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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】充填バルブ装置並びに充填方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/28 20060101AFI20250221BHJP
   B65B 39/02 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B67C3/28
B65B39/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021109491
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006741
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】前野 房枝
(72)【発明者】
【氏名】立石 佳嗣
(72)【発明者】
【氏名】影山 皓平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 慎也
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-010539(JP,A)
【文献】特開2007-069960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0135587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67C 3/28
B65B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填液を貯留するタンクと容器に前記充填液を注入する充填ノズルとの間に配設され、アクチュエータの駆動により、可撓性チューブからなる前記充填液の液流路の開閉操作を行う充填バルブ装置であって、前記アクチュエータの駆動により正逆回転する回転軸に配設され、前記回転軸回りに回転する回転体と、前記回転体から凸設され、前記可撓性チューブを互いの間に位置させるように前記可撓性チューブの両側方に配設された2つの押圧部であって、前記回転体の回転により、前記可撓性チューブの長手方向における上流側位置に接離する上流側押圧部、並びに、下流側位置に接離する下流側押圧部と、前記回転体の回転により、前記上流側押圧部が前記可撓性チューブを押しつける上流側当て面部、並びに、前記下流側押圧部が前記可撓性チューブを押しつける下流側当て面部、を備え、
前記上流側押圧部は、前記アクチュエータの駆動により前記回転体が前記液流路を閉ざす方向へ回転する時に、前記下流側押圧部が前記下流側当て面部に前記可撓性チューブを押しつけるよりも先に、前記上流側当て面部に前記可撓性チューブを押しつけ可能に設けられており、前記アクチュエータの回転を制御することにより、前記上流側押圧部と前記下流側押圧部がともに前記可撓性チューブを押圧しておらずに前記液流路を全開とした状態、前記上流側押圧部のみが前記上流側当て面部との間に前記可撓性チューブを押圧して前記液流路の断面積を小さくした状態、そして、前記上流側押圧部と前記下流側押圧部がともに前記可撓性チューブを押圧してS字状に屈曲させ、前記上流側押圧部の押圧が前記液流路の断面積を小さくしている状態において前記下流側押圧部が前記液流路を全閉とする状態を切替えることを特徴とする充填バルブ装置。
【請求項2】
直管状に伸ばした状態で支承された際の前記可撓性チューブの液流路長と、前記上流側押圧部や前記下流側押圧部の押圧によって屈曲した状態で支承された際の前記可撓性チューブの液流路長との差分を調整するチューブ屈伸長調整部を備えることを特徴とする請求項1に記載の充填バルブ装置。
【請求項3】
前記上流側当て面部は、当て面部基材に配設された弾性部材により、前記可撓性チューブを介した前記上流側押圧部の押圧を緩衝可能に配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充填バルブ装置。
【請求項4】
前記2つの押圧部のそれぞれは、前記回転体の表面に多数設けた配設穴の中から適宜選択した前記配設穴に嵌合させて固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の充填バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填装置において流体を充填する際に可撓性チューブからなる前記流体の液流路を開閉し、前記流体の流れを制御する充填バルブ装置並びに充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充填包装業界等においては、容器へ充填液を充填するために、充填装置の充填液の液流路における充填ノズルの手前にピンチバルブを設け、このピンチバルブを開閉動作のタイミングに合わせて作動させ、可撓性チューブからなる液流路の押圧状態を調整し、充填開始および停止あるいはその充填流量を制御することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-079101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような充填装置においては、例えば、野菜等の具材入りドレッシングのように、固形物が混入している流体を充填液とする場合、ピンチバルブが押圧する液流路内に具材が挟まり、隙間ができてしまうことを原因として、液の流れを完全に止めることができないことがあった(液だれの発生)。
【0005】
また、定量充填のためには、ピンチバルブの開閉動作のタイミング、作動時間、スピード等の設定が肝要である。従来の充填装置においては、絞り弁(スピードコントローラー)を用い、容器に充填する液種が変わる度に、ピンチバルブの開閉動作の作動時間やスピードを変化させ、適切な充填を行わせるために絞り弁の流体の給排量を調整することもなされている。
【0006】
しかしながら、従来の絞り弁の開度調整は、内蔵されているニードル弁の開度を調整者の熟練度に頼りながら手動で行うものであり、数値管理できず、再現性がなく、精度の高い開度調整を行うには非常に困難な作業を伴っていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、可撓性チューブからなる液流路を開閉させる充填バルブの開閉スピードや閉め具合の調整なども容易で、固形物が混入している流体であっても液だれを生じさせず、良好な液体充填を行うことができる充填バルブ装置、並びに、充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の充填バルブ装置は、充填液を貯留するタンクと容器に前記充填液を注入する充填ノズルとの間に配設され、アクチュエータの駆動により、可撓性チューブからなる前記充填液の液流路の開閉操作を行う充填バルブ装置であって、前記アクチュエータの駆動により正逆回転する回転軸に配設され、前記回転軸回りに回転する回転体と、前記回転体から凸設され、前記可撓性チューブを互いの間に位置させるように前記可撓性チューブの両側方に配設された2つの押圧部であって、前記回転体の回転により、前記可撓性チューブの長手方向における上流側位置に接離する上流側押圧部、並びに、下流側位置に接離する下流側押圧部と、前記回転体の回転により、前記上流側押圧部が前記可撓性チューブを押しつける上流側当て面部、並びに、前記下流側押圧部が前記可撓性チューブを押しつける下流側当て面部、を備え、前記上流側押圧部は、前記アクチュエータの駆動により前記回転体が前記液流路を閉ざす方向へ回転する時に、前記下流側押圧部が前記下流側当て面部に前記可撓性チューブを押しつけるよりも先に、前記上流側当て面部に前記可撓性チューブを押しつけ可能に設けられており、前記アクチュエータの回転を制御することにより、前記上流側押圧部と前記下流側押圧部がともに前記可撓性チューブを押圧しておらずに前記液流路を全開とした状態、前記上流側押圧部のみが前記上流側当て面部との間に前記可撓性チューブを押圧して前記液流路の断面積を小さくした状態、そして、前記上流側押圧部と前記下流側押圧部がともに前記可撓性チューブを押圧してS字状に屈曲させ、前記上流側押圧部の押圧が前記液流路の断面積を小さくしている状態において前記下流側押圧部が前記液流路を全閉とする状態を切替えることを特徴とする。
【0009】
また、直管状に伸ばした状態で支承された際の前記可撓性チューブの液流路長と、前記上流側押圧部や前記下流側押圧部の押圧によって屈曲した状態で支承された際の前記可撓性チューブの液流路長との差分を調整するチューブ屈伸長調整部を備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記上流側当て面部は、当て面部基材に配設された弾性部材により、前記可撓性チューブを介した前記上流側押圧部の押圧を緩衝可能に配設されていることを特徴とする。
【0011】
またさらに、前記2つの押圧部のそれぞれは、前記回転体の表面に多数設けた配設穴の中から適宜選択した前記配設穴に嵌合させて固定可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の充填バルブ装置によれば、アクチュエータを駆動させて回転体を回転させることで、可撓性チューブを上流側位置と下流側位置とで二段に押圧し、液流路を閉ざすことができる。そして、この機構であれば、上流側位置と下流側位置との可撓性チューブの押圧程度も2つの押圧部の回転体に対する配設位置関係により調整可能であり、充填液が固形物の混入している流体であっても、上流側位置で可撓性チューブの液流路断面積を小さくして固形物の流れをせき止め、下流側位置で固形物の混入していない状態となった液を完全に止めるような充填も可能となり、液だれも防止することができる。
【0013】
さらに、電動アクチュエータの駆動のタイミング、速度、回転角度(回転方向を含む)を設定することによって、充填ノズルに繋がる液流路の開閉操作を行う充填バルブの開閉速度の調整を高精度で、再現性が高く、短時間において実行することができ、液体の充填を簡便かつ良好に実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の充填バルブ装置によれば、充填装置の可撓性チューブからなる液流路を開閉させる充填バルブの開閉スピードや閉塞具合の調整なども容易で、固形物が混入している流体であっても液だれを生じさせず、良好な液体充填に寄与することができる、という優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る充填バルブ装置の一実施形態の構成と、可撓性チューブの液流路の全開状態を説明する斜視図
図2図1の充填バルブ装置において、可撓性チューブの上流側位置において液流路を閉状態とし、下流側位置は開状態となる、閉動作途中状態(半閉状態)を説明する斜視図
図3図1の充填バルブ装置において、可撓性チューブの液流路の全閉状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る充填バルブ装置1の実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。
【0017】
本実施形態の充填バルブ装置1は、充填液を貯留するタンク(不図示)と、充填部位において容器の上方に位置される充填ノズル(不図示)と、前記タンクと前記充填ノズルとの間を接続させる配管Pからなる液流路を備える液体充填装置の前記配管Pに配設され、前記液流路の開閉操作を行う。
【0018】
本実施形態における充填バルブ装置1は、液流路の一定区間に配設されて配管Pと共に当該液流路を構成する可撓性チューブ2(本実施形態の図1乃至図3においては透明で図示)を備えている。ここで、本実施形態の充填バルブ装置1において、可撓性チューブ2は、ゴム等の可撓性を有する素材により断面円形のチューブ状に形成されており、その一端部は、液流路における上流側に位置する前記タンクに接続された配管Pの端末部に上部接続部3aを介して接続され、他端部は、前記液流路における下流側に位置する前記充填ノズル(配管Pであってもよい)の上端部に下部接続部3bを介して接続されている。
【0019】
具体的には、図1に示すように、上部接続部3aは、液流路の上流側に配設された配管Pの下端部を内周に沿わせて嵌合収納可能とされ大径の管部4と、その大径の管部4の底部に連接され、可撓性チューブ2の上端部をその外周に嵌着可能とされた小径の管部5とを有している。また、下部接続部3bは、液流路の下流側に配設された前記充填ノズルの上端部を内周に沿わせて嵌合収納可能とされた大径の管部4と、その大径の管部4の天部に連接され、可撓性チューブ2の下端部をその外周に嵌着可能とされた小径の管部5とを有している。
【0020】
本実施形態において、上部接続部3aには、直管状に伸ばした状態で支承された際の可撓性チューブ2の液流路長と、後述する2つの押圧部14a,14bの当接と押圧によって屈曲した状態で支承された際の可撓性チューブ2の液流路長との差分を調整するためのチューブ長調整部6を備えている。
【0021】
具体的には、チューブ長調整部6はコイルばねからなり、可撓性チューブ2の上端部をコイルばねの中心径内に位置させた状態で、そのコイルばねの上端部を上部接続部3aの大径の管部4の外周に固定させ、下端部は上部接続部3aの小径の管部5の周囲に配置させて配設されており、上部接続部3aと協働して液流路長との差分を調整する。詳しくは後述する。
【0022】
また、充填バルブ装置1は、可撓性チューブ2の液流路の開閉操作を行う作動手段7を備えている。作動手段7は、本実施形態においては、上下方向に延在させて配設された可撓性チューブ2からなる液流路に沿って、正面を鉛直方向に配置させた取付部材8に配設されている。
【0023】
さらに詳しくは、取付部材8の表側には、可撓性チューブ2の長手方向における上流側位置と下流側位置を支承して、可撓性チューブ2を支承する上部支承部9aと下部支承部9bが形成されている。本実施形態において、上部支承部9aと下部支承部9bはそれぞれU字形の切り欠き10が形成された板状部材とされており、U字形の切り欠き10内に可撓性チューブ2を嵌合させて、それぞれが可撓性チューブ2の上流側位置と下流側位置とを支承している。
【0024】
そして、可撓性チューブ2は、上部接続部3aの小径の管部5の周囲に配置させたチューブ長調整部6としてのコイルばねが、伸縮していない状態でその下端部を上部支承部9aの上面に載置されたときに、直管状に支承される。また、後述する2つの押圧部14a,14bの当接と押圧によって可撓性チューブ2が撓むとき、コイルばねの下端部が上部支承部9aの上面に押し当てられて収縮し、可撓性チューブ2の液流路長を若干長くして略S字状に支承される。
【0025】
本実施形態においては、直管状に支承されている際の可撓性チューブ2の有効な液流路長と、略S字状に屈曲した状態で支承された際の可撓性チューブ2の有効な液流路長とは異なり、略S字状に屈曲した状態の有効な液流路長は若干長くなることは前述のとおりであるが、可撓性チューブ2の液流路長の差分は、液流路の上流側に配設された配管Pの下端部を内周に沿わせて嵌合収納する上部接続部3aの大径の管部4と上流側に配設された配管Pの下端部との嵌合深さを摺動により変動させて調整する。
【0026】
また、取付部材8の裏側には充填バルブ装置1の駆動源となるアクチュエータ12が配設されている。アクチュエータ12の駆動力により正逆方向に回転自在に配設された回転軸(不図示)には、取付部材8の正面の上部支承部9aと下部支承部9bとの間の空間に位置させて、板状の回転体13が、前記回転軸回りに鉛直面内を回転するように支持されている。例えば、アクチュエータ12としては、サーボモータを利用し、そのサーボモータの回転軸に回転体13を支持させることを想定する。
【0027】
そして、回転体13には、正面となる可撓性チューブ2側へ凸設し、可撓性チューブ2の長手方向における上流側位置に接離する上流側押圧部14aと下流側位置に接離する下流側押圧部14bとの2つの押圧部14a,14bが、可撓性チューブ2の長さ方向中間部を互いの間に位置させるようにして配設されている。2つの押圧部14a,14bは、可撓性チューブ2を押圧し、その液流路を閉塞した際の内径(幅)より幅広の当接面を有する必要がある。本実施形態において、2つの押圧部14a,14bのそれぞれは、金釘に代わる接合部材である「だぼ」のような丸棒の部材とされており、回転体13の表面に多数穿設した配設穴15の中から、適宜選択し、その配設穴15に嵌合させて固定することで、その時々の充填液の液種等に応じて液流路の開閉のタイミングや閉塞の具合、押圧の強度などを簡単に調整可能とされている。
【0028】
以下においては、2つの押圧部14a,14bが可撓性チューブ2に対する押圧を強めるときの回転体13の回転方向(図1において時計方向)を「正方向」とし、弱めるときの回転体13の回転方向(図1において反時計方向)を「逆方向」として説明する。
【0029】
取付部材8には、回転体13の正方向への回転により、上流側押圧部14aが可撓性チューブ2を押しつけて液流路を閉ざすための上流側当て面部16aと、下流側押圧部14bが可撓性チューブ2を押しつけて液流路を閉ざすための下流側当て面部16bが形成されている。
【0030】
そして、本実施形態において2つの押圧部14a,14bは回転体13が液流路を閉ざす正方向へ回転する時に、下流側押圧部14bが下流側当て面部16bとの間に可撓性チューブ2を押圧するよりも先に、上流側押圧部14aが上流側当て面部16aとの間に可撓性チューブ2を押圧するような位置関係で、回転体13に設けられている。
【0031】
上流側当て面部16aは、取付部材8に配設された当て面部基材17に設けられた弾性部材18により、可撓性チューブ2を介した上流側押圧部14aの押圧を緩衝可能に配設されている。弾性部材18は、本実施形態においてはコイルばねを用いているが、板ばねであってもよいし、さらには、ばねに限る必要はなく、ゴム、スポンジなどの弾性を有する他の弾性部材を用いてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、回転体13を正逆方向へ回転させるアクチュエータ12としてのモータの駆動を制御する制御部(不図示)を設置している。前記制御部には、流体の種類、充填容量、充填速度等の種々の作業条件に応じて予め適正値とされている開閉度に対応したモータによる数値制御値や動作プログラム等を記憶してあるメモリが設けられている。また、前記制御部には、メモリから読出したモータによる数値制御値や動作タイミング値等をモータに出力する指令出力部が設けられている。さらに、前記制御部には、液体の種類、充填容量、充填速度等の種々の作業条件を入力するタッチパネル等の入力部、入力情報や出力情報等を表示する液晶パネル等の表示部、構成各部を関連動作させるCPU等が設けられている。
【0033】
そして、本実施形態の充填バルブ装置1は、容器に対する流体の充填量を検出するために公知の充填量検出手段(不図示)を備えている。前記制御部は、前記充填量検出手段により検出した充填量に基づき、回転方向、回転量、回転スピードを調整してアクチュエータ12としてのモータを駆動可能とされている。なお、前記制御部は、該充填バルブ装置1が配設される液体充填装置の制御部と共用してもよい。
【0034】
次に、本実施形態の充填バルブ装置1を用いた充填方法について、充填液を固形物が混入しているドレッシングのような流体である場合を実施例として説明する。
【0035】
本実施形態においては、アクチュエータ12としてのモータの駆動を変更することによって回転体13を回転させ、回転体13に配設された上流側押圧部14a並びに下流側押圧部14bと、それぞれに対応する当て面部16a,16bとの間に可撓性チューブ2を押圧することで液流路の開閉状態を調整する。
【0036】
具体的には、前記制御部がアクチュエータ12としてのモータの回転を制御することにより、上流側押圧部14aと下流側押圧部14bがともに可撓性チューブ2を押圧しておらず、液流路が全開となった状態(全開状態:図1)から、上流側押圧部14aのみが上流側当て面部16aとの間に可撓性チューブ2を押圧し、液流路断面積を小さくして、固形物の流れを可撓性チューブ2内の液流路上流側でせき止めた状態(半閉状態:図2)を経て、上流側押圧部14aと下流側押圧部14bがともに可撓性チューブ2を押圧し、可撓性チューブ2内の液流路下流側では可撓性チューブ2内の液流路上流側に形成された隘路を抜けた液体を確実にせき止め、可撓性チューブ2の液流路を全閉の状態(全閉状態:図3)とを切り替える。
【0037】
実際には、充填開始前には、アクチュエータ12としてのモータの回転を制御して、図3のように、回転体13を正方向へ回転させ、上流側押圧部14aと下流側押圧部14bのそれぞれを用いて、対応する当て面部16a,16bとの間に可撓性チューブ2を押圧して液流路を全閉状態とし、充填ノズルへ流体が送り込まれないようにしておく。
【0038】
このとき、可撓性チューブ2は上流側押圧部14aと下流側押圧部14bの押圧により、略S字状に屈曲して液流路を形成することとなる。上部支承部9aと下部支承部9b間において直管状に配設されている可撓性チューブ2を略S字状に屈曲させる際、本実施形態においては、チューブ長調整部6としてのコイルばねの下端部が上部支承部9aの上面に押し当てられて収縮することで、上部接続部3aの大径の管部4と上流側に配設された配管Pの下端部との嵌合深さを浅く変動させつつ、可撓性チューブ2を上部支承部9aと下部支承部9b間に余分に繰り出すことで実行される。
【0039】
この状態において、前記タンクより自重若しくは加圧下で配管Pに供給される流体は、液流路を通して可撓性チューブ2内に流入している。
【0040】
そして、充填開始時には、充填の開始信号に基づき、アクチュエータ12としてのモータの回転を制御し、図1のように、回転体13を逆方向へ回転させ、上流側押圧部14aと下流側押圧部14bのそれぞれによる可撓性チューブ2の押圧を解除し、前記充填ノズルから容器への流体の充填を行う。
【0041】
このとき、可撓性チューブ2は2つの押圧部による押圧が解除されることで、可撓性チューブ2が元来有する撓み復元力と、チューブ長調整部6としてのコイルばねの伸長復元力により、上部支承部9aと下部支承部9b間に直管状に支承されることとなる。
【0042】
そして、前記制御部は、前記充填量検出手段が検出した充填量に基づき、アクチュエータ12としてモータの回転を制御し、図2のように、回転体13を正方向へ回転させ、上流側押圧部14aのみを可撓性チューブ2に当接させ、上流側当て面部16aとの間に押圧させた半閉状態とし、流体中の固形物の流れをせき止め、液体のみを通過させる状態を経て、再び、図3に示すように、回転体13を正方向へさらに回転させて上流側押圧部14aと下流側押圧部14bがともに可撓性チューブ2を押圧し、可撓性チューブ2内の液流路下流側では可撓性チューブ2内の液流路上流側の隘路を抜けた流体を確実にせき止める全閉状態に戻す。
【0043】
ここで、上流側押圧部14aのみを可撓性チューブ2に当接させ、対応する上流側当て面部16aとの間に押圧させた半閉状態から、さらに、下流側押圧部14bをも可撓性チューブ2に当接させ、対応する下流側当て面部16bとの間に可撓性チューブ2を押圧して全閉状態として流体の流れを遮断する際には、上流側押圧部14aは、半閉状態において上流側当て面部16aへ押圧した位置から、回転体13が回転することにより、さらにその回転方向の位置へ移動し、上流側当て面部16aへ可撓性チューブ2を押圧することとなる。本実施形態においては、上流側押圧部14aに対応する上流当て面部16aを、取付部材8に配設された当て面部基材17に対して弾性部材18としてのコイルばねを介して設けたことで、このコイルばねの弾性により、半閉状態から全閉状態での上流側押圧部14aの移動量や押圧の強さを吸収し、調整しつつ、半閉状態の位置から全閉状態の位置へ移動することができる。
【0044】
このように、本実施形態の充填バルブ装置1を用いて行う充填方法は、充填装置の可撓性チューブ2からなる液流路を開閉させる充填バルブの開閉スピードや閉塞具合の調整なども簡便であり、固形物が混入している流体であっても、可撓性チューブ2内の液流路上流側において固形物をせき止めることで、そこを通過する液体を液流路下流側において完全に遮断することができるので、液だれを生じさせず、良好な液体充填に寄与することができる。
【0045】
なお、前述の実施形態においては、上流側押圧部14aの可撓性チューブ2に対する押圧は、固形物の流れをせき止めることができるように、液流路断面積を小さくすることを目的とするものである。つまり、全閉の状態を得られるほどの押圧を要しない。
【0046】
本実施形態の充填バルブ装置1は、前述の実施形態のように、固形物を含む流体の充填に好適な装置であるが、固形物を含まない流体の充填においても、回転体13を回転させるアクチュエータ12の駆動を制御し、いずれか一方の押圧部とそれに対応する当て面部を利用して、前述の全開状態と全閉状態と繰り返すことで適正な充填が可能である。つまり、液種などによっては、下流側押圧部14bと下流側当て面部16bとを使用せずに、上流側押圧部14aと上流側当て面部16aとによる可撓性チューブ2の押圧状態のみを調整し、図1の全開状態と図2の状態類似の全閉状態とを繰り返すことで充填を行うことも可能である。
【0047】
さらに、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【0048】
例えば、2つの押圧部14a,14bは前述の様な丸棒状のものではなく、可撓性チューブ2の外側面を円滑に転動し得る遊転状態に、軸により取り付けられたローラ状のものとし、その軸を回転体13の表面に多数穿設されている配設穴15に嵌合させ、軸支してもよい。このように、2つの押圧部14a,14bを可撓性チューブ2との係合時に自らが回転しつつ摺接するローラ状とすることで、可撓性チューブ2に対する2つの押圧部14a,14bの当接時の摩擦を弱めることができ、可撓性チューブ2の耐久寿命を長くすることができる。
【0049】
本実施形態においては、チューブ長調整部6を上部接続部3aに設けたが、このチューブ長調整部6は、下部接続部3bに設けてもよいし、さらには、チューブ長調整部6の構成も本実施形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 充填バルブ装置
2 可撓性チューブ
3a 上部接続部
3b 下部接続部
4 大径の管部
5 小経の管部
6 チューブ長調整部
7 作動手段
8 取付部材
9a 上部支承部
9b 下部支承部
10 切り欠き
12 アクチュエータ(モータ)
13 回転体
14a 上流側押圧部
14b 下流側押圧部
15 配設穴
16a 上流側当て面部
16b 下流側当て面部
17 当て面部基材
18 弾性部材
図1
図2
図3