(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-19
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2024114782
(22)【出願日】2024-07-18
【審査請求日】2024-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2023117283
(32)【優先日】2023-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】林 寛人
(72)【発明者】
【氏名】村田 将一
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-66536(JP,A)
【文献】特開2023-13191(JP,A)
【文献】特開2021-189196(JP,A)
【文献】特開2021-182032(JP,A)
【文献】特開2019-159315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル樹脂Aを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂Cがエチレングリコールを70モル%以上含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分の重縮合物であり、該アルコール成分及び/又は該カルボン酸成分が1官能のモノマーを含有し、前記非晶性ポリエステル樹脂Aがアルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートとの重縮合物である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
非晶性ポリエステル樹脂Aにおいて、ポリエチレンテレフタレートの含有量が、テレフタル酸-エチレングリコールのユニットを1モルとして、アルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートの合計量中、5モル%以上75モル%以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
非晶性ポリエステル樹脂Aにおいて、ポリエチレンテレフタレートの含有量が、テレフタル酸-エチレングリコールのユニットを1モルとして、アルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートの合計量中、15モル%以上65モル%以下である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレートのIV値が、0.40以上0.80以下である、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aの合計量中、3質量%以上30質量%以下である、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
結晶性ポリエステル樹脂Cにおいて、1官能のモノマーが、炭素数9以上24以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物及び/又は炭素数9以上24以下の脂肪族モノアルコールを含有する、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
結晶性ポリエステル樹脂Cにおいて、1官能のモノマーの含有量が、アルコール成分及びカルボン酸成分の合計量中、2モル%以上30モル%以下である、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
非晶性ポリエステル樹脂Aにおいて、アルコール成分が、炭素数が3以上6以下の脂肪族ジオールを含有する、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
炭素数が3以上6以下の脂肪族ジオールの含有量が、アルコール成分中、30モル%以上100モル%以下である、請求項8記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
結晶性ポリエステル樹脂Cにおいて、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数が、10以上16以下である、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
非晶性ポリエステル樹脂Aが、軟化点が10℃以上異なる非晶性樹脂を含有する、請求項1~3いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートを導入した非晶性ポリエステル樹脂とアルコール成分としてエチレングリコールを用いた結晶性ポリエステル樹脂との親和性が高く、両者を併用した結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、吸湿性の低下に有効な原料モノマーとして、1価の長鎖脂肪族モノマーが用いられたポリエステル樹脂が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-66536号公報
【文献】特開2021-189196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーの低温定着性を向上させるために結晶性ポリエステル樹脂が用いられているが、トナー中での分散状態を制御することが不十分であると、帯電安定性に影響がでやすい。さらに、近年、より厳しい耐熱性が要求される状況では、加圧保存性を同時に確保することが求められている。
【0006】
本発明は、帯電安定性と加圧保存性に優れた静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結晶性ポリエステル樹脂C及び非晶性ポリエステル樹脂Aを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記結晶性ポリエステル樹脂Cがエチレングリコールを70モル%以上含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分の重縮合物であり、該アルコール成分及び/又は該カルボン酸成分が1官能のモノマーを含有し、前記非晶性ポリエステル樹脂Aがアルコール成分とカルボン酸成分とポリエチレンテレフタレートとの重縮合物である、静電荷像現像用トナーに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の静電荷像現像用トナーは、帯電安定性と加圧保存性において優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の静電荷像現像用トナーは、エチレングリコールと1官能のモノマーを用いた結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂C)とポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた非晶性ポリエステル樹脂(非晶性ポリエステル樹脂A)を含有している点に大きな特徴を有する。本発明の静電荷像現像用トナーが、帯電安定性及び加圧保存性に優れる理由は定かではないが、以下のように推察される。
【0010】
エチレングリコールをアルコール成分の主成分とし、さらに1官能のモノマー由来の成分を含有する結晶性ポリエステル樹脂において、1官能のモノマー由来の成分は樹脂の末端構造となり、カルボキシ基や水酸基の末端に比べて疎水的である。
一方、PETを用いて得られる非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とPETの重縮合反応において、PETが解重合を受けながらエステル交換反応によりポリエステル樹脂鎖に取り込まれるものの、完全にランダム化はせず、樹脂中にPETセグメントと呼べるある程度の長さのユニットとして存在する。このPETセグメントと、エチレングリコールをアルコール成分の主成分とする結晶性ポリエステル樹脂との親和性が高いため、結晶性ポリエステル樹脂の非晶性ポリエステル樹脂中への分散性が向上し結晶化が促進される。その結果、トナーが加圧下で保存された状態であっても良好な保存安定性を示すとともに、トナー粒子表面近傍に存在する分散性の向上した結晶性ポリエステル樹脂のドメインから外界側に向けて1官能モノマー由来の疎水的な末端が配向するため、トナーの吸湿性が低減され、帯電安定性に優れるものと考えられる。
【0011】
結晶性ポリエステル樹脂Cは、エチレングリコールを主成分として含有するアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸系化合物を含むカルボン酸成分の重縮合物である。
【0012】
エチレングリコールの含有量は、アルコール成分中、70モル%以上であり、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、アルコール成分がモノアルコールを含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0013】
他のアルコール成分としては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等のエチレングリコール以外の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA等の芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、フマル酸(炭素数:4)、アジピン酸(炭素数:6)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン二酸(炭素数:12)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。ここで、脂肪族ジカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0015】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは16以下であり、より好ましくは14以下である。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸系化合物は、飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物であっても、不飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物であってもよいが、加圧保存性の観点から、飽和脂肪族ジカルボン酸系化合物であることが好ましい。
【0017】
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、加圧保存性の観点から、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、カルボン酸成分がモノカルボン酸系化合物を含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
【0018】
他のカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の等の3価以上のカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0019】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂Cのアルコール成分及び/又はカルボン酸成分は、1官能のモノマーを含有する。
【0020】
アルコール成分に含まれる1官能のモノマーとしては、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の脂肪族モノアルコール等が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分に含まれる1官能のモノマーとしては、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等の脂肪族モノカルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0022】
1官能のモノマーは、疎水性を向上する観点から、脂肪族モノカルボン酸系化合物及び/又は脂肪族モノアルコールを含有することが好ましい。
【0023】
脂肪族モノアルコールの炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは22以下である。
【0024】
脂肪族モノカルボン酸系化合物の炭素数は、疎水性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは24以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは22以下である。ここで、脂肪族モノカルボン酸系化合物がアルキルエステルである場合のアルキル基の炭素数は、上記炭素数には含めない。
【0025】
1官能のモノマーの含有量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の合計量中、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上であり、そして、加圧保存性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
【0026】
なお、本明細書において、マクロモノマーやヒドロキシカルボン酸は、アルコール成分及びカルボン酸成分には含めない。
【0027】
カルボン酸成分のカルボキシ基のアルコール成分の水酸基に対する当量比(COOH基/OH基)は、加圧保存性の観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
【0028】
結晶性ポリエステル樹脂Cは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは120℃以上230℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0029】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化触媒の助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0030】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0031】
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点は、加圧保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。
【0032】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最大ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最大ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。
結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である。
一方、非晶性樹脂は、吸熱ピークが観測されないか、観測される場合は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。
樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂Cの融点は、加圧保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂Cの酸価は、帯電安定性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、加圧保存性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aの合計量中、低温定着性及び加圧保存性の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、そして、加圧保存性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0036】
非晶性ポリエステル樹脂Aは、アルコール成分とカルボン酸成分とPETとの重縮合物である。
【0037】
アルコール成分は、加圧保存性及び帯電安定性の観点から、炭素数が3以上6以下の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
【0038】
炭素数が3以上6以下の脂肪族ジオールとしては、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらのなかでは、加圧保存性の観点から、ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0039】
炭素数が3以上6以下の脂肪族ジオールの含有量は、加圧保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、アルコール成分が3価以上のアルコールを含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。ただし、ここでいうアルコール成分にPETのエチレングリコール単位は含めない。
【0040】
他のアルコール成分としては、炭素数が7以上の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA等の芳香族ジオール、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0041】
カルボン酸成分は、帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。
【0042】
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0043】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、カルボン酸成分が3価以上のカルボン酸系化合物を含む場合は、好ましくは98モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。ただし、ここでいうカルボン酸成分にPETに含まれるテレフタル酸単位は含めない。
【0044】
芳香族ジカルボン酸系化合物以外のカルボン酸成分としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、炭化水素基で置換されたコハク酸誘導体、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0045】
非晶性ポリエステル樹脂Aのアルコール成分及び/又はカルボン酸成分には、軟化点調整の観点から、3価以上の原料モノマーが用いられていてもよく、その場合、帯電安定性の観点から、3価以上のアルコール、好ましくはグリセリン又はトリメチロールプロパン、より好ましくはグリセリンが用いられていることが好ましい。3価以上の原料モノマーの含有量は、アルコール成分とカルボン酸成分とPETの合計量中、好ましくは2モル%以上、より好ましくは4モル%以上であり、そして、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0046】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含まれていてもよい。
【0047】
PETは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応により、及び/又はPETの一部が解重合を受けて生成するエチレングリコールとテレフタル酸が、原料モノマーとして重縮合反応に供され、ポリエステル樹脂に取り込まれる。PETは、エチレングリコールとテレフタル酸の等モル重縮合物として、PETを構成するエチレングリコールとテレフタル酸をそれぞれアルコール成分とカルボン酸成分としてみなす。
【0048】
PETは新品のVirgin PETであっても、再生PETであってもよい。
再生PETは、使用済みのPETを回収し、必要に応じて洗浄や他の材料との選別等を行った後粉砕され、粉砕物を解重合によりモノマー単位まで分解し、これを原料として再合成して得られたものをいう。
【0049】
本発明において、PETは、従来用いられているPETに比べて比較的低IV値、即ち低分子量のPETであることが好ましい。低IV値(低分子量)のPETをポリエステル樹脂に導入することにより、PETの解重合がより均一に進行する。
【0050】
PETのIV値は、上記の観点から、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.45以上、さらに好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.55以上であり、そして、低温定着性及び解重合の均一化の観点から、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.75以下、さらに好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.65以下である。IV値とは固有粘度であり、分子量の指標となる。PETのIV値は、重縮合時間等により調整することができる。
【0051】
IV値が0.40以上0.85以下のPETの市販品としては、RAMAPET L1(Indorama Ventures社製、IV値:0.60)、RAMAPET BF3067(Indorama Ventures社製、IV値:0.65)、RAMAPET N2G(Indorama Ventures社製、IV値:0.75)、TRN-NTJ(帝人(株)製、IV値:0.53)、TRN-RTJC(帝人(株)製、IV値:0.64)、RAMAPET S1(Indorama Ventures社製、IV値:0.84)、UK-31(ウツミリサイクルシステムズ(株)製、IV値:0.67)等が挙げられる。
【0052】
低IV値のPETの含有量は、重縮合に供されるPETの総量中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0053】
PETの含有量は、アルコール成分とカルボン酸成分とPETの合計量中、加圧保存性の観点から、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは75モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは65モル%以下である。非晶性ポリエステル樹脂Aが2種以上の樹脂からなる場合は、それぞれの樹脂のPET含有量の加重平均値を非晶性ポリエステル樹脂AのPET含有量とする。
なお、PETは、エチレングリコールとテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル等との重縮合体であることから、テレフタル酸-エチレングリコ-ルのユニット(Mw:192)を1モルとして換算する。従って、PETのモル数=エチレングリコール単位のモル数=テレフタル酸単位のモル数である。
【0054】
カルボン酸成分(PET中のテレフタル酸単位を含む)のアルコール成分(PET中のエチレングリコール単位を含む)に対する当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0055】
非晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分とカルボン酸成分とPETの重縮合反応条件は、好適な反応温度が好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下であること以外は、前記結晶性ポリエステル樹脂の反応条件と同様である。
【0056】
非晶性ポリエステル樹脂Aの軟化点は、帯電安定性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0057】
なお、非晶性ポリエステル樹脂Aは、低温定着性及び定着幅の観点から、軟化点の異なる樹脂からなるものであってもよい。2種の樹脂の軟化点の差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0058】
軟化点が高い方の非晶性樹脂(樹脂AH)の軟化点は、定着幅の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0059】
また、軟化点が低い方の非晶性樹脂(樹脂AL)の軟化点は、帯電安定性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは125℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0060】
樹脂AHの樹脂ALに対する質量比(樹脂AH/樹脂AL)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、さらに好ましくは30/70以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは75/25以下である。
【0061】
非晶性ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は、加圧保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、帯電安定性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
【0062】
非晶性ポリエステル樹脂Aの酸価は、帯電安定性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、加圧保存性の観点から、好ましくは20mgKOH/g以下、より好ましくは18mgKOH/g以下である。
【0063】
非晶性ポリエステル樹脂Aの含有量は、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aの合計量中、帯電安定性及び加圧保存性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下である。
【0064】
結晶性ポリエステル樹脂Cの非晶性ポリエステル樹脂Aに対する質量比(結晶性ポリエステル樹脂C/非晶性ポリエステル樹脂A)は、帯電安定性及び加圧保存性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、さらに好ましくは8/92以上であり、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/75以下、さらに好ましくは20/80以下である。
【0065】
トナーにおいて、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aは結着樹脂として含有されている。
【0066】
他の結着樹脂としては、スチレンアクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられる。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aの合計含有量は、結着樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0068】
また、結着樹脂の含有量は、トナー中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%未満、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0069】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0070】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0071】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0072】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、エチレンプロピレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0073】
離型剤の融点は、トナーの加圧保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
【0074】
離型剤の含有量は、トナーの帯電安定性と加圧保存性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0075】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0076】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0077】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0078】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0079】
トナーは、溶融混練法、乳化凝集法、懸濁重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよく、また、コア-シェル構造を有するトナーであってもよいが、帯電安定性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結晶性ポリエステル樹脂Cと非晶性ポリエステル樹脂Aを含む結着樹脂、及び必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0080】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0081】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、環状シラザン、シリコーンオイル、アミノシラン、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0082】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0083】
トナー粒子と外添剤との混合による外添処理は、常法に従って行うことができ、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
【0084】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0085】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0086】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0087】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定することができる。
【0088】
〔PETのIV値〕
フェノール/テトラクロロエタンが60/40(質量比)の混合溶媒に、4g/Lの濃度にて溶解し、ウベローデ型粘度計にて測定を行い、下記式から算出する。
IV=(-1+√(1+4kη))/(2kC)
〔式中、k=0.33、C=0.004g/mLであり、η=(t1/t0)-1(t0:溶媒のみの落下秒数、t1:試料溶液の落下秒数)である。〕
【0089】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0090】
〔樹脂の吸熱の最大ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とする。結晶性樹脂においては、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0091】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0092】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶性樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルムとジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
【0093】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0094】
〔樹脂粒子、着色剤粒子、及び離型剤粒子の体積中位粒径及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」((株)堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる温度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定する。また、CV値は次の式に従って算出する。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0095】
〔樹脂分散液、着色剤分散液、及び離型剤分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」((株)ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、分散液の水分(質量%)を測定する。固形分濃度は次の式に従って算出する。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0096】
〔凝集粒子の体積中位粒径〕
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)III バージョン3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0097】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0098】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター(株)製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)III バージョン3.51」(ベックマン・コールター(株)製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター(株)製)
・分散液:電解液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」〔花王(株)製、HLB(グリフィン)=13.6〕を溶解して5質量%に調整したもの
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0099】
〔トナーの円形度〕
下記の条件で、トナー粒子の円形度を測定する。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス(株)製)
・分散液の調製:トナー粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製する。
・測定モード:HPF測定モード
【0100】
樹脂製造例1
表1~6に示す、アルコール成分、カルボン酸成分、PET、エステル化触媒、及び助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保持した後に180℃から235℃まで10℃/hで昇温し、さらに、235℃で5時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し10kPaの減圧下にて表1~6に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶性ポリエステル樹脂(樹脂AH1~AH7、AH12、AH13、樹脂AL1~AL6、AL11、AL12)を得た。物性を表1~6に示す。
【0101】
樹脂製造例2
表2、3に示す、アルコール成分、無水トリメリット酸以外のカルボン酸成分、PET、エステル化触媒、及び助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し、表2、3に示す無水トリメリット酸を添加し、210℃で1時間反応させた後、さらに210℃で10kPaの減圧下にて表2、3に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶性ポリエステル樹脂(樹脂AH8、AH11、樹脂AH14)を得た。物性を表2、3に示す。
【0102】
樹脂製造例3
表2、5に示す、アルコール成分、カルボン酸成分、エステル化触媒、及び助触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装着した脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保持した後に180℃から235℃まで10℃/hで昇温した後、235℃で5時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し、210℃で10kPaの減圧下にて表2、5に記載の軟化点まで反応を行って、非晶性ポリエステル樹脂(樹脂AH9~AH10、AL8~AL9)を得た。物性を表2、5に示す。
【0103】
樹脂製造例4
表5、6に示す、アルコール成分、カルボン酸成分、PET、エステル化触媒、及び助触媒を、窒素導入管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、235℃まで昇温した後、235℃で6時間重縮合させた。その後、210℃まで降温し、10kPaの減圧下にて表5、6に記載の軟化点に達するまで反応を行って、非晶性ポリエステル樹脂(樹脂AL7、AL10、AL13)を得た。物性を表5、6に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
樹脂製造例5
表7、8に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、200℃まで8時間かけて昇温を行った。その後、表7、8に示すエステル化触媒を添加し、8.0kPaにて表7、8に示す軟化点に達するまで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C1~C11)を得た。物性を表7、8に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
実施例1~17、20~25、比較例1~4〔溶融混練法〕
表9に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5質量部、離型剤「カルナウバワックスC1」((株)加藤洋行製、融点:83℃)3質量部、及び負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業(株)製)0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合した。
【0114】
得られた混合物を、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練し、溶融混練物を得た。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。
【0115】
得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、気流式分級機(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて分級して、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー粒子を得た。
【0116】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.0質量部、及び疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)にて回転数3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0117】
実施例18
溶融混練の際に、同方向回転二軸押出機の代わりに、連続式オープンロール型二軸混練機「ニーデックス」(日本コークス工業(株)製)を使用して溶融混練を行った以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。連続式オープンロール型二軸混練機は、ロール外径が0.14m、有効ロール長が0.8mのものであり、運転条件は、高回転ロール(前ロール)の回転数が75r/min(周速度33m/min)、低回転ロール(後ロール)の回転数が50r/min(周速度22m/min)、ロール間隙が0.1mmであった。ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側の温度を140℃及び混練物排出側の温度を110℃に設定し、低回転ロールの原料投入側の温度を65℃及び混練物排出側の温度を30℃に設定した。また、原料混合物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約5分間であった。
【0118】
実施例19〔乳化凝集法〕
<コア用樹脂分散液の調製>
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5リットル容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、樹脂AH1 129g、及び樹脂C1 21gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いて脱イオン水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/minの撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンを留去した後、水系分散液の固形分濃度を測定し、脱イオン水により、水系分散液の固形分濃度を20質量%に調整して、コア用樹脂分散液を得た。分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は200nm、CV値は24%であった。
【0119】
<シェル用樹脂分散液の調製>
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた5リットル容の容器にメチルエチルケトン600gを投入し、樹脂AL1 150gを60℃にて添加し、溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し、30分撹拌して、混合物を得た。続いて脱イオン水675gを77分かけて添加した。次いで、250r/minの撹拌を行いながら、減圧下、50℃以下の温度でメチルエチルケトンと一部の水を留去した後、水系分散液の固形分濃度を測定し、脱イオン水により、水系分散液の固形分濃度を20質量%に調整して、シェル用樹脂分散液を得た。分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は110nm、CV値は20%であった。
【0120】
<着色剤分散液の調製>
1リットル容のビーカーに、着色剤「ECB-301」(大日精化工業(株)製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))116.2g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王(株)製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)154.9g及び脱イオン水260gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより、着色剤分散液を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は118nm、CV値は27%であった。
【0121】
<離型剤分散液の調製>
フィッシャートロプシュワックス(日本精蝋(株)製、商品名:FNP0090、融点:90℃)50g、カチオン性界面活性剤(花王(株)製、商品名:サニゾールB50)5g及び脱イオン水200gを95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて、ワックスを分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、固形分濃度20質量%の離型剤分散液を得た。分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は550nm、CV値は26%であった。
【0122】
<トナー粒子の調製>
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した3リットル容の4つ口フラスコに、前記コア用樹脂分散液500g、前記着色剤分散液36g、前記離型剤分散液33g、及び15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王(株)製、アニオン性界面活性剤)3.3gを、温度25℃で混合した。次に、得られた混合物を撹拌しながら、25℃で、硫酸アンモニウム40gを脱イオン水570gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH8.2に調整した溶液を10分かけて滴下した後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が6.9μmになるまで62℃で保持し、凝集粒子(I)の分散液を得た。
【0123】
得られた凝集粒子(I)の分散液の温度を62℃に保持しながら、前記シェル用樹脂分散液215gを、0.6mL/min(0.6g/min)の速度で滴下して、凝集粒子(II)の分散液を得た。凝集粒子(II)の体積中位粒径(D50)は7.0μmであった。
【0124】
得られた凝集粒子(II)の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王(株)製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)20g、脱イオン水280g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液40gを混合した水溶液を添加した。その後、80℃まで1時間かけて昇温し、80℃で30分保持した後、0.1mol/Lの硫酸水溶液10gを添加し、さらに80℃で15分保持した。その後、再度0.1mol/Lの硫酸水溶液15gを添加し、円形度が0.970になるまで80℃で保持することにより、凝集粒子が融着した融着粒子(コアシェル粒子)の分散液を得た。
【0125】
得られたコアシェル粒子分散液を30℃に冷却し、分散液を吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄し、25℃で2時間吸引濾過した。その後、真空定温乾燥機「DRV622DA」(ADVANTEC製)を用いて、33℃で24時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子の粒径は7.0μm、円形度は0.970であった。なお、得られたトナー粒子の結着樹脂の組成比(質量比)は、樹脂AH1/樹脂AL1/樹脂C1=60/30/10である。
【0126】
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)1.0質量部、及び疎水性シリカ「RY-50」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)にて回転数3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
【0127】
試験例1〔トナーの帯電安定性〕
温度25℃、相対湿度50%の条件下にて、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業(株)製、平均粒子径90μm)19.4gとを50mL容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、以下の方法により、トナーの帯電量をQ/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
【0128】
60秒又は600秒の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後における帯電量と混合時間600秒後における帯電量の比率(混合時間60秒後における帯電量/混合時間600秒後の帯電量)を計算し、帯電安定性を評価した。結果を表9に示す。数値が大きいほど、帯電安定性に優れることを示す。
【0129】
試験例2〔トナーの加圧保存性]
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、50℃及び相対湿度60%の環境で24時間加圧保存した。パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上に加圧保存したトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー重量WA(g)、篩いB上に残存したトナー重量WB(g)、篩いC上に残存したトナー重量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)をもとに、以下の評価基準に従って、加圧保存性を評価した。結果を表9に示す。値(α)が100に近いほど、加圧保存性に優れることを示す。
α=100-(WA+WB×0.6+WC×0.2)/10×100
【0130】
【0131】
以上の結果より、実施例1~25では、帯電安定性と加圧保存性がいずれも良好であることが分かる。
これに対し、PETを使用していない非晶性ポリエステル樹脂を含む比較例1、2のトナーは、帯電安定性及び加圧保存性のいずれもが不十分であるが、特に、比較例2から、PETのモノマー成分であるエチレングリコールとテレフタル酸を用いても効果はなく、PETを用いることが重要であることが分かる。また、結晶性ポリエステル樹脂については、エチレングリコールを用いていない比較例3では、加圧保存性の低下が、1官能のモノマーを使用していない比較例4では、帯電安定性の低下が、それぞれ顕著である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。