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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20250221BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20250221BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20250221BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20250221BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B15/00 V
G02B7/02 A
G03B17/02
G03B17/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020099992
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196374
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亨
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-365560(JP,A)
【文献】特開2010-022617(JP,A)
【文献】特開2016-106764(JP,A)
【文献】特開2018-105904(JP,A)
【文献】特開2020-016687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備え、前記レンズ群が、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有するレンズユニットにおいて、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとを一体化させて前記第1のレンズと前記第2のレンズとの接合部を外側から覆うように前記第1および第2のレンズの外周に嵌合される環状体を備え、
前記環状体は、前記鏡筒の内周面に嵌合されるとともに、前記第1および第2のレンズの外周側面に沿ってこれらのレンズと嵌合するように光軸方向に延びる第1の延在部と、前記第2のレンズとこの第2のレンズにその像側で隣接する第3のレンズとの間に介挿されてこれらのレンズと嵌合するように前記第1の延在部の像側端部から径方向内側に延びる第2の延在部とから成り、
前記第1のレンズと前記環状体の前記第1の延在部との間、および前記第2のレンズと前記環状体の前記第2の延在部との間にはそれぞれ、前記レンズと前記環状体との間を気密に保って前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内を外部に対して密閉するためのシール部材および/または接着剤が設けられることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第2の延在部は、前記内側収容空間内で像側から物体側へと流れる水蒸気を含む暖気を遮断するための環状の遮断壁部を形成することを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記遮断壁部は、前記第2のレンズと前記第3のレンズを光軸方向で隔てるスペーサを兼ねることを特徴とする請求項に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記環状体の外面と前記鏡筒の内面との間には気密を保つための接着剤が介挿されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズユニットを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒(バレル)と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特に車載カメラ用のレンズユニットでは、少なくとも一部が車外に設置される場合、防水および防塵のため、図3に示されるように、鏡筒102の内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ100と鏡筒102との間にOリング104が介挿され、鏡筒102の内側のレンズ群L内に水や塵埃が侵入しないようにしている。この場合、例えば、第1のレンズ100の外周側面100aに、該レンズ100の像側部分で径が小さくなった段差状の縮径部100bが設けられ、この縮径部100bにOリング104が装着されて、第1のレンズ100の外周側面100aと鏡筒102の内周面102aとの間でOリング104が径方向で圧縮されることにより、鏡筒102の物体側端部が封止された状態となっている。
【0004】
さらに、鏡筒102は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図7において上端部)のカシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、第1のレンズ100をこのカシメ部123で鏡筒102の物体側端部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したようにOリング104によって防水対策を行なっても、湿気(水蒸気)は様々な経路を通じてレンズユニット内に侵入し得る。そのため、外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなると、レンズユニット内の水蒸気が凝縮してレンズ表面に結露が生じる。特に、外部との温度差の影響が最も大きい第1のレンズ100とこれに隣接する第2のレンズ101との間のレンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が生じ易い。
【0007】
外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなる要因としては、外気が冷たい冬期にレンズユニット内の温度が上昇すること、例えばレンズユニットを通じて集光される光を受光して電気信号に変換するための常時通電されたイメージセンサ(撮像素子)から伝わる熱によりレンズユニット内の温度が上昇すること、あるいは、前記イメージセンサや周囲環境(例えば車両のエンジン)からの熱によりレンズユニット内の温度が高い状態で第1のレンズ100の表面100dが外気や雨等に晒されたりするなどして第1のレンズ100が冷却されることなどが挙げられる。
【0008】
また、レンズユニット内への水蒸気の侵入を許容する経路としては、例えば、鏡筒102のカシメ部123と第1のレンズ100との間の隙間からOリング104の周囲の一部並びに第1のレンズ100と鏡筒102および/または第2のレンズ101との間の隙間を通じてレンズ間空間S1等へと至る経路、あるいは、鏡筒102を形成する透湿性の樹脂を介しての経路などを挙げることができる。さらに、レンズユニットの像側に配置されたイメージセンサ(撮像素子)は動作時に100度前後に上昇するが、その際に、イメージセンサが搭載された基板に含まれる水分が水蒸気化して鏡筒102とレンズ群Lの各レンズとの間の隙間を通じてレンズ間空間S1に到達する経路もある。
【0009】
いずれにしても、このような経路を通じて水蒸気がレンズユニット内に侵入し、前述したような要因により外気とレンズユニット内との間で温度差が生じると、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ100の裏面100cに結露が起こり、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなる(視認性が悪化する)。したがって、レンズユニットの気密性を更に一層確保して、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑制することが求められる。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、最も物体側に位置されるレンズとこれに隣接するレンズとの間のレンズ間空間内への水蒸気の侵入を抑制してレンズ表面結露を防止できるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、該レンズ群を収容保持するための内側収容空間を有する筒状の鏡筒とを備え、前記レンズ群が、最も物体側に位置される第1のレンズと、この第1のレンズとその像側で隣接する第2のレンズとを有するレンズユニットにおいて、
前記第1のレンズと前記第2のレンズとを一体化させて前記第1のレンズと前記第2のレンズとの接合部を外側から覆うように前記第1および第2のレンズの外周に嵌合される環状体を備え、
前記環状体は、前記鏡筒の内周面に嵌合されるとともに、前記第1のレンズと前記第2のレンズとの間のレンズ間空間内を外部に対して密閉するためのシール部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の上記構成によれば、第1および第2のレンズの外周に嵌合される環状体によって第1のレンズと第2のレンズとが一体化されて第1のレンズと第2のレンズとの接合部が外側から覆われる(閉じられる)ため、鏡筒の外部から鏡筒内へと向かう経路、および、鏡筒の内側収容空間内の経路、特に、レンズユニットの像側に配置されるイメージセンサ(撮像素子)を搭載する基板から鏡筒とレンズ群Lの各レンズとの間の隙間を経由して物体側へと向かう経路を通じて第1のレンズと第2のレンズとの間のレンズ間空間へと侵入しようとする水蒸気を環状体によって遮断できる。しかも、環状体には、第1のレンズと第2のレンズとの間のレンズ間空間内を外部に対して密閉するためのシール部が設けられているため、高湿環境下であっても、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を抑えて(気密性を向上させて)、レンズ間空間内の水蒸気量を低下させ、レンズ表面結露、とりわけ、第1のレンズの像側の表面(裏面)に結露が生じることを抑制できる。したがって、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなるという視認性の悪化を防止することができる。また、このように、環状体によって第1および第2のレンズを一体にしてユニット化できれば、このユニット単体で、すなわち、レンズユニット全体の組み立て後ではなく組み立て前に、レンズ間空間内の気密試験(密閉状態(防曇性能)を確認する試験)を行なうこともできる。
【0013】
なお、環状体は、金属または樹脂によって形成されてもよいが、金属によって形成されることが好ましい。これは、環状体を樹脂により形成すると、その吸湿性に起因して防曇性能の劣化が懸念されるが、環状体を金属によって形成すると、そのような防曇性能の劣化を抑制できるからである。
【0014】
また、上記構成において、シール部は、環状体の内面と第1のレンズの外面との間および環状体の内面と第2のレンズの外面との間にそれぞれ介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材および/または接着剤を有することが好ましい。これによれば、シール部による気密状態を効果的に且つ簡単に実現でき、環状体と第1および第2のレンズとの間の隙間を通じて水蒸気がレンズ間空間へと侵入することを確実に防止できる。なお、シール部材としては、例えば、Oリング、ガスケット等を挙げることができ、また、接着剤としては、気密性を確保するための接着剤、例えば、エポキシ系接着剤等を挙げることができる。
【0015】
また、上記構成において、シール部は、内側収容空間内で像側から物体側へと流れる水蒸気を含む暖気を遮断するための環状の遮断壁部を有することが好ましい。これによれば、内側収容空間内で像側から物体側へと流れる水蒸気を含む暖気が遮断壁部によって遮断されるため、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を抑えてレンズ間空間内の水蒸気量を低下させることができることは勿論のこと、外気温とレンズユニット内の温度との間の差が大きくなることを回避でき、特に、レンズ間空間の温度変化を緩やかにでき、したがって、レンズ間空間内で、とりわけ第1のレンズの裏面に結露が生じることを効果的に防止できる。
【0016】
また、上記構成において、遮断壁部は、第2のレンズとこの第2のレンズにその像側で隣接する第3のレンズとの間に介挿されてこれらのレンズ同士を光軸方向で隔てるスペーサを兼ねることが好ましい。これによれば、遮断壁部が、第2のレンズと第3のレンズとを光軸方向で隔てるスペーサを兼ねているため、前述した温度差抑制機能およびスペーサ機能という2つの機能を遮断壁部という環状体の一部位のみで果たすことができる。これは、レンズユニットの部品点数の減少に寄与し、スペースが制約された内側収容空間内においては特に有益である。
【0017】
また、上記構成において、シール部は、遮断壁部と第2のレンズおよび/または第3のレンズとの間に介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材および/または接着剤を有することが好ましい。これによれば、第2のレンズおよび/または第3のレンズが関与する水蒸気流通経路の気密も確保でき、レンズ間空間内への水蒸気の侵入を抑える気密性能を更に向上させることができる。
【0018】
また、上記構成において、環状体の外面と前記鏡筒の内面との間には気密を保つための接着剤が介挿されていることが好ましい。これによれば、気密性の接着剤により、鏡筒の外部から鏡筒の内側収容空間内へと向かう水の流れと、内側収容空間内で像側(イメージセンサ側)から物体側へと向かう暖気の流れとを同時に遮断できる。
【0019】
また、本発明に係るカメラモジュールは、前記レンズユニットを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、前述のレンズユニットの作用効果をカメラモジュールで得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1および第2のレンズの外周に嵌合される環状体によって第1のレンズと第2のレンズとが一体化されて第1のレンズと第2のレンズとの接合部が外側から覆われるとともに、第1のレンズと第2のレンズとの間のレンズ間空間内を外部に対して密閉するためのシール部が環状体に設けられているため、第1のレンズと第2のレンズとの間のレンズ間空間内への水蒸気の侵入を抑制してレンズ表面結露を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略半断面図である。
図2図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの概略半断面図である。
図3】従来のレンズユニットの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、図1図3において複数のレンズについてはハッチングを省略している。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、例えば金属製の円筒状(本実施形態では内周面が円形)の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ(外周面が円形)、例えば、物体側から、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17、および、第6のレンズ18から成る6つのレンズとを備えている。これらのレンズ13~18は、それらの一部同士の間にスペーサ20A,20B,20Cを介しつつ積み重ねられるように鏡筒12内に組み込まれている。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。なお、本実施の形態において、スペーサ20A,20B,20Cは、ゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」や、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0024】
鏡筒12の内側収容空間S内に組み込まれて収容保持される複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で積み重ねられて配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17,18が並べられた状態となって、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。この場合、レンズ群Lを構成するこれらのレンズ13,14,15,16,17,18は全てがガラス製であるが、そうである必要はなく、一部がガラス製で一部が樹脂製、または、全てが樹脂製であっても構わない。また、本実施の形態において、像側に位置される2つの第4および第5のレンズ16,17は貼り合わせレンズであるが、そうである必要もない。また、本実施の形態において、鏡筒12は、前述したように金属製であるが、樹脂によって形成されても構わない。なお、これらのレンズ13,14,15,16,17,18の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0025】
鏡筒12の物体側端部12b(図1において上端部)には締結固定部材としての略円筒状のキャップ23が螺着されており、このキャップ23によって最も物体側に位置される第1のレンズ13が鏡筒12の物体側端部12bに固定されている。具体的には、キャップ23は、その周側壁の内周面に形成された雌ネジ部23aが鏡筒12の物体側端部12bの外周面に形成された雄ネジ部12aに螺合されて、そのフランジ状の上端の径方向内側の周端縁部23bのテーパ端面29が第1のレンズ13の物体側に面する表面13bに当て付けられており、このキャップ23が締め付けられることによって第1のレンズ13が物体側端部12bに固定されてレンズ群Lが鏡筒12内に光軸方向で保持される。
【0026】
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも外径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられており、この内側フランジ部24とキャップ23との間で、レンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15,16,17,18とスペーサ20A,20B,20Cとが光軸方向で挟持されて保持される。なお、鏡筒12の像側の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鍔状に設けられている。
【0027】
図2は、以上のような構成を成すレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、フィルタ99が装着された図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0028】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージングされたイメージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0029】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面301aとレンズユニット11の鏡筒12の外周面12cとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0030】
イメージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、イメージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0031】
以上のような構成を成すレンズユニット11およびカメラモジュール300において、最も物体側に位置される第1のレンズ13およびこの第1のレンズ13とその像側で隣接する第2のレンズ14はそれぞれ、光軸方向で互いに対向して当接する円環状の当接面(対向面)13a,14aを有しており、これらの当接面13a,14aによって第1のレンズ13と第2のレンズ14との接合部70を形成している。また、第1のレンズ13および第2のレンズ14は、それらの間にレンズ間空間S1を形成している。ここで、前述したように、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を許容する経路としては様々なものがあるが、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ13の裏面13dに結露が起こり、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなるという視認性の悪化を防止するには、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑制することが求められる。しかしながら、鏡筒12の外部から鏡筒12内へと向かう経路、特に鏡筒12と第1のレンズ13との間の隙間を通じて水分が鏡筒12内に侵入してくる可能性があり、また、本実施の形態のように金属製の鏡筒12内にガラス製のレンズレンズ13,14,15,16,17,18が嵌め込まれる組み付け形態の場合には、鏡筒12とレンズレンズ13,14,15,16,17,18との間に嵌め合いを可能にするための若干の隙間があることからそのような隙間を通じて、あるいは、図示しない別の実施の形態としてレンズが光軸方向に対して垂直な断面内で鏡筒12と周方向で点接触する(すなわち、光軸方向に対して垂直な断面において、鏡筒12の内周面が多角形を成し且つレンズが円形を成す、または、鏡筒12の内周に設けられた突起状のリブにより点接触する)ことにより径方向で鏡筒12の内面との間に隙間(したがって、光軸方向に沿って連続的に延びる連通路)を形成している場合にはそのような隙間を通じて、常時通電されたイメージセンサ304(図2参照)の基板に含まれる水分が基板の加熱によって水蒸気化して内側収容空間S内へと侵入し得る。
【0032】
そこで、本実施の形態では、このような様々な想定し得る経路を通じてレンズ間空間S1内に侵入しようとする水蒸気を遮断できる構造を提供する。以下、これについて詳しく説明する。
上記構成のレンズユニット11およびカメラモジュール300は、第1のレンズ13と第2のレンズ14とを一体化させて第1のレンズ13と第2のレンズ14との接合部70を外側から覆うように第1および第2のレンズ13,14の外周に嵌合される金属製の環状体60を備えている。すなわち、本実施の形態では、第1のレンズ13、第2のレンズ14、および、環状体60が1つのユニットとして構成されている。この場合、環状体60は、接合部70を形成する当接面13a,14aの径方向外側端縁を外部に対して閉じるように第1および第2のレンズ13,14の外周側面に沿って光軸方向に延びる第1の延在部60Aと、第2のレンズ14とこの第2のレンズ14にその像側で隣接する第3のレンズ15との間に介挿されてこれらのレンズ14,15同士を光軸方向で隔てる前述したスペーサ20Cを形成するように第1の延在部60Aの像側端部から径方向内側に延びる第2の延在部60Bとから成り、鏡筒12の内周面12dに嵌合されるとともに、第1のレンズ13と第2のレンズ14との間のレンズ間空間S1内を外部に対して密閉するための複数のシール部を有している。
【0033】
具体的に、第1のシール部は、スペーサ20Cを兼ねる第2の延在部60Bによって形成される。この第2の延在部60Bは、像側に面する第2のレンズ14の表面14bに沿って径方向に延びており、内側収容空間S内で鏡筒12とレンズとの間の隙間を通じて像側から物体側へと流れる水蒸気を含む暖気を遮断するための環状の遮断壁部を形成している。また、この遮断壁部は、第2のレンズ14の表面14bに当接する当接部60Baを有している。
【0034】
また、第2のシール部40は、環状体60の内面60aと第1のレンズ13の外周側面13cとの間に介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材としてのOリング50を有している。この場合、Oリング50は、環状体60の第1の延在部60Aの内面60aの物体側端部に形成された段差部60cに嵌め込まれており、第1のレンズ13の外周側面13cと環状体60の内面60aとの間で径方向に圧縮されることにより、これらの間を封止し、それにより、レンズユニット11の物体側の端部から環状体60内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、Oリング50に代えて気密性の接着剤を用いてもよい。
【0035】
また、第3のシール部42は、環状体60の内面60aと第2のレンズ14の外面(像側に面する表面)14bとの間に介挿されてこれらの間を気密に保つ接着剤52を有する。この場合、接着剤52は、環状体60の第2の延在部60Bの内面60aに形成された凹部60ab内に充填されている。なお、接着剤52に代えてOリング等のシール部材を用いてもよい。また、接着剤52は、第2のレンズ14の外周側面と環状体60の第1の延在部60Aの内面60aとの間に介挿されてもよい。
【0036】
また、第4のシール部44は、遮断壁部およびスペーサ20Cでもある第2の延在部60Bと像側に面する第2のレンズ14の表面14bとの間に介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材としてのOリング54を有する。この場合、Oリング54は、環状体60の第2の延在部60Bの内面(物体側に面する表面)に形成された段差部60Bbに嵌め込まれている。また、図示しないが、これに代えて、あるいは、これに加えて、第2の延在部60Bと物体側に面する第3のレンズ15の表面15aとの間に介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材としてのOリングが第4のシール部または更なるシール部として設けられてもよい。この場合、Oリングは、環状体60の第2の延在部60Bの外面(像側に面する表面)に形成された段差部に嵌め込まれる。なお、Oリング54に代えて気密性の接着剤を用いてもよい。
【0037】
また、本実施の形態においては、環状体60の外面60bと鏡筒12の内周面12dとの間に、気密を保つための接着剤80が介挿されている。これによれば、気密性の接着剤80により、鏡筒12の外部から鏡筒12の内側収容空間S内へと向かう水の流れと、内側収容空間S内で像側(イメージセンサ304側)から物体側へと向かう暖気の流れとを同時に遮断できる。なお、このような接着剤80に加え、鏡筒12の外部から鏡筒12の内側収容空間S内へと向かう水の流れを再び外部へと逃がすようにキャップ23と鏡筒12との螺合部であるネジ部12a,23aに排水路46が形成されてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1および第2のレンズ13,14の外周に嵌合される環状体60によって第1のレンズ13と第2のレンズ14とが一体化されて第1のレンズ13と第2のレンズ14との接合部70が外側から覆われる(閉じられる)ため、鏡筒12の外部から鏡筒12内へと向かう経路、および、鏡筒12の内側収容空間S内の経路、特に、レンズユニット11の像側に配置されるイメージセンサ(撮像素子)304を搭載する基板から鏡筒12とレンズ群Lの各レンズとの間の隙間を経由して物体側へと向かう経路を通じて第1のレンズ13と第2のレンズ14との間のレンズ間空間S1へと侵入しようとする水蒸気を環状体60によって遮断できる。しかも、環状体60には、第1のレンズ13と第2のレンズ14との間のレンズ間空間S1内を外部に対して密閉するためのシール部40,42,44,60Bが設けられているため、高湿環境下であっても、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑えて(気密性を向上させて)、レンズ間空間S1内の水蒸気量を低下させ、レンズ表面結露、とりわけ、第1のレンズ13の像側の表面(裏面)13dに結露が生じることを抑制できる。したがって、撮像画像がぼやけて、所望の解像度が得られなくなるという視認性の悪化を防止することができる。また、このように、環状体60によって第1および第2のレンズ13,14を一体にしてユニット化できれば、このユニット単体で、すなわち、レンズユニット11全体の組み立て後ではなく組み立て前に、レンズ間空間S1内の気密試験(密閉状態(防曇性能)を確認する試験)を行なうこともできる。
【0039】
また、本実施の形態では、環状体60が金属によって形成されているため、樹脂のような吸湿性に起因する防曇性能の劣化を抑制できる。
【0040】
また、本実施の形態において、環状体60は、環状体60の内面60aと第1のレンズ13の外面との間および環状体60の内面60aと第2のレンズ14の外面との間にそれぞれ介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材50および/または接着剤52を有する第2および第3のシール部40,42を備えるため、気密状態を効果的に且つ簡単に実現でき、環状体60と第1および第2のレンズ13,14との間の隙間を通じて水蒸気がレンズ間空間S1へと侵入することを確実に防止できる。
【0041】
また、本実施の形態において、環状体60は、内側収容空間S内で像側から物体側へと流れる水蒸気を含む暖気を遮断するための第1のシール部としての環状の遮断壁部60Bを有するため、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑えてレンズ間空間S1内の水蒸気量を低下させることができることは勿論のこと、外気温とレンズユニット11内の温度との間の差が大きくなることを回避でき、特に、レンズ間空間S1の温度変化を緩やかにでき、したがって、レンズ間空間S1内で、とりわけ第1のレンズ13の裏面13dに結露が生じることを効果的に防止できる。
【0042】
また、本実施の形態において、遮断壁部60Bは、第2のレンズ14と第3のレンズ15との間に介挿されてこれらのレンズ14,15同士を光軸方向で隔てるスペーサ20Cを兼ねているため、前述した温度差抑制機能およびスペーサ機能という2つの機能を遮断壁部という環状体60の一部位のみで果たすことができる。これは、レンズユニット11の部品点数の減少に寄与し、スペースが制約された内側収容空間S内においては特に有益である。
【0043】
また、本実施の形態において、環状体60は、遮断壁部60Bと第2のレンズ14(図示しない他の実施形態では、第2のレンズ14および/または第3のレンズ15)との間に介挿されてこれらの間を気密に保つシール部材54を有する第4のシール部44を備えているため、第2のレンズ14(および/または第3のレンズ15)が関与する水蒸気流通経路の気密も確保でき、レンズ間空間S1内への水蒸気の侵入を抑える気密性能を更に向上させることができる。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒および環状体などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、前述した実施の形態では、締結部材であるキャップによって第1のレンズが鏡筒の物体側に固定されていたが、鏡筒が樹脂で形成される場合には、径方向内側にカシメられる鏡筒の物体側端部のカシメ部によって第1のレンズが鏡筒の物体側に固定されてもよい。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施の形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施の形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13 第1のレンズ
14 第2のレンズ
15 第3のレンズ
40,42,44 シール部
50,54 シール部材
52,80 接着剤
60 環状体
60B 遮断壁部(スペーサ、シール部)
70 接合部
300 カメラモジュール
L レンズ群
O 光軸
S 内側収容空間
S1 レンズ間空間
図1
図2
図3