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  • 特許-マンガン化合物水溶液の回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】マンガン化合物水溶液の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20250221BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20250221BHJP
   C22B 3/38 20060101ALI20250221BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20250221BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250221BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/06 ZAB
C22B3/38
C22B7/00 G
C22B47/00
H01M10/54
B09B5/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021015303
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118636
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下垣内 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】厳 寅男
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-112859(JP,A)
【文献】特開2017-190478(JP,A)
【文献】特開2020-105599(JP,A)
【文献】特開平11-050167(JP,A)
【文献】特開2004-285467(JP,A)
【文献】特開2014-029006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192425(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00- 61/00
B09B 1/00-101/95
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃リチウムイオン電池から得られる電池粉末からマンガン化合物水溶液を回収する方法であって、
前記電池粉末に含まれる有価金属を第1の酸溶液に溶解し、10g/L以上のマンガンと、不純物としてのカルシウムとを含む有価金属溶液を得る工程と、
前記有価金属溶液から、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)を抽出溶媒として、1~2の範囲のpHで第1の溶媒抽出を行う工程と、
前記有価金属溶液から前記第1の溶媒抽出を行った後の抽出残液から、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)を抽出溶媒として、1.4~3の範囲のpHで第2の溶媒抽出を行う工程と、
前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液から、第2の酸溶液を抽出溶媒として逆抽出を行い、逆抽出液としてマンガン化合物水溶液を得ることを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項2】
請求項1記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第1の酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸溶液であることを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第2の酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液であることを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項4】
請求項1~請求項のいずれか1項記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記逆抽出は1未満の範囲のpHで行うことを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液に対し、前記逆抽出に先立って、第3の酸溶液によるスクラビングを行うことを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項6】
請求項記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第3の酸溶液は塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液であることを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【請求項7】
請求項又は請求項記載のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記スクラビングは2~4の範囲のpHで行うことを特徴とするマンガン化合物水溶液の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンガン化合物水溶液の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の普及に伴い、廃リチウムイオン電池からリチウム、マンガン、ニッケル、コバルト等の有価金属を回収し、リチウムイオン電池等の正極活物質として再利用する方法が種々提案されている。本願において、前記廃リチウムイオン電池とは、電池製品としての寿命の消尽した使用済みのリチウムイオン電池、製造工程で不良品等として廃棄されたリチウムイオン電池、製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料等を意味する。
【0003】
従来、廃リチウムイオン電池から前記有価金属を回収する方法として、廃リチウムイオン電池を焙焼後に粉砕するか、粉砕後に焙焼するか等して得られる粉末(以下、電池粉末という)に含まれる有価金属を酸溶液に溶解して得られる有価金属溶液から溶媒抽出により各有価金属を抽出して回収する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電池粉末溶液から前記有価金属としてのマンガンを抽出する抽出溶媒として、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(以下、D2EHPAと略記することがある)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
前記有価金属としてのマンガンは、例えば、前記有価金属溶液からD2EHPAを抽出溶媒として抽出され、得られた抽出液を硫酸で逆抽出した後、得られた逆抽出液の晶析により得られる硫酸マンガン・一水和物等のマンガン化合物として回収され、正極活物質であるマンガン酸リチウムの原料として再利用される。このとき、前記硫酸マンガン・一水和物等のマンガン化合物は前記正極活物質の原料として再利用するために、カルシウムの含有量が例えば50mg/kg未満であることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6714226号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Manuel Aguilar, Jose Luis Cortina, ”Solvent Extraction and Liquid Membranes - Fundamentals and Applications in New Materials”, (米), 2008.11, pp.159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記電池粉末は前記リチウムイオン電池の筐体又は集電体(電極箔)に用いられるアルミニウムに由来すると思われるカルシウムを含んでいる。一方、非特許文献1によれば、D2EHPAはマンガンとカルシウムとを共抽出する傾向がある。
【0009】
この結果、前記有価金属溶液からD2EHPAを抽出溶媒としてマンガンを抽出し、得られた抽出液を硫酸で逆抽出して得られた硫酸マンガンの水溶液(逆抽出液)は、硫酸マンガンに対し50mg/kg以上のカルシウムを含んでいる。従って、前記硫酸マンガンの水溶液の晶析により得られる硫酸マンガン一水和物はカルシウムの含有量が50mg/kg以上になり、リチウムイオン電池の正極活物質用のマンガン酸リチウムの原料として再利用することが難しいという不都合がある。
【0010】
本発明は、かかる不都合を解消して、廃リチウムイオン電池から得られる電池粉末に含まれる有価金属を酸溶液に溶解して得られる有価金属溶液からカルシウムの含有量が低減されたマンガン化合物水溶液を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法は、廃リチウムイオン電池から得られる有価金属を含む電池粉末からマンガン化合物水溶液を回収する方法であって、前記電池粉末を第1の酸溶液に溶解し、10g/L以上のマンガンと、不純物としてのカルシウムとを含む有価金属溶液を得る工程と、前記有価金属溶液から、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)を抽出溶媒として、1~2の範囲のpHで第1の溶媒抽出を行う工程と、前記有価金属溶液から前記第1の溶媒抽出を行った後の抽出残液から、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)を抽出溶媒として、1.4~3の範囲のpHで第2の溶媒抽出を行う工程と、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液から、第2の酸溶液を抽出溶媒として逆抽出を行い、逆抽出液としてマンガン化合物水溶液を回収する工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法は、まず、廃リチウムイオン電池から得られる有価金属を含む電池粉末を第1の酸溶液に溶解し、10g/L以上のマンガンと、不純物としてのカルシウムとを含む有価金属溶液を得る。
【0013】
次に、前記有価金属溶液からD2EHPAを抽出溶媒として第1の溶媒抽出を行う。このとき、D2EHPAはマンガンとカルシウムとを共抽出するので、前記有価金属溶液が10g/L以上のマンガンを含むことにより、前記不純物としてのカルシウムを実質的にすべて有機相に抽出することができ、前記有価金属溶液から前記第1の溶媒抽出を行った後の抽出残液として実質的にカルシウムを含まない有価金属溶液を得ることができる。
【0014】
そこで、次に、前記抽出残液から、D2EHPAを抽出溶媒として第2の溶媒抽出を行うと、実質的にマンガンのみを有機相に抽出することができ、実質的にカルシウムを含まない抽出液を得ることができる。そして、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液から、第2の酸溶液を抽出溶媒として逆抽出を行うことにより、逆抽出液として、第2の酸溶液に含まれる酸の塩としてのマンガン化合物の水溶液であって、実質的にカルシウムを含まないマンガン化合物水溶液を回収することができる。
【0015】
本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第1の酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸溶液を用いることができ、前記第2の酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液を用いることができる。
【0016】
また、本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第1の溶媒抽出は1~2の範囲のpHで行、前記第2の溶媒抽出は1.4~3の範囲のpHで行、前記逆抽出は1未満の範囲のpHで行うことが好ましい。
【0017】
また、本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液は実質的にカルシウムを含まないが、前記電池粉末に含まれるマンガン以外の他の有価金属をわずかに含むことがある。そこで、本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法では、前記逆抽出に先立って、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液に対し、第3の酸溶液によるスクラビングを行うことが好ましい。前記スクラビングを行うことにより、前記第2の溶媒抽出で得られた抽出液からマンガン以外の他の有価金属を除去することができ、次いで前記逆抽出を行うことにより前記逆抽出液としてさらに高純度のマンガン化合物の水溶液を得ることができる。
【0018】
本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記スクラビングに用いる前記第3の酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液を用いることができる。また、本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法において、前記スクラビングは2~4の範囲のpHで行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のマンガン化合物水溶液の回収方法の工程の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のマンガン化合物水溶液の回収方法では、まず、原料1をSTEP1で前処理することにより、電池粉末2を得る。原料1としては、電池製品としての寿命の消尽した使用済みの廃リチウムイオン電池、製造不良等の原因により廃棄された廃リチウムイオン電池、リチウムイオン電池の製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料等を挙げることができる。
【0022】
また、STEP1における前記前処理は、具体的には、例えば、前記廃リチウムイオン電池を塩水中で放電した後、該廃リチウムイオン電池及び前記正極材料等の原料1を、電気炉中200~500℃の範囲の温度、1~60分間の範囲で加熱して焙焼した後、ジョークラッシャー、ハンマーミル等の粉砕装置を用いて粉砕し、目開き0.1~50mmの篩により廃リチウムイオン電池の筐体、集電体(電極箔)等を分離することにより行うことができる。
【0023】
前記前処理の結果として得られた電池粉末2は、主として正極活物質の粉末であり、該正極活物質由来のMn、Ni、Co等の有価金属と、不純物としてのカルシウムとを含んでいる。前記カルシウムは、例えば、前記廃リチウムイオン電池の筐体又は集電体(電極箔)に用いられるアルミニウムに由来し、電池粉末2に混入する。
【0024】
次に、電池粉末2に第1の酸溶液を添加することにより、STEP2で電池粉末2の酸溶解を行う。前記第1の酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸溶液を用いることができ、前記酸溶解の結果、10g/L以上のマンガン(Mn)と、不純物としてのカルシウム(Ca)とを含む有価金属溶液3を得ることができる。
【0025】
次に、有価金属溶液3に抽出溶媒としてリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(以下、D2EHPAと略記することがある)を添加することにより、STEP3でD2EHPAによる第1の溶媒抽出を行う。前記D2EHPAはケロシン等で希釈して用いてもよい。前記第1の溶媒抽出の結果、有機相に第1の抽出液4を得ることができ、水相に第1の抽出残液5を得ることができる。
【0026】
前記D2EHPAはMnとCaとを共抽出するので、前記第1の溶媒抽出は、10g/L以上のMnと、不純物としてのCaとを含む有価金属溶液3に対して、好ましくはpH1~2の範囲で行うことにより、有価金属溶液3に含有される実質的にすべてのCaが有機相に抽出される。前記第1の溶媒抽出は、pH1~1.6の範囲で行うことがより好ましく、pH1.2~1.6の範囲で行うことがさらに好ましく、pH1.3~1.5の範囲で行うことが最も好ましい。
【0027】
この結果、第1の抽出液4は有価金属溶液3に含有される実質的にすべてのCaと、微量のMnとを含んでおり、第1の抽出残液5はMn、Ni、Co等の有価金属を含む一方、実質的にCaを含んでいない。
【0028】
次に、第1の抽出残液5に抽出溶媒としてD2EHPAを添加することにより、STEP4でD2EHPAによる第2の溶媒抽出を行う。前記第2の溶媒抽出の結果、有機相に第2の抽出液6を得ることができ、水相に第2の抽出残液7を得ることができる。
【0029】
第1の抽出残液5は実質的にCaを含まないので、前記第2の溶媒抽出は、第1の抽出残液5に対して、好ましくはpH1.4~3の範囲で行うことにより、第1の抽出残液5に含有される実質的にすべてのMnが有機相に抽出される。前記第2の溶媒抽出は、pH1.4~2.5の範囲で行うことがより好ましく、pH1.4~2.0の範囲で行うことがさらに好ましく、pH1.4~1.8の範囲で行うことが最も好ましい。
【0030】
この結果、第2の抽出液6は第1の抽出残液5に含有される実質的にすべてのMnと、微量のNi、Coとを含む一方、実質的にCaを含んでいない。また、第2の抽出残液7はNi、Co等の有価金属を含む一方、実質的にMnを含んでいない。
【0031】
次に、第2の抽出液6に第3の酸溶液を添加することにより、STEP5で第3の酸溶液によるスクラビングを行う。前記第3の酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液を用いることができる。前記スクラビングの結果、水相にスクラビング抽出液8を得ることができ、有機相にスクラビング残液9を得ることができる。
【0032】
第2の抽出液6は微量のNiとCoとを含むので、前記スクラビングは、第2の抽出液6に対して好ましくはpH2~4の範囲で行うことにより、第2の抽出液6に含有される実質的にすべてのNiとCoとが水相に抽出される。
【0033】
この結果、スクラビング抽出液8は第2の抽出液6に含有される実質的にすべてのNiとCoとを含んでおり、スクラビング残液9は実質的にMnのみを含んでいる。
【0034】
次に、スクラビング残液9に第2の酸溶液を添加することにより、STEP6で第2の酸溶液による逆抽出を行う。前記第2の酸溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される1種の酸溶液を用いることができる。前記逆抽出の結果、水相に逆抽出液としてマンガン化合物水溶液10を得ることができ、有機相に逆抽出残液11を得ることができる。
【0035】
前記逆抽出は、スクラビング残液9に対して、好ましくは1未満のpHの範囲で行うことにより、スクラビング残液9に含有される実質的にすべてのMnが前記第2の酸溶液と反応し、Mnと前記第2の酸溶液として用いられる酸溶液に含まれる酸との塩としてのマンガン化合物が水相に抽出される。
【0036】
この結果、前記逆抽出液として、マンガン化合物水溶液10を得ることができる。一方、逆抽出残液11は、スクラビング残液9から実質的にすべてのMnが抽出された結果、第2の溶媒抽出における抽出溶媒であるD2EHPAのみとなっている。
【0037】
Mn化合物水溶液10に含まれるMn化合物は、例えば、前記第2の酸溶液として用いられる酸溶液が塩酸であるときには塩化マンガン、該酸溶液が硫酸であるときには硫酸マンガン、該酸溶液が硝酸であるときには硝酸マンガンである。
【0038】
本実施形態で回収されるMn化合物水溶液10はそのままの形態、濃縮された溶液の形態、又は、晶析後の一水塩若しくは五水塩等の結晶の形態でマンガン酸リチウム等のマンガン化合物の製造に供することができる。
【0039】
尚、本実施形態では、第2の抽出液6に対してSTEP5でスクラビングを行っているが、スクラビングは行わなくてもよく、この場合は第2の抽出液6に対してSTEP6の逆抽出を行う。
【0040】
また、第1の抽出液4は、微量のMnを含むので、Caを除去した後、STEP3の第1の溶媒抽出に戻すことができる。また、第2の抽出残液7は、Co、Ni抽出工程に供給し、別途、Co、Niを抽出することができ、スクラビング抽出液8は第2の抽出残液7に加えることができる。
【0041】
また、逆抽出残液11は、要すれば精製した後、前記第1の溶媒抽出又は前記第2の溶媒抽出における抽出溶媒として再利用に供することができる。
【0042】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0043】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、リチウムイオン電池の製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料である正極箔(集電体であるアルミニウム箔に正極活物質を含む正極合剤が塗布されたもの)を、電気炉中、空気雰囲気下で400℃の温度に10分間維持して加熱した。次に、前記正極箔をジョークラッシャーを用いて粉砕した後、目開き1mmの篩でアルミニウム箔を分離し、正極粉(電池粉末)を得た。
【0044】
次に、前記正極粉10kgを7.8モル/Lの塩酸に溶解し、有価金属溶液80Lを得た。前記有価金属溶液は、1.7×10-2g/LのCaと、19g/LのCoと、6.9g/LのLiと、25g/LのMnと、14g/LのNiとを含んでいた。
【0045】
次に、前記有価金属溶液75Lに、ケロシンで希釈した1モル/Lのリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(ナカライテスク株式会社製)75Lを添加し、平衡pH1.4に調整して、第1の溶媒抽出を行い、Caを実質的に含まない抽出残液75Lを得た。pH調整は20質量%-水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。前記抽出残液は1.0×10-3g/LのCaと、17g/LのCoと、6.5g/LのLiと、15g/LのMnと、13g/LのNiとを含んでいた。
【0046】
次に、前記抽出残液50Lに、ケロシンで希釈した1モル/Lのリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(ナカライテスク株式会社製)50Lを添加し、平衡pH1.8に調整して、第2の溶媒抽出を行い、抽出液50Lを得た。pH調整は20質量%-水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0047】
次に、前記抽出液50Lに、0.02モル/Lの硫酸50Lを添加し、平衡pH2.6に調整して、スクラビングを行い、スクラビング残液50Lを得た。pH調整は0.02モル/Lの硫酸を用いて行った。
【0048】
次に、前記スクラビング残液50Lに、2.5モル/Lの硫酸6Lを添加して、逆抽出を行い、逆抽出液として硫酸マンガン水溶液6Lを得た。
【0049】
前記硫酸マンガン水溶液は、0.007g/LのCaと、40g/LのMnとを含んでおり、該硫酸マンガン水溶液の晶析により得られる硫酸マンガン一水和物は50mg/kg未満のCaを含むことが見込まれた。
【符号の説明】
【0050】
1…原料、 2…電池粉末、 3…有価金属溶液、 5…抽出残液、 6…抽出液、 10…マンガン化合物水溶液。
図1