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特許7638062非アルコール性脂肪性肝炎及び繊維症のための新規治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎及び繊維症のための新規治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20250221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P1/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019505430
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017069595
(87)【国際公開番号】W WO2018024805
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】16306010.6
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513323623
【氏名又は名称】メタボリス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル バベレル
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール モワネ
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】井上 千弥子
【審判官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517056(JP,A)
【文献】特表2014-517058(JP,A)
【文献】国際公開第2009/151116(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/145340(WO,A1)
【文献】The Saudi Journal of Gastroenterology,2016年01月,Vol.22,No.1,p.69-76
【文献】HEPATOLOGY,2012年09月,Vol.56,No.3,p.943-951
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/88
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NASHの治療または予防のための医薬組成物であって、式(I)の化合物:
【化1】
式中、
1は、
- -C(O)CR45CR67C(O)OH基;または
- -C(OH)(H)CR45CR67C(O)OH基;
を表し
mはを表し
2は、
-C1~C5の直鎖若しくは分枝鎖アルキル、C1~C5の直鎖若しくは分枝鎖アルコキシから選択される置換基を任意に有するC6アリール基、または
-6員のヘテロアリール基を表し
4,R5,R6およびR7
- 水素原子を表す)
または薬学的に許容される塩基または酸による付加塩、を含む医薬組成物。
【請求項2】
1が-C(O)CH2CH2C(O)OHである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
2
-C1~C5の直鎖若しくは分枝鎖アルキル、またはC1~C5の直鎖若しくは分枝鎖アルコキシから選択される置換基を任意に有するC6アリール基、または
-N原子を含む6員のヘテロアリール基
を表す、請求項1または2のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
NASHの治療のための、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
線維症の予防または治療のための、請求項1~のいずれか1項に規定する化合物または薬学的に許容される塩基または酸による付加塩を含む医薬組成物。
【請求項6】
線維症が肝線維症である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
線維症の治療のための、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び繊維症のための新規治療に関する。
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝臓における(1)脂肪症(脂肪蓄積)、(2)小葉炎症および(3)肝細胞の破壊(肥大化)によって特徴づけられる肝疾患である。それは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)群の一部であり、良性の肝臓脂肪変性(肝臓脂肪症hepatic steatosis)により始まるが、NASH、線維症、永続的な肝障害を伴う肝硬変、肝細胞癌、そして死亡に至る可能性がある。
【0003】
NAFLDは、肥満や2型糖尿病に関連していることが多く、その罹患率は非常に高く、世界中で増え続けている。
【0004】
米国では、NASHは成人人口の12%、糖尿病患者の22%に存在すると推定されている。NASHを患っている患者の15~25%が肝硬変(肝線維症、すなわち臓器内の線維組織の過剰沈着)を発症するとも推定されている。NASHはまた、心血管系偶発症候の危険性をかなり高める。
【0005】
現在、NASHを治療するための有効な薬はなく、保健規制当局(FDA、EMA)は、NASHの流行の管理が優先事項であると考えている。
【0006】
したがって、効率的なNASHのための治療を提供する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、NASHの予防および/または治療のための使用に適した化合物を提供することである。
【0008】
本発明の目的はまた、線維症、好ましくは肝線維症の予防および/または治療のための使用にも適している可能性がある化合物を提供することである。
【0009】
さらに他の目的は、本発明の以下の記載の解釈より明らかになるであろう。
【0010】
本発明は、式(I)の化合物:
【化1】
式中、
1は、
- -C(O)CR45CR67C(O)OH基;
- -C(OH)(H)CR45CR67C(O)OH基;

【化2】
- -(CH24C(O)OH基;
を表し:
mは0~8の整数を表し;
2は、
- 置換されていてもよい、C6~C10アリール基;または
- 置換されていてもよい、5~10-員のヘテロアリール基;
を表し:
3は、同一または異なって、以下
1~C5、好ましくはC1~C4の直鎖または分枝鎖アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチルであって、炭素環または複素環で置換されてもよく;前記炭素環は、5~10員の、置換又は非置換の、飽和、部分的に不飽和又は芳香族であり、前記複素環は、5~10員の、置換又は非置換の、飽和、部分的に不飽和又は芳香族であり、同一又は異なって、特に、窒素、酸素又は硫黄から選択される、1、2又は3つのヘテロ原子を含む;
を表し:
4,R5,R6およびR7は、同一または異なって:
- 水素原子;
- C1~C5、好ましくはC1~C4の直鎖または分枝鎖アルキル基;
- 飽和、部分的に不飽和又は芳香族の、置換又は非置換の、5、6または7員の炭素環基を表し;または、
4およびR5は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の、好ましくは飽和の、例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシルである、5、6又は7員の炭素環を形成し;または
6およびR7は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換又は非置換の、好ましくは飽和の、例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシルである、5、6又は7員の炭素環を形成する;
またはそれらのエナンチオマー、それらのジアステレオマーおよび薬学的に許容される塩基または酸による付加塩の、
治療、好ましくはNASHの治療のための使用に関する。
【0011】
本発明において、「Yの治療のために使用される化合物X」は、「Yの治療方法において使用される化合物X」または「Yの治療において使用される化合物X」と同等である。
【0012】
ヘテロアリールという用語は、O、N、S、好ましくはNの中から選択される、同一または異なる少なくとも1個のヘテロ原子を含む、5~10員のヘテロアリールに関する。ヘテロアリールは、O、N、S、好ましくはNの中から選択される、同一または異なる1,2,3または4の、好ましくは、同一または異なる1,2または3のヘテロ原子を含む。
【0013】
前記炭素環、複素環、アリール、ヘテロアリールは、非置換であるか、または同一もしくは異なる、特に以下から選択される1つ以上の置換基によって置換される:
- 直鎖または分岐鎖の、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシまたはtert-ブトキシ基である、C1~C6アルコキシ基;
- ハロゲン原子;
- 直鎖または分岐鎖の、好ましくはアルキル、C1~C5、好ましくはC1~C4、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチルである、炭化水素基;
- 直鎖または分岐鎖の、好ましくはアルキル、C1~C5、好ましくはC1~C4、特に1以上のハロゲン原子で置換された、炭化水素基;
- シアノ(-CN)基;または
- スルホニルアルキル(-S(O)2-alkyl)基であって、ここで、アルキルは直鎖または分岐鎖の、好ましくはアルキル、C1~C5、好ましくはC1~C4、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチルである;
-同一または異なって、特に、ハロゲン原子、直鎖または分岐鎖の、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシまたはtert-ブトキシ基である、C1~C6アルコキシ基、または直鎖または分岐鎖の、好ましくはアルキル、C1~C5、好ましくはC1~C4、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチルである、炭化水素基より選択される1以上の置換基により置換されるかまたは非置換である、5、6または7員の、飽和または部分的に不飽和または芳香族の、好ましくはフェニルである、炭化水素基。
【0014】
好ましくは、本発明の化合物において、mは0である。
【0015】
好ましくは、本発明の化合物において、R1は-C(O)CH2CH2C(O)OHまたは-(CH24C(O)OHである。
【0016】
好ましくは、本発明の化合物において、R1は-C(O)CH2CH2C(O)OHである。
【0017】
好ましくは、本発明の化合物において、R2は:
- 少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐鎖
のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C3
)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよい、C6~C10アリール
基;または
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0018】
好ましくは、本発明の化合物において、R2は:
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0019】
好ましくは、本発明の化合物において、R1は-C(O)CH2CH2C(O)OHおよび、mは0を表す。
【0020】
好ましくは、本発明の化合物において、
mは0であり;および
2は:
- 少なくとも、直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐
鎖のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C
3)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよいC6~C10アリール
基;または
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0021】
好ましくは、本発明の化合物において、
mは0であり;および
2
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0022】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり、および
2は:
- 少なくとも、直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐
鎖のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C
3)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよいC6~C10アリール 基;または
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0023】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり、および
2は:
-5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0024】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり、
mは0であり、および
2は:
- 少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐鎖
のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C3
)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよいC6~C10アリール基
;または
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0025】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり、
m は 0であり、および、
- 5~10員のヘテロアリール基
を表す。
【0026】
好ましくは、本発明の化合物において、R2は:
-少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐鎖の
O-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C3
-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよいC6~C10アリール基;
または
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0027】
好ましくは、本発明の化合物において、R2は:
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0028】
好ましくは、本発明の化合物において、
mは0でありおよび
2は:
-C6~C10アリール基であって、少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル
基、または直鎖または分岐鎖のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖ま
たは分岐鎖のO-(C1-C3)-アルキル基から選択される置換基により置換され
てもよく;または
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0029】
好ましくは、本発明の化合物において、
mは0であり;そして
2は:
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0030】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり;および
2は:
- 少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐鎖
のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C3
)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよい、C6~C10アリール
基;または
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0031】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり;および、
2は:
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0032】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり;
mは0であり、そして
2は:
- 少なくとも直鎖または分岐鎖のC1-C6アルキル基、または直鎖または分岐鎖
のO-(C1-C6)-アルキル基、好ましくは直鎖または分岐鎖のO-(C1-C3
)-アルキル基から選択される置換基により置換されてもよい、フェニル基;また

- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0033】
好ましくは、本発明の化合物において、
1は-C(O)CH2CH2C(O)OHであり;
mは0であり、および
2は:
- 好ましくは1以上の窒素を含み、好ましくはピリジンである、6員のヘテロアリール基
を表す。
【0034】
本発明による化合物は、参照により本明細書に組み入れられるWO2012/17515およびWO2012/175707に記載されているように合成することができる。
【0035】
式(I)の化合物は、カルボン酸基の機能を有し、塩化されてもよい。その後、それらを、有機又は無機塩基との付加塩の形態にしてもよい。塩基との付加塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩などの医薬的に許容される塩であり、塩基として対応するアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物を使用して得られる。医薬的に許容される塩基との付加塩の他の種類として、アミン、特に、グルカミン、N‐メチルグルカミン、N,N‐ジメチルグルカミン、エタノールアミン、モルホリン、N‐メチルモルホリン又はリシンで作られた塩が挙げられる。
【0036】
式(I)の化合物はまた、鉱酸又は有機酸、好ましくは、塩酸、リン酸、フマル酸、クエン酸、シュウ酸、硫酸、アスコルビン酸、酒石酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ラクトビオン酸、グルコン酸、グルカル酸、コハク酸、スルホン酸又はヒドロキシプロパンスルホン酸などの医薬的に許容される酸で塩化されてもよい。
【0037】
本発明の化合物は、NASHの治療または予防、好ましくは治療に有用である。
【0038】
本発明はまた、活性成分として、NASHの予防または治療、好ましくは治療のために使用するための少なくとも1種の本発明による化合物を含む医薬組成物に関する。これらの組成物はまた、薬学的に許容されるビヒクルおよび/または賦形剤を含み得る。
【0039】
医薬組成物は、当業者に公知の任意の形態、特に、非経口、経口、経腸、経粘膜、又は経皮方法、好ましくは経口方法によって投与するために意図された形態であってもよい。
【0040】
本発明に従った組成物は、注射用溶液又は懸濁液又は複数回投与バイアルの形態、裸又は被覆錠剤、丸薬、カプセル、粉末、坐薬又は腸溶カプセル、極性溶媒における、経皮的な使用のための、又は経粘膜的使用のための、溶液又は懸濁液の形態が示される。
【0041】
そのような投与に好適な賦形剤は、セルロース又は微結晶セルロースの誘導体、アルカリ土類炭酸塩、リン酸マグネシウム、デンプン、加工デンプン又は固形形態のラクトースである。
【0042】
直腸使用のために、ココアバター又はステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましい賦形剤である。
【0043】
非経口使用のために、水、水溶液、生理食塩水及び等張液が、最も都合良く使用されるビヒクルである。
【0044】
投与量は、治療指標及び投与方法、並びに対象の年齢及び体重に従って、広範に変化してもよい。
【0045】
本発明はまた、薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤と共に、十分な量の少なくとも1つの本発明の化合物を必要とする患者への投与を含む、NASHを予防または治療、好ましくは治療する方法に関する。
【0046】
上記の処置を必要とする患者の識別は、当業者によって定義される。獣医又は医師は、臨床検査、身体検査、生物学的試験又は診断及び家族歴及び/又は病歴によって、そのような処置を必要とする対象を識別してもよい。
【0047】
十分な量とは、病状の予防又は処置に有効である本発明の化合物の量を意味する。十分な量は、従来技術を用いて及び同様の状況で得られた結果を観察することにより、当業者によって決定されてもよい。十分な量を決定するために、様々な要素が、当業者によって考慮される必要があり、特にそして限定されないが;対象、サイズ、年齢、一般的な健康状態、関連する疾患及びそれらの重症度;対象の応答、化合物の種類、投与方法、投与される組成物の生物学的利用能、投与量、他の医薬の併用などが挙げられる。好ましくは、5~500mg/日の本発明の化合物が、1回以上の投与で、好ましくは1回の投与で、患者に投与される。
【0048】
本発明はまた、十分な量の本発明の少なくとも1つの組成物を、それを必要とする患者へ投与することを含む、NASHを予防または治療、好ましくは治療する方法に関する。
【0049】
本発明はまた、NASHの予防または治療、好ましくは治療のための医薬の製造のための式(I)の化合物の使用に関する。
【0050】
本発明はまた、NASHの予防または治療、好ましくは治療のための医薬の製造のための本発明の組成物の使用に関する。
【0051】
NASHの治療に加えて、本発明の化合物は線維症、好ましくは肝線維症の治療にも有用である。実際、本発明はまた、線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のために使用するための本発明による化合物に関する。本発明はまた、線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のために使用するための本発明の組成物に関する。
【0052】
本発明はまた、薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤と共に、十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物または組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、線維症、好ましくは肝線維症を予防または治療、好ましくは治療する方法に関する。
【0053】
本発明はまた、線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のための医薬の製造のための本発明の化合物または組成物の使用に関する。
【0054】
本発明はまた、NASHおよび線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のために使用するための本発明の化合物に関する。本発明はまた、NASHおよび線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のために使用するための本発明の組成物に関する。
【0055】
本発明はまた、薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤と共に、十分な量の本発明の少なくとも1つの化合物または組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、NASHおよび線維症、好ましくは肝線維症を予防または治療、好ましくは治療する方法に関する。
【0056】
本発明はまた、NASHおよび線維症、好ましくは肝線維症の予防または治療、好ましくは治療のための医薬の製造のための本発明の化合物または組成物の使用に関する。
【0057】
ここで、本発明を非限定的な実施例を用いて説明する。
【0058】
以下の式(I)で示される化合物(1)を試験した:
【化3】
この化合物は、WO2012/175715に記載されるように得られる。研究はSTAMモデルで行った。無病原性の14日妊娠のC57BL/6マウスは、日本SLC社(日本)から入手した。出生後のストレプトゾトシン(Sigma、USA)の単回皮下注射および4週齢後(28日±2日)の高脂肪食(CLEA Japan、日本)の給餌により、雄マウスにおいてNASHを発現させた。処置開始前の日数で、マウスを、6週齢(42±2日)で10匹のマウスからなる3群、および9週齢(63±2日)で10匹のマウスからなる3群に無作為に分けた。治療期間中、個々の体重を毎日測定した。治療期間中、食物消費量を週に2回測定した。マウスの生存、臨床的徴候および行動は毎日モニターした。
【0059】
NASHへの効果を評価するためのインビボ研究1
NASHのin vivo研究は3つの部分を有した。
グループ1(ビヒクル):10匹のNASHマウスに、化合物(1)を投与したマウスと同様にビヒクル(0.5%メチルセルロース/水)を経口投与した。
グループ2(テルミサルタン):5匹のマウスに、テルミサルタンを補給した同じビヒクルを、100mg/kgの用量(0.5%メチルセルロース/水)で6~9週齢の間1日1回投与した。アンギオテンシン受容体遮断薬であるテルミサルタンは、STAM動物モデルにおいてNASHおよび線維症を治療するのに活性であることが示されている参照化合物である。
グループ3(化合物(1)):10匹のNASHマウスに、化合物(1)を補給したビヒクルを、100mg/kgの用量(0.5%メチルセルロース/水中)で6~9週齢にかけて1日1回投与した。評価したパラメーターおよび組織学的結果判定法を以下に記載する。
【0060】
線維症への影響を評価するためのインビボ研究2
線維症のin vivo研究には3つの部分を有した。
グループ1(ビヒクル):10匹のNASHマウスに、化合物(1)を投与したマウスと同様にビヒクル(0.5%メチルセルロース/水)を経口投与した。
グループ2(テルミサルタン):5匹のマウスに、テルミサルタンを補給した同じビヒクルを、100mg/kgの用量(0.5%メチルセルロース/水中)で9~12週齢にかけて1日1回投与した。
グループ3(化合物(1)):10匹のNASHマウスに、化合物(1)を補給したビヒクルを、100mg/kgの用量(0.5%メチルセルロース/水中)で9~12週齢にかけて1日1回投与した。評価したパラメーターおよび組織学的結果判定法を以下に記載する。
【0061】
研究測定法、分析物、結果および分析
以下の測定が両方のインビボ試験に対して行われた:
・個体別の肝臓重量
・個体別の体重
・血漿ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、トリグリセリド、および総コレステロールは、FUJI DRI-CHEM(Fujifilm、日本)によって測定された。
・肝臓トリグリセリドは、トリグリセリドEテストキット(和光、日本)によって定量された。
・肝切片の組織学的分析(通常の方法による)
【0062】
NASの定義および計算
NASH臨床研究ネットワーク(NASH Clinical Research Network)によって提案されたNAFLD活性スコア(NAS)は、NAFLD/NASH研究の分野において最も広く使用されているスコアリングシステムである(Kleiner、D.E.ら、(2005)。アルコール性脂肪肝疾患のための組織学的採点法Hepatology、41、1313-21)。
NASは、脂肪肝(0~3)、小葉炎症(0~3)および肝細胞肥大化形成(0~2)についての組織学的スコアの重み付けされていない合計として定義され、これらは活発な肝損傷を表す。NASは0~8の合計スコアを出し、臨床試験および非臨床試験における比較および相関研究のための組織学的変化の詳細な分析を可能にする。
【0063】
NASは当初は評価のために開発されたが、NAFLD/NASHの診断用ではない。それにもかかわらず、スコアはNASHの診断に頻繁に使用されており、NAS5が閾値とされている。NASは診断と良好な相関関係を示すが、注意深い解釈が必須である。非NASH肝臓が、総NAS≦5のスコアとなる場合があり、または逆に、NAS≦4の肝臓がNASHの診断を受ける場合がある(Brunt,EM.,et al.,(2011).非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活性スコアおよびNAFLDにおける病理組織学的診断:異なる臨床病理学意義 Hepatology、53、810-20、およびHjelkrem、M.ら、(2011).非アルコール性脂肪肝疾患活動性スコアの検証、Aliment.Pharmacol.Ther.,34,214-8)。
【0064】
薬効評価の場合、NASは組織学的に証明されたNASH患者に厳密に適用される場合に有用である。非臨床試験の観点からは、NASH病理の発症が一様でない動物モデルに適用する場合、NASは慎重に利用されるべきである。
【0065】
Stelic独自のNASH-HCCモデル(STAMモデル)は均一かつ再現性[100%]のある疾患進行を示すため、STAMモデルはNASを使用した比較研究に適する。
【0066】
2002年に国立糖尿病消化器腎臓病研究所(NIDDK)によって設立され、成人および小児の脂肪肝疾患の自然研究および臨床試験を実施するためのネットワーク。
【0067】
NAS構成要素の定義
表1 NAFLD活性スコアの構成
【表1】
【0068】
結果は添付の図に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、各グループ1(ビヒクル)、2(テルミサルタン)および3(本発明の化合物)についての、試験1および2におけるNASスコアを表す。
図2図2は、各グループ1(ビヒクル)、2(テルミサルタン)および3(本発明の化合物)についての、試験1および2における肝臓中のトリグリセリド量を表す。
図3図3は、各グループ1(ビヒクル)、2(テルミサルタン)および3(本発明の化合物)についての、試験1および2における血漿中のトリグリセリド量を表す。
【0070】
本発明の化合物(1)は、研究1および2の両者において、ビヒクルおよびテルミサルタンの両者との比較において、NAFLD活性スコア(NAS)において有意な減少を示す。
【0071】
本発明の化合物(1)は、肝臓トリグリセリド(TG)の量の減少を示す。
【0072】
本発明の化合物(1)は、特に研究2において、血漿トリグリセリド(TG)量の減少を示す。
図1
図2
図3