(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】経路生成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2024540889
(86)(22)【出願日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2023041903
【審査請求日】2024-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】春日 隆文
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-056372(JP,A)
【文献】特開2016-099713(JP,A)
【文献】特開2021-047644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから取得された情報を用いて移動体の移動状態を推定する移動状態推定部と
、
前記移動状態と、前記移動体
と障害物との衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が前記障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報を出力する衝突リスク判断部と、
前記判断情報に基づいて、
前記移動体の前記障害物を回避する際に生じる加速度である回避加速度が一定の値を越えないように前記移動体の移動経路を生成する経路生成部と
を備える経路生成装置。
【請求項2】
前記一定の値は、前記移動体に搭乗する乗員が不快感を覚える加速度からマージンである0.05Gを差し引いた値である
ことを特徴とする請求項1に記載の経路生成装置。
【請求項3】
前記衝突リスク判断部は、前記移動状態と前記衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が前記障害物を回避するための予備動作もしくは回避動作を決定し、
前記経路生成部は、前記予備動作もしくは前記回避動作に基づいて移動経路を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の経路生成装置。
【請求項4】
前記衝突リスク情報は、過去の事故又は事故寸前の事象が発生した状況の情報を示すインシデント情報と、前記移動体の周囲の潜在的な危険度に関する情報を示すリスクマップ情報とのうち、少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1または
3に記載の経路生成装置。
【請求項5】
移動状態推定部が、センサから取得された情報を用いて移動体の移動状態を推定し、
衝突リスク判断部が
、前記移動状態と、前記移動体
と障害物との衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が前記障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報を出力し、
経路生成部が、前記判断情報に基づいて
前記移動体の前記障害物を回避する際に生じる加速度である回避加速度が一定の値を越えないように前記移動体の移動経路を生成する
経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経路生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、船舶、航空機などの移動体の自律移動を目的とし、移動体の移動経路を生成する経路生成装置が提案されている。自律移動する移動体は、センサを用いて移動体の周囲の障害物を検知する。そして、予め計画した移動経路上に、移動体と衝突の可能性がある障害物が存在する場合、経路生成装置が移動経路を変更することで、移動体は障害物を回避する。
【0003】
例えば、特許文献1では、センサによる障害物の検出結果の信頼度である検出信頼度(同一障害物を検出している時間の長さ)に基づいて、きめの細かい自然な感覚の制動を行うことにより、移動体が障害物を自然な感覚で回避する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術には、以下の問題がある。
例えば、夜間や霧などセンサの検出感度が低下する環境では、センサによる障害物の検出距離は短くなる。障害物の検出距離が短くなることにより、検出信頼度の精度は低下する。したがって、検出信頼度に基づく制動を行っても、移動体が障害物を自然な感覚で回避することは限界がある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、センサから取得した情報だけに頼らず、障害物との衝突可能性を示す情報も用いて移動体の移動経路を生成することで、より多くの状況において、移動体が障害物を自然な感覚で回避できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の経路生成装置は、
センサから取得された情報を用いて移動体の移動状態を推定する移動状態推定部と、
前記移動状態と、前記移動体と障害物との衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が前記障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報を出力する衝突リスク判断部と、
前記判断情報に基づいて、前記移動体の前記障害物を回避する際に生じる加速度である回避加速度が一定の値を越えないように前記移動体の移動経路を生成する経路生成部と
を備える。
【0008】
本開示の経路生成方法は、
移動状態推定部が、センサから取得された情報を用いて移動体の移動状態を推定し、
衝突リスク判断部が、前記移動状態と、前記移動体と障害物との衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が前記障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報を出力し、
経路生成部が、前記判断情報に基づいて前記移動体の前記障害物を回避する際に生じる加速度である回避加速度が一定の値を越えないように前記移動体の移動経路を生成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、多くの状況において、移動体が障害物を自然な感覚で回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る経路生成装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る経路生成装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】従来の経路生成装置の具体的な動作を説明するための図である。
【
図4】従来の経路生成装置の具体的な動作を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1に係る経路生成放置の具体的な動作を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1に係る経路生成放置の具体的な動作を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1に係る経路生成装置の動作を示すためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。以下の実施の形態では、「部」を「回路」、「工程」、「手順」又は「処理」に適宜読み替えてもよい。
【0012】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る経路生成装置の構成を示す機能ブロック図である。経路生成装置10は、実施の形態に係る経路生成方法を実施することができる装置である。
図1において、移動体100は、経路生成装置10、各種センサ11、制御部21を備える。経路生成装置10は、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部16、地図情報記憶部17、インシデント情報記憶部18、リスクマップ情報記憶部19、移動経路情報記憶部20を備える。衝突リスク判断部13は、推定部14、判断部15を備える。
【0013】
移動体100は、自律移動が可能な移動体である。例えば、移動体100は、自動運転車両、パーソナルモビリティ、自律走行ロボット、船舶、鉄道、航空機、ドローンなどである。また、移動体100は、自律移動に必要な各種センサ11を備える。例えば、各種センサ11は、GPS(Global Positioning System)、IMU(Inertial Measurement Unit)、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダ、超音波ソナー、カメラ、ビーコンなどのデバイスである。なお、各種センサ11は、これら全てのデバイスを備えなくてもよい。各種センサ11のデバイスは、移動体100の種類、移動環境、装置コストなどに応じて、適宜選択又は省略されてもよい。
【0014】
なお、各種センサ11は、必ずしも移動体100に備えられている必要は無い。例えば、移動体100の外部に備えられているセンサ(例えば、監視カメラ、ビーコン、路側装置など)が、移動体100の自律移動に必要な情報を取得してもよい。つまり、移動体100の自律移動に必要な情報が外部から移動体100に提供可能であれば、移動体100の各種センサ11は省略されてもよい。
【0015】
移動体100は、移動に必要な動力源及び動力装置と、動力装置によって駆動される被駆動装置を備える。例えば、動力源は、バッテリーの電力、燃料などである。例えば、動力装置は、モータ、エンジンなどである。例えば、被駆動装置は、車輪、プロペラ、スクリューなどである。被駆動装置に、移動体100が方向転換や制動を行うための操舵装置が含まれてもよい。なお、
図1において、動力源、動力装置、被駆動装置、及び操舵装置の図示は、省略されている。
【0016】
各種センサ11は、移動体100自身の状態の情報を示す移動体情報D1を取得する。例えば、移動体情報D1は、移動体100の移動速度、移動方向、姿勢などの情報である。
【0017】
また、各種センサ11は、移動体100の周囲に存在する障害物の情報を示す障害物情報D2を取得する。例えば、障害物情報D2は、障害物の種類、位置、大きさ、形状、色、及び障害物が移動しているか否かなどの情報である。障害物は、移動体100の移動を妨げる物体又は状態である。例えば、移動体100が自動運転車両の場合、障害物は、落下物、穴、水たまり、他の移動体、人、動物などである。例えば、移動体100が船舶の場合、障害物は、漂流物、暗礁、動物、他の移動体などである。例えば、移動体100が航空機の場合、障害物は、乱気流、雷雲、動物、他の移動体などである。なお、障害物情報D2は、例えば、路側装置、監視カメラ、ビーコン、レーダなどの外部インフラ装置又は他の移動体が備える各種センサにより取得されてもよい。外部インフラ装置又は他の移動体により取得された障害物情報D2は、無線通信装置(図示せず)を介して、移動体100の経路生成装置10に提供されてもよい。
【0018】
地図情報記憶部17は、移動体100の移動経路の環境を示す地図情報D3を記憶する記憶部である。例えば、地図情報D3は、道路を含む地面又は空間の状態(舗装、未舗装、道路の傾斜、など)、線路、水路、交差点、立体交差、車線数及び車線の幅、路面標示、標識及び信号機などの情報とすることができる。なお、地図情報D3に、移動体100の移動の妨げとなる可能性がある、静的な地物の種類、位置、幅、大きさなどの情報が含まれていてもよい。
【0019】
移動状態推定部12は、移動体情報D1と、地図情報D3とを用いて、移動体100の移動状態を推定する。推定された移動状態は、移動状態情報D4として出力される。例えば、移動状態は、移動体100の地図上の現在位置、速度、加速度、移動方向、姿勢などである。
【0020】
インシデント情報記憶部18は、過去に衝突などの事故や、事故寸前の事象(いわゆる、ヒヤリハット)が発生した状況の情報を示すインシデント情報D5を記憶する記憶部である。例えば、インシデント情報D5は、事故が起きた日時、場所の座標、場所の周囲情報、天候、事故を起こした移動体の種類、障害物に関する情報などとすることができる。なお、インシデント情報D5は、移動体100の移動前に予め定められたものであってもよいし、移動体100の移動中に、移動体100の外部からの情報更新操作などにより、リアルタイムに変更されてもよい。
【0021】
リスクマップ情報記憶部19は、移動体100の周囲の潜在的な危険度に関する情報を示すリスクマップ情報D6を記憶する記憶部である。より具体的には、リスクマップ情報D6は、例えば、移動体100の死角、移動体100の周囲の地物の位置、地物の形状に応じて、移動体と障害物との衝突が起こり得るリスクの発生頻度、及びそのリスクの影響度とを地図上に記した情報とすることができる。なお、リスクマップ情報D6は、移動体100の移動前に予め定められたものであってもよいし、移動体100の移動中に、移動体100の外部からの情報更新操作などにより、リアルタイムに変更されてもよい。
【0022】
移動経路情報記憶部20は、移動体100の移動速度及び移動方向を含む移動経路の情報を示す移動経路情報D7を記憶する記憶部である。なお、移動経路情報D7は、移動体100の移動前に予め定められていてもよいし、移動体100の移動中に、移動体100の外部からの情報更新操作などにより、適宜変更されてもよい。
【0023】
衝突リスク判断部13は、障害物情報D2、移動状態情動D4、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、移動経路情報D7を用いて、移動体100と障害物との衝突リスクを推定すると共に、移動体100が障害物を回避する必要があるか否かを判断し、移動体100が障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報D9を出力する。
次に、衝突リスク判断部13の内部構成について説明する。
【0024】
推定部14は、障害物情報D2、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、及び移動経路情報D7を用いて、移動体100が移動経路情報D7に従って移動した場合、障害物との衝突が起こり得る可能性を示す衝突リスク情報D8を推定する。より具体的には、例えば、衝突リスク情報D8は、移動経路情報D7が表す移動経路上の任意の位置における、移動体100が障害物と衝突する可能性の確率を示す数値とすることができる。例えば、衝突リスク情報D8は、0%から100%までの百分率の数値で表現されてもよい。あるいは、衝突リスク情報D8は、0から1までの正規化された数値で表現されてもよい。例えば、衝突リスク情報D8を百分率の数値で表す場合、数値が大きいほど、移動体100が障害物と衝突するリスクが高いことを示す。
【0025】
推定部14は、例えば、学習済みモデルを用いて、衝突リスク情報D8を推定することができる。学習済みモデルに、障害物情報D2と、インシデント情報D5と、リスクマップ情報D6と、移動経路情報D7とを入力すると、学習済みモデルは、これら入力された情報に対する応答である衝突リスク情報D8を出力する。なお、学習済みモデルの作成方法は、例えば、深層学習、サポートベクターマシンなど、機械学習による方法を用いることができる。また、衝突リスク情報D8の推定方法は、例えば、予め定められているリスクマップのテーブルを参照する方法など、ルールベースによる方法であってもよい。
【0026】
なお、インシデント情報D5と、リスクマップ情報D6とは、いずれの情報も移動経路上の障害物(例えば、他の移動体、落下物など)との衝突可能性を示す情報である。そのため、推定部14は、インシデント情報D5のみを用いて、衝突リスク情報D8を推定してもよい。あるいは、推定部14は、リスクマップ情報D6のみを用いて、衝突リスク情報D8を推定してもよい。
【0027】
判断部15は、移動状態情報D4と衝突リスク情報D8とを用いて、移動体100が障害物を回避する必要があるか否かを判断し、移動体100が障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報D9を出力する。より具体的には、例えば、判断部15は、移動状態情報D4が示す位置における衝突リスク情報D8と、予め定められた閾値とを比較し、衝突の可能性の確率が閾値よりも高い場合は、移動体100が回避行動を開始するように判断情報D9を出力することができる。
【0028】
判断部15は、進路変更する際の安全確認を行うため、移動状態情報D4と、衝突リスク情報D8とを用いて、移動体100の周囲の混雑状況を判断することができる。例えば、混雑状況は、移動経路周辺の所定の距離あたりの移動体の数などである。
【0029】
判断部15は、移動体100が障害物を回避するか否かの判断だけでなく、その他の動作を行うか否かを判断してもよい。例えば、判断部15は、移動体100が障害物を回避するための準備である予備動作を行うか否かの判断を行ってもよい。予備動作は、軽くブレーキを掛ける、加速を止めるなど、移動体100を緩やかに減速させる動作を示す。
【0030】
判断部15は、移動体100が障害物を回避するための進路変更、移動体100が障害物との衝突を防止するための強い減速動作や停止動作など、移動体100が回避動作を行うか否かの判断を行ってもよい。回避動作は、通常のブレーキを掛けるなど、移動体100を停止させるために強く減速させる動作、又は移動体100を進路変更させる動作を示す。
【0031】
以降、移動体100は自動運転車両であるとして、本実施の形態に係る経路生成装置10の構成及び動作をより具体的に説明する。
【0032】
まず、移動体100が障害物を回避するために減速、又は進路変更する際に生じる加速度について説明し、移動体100が自然な感覚で回避できる移動経路を、具体的に定義する。
【0033】
まず、例えば、ブレーキ操作による減速により、移動体100に生じる加速度(減速加速度)について説明する。例えば、軽くブレーキを掛ける場合、減速加速度はおよそ0.1Gである。また、通常のブレーキを掛ける場合、減速加速度はおよそ0.2Gである。また、強くブレーキを掛ける場合、減速加速度はおよそ0.3Gである。ここで、Gは、重力加速度を表す単位である。一般に、減速加速度が0.3Gを超えると、人は不快感を覚える。そのため、減速加速度は、マージンを考慮して、およそ0.25Gを越えない程度が好ましい。
【0034】
また、移動体100が障害物を回避するために進路変更する際、移動体100には横方向の加速度が生じる。横方向の加速度の強弱に関しては、上述の減速加速度の数値に準ずる。以降、減速加速度と横方向の加速度とを併せて、回避加速度と称する。
【0035】
以上のことから、移動体100が、自然な感覚で回避できる移動経路とは、回避加速度が、およそ0.25Gを越えない程度の減速動作若しくは進路変更、又は減速動作及び進路変更から構成される移動経路である。なお、回避加速度の数値0.25Gは一例であり、例えば、移動体100の種別、移動体100に搭乗する乗員の属性(運転手、乗客など)に応じて、回避加速度の数値は適宜変更されてもよい。
【0036】
判断部15において、衝突リスク情報D8を用いて障害物との衝突の可能性を判断し、移動体100の動作を決定する方法として、例えば、ルールベースによる方法を用いることができる。以下、衝突リスク情報D8が、0%から100%までの百分率の数値で表現される場合を一例として挙げ、ルールベースによる判断方法について説明する。
【0037】
まず、衝突の可能性を判断し、移動体100の動作を決定するための閾値を定義する。予め定められた所定の閾値をTH1、TH2とし、例えば、閾値TH1、TH2の値をそれぞれ、TH1=20%、TH2=80%とする。なお、閾値TH1、閾値TH2のそれぞれの値は一例であり、閾値TH1、閾値TH2の値は、移動体100から障害物までの距離、障害物が存在する確率の数値、移動体100の移動状態、移動経路の状況などに応じて、適宜変更することができる。
【0038】
衝突リスク情報D8が閾値TH2以上の場合、判断部15は、障害物との衝突の可能性が高いと判断し、移動体100が本動作(制動又は進路変更)を行うように、判断情報D9を出力する。
衝突リスク情報D8が閾値TH2未満、かつ閾値TH1以上の場合、判断部15は、障害物との衝突の可能性が中程度と判断し、移動体100が予備動作を行うように、判断情報D9を出力する。
衝突リスク情報D8が閾値TH1未満の場合、判断部15は、障害物との衝突の可能性が低いと判断し、移動体100が現状の進路と速度を維持するように、判断情報D9を出力する。
なお、衝突の可能性の判断のための所定の閾値は2つに限らない。例えば、予備動作の種類が複数ある場合(例えば、軽くブレーキを掛けることと、加速を止めることの動作を分割する)、所定の閾値は3段階以上に設定することができる。
【0039】
更に言えば、衝突の可能性は、例えば、衝突リスク情報D8を入力xとし、衝突の可能性を出力yとする関数y=f(x)を用いて、連続値として設定されてもよい。例えば、関数f(x)は、過去の事故又は事故寸前の事象のデータを用いて、回帰分析などの統計的手法により求めることができる。
【0040】
また、判断部15は、学習済みモデルを用いて衝突の可能性を判断してもよい。具体的には、衝突リスク情報D8を学習済みモデルに入力すると、学習済みモデルは、衝突の可能性を推測し、判断情報D9を決定する。例えば、学習済みモデルの作成には、深層学習、サポートベクターマシンなどの機械学習を用いることができる。
【0041】
経路生成部16は、移動状態情報D4、移動経路情報D7、及び判断情報D9を用いて、移動体100が障害物を自然な感覚で回避できる移動経路を生成する。生成された(更新された)移動経路は、移動経路情報D7として移動経路情報記憶部20に再出力されると共に、制御情報D10として出力される。
【0042】
制御部21は、制御情報D10を用いて、移動体100の動力源、動力装置、被駆動装置、及び操舵装置を制御する。そして、移動体100は、生成された移動経路に沿って移動することで、障害物を自然な感覚で回避することができる。
【0043】
上述のように、移動体100と障害物との衝突リスクの推定と、移動体100が障害物を回避する方法とについて、衝突リスク判断部13が、各種センサから取得した情報(すなわち、障害物情報D2)だけに頼らず、障害物や他の移動体との衝突可能性を示す情報(すなわち、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6)も用いて総合的に判断するので、移動体100が障害物を自然な感覚で回避することができる。
【0044】
***ハードウェア構成の説明***
図2は、本実施の形態に係る経路生成装置10のハードウェア構成を示す図である。経路生成装置10は、例えば、コンピュータ、専用の演算装置、又はコンピュータと専用の演算装置とを組み合わせた装置である。経路生成装置10は、情報処理部であるプロセッサ31と、記憶部であるメモリ32と、不揮発性の記憶部である記憶装置33と、インタフェース34と、通信部35とを備える。
【0045】
プロセッサ31は、システムバスを介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。プロセッサ31は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ31の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)である。
【0046】
プロセッサ31は、メモリ32に記憶されるプログラムを実行する。プログラムは、本実施の形態に係る経路生成プログラムを含む。経路生成装置10の機能は、プログラムを実行するプロセッサ31によって実現される。プロセッサ31は、プロセッシングサーキットリー(処理回路)の一例である。
【0047】
例えば、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部14は、プロセッサ31で実現される。例えば、地図情報記憶部17、インシデント情報記憶部18、リスクマップ情報記憶部19、移動経路情報記憶部20は、メモリ32で実現される。
【0048】
CPUは、プログラムの実行、データ演算などの処理を行う。DSPは、算術演算、データ移動などのデジタル信号処理を行う。例えば、ミリ波レーダから得られるセンサデータのセンシングといった処理は、CPUによる処理の代わりに、DSPによって高速に処理することが望ましい。
【0049】
GPUは、画像の処理に特化したプロセッサである。GPUは、複数の画素データを並列処理することで、高速な画像処理が可能である。GPUは、画像処理で頻繁に使われるテンプレートマッチング処理を、高速に処理できる。例えば、カメラから得られるセンサデータのセンシングは、GPUで処理することが望ましい。カメラから得られるセンサデータのセンシングをCPUで処理すると、処理時間が膨大になる。また、GPUは、単なる画像処理用のプロセッサとしてではなく、GPUの演算資源を用いて、汎用計算を行う使い方(GPGPU:General Purpose Computing on Graphics Processing Units)がある。例えば、GPGPUを用いて、ディープラーニングで画像処理を行うことで、障害物や他の移動体などをより高精度に検出することができる。
【0050】
FPGAは、論理回路の構成をプログラム可能なプロセッサである。FPGAは、専用のハードウェア演算回路とプログラム可能なソフトウェアとの両方の性質を持つ。複雑な演算及び並列性のある処理は、FPGAで高速に実行できる。
【0051】
メモリ32は、例えば、揮発性メモリである。揮発性メモリは、経路生成装置10の動作時に、データを高速に移動可能である。例えば、揮発性メモリの具体例は、RAM(Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などである。
【0052】
記憶装置33は、不揮発性メモリであり、経路生成装置10の電源がオフの間も、実行プログラム及びデータを保持し続けることができる。例えば、不揮発性メモリの具体例は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどである。例えば、不揮発性メモリは、SD(Secure Digital)(登録商標)メモリカード、CF(CompactFlash(登録商標))、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)といった可搬記憶媒体であってもよい。
また、本実施の形態に係る経路生成プログラムは、可搬記録媒体により提供されてもよい。メモリ32は、メモリインタフェース(図示せず)を介して、プロセッサ31と接続される。メモリインタフェースは、プロセッサからのメモリアクセスを一元的に管理し、効率的なメモリアクセス制御を行う。メモリインタフェースは、経路生成装置10におけるデータ転送に利用される。
【0053】
図1に示される、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部16の各機能は、プログラムを実行するプロセッサ31により実現される。メモリ32には、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部16の機能を実現するプログラムが記憶されている。プロセッサ31は、これらのプログラムをメモリ32から読み込み、これらのプログラムを実行する。また、メモリ32は、各プログラムの中間情報を一時的に格納することにも使用される。
【0054】
また、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部16の各機能は、ハードウェアである論理回路により実現されてもよい。この場合は、メモリ32には、論理回路情報が記憶される。論理回路情報は、プロセッサ31により読み込まれて実行される。
【0055】
プロセッサ31は、複数のプロセッサでも構成されてもよい。この場合、複数のプロセッサが、移動状態推定部12、衝突リスク判断部13、経路生成部16の各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0056】
メモリ32には、地図情報D3、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、移動経路情報D7が記憶されている。なお、地図情報D3、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6及び移動経路情報D7は、経路生成装置10の外部の記憶装置に格納されてもよい。言い換えれば、地図情報記憶部17、インシデント情報記憶部18、リスクマップ情報記憶部19、移動経路情報記憶部20は、経路生成装置10の外部の記憶装置であってもよい。
【0057】
本実施の形態に係る経路生成装置10の動作並びに効果を、従来の経路生成装置の動作と対比させることにより説明する。
図3及び
図4は、従来の経路生成装置の具体的な動作を説明する図である。
図5及び
図6は、本実施の形態に係る経路生成装置10の具体的な動作を説明する図である。
図3~
図6のそれぞれにおいて、例えば、センサの検出感度が低下する環境(天候)を霧として説明するが、当該環境は霧に限らない。例えば、センサの検出感度が低下する環境は、雨、雪、夜間、火災や噴火による煙、スモッグ、砂塵など、様々な場合が考え得る。
【0058】
まず、
図3を用いて、従来の経路生成装置の具体的な動作について説明する。
図3(a)において、移動体100は、車線L1上を移動し、地点P1に位置する。また、商店Sが、地点P3の車線L1の道路脇に存在している。地点P1において、移動体100が取得した障害物情報D2は、移動体100から距離100~120メートル先の地点P3に障害物H(例えば、駐車中の車両)が存在する可能性があり、かつ、障害物Hの検出信頼度は60%である。障害物Hを取り巻くように描かれている雲状の記号Cは、障害物の検出信頼度を模擬的に表現したものであり、雲状の記号Cが大きい程、検出信頼度が低いことを表現している。移動体100から出ている点線の矢印R1は、現時刻から一定の時間内に、移動体100が移動を予定している移動経路を示す。また、矢印の長さは、移動体100の速度に比例する。
図3(a)では、従来の経路生成装置は、地点P1の位置で、地点P3の近傍に障害物Hが存在する可能性があると推測したものの、その検出信頼度が低いため障害物回避の動作を何も行わないと判断する。
【0059】
図3(b)において、移動体100は、
図3(a)に示した地点P1から矢印R1の向きに移動し、地点P2に位置している。また、地点P2の位置に来た時点で、移動体100が取得した障害物情報D2は、移動体100から距離50メートル先の地点に障害物Hが存在する可能性があり、かつ、検出信頼度は99%である。
図3(b)では、移動体100は、地点P1から地点P2に移動する間に回避行動をとっていないため、地点P2における移動体100の速度は、地点P1での速度と同一である。このため、移動体100は、地点P2の位置で回避が必要であることが確実となる。そのため、移動体100は制動をかける必要がある。しかし、障害物Hとの距離が近いため、移動体100は、急制動又は急激な進路変更をせざるを得なくなる。
したがって、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避することができない。
【0060】
図4は、従来の経路生成装置の動作に関する別の事例である。
図4(a)において、移動体100は、
図3(a)と同様に、車線L1上の地点P1に位置している。また、地点P1の位置で、移動体100が取得する障害物情報D2は、移動体100から距離100~120メートル先の地点P3に、障害物Hが存在する可能性があり、かつその検出信頼度が60%である。
図3に示す事例と異なる点は、
図4の事例では、地点P1の段階で検出信頼度は低いものの、停止により障害物Hを回避する判断を行っている。
【0061】
図4(b)は、移動体100が地点P2に到着した時点で、障害物Hがほぼ確実(例えば、検出信頼度が99%以上)に存在する場合を示している。この場合、移動体100は、予め停止に向けて減速しているため、障害物Hの手前までに停止することができる。
一方、
図4(c)は、移動体100が地点P2に到着した時点で、障害物Hが存在しなかった場合を示している。この場合、移動体100は不必要な減速をしたこととなる。また、移動体100の減速は停止を見据えたものであり、移動体100は大きく速度低下してしまう。移動体100の速度を速やかに元の速度に戻すために、移動体100を再加速させる必要があるが、その加速度は急激なものとなってしまう。
この場合も、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避することができない。
【0062】
次に、本実施の形態に係る経路生成装置10の動作について説明する。
図5及び
図6は、本実施の形態に係る経路生成装置10の具体的な動作を説明する図である。
【0063】
図5(a)において、移動体100は、
図3(a)と同様に、地点P1に位置している。また、商店Sが、地点P3の車線L1の道路脇に存在している。地点P1において、移動体100が取得する障害物情報D2は、移動体100から距離100~120メートル先の地点P3に障害物Hが存在する可能性があり、かつ、障害物Hの検出信頼度が60%である。障害物Hを取り巻くように描かれている雲状の記号Cは、障害物の検出信頼度を模擬的に表現したものであり、雲状の記号Cが大きい程、検出信頼度が低いことを表現している。
【0064】
図5(a)では、衝突リスク判断部13は、地点P1で、障害物情報D2、移動状態情報D4、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、移動経路情報D7を用いて、移動体100と障害物Hとの衝突リスクを推定する。そして、衝突リスク判断部13は、推定された衝突リスクに基づいて、移動体100が障害物を回避する必要があるか否かと、予備動作又は本動作の内容とを判断する。
図5(a)の場合、推定部14が、インシデント情報D5とリスクマップ情報D6とを参照した結果、地点P3付近において、道路沿いに商店Sがあることが確認された。そして、商店S前の道路上に、荷物積み下ろしのための車両(すなわち、障害物H)が頻繁に停車するため、過去に数度の追突事故が生じていることが確認された。これらの結果より、推定部14は、地点P3近傍での衝突リスクは中程度と推定する。
【0065】
地点P1の位置では、障害物Hが存在する確率(検知信頼度)は60%と中程度であり、移動体100が必ず停止するか否かについては、未確定の状態である。しかし、
図5(b)に示すように、衝突リスク判断部13は、衝突リスクが中程度であるため、移動体100を停止させる必要が高いと判断した場合に備える。つまり、衝突リスク判断部13は、移動体100がゆとりをもって停止できるように、予め軽いブレーキ(すなわち、予備動作)をする必要があると判断する。そして、経路生成部16は、判断情報D9に従って、矢印R3に示すような、移動体100の移動速度を減速する経路を生成する。
【0066】
続いて、
図5(c)は、移動体100が地点P2まで移動したことで、障害物Hが存在することがほぼ確定した場合を示している。この場合、衝突リスク判断部13は、障害物Hの手前で停止することが必要であると判断する。そして、経路生成部16は、移動体100を障害物Hの手前で停止させるため、判断情報D9に従って、矢印R4に示すように移動経路を更に変更する。言い換えれば、経路生成部16は、移動体100を、矢印R4の移動経路が示す速度よりも更に減速させ、障害物Hの手前で停止させる。移動体100の速度を段階的に低下させることで、障害物Hに至るまでの移動体100の減速加速度は緩やかとなる。
したがって、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避(停止)することができる。
【0067】
図5(d)は、移動体100が地点P2まで移動したことで、障害物Hが存在しないことが確定した例を示している。この場合、衝突リスク判断部13は、回避のための予備動作終了を判断する。そして、経路生成部16は、移動体100が移動経路で定義された速度に戻すように、加速する移動経路を生成する。
この場合、移動体100は最低限の減速を行っているだけなので、少しの再加速で元の速度に戻ることができる。したがって、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避することができる。
【0068】
続いて、
図6を用いて、別の例を説明する。
図6に示す例は、衝突リスク判断部13が、障害物Hまでの距離、検出信頼度、移動体100の走行速度などを勘案した結果、障害物Hが存在する可能性があるが、もう少し距離が近くになるまで判断を保留した場合を示している。
【0069】
図6(a)において、移動体100は、
図5(a)と同様に、地点P1に位置している。また、商店Sが、地点P3の車線L1の道路脇に存在している。地点P1において、移動体100が取得する障害物情報D2は、移動体100から距離100~120メートル先の地点P3に障害物Hが存在する可能性があり、かつ、障害物Hの検出信頼度が60%である。障害物Hを取り巻くように描かれている雲状の記号Cは、障害物の検出信頼度を模擬的に表現したものであり、雲状の記号Cが大きい程、検出信頼度が低いことを表現している。
【0070】
図6(b)は、移動体100が地点P4まで移動して障害物Hとの距離が近くなり、検出信頼度が60%から75%に上がった場合を示している。この時点で、衝突リスク判断部13は、障害物回避の予備動作が必要であると判断する。続いて、衝突リスク判断部13は、移動状態情報D4、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、移動経路情報D7を用いて、移動体100の周囲の混雑状況(すなわち、他の移動体との衝突可能性)を判断する。
図6(b)では、移動体100の周囲に他の移動体が存在しないため、衝突リスク判断部13は、移動体周囲に存在する他の移動体の混雑度が低いと判断する。そして、前出の
図5の例と異なり、衝突リスク判断部13は、移動体100を停止させる代わりに、移動経路の変更により障害物を回避することを判断する。経路生成部16は、衝突リスク判断部13の判断情報D9に従って、移動体100が隣の車線L2に進路変更するように、矢印R6に示す移動経路を生成する。
【0071】
図6(c)では、移動体100が地点P5まで移動し、障害物Hの存在がほぼ確定した場合を示している。この場合、移動体100は、既に隣の車線L2に進路変更しているため、そのまま移動を継続して障害物Hの横を通過する。
【0072】
図6(d)は、障害物Hが存在しなかった場合を示している。この場合、衝突リスク判断部13は、回避動作を終了するように判断する。そして、経路生成部16は、矢印R7に示すように、変更前の移動経路に戻る経路を生成する。
【0073】
上記のように、経路生成装置10は、移動体100の周囲状況を考慮して回避手段を選択し、障害物Hが存在した場合は、移動予定の位置を変更することで障害物Hを回避すると共に、障害物Hが存在しなかった場合は周囲の移動体の移動を遮ることなく、速やかに元(変更前)の移動予定経路に戻ることができる。したがって、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避することができる。
【0074】
図5、6の例において、移動体100と障害物Hとの衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報D8は、地点P3付近の商店S前の道路上に、荷物積み下ろしのための車両が頻繁に停車するために、過去に数度の追突事故が生じていることから推測される衝突リスクである。衝突リスク判断部13は、移動体100の移動状態と、衝突リスク情報D8に基づいて、移動体100が障害物Hを回避するための判断結果を示す情報である判断情報D9を出力する。そして、経路生成部16は、判断情報D9に基づいて移動体100の移動経路を生成することができる。よって、移動体100が障害物Hを自然な感覚で回避することができる。
【0075】
上記のように、本実施の形態に係る経路生成装置10は、衝突リスク判断部13が、各種センサから取得した情報(すなわち、障害物情報D2)だけに頼らず、障害物や他の移動体との衝突可能性を示す情報(すなわち、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6)も用いて総合的に判断するので、障害物Hが存在する可能性が生じた時点で、移動体100に対し必要最低限の予備動作を行わせることができる。その結果、移動体100は障害物Hを自然な感覚で確実に回避、又は、確実に停止することができる。また、本実施の形態に係る経路生成装置10は、障害物Hが存在しなかった場合でも、移動体100を、最低限の減速のみで移動経路で定義された速度に速やかに戻すことができる。
よって、本実施の形態に係る経路生成装置10は、様々な状況において、移動体100が障害物を自然な感覚で回避することができる。
【0076】
***動作順序の説明***
次に、本実施の形態に係る経路生成装置10の動作順序を説明する。
図7は、経路生成装置10の動作を示すフローチャートである。
【0077】
ステップST10において、移動状態推定部12は、移動体情報D1と、地図情報D3とを用いて、移動体100の移動状態を推定する(ステップST10)。
【0078】
ステップST11において、推定部14は、障害物情報D2、インシデント情報D5、リスクマップ情報D6、及び移動経路情報D7を用いて、移動体100が移動経路情報D7に従って移動した場合、障害物との衝突が起こり得る可能性を示す衝突リスク情報D8を推定する(ステップST11)。
【0079】
ステップST12において、判断部15は、移動状態情報D4と衝突リスク情報D8とを用いて、移動体100が障害物を回避する必要があるか否かを判断し、回避判断結果を示す判断情報D9を出力する(ステップST12)。
【0080】
ステップST13において、経路生成部16は、移動状態情報D4、移動経路情報D7、及び判断情報D9を用いて、判断情報D9に基づいて移動経路情報D7を生成する(ステップST13)。具体的には、経路生成部16は、判断情報D9に基づいて、移動体100が障害物を回避するための予備動作、例えば、軽い制動(減速)を行う移動経路、移動体100が障害物を回避するための本動作、例えば、制動(減速)又は進路変更を行う移動経路、又は、移動体100が現状の進路と移動速度を維持する移動経路を生成する。
【0081】
ステップST14において、移動体100が目的地に到着したか否かを判定する。移動体100が目的地に到着した場合(ステップST14のYes)、本処理フローは終了する。到着していない場合(ステップST14のNo)、再び、ステップST10に移行する。そして、上述した、移動体100の移動状態の推定、障害物との衝突リスクの推定、判断情報D9の出力、移動体100の移動経路の生成がそれぞれ実行される。
【0082】
<実施の形態1の効果>
以上説明したように、本実施の形態に係る経路生成装置によれば、移動体100と障害物との衝突リスクの推定と、移動体100が障害物を回避する方法とについて、衝突リスク判断部13が、各種センサ11から取得した情報(すなわち、障害物情報D2)だけに頼らず、障害物や他の移動体との衝突可能性を示す情報(すなわち、インシデント情報D5やリスクマップ情報D6)も用いて総合的に判断し、判断情報D9を出力する。そして、経路生成部16が、判断情報D9に基づいて移動経路を生成する。
その結果、移動体100は、障害物との衝突の可能性をいち早く見極めることができ、適切な回避動作を行う移動経路に沿って移動することができる。したがって、移動体100が障害物を自然な感覚で回避することができる。
【0083】
上述した実施の形態では、移動体の一例として自動運転車両を挙げて説明したが、移動体は自動運転車両に限らない。例えば、移動体は、鉄道、船舶、航空機などであってもよい。例えば、移動体が鉄道の場合、本開示に係る経路生成装置は、線路を移動経路と見なすことにより移動経路を生成することができる。また、例えば、移動体が船舶の場合、本開示に係る経路生成装置は、水路又は航路を移動経路と見なすことにより移動経路を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示にかかる経路生成装置は、例えば、自動車、パーソナルモビリティ、鉄道、船舶、航空機、ドローンなどの様々な移動体に適用可能である。特に、本開示にかかる経路生成装置は、自律移動する自動運転車両に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0085】
10 経路生成装置、11 各種センサ、12 移動状態推定部、13 衝突リスク判断部、14 推定部、15 判断部、16 経路生成部、17 地図情報記憶部、18 インシデント情報記憶部、19 リスクマップ情報記憶部、20 移動経路情報記憶部、21 制御部、
31 プロセッサ、32 メモリ、33 記憶装置、34 インタフェース、35 通信部、
100 移動体。
【要約】
センサから取得した情報だけに頼らず、障害物との衝突可能性を示す情報も用いて移動体の移動経路を生成することで、より多くの状況において、移動体が障害物を自然な感覚で回避できることを目的とする。
センサから取得された情報を用いて移動体の移動状態を推定する移動状態推定部と、
前記移動状態と、前記移動体と障害物との衝突可能性を示す情報である衝突リスク情報とに基づいて、前記移動体が障害物を回避するための判断結果を示す情報である判断情報を出力する衝突リスク判断部と、
前記判断情報に基づいて、前記移動体の移動経路を生成する経路生成部とを備える。