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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】広帯域レーザ励起プラズマ光源
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/04 20060101AFI20250221BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
H01J65/04 Z
G03F7/20 501
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024520971
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 RU2022050311
(87)【国際公開番号】W WO2023059228
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】2021129398
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(31)【優先権主張番号】17/514,178
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521466910
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー ビー.ヴィー.
(73)【特許権者】
【識別番号】323002842
【氏名又は名称】アイエスティーイーキュー グループ ホールディング ビー. ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】アブラメンコ・ドミトリー・ボリーソヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ガヤソフ・ロベルト・ラフィレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】グルシュコフ・ヂェニース・アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クリフツン・ヴラジミル・ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ラシ・アレクサンドル・アンドレーエヴィチ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0262808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
G03F 7/20
H01J 65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスが充填されたチャンバと,プラズマ点火手段と,連続波(CW)レーザの集束ビームによって上記チャンバ内に維持されるプラズマ放射領域とを備え,上記CWレーザのビームを上記チャンバ内に導入するためのウインドウと,プラズマ放射ビームを上記チャンバから出力するための少なくとも一つのウインドウとを有する金属ハウジングを含む上記チャンバを少なくとも一つのプラズマ放射ビームが出射するレーザ励起プラズマ光源であって,
上記CWレーザの上記ビームが,上記ウインドウと上記プラズマ放射領域との間において上記チャンバ内に設置されたレンズによって集束され,
上記ガスが,少なくとも99.99%の純度を有する不活性ガスに属するか,またはその混合物であり,
上記プラズマ放射ビームを出力するための少なくとも一つのウインドウが結晶性フッ化マグネシウム(MgF)から作製され,
各ウインドウが,上記プラズマ放射領域に最も近いスリーブの端部において上記チャンバの内側に配置され,上記スリーブが上記ハウジングの穴に配置されており,
各ウインドウがガラスセメントによって上記スリーブにはんだ付けされており,かつ上記ウインドウがはんだ付けされた上記スリーブが上記金属ハウジングの上記穴に溶接されており,
上記チャンバが,上記MgF ウインドウを通してプラズマ放射が照射される物体を備える外側チャンバに分岐管によって密封接続されており,上記分岐管が熱ブリッジとして作製されている,
レーザ励起プラズマ光源。
【請求項2】
上記スリーブの端面の表面および上記MgFウインドウの隣接面が上記MgF結晶の光軸に対して略垂直である,請求項1に記載の光源。
【請求項3】
各スリーブおよび上記ハウジングが,上記MgF結晶の光軸に垂直な方向における線熱膨張係数(CLTE)が上記結晶フッ化マグネシウムのCLTEと一致するニッケル鉄合金から作製されている,請求項1に記載の光源。
【請求項4】
上記プラズマ放射ビーム中のスペクトルの短波境界が真空紫外(VUV)領域中のMgF透過境界によって決定され,110nmに等しい,請求項1に記載の光源。
【請求項5】
波長110nm以上のVUV光を吸収しない真空またはガス環境が上記MgFウインドウの外側に配置されている,請求項1に記載の光源。
【請求項6】
分岐管が冷却ラジエータを装備する,請求項5に記載の光源。
【請求項7】
上記プラズマ放射ビームが,上記プラズマ放射領域から上記MgFウインドウに反射を伴うことなく直接に向けられている,請求項1に記載の光源。
【請求項8】
すべてのスリーブが,上記ウインドウがはんだ付けされた軸対称スリーブであり,上記軸対称スリーブが,単一のピースで作成された上記ハウジングに溶接されている,請求項1に記載の光源。
【請求項9】
上記プラズマ放射領域が,少なくとも2つの穴の交差によって形成されたハウジングキャビティ内に配置されており,上記少なくとも2つの穴のそれぞれにウインドウを有するスリーブが存在している,請求項1に記載の光源。
【請求項10】
少なくとも一つの上記スリーブが上記ハウジングの上記穴内に配置されており,上記スリーブが可変外径を有しており,上記ウインドウが小さい方の外径を有する上記スリーブの端部に配置されている,請求項1に記載の光源。
【請求項11】
上記ハウジングが,上記ウインドウを有する少なくとも2つのハウジング部品を含み,上記ハウジング部品が内部チャンバ部品が設置された後に共に溶接される,請求項1に記載の光源。
【請求項12】
上記チャンバ内に,球面ミラーとして設計された少なくとも一つのレトロリフレクタが載置されている,請求項11に記載の光源。
【請求項13】
溶接部が上記ハウジングの外側にある,請求項1に記載の光源。
【請求項14】
上記プラズマ点火手段が,Qスイッチングモードおよびフリーランニングモードの2つのパルスレーザビームを生成する固体レーザシステムであり,連続動作モードにおいて上記チャンバ内のガス圧力が約50atm以上であり,上記チャンバの内面の温度が少なくとも600Kである,請求項1に記載の光源。
【請求項15】
上記CWレーザの上記集束ビームが垂直上方に上記チャンバ内に向けられており,上記ハウジングの上壁が上記プラズマ放射領域から5mm以下の距離に配置されている,請求項1に記載の光源。
【請求項16】
上記CWレーザのビームを集束する上記レンズおよび上記プラズマ放射ビームを出力するための各ウインドウが,上記プラズマ放射領域から5mm以下の距離に配置されている,請求項1に記載の光源。
【請求項17】
上記ウインドウが,上記ウインドウを通過する上記プラズマ放射ビームの光線の経路を歪ませる収差を低減し,上記チャンバを出射する上記プラズマ放射ビームの上記角度開口を低減するように配置されたレンズである,請求項1に記載の光源。
【請求項18】
上記プラズマ放射ビームの方向が,上記プラズマ放射領域を通過した上記CWレーザビームの方向と異なる,請求項1に記載の光源。
【請求項19】
上記チャンバハウジングが直方体として設計されており,上記CWレーザの上記集束ビームおよび上記プラズマ放射ビームが上記プラズマ放射領域内において交差する互いに直交する軸を有している,請求項1に記載の光源。
【請求項20】
上記ハウジングが,上記チャンバをガスで充填し,上記チャンバ内の上記ガスの圧力および組成を制御するように設計された密封ガス入口またはガスポートのいずれかを含む,請求項1に記載の光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許および出願の相互参照
この特許出願は,現在では許可されている,2021年2月19日出願の米国特許出願第17/180,063号の一部継続出願であり,これは2020年3月5日に出願されたロシア特許出願RU2020109782号に対する優先権を主張するものであり,また2020年8月6日に出願された米国特許出願第16/986,424号,現在は米国特許第10,964,523号の一部継続出願であり,これは2020年3月10日に出願された米国特許第16/814,317号,現在は米国特許第10,770,282号の一部継続出願であり,また,2021年10月8日に出願されたロシア特許出願RU2021129398号に対する優先権を主張するものであり,これらのすべては参照によってその全体がこの明細書に組み込まれる。
【0002】
この発明は,連続的な光放電を伴う高輝度広帯域光源,その中で使用されるガス充填チャンバ,およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
あらかじめ生成された比較的高密度のプラズマ中へのレーザ放射によって維持される定常ガス放電は連続光放電(COD)(continuous optical discharge)として知られている。
【0004】
連続波(CW)(continuous wave)レーザの集束(集光)ビームによってガス充填チャンバ内に維持されるCODは,様々なガス内において,特に最大200 atmの高いガス圧のXe内において実現される(Carlhoff et al.,“Continuous Optical Discharges at Very High Pressure,”Physica 103C,1981年,pp.439-447)。約20,000Kのプラズマ温度を有するCODベースの光源(Raizer,“Optical discharge”Sov.Phys.Usp.23(11),1980年11月,pp.789-806)は真空紫外線(VUV)(vacuum ultraviolet)から近赤外線(nearinfrared)までの広いスペクトル範囲における最高輝度の連続光源の一つである。
【0005】
高輝度CODベースの光源の作成に関する課題の一つは真空紫外線放射の出力を増加させることであり,これは特に,短波境界(short-wave boundary)λbおよびチャンバからCODプラズマ広帯域放射を出力するために用いられる光学材料の透過性に対する特別な要件をもたらす。
【0006】
2006年12月1日に公開された特開2006-010675号から公知であるように,チャンバ内の不活性ガスの純度が少なくとも99.99%であると,VUV範囲における高い光出力が光放電において達成される。同時に,光源放射スペクトルの短波境界がチャンバ出射ウインドウの材料によって決定され,この材料にはフッ化リチウム(LiF),フッ化マグネシウム(MgF2),フッ化カルシウム(CaF2),サファイア(Al2O3)または石英(SiO2)を使用することができる。
【0007】
これらの材料のうちLiFおよびMgF2は約110nmに最も短波の透過境界(the shortest-wave boundary of transparency)を有する。さらに,後者2つのうち,MgF2は,より良好な機械的および熱的特性ならびに生産性を有する材料であるので,その使用はVUV範囲において放射スペクトルを100nmまで拡大するのに好ましい。
【0008】
特開2006-010675号に記載された装置は光放電のパルスモード励起を使用しており,このため,光源の平均出力および輝度が低いことがこの装置の欠点であった。光放電励起のパルスモードにおいてチャンバ内の最適な圧力は約1atmであり,他方チャンバ温度は室温に近く,これによって上述の光学材料のいずれかから作製された出射ウインドウを密封する問題が排除される。しかしながら,連続光放電を伴う高輝度プラズマ放射源については状況が根本的に異なる。
【0009】
たとえば,2021年3月30日に公開され,参照によってこの明細書に組み込まれる米国特許第10964523号明細書から公知であるように,50mW/(mm2 nm avg)を超えるスペクトル輝度および0.1%未満の相対輝度不安定性σを特徴とするCODプラズマ放射の最適連続生成は,好ましくは50atm以上のチャンバ内の最適ガス圧の下,チャンバ内面の可能最高動作温度が600~900K以上であり,チャンバ壁がプラズマ放射領域から5mm未満,好ましくは3mm以下の距離に配置されることによって達成される。チャンバとして使用される溶融石英製の密封バルブはこれらの基準を少なくとも部分的に満たす。
【0010】
しかしながら,石英の透過境界(transparency boundary)λb≒170nmは,上述した他の光学材料,特にMgF2(λb≒110nm)に比べて劣っている。同時に,バルブ材料をMgF2によって置き換える選択肢はその機械的特性のために困難であり,MgF2ウインドウを使用することも高温および高圧下において密封することの難しさのために問題がある。
【0011】
チャンバの動作温度を上昇させるために,2018年10月23日に公開された米国特許第10109473号明細書では,鋼などの弾性金属から作製されたCリングを使用してチャンバウインドウを機械的に密封することが提案されている。
【0012】
しかしながら,この解決策は,主にλb≒145nmのサファイアウインドウの使用に関する。このタイプの密封をMgF2ウインドウに適用することはその不十分な機械的強度のために問題がある。
【0013】
2020年5月31日に公開された米国特許第10609804号明細書では,レーザ励起プラズマ光源は,2つのハウジング部分からなる金属円柱状ハウジングと,ハウジング両端部に密封して設置された同軸の入口ウインドウおよび出射ウインドウとを有するガス充填チャンバを備えている。各ウインドウは,円筒形側面がニッケルめっきされており,円形のニッケルめっきされたコバールスリーブの内側に配置され,Agはんだを使用してスリーブの内面にはんだ付けされる。さらに,ウインドウがはんだ付けされた各円形スリーブが外側シーム上でハウジング部品の一つにはんだ付けまたは溶接されている。内部チャンバ部分(楕円形ミラーおよびレーザ放射遮断体)が設置された後,取り付けられたウインドウを有するハウジング部品が共に溶接される。溶接後,ハウジングは真空引きされ,加圧下で溶接または密封されたノズルを通してガスが充填される。ウインドウがはんだ付けされるコバールスリーブの線熱膨張係数(CLTE)(coefficient of linear thermal expansion)はサファイアのCLTEと一致し,したがって,チャンバはサファイアウインドウを使用することを提案する。
【0014】
典型的に使用される石英バルブ(λb≒170nm)と比較して,上記光源は,サファイアウインドウが使用される場合(λb≒145nm)にVUV範囲におけるより広い放射スペクトルによって特徴付けられる。さらに,レーザポンピングの出力を増加させ,その結果,UVおよびVUV範囲を含む出力放射の出力を増加させることを可能にする,より強いチャンバを特徴とする。
【0015】
しかしながら,このタイプのプラズマ光源ではMgF2ウインドウの適用の困難性に起因して,VUVスペクトルのさらなる拡大が制限される。MgF2結晶のCLTEは光軸方向と光軸に垂直な方向とでは大きく異なり,これに対応して13.7・10-6/Kおよび8.48・10-6/Kに等しい。その結果,等方性金属円形スリーブとそれにはんだ付けされた異方性MgF2結晶との間の接続シールは,チャンバが連続光放電プラズマからの放射を最適に発生させるために必要な600~900Kに加熱された場合に信頼性が低い。このシールの信頼性の低さは,金属はんだのCLTE(約20・10-6/K)もMgF2のCLTEと大きく異なるという事実に起因する。また,ウインドウ上のガスの圧力がシールジョイント(密封接合部)のシフトおよび破断に寄与し,それによってその信頼性が低下する。プラズマ放射ビームがチャンバ内の金属ミラーによるプラズマ放射の反射によってのみ形成されるという事実にも起因して,VUV範囲における同様のプラズマ光源のスペクトルの拡大にはほとんど効果をもたらさない。金属ミラーの反射係数はVUV範囲においては低い(アルミニウムの波長110nmにおいて約20%)。チャンバ内ミラーの存在がCWレーザビームを集束するレンズをチャンバハウジングの外側に配置することをもたらす。これにより,CWレーザビームの集束の鋭さが制限されて光源輝度が低下する。また,ミラーの存在によって出射放射出力の不安定性をもたらす対流を抑制するためのチャンバ内空間の寸法を最小化することができない。上述の設計上の欠点はまた出射ウインドウ方向へのレーザ放射ビームの伝搬にあり,その遮断のためには特別な措置をとる必要がある。
【発明の概要】
【0016】
したがって,上記の欠点がない,VUV範囲におけるより広い放射スペクトルを有する,より高い輝度を持ちかつ非常に安定した光源の作成が必要とされている。
【0017】
この発明の技術的課題および技術的結果は,VUV範囲におけるレーザ励起プラズマ光源の放射スペクトルを拡大(拡張)し(expanding),それらの広帯域放射の高輝度および高安定性を提供することにある。
【0018】
この発明は,本質的に,チャンバからプラズマ放射ビームを出力するためのウインドウの材料として,最小透過境界(minimum boundary of transparency)(λb≒110nm)を有するハイテクノロジー光学材料,すなわちMgF2を使用することにある。これによってレーザ励起プラズマ光源の放射スペクトルをVUV範囲において拡大することができる。
【0019】
チャンバ内のガスは少なくとも99.99%の純度を有する不活性ガスに属するもので,不純物によるVUV放射の自己吸収を排除する。
【0020】
結晶性フッ化マグネシウムは異方性であり弱い複屈折(weak double refraction)を特徴とする。この発明によると,プラズマ放射ビームの複屈折を排除するために,軸対称スリーブの端部の表面およびそれに隣接するMgF2出射ウインドウの表面がMgF2結晶の光軸に本質的に垂直である。
【0021】
光源の高輝度および高安定性を提供するために,少なくとも600Kの高温下および約50atm以上の圧力下において動作する可能性が,ガラスセメントを用いたはんだ付けによってチャンバウインドウをシール(密封)することによって達成される。この発明によると,ガラスセメントはんだ付けのプロセスは,少なくとも400℃の温度下の接合部の単段階アニーリング(single-stage annealing)の適用を含み,これは最大900Kの温度下で接合部をオペレーションする可能性をもたらす。上記ウインドウはスリーブとして設計されたハウジングの別個の金属部品にはんだ付けされる。アニーリングの後,チャンバハウジングの金属部品(metal parts)は,シール接合部の信頼性を低下させることがある別のアニーリングにシール接合部がさらされないようにして,溶接によって接合される。
【0022】
MgF2出射ウインドウの信頼性の高いシールを提供するために,スリーブおよびハウジングは結晶の光軸に垂直な方向における結晶フッ化マグネシウムのCLTEと一致する所定のCLTEを有する鉄ニッケル合金,たとえば47ND合金から作製される。
【0023】
不規則な冷却によって引き起こされるウインドウ割れ(window cracking)を防止するために,チャンバの複雑な形状のハウジング部品にはんだ付けするのに代えて,上記ウインドウ(windows)が約1cm以上の長さの軸対称金属スリーブ(axisymmetric metal sleeves)の端部にはんだ付けされる。はんだ付けは,線熱膨張係数(CLTE)が一致する,重力の観点から最適に配置される密封接合構成要素(the sealed joint components)を用いて実行される。そしてはんだ付けされたウインドウを有するスリーブが外側シーム(outside seam)上においてハウジングに溶接される。別の実施形態では,はんだ付けされたウインドウを有するスリーブがハウジング部品に溶接され,ハウジングが内部チャンバ要素が取り付けられた後に共に恒久的に溶接される。同時に,軸対称スリーブが組み立てられたチャンバ構造体の加熱および冷却の不規則性を相殺する。
【0024】
この発明によると,ウインドウがガス充填チャンバの内側に設置される。一方では密封要素を圧縮するチャンバ内のガスの高圧に起因して密封の信頼性が向上する。他方,その光学素子を含むチャンバ壁がプラズマ放射領域から5mm未満の距離に配置される場合,寸法が最適に最小化されたチャンバを製造する可能性が実現される。これはチャンバ内の対流の乱流を抑制して放射源の高い安定性を提供する。
【0025】
内部チャンバ要素はCWレーザビームを集束するレンズを含む。上記集束レンズは好ましくは非球面設計を有しており,入口ウインドウとプラズマ放射領域との間に配置され,CWレーザビームの可能な限りの鋭い集束に起因して,光源の輝度を改善する。同じ目的のために,たとえば,プラズマ放射領域内に中心を有する球面ミラーの形態の少なくとも一つのレトロリフレクタ(retroreflector)を,出射ウインドウの反対側および/または集束レーザビームの軸上に配置するようにして,チャンバ内に載置することができる。出射ウインドウはまた,出射ウインドウを通過するプラズマ放射ビームの経路を歪ませる収差を低減する機能,および/または出射プラズマ放射ビームの角度開口を低減する機能を有するように設計されたレンズであってもよい。
【0026】
オゾンの生成およびプラズマ放射ビームの吸収を防止するために,110nm以上の波長を有するVUV放射を吸収しない真空またはガス環境をMgF2出射ウインドウの外側に配置することができる。この目的のために,この発明の一実施形態では,チャンバは,MgF2ウインドウを通ってチャンバから出射するプラズマ放射を吸収しない真空またはガス環境で充填された,プラズマ放射ビームが搬送される物体を有する外側チャンバに密封接続することができる。最適温度は600K以上と高いことがあるので,チャンバと外側チャンバとの間の熱ブリッジの機能を有するように作製された分岐管によってチャンバを外側チャンバに密封接続することができる。さらに,上記分岐管は上記外側チャンバの加熱を防止するために冷却ラジエータを装備することができる。
【0027】
この発明の他の態様は,レーザ励起プラズマ放射源の輝度および安定性をさらに高めること,ならびにその性能を改善することを目的とする。
【0028】
この発明の上記および他の目的,利点および特徴は,添付の図面を参照して例として提供される,その実施形態の以下の非限定的な説明においてより明らかになるであろう。
【0029】
この発明の本質は図面によって説明される。
【0030】
図面において,同一の装置要素には同一符号を付す。
【0031】
これらの図面は,この技術的解決策の実施形態の全範囲を網羅するものではなく,さらに,この技術的解決策の実施形態の全範囲を限定するものではなく,この技術的解決策を実施する特定の事例の例示的な例にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】この発明の実施形態による広帯域レーザ励起光源の断面図である。
図2】この発明の実施形態による広帯域レーザ励起光源の断面図である。
図3】広帯域レーザ励起光源の外観図である。
図4】この発明の実施形態による広帯域レーザ励起光源の図である。
図5】この発明の実施形態による広帯域レーザ励起光源の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示すこの発明の実施形態の例では,広帯域レーザ励起光源は高圧のガスによって充填されたチャンバ1を備え,連続波(CW)レーザ4の集束ビーム3によってプラズマ放射領域2がチャンバ内に維持される。チャンバ1は,CWレーザビームをチャンバ内に導入するためのウインドウ6aと,その後の使用が意図されるプラズマ放射ビーム8をチャンバから出力するための少なくとも一つのウインドウ6bとを備える金属ハウジング5を含む。
【0034】
光源はまた,プラズマ点火を開始するための手段を含む。プラズマ点火のための手段としては,プラズマ放射2を持続するように設計された,集束された少なくとも一つのパルスレーザビーム10をチャンバ領域に生成するパルスレーザシステム9を使用することができる。この発明の他の実施形態では,プラズマ点火手段として点火電極(igniting electrodes)を使用することができる。
【0035】
この発明によると,CWレーザビームはダイクロイックミラー11によってチャンバ内に向けられ,ウインドウ6aとプラズマ放射領域2との間においてチャンバ内に配置されたレンズ12を用いて集束され,CWレーザビームのよりシャープな集束が提供され,それによって光源輝度が増加する。レンズ12は,プラズマ点火の開始時にパルスレーザビーム10を集束するために同時に使用することができる。
【0036】
光源輝度は,ウインドウ6aおよび好ましくは非球面設計の集束レンズ12を備える光学系を使用してCWレーザビームの可能な限り最もシャープな集束を保証することによって増加し,これによって上記光学系の全収差が最小化される。集束レンズ12は,好ましくはプラズマ放射領域2から可能な限り最小の距離に位置決めされ,上記距離は5mmを超えない。チャンバ設計を容易にするために,ウインドウ6aは,たとえばプレートまたは球面を有するレンズの形状において簡単な製造技術を使用して作製することができる。非球面レンズ12はその製造を容易にするためにガラスまたは石英から作製することができる。
【0037】
チャンバからプラズマ放射ビーム8を出力する少なくとも一つのウインドウ6bは,結晶フッ化マグネシウム(MgF2)から作製される。MgF2は高い生産性を特徴とすると同時に,光学材料の中で最も短波の透過境界(the shortest-wave boundary of transparency)を持つ。したがって,チャンバを出射するプラズマ放射ビームにおけるスペクトルの短波境界(short-wave boundary)は真空紫外(VUV)領域におけるMgF2透過限界(MgF2 transmission limit)によって決定され,これは約110nmである。さらに,上記ガスは少なくとも99.99%の純度を有する不活性ガスに属するか,またはそれらの混合物であり,ガス不純物によるVUV放射の自己吸収を排除する。これによって光源の放射スペクトルを真空紫外領域に拡大することができる。
【0038】
図1では,プラズマ放射ビーム8は,プラズマ放射領域2からMgF2製ウインドウ6b内に真っ直ぐかつ反射することなく方向づけられる。反射係数がVUV範囲において低い(λ=110nmで20%未満)チャンバ内金属ミラーによってプラズマ放射ビームが形成される光源とは対照的に,これは,プラズマ放射ビームのスペクトルにおけるVUV成分のカットオフまたは抑制がないことを保証する。
【0039】
ウインドウ6a,6bのそれぞれは,チャンバの内部(内側)であって,プラズマ放射領域2に最も近いスリーブ7a,7bの一方の端部に配置される。ウインドウ6a,6bのそれぞれは,スリーブ7a,7bの一方にガラスセメント13を使用してはんだ付けされる。アニーリングのプロセスにおいて行われるウインドウはんだ付けは,光源の高輝度および高安定性を達成するのに最適な900Kまでの温度において,密封接合部(the sealed joint)およびチャンバアセンブリの取扱い可能性を保証する。
【0040】
はんだ付けされたウインドウ6a,6bを備えるスリーブ7a,7bのそれぞれは,ハウジング5の穴(holes)の一つに配置され,外側溶接シーム(溶接線)14上において上記ハウジング5の穴に溶接されている。さらに,軸対称スリーブ6a,6bの内部部分はチャンバの外部部分であり,充填されているガスと接触しない。これにより,チャンバ内にウインドウを配置することに伴って,密封材料(ガラスセメント13)を圧縮するチャンバ内のガスの高圧に起因して,密封接合部の信頼性を向上させ,光学要素の密封を容易にする。
【0041】
この発明によると,スリーブ7bの端部の表面およびそれに隣接するMgF2出射ウインドウ6bの表面がMgF2結晶の光軸に対して本質的に垂直である。ガラスセメント13,スリーブ7a,7bの材料およびハウジング5の線熱膨張係数(CLTE)(coefficients of linear thermal expansion)は,MgF2結晶の光軸に垂直な方向において結晶フッ化マグネシウムのCLTEと一致する。上述のすべては,ウインドウおよびチャンバアセンブリの高い信頼性およびより長い寿命を提供する。好ましくは,スリーブおよびチャンバハウジングは,これらの要件を満たす47ND鉄-ニッケル合金から作製される。
【0042】
チャンバ1は,はんだ付けされた溶接配管を通じて,またはチャンバ内のガスの圧力および/もしくはチャンバ内のガスの組成を制御するように設計されたガスポート15を通じて,高圧ガスによって満たされる。
【0043】
したがって,この発明は,高圧(約50atm)および高温(約900°K)の下で稼働するMgF2ウインドウを備える信頼性の高いチャンバの製造と,VUV範囲の最も広い放射スペクトルを有する,より高輝度かつより安定したCODベースの光源の作成を提供する。
【0044】
図1に示すこの発明の一実施形態によると,真空環境,または110nm以上の波長を有するVUV放射を吸収しないヘリウム,アルゴンといったガス環境が,チャンバからプラズマ放射ビーム8を出力するMgF2出射ウインドウ6bの外側に配置される。この目的のために,チャンバ1を,分岐管16を用いて,プラズマ放射ビーム8が搬送される物体(対象物,オブジェクト)を備える外側チャンバ17に密封接続してもよい。
【0045】
この場合,上記ビームは,オゾンを発生させることなくかつプラズマ放射のVUV成分を損失させることなく,搬送される。
【0046】
連続動作モードにおける高安定性かつ高輝度のプラズマ放射は,チャンバ内のガス圧が約50atm以上であり,チャンバ温度が約600K以上であるときに達成される。高温のチャンバ1に起因して,上記分岐管16はチャンバ1と外側チャンバ17との間の熱ブリッジ(thirmal bridge)の機能を伴って設計される。この目的のために,分岐管16の少なくとも一部が,低い熱伝導率を有するように,たとえば薄いステンレス鋼から作製される。ウインドウ6bから距離があけられた分岐部16の部分を冷却するために,それは外側チャンバ17の加熱を防止するための冷却ラジエータ18として設計される。チャンバ1および外側チャンバ17に対する分岐管16の密封接合部は,少なくとも加熱されたチャンバ1の側において,銅製とすることができる密封ガスケット19を用いて設けることができる。
【0047】
図1に示すこの発明の実施形態では,ウインドウ6a,6bがはんだ付けされた軸対称スリーブ7a,7bはすべて,単一の共通ハウジング部品5に溶接されている。さらに,プラズマ放射領域2は少なくとも2つの穴の交差によって形成されたハウジング5のキャビティ内に配置(位置決め)されており,2つの穴のそれぞれにウインドウ6a,6bの一方を備えるスリーブ7a,7bの一方が位置している。スリーブ7a,7bは可変外径(variable outside diameter)を有しており,ウインドウ6a,6bは小さい方の外径を有するスリーブの端部に配置されている。
【0048】
広帯域レーザ励起光源は以下のように動作する。はじめに,図1に示すように,少なくとも2つのウインドウ6,6bを有する金属ハウジング5を備える光源のチャンバ1が製造される。少なくとも一つのウインドウ6bはMgF2製である。少なくとも一つのウインドウ6aの材料はMgF2のCLTEと一致するCLTEを有するガラスとすることができる。チャンバハウジングは,同じくMgF2のCLTEと一致するCLTEを有する47ND精密合金から製造される。ウインドウ6a,6bのそれぞれは,少なくとも400℃の温度でアニーリングを適用して,ガラスセメント13を用いて,スリーブ7a,7bの一方にはんだ付けされる。ウインドウがはんだ付けされたスリーブのそれぞれは金属ハウジング5の穴に溶接される。チャンバには密封された配管またはガスポート15のいずれかを通じて高圧ガスが充填される。
【0049】
CODプラズマの広帯域放射は,以下のように生成される。CWレーザ4の集束ビーム3がプラズマ放射を維持することを意図してチャンバの領域2内に向けられる。好ましくは,高純度の不活性ガスおよびその混合物が上記ガスとして用いられる。パルスレーザシステム9によって少なくとも一つのパルスレーザビーム10が生成される。CWレーザのビームおよびパルスレーザビームがウインドウ6aを通じてチャンバ1内に導入される。同時に,ウインドウ6aおよび集束レンズ12を備える光学系がレーザビームのシャープな集束を提供する。パルスレーザシステム9が,光学的破壊を提供し,約1018電子/cm3の値を有するCODプラズマの閾値密度を超える密度を有する開始プラズマを生成するために用いられる。上記開始プラズマの濃度(concentration)および体積は,300Wを超えない比較的低い出力で,CWレーザ3の集束ビームによる連続光放電の信頼できる持続に十分である。定常モードでは,少なくとも一つのプラズマ放射ビーム8を使用して連続光放電のプラズマ放射領域2から広帯域高輝度放射が出力される。チャンバを出るプラズマ放射のスペクトルの短波境界は,約110nmであるMgF2透過限界によって決定される。MgF2出射ウインドウ7bを通ってチャンバから出射するビーム8は,たとえば外側チャンバ17内におけるその後の使用が意図される。チャンバ1は,チャンバ1を出射するVUV放射を吸収しない真空またはガス環境が充填された外側チャンバ17に密封接続することができる。動作モードでは,好ましくはチャンバ1の温度は約600K以上である。さらに,チャンバ1と外部チャンバ17との間の断熱が,熱ブリッジ機能を有するように設計され,かつ冷却ラジエータ19を備える分岐管17によって提供される。
【0050】
図2に示すこの発明の実施形態では,チャンバ1は,少なくとも2つのハウジング部品5a,5bを備える溶接金属ハウジング5を含み,ハウジング部品5a,5bのそれぞれに,ウインドウ6a,6bがはんだ付けされたスリーブ7a,7bが溶接されている。
【0051】
マウントまたはケーシング20を備える集束レンズ12およびインサート21を含む内部チャンバ要素が設置された後,ウインドウ6a,6bを有するハウジング部品5a,5bは,溶接シーム22において溶接される。ハウジング部品5a,5bの溶接中,ウインドウ6a,6bと一緒に溶接された軸対称スリーブ7a,7bが組み立てられたチャンバ1の不規則な加熱および冷却を相殺する。
【0052】
光源の溶接されたハウジングの外観図が図3に概略的に示されている。
【0053】
チャンバ設計を単純化するために,溶接部14,22はハウジング5の外面に配置される。
【0054】
図4は別の実施形態を概略的に示すもので,チャンバからプラズマ放射ビーム8を出力するためのMgF2ウインドウ6bは,プラズマ放射ビームの角度開口を低減(減少)させる機能,またはプラズマ放射光線がウインドウ6bを通過するときにその経路を歪ませる収差を低減(減少)させる機能を有するように設計されたレンズである。一般には,ウインドウ6bは,メニスカス(meniscus)または別のタイプの整合レンズとして設計される。これは,放射源の輝度を増加させ,光源の寸法を最小化し,その操作の容易さを改善する。
【0055】
光源輝度を高める同様の目的のために,プラズマ放射領域2に中心を有する球面ミラーとして設計されたレトロリフレクタ(retroreflectors)23,24が,図4の光源チャンバ内に載置されている。レトロリフレクタ23および24は,MgF2ウインドウ6bに対向して配置され,集束レーザビーム3の軸上に配置される。
【0056】
プラズマ放射ビーム中のCWレーザ放射の望ましくない存在を排除するために,プラズマ放射ビーム8の方向は,プラズマ放射領域2を通過したCWレーザ3のビームの方向と異なっている。この前提条件は,図1図2図3図4に示すようにハウジングが立方体または長方形プリズムとして設計されているチャンバ1の設計において容易に実施され,この場合,CWレーザ3の集束ビームおよび各プラズマ放射ビーム8は,プラズマ放射領域2内において交差する互いに直交する軸上に配置される。
【0057】
この発明の好ましい実施形態では,図1図2図4において,CWレーザ3の集束ビームの軸は,垂直上方,すなわち重力に逆らう方向,または垂直に近い方向に向けられている。この提案された設計によってレーザ励起光源放射の出力の最も高い安定性が達成される。これは,典型的には,プラズマ放射領域2が,焦点からCWレーザの集束ビーム3に向かって,CWレーザの集束ビーム3の強度が依然としてプラズマ放射領域2を維持するのに十分である集束レーザビームの断面まで,わずかにシフトされるという事実に起因する。CWレーザの集束ビーム3が下から上に向けられることで,最も低い質量密度を有する最も高温のプラズマを含むプラズマ放射領域2が浮力の影響の下で浮遊する傾向がある。プラズマ放射領域2の上昇は,CWレーザの集束ビーム3の断面がより小さくなり,レーザ放射強度がより高くなる,焦点に最も近い位置で終わる。このことは,一方においてはプラズマ放射の輝度を増加させ,他方においてはプラズマ放射領域に作用する力を均等化して,高輝度レーザ励起光源の放射出力の高い安定性を保証する。
【0058】
レーザ励起光源の出力特性の安定性は,プラズマ放射領域2内で加熱されたガスによる浮力の作用下で得られるパルスのサイズによる影響も受ける。ガスによって得られるパルスおよび対流の乱流は,プラズマ放射領域2がチャンバ上壁に近いほど少なくなる。したがって,光源のより安定した出力特性を保証するために,チャンバハウジングの上壁は,プラズマ放射領域2から5mm以下の距離に配置(位置決め)される。
【0059】
チャンバ内の対流乱流の抑制および光源出力特性の安定性の向上は,チャンバの内部容積を小さくすることによって達成される。この目的のために,この発明の好ましい実施形態では,チャンバ壁,ならびに集束レンズ13およびプラズマ放射ビームを出力するための各ウインドウ6bはプラズマ放射領域から5mm以下の距離に配置(位置決め)される。
【0060】
図5は,この発明による光源のさらなる実施形態を概略的に示している。この実施形態では,チャンバハウジングは,光源の特定の用途に必要とされるいくつかのプラズマ放射ビーム8をチャンバ1から出力するためのいくつかのウインドウ6b,6cを含む。
【0061】
好ましくは,CWレーザ4として,光ファイバ25に放射を出力する高効率ダイオード近赤外レーザが用いられる。光ファイバ25の出射口において,広がったレーザビームが,たとえば集光レンズ(collecting lens)の形態のコリメータ26に向けられる。コリメータ26およびダイクロイック偏向ミラー11の後,CWレーザの広がったビームがチャンバ1内に向けられる。光学系であるウインドウ6aおよび集束レンズ12が,光源の高輝度化を達成するために必要なCWレーザのビーム3のシャープな集束を保証する。
【0062】
図5のこの発明の実施形態では,プラズマの点火開始は,Qスイッチングモードにおいて第1のレーザビーム28を生成する第1のレーザ27と,フリーランニングモードにおいて第2のレーザビーム30を生成する第2のレーザ29とを含む固体レーザシステムによって提供される。能動要素31を有するパルスレーザは,たとえばフラッシュランプ32の形態の光ポンピング源を備え,好ましくはキャビティの共通ミラー33,34を有する。第1のレーザ27はQスイッチ35を備えている。
【0063】
図5では,2つのパルスレーザビーム28,30がチャンバ内に向けられ,プラズマ放射領域2の持続を意図して集束される。第1のレーザビーム28はプラズマ点火を開始することまたは光学的破壊を意図している。第2のレーザビーム30はプラズマを作成することを意図しており,その体積および密度はCWレーザの集束ビーム3によるプラズマ放射領域2の定常維持のために十分に高い。
【0064】
好ましくは,CWレーザの波長λCWは,第1および第2のパルスレーザビーム28,30の波長λ1,λ2と異なる。たとえば,CWレーザの波長はλCW=0.808μmまたは0.976μmとすることができ,パルスレーザは放射波長λ1=λ2=1.064μmを有することができる。これにより,CWレーザ4のレーザビーム36およびパルスレーザビーム28,30を導入するためのダイクロイックミラー11を用いることができる。さらに,チルトミラー37を使用して,図5のパルスレーザビーム28,30を伝達することができる。
【0065】
この発明のこの実施形態は,レーザ点火の信頼性および光源の使いやすさを提供する。プラズマ点火を開始するために電極を使用する光源とは対照的に,チャンバの幾何学的形状を最適化し,チャンバ内の対流の乱流を低減し,光学収差を最小限に抑える可能性が達成される。
【0066】
それ以外では,この実施形態の装置部品は上述の実施形態と同じであるので,図5において同一符号を付し,それらの詳細な説明は省略する。
【0067】
概略的には,提案する発明は,VUVスペクトル領域の放射スペクトルを拡大し,レーザ励起プラズマ放射源の高い輝度および安定性を保証することを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明にしたがって設計される高輝度,高安定性のレーザ励起光源は,分光化学分析,生物学および医学における生物学的物体のスペクトル微量分析,マイクロキャピラリー液体クロマトグラフィー,光リソグラフィプロセスの検査,分光光度法ならびに他の目的のために,様々な投影システム(projection system)において使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5