(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】樹脂製継手付きパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/44 20060101AFI20250221BHJP
F16L 47/24 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B29C65/44
F16L47/24
(21)【出願番号】P 2023178177
(22)【出願日】2023-10-16
【審査請求日】2024-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】前田 龍一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-170262(JP,A)
【文献】特開昭59-026213(JP,A)
【文献】特開昭62-118187(JP,A)
【文献】特開平04-362395(JP,A)
【文献】特許第7060904(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
F16L 47/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製パイプ
と、前記金属製パイプに接合された樹脂製継手
と、前記樹脂製継手に装着された補強部材と、を備えた樹脂製継手付きパイプの製造方法であって、
前記金属製パイプの端部の外面を粗面化処理する前処理工程と、
前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、粗面化処理された前記端部に、筒状の
前記樹脂製継手
の軸方向の一端から途中部までのパイプ装着部を装着する第1装着工程と、
前記金属製パイプに前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部を装着した状態で、
且つ、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記金属製パイプと前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部との装着部を加熱する加熱工程と、
前記金属製パイプと前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部との装着部を加熱した状態で、
且つ、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部を
前記パイプ装着部の外側から前記金属製パイプの内側に向けて、押圧する押圧工程と、
前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部を前記金属製パイプに押圧した後、
前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記樹脂製継手を冷却する冷却工程と、
前記樹脂製継手を冷却した後、前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外面部に
前記補強部材を装着する第2装着工程と、
を備え、
前記補強部材の線膨張係数が、前記樹脂製継手の線膨張係数より小さいことを特徴とする、樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程において、
加熱装置により前記金属製パイプを加熱することで、前記金属製パイプと前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部との装着部を加熱することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【請求項3】
前記補強部材は、筒状部材であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【請求項4】
前記第2装着工程において、
前記補強部材を、前記樹脂製継手の径方向に、前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部に向けて押圧して、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手の外面とを密着させることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【請求項5】
前記第2装着工程において、
前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外側に前記補強部材が配置されるように、前記樹脂製継手の外径以下の内径を有する前記補強部材を、前記樹脂製継手の軸方向から前記樹脂製継手に押し込んで、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外面とを密着させることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外面は、軸方向の
前記一端に近付くにつれて外径が大きくなるテーパー状の部分を有し、
前記補強部材は、筒状部材であり、
前記補強部材の内面は、軸方向の一端に近付くにつれて内径が大きくなるテーパー状の部分を有し、
前記第2装着工程において、
前記樹脂製継手の軸方向において、前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外径が大きくなる方向と、前記補強部材の内径が大きくなる方向とを同じ方向とし、且つ、前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外側に前記補強部材が配置されるように、前記補強部材を前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部に向けて押し込んで、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手
の前記パイプ装着部の外面とを密着させることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂製継手付きパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製継手付きパイプを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、異種材料を高い接合強度または高いシール性で接合する方法が提案されている。例えば、特許文献1に、金属成形体と樹脂成形体とを接合する方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、金属成形体を粗面化し、粗面化した第1粗面化部に樹脂成形体を圧着させた状態で、第1粗面化部に対応する樹脂成形体の面を融着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異種材料の接合は、異種材料のパイプを接続する場合にも利用される。例えば、金属製パイプと樹脂製パイプとを接続する場合、樹脂製継手を使用することがある。この場合、樹脂製継手が、異種材料である金属製パイプと接合される。
【0005】
上記のような構成は、例えば、車両内で使用する車両用パイプにも採用される可能性がある。その場合、車両内は、高温であり、且つ、パイプ内を、車両用エアコン(エアーコンディショナー)の冷媒などの流体が、高圧で、長期に亘って流れる。このような厳しい状況でも、樹脂製継手と金属製パイプといった異種材料の接合部で、高いシール性が維持されることが望ましい。
【0006】
本願発明者らは、引用文献1に記載された方法のように、金属製パイプを粗面化し、粗面化した部分に樹脂製継手を装着することにより、樹脂製継手付きパイプを製造した。そして、樹脂製継手付きパイプを用いて、車両内の厳しい状況を想定した実験を行った。その結果、パイプを流れる流体が、樹脂製継手と金属製パイプとの間から漏れることが分かった。
【0007】
本発明は、シール性が高い樹脂製継手付きパイプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される樹脂製継手付きパイプの製造方法は、金属製パイプと、前記金属製パイプに接合された樹脂製継手と、前記樹脂製継手に装着された補強部材と、を備えた樹脂製継手付きパイプの製造方法であって、前記金属製パイプの端部の外面を粗面化処理する前処理工程と、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、粗面化処理された前記端部に、筒状の前記樹脂製継手の軸方向の一端から途中部までのパイプ装着部を装着する第1装着工程と、前記金属製パイプに前記樹脂製継手の前記パイプ装着部を装着した状態で、且つ、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記金属製パイプと前記樹脂製継手の前記パイプ装着部との装着部を加熱する加熱工程と、前記金属製パイプと前記樹脂製継手の前記パイプ装着部との装着部を加熱した状態で、且つ、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部を前記パイプ装着部の外側から前記金属製パイプの内側に向けて、押圧する押圧工程と、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部を前記金属製パイプに押圧した後、前記樹脂製継手に前記補強部材が装着されていない状態で、前記樹脂製継手を冷却する冷却工程と、前記樹脂製継手を冷却した後、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外面部に前記補強部材を装着する第2装着工程と、を備え、前記補強部材の線膨張係数が、前記樹脂製継手の線膨張係数より小さい。
【0009】
本明細書において、「パイプ」とは、筒状の部材である。本明細書において、「パイプ」には、「パイプ」と呼ばれるものに加え、「ホース」と呼ばれるものも含まれ、「チューブ」と呼ばれるものも含まれる。
【0010】
上記方法によると、樹脂製継手を加熱、押圧および冷却することで、前処理工程で処理された金属製パイプの端部に樹脂製継手を密着させた後、補強部材を樹脂製継手に装着する。樹脂製継手を金属製パイプの端部に密着させるまでの工程で、補強部材を装着しない。これにより、高温下で樹脂製継手付き金属製パイプを使用したときに樹脂製継手が膨張し、その後、樹脂製継手が収縮しても、樹脂製継手と補強部材との間に隙間が殆ど生じない。さらに、補強部材の線膨張係数が、樹脂製継手の線膨張係数より小さいため、高温下での樹脂製継手の外側への膨張が、補強部材により抑えられる。そのため、樹脂製継手と補強部材との間に隙間が殆ど生じない。これらにより、高温下で樹脂製継手が軟化しても、樹脂製継手が金属製パイプから剥離することを抑制できる。これにより、金属製パイプ内を流れる流体が、金属製パイプと樹脂製継手との間から漏れにくい。
上記より、金属製パイプと樹脂製継手とのシール性が高い樹脂製継手付きパイプが得られる。
【0011】
前記加熱工程において、加熱装置により前記金属製パイプを加熱することで、前記金属製パイプと前記樹脂製継手の前記パイプ装着部との装着部を加熱してもよい。
【0012】
上記方法により、金属製パイプと樹脂製継手のパイプ装着部との装着部を加熱しつつ、樹脂製継手の金属製パイプと対向する部分以外の部分、例えば、樹脂製継手の外面部および他のパイプが接続される部分への加熱を抑制することができる。
【0013】
前記補強部材は、筒状部材であってもよい。
【0014】
補強部材が筒状部材である場合、樹脂製継手の外面が補強部材に覆われる。これにより、樹脂製継手が金属製パイプからより剥離しにくい。そのため、樹脂製継手と金属製パイプとのシール性がより高まる。
【0015】
前記第2装着工程において、前記補強部材を、前記樹脂製継手の径方向に、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部に向けて押圧して、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手の外面とを密着させてもよい。
【0016】
このような簡易な方法により、樹脂製継手が金属製パイプから剥離しにくい構成にすることができる。
【0017】
別の観点として、前記第2装着工程において、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外側に前記補強部材が配置されるように、前記樹脂製継手の外径以下の内径を有する前記補強部材を、前記樹脂製継手の軸方向から前記樹脂製継手に押し込んで、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外面とを密着させてもよい。
【0018】
このような簡易な方法により、樹脂製継手が金属製パイプから剥離しにくい構成にすることができる。
【0019】
別の観点として、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外面は、軸方向の前記一端に近付くにつれて外径が大きくなるテーパー状の部分を有し、前記補強部材は、筒状部材であり、前記補強部材の内面は、軸方向の一端に近付くにつれて内径が大きくなるテーパー状の部分を有し、前記第2装着工程において、前記樹脂製継手の軸方向において、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外径が大きくなる方向と、前記補強部材の内径が大きくなる方向とを同じ方向とし、且つ、前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外側に前記補強部材が配置されるように、前記補強部材を前記樹脂製継手の前記パイプ装着部に向けて押し込んで、前記補強部材の内面と前記樹脂製継手の前記パイプ装着部の外面とを密着させてもよい。
【0020】
このような簡易な方法により、樹脂製継手が金属製パイプから剥離しにくい構成にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
上記方法によると、シール性が高い樹脂製継手付きパイプの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】樹脂製継手付きパイプと他のパイプとの一例の正面図である。
【
図2】樹脂製継手付きパイプと他のパイプとの一例の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の前処理工程を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の前処理工程後を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の第1装着工程を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の加熱工程を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の押圧工程を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の冷却工程を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の冷却工程後を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の第2装着工程を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の冷却工程後を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の第2装着工程を示す図である。
【
図13】第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の前処理工程後を示す図である。
【
図14】第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の加熱工程を示す図である。
【
図15】第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の押圧工程を示す図である。
【
図16】第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の冷却工程後を示す図である。
【
図17】第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法の第2装着工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1に、樹脂製継手付きパイプ1と他のパイプ2とが接続された状態を示している。樹脂製継手付きパイプ1およびパイプ2は、例えば、車両用パイプとして用いられる。車両用パイプとして、例えば、エアーコンディショニングパイプ、燃料パイプなどが挙げられる。
【0024】
樹脂製継手付きパイプ1は、
図1および
図2に示すように、金属製パイプ11と、樹脂製継手12と、補強部材13とを有する。
図2に示すように、金属製パイプ11とパイプ2とが連通している。樹脂製継手12が、金属製パイプ11とパイプ2とを接続している。パイプ2は、例えば、樹脂製のパイプである。
【0025】
金属製パイプ11は、筒状である。金属製パイプ11は、例えば、円筒状でもよく、角筒状でもよい。
図1に示す金属製パイプ11は湾曲しているが、金属製パイプ11の形状は変更可能である。
【0026】
「筒状」とは、軸方向に貫通した孔が存在することである。軸方向に貫通した孔は、軸方向の一端から他端まで同じ形状でもよく、軸方向の一部と他の部分とが異なる形状でもよい。「筒状」の部材は、軸方向の一端から他端まで外形および内形が同じ部材でもよく、軸方向の一部と他の部分とで外形および/または内形が異なる部材でもよい。例えば、「円筒状」とは、軸方向の一端から他端まで外径が同じでもよく、軸方向の一端から他端まで内径が同じでもよく、軸方向の一部の外径が他の部分の外径と異なってもよく、軸方向の一部の内径が他の部分の内径と異なっていてもよい。
【0027】
金属製パイプ11の材質は、金属である。金属製パイプ11の材質として、例えば、鉄、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金またはステンレス鋼が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
樹脂製継手12は、
図2に示すように、筒状である。「筒状」の定義は、金属製パイプ11で説明した「筒状」と同様である。樹脂製継手12は、例えば、円筒状でもよく、角筒状でもよい。金属製パイプ11が円筒状である場合、樹脂製継手12は円筒状である。金属製パイプ11が角筒状である場合、樹脂製継手12は角筒状である。
【0029】
樹脂製継手12の材質は、例えば、熱可塑性樹脂、エラストマーなどである。熱可塑性樹脂として、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)が挙げられる。エラストマーとして、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。樹脂製継手12には、充填剤、難燃剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0030】
図1および
図2に示す補強部材13は、
図2に示すように、筒状である。「筒状」の定義は、金属製パイプ11で説明した「筒状」と同様である。補強部材13は、例えば、円筒状でもよく、角筒状でもよい。樹脂製継手12が円筒状である場合、補強部材13は円筒状である。樹脂製継手12が角筒状である場合、補強部材13は角筒状である。
【0031】
補強部材13の線膨張係数は、樹脂製継手12の線膨張係数より小さい。線膨張係数は、熱膨張係数と称されることもある。補強部材13の線膨張係数が、樹脂製継手12の線膨張係数より小さいことを満たす限り、補強部材13の材質は特に限定されない。補強部材13の材質は、例えば、金属でもよく、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよく、エラストマーでもよい。例えば、補強部材13の材質が金属である場合、補強部材13の線膨張係数が、樹脂製継手12の線膨張係数より小さい。金属として、例えば、金属製パイプ11の材質として例示した金属が挙げられる。補強部材13の線膨張係数が、樹脂製継手12の線膨張係数より小さいことを満たす限り、補強部材13の材質は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはエラストマーなどでもよい。
【0032】
次に、樹脂製継手付きパイプ1の製造方法を説明する。なお、
図1では、パイプ2が樹脂製継手12に接続されているが、パイプ2の樹脂製継手12への接続は、樹脂製継手付きパイプ1を製造する前に行ってもよく、樹脂製継手付きパイプ1の製造中に行ってもよく、樹脂製継手付きパイプ1の製造後に行なってもよい。
以下では、樹脂製継手付きパイプ1を製造した後、パイプ2を樹脂製継手12へ接続する場合について説明する。
【0033】
[前処理工程]
図3に示すように、金属製パイプ11を準備する。金属製パイプ11の端部11Eの外面を粗面化処理する。粗面化処理は、公知の粗面化処理を用いてよい。例えば、レーザー加工、研磨加工、ブラスト処理、切削加工、転造加工またはローレット加工などにより、粗面化処理をしてもよい。
【0034】
図4に、粗面化処理後の金属製パイプ11を示している。金属製パイプ11の端部11Eの外面は凹凸状である。粗面化処理後の金属製パイプ11の端部11Eの粗度は、特に限定されない。例えば、表面粗さRzが約100μmでもよい。Rzとは、最大高さ粗さである。最大高さ粗さ(Rz)は、粗面化処理された端部11Eにおいて、最も高い山の高さ(Rp)と最も低い谷の深さ(Rv)との和である。
【0035】
[第1装着工程]
金属製パイプ11の端部11Eに、樹脂製継手12を装着する。
図5に、樹脂製継手12が金属製パイプ11の端部11Eに装着された状態を示している。樹脂製継手12の内側に、金属製パイプ11の端部11Eが存在する。樹脂製継手12が金属製パイプ11の端部11Eに装着された状態では、端部11Eの外面と樹脂製継手12の内面との間に隙間が存在する。
【0036】
[加熱工程]
樹脂製継手12が金属製パイプ11の端部11Eに装着された状態で、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱する。「金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部」とは、「金属製パイプ11の樹脂製継手12と対向する部分」と「樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する部分」とである。「金属製パイプ11の樹脂製継手12と対向する部分」とは、「金属製パイプ11の端部11Eの外面およびその付近」である。「樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する部分」とは、「樹脂製継手12において、金属製パイプ11の端部11Eと対向する内面およびその付近」である。
【0037】
金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱する方法は、特に限定されない。例えば、
図6に示すように、金属製パイプ11において、端部11Eから離れた部分を加熱装置により加熱する。加熱された部分から金属製パイプ11の端部11Eに熱が伝わることで、金属製パイプ11の端部11Eが加熱される。金属製パイプ11の端部11Eから、端部11Eに対向する樹脂製継手12の内面およびその周辺に熱が伝わる。これにより、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部が加熱される。
【0038】
加熱方法および加熱装置は、特に限定されない。一般的な加熱方法および加熱装置を採用するとよい。加熱装置は、例えば、ヒーターでもよく、バーナーでもよく、高周波誘導加熱装置でもよい。
【0039】
「金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱する」ことは、上記のように、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱装置により直接加熱しない場合を含む。
【0040】
金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱することにより、樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する内面およびその周辺が、樹脂製継手12の融点以上または軟化点以上の温度になることで、溶融または軟化する。
【0041】
なお、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱したとき、樹脂製継手12の外面およびその周辺と、樹脂製継手12における
図2に示す他のパイプ2が接続される部分とは、加熱されないこと、または、加熱されるとしても、樹脂製継手12の軟化点未満であることが好ましい。これにより、樹脂製継手12の外面、および、樹脂製継手12における
図2に示す他のパイプ2が接続される部分とを、加熱前と同様な形状に維持できる。例えば、
図6に示す方法により、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱しつつ、樹脂製継手12の外面およびその周辺と、樹脂製継手12における
図2に示す他のパイプ2が接続される部分と、への加熱を抑制することができる。
【0042】
[押圧工程]
金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部が加熱された状態で、樹脂製継手12を、金属製パイプ11の端部11Eに向けて押圧する。「金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部が加熱された状態」とは、樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する内面およびその周辺が、樹脂製継手12の融点付近または軟化点付近より高温になるまで加熱された状態である。加熱工程中に、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部が加熱された状態になるため、加熱工程中に、樹脂製継手12を、金属製パイプ11の端部11Eに向けて押圧する。
図7に示すように、樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する部分が、金属製パイプ11の端部11Eの凹に入り込む。これにより、樹脂製継手12と金属製パイプ11の端部11Eとの間に隙間が殆ど存在しない。樹脂製継手12が、金属製パイプ11に密着している。
【0043】
[冷却工程]
押圧工程後、樹脂製継手12を冷却する。例えば、
図8に示すように、冷却ガスを、金属製パイプ11の内側に流してもよい。この方法によると、先ず、金属製パイプ11が冷やされる。冷やされた金属製パイプ11から、樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する部分へ冷却熱が伝わることにより、樹脂製継手12の金属製パイプ11と対向する部分が冷却される。これにより、樹脂製継手12は、金属製パイプ11の端部11Eの凹凸に入り込んだ状態で硬化する。金属製パイプ11の端部11Eとの間に隙間が殆ど存在しない。
【0044】
冷却方法は、上記方法に限られない。例えば、樹脂製継手12の外側から、冷風を吹き付けることにより、樹脂製継手12を冷却してもよい。また、金属製パイプ11および樹脂製継手12を放置することにより、樹脂製継手12を周囲温度まで冷却してもよい。
【0045】
[第2装着工程]
冷却工程後、補強部材13を樹脂製継手12に装着する。装着方法は、特に限定されない。例えば、
図9に示すような筒状の補強部材13を樹脂製継手12の外側に位置させる。
図10に示すように、補強部材13を、外側から、樹脂製継手12に向けて押圧する。樹脂製継手12と補強部材13との間に隙間が殆ど存在しない状態で密着させる。補強部材13が、樹脂製継手12から外れない。
【0046】
上記方法により、樹脂製継手付きパイプ1が得られる。樹脂製継手12に、
図2に示すパイプ2を接続することにより、金属製パイプ11とパイプ2とが接続された構造が得られる。パイプ2が樹脂製パイプである場合、例えば、樹脂製継手12とパイプ2とをレーザー溶着などにより接続する。
【0047】
上記方法によって樹脂製継手付きパイプ1を製造することにより、以下の効果が得られる。
【0048】
上記方法によると、粗面化処理された金属製パイプ11の端部11Eの凹みに、樹脂製継手12が入り込んだ状態で冷却し、樹脂製継手12を金属製パイプ11に密着させた後、補強部材13を樹脂製継手12に装着する。樹脂製継手12を金属製パイプ11の端部11Eに密着させるまでの工程で、補強部材13を樹脂製継手12に装着しない。これにより、高温下で樹脂製継手付きパイプ1を使用したときに樹脂製継手12が膨張し、その後、樹脂製継手12が収縮しても、樹脂製継手12と補強部材13との間に隙間が殆ど生じない。さらに、補強部材13の線膨張係数が、樹脂製継手12の線膨張係数より小さいため、高温下での樹脂製継手12の外側への膨張が、補強部材13により抑えられる。そのため、樹脂製継手12と補強部材13との間に隙間が殆ど生じない。これにより、樹脂製継手12と金属製パイプ11との間にも隙間が殆ど生じない。これらにより、高温下で樹脂製継手12が軟化しても、樹脂製継手12が金属製パイプ11から剥離することを抑制できる。これにより、金属製パイプ11内を流れる流体が、金属製パイプ11と樹脂製継手12との間から漏れることを抑制できる。
【0049】
また、後述する実験から、高温下で、金属製パイプ11に、高圧で流体を流す厳しい条件でも、金属製パイプ11内を流れる流体が、金属製パイプ11と樹脂製継手12との間から漏れることを抑制できることが分かった。
【0050】
上記より、本実施形態に係る方法によると、金属製パイプ11と樹脂製継手12とのシール性が、従来より高い樹脂製継手付きパイプ1を製造することができる。
【0051】
また、上記方法によると、
図6に示すように、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱した状態で、
図7に示すように、樹脂製継手12を金属製パイプ11に押圧する。樹脂製継手12の押圧を加熱中に行うことにより、金属製パイプ11と樹脂製継手12との密着性が高まる。
【0052】
また、
図10に示すように、補強部材13を樹脂製継手12に向けて押圧するという、簡易な方法により、補強部材13と樹脂製継手12との間に隙間が殆ど生じないように密着することができる。このような簡易な方法により、樹脂製継手12が金属製パイプ11から剥離しにくい構成にすることができる。
【0053】
また、金属製パイプ11を流れる流体は、
図10に示す金属製パイプ11の端部11Eの先端から、金属製パイプ11と樹脂製継手12との間に流れ込みやすい。したがって、金属製パイプ11の端部11Eの先端付近では、樹脂製継手12が最も剥離しやすい。
図10に示すように、金属製パイプ11の端部11Eの先端およびその付近の外側に、樹脂製継手12と補強部材13とが存在する。そのため、樹脂製継手12が剥離しやすい、金属製パイプ11の端部11Eの先端およびその付近で、樹脂製継手12が金属製パイプ11から剥離しにくい。
【0054】
また、補強部材13が筒状であるため、樹脂製継手12の外面に補強部材13が存在する。これにより、金属製パイプ11と樹脂製継手12とのシール性をより高めることができる。また、樹脂製継手12が剥離しやすい、金属製パイプ11の端部11Eの先端およびその付近の外面に補強部材13が存在する。そのため、樹脂製継手12が剥離しやすい部分でも、樹脂製継手12が金属製パイプ11から剥離しにくい。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法について、
図11および
図12を参照しつつ以下に説明する。第2実施形態において、第1実施形態と異なる点は、主に、第2装着工程である。なお、上述した第1実施形態と同様な工程については、その説明を適宜省略する。また、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0056】
前処理工程、第1装着工程、加熱工程および冷却工程は、第1実施形態の前処理工程、第1装着工程、加熱工程および冷却工程と同様である。
図11に、冷却工程後の金属製パイプ11および樹脂製継手12と、補強部材213とを示している。
【0057】
補強部材213は、筒状の部材である。補強部材213の先端部は、内側に向かって凸状になっている。補強部材213の先端部以外の部分の内径は、樹脂製継手12の外径以下になっている。
【0058】
[第2装着工程]
図12に示すように、樹脂製継手12の外側に補強部材213が配置されるように、補強部材213を、樹脂製継手12の軸方向から樹脂製継手12に押し込む。そして、補強部材213の先端部を樹脂製継手12の一端に引っ掛けて位置決めをすることにより、補強部材213が樹脂製継手12に装着される。樹脂製継手12と補強部材213との間に隙間が殆ど存在しない状態で密着させる。補強部材213が、樹脂製継手12から外れない。
【0059】
上記方法により、第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、シール性が高い樹脂製継手付きパイプが得られる。また、樹脂製継手12の外径以下の内径を有する補強部材213を、樹脂製継手12の軸方向から樹脂製継手12に押し込むという簡易な方法により、樹脂製継手12が金属製パイプ11から剥離しにくくすることができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る樹脂製継手付きパイプの製造方法について、
図13~
図17を参照しつつ以下に説明する。第3実施形態において、第1実施形態と異なる点は、主に、第2装着工程である。なお、上述した第1実施形態と同様な工程については、その説明を適宜省略する。また、上述した第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0061】
前処理工程は、第1実施形態の前処理工程と同様である。
図13に、前処理工程後の金属製パイプ11と、樹脂製継手312とを示している。
【0062】
樹脂製継手312は、
図13に示すように、軸方向の一端に近付くにつれて、外面の外径が大きくなるテーパー状の部分を有する。樹脂製継手312のテーパー状の部分の内側に、金属製パイプ11が配置される。
【0063】
以下で説明する第1装着工程、加熱工程、押圧工程および冷却工程は、第1実施形態の第1装着工程、加熱工程、押圧工程および冷却工程と同様である。以下では、これらの工程を簡単に説明する。
【0064】
[第1装着工程]
金属製パイプ11の端部11Eに、樹脂製継手312を装着する。
図14に、樹脂製継手312が、金属製パイプ11の端部11Eに装着された状態を示している。
図14に示すように、樹脂製継手312のテーパー状の部分は、金属製パイプ11の軸方向において、金属製パイプ11の端部11Eの一端から遠ざかるにつれて、外面が大きくなっている。
【0065】
[加熱工程]
樹脂製継手312が、金属製パイプ11の端部11Eに装着された状態で、
図14に示すように、金属製パイプ11と樹脂製継手
312との装着部を加熱する。
【0066】
[押圧工程]
加熱工程中に、樹脂製継手312を、金属製パイプ11の端部11Eに向けて押圧する。樹脂製継手312を押圧するとき、
図15に示すように、樹脂製継手312のテーパー状の外面の形状が維持されるように、樹脂製継手312を押圧する。樹脂製継手312を押圧することにより、樹脂製継手312と金属製パイプ11の端部11Eとの間に隙間が殆ど存在しない。樹脂製継手12が、金属製パイプ11に密着している。
【0067】
[冷却工程]
押圧工程後、樹脂製継手312を冷却する。
【0068】
図16に、冷却工程後の金属製パイプ11および樹脂製継手312と、補強部材313とを示している。補強部材313は、筒状の部材である。補強部材313の内面は、軸方向の一端に近付くにつれて内径が大きくなるテーパー状である。
【0069】
[第2装着工程]
図16に示すように、樹脂製継手312の軸方向において、樹脂製継手312の外径が大きくなる方向と、補強部材313の内径が大きくなる方向を同じ方向とする。この状態から、樹脂製継手312の外側に補強部材313が配置されるように、補強部材313を樹脂製継手312に向けて押し込む。補強部材313の内面が、樹脂製継手312の外面に押し付けられることにより、樹脂製継手312と補強部材313との間に隙間が殆ど存在しない状態で密着させる。補強部材313が、樹脂製継手312から外れない。
【0070】
上記方法により、第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、シール性が高い樹脂製継手付きパイプが得られる。また、補強部材313を樹脂製継手312に向けて押し込むという簡易な方法により、樹脂製継手312が金属製パイプ11から剥離しにくくすることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を制限するものではなく、本明細書の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0072】
(実験)
第1実施形態で説明した樹脂製継手付きパイプの製造方法により、樹脂製継手付きパイプを製造した。また、第1実施形態で説明した方法の一部を変えて、樹脂製継手付きパイプを製造した。表1および以下に、試験条件および試験結果を示している。
【0073】
金属製パイプとして、アルミニウム製のパイプを使用した。樹脂製継手として、ポリアミド66製のパイプを使用した。補強部材として、第1実施形態の
図9および
図10に示す形状の補強部材を使用した。補強部材として、アルミニウム製の補強部材を使用した。
【0074】
表1に示すように、No.2、No.4およびNo.6では、金属製パイプに前処理工程を行った。前処理工程では、レーザー加工により金属製パイプの端部の外面を粗面化処理した。粗面化処理された金属製パイプの端部の外面の表面粗さRzは、約100μmであった。No.1、No.3およびNo.5では、金属製パイプに前処理工程を行わなかった。
【0075】
表1に示すように、No.1およびNo.2では、樹脂製継手に補強部材を装着しなかった。No.3~6では、樹脂製継手に補強部材を装着したが、補強部材を装着するタイミングが異なる。No.3およびNo.4では、第1実施形態で説明したように、冷却工程後、補強部材を樹脂製継手に装着した。No.5およびNo.6では、加熱工程のときに、補強部材を樹脂製継手の外側に位置させ、補強部材の外側から補強部材を押圧することにより、樹脂製継手を金属製パイプに向けて押圧した。このように、No.5およびNo.6では、加熱工程および押圧工程と、第2装着工程とを同時に行った。その後、樹脂製継手を冷却した。
【0076】
加熱工程では、
図6に示すように、金属製パイプにおいて、端部から離れた部分を加熱装置により加熱することで、金属製パイプと樹脂製継手との装着部を加熱した。
冷却工程では、
図8に示すように、冷却ガスを、金属製パイプの内側に流すことにより、樹脂製継手を冷却した。
【0077】
No.1~No.6の樹脂製継手付きパイプを製造後、各樹脂製継手付きパイプに他のパイプを接続した試験サンプルを作製して、下記の試験を実施した。
【0078】
(耐圧試験)
常温雰囲気で、試験サンプルにガスを封入し、5分間、試験サンプル内を3.53MPaの圧力にした。その後、試験サンプルに、5.30MPaの圧力の水を封入した。表1で、水漏れがない場合を「○」とし、水漏れがある場合を「×」とした。以下において、「水漏れ」を単に「漏れ」と称することがある。
【0079】
(高温繰り返し加圧試験)
車両内の厳しい条件を想定し、140℃の雰囲気で、試験サンプルに試験油を封入し、試験サンプル内に0MPaから3.53MPaまでの加圧を繰り返した。この加圧の繰り返しを15万回行った。表1で、油漏れがない場合を「○」とし、油漏れがある場合を「×」とした。以下において、「油漏れ」を単に「漏れ」と称することがある。
【0080】
【0081】
表1から、以下のことが分かった。
【0082】
金属製パイプに前処理工程を行わなかったNo.1、No.3およびNo.5では、耐圧試験および高温繰り返し加圧試験で漏れが発生した。No.3では前処理工程以外は、No.5では前処理工程および補強部材の装着タイミング以外は、第1実施形態の製造方法と同様な方法で樹脂製継手付きパイプを製造したが、耐圧試験および高温繰り返し加圧試験で漏れが発生した。上記より、金属製パイプに前処理工程を行なわない場合、樹脂製継手が金属製パイプから剥離することが分かった。
【0083】
樹脂製継手に補強部材を装着しなかったNo.1およびNo.2では、高温繰り返し加圧試験で漏れが発生した。No.2では、補強部材を装着しないこと以外は、第1実施形態の製造方法と同様な方法で樹脂製継手付きパイプを製造したが、高温繰り返し加圧試験で漏れが発生した。このことから、樹脂製継手に補強部材を装着しない場合、樹脂製継手が金属製パイプから剥離することが分かった。
【0084】
No.4およびNо.6では、樹脂製継手に補強部材を装着した。Nо.4では、冷却工程後、補強部材を装着した。言い換えると、Nо.4では、樹脂製継手を金属製パイプに密着させてから、補強部材を樹脂製継手に装着した。Nо.4では、耐圧試験および高温繰り返し加圧試験で漏れが発生しなかった。一方、No.6では、樹脂製継手を加熱する加熱工程および樹脂製継手を押圧する押圧工程のときに、補強部材を装着する第2装着工程を行い、その後、樹脂製継手を冷却する冷却工程を行った。言い換えると、No.6では、樹脂製継手を金属製パイプに密着させる過程で、補強部材を樹脂製継手に装着した。No.6は、高温繰り返し加圧試験で漏れが発生した。
【0085】
No.3~Nо.6から、樹脂製継手を金属製パイプに密着させる過程で、補強部材を樹脂製継手に装着する場合、高温下の厳しい条件では、樹脂製継手が金属製パイプから剥離するが、樹脂製継手を金属製継手に密着させてから、補強部材を樹脂製継手に装着する場合、高温下の厳しい条件でも、樹脂製継手が金属製パイプから剥離しないことが分かった。
【0086】
上記より、金属製パイプに前処理工程を実施し、樹脂製継手が金属製パイプに密着してから、樹脂製継手に補強部材を装着することにより、高温下の厳しい条件でも、金属製パイプと樹脂製継手とのシール性が高い樹脂製継手付きパイプを製造できることが分かった。
【0087】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0088】
例えば、補強部材(13、213、313)は、筒状でもよく、筒状でなくてもよい。
【0089】
また、金属製パイプ(11)と樹脂製継手(12、312)との装着部を加熱する方法は、
図6、
図14に示す方法に限られない。
【0090】
また、補強部材(13、213、313)を樹脂製継手(12、312)に装着する方法は、上述した第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態で説明した方法に限られない。
【0091】
また、第2実施形態において、
図12に示すように、補強部材213の先端部を樹脂製継手12の一端に引っ掛けて位置決めをした。しかし、補強部材213を樹脂製継手12に位置決めをする構成は、上記に限定されず、変更可能である。例えば、樹脂製継手12の軸方向の一端と他端との間に凹部が形成され、補強部材213の一端と他端との間に内側に向かった凸部が存在し、補強部材213の凸部が樹脂製継手12の凹部に嵌まることにより、補強部材を樹脂製継手に引っ掛けて位置決めをしてもよい。
【0092】
また、第2実施形態において、補強部材213を樹脂製継手12に押し込んで位置決めをした後、補強部材213を樹脂製継手12に向けて押圧してもよい。
【0093】
また、第3実施形態では、金属製パイプ11、樹脂製継手312および補強部材313が円筒状である場合について説明したが、これらは角筒状でもよい。
【0094】
上記実施形態および変形例とは別の観点として、上記実施形態および変形例において、金属製パイプの端部の外面を粗面化処理する代わりに、金属製パイプの端部の外面に接着剤を塗布することによっても、樹脂製継手付きパイプを製造することができる。例えば、第2実施形態では、
図11に示すように、金属製パイプ11の端部11Eが粗面化処理されている。しかし、第2実施形態の前処理工程で、金属製パイプ11の端部11Eの粗面化処理に代えて、金属製パイプ11の端部11Eに接着剤を塗布することによって、樹脂製継手付きパイプを製造することができる。第3実施形態でも同様に、第3実施形態の前処理工程で、金属製パイプ11の端部11Eの粗面化処理に代えて、金属製パイプ11の端部11Eに接着剤を塗布することによって、樹脂製継手付きパイプを製造することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 樹脂製継手付きパイプ
2 パイプ
11 金属製パイプ
12、312 樹脂製継手
13、213、313 補強部材
【要約】
【課題】金属製パイプと樹脂製継手とのシール性が高い樹脂製継手付きパイプを製造する。
【解決手段】樹脂製継手付きパイプの製造方法は、金属製パイプ11の端部11Eの外面を粗面化処理する前処理工程と、粗面化処理された端部11Eに、樹脂製継手12を装着する第1装着工程と、樹脂製継手12を金属製パイプ11に装着した状態で、金属製パイプ11と樹脂製継手12との装着部を加熱する加熱工程と、樹脂製継手12を金属製パイプ11の端部11Eに向けて押圧する押圧工程と、樹脂製継手12を冷却する冷却工程と、樹脂製継手12を冷却した後、樹脂製継手12の外面部に補強部材13を装着する第2装着工程とを備える。補強部材13の線膨張係数が、樹脂製継手12の線膨張係数より小さい。
【選択図】
図9