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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20250221BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250221BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20250221BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20250221BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/67
A61K8/06
A61Q19/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020095355
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021187790
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】那須 有美
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1780391(KR,B1)
【文献】特開2004-115444(JP,A)
【文献】特開2020-070258(JP,A)
【文献】特開2004-300106(JP,A)
【文献】特開2012-176903(JP,A)
【文献】Ampoule Hydrogel Mask (Record ID: 4846781),Mintel GNPD [online], 2017.05, [検索日:2024.10.02], Internet <URL:https://www.gnpd.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料であって、
化粧料全量に対し、
(A)0.01~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)3~25質量%の多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸アミドと、
を含み、
前記化粧料を-20℃で1日かけて凍結させた後、室温で解凍したときに、前記化粧料は、全くゲル化が生じていない、
化粧料。
【請求項2】
化粧料全量に対し、
(A)0.01~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)3~25質量%の多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸アミドと
含む、
水中油型化粧料。
【請求項3】
化粧料全量に対し、
(A)0.01~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)3~25質量%の多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸アミドと、

前記(C)ニコチン酸アミドに対する前記(A)タマリンドガムの質量比が0.01~0.6である、
化粧料。
【請求項4】
前記(C)ニコチン酸アミドに対する前記(A)タマリンドガムの質量比が0.01~0.6である請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(B)多価アルコールがグリセリン、ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1~いずれか1項記載の化粧料。
【請求項6】
さらに、(D)アクリル酸系ポリマーを含む請求項1~5いずれか1項記載の化粧料。
【請求項7】
さらに、(E)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体、および、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を含む請求項1~6いずれか1項記載の化粧料。
【請求項8】
水性化粧料である請求項1及び3いずれか1項記載の化粧料。
【請求項9】
水中油型化粧料である請求項1及び3いずれか1項記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル化を抑制した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧料等の皮膚外用剤には皮膚老化の防止を目的として、皮膚水分保持能向上が期待される保湿剤や抗酸化作用が期待されるビタミンE、C等が配合されているが、近年、しわやたるみを予防あるいは改善するために多くの薬剤が検討されている。中でも、ニコチン酸アミドはビタミン類であって安全性が高く、荒れ肌や角質の改善効果を有するとともに、肌のハリと弾力を向上させることが知られている。例えば、特許文献1にはニコチン酸アミドと、シロキクラゲ多糖体、コンドロイチン硫酸ナトリウムおよびプロテオグリカンからなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性多糖類と、多価アルコールと、1価の低級アルコールとを含む水性組成物が記載されている。
【0003】
ところで、化粧料の分野では、増粘剤やゲル化剤などの添加剤を配合して、化粧料の使用性等を向上させる試みが検討されている。中でもタマリンドガムは、OH基を有する分子と水素結合することで増粘(ゲル化)し、曳糸性やヌルツキが少ないという特性を有し、さらっとしながらも、ふんわりとした使用感を与えることから、増粘剤として汎用されている。
【0004】
例えば、タマリンドガムと多価アルコールが配合された化粧料として、特許文献2には多価アルコールと、アシルアミノ酸エステルと、リン脂質と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、タマリンドガムとを含む白濁化粧料が記載されている。また、特許文献3にはL-アスコルビン酸およびその誘導体と、特定のジカルボン酸ビスエトキシジグリコールと、2-フェノキシエタノール、カプリン酸グリセリル、エチルヘキシルグリセリンおよび特定の1,2-アルカンジオールから選択される1種以上よりなる皮膚外用剤組成物として例示されているパック剤において、タマリンドガムと多価アルコールを任意成分として含む記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-131547号公報
【文献】特許第6226843号公報
【文献】特開2012-176903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今般、ゲル化剤としてタマリンドガムを用いたニコチン酸アミド配合化粧料の検討に際し、ニコチン酸アミド由来と考えられる化粧料外観の黄ぐすみや塗布後のべたつきを軽減しようと、ニコチン酸アミドを抜去したところ、驚くべきことにニコチン酸アミドがタマリンドガムのゲル化の抑制に寄与しているという思いもかけない知見を得、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は上記知見によりなされたものであり、タマリンドガムと多価アルコールを含む化粧料において、ゲル化が抑制された化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化粧料は、化粧料全量に対し、
(A)0.001~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸またはその誘導体と、
を含むものである。
【0009】
(B)多価アルコールの配合量は化粧料全量に対し3~25質量%であることが好ましい。
【0010】
(C)ニコチン酸またはその誘導体に対する(A)タマリンドガムの質量比は0.01~0.6であることが好ましい。
【0011】
(C)ニコチン酸またはその誘導体はニコチン酸アミドであることが好ましい。
【0012】
(B)多価アルコールはグリセリン、ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の化粧料は、さらに、(D)アクリル酸系ポリマーを含んでいてもよい。
【0014】
本発明の化粧料は、さらに、(E)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体、および、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の化粧料は水性化粧料であってもよい。
【0016】
本発明の化粧料は水中油型化粧料であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の化粧料は、化粧料全量に対し、
(A)0.001~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)3~25質量%の多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸またはその誘導体と、
を含むので、タマリンドガムと多価アルコールを含みながらもゲル化が抑制され、さらっとしたふんわり感があり、しっとり感がありながらべたつきのない化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化粧料は、化粧料全量に対し、
(A)0.001~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸またはその誘導体と、
を含むものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0019】
(A)タマリンドガム
本発明で用いられる(A)タマリンドガムは、タマリンド種子を分離精製して得られる多糖で、グルコースを主鎖としキシロース、ガラクトースを側鎖に持つキシログルカンの水溶性高分子多糖類である。平均分子量は約47万である。
【0020】
(A)タマリンドガムの配合量は化粧料全量に対し0.001~0.8質量%であり、好ましくは0.01~0.7質量%であり、さらには0.1~0.6質量%であることが望ましい。タマリンドガムの配合量が0.001質量%以上、0.8質量%以下であることで、さらっとしながらもふんわりとした使用感を得ることができ、0.8質量%以下であることで、タマリンドガムと多価アルコールによるゲル化を抑制しながら、ゲル化抑制のためのニコチン酸またはその誘導体の量を適当量とすることができる。なお、さらっとしながらもふんわりとした使用感とは、肌への塗布中、肌に負担感なく心地よく塗布することができ、塗布後には柔らかい皮膜が肌を優しく覆って保護するような感触を示す。
【0021】
(B)多価アルコール
本発明で用いられる(B)多価アルコールは、2価以上の多価アルコールである。2価以上の多価アルコールとしては、例えばグリセリン、ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコールの他、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコールが挙げられる。特に、良好な保湿性等の使用性、汎用性の観点からすれば、グリセリン、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。これらの(B)多価アルコールは単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(B)多価アルコールの配合量は化粧料全量に対し3~25質量%であることが好ましく、より好ましくは3.5~22質量%であり、さらには4~20質量%であることが望ましい。(B)多価アルコールの配合量が3質量%以上であることで、塗布後のしっとりとした効果をより得ることができ、25質量%以下であることで、タマリンドガムと多価アルコールによるゲル化をより抑制しながら、ゲル化抑制のためのニコチン酸またはその誘導体の量を適当量とすることができる。
【0023】
(C)ニコチン酸またはその誘導体
(C)ニコチン酸またはその誘導体としては、ニコチン酸アミド、ニコチン酸エステル等が好ましく挙げられ、ニコチン酸エステルとしては、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸エチル等が挙げられる。これらの(C)ニコチン酸またはその誘導体は単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。効能効果、汎用性の観点からすると、ニコチン酸アミドがより好ましい。
【0024】
(C)ニコチン酸またはその誘導体の配合量は化粧料全量に対し1~10質量%であり、より好ましくは1.2~10質量%未満であることがより好ましく、さらには1.8~9質量%であることが好ましい。(C)ニコチン酸またはその誘導体の配合量が1質量%以上であることで、(A)タマリンドと(B)多価アルコールのゲル化を抑制することができ、10質量%以下であることで、(C)ニコチン酸またはその誘導体のべたつきの発生を抑制することができる。
【0025】
(A)タマリンドガムは(B)多価アルコールのOH基と水素結合することでゲル化するが、そのゲル化が(C)ニコチン酸またはその誘導体の存在により抑制されるのは、(C)ニコチン酸またはその誘導体の一部がイオン化し、タマリンドガムと多価アルコールのOH基の水素結合を抑制しているものと推測される。従来、(C)ニコチン酸またはその誘導体はイオン化しにくい構造であると考えられてきており、これは予想しえない効果である。
【0026】
かかるゲル化抑制や塗布後のべたつき抑制の観点からすると、(C)ニコチン酸またはその誘導体に対する(A)タマリンドガムの質量比((A)/(C))は0.01~0.6であることがより好ましく、さらには0.015~0.55であることがより好ましい。
【0027】
(D)アクリル酸系ポリマー
本発明の化粧料には(D)アクリル酸系ポリマーを含んでいてもよい。アクリル酸系ポリマーは(メタ)アクリル酸モノマーおよび/または(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを必須の構成成分として形成されたコポリマーおよびクロスポリマーであり、化粧料に使用するとしっとりとした使用性が得られ、粘度調整にも効果的である。反面、ゲル化を促進する懸念もあるが、本発明の化粧料はゲル化を抑制することができるので、アクリル酸系ポリマーの良好な使用性を享受することができる。
【0028】
アクリル酸系ポリマーは、(メタ)アクリル酸モノマーおよび/または(メタ)アクリル酸アルキルモノマーを必須の構成成分として形成されたコポリマーおよびクロスポリマーである。
具体的には、例えば、カルボキシビニルポリマー;(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー;アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー;アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルコポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルコポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレン(25)べへニルエーテルコポリマー等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルコポリマー;アクリレーツ/イタコン酸ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルコポリマー、アクリレーツ/イタコン酸ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルコポリマー等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/イタコン酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルコポリマー;アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルクロスポリマー、アクリレーツ/メタクリル酸ポリオキシエチレン(25)べへニルエーテルクロスポリマー等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルクロスポリマー;アクリレーツ/ネオデカン酸ビニルクロスポリマー;(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー;(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー;(N-ビニルピロリドン-N、N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)クロスポリマー(ポリアクリレート-1)等が挙げられる。上記括弧内の数値は、酸化エチレンの平均付加モル数を表している。
【0029】
カルボキシビニルポリマーはアルキル変性カルボキシビニルポリマーであってもよい。カルボキシビニルポリマーは、主としてアクリル酸の重合体であるものをいい、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、主としてアクリル酸とメタクリル酸アルキル(例えば総炭素数が10~30(C10~C30))の共重合体であるものをいう。カルボキシビニルポリマーとしては、INCI名で「CARBOMER(カルボマー)」と表記される化合物を挙げることができる。また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、INCI名で「ACRYLATES/C10-30 ALKYL ACRYLATE CROSSPOLYMER((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)」と表記される化合物を挙げることができる。
これらの(D)アクリル酸系ポリマーは単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(D)アクリル酸系ポリマーの配合量は化粧料全量に対し、0.01~1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~1質量%未満であることがより好ましく、さらには0.1~0.8質量%であることが好ましい。(D)アクリル酸系ポリマーの配合量が0.01質量%以上であることで、よりしっとりとした使用感を得ることができることに加え、適切な粘度を化粧料に付与することができ、1質量%以下であることで、ゲル化抑制のためのニコチン酸またはその誘導体の量を適当量とすることができる。
【0031】
(E)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体、および、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体
本発明の化粧料には(E)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体、および、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(以下、単に(E)成分ともいう)を含んでいてもよい。(E)成分を含むことで、化粧料の使用性をより高めることができる。
【0032】
2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体としては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ステアリル共重合体等を好ましく挙げることができる。
【0033】
使用性がより向上するという観点からすれば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単独重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ステアリル共重合体がより好ましい。(E)成分は市販品を使用することもでき、 市販品の例としては、日油(株)のLipidure(登録商標)-HM、-PMB、-NR、-S等が挙げられる。
【0034】
(E)成分の配合量は化粧料全量に対し、0.01~3.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~1.0質量%未満であることがより好ましい。(E)成分の配合量を0.01~3.0質量%とすることで、使用性をより良好なものとすることができる。
【0035】
本発明の化粧料は、上記必須成分の他に、通常化粧品や医薬品等に用いられる成分、例えば油分、界面活性剤、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤((D)アクリル酸系ポリマーを除く)、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤等必要に応じて適宜配合される。
【0036】
上記任意配合成分のうち、油分としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンサルコール、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール等の分岐鎖アルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、固形パラフィン、ビースワックス、硬化ヒマシ油、カルナウバロウ、バリコワックス等のワックス、牛脂、豚脂、羊脂、スクワラン、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、オリーブ油、綿実油、ホホバ油、ヒマシ油、ラノリン等の動植物油脂、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、トリメチルプロパントリイソステアレート、イソプロピルミリステート、グリセロールトリ-2-エチルヘキサネート、ペンタエリスリトールテトラ-2-エチルヘキサネート、シリコーン油、ポリオキシエチレン(以下、POEとも記載する。)ポリオキシプロピレン(以下、POPとも記載する。)ペンタエリスリトールエーテル等の合成油等が挙げられる。
【0037】
界面活性剤としては、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸、POEステアリルエーテルリン酸等のリン酸エステル塩、モノラウロイルモノエタノールアミドPOEスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸化油、POEアルキルエーテルカルボン酸、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、カゼインナトリウム等のアニオン系界面活性剤;
【0038】
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤;2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキシド-1-カルボキシエチロキシ二ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸塩等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POE・メチルポリシロキサン共重合体等の親油性非イオン界面活性剤;POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノオレエート、POEグリセリンジステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEコレスタノールエステル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POE脂肪酸アミド、POEアルキルアミン、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド等の親水性非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0039】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、シトステロール、ラノステロール等が挙げられる。
【0040】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、POE系高分子、POE・POP共重合体系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0041】
キレート剤としては、シトラマル酸、アガル酸、グリセリン酸、シキミ酸、ヒノキチオール、没食子酸、タンニン酸、コーヒー酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコー
ルジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、フィチン酸、ポリリン酸、メタリン酸、ならびにこれらの類似体ならびにこれらのアルカリ金属塩およびカルボン酸エステル等が挙げられる。
【0042】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸オクチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;ジモルホリノピリダジノン等のピリダジン誘導体;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー等のカンファー誘導体;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体;その他、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0043】
保湿剤としては、キシリトール、マルトース、トレハロース、D-マンニット、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコサミン、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0044】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、ビタミンD2、dl-α-トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;アズレン、グリチルリチン等の抗炎症剤;アルブチン等の美白剤、エストラジオール等のホルモン類;酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤;L-メントール、カンフル等の清涼剤;その他塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、イオウ等を配合することができる。さらに多様な薬効を示す各種抽出物を配合することができる。すなわちドクダミエキス、オウバクエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、ボタンピエキス、ヘチマエキス、ユキノシタエキス、ユーカリエキス、チョウジエキス、マロニエエキス、ヤグルマギクエキス、海藻エキス、タイムエキス等が挙げられる。
【0045】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0046】
中和剤としては、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、水酸化カリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
pH調整剤としては、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。
【0048】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、カロチノイド等が挙げられる。
【0049】
本発明の化粧料は必須成分を含めばその形態は特に限定されないが、水性化粧料としてあるいは、油性成分と公知の方法により乳化処理して水中油型化粧料とすることができる。また、本発明の化粧料の用途は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、洗顔料、ジェル、エッセンス(美容液)、パック等の基礎化粧品、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、ファンデーション、サンスクリーン等のメーキャップ化粧品、口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等、従来化粧料に用いるものであればいずれの形態でも広く適用可能である。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
下記各表に掲げた処方で化粧料を常法により調製し、以下の基準により評価を行った。
【0051】
(評価試験)
(低温におけるゲル化:低温安定性)
調製した化粧料を-20℃で1日かけて凍結させた後、室温で解凍し、化粧料の状態を以下の基準で評価した。
A:全くゲル化が起こらず均一な状態
B:ほんのわずかにゲルの膜が化粧料の表面に形成されているが、ほぼ均一な状態
C:化粧料の大部分でゲル化が起こっており、不均一な状態
【0052】
(官能評価)
女性専門パネル5名により、調製した化粧料を実施に肌に塗布してもらい、さらっとしたふんわり感、しっとり感、べたつきについて、下記の基準で評価を行った。
(塗布後の肌のさらっとしたふんわり感)
A:パネル5名が、さらっとしたふんわり感があると評価
B:パネル4名が、さらっとしたふんわり感があると評価
C:パネル3名が、さらっとしたふんわり感があると評価
D:パネル2名以下が、さらっとしたふんわり感があると評価
【0053】
(塗布後の肌のしっとり感)
A:パネル5名が、しっとり感があると評価
B:パネル4名が、しっとり感があると評価
C:パネル3名が、しっとり感があると評価
D:パネル2名以下が、しっとり感があると評価
【0054】
(塗布後の肌のべたつき感)
A:パネル5名が、べたつきがないと評価
B:パネル4名が、べたつきがないと評価
C:パネル3名が、べたつきがないと評価
D:パネル2名以下が、べたつきがないと評価
評価結果を配合とともに表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、実施例1~7の水性化粧料は低温条件でもゲル化が起こらないか、抑制されており、塗布後の肌もさらっとしたふんわり感があり、また、しっとり感がありながらもべたつきのない理想的な使用感が得られた。なお、-20℃での低温条件においてもゲル化が起こらないか、抑制されていることから、常温(25℃)でもゲル化を抑制すると考えられる。一方、ニコチン酸アミドを含まない処方の比較例1はゲル化が生じ、タマリンドガムが多い処方の比較例2はゲル化が生じるとともに、さらっとしたふんわり感が得られなかった。また、ニコチン酸アミドが少ない処方の比較例3はゲル化が生じ、逆にニコチン酸アミドが多い処方の比較例4ではゲル化は生じなかったが、塗布後のべたつき感が生じた。
【0057】
続いて、表2に示す水中油型化粧料の処方で同様に評価を行った。表2に示すように、水中油型化粧料においても、低温でもゲル化は起こらず、塗布後の肌もさらっとしたふんわり感があり、しっとり感がありながらべたつきのない理想的な使用感が得られた。
【0058】
【表2】
【0059】
(処方例)
表3に、本発明の化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量は全て製品全量に対する質量%で表している。
【0060】
【表3】
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目9]に記載する。
[項目1]
化粧料全量に対し、
(A)0.001~0.8質量%のタマリンドガムと、
(B)多価アルコールと、
(C)1~10質量%のニコチン酸またはその誘導体と、
を含む化粧料。
[項目2]
前記(B)多価アルコールの配合量が化粧料全量に対し3~25質量%である項目1記載の化粧料。
[項目3]
前記(C)ニコチン酸またはその誘導体に対する前記(A)タマリンドガムの質量比が0.01~0.6である項目1または2記載の化粧料。
[項目4]
前記(C)ニコチン酸またはその誘導体がニコチン酸アミドである項目1、2または3記載の化粧料。
[項目5]
前記(B)多価アルコールがグリセリン、ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールの中から選ばれる少なくとも1種である項目1~4いずれか1項記載の化粧料。
[項目6]
さらに、(D)アクリル酸系ポリマーを含む項目1~5いずれか1項記載の化粧料。
[項目7]
さらに、(E)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの単独重合体、および、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステルとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を含む項目1~6いずれか1項記載の化粧料。
[項目8]
水性化粧料である項目1~7いずれか1項記載の化粧料。
[項目9]
水中油型化粧料である項目1~7いずれか1項記載の化粧料。