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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】工作機械の切りくず処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20250220BHJP
   B01D 33/06 20060101ALI20250220BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20250220BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20250220BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B01D33/06 A
B01D33/18 Z
B01D21/02 Q
B01D21/02 S
B01D21/18 G
B01D21/24 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023118632
(22)【出願日】2023-07-20
(65)【公開番号】P2025015306
(43)【公開日】2025-01-30
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 敏之
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113854(JP,A)
【文献】特開2001-310235(JP,A)
【文献】特開2007-007790(JP,A)
【文献】特開2011-177860(JP,A)
【文献】特開2018-199178(JP,A)
【文献】特開2021-126731(JP,A)
【文献】特開2003-094336(JP,A)
【文献】特開2009-148861(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162623(JP,U)
【文献】特開2005-007210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q11/00
B01D21/02
B01D21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の加工で発生する切りくずをクーラントから分離する切りくず処理装置において、
加工領域から排出される切りくずとクーラントが流入する第1の開口を有したダーティ槽と、
前記ダーティ槽の内部に設けられ、クーラントの切りくずを除去するドラムフィルタと、
前記ダーティ槽の内部に設けられ、切りくずを機外に排出するチップコンベアと、
前記ダーティ槽に隔壁を介して連接して設けられたクリーン槽と、
前記隔壁に形成され、前記ドラムフィルタにより切りくずが除去されたクーラントを、前記ダーティ槽から前記クリーン槽へ流入させる第2の開口と、
前記クリーン槽の内部に設けられ、前記クリーン槽の底部に沈下している切りくずを、前記クリーン槽の長手方向にかき上げるスクレーパを有するスクレーパコンベアと、
前記クリーン槽の内部のクーラントに浸漬され、前記第2の開口の下縁より下側かつ前記スクレーパコンベアの上側に配置され、前記第2の開口から流入するクーラントが、前記スクレーパコンベアへ直接流れることを妨げる水平部が設けられ、前記第2の開口から前記クリーン槽の底部へのクーラントの流れを妨げ、前記第2の開口から前記クリーン槽の底部へ流入するクーラントにより前記クリーン槽の底部に沈下している切りくずの舞い上げを防止するじゃま板と、
を具備することを特徴とした工作機械の切りくず処理装置。
【請求項2】
前記第2の開口が前記クリーン槽の長手方向の一端付近に設けられる請求項1に記載の工作機械の切りくず処理装置。
【請求項3】
前記じゃま板が、前記第2の開口から前記クリーン槽へ流入するクーラントを、前記第2の開口と反対の一端側に流れるように設けられ、
前記スクレーパコンベアの排出口が、前記第2の開口と同じ一端側にある請求項2に記載の工作機械の切りくず処理装置。
【請求項4】
前記スクレーパコンベアの排出口が、前記第2の開口と反対の一端側に設けられた請求項2に記載の工作機械の切りくず処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出される切りくずとクーラントを分離し、清浄なクーラントを生成する工作機械の切りくず処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、ワークと工具との間の加工領域にクーラントを供給しつつワークを切削加工または研削加工され、そのときに発生する切りくずが、クーラントとともに加工領域から除去される。クーラントは、切りくずを除去した後に再利用される。そのため、多くの工作機械は、クーラントを回収し切りくずを除去する切りくず処理装置を備えている。特許文献1には、そうした切りくず除去装置の一例として、スクレーパ式のチップコンベアをそれぞれ有したダーティ槽、中間槽およびクリーン槽を有したクーラントタンクが記載されている。また、特許文献2には、クーラントの流れを助成する撹拌ノズル体を設け、クーラントタンク内に十分な流速の液流を生じさせることにより、タンク内における切りくずの沈殿・堆積を抑止可能なクーラントタンクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-148861号公報
【文献】特開2018-199178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のクーラントタンクでは、中間槽とクリーン槽との間の隔壁にはクーラントの流通路が開口されており、この流通路からクーラントが中間槽からクリーン槽に流入するようになっている。クリーン槽には、ダーティ槽および中間槽で切りくずを除去した後のクーラントが流入するので、非常に小さな切りくずしか含んでいない。流通路は、クリーン槽の底面に接触するチップコンベアのスクレーパの直ぐ上に形成されているので、スクレーパが掻き集めた微粒の切りくずが、クリーン槽に流入するクーラントによってクーラント中に舞い上がり、チップコンベアによる切りくずの除去効率が低下し、クリーン槽内のクーラントが含む切りくずの量が増加してしまう。
【0005】
クーラント中に舞い上がり、スクレーパコンベアにより回収できなかった微少な切りくずはポンプにより吸引され、ポンプのインペラやシール部材を摩耗させ故障の原因となる。またポンプにより吸引されなかった微少な切りくずは、タンク内の各所に堆積する。これは機械を停止させ人力による清掃を要し生産効率の低下を引き起こすだけでなく、クーラントタンクの材質と切りくずの材質の組み合わせ(例えば鉄とアルミニウム)によってはクーラントタンク底面にガルバニック腐蝕を生じさせ、クーラント漏れの原因となる。
【0006】
また工作機械は、より高度に浄化されたクーラントを必要とする場合がある。例えば回転継手を介し主軸内部及び工具内部を経由し、工具刃先の加工領域にクーラントを直接供給するスルースピンドルクーラント装置が搭載された場合などである。この場合にはバグフィルタ、サイクロンフィルタ、あるいはペーパフィルタなどから構成される二次処理装置をクーラントタンクに搭載することがある。スクレーパコンベアにより回収できなかった微少な切りくずの一部はこれらの二次処理装置において回収されるが、多量の微少な切りくずの存在はフィルタの交換・清掃頻度の増加という問題を引き起こす。
【0007】
特許文献2では、ほぼ矩形状の2つのクーラントタンクを連通部により連通し、全体形状がほぼU字形に形成されたクーラントタンクにおいて、撹拌用ポンプから供給されたクーラントを両タンク内に設けた撹拌ノズルから吐出してクーラントの流れを助成することにより、両タンク内及び連接部に十分な流速の液流を生じさせることにより切りくずの沈殿・堆積を防いでいる。この場合、撹拌用ポンプは工作機械の加工中は常時動作し、また加工終了後もフィルタにより切りくずが全て処理されるまで撹拌を続ける必要があるため、消費電力が増加する問題がある。
【0008】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、クリーン槽における切りくずの除去効率を高め、消費電力の少ない工作機械の切りくず処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、工作機械の加工で発生する切りくずをクーラントから分離する切りくず処理装置において、加工領域から排出される切りくずとクーラントが流入する第1の開口を有したダーティ槽と、前記ダーティ槽の内部に設けられ、クーラントの切りくずを除去するドラムフィルタと、前記ダーティ槽の内部に設けられ、切りくずを機外に排出するチップコンベアと、前記ダーティ槽に隔壁を介して連接して設けられたクリーン槽と、前記隔壁に形成され、前記ドラムフィルタにより切りくずが除去されたクーラントを、前記ダーティ槽から前記クリーン槽へ流入させる第2の開口と、前記クリーン槽の内部に設けられ、前記クリーン槽の底部に沈下している切りくずを、前記クリーン槽の長手方向にかき上げるスクレーパを有するスクレーパコンベアと、前記クリーン槽の内部のクーラントに浸漬され、前記第2の開口の下縁より下側かつ前記スクレーパコンベアの上側に配置され、前記第2の開口から流入するクーラントが、前記スクレーパコンベアへ直接流れることを妨げる水平部が設けられ、前記第2の開口から前記クリーン槽の底部へのクーラントの流れを妨げ、前記第2の開口から前記クリーン槽の底部へ流入するクーラントにより前記クリーン槽の底部に沈下している切りくずの舞い上げを防止するじゃま板とを具備する工作機械の切りくず処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
前記第2の開口から前記クリーン槽の底部へのクーラントの流れを妨げるじゃま板を設けたので、クリーン槽へ流入するクーラントによって、スクレーパが掻き集めた底面の微少な切りくずが撹拌されクーラント中に舞い上がることが防止され、スクレーパコンベアによって切りくずを一層効果的に収集しクリーン槽の外部へ排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の切りくず処理装置を利用可能な工作機械の一例を示す側面図である。
図2図1の切りくず処理装置におけるクーラントの流れを示す略図である。
図3】切りくず処理装置のダーティ槽を示す図2の矢視線III-IIIに沿う略示側断面図である。
図4】切りくず処理装置のクリーン槽を示す図2の矢視線IV-IVに沿う略示側断面図である。
図5】じゃま板の一例を示す斜視図である。
図6図5のじゃま板の側面図である。
図7】じゃま板の他の例を示す側面図である
図8】じゃま板の更に他の例を示す側面図である
図9】じゃま板の更に他の例を示す側面図である
図10】ダーティ槽とクリーン槽とを互いに連通させる第2の開口としての流入口の他の例を示すクリーン槽の略示側断面図である。
図11】ダーティ槽とクリーン槽とを互いに連通させる第2の開口としての流入口の更に他の例を示すクリーン槽の略示側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1を参照すると、本発明の切りくず処理装置を利用可能な工作機械の一例が図示されている。図1において、工作機械100は、横形マシニングセンタを構成しており工場等の床面に固定される基台としてのベッド102、ベッド102の前方部分(図1では左側)の上面で前後方向またはZ軸方向(図1では左右方向)に移動可能に設けられ、ワークWが固定されるテーブル112、ベッド102の後端側(図1では右側)で同ベッド102の上面で左右方向またはX軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたコラム104、該コラム104の前面で上下方向またはY軸方向に移動可能に設けられたY軸スライダ110、Y軸スライダ110に取り付けられ主軸106を中心軸線O周りに回転可能に支持する主軸頭108、工作機械100に隣接させて配設された切りくず処理装置10を具備している。
【0013】
本実施形態では、ワークWは、イケールのようなワーク取付具118を介してテーブル112に固定されている。ベッド102内には、切りくずを切りくず処理装置10へ流す流路であるトラフ114が設けられている。トラフ114には、クーラントを噴出するノズル124を設けることができる。工作機械100は、また、工作機械100を包囲するカバーまたはスプラッシュガード126を備えていてもよい。カバーまたはスプラッシュガード126の内側にクーラントを噴出するノズル128を設けることができる。
【0014】
主軸106の先端には、エンドミルや回転砥石のような回転工具Tが装着される。こうして、主軸106を回転させつつ、回転工具TとワークWとをX、Y、Zの3軸方向に相対移動させて、ワークWが切削加工または研削加工される。ワークWの加工中、ワークWと回転工具Tとが接触する加工領域にはクーラントが供給される。クーラントは、ノズル122によって回転工具Tの外部から加工領域へ向けて供給することができる。クーラントは、また、いわゆるスルースピンドルクーラントとして、中心軸線Oに沿って主軸106内に延設されたクーラント管路(図示せず)、および、回転工具T内に形成されたクーラント通路(図示せず)を介して、回転工具Tの先端部から加工領域に供給するようにしてもよい。クーラントは、例えば、主軸106の後端部に設けられた回転継手120から、主軸106の内部に延設された前記クーラント管路内に供給することができる。
【0015】
また、ノズル124からトラフ114へ向けてクーラントを噴出させて、トラフ114に堆積した切りくずを切りくず処理装置10へ向けて洗い流すようにできる。更に、ノズル128からカバーまたはスプラッシュガード126の内面へ向けてクーラントを噴出させて、カバーまたはスプラッシュガード126の内面に付着した切りくずをトラフ114内に洗い流すようにできる。
【0016】
切りくず処理装置10は、ダーティ槽20と、クリーン槽40とを含む。ベッド102と切りくず処理装置10との間には、ダーティ槽20に開口する接続通路116が設けられている。図2を参照すると、切りくず処理装置10は、ダーティ槽20とクリーン槽40とを仕切る隔壁16を有することができる。また、切りくず処理装置10は複数のポンプを備えることができる。図2、4に示す実施形態では、複数のポンプは、第1のポンプP1、第2のポンプP2および第3のポンプP3を含んでいる。なお、ダーティ槽20とクリーン槽40の間に、中間槽(図示せず)を設けてもよい。
【0017】
図3を参照すると、ダーティ槽20は、切りくず排出口22aと、接続通路116に連通する第1の開口としての流入口22bとを有している。切りくず排出口22aの下側には、ダーティ槽20で除去された切りくずを収集するためのチップバケット14を配置することができる。ダーティ槽20内には、チップコンベアとしてのスクレーパコンベア24と、ドラムフィルタ28が配設されている。
【0018】
スクレーパコンベア24は、複数のスプロケットの間に張り渡された一対の無端状の駆動チェーン24aと、該一対の駆動チェーン24aに取り付けられた複数のスクレーパ24bとを有している。スクレーパ24bは、一対の駆動チェーン24aの間で、駆動チェーン24aの移動方向に対して垂直な方向、本実施形態ではZ軸方向に延設されている。スクレーパコンベア24は、ダーティ槽20の底面に対面するスクレーパ24bが、ダーティ槽20の底面に接触可能なように配置される。
【0019】
前記複数のスプロケットは、本実施形態では一対の駆動スプロケット26aと、一対の従動スプロケット26bとを含んでいる。一対の駆動スプロケット26aは、駆動シャフト(図示せず)に沿って互いに離間させて該駆動シャフトに取り付けられ、一対の従動スプロケット26bは、従動シャフトに沿って互いに離間させて該従動シャフトに取り付けられている。本実施形態では、駆動シャフトおよび従動シャフトはZ軸方向に延設されている。駆動シャフトは、不図示の駆動モータに、例えばチェーン(図示せず)を介して連結するようにでき、該駆動モータによって矢印Adsの方向に回転駆動される。
【0020】
ドラムフィルタ28は、円筒状に形成したフィルターメッシュ(図示せず)、または、円筒状のドラムの外周に巻き付けたシート状フィルタ(図示せず)を備え、中心軸線Od周りに回転可能にダーティ槽20の側壁20aおよび隔壁16に支持されている。本実施形態では中心軸線OdはZ軸方向に延びている。ドラムフィルタ28の外周にはスプロケット(図示せず)が同心に取付けられ、該スプロケットに係合する駆動用チェーン(図示せず)を介して、スクレーパコンベア24を駆動する前記駆動モータに連結するようにできる。あるいはドラムフィルタを回転させる専用の駆動モータを有してもよい。
【0021】
隔壁16には、ダーティ槽20とクリーン槽40とを互いに連通させる第2の開口としての流入口16aが形成されている。本実施形態では、流入口16aは、中心軸線Odを中心とする円形に形成されているが、他の形状であってもよい。
【0022】
ダーティ槽20は、チップコンベアとして、スクレーパコンベア24に加えてヒンジコンベア30を更に備えていてもよい。ダーティ槽20がヒンジコンベア30を備える場合、ヒンジコンベア30は、ダーティ槽20内の液面LHdの上側でスクレーパコンベア24の上方で流入口22bの下側に配置される。ヒンジコンベア30は、複数のスプロケットの間に張り渡された一対の無端状の駆動チェーン30aと、ヒンジ部材(図示せず)により屈曲可能に連結した複数のプレート(図示せず)とを有し、前記ヒンジ部材を構成するピン(図示せず)の両端が駆動チェーン30aに連結されている。前記ピンは、一対の駆動チェーン30aの間で、駆動チェーン30aの移動方向に対して垂直な方向、本実施形態ではZ軸方向に延設されている。
【0023】
ヒンジコンベア30のための前記複数のスプロケットは、本実施形態では一対の駆動スプロケット32aと、一対の従動スプロケット32bとを含んでいる。一対の駆動スプロケット32aは、駆動シャフト(図示せず)に沿って互いに離間させて該駆動シャフトに取り付けられ、一対の従動スプロケット32bは、従動シャフトに沿って互いに離間させて該従動シャフトに取り付けられている。本実施形態では、駆動シャフトおよび従動シャフトはZ軸方向に延設されている。駆動シャフトは、不図示の駆動モータに、例えばチェーン(図示せず)を介して連結するようにでき、該駆動モータによって矢印Ahの方向に回転駆動される。
【0024】
図4を参照すると、クリーン槽40は切りくず排出口40aを有している。切りくず排出口40aの下側には、クリーン槽40で除去された切りくずを収集するためのチップバケット18を配置することができる。ダーティ槽20のためのチップバケット14とクリーン槽40のためのチップバケット18は、共通の1つのチップバケットであってもよい。
【0025】
クリーン槽40内には、ダーティ槽20に連通する流入口16aの下側に、スクレーパコンベア44が配設されている。スクレーパコンベア44は、ダーティ槽20のスクレーパコンベア24と同様の構成を有しており、複数のスプロケットの間に張り渡された一対の無端状の駆動チェーン44aと、該一対の駆動チェーン44aに取り付けられた複数のスクレーパ44bとを有している。スクレーパ44bは、一対の駆動チェーン44aの間で、駆動チェーン44aの移動方向に対して垂直な方向、本実施形態ではZ軸方向に延設されている。スクレーパコンベア44は、クリーン槽40の底面に対面するスクレーパ44bが、クリーン槽40の底面に接触可能なように配置される。
【0026】
前記複数のスプロケットは、本実施形態では一対の駆動スプロケット46aと、一対の従動スプロケット46bとを含んでいる。一対の駆動スプロケット46aは、駆動シャフト(図示せず)に沿って互いに離間させて該駆動シャフトに取り付けられ、一対の従動スプロケット46bは、従動シャフトに沿って互いに離間させて該従動シャフトに取り付けられている。本実施形態では、駆動シャフトおよび従動シャフトはZ軸方向に延設されている。駆動シャフトは、不図示の駆動モータに、例えばチェーン(図示せず)を介して連結するようにでき、該駆動モータによって矢印Acsの方向に回転駆動される。
【0027】
クリーン槽40内には仕切り壁48が設けられており、該仕切り壁48によって、クリーン槽40は第1の槽48aと第2の槽48bに分割される。スクレーパコンベア44は、クリーン槽40の第2の槽48b内に配置される。ダーティ槽20とクリーン槽40とを連通させる流入口16aは、クリーン槽40の第2の槽48bに開口するように配置されている。更に、第1のポンプP1は第1の槽48aのクーラントを吸い込むように、そして第2のポンプP2および第3のポンプP3は第2の槽48bのクーラントを吸い込むように配置されている。
【0028】
本実施形態では、第1のポンプP1は、管路10eを介して、工作機械100の回転継手120に接続され、第2のポンプP2は、管路10fを介して、工作機械100のノズル122、124、128に接続され、第3のポンプP3は、管路10gを介して、二次処理装置12に接続されている。二次処理装置12は、一層微細な切りくずをクーラントから除去可能なフィルタ装置を備えている。二次処理装置12により高度に清浄化されたクーラントは、管路10hを介して、クリーン槽40の第1の槽48aに供給され、該第1の槽48aに貯留される。
【0029】
クリーン槽40内にはじゃま板42が配設されている。じゃま板42は、ダーティ槽20に連通する流入口16aの下側でスクレーパコンベア44の上側に配置することができる。じゃま板42は、流入口16aから流入するクーラントが、スクレーパコンベア44へ直接流れることを妨げる水平部42aを少なくとも備えている。図示する実施形態では、じゃま板42は、水平部42aに加えて、概ね鉛直に配置される垂直部42b、水平部42aと垂直部42bとの間に配置される傾斜部42cを有している。じゃま板42は、水平部42a、垂直部42bおよび傾斜部42cを有するように、1枚の板状の部材を屈曲して形成することができる。独立した水平部42a、垂直部42bおよび傾斜部42cを溶接してじゃま板42を形成してもよい。
【0030】
以下、本実施形態の作用を説明する。
上述のように、ワークWの加工中、ワークWと回転工具Tとが接触する加工領域で発生する切りくずおよび加工領域に供給されたクーラントはトラフ114へ落下し、図2の矢印10aで示すように、該トラフ114から接続通路116を介して、流入口22bからダーティ槽20へ流入する。このとき、ノズル124からトラフ114へ向けてクーラントを噴出したり、ノズル128からカバーまたはスプラッシュガード126の内面にクーラントを噴出したりする場合には、こうしたクーラントも切りくずとともにダーティ槽20へ流入する。
【0031】
ダーティ槽20では、クーラントは、矢印10bで示すように、流入口22bからドラムフィルタ28へ向けて流れる。ドラムフィルタ28では、クーラントはドラムフィルタ28の外周面からドラムフィルタ28の内部へ流入する。クーラントに含まれていた切りくずの一部が、ドラムフィルタ28によって除去される。また、ドラムフィルタ28は、常時内部から逆洗用噴流が供給されて目詰まりが防止されている。
【0032】
ドラムフィルタ28によって除去された切りくずおよび逆洗によりフィルタより洗い流された切りくずは、ダーティ槽20内で沈殿し、ダーティ槽20の底面に堆積する。ダーティ槽20の底面に堆積した切りくずは、スクレーパコンベア24によって掻き集められ、切りくず排出口22aからダーティ槽20の外部へ、好ましくはチップバケット14へ排出される。なお、ダーティ槽20が、ヒンジコンベア30を備えている場合には、流入口22bからダーティ槽20へ流入したクーラントに含まれている切りくずのうち、比較的大きな切りくずは、ヒンジコンベア30によって集められ、切りくず排出口22aからダーティ槽20の外部へ、好ましくはチップバケット14内に排出される。
【0033】
ドラムフィルタ28を通過したクーラントは、矢印10cで示すように、流入口16aからクリーン槽40内に流入する。クリーン槽40に流入したクーラントは、第2の槽48b内で第2のポンプP2および第3のポンプP3によって吸い込まれるので、矢印10dで示すように、クリーン槽40、特に第2の槽48b内を下流側、つまり第1の槽48aの方向に流れる。クーラントが下流側へ流れる間、該クーラントに含まれている切りくずはクリーン槽40内で沈殿し、クリーン槽40の底面に堆積する。クリーン槽40の底面に堆積した切りくずは、スクレーパコンベア44によって掻き集められ、切りくず排出口40aからクリーン槽40の外部へ、好ましくはチップバケット18内に排出される。なお、クリーン槽40のスクレーパコンベア44はダーティ槽20のスクレーパコンベア24より低速で運転してもよいし、間欠運転でもよい。またオペレータが必要と判断したときだけに不定期に運転してもよい。これにより、消費電力が軽減される。
【0034】
第2のポンプP2によって吸い込まれたクーラントは、管路10fを介して工作機械100に供給することができる。より詳細には、第2のポンプP2によって吸い込まれたクーラントは、ノズル124からトラフ114、或いは、ノズル128からカバーまたはスプラッシュガード126の内面に供給することができる。またノズル122から加工領域へ供給することができる。
【0035】
第3のポンプP3によって吸い込まれたクーラントは、管路10gを介して二次処理装置12に供給され、該二次処理装置12によって高度に清浄化される。高度に浄化されたクーラントは、二次処理装置12から管路10hを介して、クリーン槽40の第1の槽48aに供給され、該第1の槽48aに貯留される。第1の槽48a内のクーラントは、第1のポンプP1により吸い込まれ、管路10eを介して工作機械100に供給される。即ち前述のスルースピンドルクーラント装置であり、詳細には、第1のポンプP1によって吸い込まれたクーラントは、回転継手120から、主軸106内に延設されたクーラント管路、および、回転工具T内に形成されたクーラント通路(図示せず)を介して、回転工具Tの先端部から加工領域に供給される。
【0036】
クーラントは、流入口16aを通過してダーティ槽20からクリーン槽40へ流入する際、じゃま板42によって、スクレーパコンベア44が接触するクリーン槽40の底面へ直接流れることが妨げられる。これにより、スクレーパコンベア44が掻き集めた切りくずが舞い上がることが防止または軽減され、効率よく切りくずを排出可能となる。更に、クーラント中に含まれるスラッジのような微少な切りくずが減少することにより、第1のポンプP1、第2のポンプP2および第3のポンプP3のインペラやシール部材の寿命が長くなり、また、二次処理装置12で除去すべき微少な切りくずの量が低減されるので、二次処理装置12のフィルタの交換頻度を低減することが可能となる。更に、第2のポンプP2によって第2の槽48bから工作機械100に供給されるクーラントが含有する微少な切りくずの量が少なくなる。
【0037】
なお、仕切り壁48の高さを、第1の槽48a内の液面LHcよりも高くすることによって、二次処理装置12から第1の槽48a内へ供給されるクーラントの量が、第1の槽48aから工作機械100へ供給されるクーラントの量よりも多くなったときに、余剰となるクーラントが仕切り壁48を超えて、第2の槽48bへオーバーフローするようにできる。
【0038】
本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲で種々の変形と改良が可能である。
例えば、既述の実施形態では、工作機械100は横形のマシニングセンタであるが、本発明はこれに限定されず、切りくず処理装置とともに用いる工作機械は立形のマシニングセンタであってもよい。
【0039】
更に、既述の実施形態では、クリーン槽40のスクレーパコンベア44は、不図示の駆動シャフトを不図示の駆動モータにより駆動することにより運転されるが、手動でクランクなどを回転させることにより駆動シャフトを駆動させて運転させてもよい。
【0040】
更に、既述の実施形態では、じゃま板42は、水平部42a、垂直部42bおよび傾斜部42cを有しているが、じゃま板42はこれに限定されず、種々の形状とすることができる。要は、じゃま板42は、流入口16aからクリーン槽40に流入するクーラントによって、該じゃま板42の下側にあるスクレーパコンベア44が掻き集めた切りくずをクーラント中に再び分散してしまうことを防止または低減する形状であればよい。そうした形状の1つとして、じゃま板42は、水平部42aのみを有していてもよい。
【0041】
更に、じゃま板42は、水平部42aと垂直部42bとが平板状の傾斜部42cによって連結されているが、図7のじゃま板42′に示すように、水平部42aと垂直部42bを湾曲した板部材、特に円筒面の一部から形成される板部材42dによって連結するようにしてもよい。更に、じゃま板は、図8に示す水平に配置した単なる平板42″や、図9に示す円筒面の一部からなる板部材42(3)から形成してもよい。
【0042】
更に、既述の実施形態では、流入口16aは、クリーン槽40の切りくず排出口40aが設けられている端部側に配置されているが、第2の開口としての流入口はこれに限定されず、図10の流入口16a′のようにクリーン槽40′の概ね中央部分や、図11の流入口16a″のようにクリーン槽40″において切りくず排出口40aの反対側に配置するようにしてもよい。なお、図10、11では、クリーン槽40′、40″は平板状のじゃま板42″を備えているように図示されているが、これに限定されず、図5、6のじゃま板42、図7のじゃま板42′または図9のじゃま板42(3)であってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0043】
10 切りくず処理装置
16 隔壁
16a 流入口
20 ダーティ槽
22a 切りくず排出口
22b 流入口
24 スクレーパコンベア
28 ドラムフィルタ
30 ヒンジコンベア
40 クリーン槽
40a 切りくず排出口
42 じゃま板
44 スクレーパコンベア
48 仕切り壁
100 工作機械
図1
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図11