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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】防食装置、及び防食方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 58/10 20060101AFI20250221BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20250221BHJP
   F16L 55/26 20060101ALI20250221BHJP
   E02D 29/05 20060101ALI20250221BHJP
   B05C 7/08 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
F16L58/10
H02G9/06
F16L55/26
E02D29/05 Z
B05C7/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021164040
(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公開番号】P2023054981
(43)【公開日】2023-04-17
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博之
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-206048(JP,A)
【文献】特開2004-286114(JP,A)
【文献】特開平10-193506(JP,A)
【文献】特許第6890193(JP,B1)
【文献】特開2016-142719(JP,A)
【文献】中国実用新案第212156256(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0143383(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013010584(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 58/10
H02G 9/06
F16L 55/26
E02D 29/05
B05C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内部に挿入される防食装置であって、
前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、
前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、
前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部と、
前記画像に基づき、前記管路の内部の表面と前記管路の内部の表面に発生した腐食生成物との間の空間に前記防食剤を充填するよう前記吐出部の動作を制御する制御部と、
を備える防食装置。
【請求項2】
前記防食剤は樹脂及び水ガラスを含み、
前記制御部は、前記吐出部に、前記管路において前記腐食生成物が発生しているときは前記樹脂を吐出させる動作を決定し、前記腐食生成物が発生していないときは前記水ガラスを吐出させる動作を決定する、請求項に記載の防食装置。
【請求項3】
管路の内部に挿入される防食装置であって、
前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、
前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、
前記管路の内部の表面の粗度を検出する粗度検出部
前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部と、
記画像及び前記粗度に基づいて前記吐出部の動作を決定して制御する制御部と、
を備える防食装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記管路の内部の状態の分類を学習した学習モデルを取得し、
前記学習モデルに前記画像及び前記粗度を入力し、前記学習モデルからの出力に基づいて前記吐出部の動作を決定する、請求項に記載の防食装置。
【請求項5】
管路の内部に挿入され、
前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、
前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、
前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部とを備える防食装置が実行する防食方法であって、
前記画像に基づき、前記管路の内部の表面と前記管路の内部の表面に発生した腐食生成物との間の空間に前記防食剤を充填するよう前記吐出部の動作を制御する制御ステップを含む、
防食方法。
【請求項6】
管路の内部に挿入され、
前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、
前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、
前記管路の内部の表面の粗度を検出する粗度検出部と、
前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部とを備える防食装置が実行する防食方法であって、
前記画像及び前記粗度に基づいて前記吐出部の動作を決定して制御する制御ステップを含む、
防食方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防食装置、及び防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信ケーブル等の敷設用の地下管路の防食手法として、負圧式ライニング、超薄膜ライニング、スリムライニング等の、管路の内部の表面の全体に合成樹脂等を塗布又は形成する技術が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「情報流通インフラを支える通信土木技術」、情報流通インフラ研究会編著、社団法人電気通信協会発行、株式会社オーム社、平成21年9月30非初版3刷発行、pp.144-145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防食手法では、負圧もしくは水圧により定期的に管路の内部の全体をクリーニングする必要があり、大規模な装置を必要としていた。また、全体ではなく一部に対してのみ防食処理を施したい場合であっても、防食処理を施す必要のない健全な箇所までライニングする必要があり、部分的な防食処理が難しかった。管路において健全な部分が多い場合には効率的な防食が実現できず、初期段階の腐食を防止することが難しかった。このように、管路の内部の表面の防食手法には改善の余地があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、管路の内部の表面の防食手法を改善することが可能な防食装置、及び防食方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本開示に係る防食装置は、管路の内部に挿入される防食装置であって、前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部と、前記画像に基づき前記吐出部の動作を制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本開示に係る防食方法は、管路の内部に挿入され、前記管路の内部での移動を可能にする車輪部と、前記管路の内部の表面の画像を撮影する撮影部と、前記管路の内部で防食剤を吐出する吐出部とを備える防食装置が実行する防食方法であって、前記画像に基づき前記吐出部の動作を制御する制御ステップを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、管路の内部の表面に対するクリーニングを必要とせずに防食処理を施すことができる。また、管路の一部の必要な箇所のみに対して防食処理を施すことができる。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る管路と、当該管路内に設置された防食装置とを説明するための図である。
図2A】腐食生成物が発生した状態の管路の内部を説明するための図である。
図2B】腐食生成物が発生した状態の管路の内部を説明するための図である。
図2C】腐食生成物が発生した状態の管路の内部を説明するための図である。
図2D】腐食生成物が発生した状態の管路の内部を説明するための図である。
図3】管路の内部の表面における腐食量と経過時間との関係を説明するための図である。
図4】本開示の一実施形態に係る防食装置の構成を示すブロック図である。
図5】本開示の一実施形態に係る防食装置の動作を示す図である。
図6】第1の変形例に係る防食装置の構成を示すブロック図である。
図7】第1の変形例に係る防食装置の動作を示す図である。
図8】第2の変形例に係る防食装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における「上」、「下」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向を意味するものとし、「水平」とは、図面に描かれた座標軸表示のXY平面に平行な方向を意味するものとする。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。以下に説明する実施形態は本開示の構成の例であり、本開示は、以下の実施形態に制限されるものではない。
【0011】
図1を参照して、本開示の実施形態に係る防食装置20の概要について説明する。防食装置20は、管路Pの内部に挿入され、管路Pの内部を矢印で示す方向、すなわち管路Pの軸方向に移動可能である。管路Pは例えば通信ケーブル等の敷設用の管路であって、地下に埋設され、マンホールMの間を結ぶ。管路Pは水道用管路、ガス用管路、電力用管路等であってもよい。防食装置20が備える出力部25と入力部24とはマンホールMに入って作業するユーザによる操作のため、マンホールM内に設けられてよい。防食装置20は、管路Pの内部の表面を撮影した画像を出力部25に出力でき、当該出力された画像をユーザが参照することができる。ユーザは、当該画像を参照しながら防食装置20に動作の指示を入力することができる。
【0012】
図1に示す例に限られず、ユーザが保持する端末装置と防食装置20とが通信し、ユーザが地上から当該端末装置の表示部に表示された画像を参照できてもよい。この場合、ユーザは当該端末装置を介して、防食装置20の動作の指示を、防食装置20に対して送信できる。
【0013】
管路Pの内側の表面には、防食目的の保護剤として合成樹脂等が薄く伸ばされた状態で塗布されている。当該保護剤は、時間の経過とともに腐食し、腐食生成物Cとして発生する。以下の参考文献に示すように、当該保護剤の腐食速度は段階的に上昇することが知られている。
[参考文献1]
伊藤陽、外4名、「地下に建設されたマンホール環境における鋼管内面腐食速度モデル」、材料と環境、Vol.68、No.11、pp.321-325、2019年
【0014】
防食装置20は、管路Pの内部の表面に発生した腐食生成物Cに対して防食剤を吐出して浸潤させる。当該防食剤が時間の経過に伴い乾燥することにより、腐食生成物Cを防食剤ごと固めることができ、腐食の進行を抑制させることができる。
【0015】
図2Aから図2Dでは、腐食生成物Cが発生した状態の管路Pの内部を断面図で示す。断面図は、簡便のため半分だけ示す。図2Aは、管路Pの内側の表面上で初期腐食段階の状態にある腐食生成物Cを示す。初期腐食段階とは、塗布されていた保護剤の表面が変色または凹凸を有して、表面から一定の深さまでの保護剤が、腐食生成物Cと変化して発生
している状態をいう。
【0016】
図2Bにおいて、防食装置20により吐出された防食剤が浸潤した状態の腐食生成物Cを斜線で示す。腐食生成物Cの全体に防食剤が浸潤して乾燥することで、腐食生成物Cを固め、腐食の進行を抑制させることが可能となる。
【0017】
図2Cに、腐食進行段階の状態にある腐食生成物Cを示す。腐食進行段階とは、腐食生成物Cが成長して腐食生成物C内の圧力が高まり、管路Pの径内側方向に向かって隆起して、管路Pの表面から剥がれている状態をいう。腐食進行段階では、腐食生成物Cと管路Pの表面との間に空間Sができる。上記参考文献に示すように、腐食生成物Cが管路Pの表面から剥がれるときに最も腐食速度が大きくなる。図2Cを参照すると、管路Pの中央下部において、腐食生成物Cが管路の径方向内側に向かって剥がれ、空間Sができている。
【0018】
図2Dにおいて、防食装置20により吐出された防食剤が浸潤した状態の腐食生成物Cを斜線で示す。また、管路Pの表面から剥がれた腐食生成物Cと管路Pの表面との間の空間Sを充填した防食剤を黒塗りで示す。防食装置20が防食剤を剥がれた状態の腐食生成物Cに浸潤させ、当該防食剤が腐食生成物Cと管路Pの表面との間の空間Sに染み出て、当該空間Sを充填する。防食剤が乾燥して固まることで、腐食生成物Cを管路Pの表面上に固着させ、腐食の進行を抑止することができる。
【0019】
図3は、管路Pの内部の腐食量と時間との関係を示し、腐食生成物Cに防食剤を浸潤させた場合の腐食量の進行を実線で、腐食生成物Cに防食剤を浸潤させなかった場合の腐食量の進行を破線で示す。図3を参照すると、腐食生成物Cに防食剤を浸潤させなかった場合、時刻t1とt2とにおいて、腐食量が顕著に増加し、腐食速度の上昇が起きていることがわかる。これは、時刻t1とt2とにおいて、腐食生成物Cの管路Pの表面からの剥がれが発生したことに起因すると考えられる。腐食生成物Cに防食剤を浸潤させて固めた場合、時刻t1以降、腐食量の進行を抑えることができている。このように、腐食生成物Cに防食剤を浸潤させて固めることで、腐食速度の再上昇が起こる腐食生成物Cの剥がれが発生しなくなり、腐食の進行を抑制させることが可能となったことがわかる。
【0020】
<防食装置20の構成>
図1から図6を参照して、本実施形態に係る防食装置20の構成を説明する。図4に示すように、防食装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、入力部24と、出力部25と、車輪部26と、撮影部27と、吐出部28とを備える。制御部21とは、有線または無線により接続される。
【0021】
記憶部22は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部22に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部22は、防食装置20の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部22は、必ずしも防食装置20が内部に備える必要はなく、防食装置20の外部に備える構成としてもよい。
【0022】
通信部23には、少なくとも1つの通信用インタフェースが含まれる。通信用インタフェースは、例えば、LTE、4G規格、若しくは5G規格等の移動通信規格に対応したインタフェース、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信に対応したインタフェース、又はLANインタフェースである。通信部23は、防食装置20の動作に用いられる情報を受信し、また防食装置20の動作によって得られる情報を送信する。
【0023】
通信部23は、防食装置20がネットワークを介して他の装置と情報の送受信を行うこ
とを可能にする。ネットワークとは、インターネット、少なくとも1つのWAN(Wide Area Network)、少なくとも1つのMAN(Metropolitan Area Network)、又はこれらの組み合わせを含む。ネットワークは、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN(Local Area Network)、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。
【0024】
入力部24には、少なくとも1つの入力用インタフェースが含まれる。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又はマイクである。入力部24は、防食装置20の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。入力部24は、防食装置20に備えられる代わりに、外部の入力機器として防食装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。入力部24は、防食装置20の動作についてのユーザの指示を受け付ける。
【0025】
出力部25には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。出力部25は、防食装置20の動作によって得られる情報を出力する。出力部25は、防食装置20に備えられる代わりに、外部の出力機器として防食装置20に接続されてもよい。接続方式としては、例えば、USB、HDMI(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の任意の方式を用いることができる。出力部25は、撮影部27が撮影した画像又は映像を表示することができる。
【0026】
車輪部26は、モータによって回転可能なタイヤであり、防食装置20が管路Pの内部を軸方向に移動することを可能にする。車輪部26の数は任意に設定されてよいが、例えば前輪として1つ、後輪として2つ設けられてもよい。車輪部26の駆動は、制御部21によって制御される。
【0027】
撮影部27は、管路Pの内部を撮影するカメラである。撮影部27は、防食装置20の底面又は防食装置20の進行方向等、任意の場所に設けられてよい。撮影部27は、管路Pの内部の表面の画像を撮影する。撮影部27は、複数の画像から成る映像を撮影してもよい。撮影部27は撮影した画像を制御部21に出力できる。管路Pの内部の表面が撮影できるよう、撮影部27の角度又は拡大率等の調整が制御部21によって制御されてよい。防食装置20は、図示しないLEDランプ等から成る照明部を含み、撮影部27が撮影する画像の明るさが所定値以上となるように、当該照明部の出力が制御部21によって制御されてよい。
【0028】
吐出部28は、管路Pの内部で防食剤を吐出する。吐出部28は、防食剤を吐出する吐出口と、防食剤を収容する収容部と、当該収容部に接続された、モータで駆動するポンプとを含んでよい。吐出部28は収容部を複数含み、当該収容部のそれぞれが異なる防食剤を含んでよい。当該ポンプのモータの駆動が制御部21によって制御され、ポンプが収容部から防食剤を汲み上げて吐出口に送出することで、吐出部28が防食剤を吐出できる。吐出部28は、ポンプの代わりに収容部と接続されたバルブを含んでもよい。この場合、当該バルブの開度が制御部21によって制御され、吐出部28が吐出する防食剤の量が調整されてよい。
【0029】
吐出部28は、図2に示す例に限られず、管路Pの内側表面の任意の場所に防食剤を吐出できるよう、防食装置20の上方向、側方、斜め上側方又は斜め下側方に設けられもよ
い。吐出部28は、腐食生成物Cに防食剤を吐出できるよう伸縮及び回転が可能であるよう構成されてよい。吐出部28は、防食剤をシャワー状にして管路Pの内側表面に噴出させて吐出できてもよい。
【0030】
上述に限られず、吐出部28は往復または回転可能なブラシ部を用いて構成されてもよい。この場合、ブラシ部は管路Pの内部の表面に接しており、当該ブラシ部に収容部内の防食剤が導出される。制御部21の制御によりブラシ部が往復または回転することで、防食剤が管路Pの内部の表面で塗布されてもよい。
【0031】
防食剤は、例えば樹脂、ガラス水を含む。樹脂はエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂を含む。防食剤は、腐食生成物Cに浸潤する性質を有する。複数の防食剤がそれぞれ異なる収容部に収容され、制御部21によって指定された防食剤が、吐出部28のポンプによってくみ上げられて吐出される。
【0032】
制御部21は、制御演算回路(コントローラ)により実現される。該制御演算回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部21は、防食装置20の各部を制御しながら、防食装置20の動作に関わる処理を実行する。制御部21は、外部装置との情報の送受信を、通信部23及びネットワークを介して行うことができる。
【0033】
防食装置20の制御部21は、撮影部27を制御して管路Pの内部の表面の画像を撮影させ、当該画像を取得する。例えばユーザが、防食装置20を管路P内の所定の位置まで移動して画像を撮影するよう指示を入力する。この場合、制御部21が入力部24を介して当該指示を受け付け、当該指示に従って車輪部26を制御して防食装置20を移動させる。例えば制御部21は管路Pの位置を座標で示す情報を記憶部22に格納しており、当該情報を参照して防食装置20を移動することができてもよい。制御部21は、防食装置20が所定の位置に到着したときに撮影部27に画像を撮影させる。撮影部27が撮影した画像を制御部21に出力し、制御部21が当該画像を取得する。
【0034】
制御部21は、防食装置20が管路P内を移動している間、撮影部27が撮影した管路Pの内部の画像を出力部25に表示させていてもよい。この場合、ユーザが出力部25に表示された画像を確認しながら、撮影部27が撮影する指示を、入力部24を介して入力する。制御部21は、当該指示を受け付け、撮影部27を制御して画像を撮影させる。
【0035】
制御部21は、撮影部27が撮影した画像に基づき、管路Pの内部の表面の状態を判断する。管路Pの内部の表面の状態は、腐食生成物Cの未発生段階、初期腐食段階、腐食進行段階の3段階の状態を含む。未発生段階とは、管路Pの内部に塗布された合成樹脂等の保護剤が塗布されたときから変化がなく、腐食生成物Cがまだ発生していない状態にあることをいう。初期腐食段階とは、塗布されていた保護剤の表面が変色または凹凸を有して、表面から一定の深さまでの保護剤が、腐食生成物Cへと変化して発生している状態をいう。腐食生成物Cの腐食進行段階とは、腐食生成物Cが成長して腐食生成物C内部の圧力が高まり、管路Pの径内側方向に向かって隆起して、管路Pの表面から剥がれている状態をいう。腐食進行段階では、腐食生成物Cと管路Pの表面との間に空間Sができる。制御部21は、管路Pの内部の表面の状態の判断を、画像を任意の画像解析手法により解析することで行ってよい。
【0036】
制御部21は管路Pの内部の表面の状態に応じて吐出部28が吐出する防食剤の種類を決定する。防食剤の種類は腐食生成物Cの状態に応じて予め設定されていてよい。例えば制御部21は、腐食生成物Cが未発生段階の状態にあるときは、水ガラスを防食剤の種類
として決定し、腐食生成物Cが初期腐食段階の状態にあるとき又は腐食進行段階にあるときは、樹脂を防食剤の種類として決定する。このように、制御部21は、吐出部28に、管路Pにおいて腐食生成物Cが発生しているときは樹脂を吐出させる動作を決定し、腐食生成物Cが発生していないときは水ガラスを吐出させる動作を決定する。
【0037】
制御部21は、吐出部28が吐出する防食剤の吐出量を決定する。吐出量は腐食生成物Cの状態に応じて予め設定されてよい。吐出量は、腐食生成物Cが腐食進行段階にある場合は、初期腐食段階または未発生段階にある場合と比較して多く設定されていてよい。制御部21は、管路Pの内径又は内周の値を示す情報を取得し、当該値に比例して吐出量を多く決定してもよい。
【0038】
これに限られず、制御部21は、任意の画像解析手法により、腐食生成物Cの存在する範囲を特定し、当該範囲に応じた吐出量を決定してもよい。例えば腐食生成物Cが腐食進行段階にある状態であると判断したときに、制御部21は、既知の画像解析手法により、管路Pの表面から隆起してはがれた腐食生成物Cと、当該管路Pの内部の表面との間の空間Sの体積を推定する。制御部21は、推定した体積を防食剤の液量に換算し、空間Sを充填できる吐出量を決定してよい。
【0039】
腐食生成物Cの状態の判断、吐出する防食剤の種類の決定、又は当該防食剤の吐出量の決定は、出力部25に表示された管路Pの内部の表面の画像を参照したユーザによって行われてもよい。この場合、制御部21は、ユーザによる判断又は決定の入力を、入力部24を介して受け付ける。
【0040】
このようにして、制御部21は、吐出部28の動作を決定する。決定される吐出部28の動作は上述に限られず、例えば吐出部28が防食剤を吐出する方向及び角度、吐出部28が防食剤を吐出する時間、吐出部28が防食剤を吐出しながら車輪部26が駆動して移動する距離等を含んでよい。
【0041】
制御部21は、決定した動作を行うよう吐出部28を制御する。制御部21は、決定した防食剤を収容する収容部に接続された吐出部28のポンプのモータの駆動を制御する。当該ポンプが収容部から防食剤を汲み上げて吐出口に送出することで、防食剤が吐出される。
【0042】
決定された動作が防食剤としての水ガラスを所定の量吐出する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出部28から吐出された水ガラスが管路Pの内部の表面の保護剤上に吐出され、時間の経過とともに乾燥することで、腐食の進行を抑制することができる。決定された動作が防食剤としての樹脂を所定の量吐出する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出部28から吐出された樹脂が腐食生成物Cに浸潤し、時間の経過とともに乾燥することで、腐食生成物Cを固め、腐食の進行を抑制することができる。
【0043】
決定された動作が、樹脂を所定の量吐出し、管路Pの内部の表面と腐食生成物Cとの間の空間Sに樹脂を充填する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出された防食剤が腐食生成物Cに浸潤し、腐食生成物Cから染み出て空間Sに充填される。防食剤が時間の経過とともに乾燥することで、腐食生成物Cを固め、腐食の進行を抑制することができる。このようにして吐出部28は、管路Pの内部の表面と腐食生成物Cとの間の空間Sに防食剤を充填することができる。
【0044】
このようにして、腐食生成物Cが初期腐食段階または腐食進行段階にある場合には、吐出された防食剤としての樹脂が腐食生成物Cに浸潤することができる。腐食生成物Cが未
発生段階にある場合には、水ガラスが管路Pの内部に塗布された保護剤の上に追加的に、又は管路Pの内部の表面上に、保護膜を作ることができる。
【0045】
このようにして制御部21は、腐食生成物Cの画像に基づき吐出部の動作を制御する。
【0046】
<プログラム>
上述した防食装置20として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0047】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インタフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インタフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インタフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インタフェースは、外部の装置と通信するためのインタフェースである。
【0048】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0049】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る防食装置20の動作について説明する。防食装置20の動作は、本実施形態に係る防食方法に相当する。図4は、防食装置20の動作の一例を示す。
【0050】
図5のステップS101において、防食装置20の制御部21は、撮影部27が管路Pの内部の表面を撮影した画像を取得する。例えばユーザが、防食装置20を管路P内の所定の位置まで移動して画像を撮影するよう指示を入力する。この場合、制御部21が入力部24を介して当該指示を受け付け、当該指示に従って車輪部26を制御して防食装置20を移動させる。制御部21は、防食装置20が所定の位置に到着したときに撮影部27に画像を撮影させる。撮影部27が撮影した画像を制御部21に出力し、制御部21が当該画像を取得する。
【0051】
ステップS102において、制御部21は、管路Pの内部の表面の状態を判断する。管路Pの内部の表面の状態は、腐食生成物Cの未発生段階、腐食生成物Cの初期腐食段階、腐食生成物Cの腐食進行段階の3段階の状態を含む。制御部21は、管路Pの内部の表面の状態の判断を、画像を任意の画像解析手法により解析することで行ってよい。
【0052】
ステップS103において、制御部21は、ステップS102で判断した管路Pの内部の表面の状態に応じて吐出部28が吐出する防食剤の種類を決定する。防食剤の種類は腐
食生成物Cの状態に応じて予め設定されていてよい。例えば制御部21は、腐食生成物Cが未発生段階の状態にあるときは、水ガラスを吐出する防食剤の種類として決定し、腐食生成物Cが初期腐食段階の状態にあるとき又は腐食進行段階にあるときは、樹脂を吐出する防食剤の種類として決定する。このように、制御部21は、吐出部28に、管路Pにおいて腐食生成物Cが発生しているときは樹脂を吐出させる動作を決定し、腐食生成物Cが発生していないときは水ガラスを吐出させる動作を決定する。
【0053】
ステップS104において、制御部21は、吐出部28が吐出する防食剤の吐出量を決定する。吐出量は腐食生成物Cの状態に応じて予め設定されてよい。吐出量は、腐食生成物Cが腐食進行段階にある場合は、初期腐食段階または未発生段階にあるときと比較して多く設定されていてよい。制御部21は、管路Pの内径又は内周の値を示す情報を取得し、当該値に比例した吐出量を決定してもよい。これに限られず、制御部21は、任意の画像解析手法により、腐食生成物Cの存在する範囲を特定し、当該範囲に応じた吐出量を決定してもよい。制御部21は、既知の画像解析手法により、管路Pの表面から隆起してはがれた腐食生成物Cと、当該管路Pの内部の表面との間の空間Sの体積を推定し、推定した体積を防食剤の液量に換算し、空間Sを充填できる吐出量の樹脂を吐出量として決定してもよい。
【0054】
ステップS103及びステップS104に示すように、制御部21は、吐出部28の動作を決定する。
【0055】
ステップS105において、制御部21は、決定した動作を行うよう吐出部28を制御する。制御部21は、決定した防食剤を収容する収容部に接続された吐出部28のポンプのモータの駆動を制御する。当該ポンプが収容部から防食剤を汲み上げて吐出口に送出することで、防食剤が吐出される。
【0056】
決定された動作が防食剤としての水ガラスを所定の量吐出する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出部28から吐出された水ガラスが管路Pの内部の表面の保護剤上に吐出され、時間の経過とともに乾燥することで、腐食の進行を抑制することができる。決定された動作が防食剤としての樹脂を所定の量吐出する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出部28から吐出された樹脂が腐食生成物Cに浸潤し、時間の経過とともに乾燥することで、腐食生成物Cを固め、腐食の進行を抑制することができる。
【0057】
決定された動作が、樹脂を所定の量吐出し、管路Pの内部の表面と腐食生成物Cとの間の空間Sに樹脂を充填する動作である場合、制御部21は当該動作を行うよう吐出部28を制御する。吐出された防食剤が腐食生成物Cに浸潤し、腐食生成物Cから染み出て空間Sに充填される。防食剤が時間の経過とともに乾燥することで、腐食生成物Cを固め、腐食の進行を抑制することができる。その後、制御部21の処理は終了する。
【0058】
ステップS101からステップS105に示すように、制御部21は、腐食生成物Cの画像に基づき吐出部28の動作を制御する。
【0059】
上述の通り、本実施形態に係る防食装置20は、管路Pの内部に挿入される防食装置であって、管路Pの内部での移動を可能にする車輪部26と、管路Pの内部の表面の画像を撮影する撮影部27と、管路Pの内部で防食剤を吐出する吐出部28と、画像に基づき吐出部28の動作を制御する制御部21と、を備える。
【0060】
本実施形態では、制御部21が管路Pの内部の表面の状態を撮影した画像を取得し、当該画像に基づいて防食剤を吐出部28に吐出させる動作が決定される。腐食生成物Cが発
生している場合は、吐出された防食剤が腐食生成物Cに浸潤し、腐食生成物Cがまだ発生していない場合でも、管路Pの内部の表面の特定の場所に防食剤を塗布することができる。吐出された防食剤が乾燥して固まることで、腐食の進行を抑制することができる。このように本実施形態によれば、管路Pの内部の表面の全体に対して防食処理を施す従来の手法と比べて、大規模な装置が不要となり、効率的に腐食進行の抑制を図ることができる。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【0061】
上述の通り、本実施形態に係る防食装置20において、吐出部28は、管路Pの内部の表面と管路Pの内部の表面に発生した腐食生成物Cとの間の空間Sに防食剤を充填するよう吐出部28の動作を制御する。
【0062】
本実施形態によれば、管路Pの内側の表面と当該表面から剥がれて隆起した腐食生成物Cとの間の空間Sまで防食剤が充填され、当該防食剤が乾燥することで、腐食生成物Cをその状態のまま固め、腐食の進行を抑制することができる。管路Pの内部において、表面から剥がれて隆起した腐食生成物Cを除去する処理を別途行うことなく、管路Pの内部の表面に効率的に防食処理を施すことができる。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【0063】
上述の通り、本実施形態に係る防食装置20において、防食剤は樹脂及び水ガラスを含み、制御部21は、吐出部28に、管路Pにおいて腐食生成物Cが発生しているときは樹脂を吐出させる動作を決定し、腐食生成物Cが発生していないときは水ガラスを吐出させる動作を決定する。
【0064】
本実施形態によれば、管路Pの内側の表面の状態に応じて適切な防食剤を用いて防食処理を施すことができる。樹脂により腐食が進行した腐食生成物Cを固めることができる。水ガラスにより、すでに塗布されている保護剤の上にさらに保護膜を形成することができる。管路Pの内部の全体に、一律に同一の防食剤で防食処理を施す場合と比較して、低コストで効率的な防食処理を実現できる。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【0065】
本発明を諸図面や実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0066】
(第1の変形例)
次に、本開示の実施形態の第1の変形例について説明する。図6に示すように、本変形例では、防食装置20は管路Pの内部の表面の粗度を検出する粗度検出部29をさらに備える。制御部21は、腐食生成物Cの画像及び粗度に基づいて吐出部28の動作を決定する。
【0067】
粗度検出部29は既知の触針式粗度計であってよい。図6に示すように、粗度検出部29は、管路Pの内部の表面に接触して粗度を検出する針部291を備える。より具体的には、針部291は管路Pの内部の表面に塗布された保護剤又は当該保護剤が変化して発生した腐食生成物Cの表面と接触する。針部291は、図6に示すように上下方向に一本ずつ設けられてよい。これに限られず、針部291の数および配置は自由に設定されてよい。粗度検出部29は、針部291が検出した粗度を制御部21に出力する。腐食生成物Cが発生しているときは表面に凹凸が発生するため、粗度は高い値となる。
【0068】
制御部21は、粗度検出部29を制御して管路Pの内部の表面の粗度を検出させ、検出された粗度を取得する。制御部21は、検出された粗度が所定値以上かどうかを判断する
。当該所定値はユーザによって予め設定されていてよい。制御部21は、粗度が所定値未満である場合は、腐食生成物Cが発生していないと判断する。この場合、制御部21は、出力部25を介して防食剤を吐出するかについて問い合わせる質問をユーザに対し表示してよい。ユーザが、水ガラスを吐出する動作の指示の入力を行うと、制御部21は当該入力を入力部24を介して受け付け、水ガラスを吐出する動作を吐出部28の動作として決定できる。ユーザの指示に吐出部28を動作させる指示が無い場合は、制御部21は吐出部28を制御せずに、防食処理を終了できる。
【0069】
制御部21は、取得した粗度が所定値以上である場合、さらに管路Pの内部の表面を撮影した画像を取得し、当該画像に基づいて腐食生成物Cの状態が腐食初期段階又は腐食進行段階にあるかを判断する。制御部21は、上述の実施形態と同様に、既知の画像解析手法により管路Pの内部の表面の状態を判断し、腐食生成物Cの腐食の段階を判断してよい。
【0070】
以下、上述の実施形態に係る防食装置20と本変形例に係る防食装置20の動作との差異を、図5及び図7を参照しながら説明する。防食装置20の動作は、本変形例に係る防食方法に相当する。
【0071】
ステップS201は、上述の実施形態に係る図5のステップS101と同様であるため説明を省略する。
【0072】
ステップS202において、制御部21は、粗度検出部29を制御して管路Pの内部の表面の粗度を検出させ、検出された粗度を取得する。具体的には、まず、粗度検出部29の針部291が管路Pの内部の表面に塗布された保護剤又は当該保護剤が変化して発生した腐食生成物Cの表面と接触して粗度を検出する。粗度検出部29は、検出された粗度を制御部21に出力する。制御部21は当該粗度を制御部21が取得する。
【0073】
ステップS203において、制御部21は、粗度検出部29が検出した粗度が所定値以上かどうかを判断する。粗度が所定値未満である場合は、制御部21の処理はステップS204に進む。粗度が所定値以上である場合は、制御部21の処理はステップS205に進む。
【0074】
ステップS203で粗度が所定値未満であると判断した場合、ステップS204において、制御部21は、腐食生成物Cが発生していないと判断し、ユーザによる動作の指示を入力部24を介して受け付ける。その後、制御部21の処理はステップS205へ進む。
【0075】
ステップS205において、制御部21は、ステップS204で受け付けた指示に吐出部28を動作させる指示があるかを判断する。例えばユーザにより水ガラスを所定の量吐出する動作の指示の入力あった場合、制御部21は、当該動作を吐出部28の動作として決定し、その後、制御部21の処理はステップS208へ進む。ユーザの指示に吐出部28を動作させる指示が無い場合は制御部21の処理は終了する。
【0076】
ステップS202で粗度が所定値以上であると判断した場合、ステップS206において、制御部21は、取得した画像から腐食生成物Cの状態が腐食初期段階又は腐食進行段階にあるかを判断する。制御部21は、既知の画像解析手法により腐食生成物Cの状態を判断してよい。制御部21が、取得した画像から腐食生成物Cの状態が腐食初期段階又は腐食進行段階にあると判断した場合は、制御部21の処理はステップS207に進む。取得した画像から腐食生成物Cの状態が腐食初期段階及び腐食進行段階のいずれでもないと判断した場合は、制御部21の処理は終了する。
【0077】
ステップS207からステップS209は、上述の実施形態に係る図2のステップS103からステップS105と同様であるため説明を省略する。
【0078】
上述の通り、本変形例に係る防食装置20は、管路Pの内部の表面の粗度を検出する粗度検出部をさらに備え、制御部21は、画像及び粗度に基づいて吐出部28の動作を決定する。
【0079】
本変形例によれば、制御部21は、粗度検出部29が検出した粗度が所定値以上であって、かつ撮影部27が撮影した画像から腐食生成物Cが腐食初期段階又は腐食進行段階にあると判断できたときに防食剤を吐出するよう吐出部28を制御する。これにより、画像のみに基づいて判断する場合と比較して、管路Pの内部の表面の状態がより精度よく判断され得る。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【0080】
(第2の変形例)
次に、本開示の実施形態の第2の変形例について説明する。本変形例では、第1の変形例と同様、防食装置20は管路Pの内部の表面の粗度を検出する粗度検出部29をさらに備える。制御部21は、腐食生成物Cの状態の分類を学習した学習モデルを取得し、当該学習モデルに腐食生成物Cの画像及び粗度を入力し、学習モデルからの出力に基づいて吐出部28の動作を決定する。
【0081】
管路Pの内部の状態とは、腐食生成物Cの未発生段階の状態、初期腐食段階の状態、腐食進行段階の状態を含む。学習モデルは、深層学習を含む既知の機械学習手法により、入力された画像及び粗度から管路Pの内部の状態の分類を行い、分類の結果を出力する。例えば、入力された画像に隆起した腐食生成物Cが映り込んでいて、入力された粗度が所定値以上であるとき、学習モデルは管路Pの内部の状態を腐食進行段階の状態と分類した結果を出力できる。学習モデルの取得には任意の手法が採用されてよい。制御部21は、学習モデルを外部装置から取得してもよいし、過去に撮影部27が撮影した画像及び粗度検出部29が検出した粗度と、決定された吐出部28の動作とを教師データとして用いて学習モデルを生成することで、学習モデルを取得してもよい。
【0082】
制御部21は、学習モデルが出力した結果に応じて吐出部28による動作を決定する。学習モデルが出力した管路Pの内部の状態が腐食生成物Cの未発生段階の状態である場合は、制御部21は、水ガラスを所定量吐出する動作を決定する。管路Pの内部の状態が初期腐食段階の状態又は腐食進行段階の状態である場合は、制御部21は、樹脂を所定量吐出する動作を決定する。防食剤の吐出量は予め定められていてもよいし、上述の実施形態と同様に、既知の画像解析手法を用いて制御部21が決定できてもよい。
【0083】
以下、上述の実施形態に係る防食装置20と本変形例に係る防食装置20の動作との差異を、図5図7及び図8を参照しながら説明する。防食装置20の動作は、本変形例に係る防食方法に相当する。
【0084】
ステップS301は、上述の実施形態に係る図5のステップS101と同様であるため説明を省略する。
【0085】
ステップS302は、上述の第1の変形例に係る図7のステップS202と同様であるため説明を省略する。
【0086】
ステップS303において、制御部21は、学習モデルを取得する。学習モデルの取得には任意の手法が採用されてよい。制御部21は、記憶部22を参照して記憶部22に格納されている学習モデルを取得してもよいし、外部装置と通信して外部装置から取得して
もよい
【0087】
ステップS304において、制御部21は、ステップS301において取得した画像と、ステップS302において取得した粗度とを、ステップS303で取得した学習モデルに入力する。
【0088】
ステップS305において、制御部21は、学習モデルが出力した結果に応じて吐出部28による動作を決定する。学習モデルが出力した管路Pの内部の状態が腐食生成物Cの未発生段階の状態である場合は、制御部21は、水ガラスを所定量吐出する動作を決定する。管路Pの内部の状態が初期腐食段階の状態又は腐食進行段階の状態である場合は、制御部21は、樹脂を所定量吐出する動作を決定する。
【0089】
ステップS306は、上述の実施形態に係る図5のステップS105と同様であるため説明を省略する。
【0090】
上述の通り、本変形例に係る防食装置20では、制御部21は、管路Pの内部の状態の分類を学習した学習モデルを取得し、学習モデルに画像及び粗度を入力し、学習モデルからの出力に基づいて吐出部28の動作を決定する。
【0091】
本変形例によれば、学習モデルによって管路Pの内部の状態が判断されるため、ユーザが画像又は粗度に基づいて管路Pの内部の状態を判断する工程を省略でき、防食処理の効率化を図ることができる。よって、管路の内部の表面の防食手法を改善することができる。
【符号の説明】
【0092】
20 防食装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 入力部
25 出力部
26 車輪部
27 撮影部
28 吐出部
29 粗度検出部
291 針部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8