示される。なお、図19には、本変形例における第1灯具ユニット10から出射する所定の配光パターンP1が点線で示されている。この所定の配光パターンP1は、下縁がより下方に位置する点において、上記実施形態における所定の配光パターンP1と主に異なる。このため、本変形例の所定の配光パターンP1は、上記実施形態における所定の配光パターンP1と同様に、上縁にカットオフラインCL11,CL12,CL13を有する。このカットオフラインCL11によってロービームの配光パターンにおける水平カットオフラインが形成され、カットオフラインCL12によってロービームの配光パターンにおける傾斜カットオフラインが形成される。
【0115】
本変形例における特定の配光パターンP2は、左右方向における一方側に位置する第1領域A1と、左右方向における他方側に位置して第1領域A1と離隔する第2領域A2とから成る。第1領域A1の上縁は、直線状に水平方向に延在するカットオフラインCL21aから成り、第2領域A2の上縁は、直線状に水平方向に延在するカットオフラインCL22aから成る。カットオフラインCL21a及びカットオフラインCL22aは、所定の配光パターンP1のカットオフラインCL11と概ね同じ高さに位置している。このような特定の配光パターンP2の一部と所定の配光パターンP1の一部とが互いに重なっている。具体的には、特定の配光パターンP2の第1領域A1における他方側と所定の配光パターンP1の一方側とが重なり、特定の配光パターンP2の第2領域A2における一方側と所定の配光パターンP1の他方側とが重なる。そして、所定の配光パターンP1を有する光と特定の配光パターンP2を有する光とによって、図17に示すロービームの配光パターンPLと同様に、水平カットオフラインと傾斜カットオフラインとを有するロービームの配光パターンが形成される。また、本変形例における所定領域には、上記実施形態と同様に、エルボー点EPとともにホットゾーンHZLが含まれる。この所定領域CAは、上述のように第1灯具ユニット10から出射する光が照射される領域であり、所定領域CAの外形と所定の配光パターンP1の外形とが一致する。また、特定の配光パターンP2における第1領域A1の一部は、ロービームの配光パターンにおける第1側方領域となり、特定の配光パターンP2における第2領域A2の一部は、ロービームの配光パターンにおける第2側方領域となる。本変形例における特定の配光パターンP2は、例えば、上記実施形態のシェード23の遮光部23aの突起23cを、下方に向かって直線状に長尺な長方形状に突出し正面視において発光素子22aを横切る突起とすることで形成できる。
【0116】
また、上記実施形態では、第1灯具ユニット10から出射する光と第2灯具ユニット20から出射する光の一部とによって形成される所定領域CAを例に説明した。しかし、所定領域CAは、第1灯具ユニット10から出射する光を含む光によって形成され、当該所定領域CAにはエルボー点EPが含まれていればよく、第1灯具ユニット10から出射する光のみによって形成されてもよい。この場合、上記実施形態において、所定の配光パターンP1の外縁の一部と特定の配光パターンP2の外縁の一部とが接するようにし、所定の配光パターンP1と特定の配光パターンP2とが互いに重ならない。なお、ロービームの配光パターンPLに意図せず暗くなる領域ができることを抑制する観点では、所定の配光パターンの少なくとも一部と特定の配光パターンの一部とが互いに重なっていることが好ましい。例えば、上記実施形態において、特定の配光パターンP2は、当該外形がロービームの配光パターンPLの外形と一致していてもよく、この場合、所定の配光パターンP1の全体と特定の配光パターンP2の一部とが互いに重なる。
【0117】
また、上記実施形態では、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の発光素子13がマトリックス状に配置されて複数の発光素子13から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成する配光パターン形成部12を有する第1灯具ユニット10を例に説明した。しかし、第1灯具ユニット10は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の光出射部がマトリックス状に配置されて複数の光出射部から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成する配光パターン形成部を有していればよく、例えば、図20に示すような構成であってもよい。
【0118】
図20は、第3の変形例に係る第1灯具ユニットを図2と同様の視点で示す図である。図20に示すように、本変形例の第1灯具ユニット10は、第1出射ユニット11が配光パターン形成部12に替わって、光源41と、リフレクタ42と、反射装置43と、光吸収板45とを主な構成として備える点において、上記実施形態の第1灯具ユニット10と主に異なる。
【0119】
光源41は、光を出射する発光素子である。本変形例では、光源41は、前方に向かって光を出射するように配置される。光源41として、例えばLEDが挙げられる。
【0120】
リフレクタ42は、光源41から出射する光を反射面42rによって反射して当該光を後述する反射装置43の反射制御面に照射するように構成される。本変形例では、リフレクタ42は、曲面状の板状部材とされ、前方側から光源41に被さるように配置される。リフレクタ42における光源41側の面が反射面42rとされる。この反射面42rは光源41側と反対側に凹状となるように湾曲し、例えば、回転楕円曲面を基調として光源41から出射する光を集光して反射制御面に照射するように構成される。
【0121】
本変形例の反射装置43は、所謂DMD(Digital Mirror Device)であり、入射する光を反射する反射制御面43rを有し、この反射制御面43rによって反射する光によって所定の配光パターンを形成できるように構成される。反射装置43は、光源41より上方かつリフレクタ42より後方において反射制御面43rが前方側を向くように配置される。この反射制御面43rに光源41から出射してリフレクタ42で反射した光が照射される。反射制御面43rは、マトリックス状に配列される複数の反射素子の反射面によって構成されており、これら反射素子は、基板に個別に傾倒可能に支持される。この複数の反射素子は、リフレクタ42からの光が投影レンズ15に向かうように反射される第1傾倒状態と、リフレクタ42からの光が後述する光吸収板45に向かうように反射される第2傾倒状態とにそれぞれ個別に切り替え可能とされている。このような反射装置43は、反射素子の傾倒状態を制御することによって、反射制御面43rから投影レンズ15に向かう光によって所定の配光パターンを形成できる。また、これらの反射素子の傾倒状態を経時的に制御することによって、所定の配光パターンの光の強度分布を所望の強度分布にできる。つまり、この反射装置43の複数の反射素子は、投影レンズ15に向かう方向へ出射する光の光量を個別に変更可能でマトリックス状に配置されており、この反射装置43は、複数の反射素子の反射面から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。
【0122】
光吸収板45は、光吸収性を有する板状部材であり、入射する光の多くを熱に変換するように構成される。本変形例では、光吸収板45は、反射装置43よりも前方かつ上方に配置され、反射制御面43rから光吸収板45に向かう光が光吸収板45に入射し、この光の多くが熱に変換される。光吸収板45として、例えばアルミニウム等の金属から構成されて表面に黒アルマイト加工等が施される板状部材が挙げられる。
【0123】
第1灯具ユニット10がこのような構成であっても、上記実施形態と同様に、ロービームの配光パターンPLにおけるエルボー点EPが含まれる所定領域CAにおける光の強度分布を細かく調節し得るとともに製造コストを低減し得る。なお、説明は省略するが、配光パターン形成部は、例えば、入射する光を回折することで所定の配光パターンの光を出射するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)や回折格子であってもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、光を出射する光源部22と、光源部22から出射する光の一部を遮るシェード23とを有する第2灯具ユニット20を例に説明した。しかし、第2灯具ユニット20は、特定の配光パターンを有する光を出射できればよく、第2灯具ユニット20の構成は特に限定されるものではない。第2灯具ユニット20は、例えば、パラボラ型の灯具とされてもよい。
【0125】
また、上記実施形態では、第3灯具ユニット30を備える車両用前照灯1を例に説明した。しかし、車両用前照灯1は、第3灯具ユニット30を備えなくてもよい。また、第3灯具ユニット30の構成は特に限定されるものではない。第3灯具ユニット30は、例えば、パラボラ型の灯具ユニットや直射レンズ型の灯具ユニットとされてもよく、出射する光の配光パターンを変化できない構成であってもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、それぞれ筐体16,26,36を備える灯具ユニット10,20,30を例に説明した。しかし、これら灯具ユニット10,20,30は1つの筐体を共有し、1つの筐体における灯室内にそれぞれの出射ユニット11,21,31が収容されてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、第1領域A1,第2領域A2,及び第3領域A3を有する特定の配光パターンP2を例に説明した。しかし、特定の配光パターンP2は、少なくとも一部がロービームの配光パターンPLにおける第1側方領域SA1となる第1領域と、少なくとも一部がロービームの配光パターンPLにおける第2側方領域となる第2領域と、を有していればよい。また、上記実施形態では、一方側が右側とされ他方側が左側とされたが、車両の右側通行が運用されている国や地域では、一方側が左側とされ他方側が右側とされる。
【0128】
また、上記実施形態では、第1状態から第2状態に変わる際、所定領域CAの左側の縁E1、右側の縁E2、及び下側の縁E3の位置は、変化していなかった。しかし、固定領域61が第2状態での所定領域内CAに位置していればよい。このため、例えば、第1状態から第2状態に変わる際に、左側の縁E1、右側の縁E2、及び下側の縁E3の位置は、変化してもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、第1状態から第2状態に変わる際、エルボー点EP及びホットゾーンHZLの位置が左右方向の所定側に所定距離D移動していた。しかし、進行方向が変化する場合に当該進行方向の視認性を向上させる観点では、エルボー点EPが左右方向の所定側に所定距離D移動すればよい。例えば、ホットゾーンHZLの移動距離がエルボー点EPの移動距離より小さくてもよい。また、図21に示す変形例のように、ホットゾーンHZLが移動せずにエルボー点EPが移動してもよい。つまり、制御部COは、複数の発光素子13から出射する光の光量を調節し、所定の配光パターンP1をエルボー点EPが所定側に所定距離移動しホットゾーンHZLが移動しない配光パターンに変化させてもよい。図21は、第4の変形例に係る第1灯具ユニットから出射する光の所定の配光パターンと、その配光パターンにおける光の強度分布とを図16と同様の方法で示す図である。なお、第2実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0130】
本変形例では、上記のように、車両100の操舵角に応じてホットゾーンHZLが移動しない。このため、図21に示すように、本変形例での所定の配光パターンP12における光の強度分布は、第2実施形態での所定の配光パターンP12における光の強度分布と異なる。なお、本変形例の所定の配光パターンP12における外形、エルボー点EPの位置は、第2実施形態と同じである。また、本変形例では、所定の配光パターンP12のうち、所定の配光パターンP1と重なるとともにホットゾーンHZLより右側の領域における光の強度分布は、エルボー点EPが移動する前の第1状態での光の強度分布と概ね同じである。このため、所定の配光パターンP12と重なる領域のうち上記領域に光を照射する発光素子13から出射する光の光量は、車両100の操舵角に応じて変化していない。
【0131】
また、本変形例では、第2実施形態と同様に、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度と同じである。このため、本変形例の車両用前照灯1によれば、第2実施形態と同様に、エルボー点を移動させたときに運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。なお、運転者が違和感を覚えることを抑制する観点では、第1及び第2実施形態と同様に、エルボー点EPとともにホットゾーンHZLを所定側に所定距離D移動させることが好ましい。
【0132】
また、本変形例の車両用前照灯1によれば、第2実施形態と同様に、固定領域61における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は左右方向において一定となり、制御部COによる複数の発光素子13から出射する光の光量の調節を簡易にし得る。なお、運転者が違和感を覚えることを抑制する観点では、固定領域61内の任意の点における第2状態での第1灯具ユニット10からの光の強度は、この任意の点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以下、かつ、この任意の点を通り左右方向に延在する直線と固定領域61の左側の縁61E1との交点における第1状態での第1灯具ユニット10からの光の強度以上であればよい。
【0133】
本発明によれば、ロービームの配光パターンにおけるエルボー点を含む所定領域における光の強度分布を細かく調節し得るとともに製造コストを低減し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯などの分野において利用可能である。
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