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特許7637948O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬
(51)【国際特許分類】
   C08F 120/36 20060101AFI20250221BHJP
   A61K 31/78 20060101ALI20250221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
C08F120/36
A61K31/78
A61P29/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021556161
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2020042362
(87)【国際公開番号】W WO2021095828
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019206265
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 早織
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/099271(WO,A1)
【文献】特開2006-276238(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0235790(US,A1)
【文献】特表2004-526691(JP,A)
【文献】A. L.PARRY et al.,Glycopolymer-Functionalised Gold Nanoparticles : A New Strategy Towards Synthetic Anti-Cancer Vaccines,PMSE preprints,2009年,101,1331-1332,ISSN:0743-0515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-アセチルグルコサミン単位と、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位とを有し、前記N-アセチルグルコサミン基を1分子当たり3~100個含むポリマーのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としての使用方法
【請求項2】
前記カルボキシ基含有ラジカル重合性単位が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸2-カルボキシエチル及びメタクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としての使用方法
【請求項3】
前記ポリマーが、アルキル鎖を有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としての使用方法
【請求項4】
前記ポリマーが、次の化学式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としての使用方法
【化1】
式(1)中、nは3~100の整数である。
【化2】
式(2)中、nは3~100の整数である。
【請求項5】
N-アセチルグルコサミン単位と、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位とを有し、前記N-アセチルグルコサミン基を1分子当たり3~100個含むポリマーを有効成分として含有する線維症治療薬。
【請求項6】
前記カルボキシ基含有ラジカル重合性単位が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸2-カルボキシエチル及びメタクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の線維症治療薬。
【請求項7】
前記ポリマーが、アルキル鎖を有しないことを特徴とする請求項5又は6に記載の線維症治療薬。
【請求項8】
前記ポリマーが、次の化学式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項5~7のいずれかに記載の線維症治療薬。
【化3】
式(1)中、nは3~100の整数である。
【化4】
式(2)中、nは3~100の整数である。
【請求項9】
次の化学式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする、N-アセチルグルコサミン単位と、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位とを有し、前記N-アセチルグルコサミン基を1分子当たり3~100個含むO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質。
【化5】
式(1)中、nは3~100の整数である。
【化6】
式(2)中、nは3~100の整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬に関する。
本願は、2019年11月14日に、日本に出願された特願2019-206265号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
内臓などの組織を構成している結合組織と呼ばれる部分が異常増殖や活性化した線維芽細胞が線維化部位に集積し、コラーゲンや他のタンパク質を大量に生産しそれが組織に付着することによりその組織の線維化が発生する。線維化は各組織で起こりうるものであり、例えば、肝臓の線維化である肝線維症は、肝炎ウィルスの持続感染やアルコールの過剰摂取、非アルコール性脂肪肝炎の他にも、自己免疫学的機序、肝内胆汁うっ滞、薬剤性、金属代謝異常、うっ血肝など、様々な原因により引き起こされる共通の病態であり、活性化した星細胞が筋線維芽様細胞に形質転換し、細胞外基質を産生することによって進行する。線維化進展に伴って、肝組織中にはコラーゲンをはじめとする細胞外マトリックスが過剰に沈着し、その結果、肝硬変では肝細胞機能不全や門脈亢進症が進行する。
肝臓以外の組織としては、例えば、腎臓、肺、心臓、膵臓等の臓器においても、筋線維芽細胞による線維化に起因して各種疾患に至ることが知られている。このように各種臓器の線維化状態からさらなる疾患へと進行することから、線維化を防止する又は線維化を改善することで、肝硬変や肝臓がん、その他臓器の線維化に関連する各種疾患に対する有効な治療に繋がることが期待され、いくつかの改善方法が提案されている。
例えば、特許文献1では組織線維化疾患の予防又は治療剤の有効成分として、金属キレート化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする組織線維化疾患の予防又は治療剤が提案されている。
また、特許文献2では線維化の発症を防止し、線維化の進行を遅らせ、或いは線維化を改善するために、Sema6ファミリーに属するタンパク質又はその部分断片をコードするポリヌクレオチド;Sema6ファミリーに属するタンパク質又はその部分断片;若しくは当該タンパク質又はその部分断片をリガンドとする受容体に対するアゴニストを有効成分として含有する線維化抑制剤が提案されている。
しかしながら、培養細胞を用いた試験や動物実験によって多くの抗線維化作用物質が同定・報告させているものの、臨床の現場では肝線維症に対する特異的かつ効果的な治療薬はいまだ提案されていない。
また近時、growth and differentiation factor 15(以下、単にGDF15という)は様々な悪性腫瘍の患者において血中濃度が上昇していることが知られている。このGDF15はTGF-βスーパーファミリーに属する多彩な生物学的特性を示すサイトカインであり、胎盤、腎臓、腸、前立腺、脈絡叢などで顕著に発現している。またこれらの組織又は細胞以外でもGDF15は低酸素、炎症、UV暴露、組織傷害などのストレスに応答して遺伝子発現が誘導される(非特許文献1)。さらにGDF15は抗炎症性、心筋保護、神経保護、食欲・代謝調整作用の他、がん細胞の増殖、転移、治療耐性などに関与することも知られている(非特許文献2)。例えばiPS細胞から分化させた間葉系幹細胞は、GDF15を分泌することでドキソルビシン誘導心障害を改善することが報告されている(非特許文献3)。また、アルコール及び四塩化炭素誘導肝障害モデルマウスにおいてGDF15の欠損は、これらの病態を悪化させるが、GDF15の投与により改善すること(非特許文献4)、GDF15は非アルコール性脂肪肝炎(以下、NASHという)を改善すること(非特許文献5)、GDF15を高発現するトランスジェニックマウスでは、関節リウマチの進行が抑制さていること(非特許文献6)、膵臓がんは、NF-κBの活性化によりGDF15を分泌し、周囲のマクロファージにGDF15を作用させ、マクロファージのNF-κBを抑制してTNFαの産生を止めており、このマクロファージのTNFα分泌抑制により、膵臓がん自身はマクロファージの攻撃を回避して増殖すること(非特許文献7)等が報告されている。
このようにGDF15は心筋梗塞や線維症、自己免疫疾患において血中に増加し、病態に対して抗炎症作用による傷害保護作用があることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-190257号公報
【文献】特開2018-21026号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Unsicker K, Spittau B, Krieglstein K: The multiple facets of the TGF-beta family cytokine growth/differentiation factor-15/macrophage inhibitory cytokine-1. Cytokine Growth Factor Rev 2013, 24(4):373-384.
【文献】Wang X, Baek SJ, Eling TE: The diverse roles of nonsteroidal anti-inflammatory drug activated gene(NAG-1/GDF15)in cancer. Biochem Pharmacol 2013, 85(5):597-606.
【文献】Zhang Y, Liang X, Liao S, Wang W, Wang J, Li X, Ding Y, Liang Y, Gao F, Yang M, Fu Q, Xu A, Chai YH, He J, Tse HF, Lian Q. Potent Paracrine Effects of human induced Pluripotent Stem Cell-derived Mesenchymal Stem Cells Attenuate Doxorubicin-induced Cardiomyopathy. Sci Rep. 2015 Jun 9;5:11235. doi: 10.1038/srep11235
【文献】Chung HK, Kim JT, Kim HW, Kwon M, Kim SY, Shong M, Kim KS, Yi HS. GDF15 deficiency exacerbates chronic alcohol- and carbon tetrachloride-induced liver injury. Sci Rep. 2017 Dec 8;7(1):17238. doi: 10.1038/s41598-017-17574-w.
【文献】Kim KH, Kim SH, Han DH, Jo YS, Lee YH, Lee MS. Growth differentiation factor 15 ameliorates nonalcoholic steatohepatitis and related metabolic disorders in mice. Sci Rep. 2018 May 1;8(1):6789. doi: 10.1038/s41598-018-25098-0.
【文献】Breit SN, Johnen H, Cook AD, Tsai VW, Mohammad MG, Kuffner T, Zhang HP, Marquis CP, Jiang L, Lockwood G, Lee-Ng M, Husaini Y, Wu L, Hamilton JA, Brown DA. The TGF-β superfamily cytokine, MIC-1/GDF15: a pleotrophic cytokine with roles in inflammation, cancer and metabolism. Growth Factors. 2011 Oct;29(5):187-95. doi: 10.3109/08977194.2011.607137. Epub 2011 Aug 11.
【文献】Ratnam NM, Peterson JM, Talbert EE, Ladner KJ, Rajasekera PV, Schmidt CR, Dillhoff ME, Swanson BJ, Haverick E, Kladney RD, Williams TM, Leone GW, Wang DJ, Guttridge DC. NF-κB regulates GDF-15 to suppress macrophage surveillance during early tumor development. J Clin Invest. 2017 Oct 2;127(10):3796-3809. doi: 10.1172/JCI91561. Epub 2017 Sep 11.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような知見はあるものの、組織の線維化の効果的な予防または治療剤はまだ開発されておらず、またGDF15は病態に対して抗炎症作用による傷害保護作用を有することは知られているが、疾患部又はその付近でGDF15発現を増加させ、効果的に抗炎症作用や増殖抑制する方法が無いのが現状であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、このGDF15発現増加に寄与するO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
細胞の傷害時に放出されたO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質が他の細胞表面のビメンチンに結合することから、本発明者らは、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質と同様に機能するポリマー、及びこのポリマーを用いることで傷害組織又は細胞に効率的にそのポリマーを結合させ、GDF15発現増加による抗炎症作用や増殖抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明はO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬に関する、以下の[1]~[5]である。
[1] N-アセチルグルコサミン単位と、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位、スチレン単位、ポリエチレンイミン単位、ポリL-リジン単位及びビオチン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位とを有するO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質。
[2] 前記カルボキシ基含有ラジカル重合性単位が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸2-カルボキシエチル及びメタクリル酸2-カルボキシエチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質。
[3] 前記O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質が、アルキル鎖を有しないことを特徴とする[1]又は[2]に記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質。
[4] 次の化学式(1)又は(2)で表される化合物であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質。
【0009】
【化1】
式(1)中、nは3~100の整数である。
【0010】
【化2】
式(2)中、nは3~100の整数である。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を有効成分として含有する線維症治療薬。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、これのヒト線維芽細胞(以下、NHDFともいう)に対する影響をDNAマイクロアレイで検討した結果をグラフで示したものである。
図2図1に示したマイクロアレイの結果をタンパク質ごとに示したものである。
図3A】上図は、NHDFにO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)、AC-GlcNAc(40量体)、AC-GlcNAc(モノマー)、GlcNAcを添加し、24時間培養後、GDF15のタンパク質レベルでの発現増加とβ-アクチンの発現を示すウエスタンブロットである。なお、コントロールはO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加しないものである。 また、下図は、GDF15とβ-アクチンとの比(GDF15/β-アクチン)をグラフで示したものである。
図3B】上図は、NHDFにO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)、AC-GlcNAc(62量体)、AC-GlcNAc(69量体)を添加し、24時間培養後、GDF15のタンパク質レベルでの発現増加とβ-アクチンの発現を示すウエスタンブロットである。なお、コントロールはO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加しないものである。 また、下図は、GDF15とβ-アクチンとの比(GDF15/β-アクチン)をグラフで示したものである。
図3C】上図は、NHDFにO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を10μg/mL、50μg/mL及び100μg/mL添加し、24時間培養後、GDF15のタンパク質レベルでの発現増加とβ-アクチンの発現を示すウエスタンブロットである。 また、下図は、GDF15とβ-アクチンとの比(GDF15/β-アクチン)をグラフで示したものである。
図4図1に示したマイクロアレイの結果から、変動遺伝子のパスウェイを解析した結果を示す。
図5】NHDFに50mLのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質〔AC-GlcNAc(10量体)及びAC-GlcNAc(40量体)〕とその他との成分として、AC-GlcNAcモノマー及びN-アセチルグルコサミンを添加し、6日間培養した際のNHDFの増殖率を示す。コントロールはO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加しないものである。
図6A】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、NHDFに50μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を添加し、24時間後に5μg/mLのリポポリサッカライド(以下、LPSともいう)を添加し、8時間後の細胞内のTNFαの産生をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す。
図6B】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、NHDFに50μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を添加し、24時間後の細胞内のGDF15、survivin及びβ-アクチンの産生をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す。
図6C】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、NHDFに50μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を添加し、24時間後に5μg/mLのLPSを添加し、8時間後の細胞内のTNFαとβ-アクチンとの比(TNFα/β-アクチン)の値をグラフで示したものである。
図7】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、NHDFに50μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を添加し、24時間後に5μg/mLのLPSを添加し、24時間後の培地中のTNFαの分泌量をELISAで検出した結果を示す。
図8】シャーレの中にガラス板を入れ、その上にAC-GlcNAc(10量体)を混合したアガロースゲルを滴下し、さらにNHDFをガラス板全体に播種した後、1日間インキュベートしたときのNHDFの状態を位相差顕微鏡で観察し、アガロースゲル底面に細胞への侵入状態を観察した結果を示す。コントロールは、AC-GlcNAc(10量体)の代わりにPBSを用いた結果を示す。
図9】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質のアガロースゲルへの配合量を50μg/mL、100μg/mL又は250μg/mLとしたときのNHDFの状態を位相差顕微鏡で観察し、アガロースゲル底面に細胞への侵入状態を観察した結果を示す。
図10】重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質、重合例5で調製したAC-GlcNAcモノマー、実施例2で用いたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)又はPBSを用いたときのNHDFの状態を位相差顕微鏡で観察し、アガロースゲル底面に細胞への侵入状態を観察した結果を示す。
図11】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質として、重合例1で調製したものと重合例2で調製したものとを用いたときのNHDFの状態を位相差顕微鏡で観察し、アガロースゲル底面に細胞への侵入状態を観察した結果を示す。
図12】アガロースゲルに重合例1のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含有したゲルを滴下したシャーレを用い、培地中に重合例1のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を10μg/mL含有させてNHDFの走化性を評価した結果を示す。
図13】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の50μg/mLをNHDFに添加した10分後、30分後、60分後、120分後のビメンチンのリン酸化を抗リン酸化ビメンチンセリン38抗体でウエスタンブロッティングにて検出した結果を示す。
図14A】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、変形性関節症由来滑膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞に50μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を添加し24時間培養を行い、細胞内のGDF15及びβ-アクチンの産生をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す。
図14B】O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、変形性関節症由来滑膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞に10ng/mLのTNFαを添加して、6時間後の、Receptor activator of NF-кB ligand(以下、RANKLという)、survivin及びβ-アクチンの発現をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質とは、タンパク質のセリン及びスレオニン残基の水酸基にO結合型N-アセチルグルコサミンが結合する翻訳後の修飾の一つで、細胞内のタンパク質がO結合型N-アセチルグルコサミン化されたタンパク質で、例えば下記一般式で表されるものである。このO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質は傷害細胞から漏出してアラーミン分子の様に働くことが予想される。すなわち、核内タンパク質や細胞骨格など4000種類以上のタンパク質がO結合型N-アセチルグルコサミン化され、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質は細胞内に恒常的に多量に存在する。細胞に傷害、例えば線維化等が発生すると、このO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質が細胞外に大量に放出され、他の細胞の細胞表面のビメンチンに結合・作用し、細胞内の変動遺伝子に影響を与えGDF15を発現させる。
【0014】
【化3】
【0015】
本発明のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は前述のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質と同様の働きをする化合物で特定のN-アセチルグルコサミン基含有ポリマーからなる。線維症治療薬はこのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含有するものであり、この治療薬を疾患組織・細胞等の患部に結合・作用させることで線維症を改善することができる。
【0016】
以下、本発明のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質及びこれを含有する線維症治療薬について詳述する。
【0017】
[O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質]
本発明において、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は、N-アセチルグルコサミン単位と、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位、スチレン単位、ポリエチレンイミン単位、ポリL-リジン単位及びビオチン単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位とを有するポリマーである。これらN-アセチルグルコサミン基含有ポリマーの質量平均分子量は3,000~30,000、数平均分子量は2,500~25,000の範囲のものが好ましく、N-アセチルグルコサミン基含有ポリマーの質量平均分子量が3,000以上、30,000以下、又は数平均分子量が2,500以上、25,000以下であると細胞への作用が向上するためより好ましい。
O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質として用いられるN-アセチルグルコサミン基含有ポリマーとしては重合による化合物の収率性面から質量平均分子量は4,000~20,000の範囲が好ましく、数平均分子量は3,000~10,000の範囲が好ましく、GDF15の発現性の面から質量平均分子量は4,000~15,000の範囲が好ましく、数平均分子量は3,000~8,000の範囲が好ましい。
また、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)は1.0~2.5の範囲が好ましく、GDF15の発現性やRANKL及びSurvivin発現の抑制の面から1.2~2.2の範囲とすることがより好ましい。
【0018】
N-アセチルグルコサミン単位としては、N-アセチルグルコサミン、キトビオース、キトトリオース、キトテトラオース、キトペンタオース、またはキトヘキサオース等が挙げられる。また、N-アセチルグルコサミン糖鎖基含有有機樹脂化合物としては、例えばN-アセチルグルコサミン糖鎖基としてN-アセチルグルコサミン基や、それが2~6個結合したキトポリオース基を含有する化合物などが挙げられる。
また、カルボキシ基含有ラジカル重合性単位としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、アクリル酸2-カルボキシエチル、メタクリル酸2-カルボキシエチル等が挙げられる。
N-アセチルグルコサミン基含有ポリマーの製造方法は特に限定はなく、ラジカル重合やリビングラジカル重合、連鎖移動剤(RAFT剤)を用いた可逆的付加-開裂連鎖移動型重合法(RAFT重合法)等を用いることができる。例えば、前記N-アセチルグルコサミン基を有するモノマーを重合して得られるポリマーの製造方法としては、N-アセチルグルコサミンの還元末端に、アクリル酸2-カルボキシエチル等の疎水性基を有する化合物が結合したモノマーを重合する方法等が挙げられる。より詳しい製造方法としては、疎水性基を有する化合物であるアクリル酸2-カルボキシエチルとアミノ化したN-アセチルグルコサミンとをDMT-MMにより縮合反応することによって、N-アセチルグルコサミン基を導入したアクリル系モノマーを得た後、該モノマーを重合させて製造する方法等が挙げられる。また、前記高分子化合物にN-アセチルグルコサミンを結合させたポリマーの製造方法としては、N-アセチルグルコサミン糖鎖の還元末端でカチオン性ポリマーであるポリエチレンイミンやポリL-リジン等の疎水性基を有するポリマー化合物とを結合する方法等が挙げられる。
ここで、N-アセチルグルコサミン糖鎖を化合物に結合させる方法は、特に限定されないが、例えば、アミノ基を有する化合物のアミノ基と、N-アセチルグルコサミン糖鎖の還元末端とを、還元アミノ化法で結合することができる。また、N-アセチルグルコサミン糖鎖のヒドロキシ基をカルボキシル基で置換し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)カップリング法等によって、アミノ基を有する化合物のアミノ基と結合させてもよい。
また、分子量を制御するためにRAFT重合法を用いると分子量分布を狭くすることができるので好ましい。分子量の制御においては重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)を1.0以上、1.5未満とするようにすることで細胞培養材料表面にN-アセチルグルコサミンを多く存在させることができ、細胞集団中の間葉系幹細胞をより多く捉えることができるようになるため、好ましい。
重合方法の具体例としてはN-アセチルグルコサミン、疎水性基を有する化合物としてアクリル酸2-カルボキシエチルとをモル比で1:1の割合で混合し、DMT-MM、DMSO又は水などの溶液中で縮合反応させAC-GlcNAcモノマーを調製する。RAFT重合法によりpoly(N-ethylacrylic acid-O-2-acetamide-2-deoxy-β-D-glucopyranosylamine)(以下、AC-GlcNAcポリマーという)を得ることができる。また、本発明のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は細胞との作用性を向上させるためRAFT重合法由来のアルキル鎖を除去することが好ましい。アルキル鎖を除去する方法としてはRAFT重合法で得たポリマーの末端を還元剤等を用いてチオール化した後、マレイミドを反応させる方法などが挙げられる。
【0019】
また、本発明のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は、前記N-アセチルグルコサミン基を1分子当たり3~100個含むことが好ましい。この数より少ないとビメンチンとの結合性が低下する傾向にあり、この数を超えると単位面積当たりのN-アセチルグルコサミン量が少なくなるため、ビメンチンとの結合性が低下する傾向となる。したがってより好ましい個数は8~80個の範囲であり、さらに好ましい個数は10~70個の範囲であり、特に好ましい個数は10~69個の範囲であり、最も好ましい個数は10~50個の範囲である。
【0020】
<線維症治療薬>
本発明の線維症治療薬は前述のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含有するものであり、ヒトまたはその他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなど)に経口的にあるいは非経口的(静脈投与、皮下投与、経皮投与、経肺投与、経粘膜投与、直腸投与など)に投与することができる。本発明の線維症治療薬は、前記のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を経口または非経口投与に通常用いられる薬学的に許容される担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、湿潤剤など)や添加剤などと混合し、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、バッカル剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、点眼剤、注射剤、点滴剤、点鼻剤、貼付剤、坐剤などの所望の形態に製剤化することにより調製することができる。線維症治療薬中のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の含有量はGDF15の発現増加による抗炎症採用や細胞増殖抑制が得られれば特に限定はないが、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは10%以上である。
【0021】
<線維症>
本発明でいう線維症とは、薬物等の化学的刺激、過度の圧負荷、炎症反応等のストレスにより組織実質細胞の脱落や組織の機能低下が起こり、それを補う過程で生じた過剰な線維芽細胞の遊走増殖、並びにその後の細胞間マトリックス蛋白質の合成沈着による組織の機能障害を伴った硬直化を意味し、誘発刺激の別や発症部位は特に限定されない。このような組織線維化疾患としては、例えば肺、膀胱、腎臓、心臓、肝臓等の内臓組織の線維症が挙げられる。本発明が対象とする線維症には、抗腫瘍剤、抗生物質、抗菌剤、抗不整脈剤、消炎剤、抗リウマチ剤、インターフェロンまたは小柴胡湯などの薬剤の投与により引き起こされる組織線維化疾患、並びに慢性腎炎、間質性心筋炎および間質性膀胱炎などの疾患に伴う組織線維化疾患も含まれる。具体的には、ブレオマイシン投与の副作用で生じる肺の線維症や、間質性肺炎の際またはその後に生じる肺線維症;間質性膀胱炎の際に生じる膀胱の線維症や膀胱頚部硬化症;遺伝子異常等によって生じる腎線維症、および腎不全(腎硬化症);心筋梗塞後のリモデリングによって生じる心内膜線維症;肝細胞の損傷によって生じる肝線維症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、それに伴う門脈圧亢進症及び肝硬変;過剰な組織修復によって生じるケロイド、その他、硬化性腹膜炎、前立腺肥大症、強皮症、子宮平滑筋腫、後腹膜線維症、及び骨髄線維症等を例示することができる。
本発明の線維症治療薬のなかでも、線維化抑制薬は、星細胞が活性化して筋線維芽様細胞に形質転換する線維化シグナルを阻害することで、線維化を改善するものである。したがって星細胞が活性化して筋線維芽様細胞となる線維症、例えば肝臓の場合、活性化した星細胞が筋線維芽様細胞に形質転換し、細胞外基質を産生することによって線維化が進行するが、本発明の線維症治療薬を用いることで肝線維化を改善させ、肝機能の改善と肝癌発生を抑制することが可能となる。同様に膵線維化などに対して用いることも可能である。
【0022】
<線維症の治療方法>
本発明の線維症の治療方法は、本発明の上記治療薬を線維化組織・細胞に結合させることを特徴とするものである。結合の方法は特に限定されないが、線維化組織・細胞に直接治療薬を添加したり、製剤化した線維症治療薬を経口的にあるいは非経口的に投与し、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質が患部及びその付近に到達させるなどの方法等が挙げられる。
【実施例
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されることはない。なお、以下において「%」とあるのは、特に断りのない限り、すべて質量基準である。
【0024】
[O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の重合]
〔重合例1〕
<GlcNAc-NHの作製>
5gのGlcNAcを50mLの水に溶解し、NHHCOを飽和させるまで加えた。ナスフラスコで攪拌し、30~37℃で4~5日間、蓋を開けた開放系でインキュベーションしNHHCOの沈澱がなくなったら適宜加えた。GlcNAc-NHの合成を薄膜クロマトグラフィー(TLC)を用いてethyl acetate / acetic acid / methanol / water = 4:3:3:1 (v/v/v/v)、GlcNAc Rf値:0.71にて確認した。4~5日後、水を反応液に加えエバポレーター(30℃)を行うことで、余分なNHHCOを取り除いた。なお、この操作は匂いがしなくなるまで、何度も繰り返し行った。エバポレーター後、凍結乾燥を行った。
<AC-GlcNAcモノマーの作製>
GlcNAc-NH(4.5mmol:約1g)をDMSO(10mL)に溶解して、2-carboxyethyl acrylate(4.5mmol:約0.65g)を加えた。溶解後に、DMT-MM(6.8mmol) を加えて18時間、室温でインキュベーションを行った。インキュベーション後、反応物を200~300mLのクロロホルムに滴下した。沈澱が得られるので、桐山ロートで回収した。回収した沈澱をメタノールで溶解させ、不溶物を桐山ロートで取り除き、メタノールで溶解したものを回収した。エバポレーターを行い、メタノールを除去した。メタノールを除去した固形物を水で溶解し、その後、分取型HPLC(水/アセトニトリル)で精製を行い、さらにエバポレーターでアセトニトリルを除去後、凍結乾燥を行い下記化学式のAC-GlcNAcモノマーを得た。
【0025】
【化4】
<AC-GlcNAcポリマーの重合>
(1)AC-GlcNAcモノマー 50mgを1mLのマイクロチューブに量り取り、250μLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。(2)RAFT剤(2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸(DTMPA:シグマ社製)を約5.26mg(モノマーの1/10モル当量)を1mLのマイクロチューブに量り取り、200μLに溶解した。さらに(3)アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の1mg(モノマーに対して2%)をマイクロチューブに量り取り、AIBNの1mgがDMSO50μLに溶解するようにDMSOを加えた。(1)の溶液250μLに(2)の溶液200μLを混合した後、(3)の溶液50μLを混合し、脱気後(凍結融解脱気を三回程度繰り返す)、65℃で約18時間インキュベーションを行ない重合した。重合後、イソプロパノールで重合物を沈澱させ、遠心分離後回収して水に溶解し、透析(MW100-500)を約1日行い、未反応のモノマーを除いた。透析後、凍結乾燥を行い、AC-GlcNAcポリマー(10量体、以下、AC-GlcNAc10という)を作製した。
このAC-GlcNAc10の10mgを1mLマイクロチューブに量り取り、水100μLに溶解した。還元剤として水素化ほう素ナトリウム1mgを1mLマイクロチューブに量り取り、水100μLに還元剤1mgが溶解するように水を加えた。これら各溶液100μLを混合し、末端をチオール化後、イソプロパノール(IPA)に滴下し沈殿(反応物)を回収した。
ついで、水に1~3M酢酸ナトリウムを加えpH7~8になるように調整した溶媒100μLを準備し、これに反応物を溶解した。AC-GlcNAc10と等量のモル数のマレイミドを、pHを調整した溶媒100μLに溶解し、前記反応物を溶解した溶液とこの溶液とを混合し、1~2時間放置した。この溶液をIPAに滴下し沈殿を回収後、反応物を水に溶解し、凍結乾燥を行いO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を得た。
こののもの質量平均分子量は4000、数平均分子量は3100であり、この各平均分子量はGel Permeation Chromatography(GPC)装置(製品名:LC-9110G NEXT、日本分析工業(株)社製)を用いて、次の条件で測定した。カラムは、JAIGEL-GS510を用いて、溶離液は、200mM 硝酸ナトリウム/アセトニトリル=80/20で行った。流量は1mL/min、検出器はRI検出器、カラム温度は40℃で行った。分子量の標準曲線はプルランで実施した。
【0026】
[重合例2]
重合例1の<AC-GlcNAcポリマーの重合>において、RAFT剤の配合割合を約1mg(モノマーの1/50モル当量)とした以外は全て重合例1と同様にしてO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc40という)を作製した。
このものの質量平均分子量は14,000、数平均分子量は6800であった。
【0027】
[重合例3]
重合例1の<AC-GlcNAcポリマーの重合>において、RAFT剤の配合割合を約0.75mg(モノマーの1/70モル当量)とした以外はすべて重合例1と同様にしてO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc62という)を作製した。
このものの質量平均分子量は21,800、数平均分子量は12,500であった。
【0028】
[重合例4]
重合例1の<AC-GlcNAcポリマーの重合>において、RAFT剤の配合割合を約0.52mg(モノマーの1/100モル当量)とした以外はすべて重合例1と同様にしてO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc69という)を作製した。
このものの質量平均分子量は24,450、数平均分子量は12,800であった。
【0029】
〔重合例5〕
重合例1の<AC-GlcNAcモノマーの作製>までの重合を行いAC-GlcNAcモノマーを作製した。このものの質量平均分子量及び数平均分子量のいずれも346であった。
【0030】
[実施例1]
重合例1で得たO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)のヒト線維芽細胞(NHDF)に対する影響をDNAマイクロアレイを用いて確認した。
NHDFに50μg/mLの重合例1で得たO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加し、24時間インキュベーションを行った。インキュベーション後、mRNAを回収しDNAマイクロアレイを実施し、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の遺伝子発現変化を確認した。DNAマイクロアレイは、Agilent Technologies社のマイクロアレイシステムを使用し実施した。その結果を図1及び図2に示す。
図1は、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を刺激したNHDFの遺伝子発現レベル(縦軸)と無刺激のNHDFの遺伝子発現レベル(横軸)をプロットしたものである。左図は、解析した遺伝子全てを示した。右図は、有意に発現レベルの差のあった遺伝子群をプロットした(両者の発現レベルの差が1.5倍以上あるもの及び0.66倍以下のもの)。
図2に示したように、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の刺激により、GDF15及びアディポネクチン(ADIPOQ)の発現が高かった。これらの結果からO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質はNHDFに作用させることによりGDF15及びアディポネクチンのタンパク質レベルでの発現を上昇させることが分かる。
【0031】
[実施例2]
NHDFに50μg/mLの重合例1~5で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質、AC-GlcNAcモノマー又はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を添加し、24時間インキュベーションを行った。インキュベーション後、NHDFのGDF15の発現をウエスタンブロッティングにより調べた。その結果を図3A及び図3Bに示す。なお、コントロールは何も添加しないものである。
この結果から重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10、質量平均分子量4000、数平均分子量3100)、重合例2で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc40、質量平均分子量14,000、数平均分子量6800)、重合例3で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc62、質量平均分子量21,800、数平均分子量12,500)及び重合例4で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc69、質量平均分子量24,450、数平均分子量12,800)はGDF15の発現が増加しているが、重合例5で調製したAC-GlcNAcモノマーやGlcNAcはコントロールとほぼ同等の効果であることが分かる。
さらに、NHDFに10μg/mL、50μg/mL及び100μg/mLの重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10、質量平均分子量4000、数平均分子量3100)を添加し、24時間インキュベーションを行った。インキュベーション後、NHDFのGDF15の発現をウエスタンブロティングにより観察した。その結果を図3Cに示す。なお、コントロールは何も添加しないものである。
この結果から重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10、質量平均分子量4000、数平均分子量3100)は添加量に比例しGDF15の発現が増加していることが分かる。
【0032】
[実施例3]
実施例1のマイクロアレイの結果から重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)による変動遺伝子のパスウェイ解析を行った。その結果を図4に示す。発現変動の大きかった全遺伝子群(図1の右図に示したもの)をパスウェイ解析ソフトであるDAVID Bioinformatics Resources 6.8に入力し、パスウェイ解析を実施した。
この結果から、細胞増殖の停止が重合例1のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質によって引き起こされていることが分かる。特に細胞周期のG2、M期を進行する遺伝子の低下が観察された。
これはO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は細胞表面のビメンチンに相互作用することから、ビメンチンの細胞分裂に関する機能の抑制から細胞周期の停止が引き起こされたが、何も添加しないコントロールではそのようなことが発生していないため、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を作用されたNHDFに比べ増殖率が高くなっていると考えられる。
【0033】
[実施例4]
NHDFを48ウェルプレートに播種し、50μg/mLの重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)、重合例2で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc40)、重合例5で調製したAC-GlcNAcモノマー及びN-アセチルグルコサミンを添加した。その後6日間培養し、各々の日毎の細胞生存率をCell Counting Kit-8 (CCK-8)(同仁化学社製)で測定した。その結果を図5に示す。
この結果から、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10及びAC-GlcNAc40)で処理したNHDFの増殖性が低下していることが分かる。
【0034】
[実施例5]
O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質による抗炎症作用を以下のようにして検討した。
50μg/mLの重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)をNHDFに添加し、24時間培養を行った。このNHDFにlipopolysaccharide(LPS)を添加して、TNFαの発現変化を観察した。また、LPS添加後8時間後の細胞内のTNFαの発現をウエスタンブロッティングで検討した。その結果を図6Aに示す。また、LPS添加後8時間後の細胞内のGDF15、survivin及びβ-アクチンの発現をウエスタンブロッティングで検討した。その結果を図6Bに示す。さらに、LPS添加後8時間後の細胞内のTNFαとβ-アクチンとの比(TNFα/β-アクチン)を検討した。その結果を図6Cに示す。
図6A及び図6Cに示したように、重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質で処理したNHDFにLPSを作用させたところ、LPS刺激によるTNFαの発現上昇の抑制が観察された。また、図6Bに示したように、重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質で処理したNHDFはGDF15の発現が上昇し、survivinの発現の抑制が観察された。GDF15は、TGFβスーパーファミリーの一種でありNF-κBの転写活性を阻害することが知られている。従って、NHDFのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質処理によるGDF15の発現上昇によってNF-κBの活性化が抑制され、TNFαの発現が減少したと推察される。
次に、NHDFにLPS添加後24時間後の培地中へのTNF-αの分泌量をELISAで測定した。NHDFは、DMEM(無血清)に培地交換して、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を50μg/mLで添加した。AC-GlcNAc10を添加24時間後にLPSを5μg/mL添加し、さらに24時間後に培養上清を回収し、培養上清中に含まれるTNF-αをELISAで測定した。このとき、NHDFのDMEM培養上清(コントロール)、NHDFに50μg/mLのAC-GlcMAc10を添加し48時間後の培養上清(AC-GlcNAc10)及びNHDFに5μg/mLのLPSを添加し24時間後の培養上清中に含まれるTNFαも合わせて測定した。その結果を図7に示す。図7に示したように、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加していないもの(コントロール)とO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加したものはTNFαの分泌量に変化がなかったが、コントロールにLPSを添加したものはTNFαの分泌量の増加が観察され、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を添加したものにLPSを添加したものはLPSによるTNFαの分泌量増加の抑制が観察された。
【0035】
[実施例6]
NHDFへのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質添加による刺激が細胞遊走能に影響があるかを以下のようにして検討した。
O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としてAC-GlcNAc(10量体)を用い、アガロースゲルに250μg/mLのAC-GlcNAc(10量体)を混合し、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質含有アガロースゲルを調製した。また、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質に変えてPBSを用いてPBS含有アガロースゲルを調製した。シャーレの中にガラス板を入れ、その上に各々のアガロースゲルを滴下し、さらにNHDFをガラス板全体に播種後、1日間インキュベートした。
図8に、このときのNHDFの状態を位相差顕微鏡で観察しアガロースゲル底面に細胞への侵入状態を観察した結果を示す。図8の結果から重合例1のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を含有したアガロースゲルの下にNHDFが入り込んでいることからO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質はNHDFに走化性を与えていることが分かる。
次に、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質のアガロースゲルへの配合量を50μg/mL、100μg/mL、250μg/mLとしたものを用意し、上記と同様にNHDFの走化性評価をした。その結果を図9に示す。図9の結果から、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の濃度によりNHDFの走化性が変化した。具体的には、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の濃度が250μg/mLでは細胞がゲル内に入り込んだ距離は750μm、ゲル内に入り込んだ細胞数は60個程度であった。O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の濃度が100μg/mLでは前述の距離は450μm、前述の細胞数は12個程度となった。O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の濃度が50μg/mLでは前述の距離は280μm、前述の細胞数は10個程度であり、PBSを含有するアガロースゲルでは前述の距離及び細胞数ともに0であった。このことからNHDFの走化性はO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の濃度に依存していることが分かる。
次に、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質によるNHDFの走化性について評価した。使用した材料は重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質、重合例5で調製したAC-GlcNAcモノマー、実施例2で用いたN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びPBSであり、上記と同様にNHDFの走化性を評価した。その結果を図10に示す。図10に示したように、ポリマーである重合例1のO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質でのみアガロースゲルの下に細胞が侵入し、NHDFが入り込んだ距離は420μm、NHDFが入り込んだ数は29個であった。このことからO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質はポリマーであることでNHDFを作用することが分かる。
次に、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の重合度の違いによるNHDFの走化性の違いがあるか否かを上記と同様の方法で評価した。評価ではO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質としては重合例1(AC-GlcNAc10)と重合例2(AC-GlcNAc40)のものを用いた。その結果を図11に示す。図11の結果からいずれのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質もアガロースゲルの下に細胞が侵入しているが、NHDFが入り込んだ距離は重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質では780μm、重合例2で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質では600μmであり、NHDFがゲル内に入り込んだ数は重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は60個、重合例2で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は50個であった。
また、アガロースゲルに重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を含有したゲルを滴下したシャーレを2つ用意し、その一つに培地中に重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を10μg/mL含有させて、NHDFの走化性を評価した。その結果を図12に示す。図12の結果から培地中にO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含有した場合、アガロースゲルの下に侵入するNHDFが減少していることが分かる。具体的にはNHDFが入り込んだ距離はO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含む培地を用いたものは1000μmであるが、培地にO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含まないものでは1250μmであった。NHDFが入り込んだ数はO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含む培地を用いたものでは80個、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を含まないものでは140個であった。なお、PBSを含有するアガロースゲルではNHDFはゲル内に侵入していない。
さらに重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)によるNHDFの遊走性の刺激について、ビメンチンのリン酸化を検出することで検討した。O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は、細胞表面上に出現したビメンチンに結合することから、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質添加によるビメンチンへのシグナル伝達をビメンチンのアミノ酸配列の38番目のセリンのリン酸化によって検討した。ビメンチンの38番目のセリンがリン酸化されることで細胞遊走性が刺激されることが明らかになっている。そこで、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質をNHDFに添加した10分後、30分後、60分後、120分後のビメンチンのリン酸化を抗リン酸化ビメンチンセリン38抗体でウエスタンブロッティングにて検出した。その結果を図13に示す。図13に示したように、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質添加後の10分後には、ビメンチンのリン酸化が観察され、120分後には低下が観察された。このことから、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質がNHDFの細胞表面のビメンチンに結合してGDF15の発現や細胞遊走性を刺激していることが明らかになった。
以上の結果からO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質で処理されたNHDFに高い細胞遊走能があることが確認された。また、図13に示したように、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)の細胞表面ビメンチンの刺激に伴うビメンチンのリン酸化も観察されたことから、ビメンチンの脱重合及びそれに伴うシグナル伝達によって細胞遊走能の刺激がなされたと考えられる。
【0036】
[実施例7]
重合例1で調製した50μg/mLのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を変形性関節症由来滑膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞に添加し、24時間培養を行った。この時の細胞内のGDF15の発現をウエスタンブロッティングで検討した。その結果を図14Aに示す。また、この変形性関節症由来滑膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞に10ng/mLのTNFαを添加して、TNFα添加後6時間後の、RANKL、survivin及びβ-アクチンの発現をウエスタンブロッティングで検討した。その結果を図14Bに示す
図14Aに示したように、重合例1で調製したO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質を処理した変形性関節症由来滑膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞はいずれもるGDF15の発現上昇が観察され、図14Bに示したようにTNFα刺激によるRANKL及びsurvivinの発現上昇の抑制が観察された。
慢性炎症性疾患の一つである関節リウマチの疾患部位においては滑膜線維芽細胞が増勢してRANKLを発現し破骨細胞を活性化して、疾患の増悪が進行する。また、RANKLが慢性炎症時のTNFαやインターロイキンー17(以下、IL-17という)の刺激を受けた滑膜線維芽細胞から分泌され、破骨細胞前駆細胞を破骨細胞へと分化させ、その破骨細胞によって骨破壊が起こり、関節リウマチでの骨変形の原因となる。図14A及び図14Bに示した通り、関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞にO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を作用させ、TNFαを作用させたところ、GDF15の発現上昇とRANKL及びsurvivinの発現上昇の抑制とが観察された。このことからO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を作用させた骨膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞はRANKLの発現上昇を抑制した結果、破骨細胞への分化も抑制することができ、関節リウマチ発症を抑制することができると推察される。
さらに、survivinは、細胞死を抑制する分子で滑膜線維芽細胞の活性化に関与することが知られており、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)により、これらの細胞でのRANKLやsurvivinの発現上昇の抑制が観察されたことから、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は、関節リウマチ症の治療効果やがん治療薬を含む各種薬剤への薬物耐性の抑制にも効果があると推察される。
これら実施例1~6の結果から、筋線維芽細胞(NHDF)における細胞表面ビメンチンのO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質の刺激により、GDF15産生と抗炎症作用や増殖抑制、細胞遊走能が上昇することが分かった。このことによりO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は線維症に対する治療効果があることが推察される。
さらに実施例7の結果から、O結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質(AC-GlcNAc10)を作用させた骨膜線維芽細胞及び関節リウマチ症由来滑膜線維芽細胞はTNFαを作用されてもRANKLとsurvivinの発現上昇を抑制することが分かった。このことによりO結合型N-アセチルグルコサミン化タンパク質様物質は、関節リウマチ症に対する治療効果や薬物耐性への抑制効果があることが推察される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B