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特許7637717ポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/08 20060101AFI20250220BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20250220BHJP
   C08L 23/26 20250101ALI20250220BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20250220BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C08J5/08 CFG
C08L77/00
C08K7/14
C08L23/26
C08L23/00
C08K9/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023088356
(22)【出願日】2023-05-30
(65)【公開番号】P2024137585
(43)【公開日】2024-10-07
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】112111300
(32)【優先日】2023-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】許 漢卿
(72)【発明者】
【氏名】陳 春來
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111484738(CN,A)
【文献】特開平06-049352(JP,A)
【文献】特開平06-234888(JP,A)
【文献】特開平06-263931(JP,A)
【文献】特開平06-234897(JP,A)
【文献】特開平07-018129(JP,A)
【文献】特表2016-512282(JP,A)
【文献】特表2022-553748(JP,A)
【文献】国際公開第2022/168020(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107057339(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107815101(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109401297(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102993744(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102485798(CN,A)
【文献】エバフレックス銘柄の物性一覧表,日本,三井・ダウ ポリケミカル,2023年02月03日,https://www.mdp.jp/asset/pdf/eva.pdf
【文献】Toughening agents KT-9,Flexibilizer,中国,KETONG PLASTIC,2021年07月31日,p.9,https://www.ketongplas.com/wp-content/uploads/2021/07/Ketong-Product-Brochure (Modified) -1.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
C08G 69/00-69/50
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料を押出機に供給して混合・溶融を行うことによって、混合プラスチックメルトを形成する、供給工程と、
前記混合プラスチックメルトを含浸装置に供給して、連続的なガラス長繊維を前記含浸装置に供給することによって、前記ガラス長繊維に前記混合プラスチックメルトを十分に含浸し、前記ガラス長繊維の表面が水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されている、含浸工程と、
前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維を成形・冷却して、造粒することによって、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を得る、成形工程と、を含む、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法であって、
前記原材料は、ポリアミド樹脂、強靭化剤、及び相溶化剤を含み、
前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記第1のポリオレフィン材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記強靭化剤の第1の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは1g/10min~20g/10minであり、
前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記相溶化剤の第2の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスは100g/10min~600g/10minであることを特徴とする、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記押出機は二軸押出機であり、前記押出機の加工温度は250℃~400℃であり、スクリュー速度は200rpm~300rpmである、請求項1に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記強靭化剤及び前記相溶化剤は、前記ポリアミド樹脂と前記押出機で混合・溶融される時に、前記強靭化剤及び/又は前記相溶化剤に改質された前記無水マレイン酸の活性酸無水基、前記ポリアミド樹脂の高分子鎖の末端にあるアミノ基と反応することによって、アミド結合が最初に形成され、閉環反応を行った後にイミド結合が形成されることによって、グラフト共重合体が形成される、請求項に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記原材料は、数平均分子量が1000g/mol~10,000g/molのポリオレフィン超分散剤である流動性改質剤を更に含む、請求項1に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記含浸工程において、前記ガラス長繊維は、ボビン装置を介して延展装置に供給して、予熱作業及び延展作業を経た後に、前記含浸装置に導入されることによって、前記ガラス長繊維が予熱且つ延展された状態で、前記混合プラスチックメルトで含浸される、請求項1に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維は、前記含浸装置のダイヘッドによりバンドルされ、且つ覆われており、前記含浸装置で導出され、その後、成形装置を介して15℃~35℃の冷却温度で成形・冷却され、ガイド装置を介して、造粒装置にガイドして造粒され、前記ガラス長繊維は、長さが5mm~30mmのガラス繊維である、請求項に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項7】
靭化剤及び相溶化剤をポリアミド樹脂にグラフトしたグラフト共重合体である、含浸材料と、
前記含浸材料で含浸され、且つ覆われているガラス繊維材料と、を含み、
前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記第1のポリオレフィン材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記強靭化剤の第1の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは1g/10min~20g/10minであり、
前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記相溶化剤の前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記相溶化剤の第2の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスは100g/10min~600g/10minであり、
前記ガラス繊維材料は、表面が水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されたガラス長繊維を含むことを特徴とする、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料。
【請求項8】
前記含浸材料は、数平均分子量が1000g/mol~10,000g/molのポリオレフィン超分散剤である流動性改質剤を更に含む、請求項に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料。
【請求項9】
前記含浸材料の総重量を100重量部として、前記ポリアミド樹脂の含有量は50重量部~97重量部であり、前記強靭化剤の含有量は0.1重量部~20重量部であり、前記相溶化剤の含有量は0.1重量部~20重量部であり、および前記流動性改質剤の含有量は10重量部以下である、請求項に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料。
【請求項10】
前記ガラス繊維材料と前記含浸材料との重量比(ガラス繊維材料:含浸材料)は、5:95~65:35である、請求項に記載のポリアミドガラス長繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子複合材料に関し、特に、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂(ナイロンプラスチック)の分子構造には、親水性のアミド基が多数含まれているが、ポリアミド樹脂は、靭性や耐摩耗性などの機械的特性が劣るため、その用途が限定されている。この点に対して、工業上、共重合、ブレンド強化、補強などのプロセスを使用して、ポリアミド樹脂の改質を行うことがある。ガラス繊維強化によるプロセスは、ポリアミド樹脂の改質方法によく用いられ、ポリアミド樹脂の耐摩耗性、機械的特性、硬度及び寸法安定性を効果的に増加することができる。
【0003】
ガラス繊維の長さが長くなると、ガラス繊維のポリアミド樹脂の強化に対する効果が大幅に向上する。ガラス長繊維強化材料は、ガラス短繊維に比べ、耐衝撃強度を倍増することができる。ポリアミドガラス長繊維強化複合材料には、高強度、高剛性、高ノッチ衝撃強度、短期耐熱性及び耐疲労性などの利点があり、前記ポリアミドガラス長繊維強化複合材料は高温高湿の環境においても、優れた機械的特性を維持し、構造材料として金属と置き換えることができる。
【0004】
しかしながら、従来技術のポリアミドガラス長繊維強化複合材料の靭性は依然として不良であり、製造過程において、ポリアミド樹脂のガラス長繊維に対する含浸効果が不良であるため、改良する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法を提供する。前記ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法は、原材料を押出機に供給して混合・溶融を行うことによって、混合プラスチックメルトを形成する、供給工程と、前記混合プラスチックメルトを含浸装置に供給して、連続的なガラス長繊維を前記含浸装置に供給することによって、前記ガラス長繊維に前記混合プラスチックメルトを十分に含浸し、前記ガラス長繊維の表面は水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されている、含浸工程と、前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維を成形・冷却して、造粒することによって、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を得る、成形工程と、を含む。前記原材料は、ポリアミド樹脂、強靭化剤、及び相溶化剤を含み、前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスより低い。
【0007】
好ましくは、前記押出機は二軸押出機であり、前記押出機の加工温度は250℃~400℃であり、スクリュー速度は200rpm~300rpmである。
【0008】
好ましくは、前記強靭化剤を構成するための前記第1のポリオレフィン材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0009】
好ましくは、前記強靭化剤の第1の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記強靭化剤の前記第1のメルトインデックスは1g/10min~20g/10minである。
【0010】
好ましくは、前記相溶化剤を構成するための前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、前記相溶化剤の第2の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記相溶化剤の前記第2のメルトインデックスは100~600g/10minである。
【0012】
好ましくは、前記強靭化剤及び前記相溶化剤は、前記ポリアミド樹脂と前記押出機で混合・溶融される時に、前記強靭化剤及び/又は前記相溶化剤の改質された無水マレイン酸の活性酸無水基は、前記ポリアミド樹脂の高分子鎖の末端にあるアミノ基と反応することによって、アミド結合が最初に形成され、閉環反応を行った後にイミド結合が形成されることによって、グラフト共重合体が形成される。
【0013】
好ましくは、前記原材料は、数平均分子量が1000g/mol~10,000g/molのポリオレフィン超分散剤である流動性改質剤を更に含む。
【0014】
好ましくは、前記含浸工程において、前記ガラス長繊維は、ボビン装置を介して延展装置に供給されて、予熱作業及び延展作業を経った後に、前記含浸装置に導入されることによって、前記ガラス長繊維が予熱且つ延展された状態で、前記混合プラスチックメルトで含浸される。
【0015】
好ましくは、前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維は、前記含浸装置のダイヘッドによりバンドル及び覆われており、前記含浸装置で導出され、前記含浸装置で導出され、前記ガラス長繊維は、長さが5mm~30mmのガラス繊維である。
【0016】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を提供する。前記ポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、含浸材料及びガラス繊維材料を含む。前記含浸材料は、ポリアミド樹脂、強靭化剤及び相溶化剤を含み、前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスより低い。前記ガラス繊維材料は、含浸材料で含浸され、覆われており、前記ガラス繊維材料は、表面に水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されたガラス長繊維を含む。
【0017】
好ましくは、前記強靭化剤を構成するための前記第1のポリオレフィン材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つである。前記強靭化剤の第1の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記強靭化剤の前記第1のメルトインデックスは1g/10min~20g/10minである。
【0018】
好ましくは、前記相溶化剤を構成するための前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである。前記相溶化剤の第2の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であり、前記相溶化剤の前記第2のメルトインデックスは100g/10min~600g/10minである。
【0019】
好ましくは、前記含浸材料は、数平均分子量が1000g/mol~10,000g/molのポリオレフィン超分散剤である流動性改質剤を更に含む。
【0020】
好ましくは、前記含浸材料における全ての材料の総重量を100重量部として、前記ポリアミド樹脂の含有量は50重量部~97重量部であり、前記強靭化剤の含有量は0.1重量部~20重量部であり、前記相溶化剤の含有量は0.1重量部~20重量部であり、前記流動性改質剤の含有量は10重量部以下である。
【0021】
好ましくは、前記ガラス繊維材料と前記含浸材料との重量比(ガラス繊維材料:含浸材料)は、5:95~65:35である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法は、「前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスより低い」及び「前記ガラス長繊維材料は、含浸材料で十分に含浸され、覆われており、前記ガラス長繊維材料の表面が水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されている」といった技術特徴によって、ポリアミド(ナイロンプラスチック)の靭性を向上すると共に、プロセスにおける含浸効果が不良である問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法の装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0025】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。
【0026】
また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0027】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。
【0028】
また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0029】
[強化複合材料の製造方法]
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態において、工程S110~工程S130を含む、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法を提供する。説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。本発明に係る製造方法は、各工程の前、各工程の間、又は各工程の後に他の操作を提供してもよく、説明された一部の操作も、置換、削除又は並べ変えることによって、当該製造方法を実施することが可能である。
【0030】
前記S110は、原材料RMを押出機1(extruder)に供給して混合・溶融を行うことによって、混合プラスチックメルトを形成する、供給工程(feeding step)を含む。ここで、前記原材料RMは、ポリアミド樹脂(polyamide resin,PA resin)、強靭化剤(toughener)、相溶化剤(compatilizer)、及び流動性改質剤(flow modifier)を少なくとも含む。前記ポリアミド樹脂は、強靭化剤の導入によって、プラスチックの靭性を向上させることができる。又、相溶化剤及び流動性改質剤の導入によって、強靭化剤とポリアミド樹脂との相溶性を向上させる。尚、前記原材料RMは、酸化防止剤(antioxidant)、滑剤(lubricant)及び着色剤(colorant)を更に含んでもよい。
【0031】
本発明の一つの実施形態において、前記押出機1は例えば、二軸押出機(twin screw extruder)であってもよい。前記原材料RMにおける高分子材料を溶融させるために、前記押出機1の加工温度は例えば、250℃~400℃であり、250℃~350℃であることが好ましい。説明すべきことは、前記加工温度は、押出機1における各部の素子(例えば、供給部、圧縮部、溶解部、計量部、頭部、金型)の温度制御であると共に、各部の素子の温度制御はお互いに同一又は異なってもよく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0032】
尚、前記押出機1のスクリュー速度は、200回転毎分~300回転毎分(revolutions per minute,rpm)に制御され、240回転毎分~260回転毎分に制御されることが好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0033】
前記原材料RMにおいて、前記ポリアミド樹脂は、ナイロン樹脂と呼ばれてもよい。ナイロン樹脂は、アミド結合を介してカルボキシル含有モノマーとアミノ含有モノマーとの重合によって形成される。
【0034】
前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成されたエラストマー(elastomer)である。又、前記第1のポリオレフィン材料は、エチレンプロピレンジエンゴム(ethylene propylene diene monomer rubber,EPDM)、熱可塑性ポリオレフィン(thermoplastic polyolefin,TPO)、ポリオレフィンエラストマー(polyolefin elastomer,POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0035】
ここで、前記エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)は、エラストマーであると共に合成ゴムに属する。EPDMは、エチレンとプロピレンとの共重合体、若しくはエチレンとプロピレンと少量の第3種のモノマー(例えば、ジエン)との三元共重合体である。ここで、前記熱可塑性ポリオレフィン(TPO)はエラストマーである。TPOは、エチレンプロピレンゴム(EPM)又はエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)と、ポリエチレン(PE)及び/又はポリプロピレン(PP)などのオレフィン材料とを混合したものであり、即ち、TPOは、ゴムとプラスチックとのブレンド(rubber-plastic blend)に属する。ここで、前記ポリオレフィンエラストマー(POE)はエラストマーである。POEは、エチレン及び/又はポリプロピレンをベースとする材料である。具体的に説明すると、POEは、エチレン及び/又はポリプロピレンを重合する過程において1-ブテン又は1-オクテンなどのモノマーを導入して合成されたポリマーであり、その構造は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)と類似する。
【0036】
前記四種の材料(EPDM、TPO、POE、E-MA-GMA)は、化学構造又は特性において類似するが、定義においてやや異なっている。当業者であれば、前記4種の材料はお互いに上位・下位の関係でなく、同じランクの材料に属することがわかる。又、本明細書におけるエラストマーは、粘弾性を備えるポリマーであり、比較的に低いヤング率及び比較的に高い破断ひずみを有する。
【0037】
更に説明すると、本実施形態において、前記強靭化剤は無水マレイン酸(maleic anhydride,MAH)で改質された材料であることが好ましい。ここで、前記無水マレイン酸は例えば、強靭化剤(第1のポリオレフィン材料で構成されたエラストマー)にグラフトしてもよい。より具体的に説明すると、前記無水マレイン酸は例えば、強靭化剤に溶融グラフトしてもよい。前記溶融グラフトは例えば、単軸押出機、二軸押出機、又はレオメーターで行ってもよい。好ましくは、前記溶融グラフトは二軸押出機で行う。
【0038】
本発明の一つの実施形態において、前記無水マレイン酸の強靭化剤での第1の無水マレイン酸のグラフト率(grafting ratio)は、0.3%~1.5%であることが好ましく、0.5%~1.3%であることが特に好ましい。
【0039】
説明すべきことは、本明細書における「無水マレイン酸のグラフト率」は例えば、フーリエ赤外分光計(FTIR)で分析を行うことができる。フーリエ赤外分光計は、無水マレイン酸がポリオレフィン材料の分子鎖にグラフトするかどうか、という定性分析を行うことができると共に、無水マレイン酸のグラフト率を定量することができる。赤外吸収スペクトルによれば、無水マレイン酸グラフトは、1780cm-1、1830cm-1で顕著な吸収ピークを有し、前記吸収ピークは、無水マレイン酸におけるカルボキシル基の特徴のピークである。又、前記無水マレイン酸のグラフト率の定量分析は、例えば、ランベルト・ベールの法則に基づいて分析を行うことができる。
【0040】
更に説明すると、本発明の一つの実施形態において、前記強靭化剤は、第1のメルトインデックスを有する。前記第1のメルトインデックスは、1g/10min~20g/10minであることが好ましく、3/10min~15g/10minであることが特に好ましい。
【0041】
説明すべきことは、本明細書におけるメルトインデックスは、押出式プラストメーターに入れたポリオレフィン材料を開口部から10分間に押出された重量である。その単位は、g/10minである。メルトインデックスは、溶融状態における流動性を示す。メルトインデックスが大きいほど、数平均分子量が小さく、流動性が優れている。逆に、メルトインデックスが小さいほど、数平均分子量が大きく、流動性が劣る。本実施形態において、前記メルトインデックスは、ASTM D1238に基づいて230℃及び2.16kgの荷重で測定を行う。
【0042】
前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成される樹脂材料である。前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリプロピレン(poly propylene,PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。前記相溶化剤は同様に、無水マレイン酸(maleic anhydride,MAH)で改質されたポリオレフィン材料である。例えば、前記相溶化剤は、無水マレイン酸で改質されたポリエチレン、無水マレイン酸で改質されたポリプロピレン、又は、無水マレイン酸で改質されたエチレン-プロピレン共重合体であってもよい。特筆すべきことは、前記相溶化剤は、エラストマーでないポリオレフィン材料である。溶融状態において、前記相溶化剤は、強靭化剤に比べて、より高い流動性(メルトインデックス)を有する。本発明の一つの実施形態において、前記無水マレイン酸の相溶化剤での第2のグラフト率(grafting ratio)は、0.3%~1.5%であることが好ましく、0.5%~1.3%であることが特に好ましい。
【0043】
尚、前記相溶化剤は、第2のメルトインデックスを有する。前記第2のメルトインデックスは、100g/10min~600g/10minであることが好ましく、200g/10min~500g/10minであることが特に好ましい。
【0044】
前記無水マレイン酸をポリオレフィン材料にグラフトする方法について、前段の発明を実施するための形態で説明し、又、グラフト率及びメルトインデックスの定義について、前段の発明を実施するための形態で説明したので、ここで重複に説明しない。
【0045】
特筆すべきことは、本発明の実施形態において、前記強靭化剤は、無水マレイン酸で改質された材料であると共に、前記相溶化剤も無水マレイン酸で改質された材料である。それによって、前記強靭化剤及び相溶化剤は、ポリアミド樹脂(PA resin)と混合・溶融される際に、強靭化剤にグラフトする活性酸無水基(organic acid anhydride)、及び相溶化剤にグラフトする活性酸無水基はそれぞれ、ポリアミド樹脂の高分子鎖の末端にあるアミノ官能基(amino functional group)と反応して、まずアミド結合(-NH-CO-,amide bond)が形成され、そして、閉環反応を行った後にイミド結合(-N-(C=O),imide bond)が形成されて、グラフト共重合体が形成され、即ち、強靭化剤及び/又は相溶化剤とポリアミド樹脂にグラフトするグラフト共重合体(強靭化剤/相溶化剤-g-PA)である。
【0046】
それによって、相界面(phase interfaces)にあるグラフト共重合体は、共有結合(covalent bond)により、相界面の間の結合力を増加して、分散相(強靭化剤及び相溶化剤)の連続相での分散範囲が広がると共に、グラフト共重合体の特性(例えば、靭性、低温耐衝撃性)を効果的に改善させることができる。
【0047】
更に説明すると、前記流動性改質剤は、超分散剤である(高分子分散剤)であり、数平均分子量が1,000~10,000にある高効率的な高分子分散剤である。より具体的に説明すると、前記流動性改質剤は、ポリオレフィン超分散剤である。本発明の一つの実施形態において、前記流動性改質剤は、SolplusTM超分散剤であり、SolplusTM超分散剤は、熱可塑性プラスチックにおけるフィラー(filler)の分散性及び安定性を改良することができる、100%活性の高分子分散剤であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0048】
前記流動性改質剤の導入によって、溶融状態でのポリオレフィン材料の流動性が不足である問題を改良して、前記混合プラスチックメルトがガラス繊維材料に更に優れた含浸効果を果たせる。
【0049】
又、前記酸化防止剤は、ポリアミド樹脂に用いる酸化防止剤である。又、酸化防止剤は例えば、テトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ペンタエリスリトールフェニルプロピオネート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル)フェニルホスファイト、及び3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n-オクタデシルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、テトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ペンタエリスリトールフェニルプロピオネートである。前記滑剤は、ポリアミド樹脂に用いる滑剤である。又、滑剤は例えば、ビニルビスステアラミド、エルカミド、ポリエチレンワックス、パラフィン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、ビニルビスステアラミドである。尚、前記着色剤は、高分子材料に色を与えるものである。前記着色剤は例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、及び他の無機や有機着色剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。好ましくは、二酸化チタンである。前記酸化防止剤、滑剤、及び着色剤は、周知の技術の応用であるため、ここで重複に説明しない。
【0050】
使用量の範囲について、前記原材料RMの総重量を100重量部として、前記ポリアミド樹脂の含有量は、50重量部~97重量部であることが好ましく、75重量部~96重量部であることが特に好ましい。前記強靭化剤の含有量は、0.1重量部~20重量部であることが好ましく、4重量部~20重量部であることが特に好ましい。前記相溶化剤の含有量は、0.1重量部~20重量部であることが好ましく、3重量部~15重量部であることが特に好ましい。前記流動性改質剤の含有量は、10重量部以下であることが好ましく、2.0重量部~5.0重量部であることが特に好ましい。前記酸化防止剤の含有量は、0.1重量部~3.0重量部であることが好ましく、0.1重量部~1.5重量部であることが特に好ましい。前記滑剤の含有量は、0.01重量部~3.0重量部であることが好ましく、0.01重量部~1.5重量部であることが特に好ましい。又、前記着色剤の含有量は、0.5重量部~5.0重量部であることが好ましく、1.0重量部~2.0重量部であることが特に好ましい。
【0051】
前記工程S120は、前記工程S110で形成された混合プラスチックメルトを含浸装置2(impregnation device)に供給して、連続的なガラス長繊維GFを前記含浸装置2に供給することによって、前記ガラス長繊維GFに前記混合プラスチックメルトを十分に含浸し、その後、前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維GFが含浸装置2で導出される、含浸工程(impregnation step)を含む。
【0052】
より具体的に説明すると、前記ガラス長繊維GFは、ボビン装置3(bobbin device)を介して延展装置4(spreading device)に供給されて、前記ガラス長繊維GFが予熱作業(予熱温度は、110℃~130℃である)及び延展作業を経た後に、前記含浸装置2に導入されることによって、前記ガラス長繊維GFが予熱且つ延展された状態で、前記混合プラスチックメルトで含浸される。含浸作業が完了した後に、前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維GFは、前記含浸装置2のトランペット形状を呈するダイヘッドによりバンドル及び覆われており、前記含浸装置で導出され、前記含浸装置で導出される。説明すべきことは、前記ガラス長繊維の長さが5ミリメートル(mm)~30ミリメートルのガラス繊維であることが好ましく、6mm~25mmであることが特に好ましい。
【0053】
本発明の一つの実施形態において、前記ガラス長繊維GFと混合プラスチックメルトとの重量比(ガラス繊維材料:混合プラスチックメルト)は、5:95~65:35であり、40:60~60:40であることが好ましい。それによって、前記ガラス長繊維GFは、より優れた含浸効果を有する。
【0054】
又、前記ガラス長繊維GFの表面は水酸基(-OH,ヒドロキシル基)及び/又はカルボキシル基(-COOH)などの官能基で改質されることが好ましい。例えば、前記ガラス長繊維GFの表面は例えば、シランカップリング剤(silane coupling agent)で処理されることによって、前記官能基に付与するが、本発明はこれに制限されるものではない。それによって、前記ガラス長繊維GFに混合プラスチックメルトを含浸する時に、前記混合プラスチックメルトにおける無水マレイン酸で改質された強靭化剤、及び無水マレイン酸で改質された相溶化剤は、前記ガラス長繊維GFの表面にある水酸基及び/又はカルボキシル基と作用することによって、前記ガラス長繊維GFに混合プラスチックメルトを含浸する程度を向上することができる。
【0055】
特筆すべきことは、前記強靭化剤又は相溶化剤が無水マレイン酸で改質されない場合、EPDM、TPO、POE、PP、PEなどの材料はいずれも、PAとの相溶性が劣るため、二相分離が発生する。尚、無水マレイン酸で改質されていない強靭化剤又は相溶化剤は、ガラス繊維と混合する時に、ガラス繊維が含浸装置のダイヘッド所に断裂すると共に、含浸装置の押し出し口に繊維が詰まることがある。
【0056】
前記工程S130は、前記混合プラスチックメルトで含浸された前記ガラス長繊維GFを、成形装置5を介して成形・冷却(冷却温度は、15℃~35℃である)する、成形工程(shaping step)を含む。前記成形工程は、前記ガラス長繊維GFは、ガイド装置6を介して、造粒装置7にガイドして造粒することによって、造粒されたポリアミドガラス長繊維強化複合材料の産物Pを得ることを更に含む。
【0057】
[ポリアミドガラス長繊維強化複合材料]
上述した実施形態においては、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料の製造方法を詳しく説明した。本発明の実施形態においても、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を提供する。前記ポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、上述した製造方法で製造できるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0058】
具体的に説明すると、前記ポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、含浸材料及び前記含浸材料で覆われるガラス繊維材料を含む。
【0059】
前記含浸材料は、ポリアミド樹脂、強靭化剤、相溶化剤、流動性改質剤、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤を含む。即ち、前記含浸材料の組成は、前記製造方法における原材料RMに対応する。
【0060】
前記ポリアミド樹脂は例えば、ナイロン樹脂であってもよい。前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成されたエラストマーである。前記強靭化剤は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、熱可塑性オレフィン(TPO)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、及びエチレン-アクリル酸メチル-メタクリル酸グリシジル三元共重合体(E-MA-GMA)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0061】
更に説明すると、本実施形態において、前記強靭化剤は、無水マレイン酸(MAH)で改質された材料であることが好ましい。ここで、前記無水マレイン酸は例えば、強靭化剤(ポリオレフィン材料で構成されたエラストマー)にグラフトしてもよい。本発明の一つの実施形態において、前記無水マレイン酸の強靭化剤での第1の無水マレイン酸のグラフト率は、0.3%~1.5%であることが好ましく、0.5%~1.3%であることが特に好ましい。尚、前記強靭化剤は、第1のメルトインデックスを有する。前記第1のメルトインデックスは、1g/10min~20g/10minであることが好ましく、3/10min~15g/10minであることが特に好ましい。
【0062】
前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成された樹脂材料である。前記第2のポリオレフィン材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びエチレン-プロピレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである。前記相溶化剤も、無水マレイン酸で改質された材料である。本発明の一つの実施形態において、前記無水マレイン酸の相溶化剤での第2の無水マレイン酸のグラフト率は、0.3%~1.5%であることが好ましく、0.5%~1.3%であることが特に好ましい。尚、前記相溶化剤は、第2のメルトインデックスを有する。前記第2のメルトインデックスは、100g/10min~600g/10minであることが好ましく、200g/10min~500g/10minであることが特に好ましい。
【0063】
前記流動性改質剤は、超分散剤(高分子分散剤)であり、数平均分子量が1,000~10,000にある高効率的な高分子分散剤である。より具体的に説明すると、前記流動性改質剤は、ポリオレフィン超分散剤である。本発明の一つの実施形態において、前記流動性改質剤は、SolplusTM超分散剤であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0064】
酸化防止剤、滑剤、及び着色剤の特徴は既に、上述した製造方法の実施形態で説明したため、ここで重複に説明しない。
【0065】
使用量の範囲について、前記含浸材料(前記原材料RMに対応する)における全ての材料の総重量を100重量部として、前記ポリアミド樹脂の含有量は、50重量部~97重量部であることが好ましく、75重量部~96重量部であることが特に好ましい。前記強靭化剤の含有量は、0.1重量部~20重量部であることが好ましく、4重量部~20重量部であることが特に好ましい。前記相溶化剤の含有量は、0.1重量部~20重量部であることが好ましく、3重量部~15重量部であることが特に好ましい。前記流動性改質剤の含有量は、10重量部以下であることが好ましく、2.0重量部~5.0重量部であることが特に好ましい。前記酸化防止剤の含有量は、0.1重量部~3.0重量部であることが好ましく、0.1重量部~1.5重量部であることが特に好ましい。前記滑剤の含有量は、0.01重量部~3.0重量部であることが好ましく、0.1重量部~1.5重量部であることが特に好ましい。又、前記着色剤の含有量は、0.5重量部~5.0重量部であることが好ましく、1.0重量部~2.0重量部であることが特に好ましい。
【0066】
更に説明すると、前記ガラス繊維材料は、ガラス長繊維で構成される。また、前記ガラス長繊維の長さは、5ミリメートル(mm)~30ミリメートルのガラス繊維であることが好ましく、6mm~25mmであることが特に好ましい。
【0067】
本発明の一つの実施形態において、前記ガラス繊維材料(ガラス長繊維)と含浸材料との重量比(ガラス繊維材料:含浸材料)は、5:95~65:35であり、40:60~60:40であることが好ましい。又、前記ガラス長繊維の表面は水酸基(-OH,ヒドロキシル基)及び/又はカルボキシル基(-COOH)などの官能基で改質されることが好ましい。それによって、前記ガラス長繊維は、より優れた含浸効果を有する。
【0068】
技術効果について、本発明の実施形態に係る技術方法は、ガラス繊維を予熱・延展を行った後に、ポリアミド樹脂(又は、ナイロンプラスチックとも呼ばれる)を、強靭化剤、相溶化剤及び流動性改質剤などの高分子改質剤と混合した後に、押出機を介して溶融可塑化を行い、その後、メルトしたものを含浸装置に送り込むことによって、前記ガラス繊維に含浸させる。
【0069】
本発明の実施形態の技術方法は、改質剤によって混合プラスチックメルトの溶融粘度を、ガラス長繊維の含浸に適する範囲に制御して、繊維が含浸装置で含浸されることによって、ガラス長繊維強化複合材料を製造することができる。尚、本発明の実施形態の技術方法は、強靭化剤、相溶化剤、流動性改質剤の導入によって、ポリアミド樹脂がガラス繊維に含浸しにくい問題を効果的に解決することができる。
【0070】
更に説明すると、本発明の実施形態において、EPDM、TPO又はPOEなどのエラストマーを用いることによって、ポリアミド樹脂の靭性を向上し、特に低温の条件での靭性(例えば、低温耐衝撃強度)を向上することができる。
【0071】
尚、上述したエラストマーを無水マレイン酸にグラフトすることによって、エラストマーの低温耐衝撃性をポリアミド樹脂に与えることができる。尚、本発明の実施形態において、流動性改質剤(活性固体重合体分散剤(active solid polymer dispersant)))の導入によって、熱可塑性プラスチックにおける非連続相(例えば、強靭化剤、滑剤、着色剤)の分散性及び安定性を向上することができる。
【0072】
更に説明すると、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料全体の靭性を向上するために、本発明の実施形態は主に、無水マレイン酸MAHがグラフトされた強靭化剤(EPDM、TPO、POE、E-MA-GMA)、及び無水マレイン酸MAHがグラフトされた相溶化剤(PP、PE、PP/PE)をポリアミド樹脂に添加することによって、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を形成する。又、特筆すべきことは、本発明の実施形態において、前記強靭化剤での第1無水マレイン酸のグラフト率は、0.3%~1.5%であることが好ましい。前記相溶化剤の第2の無水マレイン酸のグラフト率は0.3%~1.5%であることが好ましい。無水マレイン酸のグラフト率を前記範囲に制御される技術効果は、異なる樹脂材料の間の相溶性及び樹脂材料とガラス繊維との接着性を向上することである。無水マレイン酸のグラフト率が0.3%未満であると、異なる樹脂材料の間の相溶性が不良となり、相分離が発生することが容易であるため、最終の産品の物性が不良となる。無水マレイン酸のグラフト率が1.5%を超えると、製造コストが高すぎる。更に説明すると、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは1g/10min~20g/10minである。その技術効果は、前記強靭化剤が前記メルトインデックスの範囲において複合材料の靭性を効果的に向上させることである。第1のメルトインデックスが1g/10min未満であると、前記混合プラスチックメルトの流動性が低すぎとなり、押出加工を行うことができない。第1のメルトインデックスが20g/10minを超えると、強靭化剤の強靭化効果を発揮することができない。前記相溶化剤の第2のメルトインデックスは100g/10min~600g/10minである。その技術効果は、前記相溶化剤が前記強靭化剤のポリアミド樹脂での分散性を向上することである。第2のメルトインデックスが100g/10min未満であると、強靭化剤のポリアミド樹脂での分散性が悪化する。第2のメルトインデックスが600g/10minを超えると、相溶効果が顕著に向上することができない。
【0073】
上述した構成により、本発明に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、優れた耐熱性、剛性、機械的強度、耐薬品性、及び表面光沢度を与えられると共に、比較的に低い吸水性及び良好な寸法安定性を有する。
【0074】
本発明の実施形態に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、電子機器、自動車、軍事産業などの分野、その他の分野に広く応用することができる。
【0075】
[実験データ及び実験結果]
本発明のポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法の技術効果を証明するために、以下にて、実験データ及び結果を説明する。ただし、後述の実施例及び比較例は本発明を理解するためのものであって、本発明の保護の範囲は、これらの実施例に限られない。
【0076】
実施例1~実施例7について、表1Aの配合に基づいて複数の原材料、例えば、ポリアミド、強靭化剤(例えば、POE-g-MA、TPO-g-MA、EPDM-g-MA、E-MA-GMA-g-MA)、相溶化剤(例えば、PE-g-MA、PP-g-MA、PE/PP-g-MA)、流動性改質剤(例えば、ポリオレフィン超分散剤)、及び他の添加剤(例えば、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤など)を、二軸押出機に供給して、混合・溶融を行うことによって、混合プラスチックメルトが形成された。混合プラスチックメルトを含浸装置に供給すると共に、表面に水酸基で改質された連続的なガラス長繊維を含浸装置に供給することによって、ガラス長繊維に混合プラスチックメルトを十分に含浸させた。又、混合プラスチックメルトで含浸されたガラス長繊維に対して成形・冷却して、造粒を行うことによって、ポリアミドガラス長繊維強化複合材料を得た。
【0077】
比較例1~比較例3と前記実施例との相違点については、比較例1~比較例3の原材料は、ポリアミド、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤のみを含み、実施例1~7における強靭化剤、相溶化剤、及び流動性改質剤を含まなかった。
【0078】
次に、前記実施例及び比較例で製造されたポリアミドガラス長繊維強化複合材料に対して、引張強度、伸長率、曲げ強度、耐衝撃強度、熱変形温度、光沢度、及び吸水性などの測定を行った。ここで、引張強度及び伸長率はISO 527の基準に基づいて行った。曲げ強度はISO 178の基準に基づいて行った。耐衝撃強度CHARPYはISO 179の基準に基づいて行った。熱変形温度(HDT)はISO 75の基準に基づいて行った。光沢度は、VG-7000の光沢測定でサンプルの表面を測定した。吸水性の吸湿条件は、温度23℃、相対湿度50%である。測定の結果は、表1Bに示す通りである。
【0079】
[表1A]
[表1B]
【0080】
[結果及び検討]
上述した実験結果によれば、実施例1~7は、比較例1~3に比べて、物性の測定結果において、より優れた伸長率(実施例が2.5~3.6%で、比較例が1.9~2.3%である)及び耐衝撃強度(即ち、靭性)を備えた。特に、低温での耐衝撃強度(CHARPY KJ/m(23℃)において、実施例が37.6~54.5KJ/mで、比較例が12.2~16.1KJ/mであり、CHARPY KJ/m(-40℃)について、実施例が32.1~53.7KJ/mで、比較例が2.1~3.5KJ/mである)であり、本実施例が優れている。
【0081】
又、製造過程において、実施例1~7は、比較例1~3に比べて、溶融混合された原材料のガラス繊維に対する含浸効果がより優れているため、従来技術における含浸効果が不良である問題を改良することができた。
【0082】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料及びその製造方法は、「前記強靭化剤は、第1のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質されたエラストマーであり、前記相溶化剤は、第2のポリオレフィン材料で構成され、無水マレイン酸で改質された樹脂材料であり、前記強靭化剤の第1のメルトインデックスは、前記相溶化剤の第2のメルトインデックスより低い」及び「前記ガラス長繊維材料は、含浸材料で十分に含浸され、覆われており、前記ガラス長繊維材料の表面が水酸基及び/又はカルボキシル基で改質されている」といった技術特徴によって、ポリアミド(ナイロンプラスチック)の靭性を向上すると共に、プロセスにおける含浸効果が不良である問題を解決することができる。
【0083】
更に説明すると、本発明に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、優れた耐熱性、剛性、機械的強度、耐薬品性、及び表面光沢度に与えられると共に、比較的に低い吸水性及び良好な寸法安定性を有する。本発明の実施形態に係るポリアミドガラス長繊維強化複合材料は、電子機器、自動車、軍事産業などの分野、その他の分野に広く応用することができる。
【0084】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1…押出機
2…含浸装置
3…ボビン装置
4…延展装置
5…成形装置
6…ガイド装置
7…造粒装置
RM…原材料
GF…ガラス長繊維
P…産物
図1
図2