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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】誘電体被膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/42 20060101AFI20250220BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20250220BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20250220BHJP
【FI】
C08G77/42
C08L83/04
C08K3/22
C08K3/36
C08K5/541
C08K9/02
H10K30/50
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022556051
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2021052174
(87)【国際公開番号】W WO2021186341
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/052462
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ル・クラス,セバスチャン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-279178(JP,A)
【文献】特開2009-084454(JP,A)
【文献】特開2012-229432(JP,A)
【文献】特開2018-193455(JP,A)
【文献】特開2008-189765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
H10K 30/00- 30/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材上に誘電体層を生成するためのゾル組成物であって、以下:
- 前記ゾル組成物の1525重量%の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
- 前記ゾル組成物の2030重量%の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
- 前記ゾル組成物の1430重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
- 前記ゾル組成物の5~15重量%の、前記前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
- 前記ゾル組成物の0.20.8重量%の酸性触媒、
を含み、
残余は水である、ゾル組成物。
【請求項2】
前記トリアルコキシシランが、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン及びプロピルトリアルコキシシランの中から選択される、請求項1に記載のゾル組成物。
【請求項3】
前記前駆体が、少なくとも1種のテトラアルコキシシラン及び少なくとも1種のトリアルコキシシランの混合物である、請求項1又は2に記載のゾル組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、アルコール、ケトン及びそれらの混合物の中から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のゾル組成物。
【請求項5】
前記二酸化チタン粒子が、TiO粒子の2~6重量%のアルミナにより被覆されている、請求項1~のいずれか一項に記載のゾル組成物。
【請求項6】
その表面の少なくとも一つの少なくとも一部上が、以下を含む少なくとも10μmの誘電体層で被覆された金属基材:
- 前記誘電体層の20~70重量%の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
- 前記誘電体層の20~70重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
- 前記誘電体層の5~10.5重量%の、シロキサン結合の三次元ネットワーク、
- 前記誘電体層の0.1~2%の酸性触媒。
【請求項7】
以下の工程を含む、ゾル組成物を製造する方法:
- 以下を供給する工程:
1025重量部の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
2030重量部の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
3555重量部のシリカの水分散液であって、水分散液の4055重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子を含む水分散液、
o 5~15重量部の、前記前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
0.20.8重量部の酸性触媒、
- 前記成分を混合する工程。
【請求項8】
以下の工程を含む、金属基材上に誘電体層を製造するゾル-ゲル法:
- (i) 前記金属基材及び以下を含むゾル組成物を供給する工程:
o 前記ゾル組成物の1525重量%の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
o 前記ゾル組成物の2030重量%の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
o 前記ゾル組成物の1430重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
o 前記ゾル組成物の5~15重量%の、前記前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
o 前記ゾル組成物の0.20.8重量%の酸性触媒、
残余は水である、
- (ii) 前記金属基材の少なくとも1つの表面上に前記ゾル組成物を堆積させる工程、
- (iii) 前記溶媒を蒸発させて誘電体層を形成する工程。
【請求項9】
少なくとも20μmのゾル組成物を堆積させる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)が、前記金属基材のピーク金属温度が120~200℃の間に含まれ、乾燥時間が30秒~4分の間に含まれる乾燥工程から構成される、請求項又はに記載の方法。
【請求項11】
300~600℃の間に含まれる前記金属基材のピーク金属温度で、30秒~4分間前記誘電体層をアニーリングする工程(iv)をさらに含む、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下を含む、太陽電池を製造する方法:
- (i) その表面の少なくとも1つの少なくとも一部上が、以下を含む少なくとも10μmの誘電体層で被覆された金属基材供給すること:
o 前記誘電体層の20~70重量%の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
o 前記誘電体層の20~70重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
o 前記誘電体層の5~10.5重量%の、シロキサン結合の三次元ネットワーク、
o 前記誘電体層の0.1~2%の酸性触媒、
- (ii) モリブデンベースの背面電極を前記誘電体層上に堆積させること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に金属基材上で誘電体被膜を製造するためのゾル組成物に関する。また、本発明は、該誘電体被膜、電子デバイス、光電子デバイス、特に太陽電池を製造するためのその使用に関する。本発明はまた、その方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、通常、基材、背面電極、p-n接合を含む吸収体層及び前面電極を有する数層から構成される。
【0003】
基材が金属である場合、太陽電池を導電性基材から絶縁するために、基材に誘電体層を被覆しなければならないことが多い。この誘電体層はアークを発生させずに250Vに耐性がなければならない。また、誘電体層は、層間剥離することなく、特性も変化させずに、太陽電池の製造中に行われる熱サイクル、典型的にはCIGS層を形成するための550℃でのアニーリングに耐性がなければならない。
【0004】
さらに、誘電体層上に適用される層は非常に薄い(1ミクロン程度)ので、誘電体層が非常に滑らかである場合にのみ、それらは連続層となることができる。その結果、誘電体層の粗さ(Rz)は1μmより著しく低くなければならない。
【0005】
従来の要件を満たし、適切な粗さを有する現在の解決策は、誘電体層のひび割れにつながる歪んだネットワークを有している。内部応力を減らすことは、粗さを損なう程度まで行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、粗さ、内部応力及び熱安定性の間の良好な妥協点を有する誘電体被膜が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の第1の主題は、以下を含む、金属基材上に誘電体層を生成するためのゾル組成物からなる。
- ゾル組成物の10~30重量%の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
- ゾル組成物の10~40重量%の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
- ゾル組成物の4.5~36重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
- ゾル組成物の5~15重量%の、該前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
- ゾル組成物の0.1~2重量%の酸性触媒、
残余は水である。
【0008】
本発明によるゾル組成物は、以下を含み得る。
- ゾル組成物の10~30重量%の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
- ゾル組成物の10~40重量%の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
- ゾル組成物の30~60重量%のシリカの水分散液であって、水分散液の15~60重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子を含む水分散液、
- ゾル組成物の5~15重量%の、該前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
- ゾル組成物の0.1~2重量%の酸性触媒。
【0009】
本発明によるゾル組成物はまた、個別に又は組み合わせて考えられる、以下に列挙される任意の特徴を有し得る。
- トリアルコキシシランは一般式R’-Si(OR)の有機官能性トリアルコキシシランであり、R’は有機官能基であり、Rはアルキルを表し、
- トリアルコキシシランはアルキルトリアルコキシシランであり、
- トリアルコキシシランは、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン及びプロピルトリアルコキシシランの中から選択され、
- トリアルコキシシランはメチルトリメトキシシランであり、
- 前駆体は、少なくとも1種類のテトラアルコキシシラン及び少なくとも1種類のトリアルコキシシランの混合物であり、
- 前駆体の含有率は、ゾル組成物の15~25重量%の間に含まれ、
- 溶媒はアルコール、ケトン及びそれらの混合物から選択され、
- 溶媒はアセトンであり、
- 二酸化チタン粒子の径は200~1000nmの間に含まれ、
- 二酸化チタン粒子は、TiO粒子の2~6重量%のアルミナで被覆され、
- シリカの水分散液の含有率は、ゾル組成物の35~55重量%の間に含まれ、シリカの水分散液は水分散液の40~55重量%のシリカを含み、
- シリカの水分散液は2つの異なる径範囲、すなわち、第1の範囲は50~120nmの間、第2の範囲は3~25nmの間のシリカ粒子の混合物を含み、
- 酸性触媒はリン酸を含む。
【0010】
本発明の第2の主題は、少なくともその表面の少なくとも一方の少なくとも一部上に、以下を含む少なくとも10μmの誘電体層で被覆された金属基材からなる。
- 誘電体層の20~70重量%の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
- 誘電体層の20~70重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
- 誘電体層の5~18重量%の重合されたトリアルコキシシラン前駆体、
- 誘電体層の0.1~2%の酸性触媒。
【0011】
本発明の第3の主題は、以下の工程を含む、ゾル組成物を製造する方法からなる。
- 以下を供給する工程、
o 10~30重量部の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
o 10~40重量部の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
o 30~60重量部のシリカの水分散液であって、水分散液の15~60重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子を含む水分散液、
o 5~15重量部の、該前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
o 0.1~2重量部の酸性触媒、
- 前記成分を混合する工程。
【0012】
本発明の第4の主題は、以下の工程を含む、金属基材上に誘電体層を製造するゾル-ゲル法からなる。
- (i) 金属基材及び以下を含むゾル組成物を供給する工程
o ゾル組成物の10~30重量%の、トリアルコキシシランを含む前駆体、
o ゾル組成物の10~40重量%の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
o ゾル組成物の30~60重量%のシリカの水分散液であって、水分散液の15~60重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子を含む水分散液、
o ゾル組成物の5~15重量%の、該前駆体を水に混和性にすることができる溶媒、
o ゾル組成物の0.1~2重量%の酸性触媒、
- (ii) 金属基材の少なくとも1つの表面上に該ゾル組成物を堆積させる工程、
- (iii) 該溶媒を蒸発させて誘電体層を形成する工程。
【0013】
本発明によるゾル-ゲル法はまた、個別に又は組み合わせて考えられる、以下に列挙される任意の特徴を有し得る。
- 少なくとも20μmのゾル組成物を堆積させ、
- 工程(iii)は、金属基材のピーク金属温度が120~200℃の間に含まれ、乾燥時間が30秒~4分の間に含まれる乾燥工程からなり、
- 該方法は、さらに、300~600℃の間に含まれる金属基材のピーク金属温度で30秒~4分の間誘電体層をアニーリングする工程(iv)を含む。
【0014】
本発明の第5の主題は、以下を含む、太陽電池を製造する方法からなる。
- (i) その表面の少なくとも一方の少なくとも一部で以下を含む少なくとも10μmの誘電体層で被覆された金属基材を供給すること、
o 誘電体層の20~70重量%の中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子、
o 誘電体層の20~70重量%の粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子、
o 誘電体層の5~18重量%の重合されたトリアルコキシシラン前駆体、
o 誘電体層の0.1~2%の酸性触媒、
- (ii) モリブデンベースの背面電極を誘電体層上に堆積させること。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、純粋に説明の目的で提供され、かつ制限的であることを意図するものでは全くない、以下の説明を読むことにより、より深く理解される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「の上に(over)」及び「の上に(on)」という用語は、いずれも、「直接的に上に」(その間に配置される中間的な材料、要素又は空間はない)及び「間接的に上に」(中間的な材料、要素又は空間がその間に配置される)を包括的に含むことに留意すべきである。例えば、「基材上に(on)」ある要素を形成することは、その間に中間的な材料/要素が配置されずに基材上に直接その要素を形成すること、及び1つ以上の中間的な材料/要素がその間にある状態で基材上に間接的にその要素を形成することを含むことができる。
【0017】
金属基材とは、平坦な形状を有する、すなわち、その厚さがその他の寸法と比較して薄い要素を意味する。一般的に言って、その厚さはその幅の500~4000倍薄い。基材は、単一の材料又は複合集合体からできてもよい。炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅及び亜鉛は、金属材料の非制限的な例として引用することができる。炭素鋼及びステンレス鋼が好ましい。金属基材は、コイル又はシートの形態であってもよい。
【0018】
本発明の誘電体被膜はゾル組成物によって得られる。ゾル-ゲル法は、小分子から固体材料を製造する方法である。この方法は金属酸化物、特にシリコン(Si)及びチタン(Ti)の酸化物の作製に用いられる。この方法では、モノマーがコロイド溶液(ゾル)に変換され、該溶液は個々の粒子又は網目状ポリマーの統合されたネットワーク(あるいはゲル)の前駆体として働く。典型的な前駆体は金属アルコキシドである。
【0019】
本発明によるゾル組成物は、まず、トリアルコキシシラン、好ましくは水素化されていないトリアルコキシシランを含む前駆体を含む。
【0020】
前駆体は、一般式R’-Si(OR)の有機官能性トリアルコキシシランであり得、式中、R’は有機官能基を表し、Rはアルキルを表す。
【0021】
有機官能性トリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(ジブチル-オキシアルミノオキシ)トリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ1,1,2,2-テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン若しくはフェニルトリエトキシシラン又はそれらの混合物から特に選択することができる。
【0022】
トリアルコキシシランは、好ましくはアルキルトリアルコキシシランであり、より好ましくはメチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン又はプロピルトリアルコキシシランから選択される。トリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン又はプロピルトリプロポキシシランから選択されることがより好ましい。これらのトリアルコキシシランは、誘電体被膜の熱抵抗をさらに改善する。
【0023】
トリアルコキシ官能基により、前駆体で得られるネットワークは、好ましくは、有機官能基が散在する3価ネットワークである。シリカネットワークよりも歪みが少なく、ひび割れは限られている。このネットワークの柔軟性は有機官能基の選択により個別的に調整できる。
【0024】
これらの基の影響は、前駆体がまた、少なくとも1種のテトラアルコキシシラン及び少なくとも1種のトリアルコキシシランの混合物であり得るようなものである。特に、それは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランとメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン又はエチルトリブトキシシランとの組み合わせであり得る。その場合、第1の前駆体の四面体ネットワークは第2の前駆体の三価ネットワークと釣り合っており、これがネットワーク内の応力を制限する。
【0025】
前駆体は特に敷CHSi(OCHを持つ有機ケイ素化合物であるメチルトリメトキシシラン(MTMOS)である。この前駆体から形成されたフィルムは、温度に対して非常に耐性がある。不活性ガス下では、前記前駆体は500~600℃付近でゆっくりと分解を開始する。
【0026】
メチルトリメトキシシランは容易に加水分解し、その縮合は酸性条件で容易に管理可能である。その結果、その保管寿命は少なくとも24時間であり、そのことは誘電体被膜を製造する方法において、ある程度の自由度を可能にする。
【0027】
この前駆体の重合工程は以下のとおりである。
CHSi(OCH+HO→OH-Si(CH)(OCH+CH-OH
(OCH(CH)Si-OH+OH-Si(CH)(OCH→[(OCH(CH)Si-O-Si(CH)(OCH]+H-O-H
又は
(OCH(CH)Si-OCH+OH-Si(CH)(OCH→[(OCH(CH)Si-O-Si(CH)(OCH]+CH-O-H
【0028】
したがって、重合はH-O-H種及びR-O-H種の生成を伴うシロキサン[Si-O-Si]結合の3次元ネットワークの形成と関連している。
【0029】
前駆体の含有率は、ゾル組成物の10~30重量%の間に含まれる。10重量%未満では、被膜の良好な凝集性を得るには含率率が十分でないことが観察された。30重量%を超えると、電気絶縁性に影響を及ぼす微小なひび割れが現れる傾向がある。好ましくは、前駆体の含有率は、内部応力及び熱安定性の間の最良の妥協点を与える15~25重量%の間に含まれる。
【0030】
ゾル組成物では、前駆体は加水分解型であってもよい。明細書で与えられた含有率の範囲は、この加水分解を考慮に入れていない。特に、前駆体の含有率範囲は加水分解されていない前駆体の含有率の範囲である。所与のゾル組成物について、加水分解された前駆体の含有率の範囲は容易に計算することができる。
【0031】
ゾル組成物は、起こる加水分解が均質であるように、前駆体を水に混和性にすることができる溶媒をさらに含む。
【0032】
溶媒は、アルコール、ケトン及びそれらの混合物の中から選択することができる。アルコールは、水溶性及び沸点の間で最も良好な妥協点を表す一価アルコールの中から選択されることが好ましい。可能な一価アルコールは、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、メトキシプロパノール及びそれらの混合物である。ケトンはアセトン及びメチルエチルケトンの中から選択するのが好ましい。粒子の分散に有利であるので、アセトンが好ましく、これは水と100%混和する。また、アセトンは、低温(56℃)で蒸発するが、低すぎないため、基材にゾル組成物を噴霧した場合、噴霧ミスト中で蒸発しない。
【0033】
溶媒の混合物を用いると、金属基材上のゾル組成物の濡れ性を有利にすることができ、蒸発がより良好に制御される。
【0034】
溶媒(複数可)の含有率はゾル組成物の5~50重量%の間に含まれる。5重量%未満では組成物が粘稠すぎる。50重量%を超えると、希釈が何よりも重要であり、良好な電気絶縁性を有する厚い層を得ることができない。好ましくは、溶媒の含有率は、粘度及び希釈の間の最良の妥協点を表す5~15重量%の間に含まれる。
【0035】
ゾル組成物はさらに、ゾル組成物の10~40重量%の、中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子を含む。TiOは非常に安定で、高温に耐え、水中に容易に分散する。好ましくは、二酸化チタン粒子の含有率は、20~30重量%の間に含まれる。
【0036】
前記粒子の中央径により、大きな粒子が誘電体被覆の表面から突出することが防止され、粗さが低いレベルに保たれる。より好ましくは、粒径は200nm~1000nmの間に含まれる。
【0037】
好ましくは、TiO粒子の表面は、TiOが光活性であるのを止めるように被覆され、それがなければ、長期的には誘電体被覆及び対応する太陽電池を劣化させる可能性がある。表面皮膜はアルミナ又はシリカであり得る。アルミナは、熱膨張中に誘電体層がその完全性を維持することを助けると考えられるので、好ましい。TiOをアルミナで被覆すると、それはアルミナで被覆されたTiO粒子の2~6重量%のアルミナを含むのが典型的である。
【0038】
TiO粒子は、ヒドロキシル基、水素ポリシロキサン又は二水素ポリシロキサンで表面が官能化されていないことが好ましい。
【0039】
TiOは、それ自体では十分な凝集性を誘電体被膜に与えることができないので、ゾル組成物は、ゾル組成物の4.5~36重量%の、粒径分布D90が100nm未満のシリカ粒子をさらに含む。シリカは電気絶縁体でもあり、化学的に不活性で、高温に耐性がある。
【0040】
ゾル組成物は、好ましくはゾル組成物の14~30重量%のシリカ粒子を含む。
【0041】
シリカ粒子はTiO粒子より著しく小さく、密度が低いので、誘電体被膜の表面は主にシリカで構成され、そのことは被膜の粗さを低下させる。シリカ粒子は、好ましくは、3~120nmの間に含まれる径を有する。
【0042】
シリカ粒子は、ヒドロキシル基、水素ポリシロキサン又は二水素ポリシロキサンで表面が官能化されていないことが好ましい。
【0043】
任意に、ゾル組成物は、2つの異なる径範囲、すなわち、50~120nmの第1の範囲、及び3~25nmの第2の範囲のシリカ粒子の混合物を含む。その場合、第2の粒径分布の粒子は、シリカ粒子の総重量の30重量%までに相当することができ、好ましくは10~30重量%の間に相当することができる。これにより、誘電体被膜の粗さがさらに改善される。
【0044】
好ましい実施形態によれば、シリカは、シリカの水分散液の形態でゾル組成物に添加される。その場合、ゾル組成物の4.5~36重量%のシリカ粒子は、ゾル組成物の残りとして添加される水と共に、水分散液の15~60重量%のシリカ粒子を含む、ゾル組成物の30~60重量%のシリカの水分散液に相当する。シリカの水性分散液は、電気絶縁体であり、化学的に不活性で、高温に耐性のある純シリカの供給源である。それはゾル-ゲル前駆体の加水分解のための水の供給源でもある。
【0045】
ゾル組成物は、好ましくは、ゾル組成物の35~55重量%のシリカの水分散液を含み、シリカの水分散液は、水分散液の40~55重量%のシリカ粒子を含む。この濃度により、ゾル組成物の重合によって得られたゲルは、より容易に乾燥し、誘電体被膜も乾燥し、ひび割れを防ぐ。この割合で水が存在するおかげで、前駆体の加水分解は良好な条件で起こる。
【0046】
1つの変形形態によれば、ゾル組成物の成分を混合する前に、シリカの水分散液のpHを9~10の間に維持して、ケイ酸塩の発生を制限する。pHは、水酸化ナトリウム、酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム又は酸化アンモニウムのような、塩基の溶液の添加によって制御できる。
【0047】
別の変形例によれば、シリカを、4~5の間に含まれるpHで脱イオン水中に分散させる。
【0048】
ゾル組成物はさらに、ゾル組成物の0.1~2重量%、好ましくは0.2~0.8%の間の酸性触媒を含む。その酸性の性質により、密な被膜を得ることができる。この触媒は重合速度も制御する。このようにして触媒は、塗布方法に応じて必要な速度に基づいて選択される。重合速度が速い方が好ましい場合は、塩酸又は硫酸などの強酸が検討される。組成物を塗布前に調製し、その間保存できるようにゾル組成物の保管寿命を1~2日に延長しなければならない場合は、弱酸が好ましい。弱酸は、リン酸、亜リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸の中から選択できる。無機酸は被膜ネットワークが炭素残基で汚染されないようにその熱安定性のために好ましい。リン酸は、3価の性質から非常に堅いものになるので、特に好ましい。
【0049】
ゾル組成物はさらに残余として水を含む。「残余は水である」という表現により、前駆体の加水分解後でもゾル組成物に水が残っていることが意味される。水の存在により、前駆体の加水分解は良好な条件で起こり、シリカ及びTiOの粒子はよく安定化され分散し、溶媒の蒸発はより良好に制御される。水は脱イオン水が好ましい。
【0050】
シリカを水分散液の形成で添加する場合は、水分散液を通してのみ水を提供することが好ましい。
【0051】
このゾル組成物により、金属基材上に極めて粗さが小さい(Rが100nm未満、Rが200~600ナノメートルの間)20μmよりも厚い誘電体層をピンホールなしで得ることができる。これらの層は、加熱及び冷却中にひび割れを生じることなく、600℃まで数時間加熱することができる。さらに、これらの層は、鋼基材からの鉄の拡散に対する効率的な障壁であり、これにより、鋼基材とPV電池との間の障壁層が不要になる。
【0052】
ゾル組成物は、異なる成分を全て一緒に混合して調製される。
【0053】
あるいは、ゾル組成物は二成分生成物である。その場合、二酸化チタン粒子、シリカの水分散液及び溶媒を混合して第1の成分を調製することが好ましい。第2の成分は、前駆体及び酸性触媒を混合して調製することが好ましい。次に、ゾル組成物を用いる前に、これらの2つの成分を一緒に混合する。
【0054】
任意に、ゾル組成物を最終的に1μmで濾過し、起こり得る弱凝集体を除去する。
【0055】
方法に関して、金属基材及びゾル組成がいったん供給されると、組成物を基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に堆積させる。これは、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スロットダイコーティング、噴霧、インクジェット印刷によって行うことができる。それが提供する表面均質性のため、スロットダイが好ましい。
【0056】
ゾル組成物を、少なくとも10μmの厚さの乾燥した誘電体層を得るのに十分な量で塗布することが好ましい。それ未満では、被膜は十分に誘電体でない可能性がある。塗布した湿ったゾル組成は、少なくとも20μmの厚さである。
【0057】
次の工程では、液相及び固相の両方を含むゲル様のネットワークの形成に向かって、ゾルが徐々に進む。最も簡単な方法は、溶媒の沈降及び蒸発を起こさせ、その結果誘電体層を得ることである。好ましくは、水の蒸発も起こる。好ましくは、乾燥工程を行い、適用したフィルムを迅速に乾燥させ、誘電体層を得る。乾燥は、対流、誘導、赤外線又は他の適当な方法により、オーブン中で、連続方法で又はバッチ方法で行うことができる。より好ましくは、フィルムで覆われた金属基材のピーク金属温度は120~200℃の間に含まれ、乾燥時間は30秒~4分の間に含まれる。
【0058】
任意に、最適な誘電性能のために、被膜内に捕捉された全ての水を層から完全に除去するために、不活性ガス下で誘電体層をさらにアニーリングする。このようなアニーリングは、太陽電池を製造する工程のその後の工程で水が脱気し、ひいてはその後の層を劣化させるのを妨げる。アニーリングは、対流、誘導又は任意の他の適切な方法により、オーブン中で、連続方法で又はバッチ方法で行うことができる。より好ましくは、誘電体層で覆われた金属基材のピーク金属温度は、300~600℃の間、より好ましくは500~600℃の間、さらにより好ましくは540~560℃の間に含まれ、乾燥時間は30秒~4分の間に含まれる。
【0059】
ゾル-ゲル被膜は20~70重量%のシリカ粒子、20~70重量%の二酸化チタン粒子を含み、被膜の残りの部分は重合された前駆体、すなわち、シロキサン(Si-O-Si)結合の三次元ネットワーク(該ネットワークは好ましくは有機官能基に結合したSi原子を含む。)、及び酸性触媒を含む。特に、ゾル-ゲル被膜は、誘電体層の5~18%のネットワークの及び誘電体層の0.1~2%の酸性触媒を含む。各元素の含有率の和は100%に等しい。
【0060】
ゾル-ゲル被膜の特性はSEM(粒子の径及び性質)、X線蛍光(Si及びTiの含有率)及びIR分光法(SiO及びネットワークの含有率)により得ることができる。
【0061】
得られたゾル-ゲル被膜は、良好な誘電特性を有するために少なくとも10μmの厚さである。ゾル-ゲル被膜は、100nm未満の粗さR及び600nm未満の粗さRを有する。ゾル-ゲル被膜は、ASTM D3359に従ったテープ試験により測定した少なくとも3という金属基材との接着性を有する。その電気絶縁性は、金属基材とソル-ゲル被膜の表面に堆積した飽和塩水の液滴との間のギガホメーターで測定された抵抗が少なくとも3分間250Vの下で少なくとも272ギガオームであるようなものである。その絶縁破壊電圧は少なくとも1000Vである。
【0062】
いったんゾル組成物が基材上に塗布され、乾燥し、任意に熱処理されると、太陽電池を構成する異なる層を堆積させることができる。
【0063】
本発明の1つの変形例によると、太陽電池はCIGS太陽電池である。CIGSは本明細書では、薄膜太陽電池における吸収層として使用するために望ましい特性を有する一群の材料を指す。銅インジウムジセレニド(CuInSe又はCIS)及びそのより高いバンドギャップ変形例である銅インジウムガリウムジセレニド(Cu(In/Ga)Se又はCIGS)、銅インジウムアルミニウムジセレニド(Cu(In/Al)Se)、銅インジウムガリウムアルミニウムジセレニド(Cu(In/Ga/Al)Se)及び硫黄がセレンの一部を置換するこれらの化合物の全ては、この群の一員である。
【0064】
CIGS薄膜太陽電池は、通常、ガラス、ステンレス鋼箔、炭素鋼箔、又は他の機能性基材などの基材にモリブデンベースの背面電極を最初に堆積させることによって製造される。それはRF又はDCマグネトロンスパッタリングによって行うことができる。モリブデンベースの背面電極は、モリブデン(Mo)の層、モリブデン-ナトリウム(Mo/Na)の層、若しくはモリブデン-カリウム(Mo/K)の層で作ることができ、又はMo及び/又はMo/Na及び/又はMo/Kの複数の副層で作ることができる。あるいは、拡散が遮断されるように、背面電極の上に窒化ジルコニウム障壁層を加えることができ、その結果、銀、アルミニウム、銅などの他の金属によってモリブデンを置換することができる。
【0065】
次いで、既知の技術により、比較的厚いCIGSの層をモリブデン層上に堆積させる。前駆体技術では、金属(Cu/In/Ga)を、まず、物理的蒸着(PVD)法(蒸発又はスパッタリング)、化学浴、又は電気メッキ法を用いて、基材上に堆積させる。続いて、セレン担持ガスを、約600℃までの範囲の温度で拡散炉内の金属層と反応させて、最終CIGS組成物を形成する。最も一般的に使用されるセレン担持ガスはセレン化水素であり、ヒトに対して極めて毒性が強く、その使用には細心の注意が必要である。第2の技術は、別々の熱蒸発源から高温基材上にCIGS構成成分の全てを共蒸発させることにより、セレン化水素ガスの使用を回避する。第3の技術では、CIGS層を、平面及び/又は回転マグネトロンを用いるDCマグネトロンスパッタリングによって堆積させる。
【0066】
CIGS層は、複数の副層から作ることができる。特定の実施形態において、各副層は同じ組成を有する。他の実施形態では、副層の組成は、CIGS層が少なくとも1つの元素濃度において少なくとも1つの副層から別の副層へと等級付けされる組成を有するように異なる。いくつかの実施形態において、各副層は同じ厚さを有し、他方、他の実施形態において、少なくとも2つの副層は異なる厚さを有する。
【0067】
細い「窓」又は「緩衝液」層を形成するためにCIGS吸収剤と共に最も頻繁に使用されるn型材料は硫化カドミウム(CdS)である。それは、CIGS層よりはるかに薄く、化学浴堆積(CBD)又はDCスパッタリングによって塗布できる。カドミウムに関連する毒性及び廃棄物処理の問題から、ZnSを代替として使用できる。それは元素亜鉛標的からのAC反応性スパッタリング及び硫化水素の注入によって作ることができる。
【0068】
最後に、窓又は緩衝層は、n型半導体でもある比較的厚い透明導電性酸化物で覆われる。従来、酸化亜鉛(ZnO)は伝統的な、しかしより高価な酸化インジウムスズ(ITO)の代替として使用されてきた。近年、アルミニウムをドープしたZnO(AZO)はITOとほぼ同様に機能することを示すようになり、この産業界で選択の材料となっている。それはマグネトロンスパッタリングにより作製できる。
【0069】
任意に、上部メタライゼーション層又はパッシベーション層のような追加の導電性層が、緩衝層の上に堆積されてもよい。パターン化及び相互接続工程を実施して、モノリシック集積型装置を提供することもできる。
【0070】
あるいは、ゾル組成物から得られる誘電体被膜を、フォトトランジスタ、光電子増倍管、発光ダイオード(LED)などの他の電子装置又は光電子装置の製造に使用することができる。
【実施例
【0071】
以下を混合して第1のゾル組成物を調製した。
- 一方では、4重量%のアルミナで被覆された二酸化チタン粒子40g(中央粒径410nmのChemours(商標)(DuPont(商標))供給のTi-Pure(商標)R900)、100nm未満の粒径分布D90を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液70g(Nouryon(R)供給のLevasil CT3PL)及びアセトン15g
- 他方では、トリメトキシメチルシラン30g及び85%水溶液としてのリン酸0.5mL。
【0072】
次にこれら2つの成分を一緒に混合した。
【0073】
以下を混合して第2のゾル組成物を調製した。
- 一方では、4重量%のアルミナで被覆された二酸化チタン粒子40g(中央粒径410nmのChemours(商標)(DuPont(商標))供給のTi-Pure(商標)R900)、100nm未満の粒径分布D90を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液60g(Nouryon(R)供給のLevasil CT3PL)及び工業用エタノール25g、
- 他方では、トリメトキシメチルシラン30g及び85%水溶液としてのリン酸0.5mL。
【0074】
次いで、この2つの成分を、実質的に単分散(d=22nm)の粒径分布を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液25g(Sigma Aldrich供給のLudox(R) TM-50)と混合した。
【0075】
以下を混合して第3のゾル組成物を調製した。
- 一方では、タルク/マイカ粒子36g(粒径D50が3.7μmであるYmeris Performancees Additives供給のPlastorit(R) Super)、100nm未満の粒径分布D90を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液70g(Nouryon(R)供給のLevasil CT3PL)及びアセトン10g
- 他方では、トリメトキシメチルシラン25g及び85%水溶液としてのリン酸1mL。
【0076】
次にこれらの2つの成分を一緒に混合した。
【0077】
以下を混合して第4のゾル組成物を調製した。
- 一方では、4重量%のアルミナで被覆された二酸化チタン粒子40g(中央粒径410nmのChemours(商標)(DuPont(商標))供給のTi-Pure(商標)R900)、100nm未満の粒径分布D90を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液70g(Nouryon(R)供給のLevasil CT3PL)及びアセトン15g
- 他方では、トリメトキシメチルシラン60g及び85%水溶液としてのリン酸0.5mL。
【0078】
次にこれらの2つの成分を一緒に混合した。
【0079】
以下を混合して第5のゾル組成物を調製した。
- 一方では、4重量%のアルミナで被覆された二酸化チタン粒子40g(中央粒径410nmのChemours(商標)(DuPont(商標))供給のTi-Pure(商標)R900)、100nm未満の粒径分布D90を有する50重量%のシリカを含むシリカの水分散液70g(Nouryon(R)供給のLevasil CT3PL)及びアセトン15g
- 他方では、トリメトキシメチルシラン30g及び30%のアンモニア1mL(塩基性触媒)。
【0080】
次にこれらの2つの成分を一緒に混合した。
【0081】
ゾル組成物(湿重量%)及びこのゾル組成物で得られた誘電体層(乾燥重量%)の両方について、各要素の含有率を表1にまとめた。
【0082】
第5の組成物を除いて、全ての組成物を、約50μmの未乾燥厚で、鋼基材上に、スロット-ダイ被覆により塗布した。それらをピーク金属温度170℃で1分間乾燥させた。その後、550℃のピーク金属温度で10分間アニーリングした。第5のゾル組成物は塩基性触媒の存在のために偏析して沈殿し、鋼基材には塗布できなかった。
【0083】
最初の4種類のゾル組成物から得られた最初の4種類の誘電体被膜で得られた結果を表2に詳述した。
【0084】
粗さは規格ISO1997に従って測定した(0.5mm/秒、λc=0.8、ラン(run)=0.5cm)。
【0085】
誘電体被覆とギガホムメータ(gigahommeter)の上部電極と鋼基材に連結されているギガホモメータの下部電極との間の接触として飽和塩水の液滴(幅約1cm)を有する誘電体被膜上に250Vを印加して、誘電性能を評価した。抵抗は3分間272ギガオームを超えて留まらなければならない。
【0086】
飽和塩水の液滴(幅1cm前後)を有する誘電体層に接触させたギガホムメータの上部電極と、鋼基材に連結させたギガホムメータの下部電極との間に電圧を印加して、絶縁破壊電圧を測定した。絶縁破壊電圧は少なくとも1000Vでなければならない。
【0087】
ASTM D3359に従ったテープ試験により、金属基材上の誘電体被膜の接着性を測定した。
【0088】
結果から明らかなように、本発明によるゾル組成物は、粗さ、内部応力(抵抗試験を通して評価した)、誘電性能及び熱安定性(アニーリング中に評価した)の間に良好な妥協点を有する。一方、
- 中央径が500nm未満の二酸化チタン粒子以外の粒子を有するゾル組成物は電子用途に適合する粗さに到達できず(ゾル組成物3)、
- 前駆体のレベルが30%より高いゾル組成物は、微小なひび割れ及び多孔性のために適切な電気絶縁性に到達できず(ゾル組成物4)、
- 塩基性触媒を有するゾル組成物は不安定で偏析する。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】