(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
H02K3/28 K
(21)【出願番号】P 2020025882
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】324003956
【氏名又は名称】三菱ジェネレーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 晴政
【合議体】
【審判長】梶尾 誠哉
【審判官】松永 稔
【審判官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-6683(JP,B2)
【文献】特開2000-50549(JP,A)
【文献】特開2001-309597号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2極の回転子と、3相の電機子巻線と、前記電機子巻線が上コイル片及び下コイル片として上下2層格納される54個のスロットを有する鉄心とを備え、前記電機子巻線が1相に3個の並列回路を有する回転電機であって、
3個の前記並列回路のうち1個の回路が2つの異なる極を接続する極間亘線を有し、他の2個の回路が同じ極を構成する亘線を有し、
前記電機子巻線は、1相につき2個の相帯を有し、該相帯は2個の並列回路から成り、前記相帯を構成する全ての前記上コイル片及び前記下コイル片の円周方向平均位置を相帯中心とし、少なくとも1個の前記相帯における第1及び第2の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、
他の1個の前記相帯における第2及び第3の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
2極の回転子と、3相の電機子巻線と、前記電機子巻線が上コイル片及び下コイル片として上下2層格納される54個のスロットを有する鉄心とを備え、前記電機子巻線が1相に3個の並列回路を有する回転電機であって、
3個の前記並列回路のうち1個の回路が2つの異なる極を接続する極間亘線を有し、他の2個の回路が同じ極を構成する亘線を有し、
前記電機子巻線は、1相につき2個の相帯を有し、該相帯は2個の並列回路から成り、前記相帯を構成する全ての前記上コイル片及び前記下コイル片の円周方向平均位置を相帯中心とし、少なくとも1個の前記相帯における第1及び第2の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第2、第1、第1の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第1、第2、第1、第2、第1、第1、第1、第2、第1の並列回路の順に配置され、
他の1個の前記相帯における第2及び第3の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第2、第3、第3の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第3、第2、第3、第2、第3、第3、第3、第2、第3の並列回路の順に配置されることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に係り、例えばタービン発電機等の大型発電機に好適な回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量の発電機は出力電流が大きいために、電機子巻線の電磁力や発熱が大きい。その対策として、電機子巻線を複数の並列回路により構成することで、電機子巻線1本当たりの電流を減らし、電磁力や温度上昇を緩和する方法が取られる。
【0003】
このような技術の先行技術文献として、特許文献1及び2を挙げることができる。
【0004】
上記した特許文献1には、電機子巻線の各相が3個の並列回路により構成されるが、極間を接続する極間亘線の数が少なくて済むように、各々の相帯の1対の部分が導線によって直列に接続され、残りの部分は向い合った相帯にある相手と極間亘線によって直列に接続することが記載されている。
【0005】
一方、大容量のタービン発電機等の回転電機の電機子巻線として、例えば、54スロットで2極3並列回路間の循環電流による電流アンバランスを抑制して、不平衡な電圧を抑えようとした回転電機の電機子巻線が特許文献2に記載されている。
【0006】
この特許文献2には、54個のスロットに3個の並列回路のコイルを収容する電機子巻線において、各回路間に発生する電圧を抑制すると共に、循環電流を抑制するために、3相2極の2層巻き電機子巻線を備え、電機子巻線の各相に3つの並列回路を構成し、各相を第1相帯と第2相帯とに区分けした固定子鉄心に形成した54個のスロットに上記3つの並列回路のコイルを収容させると共に、各回路のコイルを直列に接続し、直列接続のコイルを上コイル片と下コイル片とに区分けし、上記第1相帯および第2相帯のそれぞれのコイルに接続側コイルエンドおよび反接続側コイルエンドのうち、いずれか一方に少なくとも1本以上のジャンパ線を配置し、上記上コイル片と下コイル片との回路番号の配置を入れ替える接続構成にした回転電機の電機子巻線が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3660705号明細書
【文献】特開2001-309597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術では、極間亘線の数は少なくできるが、並列回路間の循環電流による電流アンバランスを小さくできず、電機子巻線の損失の低減が図れる可能性が少ない。
【0009】
一方、上記した特許文献2に記載された技術では、巻線の極間を接続する極間亘線の本数が増加し、電機子巻線の損失を低減するためには未だ改良の余地があった。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、巻線の極間を接続する極間亘線の本数を少なくし、しかも、並列回路間の循環電流による電流アンバランスを小さくでき、電機子巻線の損失の低減が図れる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回転電機は、上記目的を達成するために、2極の回転子と、3相の電機子巻線と、前記電機子巻線が上コイル片及び下コイル片として上下2層格納される54個のスロットを有する鉄心とを備え、前記電機子巻線が1相に3個の並列回路を有する回転電機であって、3個の前記並列回路のうち1個の回路が2つの異なる極を接続する極間亘線を有し、他の2個の回路が同じ極を構成する亘線を有し、前記電機子巻線は、1相につき2個の相帯を有し、該相帯は2個の並列回路から成り、前記相帯を構成する全ての前記上コイル片及び前記下コイル片の円周方向平均位置を相帯中心とし、少なくとも1個の前記相帯における第1及び第2の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、他の1個の前記相帯における第2及び第3の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置されるか、
或いは、前記電機子巻線は、1相につき2個の相帯を有し、該相帯は2個の並列回路から成り、前記相帯を構成する全ての前記上コイル片及び前記下コイル片の円周方向平均位置を相帯中心とし、少なくとも1個の前記相帯における第1及び第2の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第2、第1、第1の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第1、第2、第1、第2、第1、第1、第1、第2、第1の並列回路の順に配置され、他の1個の前記相帯における第2及び第3の前記並列回路の配置を前記相帯中心に近い順に見たとき、前記上コイル片若しくは前記下コイル片が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第2、第3、第3の並列回路の順に配置され、それらと接続される前記下コイル片若しくは前記上コイル片が第3、第2、第3、第2、第3、第3、第3、第2、第3の並列回路の順に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻線の極間を接続する極間亘線の本数を少なくし、しかも、並列回路間の循環電流による電流アンバランスを小さくでき、電機子巻線の損失の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の回転電機の一例であるタービン発電機の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の回転電機の実施例1における相帯が2つの結線方法を示す図である。
【
図3】本発明の回転電機の実施例2における相帯が2つの結線方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の回転電機を説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【0015】
本発明の回転電機である例えばタービン発電機では、軸方向に伸び、かつ、周方向に所定の間隔をもって複数のスロットが設けられた固定子鉄心に、巻線回路が形成されている電機子巻線を備えている。巻線回路は、スロット内に収められたコイルを直列に接続することで構成される極と、線路側端子及び中性点側端子とコイルを接続する亘り線とにより構成される。コイルと亘り線は、コイルエンド部において接続され、亘り線は、コイルとの接続部から固定子鉄心のコレクタリング側軸方向端部の空間を周方向に亘って、線路側端子及び中性点側端子と接続されている。
【0016】
【0017】
該図に示す如く、タービン発電機100は、2極3相の電機子巻線11を有しており、この電機子巻線11は、固定子鉄心12に設けられた54個のスロットに収容されており、電機子巻線11と固定子鉄心12により固定子13が構成されている。また、固定子13と略同軸に空隙を介して固定子13の内周に界磁発生装置を有する回転子14が配置されて、タービン発電機100が構成されている。
【0018】
タービン発電機100の軸方向端部にはコレクタリングとブラシからなる給電装置が設けられ、他方の軸方向端部にはタービンが設けられ、回転子14に機械出力を伝達している。コレクタリング側には、電機子巻線11の各相の口出し線6(
図2参照)が配置され、それに伴ってブッシング及びターミナルボックスが配置され、電機子巻線11が線路側端子及び中性点側端子と接続されている。
【実施例1】
【0019】
図2に、本発明の回転電機の実施例1における相帯が2つの結線方法(
図1の電機子巻線11の結線方法)を示す。
【0020】
該図に示す如く、本実施例の回転電機(タービン発電機100)は、2極の回転子14と、3相の電機子巻線11と、この電機子巻線11が上コイル片1及び下コイル片2として上下2層格納される54個のスロットを有する鉄心(固定子鉄心12)とを備え、電機子巻線11が1相に3個の並列回路を有して概略構成されている。
【0021】
そして、3個の並列回路の1個がN極内、1個がS極内、残る1個がN極及びS極に跨って配置され、周方向に異なる角度の上コイル片1と下コイル片2は、ジャンパ線5で接続されている。
【0022】
3個の並列回路のうち1個の回路が2つの異なる極を接続する極間亘線8を有し、他の2個の回路が同じ極を構成する亘線7を有し、電機子巻線11は、1相につき2個の相帯3、9を有し、この相帯3、9は2個の並列回路から成り、相帯3、9を構成する全ての上コイル片1及び下コイル片2の円周方向平均位置をそれぞれ相帯中心4、10とし、少なくとも1個の相帯3における第1及び第2の並列回路の配置を相帯中心4に近い順に見たとき、上コイル片1が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される下コイル片2が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、他の1個の相帯9における第2及び第3の並列回路の配置を相帯中心10に近い順に見たとき、上コイル片1が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される下コイル片2が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置されている。
【0023】
このような本実施例の構成とすることにより、並列回路間の循環電流による電流アンバランスを従来技術より小さくでき、これにより、損失を低減した電機子巻線11を備えた回転電機を得ることができる。
【0024】
また、実施例1の変形例として、相帯3、9のいずれか一方或いは両方について、各相帯内の上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた構成としても良い。例えば、実施例1から相帯3、9の両方について、上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた場合であれば、少なくとも1個の相帯3における第1及び第2の並列回路の配置を相帯中心4に近い順に見たとき、下コイル片2が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される上コイル片1が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第1、第1、第2の並列回路の順に配置され、他の1個の相帯9における第2及び第3の並列回路の配置を相帯中心10に近い順に見たとき、下コイル片2が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置され、それらと接続される上コイル片1が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第3、第3、第2の並列回路の順に配置された構成となる。
【0025】
このような、実施例1における相帯3、9のいずれか一方或いは両方について、各相帯内の上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた変形例によっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例2】
【0026】
図3に、本発明の回転電機の実施例2における相帯が2つの結線方法(
図1の電機子巻線11の結線方法)を示す。
【0027】
該図に示す如く、本実施例の回転電機(タービン発電機100)は、2極の回転子14と、3相の電機子巻線11と、この電機子巻線11が上コイル片1及び下コイル片2として上下2層格納される54個のスロットを有する鉄心(固定子鉄心12)とを備え、電機子巻線11が1相に3個の並列回路を有して概略構成されている。
【0028】
そして、3個の並列回路の1個がN極内、1個がS極内、残る1個がN極及びS極に跨って配置され、周方向に異なる角度の上コイル片1と下コイル片2は、ジャンパ線5で接続されている。
【0029】
3個の並列回路のうち1個の回路が2つの異なる極を接続する極間亘線8を有し、他の2個の回路が同じ極を構成する亘線7を有し、電機子巻線11は、1相につき2個の相帯3、9を有し、この相帯3、9は2個の並列回路から成り、相帯3、9を構成する全ての上コイル片1及び下コイル片2の円周方向平均位置をそれぞれ相帯中心4、10とし、少なくとも1個の相帯3における第1及び第2の並列回路の配置を相帯中心4に近い順に見たとき、上コイル片1が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第2、第1、第1の並列回路の順に配置され、それらと接続される下コイル片2が第1、第2、第1、第2、第1、第1、第1、第2、第1の並列回路の順に配置され、他の1個の相帯9における第2及び第3の並列回路の配置を相帯中心10に近い順に見たとき、上コイル片1が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第2、第3、第3の並列回路の順に配置され、それらと接続される下コイル片2が第3、第2、第3、第2、第3、第3、第3、第2、第3の並列回路の順に配置されている。
【0030】
このような本実施例の構成であっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0031】
また、実施例2の変形例として、相帯3、9のいずれか一方或いは両方について、各相帯内の上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた構成としても良い。例えば、実施例2から相帯3、9の両方について、上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた場合であれば、少なくとも1個の相帯3における第1及び第2の並列回路の配置を相帯中心4に近い順に見たとき、下コイル片2が第1、第2、第1、第1、第2、第1、第2、第1、第1の並列回路の順に配置され、それらと接続される上コイル片1が第1、第2、第1、第2、第1、第1、第1、第2、第1の並列回路の順に配置され、他の1個の相帯9における第2及び第3の並列回路の配置を相帯中心10に近い順に見たとき、下コイル片2が第3、第2、第3、第3、第2、第3、第2、第3、第3の並列回路の順に配置され、それらと接続される上コイル片1が第3、第2、第3、第2、第3、第3、第3、第2、第3の並列回路の順に配置された構成となる。
【0032】
このような、実施例2における相帯3、9のいずれか一方或いは両方について、各相帯内の上コイル片1と下コイル片2の配置を入れ替えた変形例によっても、実施例2と同様な効果を得ることができる。
【0033】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…上コイル片、2…下コイル片、3、9…相帯、4、10…相帯中心、5…ジャンパ線、6…口出し線、7…同一極の亘線、8…極間亘線、11…電機子巻線、12…固定子鉄心、13…固定子、14…回転子、100…タービン発電機。