(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】金属端子および複合部材、ならびに複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20250221BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20250221BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20250221BHJP
H01R 13/405 20060101ALI20250221BHJP
H01R 43/24 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
H01R13/52 Z
B29C45/14
B29C45/27
H01R13/405
H01R43/24
(21)【出願番号】P 2024086171
(22)【出願日】2024-05-28
【審査請求日】2024-07-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594062879
【氏名又は名称】株式会社シンセイ
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋爾
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-220124(JP,A)
【文献】特開平10-208807(JP,A)
【文献】特開平09-273904(JP,A)
【文献】特開2017-152111(JP,A)
【文献】特開2013-155788(JP,A)
【文献】特開2019-220264(JP,A)
【文献】実開平06-029021(JP,U)
【文献】特開2007-280698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体にインサートされる金属端子であって、
前記樹脂成形体の外部に露出する露出部、および、前記樹脂成形体に覆われる板状のインサート部を備え、
前記インサート部には、前記インサート部における端子幅方向の側端部を切り欠いた切欠き部が設けられ、且つ
、前記切欠き部の内周縁から前記端子幅方向に延びる半貫加工部が設けられており、
前記切欠き部は、前記側端部に開口する開口部の幅よりも奥の部分の幅が広いアンダーカット形状であることを特徴とする金属端子。
【請求項2】
前記切欠き部は、前記インサート部における前記端子幅方向の一方側の側端部、および、前記端子幅方向の他方側の側端部に設けられ、
前記半貫加工部は、前記一方側の側端部に設けられた前記切欠き
部から、前記他方側の側端部に設けられた前記切欠き
部まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の金属端子。
【請求項3】
前記側端部には、2箇所の前記切欠き部、および、前記2箇所の前記切欠き部の間において前記端子幅方向に延びる壁部が設けられ、
前記2箇所の前記切欠き部のそれぞれは、前記側端部に開口する開口部から前記端子幅方向に延びる第1溝と、前記第1溝から前記端子幅方向と直交する端子長手方向に延びる第2溝と、を備え、
前記2箇所の前記切欠き部の一方における前記第2溝と、前記2箇所の前記切欠き部の他方における前記第2溝は、いずれも、前記第1溝から前記壁部とは逆向きに延びていることを特徴とする請求項
2に記載の金属端子。
【請求項4】
前記切欠き部の内周面と前記側端部とが繋がる角部は、R形状であることを特徴とする請求項
3に記載の金属端子。
【請求項5】
前記切欠き部の内周面における凹形状の角部は、R形状であることを特徴とする請求項
3に記載の金属端子。
【請求項6】
樹脂成形体にインサートされる金属端子であって、
前記樹脂成形体の外部に露出する露出部、および、前記樹脂成形体に覆われる板状のインサート部を備え、
前記インサート部には、前記インサート部における端子幅方向の側端
部から突出する突出部が設けられ、且つ、前記突出部の先
端から前記端子幅方向に延びる半貫加工部が設けられて
おり、
前記突出部は、前記インサート部と板厚が等しく、且つ、前記側端部に繋がる基部よりも幅が広い幅広部を備えることを特徴とする金属端子。
【請求項7】
前記突出
部は、前記インサート部における前記端子幅方向の一方側の側端部、および、前記端子幅方向の他方側の側端部に設けられ、
前記半貫加工部は、前記一方側の側端部に設けられ
た前記突出部から、前記他方側の側端部に設けられ
た前記突出部まで延びていることを特徴とする請求項
6に記載の金属端子。
【請求項8】
前記突出部の先端には、前記インサート部の板厚よりも薄い薄肉部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の金属端子。
【請求項9】
樹脂成形体にインサートされる金属端子であって、
前記樹脂成形体の外部に露出する露出部、および、前記樹脂成形体に覆われる板状のインサート部を備え、
前記インサート部には、前記インサート部における端子幅方向の側端部を切り欠いた切欠き部、もしくは、前記側端部から突出する突出部が設けられ、且つ、前記突出部の先端または前記切欠き部の内周縁から前記端子幅方向に延びる半貫加工部が設けられて
おり、
前記インサート部は、板厚方向の表面に剥離防止部が形成され、
前記剥離防止部は、格子状の溝および前記溝に囲まれる凸部を備え、
前記溝は、前記端子幅方向に対して傾斜し、且つ、前記端子幅方向と直交する端子長手方向に対して傾斜し、
前記凸部は、先端を潰した潰し部を備えることを特徴とする金属端子。
【請求項10】
前記溝は、前記端子長手方向に対する傾斜角度が、前記端子幅方向に対する傾斜角度よりも小さく、
前記凸部の平面形状は、前記端子長手方向の対角寸法が前記端子幅方向の対角寸法よりも大きい菱形であることを特徴とする請求項9に記載の金属端子。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の金属端子と、前記金属端子がインサートされる樹脂成形体と、を有することを特徴とする複合部材。
【請求項12】
前記樹脂成形体は、メタキシレンジアミンをベースとしたナイロン樹脂であり、繊維状のフィラーが添加されていることをと特徴とする請求項11に記載の複合部材。
【請求項13】
請求項
6から8の何れか一項に記載の金属端子と、前記金属端子が複数本インサートされる樹脂成形体と、を有し、
前記複数本の前記金属端子は、前記端子幅方向に並んでおり、
隣り合う前記金属端子は、前記突出部の位置が前記端子幅方向と直交する端子長手方向でずれていることを特徴とする複合部材。
【請求項14】
請求項
10に記載の金属端子と、前記金属端子がインサートされる樹脂成形体と、を有する複合部材の製造方法であって、
前記金属端子を配置した金型内に溶融樹脂材料を充填する際の樹脂流動方向が、少なくとも前記剥離防止部の表面において前記端子長手方向と一致
し、且つ、前記凸部の対角方向のうち対角寸法の大きい側の対角方向と一致するように、前記金型のゲート位置を設定することを特徴とする複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属端子および複合部材、ならびに複合部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属端子をインサート成形により樹脂成形体に一体化させた複合部材が用いられている。例えば、自転車、車、飛行機、船舶、ドローンなどの機構は、歪みセンサー、圧力センサーなどのセンサモジュールにおいて、外部接続用の金属端子を、センサモジュールの樹脂ケースに一体化させている。特許文献1には、この種の複合部材が記載される。特許文献1では、圧力センサーの外装ケースを貫通する金属端子(ターミナル)を、インサート成形により外装ケースに一体化させている。
【0003】
この種の複合部材は、使用状況によっては、金属端子からの樹脂浮きが発生し、金属端子と樹脂成形体との間に隙間ができることがある。そのため、金属端子が樹脂成形体を貫通する箇所からの、水、オイル、潤滑液、液体燃料などの液体や、気体、あるいは塵埃などの侵入や流出を防ぐことのできる構造が求められている。
【0004】
例えば、樹脂成形体がケースを構成している場合に、ケースの外部が陰圧となり、ケースの内部が陽圧となる状態で使用されることがある。あるいは、洗浄時にケースの外部から水圧が加わる状態になることがある。このような状況では、樹脂に加わる圧力により樹脂に変形が生じて金属端子との間に隙間ができるおそれがあるが、そのような状況でも、耐水性や気密性を確保できる構造が求められている。
【0005】
例えば、金属端子に対して、レーザー加工、粗化メッキ、電位差溶解等による粗面化処理や、金属端子表面への密着性塗装を行う。これにより金属端子と樹脂との密着性を高める構造とする。あるいは、接着剤やOリングなどのシール材を用いて、金属端子が樹脂成形体を貫通する箇所の防水性、気密性、防塵性を高める構造とする。例えば、金属端子と樹脂成形体との境界にシール材を張り付けて、樹脂成形体内部からの陽圧に対する防水性や気密性を高める。特許文献1には、外装ケースから金属端子が突出する箇所をエポキシ系接着剤、シリコーン系ゴムなどにより覆うことで水分や気体の侵入経路を塞ぐ構造が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、金属端子の表面を粗面化したり、あるいは、密着性塗装を行うことにより樹脂との密着性を高める構造を採用する場合は、プレス加工による金属端子の製造工程とは別に、追加の粗面化工程や密着性塗装工程が必要である。そのため、工程数の増加、および、加工設備の増加により、金属端子の部品コストが増大するという問題がある。
【0008】
また、シーリング材や、シールゴム等を用いて金属端子と樹脂との隙間を塞ぐことにより密閉性を高める場合には、追加のシール材取付工程が必要である。また、樹脂成形体にシール材を適正に配置するための追加形状が必要となる場合がある。例えば、特許文献1では、金属端子が樹脂成形体から突出する箇所の境界部に、エポキシ系接着剤やシリコーン系ゴムを入れるための溝が設けられている。従って、工程が複雑化するとともに、構造
が複雑化し、小型化、軽量化の妨げとなっている。
【0009】
本発明の課題は、上記の問題点に鑑みて、金属端子に対する追加の加工工程や、金属端子と樹脂との隙間を塞ぐシール材の設置を行うことなく、金属端子が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る金属端子の一態様は、樹脂成形体にインサートされる金属端子であって、前記樹脂成形体の外部に露出する露出部、および、前記樹脂成形体に覆われる板状のインサート部を備え、前記インサート部には、前記インサート部における端子幅方向の側端部を切り欠いた切欠き部、もしくは、前記側端部から突出する突出部が設けられ、且つ、前記突出部の先端または前記切欠き部の内周縁から前記端子幅方向に延びる半貫加工部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、樹脂に接合されるインサート部の側端部に切欠き部もしくは突出部を形成するのに加えて、切欠き部もしくは突出部を設けた箇所から端子幅方向に延びる半貫加工部を形成する。これにより、金属端子の側端部では、切欠き部もしくは突出部によってアンカー効果が得られる。また、半貫加工部に入り込んで硬化した樹脂が、側端部に接合される樹脂と繋がって側端部における樹脂の変形を抑制する。従って、金属端子の側端部における樹脂浮きを抑制できるので、金属端子が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0012】
また、本発明によれば、切欠き部もしくは突出部、および半貫加工部は、いずれも、金属板に対する同一方向の平面プレスにより形成できる。従って、金属端子の製造時に、プレス加工とは異なる加工工程を行う必要がない。また、耐水性および気密性を高めるために、シール材およびその設置工程を行う必要がなく、金属端子にシール材の設置のための追加形状を設ける必要がない。従って、耐水性および気密性を高めるための、金属端子の製造工程の複雑化および部品コストの上昇を抑制できる。
【0013】
本発明において、前記突出部または切欠き部は、前記インサート部における前記端子幅方向の一方側の側端部、および、前記端子幅方向の他方側の側端部に設けられ、前記半貫加工部は、前記一方側の側端部に設けられた前記切欠き部または前記突出部から、前記他方側の側端部に設けられた前記切欠き部または前記突出部まで延びていることが好ましい。このようにすると、金属端子の幅方向の両端部において樹脂浮きを抑制することができる。
【0014】
本発明において、前記インサート部には、前記切欠き部が設けられ、前記切欠き部は、アンダーカット形状であることが好ましい。このようにすると、切欠き部に入り込んで硬化した樹脂によるアンカー効果を高めることができる。
【0015】
本発明において、前記側端部には、2箇所の前記切欠き部、および、前記2箇所の前記切欠き部の間において前記端子幅方向に延びる壁部が設けられ、前記2箇所の前記切欠き部のそれぞれは、前記側端部に開口する開口部から前記端子幅方向に延びる第1溝と、前記第1溝から前記端子幅方向と直交する端子長手方向に延びる第2溝と、を備え、前記2箇所の前記切欠き部の一方における前記第2溝と、前記2箇所の前記切欠き部の他方における前記第2溝は、いずれも、前記第1溝から前記壁部とは逆向きに延びていることが好ましい。このような形状では、2箇所のアンカー部は、切欠き部から引き抜かれるときに逆向きに変形しようとする。従って、2箇所のアンカー部が互いに変形を阻害して、切欠き部から外れにくくなる。従って、金属端子の側端部における樹脂浮きを抑制する効果が高まる。また、アンカー部が切欠き部から外れようとするとき、2箇所の切欠き部の間の
壁部にアンカー部が密着する状態が維持される。従って、金属端子が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0016】
本発明において、前記切欠き部の内周面と前記側端部とが繋がる角部は、R形状であることが好ましい。このようにすると、切欠き部の入り口が広がるので、切欠き部に樹脂が入り込みやすい。従って、切欠き部への樹脂の充填不良による、金属端子と樹脂との密着性の低下を抑制できる。
【0017】
本発明において、前記切欠き部の内周面における凹形状の角部は、R形状であることが好ましい。このようにすると、切欠き部に入り込んで硬化した樹脂の角部がR形状になるので、冷熱サイクル下における冷収縮時にクラックが発生しにくい。
【0018】
本発明において、前記インサート部には、前記突出部が設けられ、前記突出部は、前記インサート部と板厚が等しく、且つ、前記側端部に繋がる基部よりも幅が広い幅広部を備える構成を採用することができる。このような構成により、突出部によるアンカー効果を高めることができる。
【0019】
本発明において、前記突出部の先端には、前記インサート部の板厚よりも薄い薄肉部が設けられていることが好ましい。このようにすると、突出部の3次元形状が複雑化する。従って、アンカー効果を高めることができ、金属端子の側端部における樹脂浮きを抑制できる。また、薄肉部は、突出部および半貫加工部を設ける際のプレス加工と同一方向の平面プレスにより形成できるため、金属端子の製造工程の複雑化および部品コストの上昇を抑制できる。
【0020】
本発明において、前記インサート部は、板厚方向の表面に剥離防止部が形成され、前記剥離防止部は、格子状の溝および前記溝に囲まれる凸部を備え、前記溝は、前記端子幅方向に対して傾斜し、且つ、前記端子幅方向と直交する端子長手方向に対して傾斜し、前記凸部は、先端を潰した潰し部を備えることが好ましい。このようにすると、格子状の溝がアンダーカット形状となり、溝に入り込んだ樹脂がアンカー部を形成する。従って、インサート部の板厚方向の表面における樹脂浮きを抑制できる。また、樹脂の変形を抑制する効果が高まるので、端子側面での樹脂浮きを抑制する効果を高めることができる。
【0021】
本発明において、前記溝は、前記端子長手方向に対する傾斜角度が、前記端子幅方向に対する傾斜角度よりも小さく、前記凸部の平面形状は、前記端子長手方向の対角寸法が前記端子幅方向の対角寸法よりも大きい菱形であることが好ましい。このようにすると、インサート成形時に、金属端子周辺の樹脂流動方向を端子長手方向と一致させた場合に、樹脂流動方向と端子表面の溝とのなす角度を小さくすることができる。これにより、溶融樹脂材料が溝に流入する際の抵抗、および、溝に沿って溶融樹脂材料が流動する際の抵抗を少なくすることができる。従って、溝への樹脂の充填不良を抑制でき、アンカー効果を高めることができる。
【0022】
本発明に係る複合部材の一態様は、上記の金属端子と、前記金属端子がインサートされる樹脂成形体と、を有することを特徴とする。
【0023】
上記の金属端子を用いることにより、金属端子からの樹脂浮きを抑制できる。従って、金属端子が樹脂成形体を貫通する箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0024】
本発明の複合部材において、前記樹脂成形体は、メタキシレンジアミンをベースとしたナイロン樹脂であり、繊維状のフィラーが添加されていることが好ましい。メタキシレンジアミンをベースとした樹脂は、低粘度であり、流動性が高い。従って、金属端子に凹凸
形状が設けられた部位への充填不良が発生しにくい。特に、アンダーカット形状への充填不良が発生しにくい。従って、アンダーカット形状への充填不良によるアンカー効果の低減を抑制できる。また、ガラスファイバーなどの繊維状のフィラーを添加した場合でも、充填不良が発生しにくい。フィラーの添加により、樹脂の変形を抑制する効果が高まる。従って、金属端子からの樹脂浮きを抑制する効果を高めることができる。
【0025】
本発明に係る複合部材の別態様は、上記の金属端子と、前記金属端子が複数本インサートされる樹脂成形体と、を有し、前記複数本の前記金属端子は、前記端子幅方向に並んでおり、隣り合う前記金属端子は、前記突出部の位置が前記端子幅方向と直交する端子長手方向でずれていることを特徴とする。
【0026】
このようにすると、隣り合う金属端子の間隔を広くするスペースを確保できない場合でも、隣り合う金属端子の突出部が接触して短絡することを防止できる。
【0027】
本発明に係る複合部材の製造方法の一態様は、上記の金属端子と、前記金属端子がインサートされる樹脂成形体と、を有する複合部材の製造方法であって、前記金属端子を配置した金型内に溶融樹脂材料を充填する際の樹脂流動方向が、少なくとも前記剥離防止部の表面において前記端子長手方向と一致するように、前記金型のゲート位置を設定することを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、金属端子をインサート成形により樹脂成形体に一体化させるにあたって、端子表面に設けた剥離防止部には、端子長手方向に対する傾斜角度が小さい溝を設けておき、金型への溶融樹脂材料の充填時には、剥離防止部の表面における樹脂流動方向を端子長手方向と一致させる。このようにすると、インサート成形時に、溶融樹脂材料が溝に流入する際の抵抗、および、溝に沿って溶融樹脂材料が流動する際の抵抗を少なくすることができる。従って、溝への樹脂の充填不良を抑制でき、アンカー効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、金属端子を樹脂にインサート成形により一体化させた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。また、耐水性および気密性を高めるための、金属端子の製造工程の複雑化および部品コストの上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】複合部材の平面図および断面図と、金属端子がインサートされた部位の部分拡大図である。
【
図2】実施形態1の金属端子の平面図および側面図と、切欠き部の部分拡大図である。
【
図5】変形例1の切欠き部を備える金属端子の平面図および側面図と、切欠き部の部分拡大図である。
【
図6】変形例2の切欠き部を備える金属端子の平面図および側面図と、切欠き部の部分拡大図である。
【
図7】実施形態2の金属端子の平面図および側面図と、突出部の部分拡大図である。
【
図8】突出部の位置をずらした金属端子の説明図である。
【
図9】変形例の突出部を備える金属端子の平面図、側面図、および斜視図と、突出部の部分拡大図である。
【
図10】剥離防止部を備える金属端子および複合部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、金属端子および複合部材、並びに複合部材の製造方法の実施形態を説明する。本明細書において、X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する方向である。X方向の一方側をX1、X方向の他方側をX2とする。Y方向の一方側をY1、Y方向の他方側Y2とする。Z方向の一方側をZ1、Z方向の他方側をZ2とする。
【0032】
(複合部材)
図1は、複合部材1の平面図および断面図と、金属端子2がインサートされた部位の部分拡大図である。複合部材1は、金属端子2および樹脂成形体3を備える。金属端子2は、インサート成形により樹脂成形体3に一体化される。複合部材1は、例えば、歪みセンサーや圧力センサーなどのセンサーユニットのケースとして使用される。なお、複合部材1の用途は、歪みセンサーや圧力センサーを構成する部材に限定されない。
【0033】
図1に示すように、樹脂成形体3は、XY面に沿う底部31と、底部31の外周縁からZ2方向に立ち上がる縁部32を備える。底部31および縁部32は、センサーユニットの内部空間S1を外部空間S2から区画する隔壁となっている。
【0034】
複合部材1は、内部空間S1が陽圧となる状況で使用されることがある。あるいは、外部空間S2の側から複合部材1に水圧が加わる状況で使用されることがある。例えば、洗浄時は、外部空間S2の側から複合部材1に水圧が加わる。複合部材1は、このような状況下でも、金属端子2が樹脂成形体3を貫通する箇所の耐水性および気密性を確保できる構造となっている。
【0035】
図1に示す複合部材1は、複数の金属端子2を備える。複数の金属端子2のそれぞれは、X方向に延びており、樹脂成形体3を貫通する。なお、樹脂成形体3にインサートされる金属端子2の本数は、1本でもよいし、複数の場合は4本に限定されない。
【0036】
図1の部分拡大図に示すように、金属端子2は、樹脂成形体3に被覆されるインサート部7と、樹脂成形体3の外部に露出した2箇所の露出部8を備える。一方の露出部8は、金属端子2のX1方向の端部に設けられており、底部31および縁部32に囲まれるセンサーユニットの内部空間S1に面する。他方の露出部8は、金属端子2のX2方向の端部に設けられており、センサーユニットの外部空間S2に面する。なお、露出部8の位置および範囲は、
図1に示す位置に限定されない。
【0037】
(金属端子)
図2は、実施形態1の金属端子2の平面図および側面図と、切欠き部4の部分拡大図である。金属端子2は、プレス加工により製造される金属部材である。
図2の側面図に示すように、金属端子2の概略形状は、X方向に長い一定の板厚の金属板のX2方向の端部を、Z2方向に凹む矩形の凹形状に屈曲させた形状である。金属端子2は、X方向に直線状に延びる板状の端子部21と、端子部21のX2方向の端部に接続されるセレーション部22を備える。
図2の平面図においてハッチングを付した範囲が、セレーション部22の範囲である。
【0038】
本明細書において、端子部21が延在する方向を「端子長手方向」とする。端子長手方向は、X方向である。また、端子部21およびセレーション部22の幅方向を「端子幅方向」とする。端子幅方向は、Y方向である。また、本明細書において、「端子平面部」は、セレーション部22を構成する金属板の板厚方向の表面を意味し、「端子側面部」は、セレーション部22を構成する金属板の端子幅方向の端面を意味する。
【0039】
図2の平面図に示すように、端子部21は、Y方向の幅が一定である。セレーション部22は、後述する切欠き部4が形成された箇所を除き、Y方向の幅が一定である。セレーション部22は、端子部21からX2方向に延びる第1板部23と、第1板部23のX2方向の端部からZ2方向に屈曲した第2板部24と、第2板部24のZ2方向の端部から第1板部23とは反対側(X2方向)に屈曲した第3板部25と、第3板部25のX2方向の端部からZ1方向に屈曲した第4板部26を備える。第4板部26は、X2方向の表面が
図1に示す外部空間S2に露出する露出部8となっている。
【0040】
図1に示すように、端子部21のZ1方向の表面は、金属端子2が樹脂成形体3にインサートされたときに内部空間S1に露出する露出部8を備える。
図2の平面図に示すように、端子部21の端子幅方向(Y方向)の中央には、円形の貫通孔27がX方向に離れた2箇所に設けられている。2箇所の貫通孔27は、露出部8に配置される。
【0041】
図1に示すように、セレーション部22の第1板部23、第2板部24、および第3板部25は、樹脂成形体3の内部に埋設されるインサート部7である。インサート部7には、複合部材1の耐水性および気密性を高めることを目的として、金属端子2の表面からの樹脂浮きを抑制するための形状が設けられている。本形態では、樹脂浮きを抑制するための形状として、端子幅方向の側端部を切り欠いた切欠き部4、端子幅方向に延びる半貫加工部5、および、板厚方向の表面に設けられた剥離防止部6の3種類の形状を備える。
【0042】
(切欠き部)
図2の平面図に示すように、セレーション部22は、Y1方向の側端部である第1側端部28、および、Y2方向の側端部である第2側端部29のそれぞれに、X方向に並ぶ2箇所の切欠き部4が設けられている。切欠き部4は、第1側端部28もしくは第2側端部29に開口する開口部40の幅よりも奥の部分の幅の方が広いアンダーカット形状である。具体的には、切欠き部4は、L字形状である。
図2の部分拡大図に示すように、切欠き部4は、開口部40からセレーション部22のY方向の中央に向かってY方向に延びる第1溝41と、第1溝41からX方向に延びる第2溝42を備える。
【0043】
図2の部分拡大図に示すように、第1側端部28に開口する切欠き部4は、開口部40の両側の角部、換言すれば、第1側端部28と切欠き部4の内周面とが繋がる角部43が全てR形状である。同様に、第2側端部29に開口する切欠き部4は、開口部40の両側の角部、換言すれば、第2側端部29と切欠き部4の内周面とが繋がる角部43が全てR形状になっている。また、各切欠き部4は、各切欠き部4の内周面における角部のうち、凹形状の角部44が全てR形状である。
【0044】
以下の説明では、第1側端部28および第2側端部29のそれぞれにおいてX方向に並ぶ2箇所の切欠き部4のうち、X1方向の切欠き部4を第1切欠き部45とし、X2方向の切欠き部を第2切欠き部46とする。第1切欠き部45と第2切欠き部46との間には、2本の第1溝41の間をY方向に直線状に延びる壁部47が形成されている。第1切欠き部45と第2切欠き部46は、壁部47のX方向の中央においてY方向に延びる対称軸Lを基準として対称な形状である。第1切欠き部45の第2溝42と、第2切欠き部46の第2溝42は、いずれも、第1溝41から壁部47とは反対側へ向かって延びる。
【0045】
(半貫加工部)
図2に示すように、セレーション部22には、端子幅方向(Y方向)に延びる直線状の半貫加工部5が設けられている。半貫加工部5は、板厚方向の表面に形成された溝部51と、溝部51が形成された表面とは反対側の表面から突出するリブ52を備える。
図2に示す金属端子2では、半貫加工部5は、Z1方向に凹む溝部51と、Z1方向に突出するリブ52を備える。半貫加工部5は、金属板への平面プレスにより形成される。なお、半
貫加工部5は、Z方向で逆向きにプレスした形状であってもよい。すなわち、半貫加工部5は、Z2方向に凹む溝部と、Z2方向に突出するリブを備える形状であってもよい。
【0046】
半貫加工部5は、第1板部23および第3板部25に1箇所ずつ形成される。第1板部23には、第1切欠き部45のX方向の中央に半貫加工部5が形成される。第1板部23に形成された半貫加工部5は、第1側端部28に設けられた第1切欠き部45の内周面から、第2側端部29に設けられた第1切欠き部45の内周面まで延びる。なお、半貫加工部5を形成する位置は、第2切欠き部46の位置でもよい。また、第1切欠き部45と第2切欠き部46の両方に、半貫加工部5を形成してもよい。第3板部25に設けた半貫加工部5は、省略してもよい。
【0047】
切欠き部4の位置に半貫加工部5を形成すると、複雑な3次元形状となる。この部位を樹脂にインサートすると、切欠き部4に入り込んで硬化した樹脂からなるアンカー部と、半貫加工部5の溝部51に入り込んで硬化した樹脂とが繋がる。これにより、切欠き部4に配置されるアンカー部の変形が阻害され、アンカー部が切欠き部4から外れることが抑制される。
【0048】
(剥離防止部)
図3は、剥離防止部6の説明図である。
図3の左上図においてハッチングで示す領域は、剥離防止部6が設けられた範囲である。
図3の右上図は、剥離防止部6の部分拡大平面図である。
図3の下図は、剥離防止部6の部分拡大斜視図である。剥離防止部6は、セレーション部22の板厚方向の表面に形成される。本形態では、
図2に示すZ1方向の表面に、剥離防止部6が形成される。なお、
図2に示すZ2方向の表面に剥離防止部6を形成してもよい。剥離防止部6を形成する範囲は、
図3の左上図に示すハッチングの範囲よりも狭くてもよい。例えば、少なくとも第1板部23の表面に、剥離防止部6が形成されていればよい。
【0049】
剥離防止部6には、複数の溝61が格子状に形成される。隣り合う溝61の間の部分は、平面視で四角形の凸部62となっている。
図3の下図からわかるように、凸部62の先端には、平面プレスにより潰した潰し部63が設けられている。このため、剥離防止部6における溝61の断面形状は、開口部の幅よりも底部の幅の方が広いアンダーカット形状である。
【0050】
図3の右上図に示すように、溝61は、X方向に対して傾斜し、且つ、Y方向に対して傾斜する。溝61は、X方向に対する傾斜角度R1が、Y方向に対する傾斜角度R2よりも小さい。このため、凸部62の平面形状は、X方向の対角寸法W1がY方向の対角寸法W2よりも長い菱形である。
【0051】
剥離防止部6の具体的な寸法は、例えば、以下のようにすることが好ましい。
図3の右上図に示す溝61の幅W3を0.1mmとし、隣り合う溝61の間隔W4を0.1mmとする。溝61の傾斜角度は、X方向に対する傾斜角度R1を40°以下とする。
図3の下図に示す溝61の深さDは、0.1mm以上とする。
【0052】
(樹脂の変形)
図4は、陽圧による樹脂の変形を示す説明図である。
図4の上図は、複合部材1に内圧がかかる前の樹脂の状態を示す。
図4の下図は、複合部材1に内圧がかかった時の樹脂の状態を示す。
図1の複合部材1は、内部空間S1が陽圧になると、内圧がかかる。このため、セレーション部22を覆う樹脂の変形が起きる。具体的には、
図4の下図における矢印Tで示すように、セレーション部22のY1方向およびY2方向の側面から樹脂を剥離させるような変形が起きる。
【0053】
インサート成形により複合部材1を製造する際、セレーション部22のY1方向およびY2方向の側端部では、2箇所の切欠き部4に樹脂が入り込んで硬化し、アンカー部を形成する。
図4に示すように、樹脂成形体3は、アンカー部として、第1切欠き部45に係合する第1アンカー部11、および、第2切欠き部46に係合する第2アンカー部12を備える。
【0054】
複合部材1に加わる内圧等により、セレーション部22のY1方向およびY2方向の側面から樹脂を剥離させるような変形が起きると、第1アンカー部11には第1切欠き部45から外れる形状に変形し、第2アンカー部12は第2切欠き部46から外れる形状に変形する。このとき、第1アンカー部11と第2アンカー部12は、X方向で逆向きの形状であるため、X方向で逆向きに変形しようとする。具体的には、
図4において矢印T1で示す方向に第1アンカー部11が変形し、
図4において矢印T2で示す方向に第2アンカー部12が変形する。従って、第1アンカー部11と第2アンカー部12は、互いに変形を阻害するため、第1切欠き部45および第2切欠き部46から外れにくい。
【0055】
図4の部分拡大図に示すように、第1アンカー部11および第2アンカー部12は、それぞれ、第1溝41に充填される樹脂からなる基部13と、第2溝42に充填される樹脂からなる先端部14を備える。先端部14は、基部13の先端から屈曲して延びる。これら2箇所のアンカー部を切欠き部4から引き抜くときは、基部13を第1溝41から引き抜くとともに、先端部14を第2溝42から引き抜く。このとき、基部13と第1溝41の内面との接触状態は維持される。また、先端部14を第2溝42から引き抜くとき、第1アンカー部11と第2アンカー部12は、それぞれ、壁部47に対してX方向の両側から押し付けられて、壁部47と密着した状態が維持される。
【0056】
(インサート成形時の樹脂流動方向)
インサート成形により複合部材1を製造する際、金型内に複数の金属端子2をセットする。このとき、各金属端子2のセレーション部22を樹脂が充填される空間に配置するとともに、各金属端子2の露出部8を金型面に当接させる。そして、金型のゲートから溶融樹脂材料を充填する。充填完了後に、所定の硬化条件において溶融樹脂材料を硬化させる。硬化後に、複合部材1を離型する。本形態では、樹脂成形体3を構成する樹脂として、メタキシレンジアミンをベースとしたナイロン樹脂に、ガラスファイバーなどの繊維状のフィラーを添加した樹脂を用いる。
【0057】
図3に示す矢印Fは、インサート成形時の樹脂流動方向である。
図3に示すように、インサート成形時には、セレーション部22の周囲における樹脂流動方向Fと、端子長手方向(X方向)とを一致させるように金型のゲート位置を設定する。これにより、第1板部23に設けられた剥離防止部6では、樹脂流動方向Fと溝61とのなす角度R1が、樹脂流動方向Fと直交する方向と溝61とのなす角度R2よりも小さくなる。樹脂流動方向Fと溝61とのなす角度R1は、樹脂流動方向Fと凸部62の側面とのなす角度である。従って、上記のような樹脂流動方向Fとなるように構成すれば、溝61への樹脂流入時に、抵抗を発生させる凸部62の側面と樹脂流動方向Fとのなす角度を小さくすることができる。
【0058】
剥離防止部6は、凸部62の先端を潰したことにより溝61がアンダーカット形状になっている。溝61がアンダーカット形状の場合、溝61の開口部が狭い。このため、溶融樹脂材料にガラスファイバーなどの繊維状のフィラーを添加した場合には、
図3の下図に示す矢印G方向から溝61に溶融樹脂材料が流入しにくい。そこで、本形態では、樹脂流動方向Fを端子長手方向と一致させるとともに、溝61と樹脂流動方向Fとのなす角度R1、換言すると、樹脂流入時に抵抗を発生させる凸部62の側面と樹脂流動方向Fとのな
す角度R1が小さい構成を採用した。これにより、ガラスファイバーを添加した溶融樹脂材料であっても、溝61に流入しやすく、且つ、溝61に沿って流動しやすい。従って、溝61への溶融樹脂材料の充填不良が発生しにくい。
【0059】
樹脂成形体3は、溶融樹脂材料が凸部62の側面に沿って流れることにより、ガラスファイバーなどのフィラーの配向が揃う。これにより、溝61に入り込んだ樹脂からなるアンカー部は、変形しにくくなるので、樹脂成形体3を変形させるような圧力が加わった場合でも、溝61からアンカー部が抜けにくい。従って、剥離防止部6を覆う樹脂は剥離しにくく、変形しにくい。このように、セレーション部22の剥離防止部6を覆う樹脂が剥離しにくくなれば、セレーション部22の側端部を覆う樹脂の変形がさらに抑制される。従って、耐水性、気密性の低下が抑制される。
【0060】
(エアリーク試験)
図1に示す複合部材1の試作品に対して、金属端子2をインサートした箇所の耐水性、気密性を確認するためのエアリーク試験を行った。その結果、内外の圧力差1気圧において1分間エアリークなしの結果が得られた。
【0061】
(作用効果)
以上のように、本形態の複合部材1は、金属端子2と、金属端子2がインサートされる樹脂成形体3を有する。金属端子2は、樹脂成形体3の外部に露出する露出部8、および、樹脂成形体3に覆われるインサート部7を備える。インサート部7は、端子長手方向(X方向)に直線状に延びる板状の第1板部23を備える。第1板部23におけるY1方向の側端部およびY2方向の側端部には、それぞれ、切欠き部4が設けられている。さらに、インサート部7には、切欠き部4の内周縁から端子幅方向(Y方向)に延びる半貫加工部5が設けられている。
【0062】
本形態の金属端子2は、樹脂に接合されるインサート部7の側端部に切欠き部4が形成され、切欠き部4に入り込んだ樹脂によってアンカー部が形成される。従って、アンカー効果が得られる。切欠き部4はアンダーカット形状であるため、アンカー効果が高い。また、半貫加工部5に入り込んで硬化した樹脂が、金属端子2の側端部に接合される樹脂と繋がって側端部における樹脂の変形を抑制する。従って、金属端子2の側端部における樹脂浮きを抑制できる。さらに、半貫加工部5の溝部51に入り込んで硬化した樹脂は、端子幅方向(Y方向)への樹脂浮きが発生した場合でも、溝部51の内面との接触状態を維持できる。従って、金属端子2が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0063】
本形態の金属端子2は、樹脂の浮きを抑制するための切欠き部4および半貫加工部5を、金属板に対する同一方向の平面プレスにより形成することができる。従って、金属端子2を製造する際に、プレス加工とは異なる加工工程を行う必要がない。また、金属端子2が樹脂成形体3にインサートされた複合部材1の耐水性および気密性を高めるために、シール材およびその設置工程を行う必要がなく、金属端子2にシール材の設置のための追加形状を設ける必要がない。従って、複合部材1の耐水性および気密性を高めるための、金属端子2の製造工程の複雑化および部品コストの上昇を抑制できる。
【0064】
本形態では、第1側端部28に設けられた切欠き部4から、第2側端部29に設けられた切欠き部4まで半貫加工部5が延びている。従って、金属端子2の幅方向の両端部において、樹脂の変形を抑制でき、樹脂浮きを抑制することができる。よって、金属端子2が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。なお、第1側端部28および第2側端部29の一方には切欠き部4を設けない形態としてもよい。
【0065】
本形態では、第1側端部28および第2側端部29のそれぞれに、切欠き部4として、第1切欠き部45および第2切欠き部46を設ける。第1切欠き部45と第2切欠き部46の間には、端子幅方向(Y方向)に延びる壁部47を設ける。第1切欠き部45と第2切欠き部46は、逆向きのL字形状である。すなわち、第1切欠き部45と第2切欠き部46は、金属端子2の側端部に開口する開口部40からY方向に延びる第1溝41と、第1溝41からX方向に延びる第2溝42を備える。第2溝42は、第1溝41から壁部47とは逆向きに延びる。このように、2箇所のアンカー部が逆向きに屈曲した形状になっていると、切欠き部4から引き抜かれるときに互いに逆向きに変形しようとするので、互いに変形を阻害する。従って、切欠き部4からアンカー部が外れにくく、樹脂浮きを抑制する効果が高い。また、2箇所のアンカー部は、切欠き部4から引き抜かれるときに、第1溝41の内面との接触状態を維持できる。従って、金属端子2が樹脂にインサートされた箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0066】
本形態では、切欠き部4の入り口の角部43がR形状であるため、切欠き部4に樹脂が入り込みやすい。従って、切欠き部4への樹脂の充填不良を抑制できる。また、切欠き部4の内周面における凹形状の角部44がR形状である。これにより、切欠き部4に入り込んで硬化した樹脂の角部がR形状になるので、冷熱サイクル下において、冷収縮時に樹脂の角部にクラックが発生してアンカー効果が低下するおそれが少ない。
【0067】
なお、切欠き部4の入り口の角部43、および、切欠き部4の内周面における凹形状の角部44は、R形状にすることが好ましいが、R形状でなくてもよい。
【0068】
本形態では、インサート部7の板厚方向の表面に、剥離防止部6が形成される。剥離防止部6は、格子状の溝61と、溝61に囲まれる凸部62を備える。溝61は、端子長手方向(X方向)に対して傾斜し、且つ、端子幅方向(Y方向)に対して傾斜する。凸部62は、先端を潰した潰し部63を備える。このような溝61および凸部62の形状は、切欠き部4および半貫加工部5を形成するときと同一方向の平面プレスによって形成できる。従って、プレス加工とは異なる加工工程を行わずに、アンダーカット形状の溝61を備えた剥離防止部6を形成することができる。アンダーカット形状の溝61に入り込んだ樹脂は、アンカー部を形成する。従って、セレーション部22の板厚方向の表面における樹脂浮きを抑制できる。また、樹脂の変形を抑制する効果が高まるので、端子側面での樹脂浮きを抑制する効果を高めることができる。
【0069】
本形態に係る複合部材1の製造方法は、金属端子2を配置した金型内に溶融樹脂材料を充填する際の樹脂流動方向Fが、少なくとも剥離防止部6の表面において、端子長手方向(X方向)と一致するように、金型のゲート位置を設定する。ゲートから金型に充填する溶融樹脂材料として、メタキシレンジアミンをベースとしたナイロン樹脂であり、繊維状のフィラーが添加されたものを用いる。
【0070】
本形態の金属端子2において、剥離防止部6に設けられた溝61は、端子長手方向(X方向)に対する傾斜角度R1が、端子幅方向(Y方向)に対する傾斜角度R2よりも小さい。そして、凸部62の平面形状は、端子長手方向(X方向)の対角寸法W1が端子幅方向(Y方向)の対角寸法W2よりも大きい菱形である。この形状は、樹脂流動方向Fを端子長手方向(X方向)と一致する方向に設定することで、溶融樹脂材料が溝61に流入する際の抵抗、および、溝61に沿って溶融樹脂材料が流動する際の抵抗を少なくできる形状である。これにより、溝61への樹脂の充填不良が発生しにくくなるので、剥離防止部6と樹脂との接合強度を高めることができる。
【0071】
本形態では、溶融樹脂材料として、メタキシレンジアミンをベースとしたナイロン樹脂を用いるので、溶融樹脂材料が低粘度であり、流動性が高い。このような樹脂材料を用い
れば、フィラーを添加した場合でも、アンダーカット形状の溝61への充填不良が発生しにくい。従って、剥離防止部6と樹脂との接合強度を高めることができ、金属端子2からの樹脂浮きを抑制する効果を高めることができる。これにより、金属端子2が樹脂を貫通する箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0072】
(切欠き部の変形例)
金属端子の切欠き部は、
図2に示すようなL字形状に限定されない。例えば、T字形状であってもよいし、他のアンダーカット形状であってもよい。あるいは、アンダーカット形状でなくてもよい。また、切欠き部の数は2箇所に限定されない。以下の説明では、上記形態の金属端子2と同一の構成は同一の符号を付し、異なる構成は異なる符号を付して説明する。
【0073】
図5は、変形例1の切欠き部4Aを備える金属端子2Aの平面図および側面図と、切欠き部4Aの部分拡大図である。金属端子2Aは、端子部21およびセレーション部22Aを備える。セレーション部22Aの第1側端部28および第2側端部29は、それぞれ、X方向に並ぶ2箇所の切欠き部4Aを備える。また、セレーション部22Aには、半貫加工部5および剥離防止部6が形成される。半貫加工部5は、2箇所の切欠き部4Bのうちの一方の位置に設けられている。
【0074】
図5の部分拡大図に示すように、切欠き部4Aは、Y方向に延びる第1溝41と、第1溝41からX方向の両側へ延びる第2溝42Aを備える。2箇所の切欠き部4Aの間には、壁部47Aが設けられている。壁部47Aは、第2溝42の間の部分の幅が、第1溝41の間の部分の幅よりも狭い。第2溝42Aは、壁部47Aの側へ延びる部分の長さが、壁部47Aとは反対側へ延びる部分の長さよりも短い。
【0075】
図6は、変形例2の切欠き部4Bを備える金属端子2Bの平面図および側面図と、切欠き部4Bの部分拡大図である。金属端子2Bは、端子部21およびセレーション部22Bを備える。セレーション部22Bの第1側端部28および第2側端部29は、それぞれ、1箇所の切欠き部4Bを備える。また、セレーション部22Bには、半貫加工部5および剥離防止部6が形成される。半貫加工部5は、第1側端部28の切欠き部4Bから第2側端部29の切欠き部4Bまで延びる。
図6に示すように、切欠き部4Bは、Y方向に延びる第1溝41と、第1溝41からX方向の両側へ同一長さで延びる第2溝42Bを備える。従って、切欠き部4Bは、T字形状である。
【0076】
図1に示す複合部材1において、金属端子2の代わりに
図5の金属端子2Aを用いた場合、および、
図6の金属端子2Bを用いた場合には、いずれの場合も、エアリーク試験において、内外の圧力差1気圧で1分間エアリークなしの結果が得られた。
【0077】
(実施形態2)
金属端子の側端部における樹脂浮きを抑制するための形状は、切欠き部に限定されない。例えば、アンカー部となるような突出部であってもよい。
図7は、実施形態2の金属端子2Cの平面図および側面図と、突出部9の部分拡大図である。金属端子2Cは、端子部21およびセレーション部22Cを備える。セレーション部22Cの第1側端部28および第2側端部29には、それぞれ、2箇所の突出部9が形成される。2箇所の突出部9の一方は、第1板部23に形成される。他方は、第3板部25に形成される。
【0078】
セレーション部22Cには、半貫加工部5および剥離防止部6が形成される。半貫加工部5は、2箇所の突出部9のそれぞれの位置に設けられている。半貫加工部5は、第1側端部28に設けられた突出部9の先端から、第2側端部29に設けられた突出部9の先端まで延びる。
【0079】
突出部9は、セレーション部22Cと同一の板厚である。
図7の部分拡大図に示すように、突出部9は、第1側端部28もしくは第2側端部29に繋がる基部91と、基部91よりもX方向の幅が広い幅広部92を備える。
図7に示す突出部9は、突出部9の先端が最も幅が広い幅広部92となっている。
【0080】
図1に示す複合部材1において、金属端子2の代わりに
図7の金属端子2Cを用いた場合には、突出部9がアンカー部として機能する。また、突出部9の周囲の樹脂が、半貫加工部5の溝部51に入り込んで硬化した樹脂と繋がって側端部における樹脂の変形を抑制するので、アンカー部としての機能が高まる。従って、金属端子2Cの側端部における樹脂浮きを抑制できる。また、半貫加工部5の溝部51に入り込んで硬化した樹脂は、端子幅方向(Y方向)への樹脂浮きが発生した場合でも、溝部51の内面との接触状態を維持できる。従って、金属端子2Cが樹脂を貫通する箇所の耐水性および気密性を高めることができる。
【0081】
図8は、突出部9の位置をずらした金属端子2Cの説明図である。
図1に示す複合部材1に、
図7に示す金属端子2Cを複数本インサートする場合には、
図8に示すように、隣り合う金属端子2Cの突出部9の位置をX方向でずらすことが好ましい。このようにすると、隣り合う金属端子2Cの間隔を広くするスペースを確保できない場合でも、隣り合う金属端子2Cの突出部9が接触して短絡することを防止できる。
【0082】
(突出部の変形例)
金属端子の突出部は、
図7、
図8に示す形状に限定されるものではない。
図9は、変形例の突出部9Dを備える金属端子2Dの平面図、側面図、および斜視図と、突出部9Dの部分拡大図である。金属端子2Dは、端子部21およびセレーション部22Dを備える。セレーション部22Dの第1側端部28および第2側端部29は、それぞれ、1箇所の突出部9Dを備える。突出部9Dは、第1板部23に形成される。
【0083】
セレーション部22Dには、半貫加工部5および剥離防止部6が形成される。半貫加工部5は、第1側端部28に設けられた突出部9Dから、第2側端部29に設けられた突出部9Dまで延びる。さらに、突出部9Dの先端には、セレーション部22Dの板厚よりも薄い薄肉部93が設けられている。薄肉部93を設けることにより、突出部9の3次元形状がさらに複雑化する。これにより、樹脂の変形を抑制する効果が高まるので、樹脂浮きをより発生しにくくすることができる。また、薄肉部93は、突出部9Dおよび半貫加工部5を設ける際のプレス加工と同一方向の平面プレスにより形成できるため、金属端子2Dの製造工程の複雑化および部品コストの上昇を抑制できる。
【0084】
図9の部分拡大図に示すように、突出部9Dは、第1側端部28に繋がる基部よりも先端部の方がX方向の幅が大きい形状である。また、突出部9Dの側面94と先端面95とが繋がる角部96、および、突出部9Dの側面94と第1側端部28もしくは第2側端部29とが繋がる角部97は、全てR形状である。これにより、突出部9Dの周囲において、樹脂の角部がR形状になる。従って、冷熱サイクル下において、冷収縮時に樹脂の角部にクラックが発生して、アンカー効果が低下することを抑制できる。
【0085】
(他の形態)
図10は、剥離防止部6Eを備える金属端子2Eおよび複合部材1Eの説明図である。
図10の下図に示すように、複合部材1Eは、金属端子2Eと、樹脂成形体3Eを備える。複合部材1Eは、上記形態と同様に、センサーユニットのケースとして使用される。金属端子2Eは、樹脂成形体3Eを貫通する丸棒状のインサート部7Eを備える。インサート部7Eは、端子長手方向(X方向)に直線状に延びる。なお、インサート部7Eは、円
形以外の断面形状の棒状であってもよく、板状であってもよい。
【0086】
図10の左上図に示すように、インサート部7Eの表面には、全面に剥離防止部6Eが形成される。
図10の右上図に示すように、剥離防止部6Eは、平面でなく円筒面に形成されていることを除き、上記各形態に形成される剥離防止部6と同じ構成である。すなわち、剥離防止部6Eの溝61Eは、凸部62Eの先端に潰し部63Eが設けられているため、アンダーカット形状である。従って、インサート部7Eの表面における樹脂浮きを抑制することができる。
【0087】
剥離防止部6Eの溝61Eは、
図10の左上図に示す端子長手方向(X方向)に対して傾斜する。また、インサート部7Eの外周面の周方向に対して傾斜する。従って、インサート成形を行う際に、樹脂流動方向をX方向、もしくは周方向と一致させると、溶融樹脂材料が溝61Eに流入する際の抵抗、および、溝61Eに沿って溶融樹脂材料が流動する際の抵抗を少なくすることができる。従って、溝61Eへの樹脂の充填不良を抑制でき、アンカー効果を高めることができる。
【0088】
図10の右上図に示すように、凸部62Eの平面形状は、端子長手方向(X方向)の対角寸法が、周方向の対角寸法よりも小さい菱形である。なお、凸部62Eの平面形状は、端子長手方向(X方向)の対角寸法が、周方向の対角寸法よりも大きい菱形であってもよい。このようにすると、樹脂流動方向をX方向と一致させたとき、凸部62Eの側面と、樹脂流動方向とのなす角度を小さくすることができる。従って、溝61Eに沿って溶融樹脂材料が流動する際の抵抗をより少なくすることができる。
【0089】
丸棒状のインサート部7Eに剥離防止部6Eを形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用する。まず、丸棒の表面に、転造により網目状のローレット加工を行う。これにより、格子状の溝61Eを形成する。しかる後に、円筒状のダイスの穴に通して引き抜く引き抜き加工により、凸部62Eの先端を潰して潰し部63Eを形成する。これにより、溝61Eがアンダーカット形状となる。
【0090】
金属端子2Eは、剥離防止部6Eを備えているが、切欠き部や、半貫加工部を備えていない。上記各形態の金属端子においても、金属端子2Eと同様に、半貫加工部と、切欠き部もしくは突出部を省略することができる。半貫加工部と、切欠き部もしくは突出部を省略する場合は、金属端子2Eと同様に、セレーション部の外周面全面に格子状のアンダーカット溝を備えた剥離防止部を設けることが好ましい。
【0091】
以上のように、本明細書には、以下の構成を開示する。
(1)
樹脂成形体にインサートされる金属端子であって、
樹脂成形体の外部に露出する露出部、および、前記樹脂成形体に覆われるインサート部を備え、
インサート部の表面には、剥離防止部が形成され、
前記剥離防止部は、格子状の溝および前記溝に囲まれる凸部を備え、
前記凸部は、先端を潰した潰し部を備えることを特徴とする金属端子。
【0092】
(2)
前記剥離防止部の表面における樹脂流動方向に対する前記溝の傾斜角度が、前記樹脂流動方向に対して直交する方向に対する前記溝の傾斜角度よりも小さいことを特徴とする上記(1)の金属端子。
【0093】
(3)
前記インサート部は、端子長手方向に板状に延びており、
前記剥離防止部は、前記インサート部の板厚方向の表面に形成され、
前記溝は、前記端子長手方向に対して傾斜し、且つ、前記端子長手方向と直交する端子幅方向に対して傾斜することを特徴とする上記(1)または(2)の金属端子。
【0094】
(4)
前記溝は、前記端子長手方向に対する傾斜角度が、前記端子幅方向に対する傾斜角度よりも小さく、
前記凸部の平面形状は、前記端子長手方向の対角寸法が前記端子幅方向の対角寸法よりも大きい菱形であることを特徴とする上記(3)の金属端子。
【0095】
(5)
前記インサート部は、端子長手方向に棒状に延びており、
前記剥離防止部は、前記インサート部の外周面に形成され、
前記溝は、前記端子長手方向に対して傾斜することを特徴とする上記(1)または(2)の金属端子。
【0096】
(6)
前記インサート部は、端子長手方向に丸棒状に延びており、
前記剥離防止部は、前記インサート部の外周面に形成され、
前記溝は、前記端子長手方向に対して傾斜し、且つ、前記インサート部の外周面の周方向に対して傾斜することを特徴とする上記(1)または(2)の金属端子。
【符号の説明】
【0097】
1、1E…複合部材、2、2A、2B、2C、2D、2E…金属端子、3、3E…樹脂成形体、4、4A、4B…切欠き部、5…半貫加工部、6、6E…剥離防止部、7、7E…インサート部、8…露出部、9、9D…突出部、11…第1アンカー部、12…第2アンカー部、13…基部、14…先端部、21…端子部、22、22A、22B、22C、22D…セレーション部、23…第1板部、24…第2板部、25…第3板部、26…第4板部、27…貫通孔、28…第1側端部、29…第2側端部、31…底部、32…縁部、40…開口部、41…第1溝、42、42A、42B…第2溝、43、44…角部、45…第1切欠き部、46…第2切欠き部、47、47A…壁部、51…溝部、52…リブ、61、61E…溝、62、62E…凸部、63、63E…潰し部、91…基部、92…幅広部、93…薄肉部、94…側面、95…先端面、96、97…角部、F…樹脂流動方向、L…対称軸、S1…内部空間、S2…外部空間、X…端子長手方向、Y…端子幅方向
【要約】
【課題】金属端子を樹脂にインサート成形により一体化させた箇所の耐水性および気密性を高める。
【解決手段】複合部材1は、金属端子2と、金属端子2がインサートされる樹脂成形体3を有する。金属端子2は、樹脂成形体3の外部に露出する露出部8、および、樹脂成形体3に覆われるインサート部7を備える。インサート部7は、端子長手方向(X方向)に直線状に延びる板状の第1板部23を備える。第1板部23におけるY1方向の側端部およびY2方向の側端部には、それぞれ、切欠き部4が設けられている。さらに、インサート部7には、切欠き部4の内周縁から端子幅方向(Y方向)に延びる半貫加工部5が設けられている。
【選択図】
図2