(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】エレベータのかご内手すり、及び、エレベータのかご
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20250221BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B66B11/02 Q
B66B3/00 P
(21)【出願番号】P 2024089614
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】川口 雅浩
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-097981(JP,A)
【文献】特開昭58-220072(JP,A)
【文献】特開昭60-183478(JP,A)
【文献】特開2010-128974(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1496184(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第112374334(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すり本体と、
前記手すり本体に設けられた防犯装置と、
を備え、
前記防犯装置は、
エレベータのかご内の人を検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、人同士の距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常が発生したと判定した場合に警報を発する警報装置と、
を備えるエレベータのかご内手すり。
【請求項2】
前記エレベータのかご内の人が個人の利用者であるか集団の利用者であるかを識別する個人集団識別部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記個人集団識別部の識別結果に集団の利用者が含まれておらず、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する請求項1に記載のエレベータのかご内手すり。
【請求項3】
前記エレベータのかご内の人数を算出する人数算出部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記人数算出部が算出する人数が予め定められた範囲内であり、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する請求項1に記載のエレベータのかご内手すり。
【請求項4】
前記エレベータのかごの移動する速度を検出する速度検出器、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記速度検出器が検出する速度が予め定められた速度以上であり、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する請求項1に記載のエレベータのかご内手すり。
【請求項5】
前記エレベータのかご内の人が登録者であるか否かを判定する登録者判定部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記登録者判定部の判定結果に登録者ではない利用者が含まれており、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する請求項1に記載のエレベータのかご内手すり。
【請求項6】
2つの側面壁を有するかご壁と、
少なくとも1つの前記側面壁に設けられた請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
【請求項7】
2つの側面壁を有するかご壁と、
2つの前記側面壁それぞれに設けられた請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
【請求項8】
2つの側面壁及び正面壁を有するかご壁と、
2つの前記側面壁及び前記正面壁それぞれに設けられた請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はエレベータのかご内手すり、及び、エレベータのかごに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの防犯装置は、防犯効果を高めるために、乗客の身体に他の乗客が接触したり異常に接近したりしたことをセンサで検出しこのセンサの出力で作動される防犯制御装置を備える(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエレベータの防犯装置は、天井上部に設けられたセンサや警告装置、防犯カメラなどを含む。このため、複数の装置を用意するととともに、装置ごとの特性に応じて適切な取付箇所を判断したうえで各装置を取り付ける必要があった。したがって、エレベータに防犯機能を設置するのに多くの手間を要するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであり、防犯機能を容易に設置できるエレベータのかご内手すり及びエレベータのかごを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータのかご内手すりは、手すり本体と、手すり本体に設けられた防犯装置と、を備え、防犯装置は、エレベータのかご内の人を検出するセンサと、センサの検出結果に基づいて人同士の距離を算出する距離算出部と、距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する異常判定部と、異常判定部が異常が発生したと判定した場合に警報を発する警報装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エレベータに防犯機能を容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1におけるかごの概略を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1におけるかごの内側を出入口側からみた概略図である。
【
図3】実施の形態1における手すりの外観を示す概略図であり、
図3(a)は手すりを上方からみた図であり、
図3(b)は手すりを正面からみた図であり、
図3(c)は手すりを側方からみた図である。
【
図4】実施の形態1における防犯装置の機能を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1における防犯装置の制御機能のハードウエア構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1におけるかご内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図6(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図6(b)は占有領域を検出するための二次元配列を説明する説明図である。
【
図7】実施の形態1におけるかご内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図7(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図7(b)はセンサにより取得される距離データを示す模式図であり、
図7(c)は占有領域データを示す模式図である。
【
図8】実施の形態1における防犯装置による警報動作を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2における防犯装置の機能を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態2におけるかご内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図10(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図10(b)はセンサにより取得される距離データを示す模式図であり、
図10(c)は占有領域データを示す模式図である。
【
図11】実施の形態2における防犯装置による警報動作を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態3における防犯装置の機能を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態3における防犯装置による警報動作を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態4における防犯装置の機能を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態4における防犯装置による警報動作を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態5における防犯装置の機能を示すブロック図である。
【
図17】実施の形態5における防犯装置による警報動作を示すフローチャートである。
【
図18】実施の形態6におけるエレベータのかごの内側を出入口側からみた概略図である。
【
図19】実施の形態6におけるかご室を上方からみた模式図である。
【
図20】実施の形態6におけるかご1内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図20(a)は一方の側面壁に設けられた手すりのセンサにより取得される距離データを示す模式図であり、
図20(b)は
図20(a)に対応する占有領域データを示す模式図であり、
図20(c)は他方の側面壁に設けられた手すりのセンサにより取得される距離データを示す模式図であり、
図20(d)は
図20(c)に対応する占有領域データを示す模式図であり、
図20(e)は2つの占有領域データを統合した占有領域データである。
【
図21】実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第一例であり、
図21(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図21(b)は統合された占有領域データである。
【
図22】実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第二例であり、
図22(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図22(b)は統合された占有領域データである。
【
図23】実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第三例であり、
図23(a)はかご室を上方からみた模式図であり、
図23(b)は統合された占有領域データである。
【
図24】実施の形態7におけるエレベータのかごの内側を出入口側からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1におけるエレベータのかご1(以下、単に「かご1」ともいう)の構成を説明する。
図1は実施の形態1におけるかご1の概略を示す斜視図である。
図2は実施の形態1におけるかご1の内側を出入口側(
図1においてY方向手前側)からみた概略図である。
【0010】
かご1は、かご床2と、かご天井3と、かご壁4と、エレベータのかご内手すり5(以下、単に「手すり5」ともいう)とを備える。かご床2と、かご天井3と、かご壁4とにより、かご室6が構成される。
【0011】
かご床2は、かご室6の下部に配置される。かご床2には、敷物などが設けられる。かご天井3は、かご室6の上部に配置される。かご天井3には照明器具3aが設けられている。照明器具3aは、かご室6内を照らすように光を照射する。
【0012】
かご壁4は、側面(
図1においてX方向)に配置された2つの側面壁11a及び側面壁11bと、正面(
図1においてY方向奥側)に配置された正面壁12と、前側(
図1においてY方向手前側)に配置された前側壁13とを有する。側面壁11aと側面壁11bとは互いに対向している。正面壁12と前側壁13とは互いに対向している。前側壁13には、人がかご室6に出入りするための出入口13aが設けられている。かご1は、正面壁12などにも出入口が設けられた構成であってもよい。
【0013】
手すり5は、かご1内に設けられる。手すり5は、少なくとも1つの側面壁に設けられている。実施の形態1においては、手すり5は側面壁11aに設けられている。手すり5はその長手方向が側面壁11aの幅方向(
図1においてY方向)に沿うように配置されている。
【0014】
手すり5の詳細な構成について説明する。
図3は実施の形態1における手すり5の外観を示す概略図であり、
図3(a)は手すり5を上方(
図2においてZ方向上側)からみた図であり、
図3(b)は手すり5を正面(
図2においてX方向右側)からみた図であり、
図3(c)は手すり5を側方(
図2においてY方向奥側)からみた図である。
【0015】
手すり5は、手すり本体21と、手すり本体21に設けられた防犯装置22(
図4参照)とを有する。手すり本体21には取付部21aが形成されており、この取付部21aにより手すり5が側面壁11aに固定される。手すり本体21の長手方向(
図3(b)において左右方向)の長さは、設置される壁(実施の形態1においては側面壁11a)の幅方向の長さに応じて適宜調整でき、例えば1~2mである。
【0016】
防犯装置22の構成の一部は、手すり本体21の外観から視認できるように配置されている。具体的には、防犯装置22を構成するセンサ23及び発光機器31は、手すり本体21の長手方向に沿って配置されている。センサ23及び発光機器31は、手すり5を側面壁11aに固定した場合にかご1の内側に向かって配置されるように手すり本体21に設けられている。防犯装置22を構成するスピーカー32は、手すり本体21の側面に配置されている。
【0017】
手すり5は、センサ23が手すり本体21の長手方向に沿って配置されているため、死角が形成されにくく、かつ、防犯機能が妨害されにくい。例えば、防犯機能として1台の防犯カメラがかご1内に設置されている場合、死角が形成されやすい。また、防犯カメラは、レンズが覆われるなどすることで防犯機能が妨害される。これに対して、手すり5は、センサ23が手すり本体21の長手方向に沿って配置されているとともに、側面壁11aの幅方向に沿って設置される。このように、センサ23が広範囲に配置されているため、防犯カメラを用いる場合と比較して、死角が形成されにくく、かつ、防犯機能が妨害されにくい。
【0018】
図4は実施の形態1における防犯装置22の機能を示すブロック図である。防犯装置22は、かご1内においてある人が他の人に危害を加える犯罪を防止する。防犯装置22は、センサ23と、距離算出部24と、異常判定部25と、警報装置30とを有する。センサ23は、かご1内の人を検出する。センサ23は、例えば、検出物体までの距離を測定する測距センサである。距離算出部24は、センサ23の検出結果に基づいて人同士の距離を算出する。
【0019】
異常判定部25は、距離算出部24が算出する距離に基づいて、異常が発生したか否かを判定する。異常判定部25は、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する。閾値は、ある人が他の人に危害を加えることが想定される距離であり、例えば0.5~0.75mである。閾値は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0020】
警報装置30は、異常判定部25が異常が発生したと判定した場合に警報を発する。「警報を発する」とは、かご1内にいる人に注意や警告を伝えること、及び、かご1外にいる人に異常を伝えることのうち、少なくともいずれか一方をいう。警報装置30が警報を発することにより、危害を加えようとする人の行動を抑止したり、危害が加えられようとしている人に注意を促したり、外部に通報したりして、犯罪を防止する。
【0021】
警報装置30は、発光機器31と、スピーカー32と、通信機器33と、警報制御部34とを有する。発光機器31は、光を発することでかご1内の人に注意を促したり警告したりする。発光機器31は、例えば赤色に発光する。スピーカー32は、音を発することでかご1内の人に注意を促したり警告したりする。スピーカー32が発する音は、例えば、ブザー音や、警告する旨のメッセージである。通信機器33は、かご1外と通信する。通信機器33は、かご1外の機器と通信することで、かご1内の異常をかご1外の人に知らせる。通信機器33は、例えばかご1を備えるエレベータを警備する警備会社や、エレベータ乗り場に設置された端末に接続されている。通信機器33は、警備会社に通報することで救助を要求する。また、通信機器33は、エレベータ乗り場に設置されている端末に通知することで、かご1内で異常が生じていることを周囲(例えば乗り場で待機している人)に知らせ迅速な対応を促す。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33の動作を制御する。
【0022】
実施の形態1における防犯装置22の制御機能(距離算出部24、異常判定部25、及び警報制御部34)のハードウエア構成について説明する。
図5は、実施の形態1における防犯装置22の制御機能のハードウエア構成を示すブロック図である。防犯装置22の制御機能は、パーソナルコンピュータやマイクロコントローラなどのコンピュータにより実現される。
【0023】
防犯装置22は、バス101と、プロセッサ102と、メモリ103と、インタフェース104と、二次記憶装置105とを有する。プロセッサ102、メモリ103、インタフェース104、及び二次記憶装置105は、バス101を介して互いに接続されている。
【0024】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ102が、二次記憶装置105に記憶された動作プログラムをメモリ103に読み込んで実行することにより、防犯装置22の各機能が実現される。
【0025】
メモリ103は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ103は、プロセッサ102が二次記憶装置105から読み込んだプログラムを記憶する。メモリ103は、プロセッサ102がプログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0026】
インタフェース104は、例えばシリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポート、ネットワークインタフェースなどのI/O(Input/Output)インタフェースである。インタフェース104によって、他の機器と通信する。
【0027】
二次記憶装置105は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)である。二次記憶装置105は、防犯装置22の動作に必要な各種情報及びプロセッサ102が実行するプログラムを記憶する。
【0028】
防犯装置22の動作について説明する。まず、かご1内の状況を把握するための構成について説明する。
図6は実施の形態1におけるかご1内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図6(a)はかご室6を上方(
図2においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図6(b)は占有領域を検出するための二次元配列を説明する説明図である。
【0029】
防犯装置22は、かご室6を格子状に模式的に区分してかご1内の状況を把握する。1つの区分の大きさは例えば1cm
2である。なお、
図6(b)は概略図であり、格子の数は必ずしも実際の格子の数を示すものではない。
【0030】
次に、実施の形態1におけるかご1内にいる人を検出する構成について説明する。かご1内に人40Aと人40Bの計二人がいる場合を例に説明する。
図7は実施の形態1におけるかご1内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図7(a)はかご室6を上方(
図2においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図7(b)はセンサ23により取得される距離データを示す模式図であり、
図7(c)は占有領域データを示す模式図である。
【0031】
図7(a)に示すように、かご1内には人40Aと人40Bとが存在している。この状況においてセンサ23は、
図7(b)に示す距離データを取得する。
図7(b)に示すように、人40A及び人40Bが存在する箇所は、測定される距離が短くなる。この距離データに基づいて、距離算出部24により占有領域データが生成される。
図7(c)に示すように、占有領域データは、占有領域41Aと占有領域41Bとを含む。占有領域41Aは人40Aに対応しており、占有領域41Bは人40Bに対応している。占有領域データにより、人の有無、人のかご1内の位置、人同士の距離などを把握できる。
【0032】
実施の形態1における防犯装置22による警報動作について説明する。
図8は実施の形態1における防犯装置22による警報動作を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS11において、かご1内にいる人同士の距離が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。距離算出部24は、占有領域データに含まれる占有領域ごとに重心を算出し、重心間の距離を算出する。算出された重心間の距離から、かご1内にいる人同士の距離が算出される。距離算出部24は、算出した距離を異常判定部25に伝達する。
【0034】
ステップS12において、かご1内にいる人同士の距離が閾値以下であるか否かが判定される。異常判定部25は、距離算出部24から伝達される距離が閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下であると判定された場合(ステップS12においてYes)はステップS13に進み、閾値以下でないと判定された場合(ステップS12においてNo)はステップS11に進む。
【0035】
閾値以下ではないと判定された場合(ステップS12においてNo)におけるステップS11及びステップS12のサイクルは所定の時間間隔で繰り返し行われる。この時間間隔は、エレベータのかご1内の人の動きを継続して適切に監視できる範囲であればよく、例えば1秒である。この時間間隔は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0036】
ステップS13において、警報が発せられる。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33に起動する指示を伝達する。この伝達を受けると、発光機器31は光を発し、スピーカー32は音を発する。通信機器33は、異常が発生したことを、警備会社に通報するとともに、エレベータ乗り場に設置された端末に通知する。
【0037】
距離算出部24がある時点における人同士の距離を算出して異常判定部25に伝達する構成について説明したが、これに限らず、距離算出部24は人同士の距離の変化前後の比率を算出して異常判定部25に伝達する構成としてもよい。人同士の距離の変化前後の比率を用いる場合、異常判定部25は、距離算出部24から伝達される距離の変化前後の比率を閾値と比較する。例えば、人同士の距離が、ある時点では1mでありその数秒後では0.4mである場合、距離の変化前後の比率は40%となる。閾値が50%であれば、距離の変化の割合は閾値以下であるため、異常判定部25は、異常が発生したと判定する。
【0038】
実施の形態1においては、かご1内の人同士の距離が閾値以下である場合に警報を発するように構成されている。一般的に、人はパーソナルスペースを確保するために他の人と一定の距離を保つ位置にとどまる。かご1内において、通常想定される距離よりも人同士が近づいた場合は危害を加えるための動きにつながるおそれがある。そこで、実施の形態1の防犯装置22は、人同士の距離が閾値以下である場合に警報を発することで防犯する。
【0039】
実施の形態2.
実施の形態2における防犯装置42の構成を説明する。
図9は実施の形態2における防犯装置42の機能を示すブロック図である。実施の形態2は、防犯装置42が個人集団識別部46をさらに備える点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
防犯装置42は、センサ23と、距離算出部24と、異常判定部25と、個人集団識別部46と、警報装置30とを有する。
【0041】
個人集団識別部46は、かご1内の人が個人の利用者であるか集団の利用者であるかを識別する。「個人の利用者」とは、一人でエレベータを利用している者のことをいう。「集団の利用者」とは、二人組や三人組などの二人以上のグループでエレベータを使用している者のことをいう。例えば、かご1内に、「人A」と、「人A」とは他人である「人B」との計二名がいる場合、「人A」及び「人B」それぞれが「個人の利用者」である。あるいは、かご1内に、「人A」と、「人A」とは他人である「二人組C」との計三名がいる場合、「人A」が「個人の利用者」であり、「二人組C」が「集団の利用者」である。
【0042】
実施の形態2においては、異常判定部25は、個人集団識別部46の識別結果に集団の利用者が含まれておらず、かつ、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する。
【0043】
実施の形態2における防犯装置42の制御機能(距離算出部24、異常判定部25、個人集団識別部46、及び警報制御部34)のハードウエア構成は、実施の形態1における防犯装置22の制御機能のハードウエア構成と同様である。
【0044】
実施の形態2におけるかご1内にいる人を検出する構成について説明する。かご1内に、人40A、人40B、及び人40Cの計三名がおり、人40Aは個人の利用者であり、人40B及び人40Cは人40Aとは他人である二人組の集団の利用者である場合を例に説明する。
【0045】
図10は実施の形態2におけるかご1内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図10(a)はかご室6を上方(
図2においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図10(b)はセンサ23により取得される距離データを示す模式図であり、
図10(c)は占有領域データを示す模式図である。
【0046】
図10(a)に示すように、かご1内には人40A、人40B、及び人40Cが存在している。人40B及び人40Cは既知の人間関係にある。このため、人40Bと人40Cとは互いに近接した位置にいる。人40Aは、人40B及び人40Cとは未知の人間関係にある他人である。このため、人40Aは、人40Bと人40Cとの距離と比較して、人40B及び人40Cと離れた位置にいる。
【0047】
この状況においてセンサ23は、
図10(b)に示す距離データを取得する。
図10(b)に示すように、人40A、人40B、及び人40Cが存在する箇所は、測定される距離が短くなる。この距離データに基づいて、占有領域データが生成される。
図10(c)に示すように、占有領域データは、占有領域41Aと占有領域41BCとを含む。占有領域41Aは人40Aに対応しており、占有領域41BCは人40B及び人40Cの二人組に対応している。当初から所定の距離よりも近くにいる人同士は占有領域が一括りにまとめられる。占有領域41BCは占有領域41Aよりも領域が大きい。占有領域データにより、人の有無、人のかご1内の位置、人同士の距離、かご1内にいる人が個人の利用者なのか集団の利用者なのかなどを把握できる。
【0048】
実施の形態2における防犯装置42による警報動作について説明する。
図11は実施の形態2における防犯装置42による警報動作を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS21において、かご1内にいる人が「個人の利用者」であるか「集団の利用者」であるかが識別される。センサ23が距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。個人集団識別部46は、占有領域データに基づいて、「個人の利用者」であるか「集団の利用者」であるかを識別する。個人集団識別部46は、占有領域が予め定められた面積よりも小さい場合に「個人の利用者」であると識別し、占有領域が予め定められた面積以上である場合に「集団の利用者」であると識別する。個人集団識別部46は、「個人の利用者」であるか「集団の利用者」であるかの識別結果を異常判定部25に伝達する。予め定められた面積は、例えば、一人に相当しえる占有領域の面積を事前に分析しておきそのデータに基づいて設定される。
【0050】
ステップS22において、かご1内の人に「集団の利用者」が含まれるか否かが判定される。異常判定部25は、個人集団識別部46から伝達される識別結果に基づいて、かご1内の人に「集団の利用者」が含まれているか否かを判定する。かご1内に「集団の利用者」が含まれていない場合(ステップS22においてNo)はステップS23に進み、かご1内に「集団の利用者」が含まれている場合(ステップS22においてYes)は処理を終了する。
【0051】
ステップS23において、かご1内にいる人同士の距離が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。距離算出部24は、占有領域データに含まれる占有領域ごとに重心を算出し、重心間の距離を算出する。算出された重心間の距離から、かご1内にいる人同士の距離が算出される。距離算出部24は、算出した距離を異常判定部25に伝達する。
【0052】
ステップS24において、かご1内にいる人同士の距離が閾値以下であるか否かが判定される。異常判定部25は、距離算出部24が算出する人同士の距離が予め定められた値以下であるか否かを判定する。閾値以下であると判定された場合(ステップS24においてYes)はステップS25に進み、閾値以下ではないと判定された場合(ステップS24においてNo)はステップS23に進む。
【0053】
ステップS25において、警報が発せられる。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33に起動する指示を伝達する。この伝達を受けると、発光機器31は光を発し、スピーカー32は音を発する。通信機器33は、異常が発生したことを、エレベータを管理する管理センターに通知するとともに、エレベータ乗り場に設置された端末に通知する。
【0054】
閾値以下ではないと判定された場合(ステップS24においてNo)におけるステップS23及びステップS24のサイクルは所定の時間間隔で繰り返し行われる。この時間間隔は、エレベータのかご1内の人の動きを継続して適切に監視できる範囲であればよく、例えば1秒である。この時間間隔は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0055】
実施の形態2においては、かご1内に集団の利用者がいない状況において所定の場合に、警報を発するように構成されている。つまり、かご1内に集団の利用者がいる状況では、警報を発さないように構成されている。集団の利用者内(例えば友人同士や親子など)では、他者に危害を加える犯罪が起こりにくいと考えられる。また、かご1内においては、個人の利用者が他の個人の利用者に危害を加える犯罪が起こりやすい。かご1内に集団の利用者がいる場合は、個人の利用者しかいない場合と比較して、犯罪が起こりにくいと考えられる。このため、かご1内に集団の利用者がいる場合には警報を発さないようにすることで、防犯機能を低減することなくより正確な状況で警報を発することができる。
【0056】
実施の形態3.
実施の形態3における防犯装置52の構成を説明する。
図12は実施の形態3における防犯装置52の機能を示すブロック図である。実施の形態3は、防犯装置52が人数算出部47をさらに有する点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
防犯装置52は、センサ23と、距離算出部24と、異常判定部25と、人数算出部47と、警報装置30とを有する。
【0058】
人数算出部47は、かご1内にいる人の数を算出する。人数算出部47は、例えば、占有領域データと、一人当たりの面積とに基づいて、かご1内の人数を算出する。一人当たりの面積は、予備実験などに基づいて予め設定することができる。
【0059】
実施の形態3においては、異常判定部25は、人数算出部47が算出する人数が予め定められた範囲内であり、かつ、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する。
【0060】
予め定められた範囲は、定員の数やかご1の大きさなどに基づいて適宜設定される。予め定められた範囲は、例えば0~5人であり、好ましくは2~5人であり、より好ましくは2~3人であり、さらに好ましくは2人である。
【0061】
実施の形態3における防犯装置42の制御機能(距離算出部24、異常判定部25、人数算出部47、及び警報制御部34)のハードウエア構成は、実施の形態1における防犯装置22の制御機能のハードウエア構成と同様である。
【0062】
実施の形態3における防犯装置52による警報動作について説明する。
図13は実施の形態3における防犯装置52による警報動作を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS31において、かご1内にいる人数が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。人数算出部47は、占有領域データに基づいて、かご1内の人数を算出する。人数算出部47は、占有領域データから占有領域の面積を算出し、この面積と予め設定された一人当たりの面積とに基づいて、かご1内にいる人数を算出する。人数算出部47は、算出した人数を異常判定部25に伝達する。
【0064】
ステップS32において、人数が予め定められた範囲内か否かが判定される。異常判定部25は、人数算出部47から伝達される人数に基づいて、算出された人数が予め定められた範囲内にあるかを判定する。算出された人数が、予め定められた範囲内にある場合(ステップS32においてYes)はステップS33に進み、予め定められた範囲内にない場合(ステップS32においてNo)は処理を終了する。
【0065】
ステップS33において、かご1内にいる人同士の距離が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。距離算出部24は、占有領域データに含まれる占有領域ごとに重心を算出し、重心どうしの距離を算出する。算出された重心間の距離から、かご1内にいる人同士の距離が算出される。距離算出部24は、算出した距離を異常判定部25に伝達する。
【0066】
ステップS34において、かご1内にいる人同士の距離が閾値以下であるか否かが判定される。異常判定部25は、距離算出部24が算出する人同士の距離が閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下であると判定された場合(ステップS34においてYes)はステップS35に進み、閾値以下ではないと判定された場合(ステップS34においてNo)はステップS33に進む。
【0067】
ステップS35において、警報が発せられる。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33に起動する指示を伝達する。この伝達を受けると、発光機器31は光を発し、スピーカー32は音を発する。通信機器33は、異常が発生したことを、エレベータを管理する管理センターに通知するとともに、エレベータ乗り場に設置された端末に通知する。
【0068】
閾値以下でないと判定された場合(ステップS34においてNo)におけるステップS33及びステップS34のサイクルは所定の時間間隔で繰り返し行われる。この時間間隔は、エレベータのかご1内の人の動きを継続して適切に監視できる範囲であればよく、例えば1秒である。この時間間隔は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0069】
実施の形態3においては、かご1内にいる人数が予め定められた範囲内である状況において所定の場合に、警報を発するように構成されている。つまり、かご1内にいる人数が予め定められた範囲外である場合は、警報を発さないように構成されている。かご1内にある程度以上の人数がいる場合は、他者の目が抑止力となるため、犯罪が起こりにくいと考えらえる。また、かご1内に多くの人がいる場合は人同士の距離が近くなるため、誤作動につながる可能性もある。具体的には、かご1内に多くの人がいる場合は犯罪の目的なく他の人に近づいてしまう動きが生じえる。この場合に警報装置30が警報を発するのは本来の意図とは異なるものであり誤作動となる。一方で、かご1内にいる人数が1人以下である場合は他の人に危害を加える行動が生じえない。このため、かご1内にいる人数が予め定められた範囲外である場合には警報を発さないようにすることで、防犯機能を低減することなくより正確な状況で警報を発することができる。
【0070】
実施の形態4.
実施の形態4における防犯装置62の構成を説明する。
図14は実施の形態4における防犯装置62の機能を示すブロック図である。実施の形態4は、防犯装置62が速度検出器48をさらに有する点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
防犯装置62は、センサ23と、距離算出部24と、異常判定部25と、速度検出器48と、警報装置30とを有する。速度検出器48は、かご1の移動する速度を検出する。速度検出器48は、例えば速度センサや加速度センサである。
【0072】
実施の形態4においては、異常判定部25は、速度検出器48が検出する速度が予め定められた速度以上であり、かつ、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する。
【0073】
実施の形態4における防犯装置62による警報動作について説明する。
図15は実施の形態4における防犯装置62による警報動作を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS41において、かご1の速度が測定される。速度検出器48は、かご1の移動する速度を測定する。速度検出器48は、検出結果を異常判定部25に伝達する。
【0075】
ステップS42において、予め定められた速度以上か否かが判定される。異常判定部25は、速度検出器48から伝達される検出結果に基づいて、検出された速度が予め定められた速度以上か否かを判定する。検出された速度が、予め定められた速度以上である場合(ステップS42においてYes)はステップS43に進み、予め定められた速度よりも小さい場合(ステップS42においてNo)は処理を終了する。
【0076】
予め定められた速度は、かご1の通常の運転時の速度などに基づいて適宜設定される。例えばかご1の速度が、停止しているとき(V0)、動き出すとき(V1)、定速で移動しているとき(V2)、停止しようとするとき(V3)の4段階で変化するとする。速度は、V2が最も大きく、次いでV1及びV3となり、V0が最も小さい(V0はゼロである)。この場合であれば、予め定められた速度はV2と同等の値(V2よりも少し小さい値)に設定される。
【0077】
ステップS43において、かご1内にいる人同士の距離が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。距離算出部24は、占有領域データに含まれる占有領域ごとに重心を算出し、重心どうしの距離を算出する。算出された重心間の距離から、かご1内にいる人同士の距離が算出される。距離算出部24は、算出した距離を異常判定部25に伝達する。
【0078】
ステップS44において、かご1内にいる人同士の距離が閾値以下になったか否かが判定される。異常判定部25は、距離算出部24が算出する人同士の距離が閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下であると判定された場合(ステップS44においてYes)はステップS45に進み、閾値以下ではないと判定された場合(ステップS44においてNo)はステップS43に進む。
【0079】
ステップS45において、警報が発せられる。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33に起動する指示を伝達する。この伝達を受けると、発光機器31は光を発し、スピーカー32は音を発する。通信機器33は、異常が発生したことを、エレベータを管理する管理センターに通知するとともに、エレベータ乗り場に設置された端末に通知する。
【0080】
閾値以下でないと判定された場合(ステップS44においてNo)におけるステップS43及びステップS44のサイクルは所定の時間間隔で繰り返し行われる。この時間間隔は、エレベータのかご1内の人の動きを継続して適切に監視できる範囲であればよく、例えば1秒である。この時間間隔は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0081】
実施の形態4においては、かご1の移動する速度が予め定められた速度以上である状況において所定の場合に、警報を発するように構成されている。つまり、かご1の移動する速度が予め定められた速度よりも小さい場合は、警報を発さないように構成されている。かご1は、停止しているときや停止前後において移動する速度が小さくなる。かご1が停止しているときや停止前後においては、かご1内にいる人が乗り降りのために動く。これに伴って、かご1内において犯罪の目的なく他の人に近づいてしまう動きが生じえる。この場合に警報装置30が警報を発するのは本来の意図とは異なるものであり誤作動となる。このため、かご1の移動する速度が予め定められた速度よりも小さい場合には警報を発さないようにすることで、防犯機能を低減することなくより正確な状況で警報を発することができる。
【0082】
実施の形態5.
実施の形態5における防犯装置72の構成を説明する。
図16は実施の形態5における防犯装置72の機能を示すブロック図である。実施の形態5は、防犯装置72が登録者判定部49をさらに備える点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
防犯装置72は、センサ23と、距離算出部24と、異常判定部25と、登録者判定部49と、警報装置30とを有する。
【0084】
登録者判定部49は、かご1内の人が登録者であるか否かを判定する。登録者判定部49は、かご1内にいる人が鞄やポケットに入れるなどして所持している通信機器(例えば携帯電話や電子タグ)が記憶する登録者情報に基づいて、かご1内にいる人が登録者であるか否かを判定し、判定結果を異常判定部25に伝達する。例えば、マンションの関係者(例えば居住者)は、そのマンションに設置されたエレベータを利用することは通常であると想定される。関係者はマンションの管理規則などに従って、事前に通信機器を媒体として登録者情報を記録しておく。一方で、関係者以外は登録者情報を記録した媒体を所持していない。所定の登録者情報が取得される場合は登録者である利用者であり、所定の登録情報が取得されない場合は登録者ではない利用者である。これにより、かご1内にいる人が、通常想定される利用者なのか、通常想定されない外部の利用者なのかが区別される。
【0085】
実施の形態5においては、異常判定部25は、登録者判定部49の判定結果に登録者ではない利用者が含まれており、かつ、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する。
【0086】
実施の形態5における防犯装置72の制御機能(距離算出部24、異常判定部25、登録者判定部49、及び警報制御部34)のハードウエア構成は、実施の形態1における防犯装置22の制御機能のハードウエア構成と同様である。
【0087】
実施の形態5におけるかご1内にいる人を検出する構成について説明する。かご1内に、人40A、人40B、及び人40Cの計三名がおり、人40Aは個人の利用者であり、人40B及び人40Cは人40Aとは他人である二人組の集団の利用者である場合を例に説明する。
【0088】
実施の形態5における防犯装置72による警報動作について説明する。
図17は実施の形態5における防犯装置72による警報動作を示すフローチャートである。
【0089】
ステップS51において、かご1内の人が登録者であるか否かが判定される。登録者判定部49は、かご1内にいる人が所有する通信機器から登録者情報を取得することを試みる。登録者判定部49は、取得結果に基づいて、かご1内にいる人それぞれについて登録者であるか否かを判定する。登録者判定部49は、登録者か否かの判定結果を異常判定部25に伝達する。
【0090】
ステップS52において、かご1内の人に登録者ではない利用者がいるか否かが判定される。異常判定部25は、登録者判定部49から伝達される判定結果に基づいて、かご1内に登録者ではない利用者が含まれているかを判定する。かご1内に登録者以外の利用者がいる場合(ステップS52においてYes)はステップS53に進み、かご1内に登録者以外の利用者がいない場合(ステップS52においてNo)は処理を終了する。
【0091】
ステップS53において、かご1内にいる人同士の距離が算出される。センサ23がかご1内にいる人を検出して距離データを取得する。距離算出部24は、この距離データに基づいて占有領域データを生成する。距離算出部24は、占有領域データに含まれる占有領域ごとに重心を算出し、重心どうしの距離を算出する。算出された重心間の距離から、かご1内にいる人同士の距離が算出される。距離算出部24は、算出した距離を異常判定部25に伝達する。
【0092】
ステップS54において、かご1内にいる人同士の距離が閾値以下であるか否かが判定される。異常判定部25は、距離算出部24が算出する人同士の距離が閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下であると判定された場合(ステップS54においてYes)はステップS55に進み、閾値以下ではないと判定された場合(ステップS54においてNo)はステップS53に進む。
【0093】
ステップS55において、警報が発せられる。警報制御部34は、発光機器31、スピーカー32、及び、通信機器33に起動する指示を伝達する。この伝達を受けると、発光機器31は光を発し、スピーカー32は音を発する。通信機器33は、異常が発生したことを、エレベータを管理する管理センターに通知するとともに、エレベータ乗り場に設置された端末に通知する。
【0094】
閾値以下でないと判定された場合(ステップS54においてNo)におけるステップS53及びステップS54のサイクルは所定の時間間隔で繰り返し行われる。この時間間隔は、エレベータのかご1内の人の動きを継続して適切に監視できる範囲であればよく、例えば1秒である。この時間間隔は、エレベータの設置状況や稼働状況に応じて適宜設定できる。
【0095】
実施の形態5においては、かご1内に登録者ではない利用者がいる状況において所定の場合に、警報を発するように構成されている。つまり、かご1内にいる人のすべてが登録者である場合は、警報を発さないように構成されている。対象となるエレベータを通常利用している利用者(例えば、そのエレベータのあるマンションの居住者や、そのエレベータのあるビルで働く労働者など)は、犯罪を起こしにくいと考えられる。かご1内に通常利用している利用者のみがいる場合は、通常利用していない利用者(例えば部外者)がいる場合と比較して、犯罪が起こりにくいと考えられる。このため、かご1内にいる人のすべてが登録者である場合には警報を発さないようにすることで、防犯機能を低減することなくより正確な状況で警報を発することができる。
【0096】
実施の形態6.
実施の形態6におけるエレベータのかご71の構成を説明する。
図18は実施の形態6におけるエレベータのかご71の内側を出入口側からみた概略図である。実施の形態6は、エレベータのかご71が2つの側面壁11a及び側面壁11bそれぞれに手すり5を備える点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0097】
エレベータのかご71は、2つの手すり5を備える。2つの手すり5はそれぞれ、側面壁11aと側面壁11bとに設けられている。2つの手すり5はそれぞれ、長手方向が側面壁11a及び側面壁11bの幅方向に沿うように配置されている。2つの手すり5は対向するように配置されている。2つの手すり5は、占有領域データを相互に送受信する。
【0098】
実施の形態6におけるかご1内にいる人を検出する構成について説明する。かご1内に人40Aと人40Bの計二人がいる場合を例に説明する。
図19は実施の形態6におけるかご室6を上方(
図18においてZ方向上側)からみた模式図である。
図20は実施の形態6におけるかご1内の人を検出する構成を説明する説明図であり、
図20(a)は側面壁11aに設けられた手すり5のセンサ23により取得される距離データを示す模式図であり、
図20(b)は
図20(a)に対応する占有領域データを示す模式図であり、
図20(c)は側面壁11bに設けられた手すり5のセンサ23により取得される距離データを示す模式図であり、
図20(d)は
図20(c)に対応する占有領域データを示す模式図であり、
図20(e)は2つの占有領域データを統合した占有領域データである。
【0099】
図19に示すように、かご1内には人40Aと人40Bとが存在している。この状況において側面壁11aに設けられた手すり5のセンサ23は、
図20(a)に示す距離データを取得する。
図20(a)に示すように、人40A及び人40Bが存在する箇所は、測定される距離が短くなる。この測定結果に基づいて、占有領域データが生成される。
図20(b)に示すように、占有領域データは、占有領域41AB-1と占有領域41Z-1とを含む。占有領域41AB-1は人40A及び人40Bに対応しており、占有領域41Z-1は側面壁11bに設けられた手すり5に対応している。側面壁11aに設けられた手すり5のセンサ23は、
図20(c)に示す距離データを取得する。
図20(c)に示すように、人40A及び人40Bが存在する箇所は、測定される距離が短くなる。この測定結果に基づいて、占有領域データが生成される。
図20(d)に示すように、占有領域データは、占有領域41AB-2と占有領域41Z-2とを含む。占有領域41AB-2は人40A及び人40Bに対応し、占有領域41Z-2は側面壁11aに設けられた手すり5に対応する。
【0100】
実施の形態6においては、2つの占有領域データを統合されて1つの占有領域データが生成される。
図20(e)に示すように、統合された占有領域データは、占有領域41ABを含む。側面壁11a及び11bに設けられた手すり5は検出対象であるかご1内の人との関連が弱い。このため、2つの手すり5に対応する占有領域41Z-1及び占有領域41Z-2は除かれるように処理される。
【0101】
統合された占有領域データについて例を用いて説明する。
図21は実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第一例であり、
図21(a)はかご室6を上方(
図18においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図21(b)は統合された占有領域データである。
図22は実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第二例であり、
図22(a)はかご室6を上方(
図18においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図22(b)は統合された占有領域データである。
図23は実施の形態6における統合された占有領域データを説明する第三例であり、
図23(a)はかご室6を上方(
図18においてZ方向上側)からみた模式図であり、
図23(b)は統合された占有領域データである。
【0102】
第一例では、
図21(a)に示すように、かご1内の右奥側(
図18においてX方向右側、Y方向奥側)に人40Aと人40Bとが近くに存在している。この状況においては、
図21(b)に示すように、占有領域データは占有領域41ABを含む。占有領域41ABは人40A及び人40Bに対応する。
【0103】
第二例では、
図22(a)に示すように、かご1内の左奥側(
図18においてX方向左側、Y方向奥側)に人40Aが存在し、かご1内の左手前側(
図18においてX方向左側、Y方向手前側)に人40Bが存在している。人40A及び人40Bは互いに離れた位置に存在している。この状況においては、
図22(b)に示すように、占有領域データは占有領域41Aと占有領域41Bとを含む。占有領域41Aは人40Aに対応し、占有領域41Bは人40Bに対応する。
【0104】
第三例では、
図23(a)に示すように、かご1内の右奥側(
図18においてX方向右側、Y方向奥側)に人40Aが存在し、かご1内の左手前側(
図18においてX方向左側、Y方向手前側)に人40Bが存在している。人40A及び人40Bは互いに離れた位置に存在している。この状況においては、
図22(b)に示すように、占有領域データは占有領域41Aと占有領域41Bとを含む。占有領域41Aは人40Aに対応し、占有領域41Bは人40Bに対応する。
【0105】
このように、対向して配置された2つのセンサ23が取得する距離データに基づいて生成された1つの占有領域データを用いる場合、1つのセンサが取得する距離データに基づいて生成された占有領域データを用いる場合と比較して、かご1内にいる人を検出する精度が向上する。これにより、異常判定部25が異常が発生したと判定する精度が向上するため、より正確な状況で警報を発することができる。
【0106】
実施の形態6においては、2つある手すり5それぞれが警報動作を行ってもよいし、いずれか一方が警報動作を行うようにしてもよい。2つの手すり5間のデータ送受信の構成は特に限定されない。送受信されるデータは、距離データであってもよい。また、2つの手すり5のうち少なくとも一方の手すり5が他方の手すり5に距離データまたは占有領域データを送信する構成としてもよい。
【0107】
実施の形態7.
実施の形態7におけるエレベータのかご81の構成を説明する。
図24は実施の形態7におけるエレベータのかご81の内側を出入口側からみた概略図である。実施の形態7は、エレベータのかご81が2つの側面壁11a及び側面壁11bと正面壁13それぞれに手すり5を備える点で、実施の形態1と相違する。実施の形態1と同一の構成には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0108】
エレベータのかご81は、3つの手すり5を備える。3つの手すり5はそれぞれ、側面壁11a、側面壁11b、及び正面壁12に設けられている。3つの手すり5のうち2つの手すり5はそれぞれ、長手方向が側面壁11a及び側面壁11bの幅方向に沿うように配置されている。側面壁11a及び側面壁11bそれぞれに設けられた2つの手すり5は対向するように配置されている。3つの手すり5のうち1つの手すり5は、長手方向が正面壁12の幅方向(
図24においてX方向)に沿うように配置されている。
【0109】
実施の形態7においては、対向して配置された2つのセンサ23と、これら2つのセンサ23と直交する位置に配置された1つのセンサ23とにより、かご1内の人を検出する。これら3つのセンサ23が取得する距離データそれぞれに基づいて生成された3つの占有領域データを統合して1つの占有領域データを生成し、統合された占有領域データを用いてかご1内にいる人を検出する。このため、1つ又は2つのセンサが取得する距離データに基づいて生成された占有領域データを用いる場合と比較して、かご1内にいる人を検出する精度が向上する。これにより、異常判定部25が異常が発生したと判定する精度が向上するため、より正確な状況で警報を発することができる。
【0110】
実施の形態7においては、3つある手すり5それぞれが警報動作を行ってもよいし、いずれか1つが警報動作を行うようにしてもよい。
【0111】
実施の形態7においては、側面壁11a、側面壁11b、及び正面壁12それぞれに3つの手すり5が設けられている構成について説明したが、手すり5を取り付ける構成はこれに限らず、側面壁11a及び側面壁11bのうちいずれか1つと正面壁とのそれぞれに計2つの手すり5を設けるようにしてもよい。手すり5を取り付ける箇所は、かご1内の構造などに応じて適宜設定できる。
【0112】
なお、各実施の形態を、適宜、組み合わせたり、変形や省略したりすることも、実施の形態で示された技術的思想の範囲に含まれる。
【0113】
本開示にかかるエレベータのかご内手すりによれば、エレベータのかご内に手すりを取り付ける通常と同様の作業により、エレベータのかご内に手すりの機能と合わせて防犯機能を設置することができる。
【0114】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
手すり本体と、
前記手すり本体に設けられた防犯装置と、
を備え、
前記防犯装置は、
エレベータのかご内の人を検出するセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、人同士の距離を算出する距離算出部と、
前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する異常判定部と、
前記異常判定部が異常が発生したと判定した場合に警報を発する警報装置と、
を備えるエレベータのかご内手すり。
(付記2)
前記エレベータのかご内の人が個人の利用者であるか集団の利用者であるかを識別する個人集団識別部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記個人集団識別部の識別結果に集団の利用者が含まれておらず、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する付記1に記載のエレベータのかご内手すり。
(付記3)
前記エレベータのかご内の人数を算出する人数算出部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記人数算出部が算出する人数が予め定められた範囲内であり、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する付記1に記載のエレベータのかご内手すり。
(付記4)
前記エレベータのかごの移動する速度を検出する速度検出器、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記速度検出器が検出する速度が予め定められた速度以上であり、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する付記1に記載のエレベータのかご内手すり。
(付記5)
前記エレベータのかご内の人が登録者であるか否かを判定する登録者判定部、
をさらに備え、
前記異常判定部は、前記登録者判定部の判定結果に登録者ではない利用者が含まれており、かつ、前記距離算出部が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する付記1に記載のエレベータのかご内手すり。
(付記6)
2つの側面壁を有するかご壁と、
少なくとも1つの前記側面壁に設けられた付記1から5いずれか1つに記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
(付記7)
2つの側面を有するかご壁と、
2つの前記側面壁それぞれに設けられた付記1から5いずれか1つに記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
(付記8)
2つの側面壁及び正面壁を有するかご壁と、
2つの前記側面壁及び前記正面壁それぞれに設けられた付記1から5いずれか1つに記載のエレベータのかご内手すりと、
を備えるエレベータのかご。
【符号の説明】
【0115】
1、71、81 エレベータのかご
2 かご床
3 かご天井
3a 照明器具
4 かご壁
5 手すり
6 かご室
11a、11b 側面壁
12 正面壁
13 前側壁
13a 出入口
21 手すり本体
21a 取付部
22、42、52、62 防犯装置
23 センサ
24 距離算出部
25 異常判定部
31 発光機器
32 スピーカー
33 通信機器
34 警報制御部
46 個人集団識別部
47 人数算出部
48 速度検出器
49 登録者判定部
101 バス
102 プロセッサ
103 メモリ
104 インタフェース
105 二次記憶装置
【要約】
【課題】防犯機能を容易に設置できるエレベータのかご内手すり及びエレベータのかごを提供することを目的とする。
【解決手段】エレベータのかご内手すりは、手すり本体と、手すり本体に設けられた防犯装置とを備える。防犯装置22は、エレベータのかご1内の人を検出するセンサ23と、センサ23の検出結果に基づいて人同士の距離を算出する距離算出部24と、距離算出部24が算出した距離が閾値以下である場合に、異常が発生したと判定する異常判定部25と、異常判定部25が異常が発生したと判定した場合に警報を発する警報装置30とを備える。
【選択図】
図4