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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20250221BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20250221BHJP
【FI】
B09B3/40
B09B3/60 ZAB
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020162457
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055081
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河合 一寛
(72)【発明者】
【氏名】野間 彰
(72)【発明者】
【氏名】藤川 圭司
(72)【発明者】
【氏名】沖野 進
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138121(JP,A)
【文献】特表2011-516246(JP,A)
【文献】特開昭60-082197(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105396862(CN,A)
【文献】特開2009-119378(JP,A)
【文献】特開2016-028800(JP,A)
【文献】特開2011-240253(JP,A)
【文献】特表2004-525756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/40
B09B 3/60
C02F 11/08
C02F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気で廃棄物を加水分解する少なくとも1つの改質装置と、
前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化する微生物反応装置と、
前記改質装置内に含まれる水分量を取得する水分量取得装置と、
前記微生物反応装置で生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させる少なくとも1つの蒸気発生装置であって、前記水分量取得装置によって取得された前記水分量に基づいて算出される前記少なくとも1つの改質装置の蒸気要求量に応じて前記蒸気を発生させるように構成される少なくとも1つの蒸気発生装置と、
前記少なくとも1つの改質装置と前記微生物反応装置との間に設けられ、前記水分量取得装置によって取得された前記水分量に基づいて前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整する水分調整装置と、を備える、
廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記改質装置と前記微生物反応装置とを接続する保温用蒸気配管をさらに備え、
前記保温用蒸気配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気が前記改質装置から前記微生物反応装置に供給され、
前記微生物反応装置は、前記改質装置から供給された前記排気蒸気が有する熱で、所定の温度領域に含まれるように保温される、
請求項1に記載の廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記微生物反応装置が前記改質物を微生物によって低分子化した後に得られる残渣を乾燥する乾燥装置と、
前記改質装置と前記乾燥装置とを接続する乾燥用蒸気配管と、をさらに備え、
前記乾燥用蒸気配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気が前記改質装置から前記乾燥装置に供給され、
前記乾燥装置は、前記改質装置から供給された前記排気蒸気が有する熱で、前記残渣を乾燥する、
請求項1又は2に記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの改質装置と前記微生物反応装置との間に設けられる分離装置をさらに備え、
前記分離装置は、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物から、前記微生物反応装置において前記ガスを生成するのに不適な不適物を分別する、
請求項1から3の何れか一項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの蒸気発生装置は、第1蒸気発生装置及び第2蒸気発生装置を含み、
前記改質装置の蒸気要求量に応じて、前記第1蒸気発生装置及び前記第2蒸気発生装置のうち少なくとも一方で前記蒸気を発生させるように構成される、
請求項1から4の何れか一項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの改質装置は、複数の改質装置を含み、
前記複数の改質装置のうち少なくとも2つは、互いに異なるタイミングで加水分解するように構成される、
請求項1から5の何れか一項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項7】
前記複数の改質装置は、第1改質装置と、第2改質装置と、を含み、
前記第1改質装置と前記第2改質装置とを接続する排気蒸気流通配管をさらに備え、
前記排気蒸気流通配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を前記第1改質装置から前記第2改質装置に供給され、
前記第2改質装置は、前記第1改質装置から供給された前記排気蒸気の熱で昇温される、
請求項6に記載の廃棄物処理システム。
【請求項8】
前記蒸気で前記改質装置内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する昇温時間をTr、前記蒸気で前記改質装置内の温度を設定温度に維持する維持時間をTkとすると、Tr/Tk≧0.3を満たす、
請求項1から7の何れか一項に記載の廃棄物処理システム。
【請求項9】
Tr/Tk≧1.0を満たす、
請求項8に記載の廃棄物処理システム。
【請求項10】
前記水分量取得装置は、前記改質装置に供給される前記蒸気の量、前記改質装置に前記蒸気が供給されている状態が継続した時間、及び、前記改質装置内の状態変化量に基づいて、前記改質装置内に含まれる水分量を取得する、
請求項1に記載の廃棄物処理システム。
【請求項11】
蒸気で改質装置内の廃棄物を加水分解するステップと、
前記改質装置内に含まれる水分量を取得するステップと、
加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化するステップと、
前記改質物を微生物によって低分子化するステップで生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて、前記改質装置内に含まれる前記水分量に基づいて算出される前記改質装置の蒸気要求量に応じた前記蒸気を発生させるステップと、
取得された前記水分量に基づいて前記改質装置で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整するステップと、を備える、
廃棄物処理方法。
【請求項12】
蒸気で廃棄物を加水分解する少なくとも1つの改質装置と、
前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化する微生物反応装置と、
前記微生物反応装置で生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させる少なくとも1つの蒸気発生装置と、
前記改質装置内に含まれる水分量を取得する水分量取得装置と、
前記少なくとも1つの改質装置と前記微生物反応装置との間に設けられ、前記水分量取得装置によって取得された前記水分量に基づいて前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整する水分調整装置と、
前記微生物反応装置が前記改質物を微生物によって低分子化した後に残る残渣を脱水する脱水装置と、
前記改質装置と前記微生物反応装置とを連通する改質物ラインであって、内部に前記改質物が流通する流路が形成されている改質物ラインと、を備え、
前記水分調整装置は、前記脱水装置と前記改質物ラインとを連通する注水管を含む、
廃棄物処理システム。
【請求項13】
前記水分調整装置は、前記注水管に設けられる調整弁をさらに含み、
前記調整弁は、前記水分量取得装置によって取得された前記水分量に基づいて開度が調整されるように構成されている、
請求項12に記載の廃棄物処理システム。
【請求項14】
前記水分量取得装置は、前記改質装置に供給される前記蒸気の量、前記改質装置に前記蒸気が供給されている状態が継続した時間、及び、前記改質装置内の状態変化量に基づいて、前記改質装置内に含まれる水分量を取得する、
請求項12又は13に記載の廃棄物処理システム。
【請求項15】
蒸気で改質装置内の廃棄物を加水分解するステップと、
加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物反応装置内で微生物によって低分子化するステップと、
前記改質装置内に含まれる水分量を取得するステップと、
取得された前記改質装置内に含まれる水分量に基づいて、前記改質装置内で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整するステップと、
前記改質物を微生物によって低分子化した後に残る残渣を脱水するステップと、
前記改質物を微生物によって低分子化するステップで生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させるステップと、を備え、
前記廃棄物の含有水分量の調整は、前記残渣の脱水によって発生する水を前記改質装置と前記微生物反応装置とを連通する改質物ライン内の前記改質物に供給することによって行われる、
廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭、食品工場等から排出された都市廃棄物、稲わら、麦わら、パーム残渣等の農業廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥等、未利用バイオマスの有効利用が望まれている。例えば、特許文献1に記載の技術では、廃棄物は改質装置によって蒸気で水熱処理(加水分解)され、この加水分解により得られた反応物の固相から固形燃料が製造されている。そして、固形燃料の燃焼により生成する燃焼エネルギを用いて蒸気を発生させ、この発生した蒸気を用いて上記の加水分解が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-511386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、固形燃料の燃焼により生成する燃焼エネルギを用いて蒸気を発生させているため、改質装置からの蒸気の要求を速やかに満たすことができず、改質装置が待機状態となってしまう虞がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、改質装置からの蒸気の要求を速やかに満たすことができる廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る廃棄物処理システムは、蒸気で廃棄物を加水分解する少なくとも1つの改質装置と、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化する微生物反応装置と、前記微生物反応装置で生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させる少なくとも1つの蒸気発生装置と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る廃棄物処理方法は、蒸気で廃棄物を加水分解するステップと、加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化するステップと、前記改質物を微生物によって低分子化するステップで生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法によれば、改質装置からの蒸気の要求を速やかに満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係る廃棄物処理システムの構成模式図である。
図2】本開示の実施形態2に係る廃棄物処理システムの構成模式図である。
図3】本開示の実施形態3に係る廃棄物処理システムの構成模式図である。
図4】本開示の実施形態4に係る廃棄物処理システムの構成模式図である。
図5】本開示の実施形態5に係る廃棄物処理システムの構成模式図である。
図6】本開示の一実施形態に係る廃棄物処理システムの構成模式図の一部であって、改質装置の周辺構成が図示されている。
図7A】本開示の一実施形態に係る第1改質装置に供給される蒸気の量と時間との関係を示すグラフである。
図7B】本開示の一実施形態に係る第2改質装置に供給される蒸気の量と時間との関係を示すグラフである。
図8】本開示の一実施形態に係る廃棄物処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による廃棄物処理システム及び廃棄物処理方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
(実施形態1)
<実施形態1に係る廃棄物処理システムの構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る廃棄物処理システム1の構成模式図である。図1に示されるように、本開示の実施形態1に係る廃棄物処理システム1は、改質装置2と、微生物反応装置3と、蒸気発生装置4と、を備える。
【0012】
改質装置2は、廃棄物を蒸気S1で加水分解する。このような改質装置2は、例えば、都市ごみのような廃棄物を収集した車両又はプラント等から廃棄物をそのまま受け入れて蒸気S1によって廃棄物をバッチ式に加水分解するものであり、具体的には、廃棄物が投入される投入口11及び加水分解された廃棄物が排出される排出口12を含む筐体10を備えるバッチ式の改質装置である。投入口11及び排出口12にはそれぞれ不図示の開閉弁が設けられ、開閉弁をそれぞれ閉じることにより、筐体10を密閉できる。改質装置2における廃棄物の加水分解は、蒸気S1が廃棄物に接触して廃棄物を加熱する湿式の加水分解であってもよいし、蒸気S1が廃棄物には接触しないで間接的に廃棄物を加熱する乾式の加水分解であってもよい。乾式の加水分解の場合には、筐体10内の廃棄物中の水分が蒸発して水蒸気となり、その水蒸気によって筐体10内の廃棄物が均一に加熱される。また、加水分解のためには水分が必要であるが、水蒸気によって水分が廃棄物の表面に付着することで水分が供給される。尚、図1には1つの改質装置2が記載されているが、複数の改質装置2が直列に接続された構成や複数の改質装置2が並列に接続された構成、直列に接続された構成と並列に接続された構成とが組み合わされた構成であってもよい。
【0013】
廃棄物の一例として挙げた都市ごみは、生ごみ、紙ごみ、プラスチックごみを主成分として、少量の金属が含まれる。廃棄物処理システム1で処理される廃棄物は、都市ごみに限定するものではなく、工場等からの排水を処理することにより生じた汚泥や農業系廃棄物等のように含有水分量が都市ごみよりも多いものも廃棄物処理システム1で処理可能である。
【0014】
微生物反応装置3は、改質装置2で加水分解された廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物X1を微生物によって低分子化する。この際に、微生物反応装置3はバイオガスG1を生成する。微生物反応装置3は、改質物X1を原料として、微生物による生物作用を利用してバイオガスG1を生成するものであれば、どのような構成でもよい。例えば、微生物反応装置3は、メタン等のバイオガスG1を有価物として生成するバイオガス発酵槽である。しかし、微生物反応装置3はバイオガス発酵槽に限定されない。例えば、微生物反応装置3は、デンプンやセルロースのような炭水化物から有価物としての糖を製造する糖化槽や堆肥化して堆肥を製造する堆肥化装置であってもよい。尚、図1に例示した構成によれば、改質装置2で加水分解された廃棄物を固液分離せずに微生物反応装置3で低分子化させて有価物を生成させることができるので、廃棄物処理システム1は水分含量の低い廃棄物でも低コストで処理可能となっている。
【0015】
蒸気発生装置4は、微生物反応装置3で生成したバイオガスG1の燃焼エネルギのみを用いて蒸気S1を発生させる。言い換えると、蒸気発生装置4は、微生物反応装置3で生成したバイオガスG1以外の燃料の燃焼エネルギで蒸気S1を発生させていない。そして、改質装置2は、蒸気発生装置4で発生させた蒸気S1によって廃棄物を加水分解する。このような蒸気発生装置4は、例えば、排ガスボイラを含む。排ガスボイラは、バイオガスG1の燃焼によって発生する排ガスの熱により蒸気S1を発生させる。尚、蒸気発生装置4は、排ガスボイラに限定されない。蒸気発生装置4は、排ガスボイラに代わり、バイオガスG1を燃料として蒸気S1を発生させる燃焼ボイラを含んでもよい。また、蒸気発生装置4は、排ガスボイラ及び燃焼ボイラの両方を含んでもよい。
【0016】
<実施形態1に係る廃棄物処理システムの作用・効果>
本開示の実施形態1に係る廃棄物処理システム1の作用・効果について説明する。ガス状の燃料は、固形状や液状の燃料と比較して燃焼するのが早い。実施形態1によれば、改質装置2は、微生物反応装置3で生成したバイオガスG1の燃焼エネルギのみを用いて発生させた蒸気で加水分解する。このため、改質装置2からの蒸気S1の要求を速やかに満たすことができる。
【0017】
改質装置2が水分含量の少ない廃棄物(例えば、都市ごみ)を加水分解して改質物X1を生成した場合、改質物X1に含まれる液体のみを微生物によって低分子化するよりも、改質物X1に含まれる固体を微生物によって低分子化する方がバイオガスG1の生成量が多いことがある。実施形態1によれば、微生物反応装置3は、改質装置2で加水分解された廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物X1を微生物によって低分子化する。このため、バイオガスG1の生成量の増加を図ることができる。
【0018】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る廃棄物処理システム1について説明する。実施形態2に係る廃棄物処理システム1は、実施形態1に対して、保温用蒸気配管8を付加したものである。尚、実施形態2において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0019】
<実施形態2に係る廃棄物処理システムの構成>
図2は、本開示の実施形態2に係る廃棄物処理システム1の構成模式図である。図2に示されるように、廃棄物処理システム1は、改質装置2と微生物反応装置3とを接続する保温用蒸気配管8をさらに備える。
【0020】
保温用蒸気配管8は、改質装置2で廃棄物を加水分解した後に改質装置2から排気される排気蒸気S2が流通する。改質装置2は、この保温用蒸気配管8を介して、排気蒸気S2を微生物反応装置3に供給する。微生物反応装置3は、改質装置2から供給された排気蒸気S2が有する熱で、例えば30度以上50度以下のような所定の温度領域に含まれるように保温される。
【0021】
<実施形態2に係る廃棄物処理システムの作用・効果>
微生物反応装置3は、微生物による改質物X1の低分子化を促進するために、所定の温度領域に含まれるように保温されることが望ましい。実施形態2によれば、排気蒸気S2を微生物反応装置3を保温するための熱源として利用する。このため、微生物反応装置3を保温するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。
【0022】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る廃棄物処理システム1について説明する。実施形態3に係る廃棄物処理システム1は、実施形態1に対して、乾燥装置13及び乾燥用蒸気配管15を付加したものである。尚、実施形態3において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。別の実施形態に係る廃棄物処理システム1は、実施形態2に対して、乾燥装置13及び乾燥用蒸気配管15を付加したものであってもよい。
【0023】
<実施形態3に係る廃棄物処理システムの構成>
図3は、本開示の実施形態3に係る廃棄物処理システム1の構成模式図である。図3に示されるように、廃棄物処理システム1は、微生物反応装置3が改質物X1を微生物によって低分子化した後に得られる残渣X2を乾燥する乾燥装置13と、改質装置2と乾燥装置13とを接続する乾燥用蒸気配管15と、をさらに備える。
【0024】
図3に例示する形態では、廃棄物処理システム1は、微生物反応装置3が改質物X1を微生物によって低分子化した後に残る残渣X2(発酵残渣)を脱水する脱水装置14を含んでいる。乾燥装置13には、脱水装置14で脱水された残渣X2が供給される。
【0025】
乾燥用蒸気配管15は、改質装置2で廃棄物を加水分解した後に改質装置2から排気される排気蒸気S2が流通する。改質装置2は、この乾燥用蒸気配管15を介して、排気蒸気S2を乾燥装置13に供給する。乾燥装置13は、改質装置2から供給された排気蒸気S2が有する熱で、脱水装置14で脱水された残渣X2を乾燥する。
【0026】
<実施形態3に係る廃棄物処理システムの作用・効果>
図3に例示したように、微生物反応装置3を含む廃棄物処理システム1は、微生物反応装置3から得られる残渣X2を乾燥する乾燥装置13を含む場合がある。実施形態3によれば、排気蒸気S2を乾燥装置13が残渣X2を乾燥するための熱源として利用する。このため、乾燥装置13において残渣X2を乾燥するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。
【0027】
(実施形態4)
<実施形態4に係る廃棄物処理システムの構成>
次に、実施形態4に係る廃棄物処理システム1について説明する。実施形態4に係る廃棄物処理システム1は、実施形態1に対して、分離装置16を付加したものである。尚、実施形態4において、実施形態1の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。別の実施形態に係る廃棄物処理システム1は、実施形態2又は3に対して、分離装置16を付加したものであってもよい。
【0028】
図4は、本開示の実施形態4に係る廃棄物処理システム1の構成模式図である。図4に示されるように、廃棄物処理システム1は、改質装置2と微生物反応装置3との間に設けられる分離装置16をさらに備える。
【0029】
分離装置16は、改質装置2で加水分解された廃棄物である改質物X1から、微生物反応装置3においてバイオガスG1を生成するのに不適な不適物を分別する。このような分離装置16は、大粒径成分と大粒径成分よりも粒径の小さい小粒径成分とに改質物X1を分離するものであり、例えば、任意のメッシュサイズを有するスクリーンであり、そのメッシュサイズは大粒径成分と小粒径成分との境界の粒径に相当する。小粒径成分は、微生物反応装置3で低分子化されて有価物を生成する。大粒径成分は、改質物X1から分別され、微生物反応装置3に供給されないようになっている。これは、大粒径成分の主成分は、改質装置2における加水分解によっても比較的大きな粒径を有する成分であり、プラスチックごみに由来するものや金属のように、微生物反応装置3で低分子化され得ないものである。別の言い方をすれば、大粒径成分及び小粒径成分はそれぞれ、微生物反応に対する反応不適物及び反応適合物である。
【0030】
図4に例示する形態では、廃棄物処理システム1は、上述した脱水装置14と、改質装置2と分離装置16とを連通する改質物移送ライン22と、脱水装置14と改質物移送ライン22とを連通する注水管24と、を含む。
【0031】
改質物移送ライン22は、改質物X1がスラリー状の場合は配管であってもよく、改質物X1が固体の場合にはコンベア等であってもよい。改質物X1が固体であっても空気等で圧送可能であれば、改質物移送ライン22は配管であってもよい。脱水装置14は、注水管24を介して、微生物反応装置3の残渣X2から脱水した水やボイラブロー水を、改質物移送ライン22内の改質物X1に供給する。つまり、注水管24は、改質装置2と微生物反応装置3との間に、改質物X1の含有水分量を調整する水分調整装置として構成される。尚、図5に例示する形態では、注水管24は、分離装置16より上流で改質物X1の含有水分量を調整するが、本開示はこの実施形態に限定されない。別の実施形態では、注水管24は、分離装置16より下流で改質物X1の含有水分量を調整する。
【0032】
図4に例示する形態では、廃棄物処理システム1は、改質装置2内に含まれる水分量を取得する水分量取得装置30をさらに含む。水分量取得装置30は、改質装置2に供給した原料の統計データ(画像に基づいて機械学習、AIなどでごみ性状を推定したものも含む)や重量、圧密トルク、改質装置温度(内部、表面)、改質装置2に供給される蒸気S1の量、改質装置2に蒸気S1が供給されている状態が継続した時間、及び、改質装置2内の温度変化量などに基づいて、改質装置2内に含まれる水分量を取得する。つまり、水分量取得装置30は、改質装置2に供給される蒸気S1の量を取得する流量計30A、改質装置2内の温度を取得する温度計30B、タイマー30C、及び制御装置30Dを含む。制御装置30Dは、流量計30A、温度計30B、及びタイマー30Cのそれぞれと電気的に接続されており、流量計30A、温度計30B、及びタイマー30Cのそれぞれが取得したデータに基づいて改質装置2内に含まれる水分量を算出(取得)する。
【0033】
尚、水分量取得装置30は、改質装置2内に含まれる水分量を取得するのであれば、図4に例示する形態に限定されない。例えば、水分量取得装置30は、近赤外式やマイクロ波式、静電容量型の水分計であってもよい。
【0034】
上述した注水管24(水分調整装置)は、水分量取得装置30によって取得された水分量に基づいて、改質物X1の含有水分量を調整する。図4に例示する形態では、注水管24には、脱水装置14から改質物移送ライン22に供給される水(微生物反応装置3の残渣X2から脱水した水やボイラブロー水)の量を調整するための調整弁32が設けられている。この調整弁32は、制御装置30Dと電気的に接続されており、制御装置30Dから送信される指示に従って開度が調整されるようになっている。
【0035】
図4に例示する形態では、廃棄物処理システム1は、微生物反応装置3で生成したバイオガスG1を貯槽するガスホルダ18と、該ガスホルダ18に貯槽されているバイオガスG1を燃料として駆動されるガスエンジン20と、該ガスエンジン20の排ガスG4の熱により蒸気S1を発生させる排ガスボイラ4A(4)と、ガスホルダ18に貯槽されているバイオガスG1を燃料として蒸気S1を発生させる燃焼ボイラ4B(4)と、を含む。
【0036】
ガスホルダ18に貯槽されたバイオガスG1は、ガスエンジン20に供給される。ガスエンジン20は、図示しない発電機本体部(発電装置)が接続される。発電機本体部は、バイオガスG1の燃焼により生じた燃焼エネルギを用いて、発電を行う。この際、ガスエンジン20は排ガスG4を排出する。
【0037】
ガスエンジン20から排出された排ガスG4は、排ガスボイラ4Aに供給される。排ガスボイラ4A(第1蒸気発生装置)は、改質装置2に供給される蒸気S1を発生させるためのものである。排ガスボイラ4Aは、バイオガスG1の燃焼エネルギのみ、即ち排ガスG4が有する熱のみを用いて、蒸気S1を発生させる。
【0038】
ガスホルダ18に貯槽されたバイオガスG1は、燃焼ボイラ4B(第2蒸気発生装置)にも供給される。燃焼ボイラ4Bは、改質装置2に供給される蒸気S1を発生させるためのものである。燃焼ボイラ4Bは、バイオガスG1を燃料としてバイオガスG1の燃焼エネルギのみを用いて、蒸気S1を発生させる。
【0039】
<実施形態4に係る廃棄物処理システムの作用・効果>
実施形態4によれば、改質装置2と微生物反応装置3との間に分離装置16が設けられているので微生物反応装置3へ供給される不適物の量を減らすことができる。その結果、微生物反応装置3においてバイオガスG1の生成が阻害されるおそれを低減し、微生物反応装置3はバイオガスG1の生成を効率よく行うことができる。
【0040】
また、実施形態4によれば、改質装置2と分離装置16との間に水分調整装置として機能する注水管24が設けられているので、改質装置2で加水分解された改質物X1の全固形濃度(TS)を調整し、微生物反応装置3によるバイオガスG1の生成の効率を向上させることができる。また、微生物反応装置3の残渣X2を脱水した水にはアンモニアが含まれているので、改質物X1中の窒素含有量が低い場合には、改質物X1に窒素含有物質の補給もできる。
【0041】
本発明者らの知見によれば、改質装置2に供給される蒸気S1の量、改質装置2に蒸気S1が供給されている状態が継続した時間、及び、改質装置2内の温度変化量から改質装置2内に含まれる水分量を高精度に取得できることを見出した。実施形態4によれば、廃棄物処理システム1は、改質装置2内に含まれる水分量を取得する水分量取得装置30をさらに備えるので、改質装置2内に含まれる水分量を高精度に取得し、微生物反応装置3によるバイオガスG1の生成の効率をさらに向上させることができる。
【0042】
実施形態4によれば、水分量取得装置30が取得する(制御装置30Dが算出する)改質装置2内に含まれる水分量に基づいて、改質物X1の全固形濃度(TS)を調整するので、微生物反応装置3によるバイオガスG1の生成の効率をさらに向上させることができる。
【0043】
排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bは、蒸気S1の発生容量が必ずしも同じではなくてもよい。そして、改質装置2の蒸気要求量に応じて、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのうち少なくとも一方で蒸気S1を発生させるように構成される。改質装置2の蒸気要求量は、例えば、改質装置2に投入される廃棄物の量や廃棄物に含まれる水分量に基づいて算出される。
【0044】
排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのうち一方から発生させる蒸気S1の供給量で改質装置2の蒸気要求量を満たすことができる場合には、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのうち他方を待機状態にしたり、改質装置2に供給する以外の蒸気を発生させたりすることができる。また、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのうち一方から発生させる蒸気S1の供給量だけでは、改質装置2の蒸気要求量を満たすことが困難である場合には、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのうち他方で発生させる蒸気S1で不足分を補うことができる。このため、効率的な廃棄物処理システム1の運用を実現することができる。
【0045】
尚、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bのそれぞれの稼働方法は特に限定しないが、稼働方法の一例を説明する。改質装置2で廃棄物を加水分解する間は、排ガスボイラ4Aを必ず稼働しておく。排ガスボイラ4Aで発生した蒸気S1のみで改質装置2における加水分解条件を調整できる間は、燃焼ボイラ4Bを稼働させない。改質装置2に投入した廃棄物の量や廃棄物の成分の組成に応じて加水分解条件を調整する際に、排ガスボイラ4Aで発生させた蒸気S1のみでは足りない場合に、燃焼ボイラ4Bを稼働させて、排ガスボイラ4Aで発生させた蒸気S1だけではなく、燃焼ボイラ4Bで発生させた蒸気S1も改質装置2に供給する。このようにすれば、排ガスボイラ4Aしかない場合に比べて、改質装置2における加水分解条件の調整幅を広げることができる。尚、ガスエンジン20を2台以上設け、排ガスボイラ4Aで発生させる蒸気S1の量に応じた台数のガスエンジン20を稼働させるようにすることで、改質装置2における加水分解条件の調整幅をさらに広げることができる。
【0046】
(実施形態5)
<実施形態5に係る廃棄物処理システムの構成>
次に、実施形態5に係る廃棄物処理システム1について説明する。実施形態5に係る廃棄物処理システム1は、改質装置2が複数設けられる場合に限定されており、この点が上述した実施形態1~4とは異なる。尚、実施形態5において、実施形態1~4の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図5は、本開示の実施形態5に係る廃棄物処理システム1の構成模式図である。図5に示されるように、廃棄物処理システム1は、第1改質装置2A(2)及び第2改質装置2B(2)を含む。図5に例示する形態では、第1改質装置2A(2)及び第2改質装置2B(2)は互いに並列に接続されており、廃棄物の投入先が選択できるようになっている。第1改質装置2Aで加水分解された廃棄物及び第2改質装置2Bで加水分解された廃棄物は、共通の改質物移送ライン22を流通して分離装置16に供給される。
【0048】
第1改質装置2A及び第2改質装置2Bは、互いに異なるタイミングで廃棄物を蒸気S1で加水分解する。例えば、第1改質装置2Aに蒸気S1を供給するタイミングと第2改質装置2Bに蒸気S1を供給するタイミングとが互いにずれている。
【0049】
廃棄物処理システム1に設けられる改質装置2の台数は特に限定されないが、改質装置2がバッチ式の改質装置2である場合、改質装置2の台数は、廃棄物が投入されてから次回の廃棄物が投入されるまでの時間であるバッチ時間、及び蒸気S1で改質装置2内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する時間である昇温時間に基づいて決められてもよい。具体的には、改質装置2の台数は、バッチ時間を昇温時間で除算することで得られる値のうち自然数の値で決められる。このような構成によれば、改質装置2からの蒸気の要求量の変化を効率的に抑制できる。
【0050】
<実施形態5に係る廃棄物処理システムの作用・効果>
実施形態5によれば、第1改質装置2A及び第2改質装置2Bが互いに重複するタイミングで加水分解する場合と比較して、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bに要求する蒸気要求量の合計を低減させ、第1改質装置2A及び第2改質装置2Bに供給する蒸気S1の量が不足することを抑制できる。また、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bに要求する蒸気要求量の合計が低減するので、蒸気S1の生成のために使用されるバイオガスG1の量を減らすることができる。よって、このバイオガスG1の減量分をガスエンジン20における発電のために使用することで、発電量を増やすことができる。
【0051】
図6は、本開示の一実施形態に係る廃棄物処理システム1の構成模式図の一部であって、改質装置2の周辺構成が図示されている。一実施形態では、図6に示されるように、廃棄物処理システム1は、第1改質装置2Aと第2改質装置2Bとを接続する排気蒸気流通配管26をさらに備える。
【0052】
図6に例示する形態では、排気蒸気流通配管26は、第1排気蒸気流通配管26Aと第2排気蒸気流通配管26Bとを含む。第1排気蒸気流通配管26Aは、第1改質装置2Aで廃棄物を加水分解した後に第1改質装置か2Aら排気される排気蒸気S21(S2)が流通する。第1改質装置2Aは、この第1排気蒸気流通配管26Aを介して、排気蒸気S21を第2改質装置2Bに供給する。第2改質装置2Bは、第1改質装置2Aから供給された排気蒸気S21が有する熱で昇温される。
【0053】
同様に、第2排気蒸気流通配管26Bは、第2改質装置2Bで廃棄物を加水分解した後に第2改質装置2Bから排気される排気蒸気S22(S2)が流通する。第2改質装置2Bは、この第2排気蒸気流通配管26Bを介して、排気蒸気S22を第1改質装置2Aに供給する。第1改質装置2Aは、第2改質装置2Bから供給された排気蒸気S22が有する熱で昇温される。
【0054】
図6に例示する構成によれば、一方の改質装置2が廃棄物を加水分解した後の排気蒸気S2を他方の改質装置2を昇温するための熱源として利用する。このため、他方の改質装置2を昇温するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。尚、図6に例示する形態では、排気蒸気流通配管26は、第1排気蒸気流通配管26Aと第2排気蒸気流通配管26Bとを含んでいたが、本開示はこの実施形態に限定されない。排気蒸気流通配管26は、排気蒸気S21及び排気蒸気S22の両方が流通するように構成されてもよい。つまり、第1改質装置2A及び第2改質装置2Bは、共通の排気蒸気流通配管26を介して、排気蒸気S2を互いに供給可能に構成されてもよい。
【0055】
一実施形態では、蒸気S1で改質装置2内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する昇温時間をTr、蒸気S1で改質装置2内の温度を設定温度に維持する維持時間Tkとすると、Tr/Tk≧0.3を満たす。
【0056】
昇温時間Trが短いと、速やかに改質装置2内の温度を設定温度に昇温するために、改質装置2が要求する蒸気要求量が一時的に大きくなり、蒸気発生装置4が改質装置2の要求を満たすことが難しい場合がある。これに対して、Tr/Tk≧0.3を満たすので、改質装置2が要求する蒸気要求量が一時的に大きくなることを抑制し、蒸気発生装置4は改質装置2の要求を満たすことができる。
【0057】
尚、別の一実施形態では、Tr/Tk≧1.0を満たしてもよい。このような構成によれば、昇温時間Trを維持時間Tkより長くすることで、改質装置2からの蒸気の要求量が一時的に大きくなることをさらに抑制し、改質装置2の要求を満たすことができる。
【0058】
図7Aは、一実施形態に係る第1改質装置2Aに供給される蒸気S1の量と時間との関係を示すグラフである。図7Bは、一実施形態に係る第2改質装置2Bに供給される蒸気S1の量と時間との関係を示すグラフである。図7A及び図7Bにおいて、横軸が時間を示し、縦軸が蒸気量を示している。
【0059】
図7Aについて説明する。t1は、第1改質装置2Aへの廃棄物の投入を開始するタイミングである。t2は、第1改質装置2A内の温度を設定温度に昇温するために、第1改質装置2Aへの蒸気S1の供給を開始するタイミングである。t2のタイミングでは、第1改質装置2Aへの廃棄物の投入は終了している。t3は、第1改質装置2A内の温度を設定温度に維持するために、第1改質装置2Aへの蒸気S1の供給を開始する(供給量を僅かにする)タイミングである。t4は、第1改質装置2A内の蒸気S1を外部に排気し始めるタイミングである。第1改質装置2Aにおける廃棄物の加水分解は、主にt2~t4の間に行われる。t5は、第1改質装置2A内の蒸気S1の排気が終了したタイミングである。第1改質装置2Aは、蒸気S1の排気が終了すると、次の廃棄物の投入開始(2回目のt1)まで待機状態となる。
【0060】
図7Bについて説明する。t6は、第2改質装置2Bへの廃棄物の投入を開始するタイミングである。t7は、第2改質装置2B内の温度を設定温度に昇温するために、第2改質装置2Bへの蒸気S1の供給を開始するタイミングである。t7のタイミングでは、第2改質装置2Bへの廃棄物の投入は終了している。t8は、第2改質装置2B内の温度を設定温度に維持するために、第2改質装置2Bへの蒸気S1の供給を開始する(供給量を僅かにする)タイミングである。t9は、第2改質装置2B内の蒸気S1を外部に排気し始めるタイミングである。第2改質装置2Bにおける廃棄物の加水分解は、主にt7~t9の間に行われる。t10は、第2改質装置2B内の蒸気S1の排気が終了したタイミングである。第2改質装置2Bは、蒸気S1の排気が終了すると、次の廃棄物の投入開始(2回目のt6)まで待機状態となる。
【0061】
t2からt3において、第1改質装置2Aに供給される蒸気量は徐々に増加するようになっている。これは、第1改質装置2Aが放熱し、この放熱した分だけ第1改質装置2A内の温度が下がることを抑制するためである。同様に、t7からt8において、第2改質装置2Bに供給される蒸気量は徐々に増加するようになっている。
【0062】
図7A及び図7Bの両方を参照して、一実施形態に係る廃棄物処理システム1の蒸気運用について説明する。
【0063】
蒸気S1で第1改質装置2A内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する第1期間をA1、蒸気S1で第2改質装置2B内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する第2期間をA2とする。つまり、第1期間A1及び第2期間A2は、上述した昇温時間Trに相当する。一実施形態では、図7A及び図7Bに示されるように、第1期間A1と第2期間A2とは互いに重複しないように、第1改質装置2Aは蒸気S1で昇温され、第2改質装置2Bは蒸気S1で昇温される。このような構成によれば、第1期間A1と第2期間A2とが互いに重複する場合と比較して、排ガスボイラ4A及び燃焼ボイラ4Bに要求する蒸気要求量の合計を低減することができる。
【0064】
また、蒸気S1で第1改質装置2A内の温度を設定温度に維持する第3期間をA3、蒸気S1で第2改質装置2B内の温度を設定温度に維持する第4期間をA4とする。つまり、第3期間A3及び第4期間A4は、上述した維持時間Tkに相当する。一実施形態では、第3期間A3が第2期間A2内に含まれるように、第1改質装置2Aは蒸気S1で設定温度に維持され、第2改質装置2Bは蒸気S1で昇温される。改質装置2を設定温度に維持するための蒸気S1の量は、改質装置2を設定温度にまで昇温するための蒸気S1の量と比較して非常に少なくて済む。つまり、第2改質装置2Bの昇温中に第1改質装置2Aを設定温度に維持するように蒸気運用を行っても、第2改質装置2Bに供給する蒸気S1が不足する可能性は低い。このため、第1改質装置2A及び第2改質装置2Bの稼働時間を増加させることができる。尚、別の一実施形態では、第4期間A4が次の第1期間A1内に含まれるように、第1改質装置2Aは蒸気S1で昇温され、第2改質装置2Bは蒸気S1で設定温度に維持されてもよい。
【0065】
図8は、本開示の一実施形態に係る廃棄物処理方法50のフローチャートである。図8に示されるように、廃棄物処理方法50は、蒸気S1で廃棄物を加水分解するステップ52と、蒸気S1で加水分解された廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物X1を微生物によって低分子化するステップ54と、改質物X1を微生物によって低分子化するステップ54で生成したバイオガスG1の燃焼エネルギのみを用いて蒸気S1を発生させるステップ56と、を備える。このような方法によれば、廃棄物を加水分解するための蒸気S1の要求を速やかに満たすことができる。
【0066】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0067】
[1]本開示に係る廃棄物処理システム(1)は、蒸気(S1)で廃棄物を加水分解する少なくとも1つの改質装置(2)と、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物(X1)を微生物によって低分子化する微生物反応装置(3)と、前記微生物反応装置で生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させる少なくとも1つの蒸気発生装置(4)と、を備える。
【0068】
ガス状の燃料は、固形状や液状の燃料と比較して燃焼するのが早い。上記[1]に記載の構成によれば、改質装置は、微生物反応装置で生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて発生させた蒸気で加水分解する。このため、改質装置からの蒸気の要求を速やかに満たすことができる。
【0069】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、前記改質装置と前記微生物反応装置とを接続する保温用蒸気配管(8)をさらに備え、前記改質装置は、前記保温用蒸気配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気(S2)を前記微生物反応装置に供給し、前記微生物反応装置は、前記改質装置から供給された前記排気蒸気が有する熱で、所定の温度領域に含まれるように保温される。
【0070】
微生物反応装置は、微生物による改質物の低分子化を促進するために、所定の温度領域に含まれるように保温されることが望ましい。上記[2]に記載の構成によれば、改質装置が廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を、微生物反応装置を保温するための熱源として利用する。このため、微生物反応装置を保温するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。
【0071】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記微生物反応装置が前記改質物を微生物によって低分子化した後に得られる残渣(X2)を乾燥する乾燥装置(13)と、前記改質装置と前記乾燥装置とを接続する乾燥用蒸気配管(15)と、をさらに備え、前記改質装置は、前記乾燥用蒸気配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を前記乾燥装置に供給し、前記乾燥装置は、前記改質装置から供給された前記排気蒸気が有する熱で、前記残渣を乾燥する。
【0072】
廃棄物処理システムは、微生物反応装置から得られる残渣を乾燥する乾燥装置を含む場合がある。上記[4]に記載の構成によれば、改質装置が廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を、乾燥装置が残渣を乾燥するための熱源として利用する。このため、乾燥装置が残渣を乾燥するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。
【0073】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、前記少なくとも1つの改質装置と前記微生物反応装置との間に設けられる分離装置(16)をさらに備え、前記分離装置は、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物から、前記微生物反応装置において前記ガスを生成するのに不適な不適物を分別する。
【0074】
上記[4]に記載の構成によれば、微生物反応装置へ供給される不適物の量を減らすことができる。その結果、微生物反応装置においてガスの生成が阻害されるおそれを低減し、微生物反応装置はガスの生成を効率よく行うことができる。
【0075】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、前記少なくとも1つの蒸気発生装置は、第1蒸気発生装置(4A)及び第2蒸気発生装置(4B)を含み、前記改質装置の蒸気要求量に応じて、前記第1蒸気発生装置及び前記第2蒸気発生装置のうち少なくとも一方で前記蒸気を発生させるように構成される。
【0076】
上記[5]に記載の構成によれば、第1蒸気発生装置及び第2蒸気発生装置のうち一方で改質装置の蒸気要求量を満たすことができる場合には、他方の蒸気発生装置を待機状態にしたり、改質装置に供給する以外の蒸気を発生させたりすることができる。また、一方の蒸気発生装置だけでは、改質装置の蒸気要求量を満たすことが困難である場合には、他方の蒸気発生装置で発生させる蒸気で不足分を補うことができる。このため、効率的な廃棄物処理システムの運用を実現することができる。
【0077】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、前記少なくとも1つの改質装置は、複数の改質装置を含み、前記複数の改質装置のうち少なくとも2つは、互いに異なるタイミングで加水分解するように構成される。
【0078】
上記[6]に記載の構成によれば、複数の改質装置のうち少なくとも2つが互いに重複するタイミングで加水分解する場合と比較して、蒸気発生装置に要求する蒸気量の合計を低減させ、改質装置に供給する蒸気の量が不足することを抑制できる。また、複数の改質装置のそれぞれは、固形状や液状の燃料を燃焼することで得られる蒸気ではなく、ガスの燃焼エネルギのみを用いて発生させた蒸気が供給される。このため、改質装置からの蒸気の要求を速やかに満たすことができる。
【0079】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、前記複数の改質装置は、第1改質装置(2A)と、第2改質装置(2B)と、を含み、前記第1改質装置と前記第2改質装置とを接続する排気蒸気流通配管(26)をさらに備え、前記排気蒸気流通配管を介して、前記廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を前記第1改質装置から前記第2改質装置に供給され、前記第2改質装置は、前記第1改質装置から供給された前記排気蒸気の熱で昇温される。
【0080】
上記[7]に記載の構成によれば、一方の改質装置が廃棄物を加水分解した後の排気蒸気を他方の改質装置を昇温するための熱源として利用する。このため、他方の改質装置を昇温するために準備する燃料の量を抑制し、運用コストの削減を図ることができる。
【0081】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、前記蒸気で前記改質装置内の温度を予め設定された設定温度にまで昇温する昇温時間をTr、前記蒸気で前記改質装置内の温度を設定温度に維持する維持時間をTkとすると、Tr/Tk≧0.3を満たす。
【0082】
昇温時間が短いと、速やかに改質装置内の温度を設定温度に昇温するために、改質装置からの蒸気の要求量が一時的に大きくなり、改質装置の要求を満たすことが難しい場合がある。これに対して、上記[8]に記載の構成によれば、Tr/Tk≧0.3を満たすので、改質装置からの蒸気の要求量が一時的に大きくなることを抑制し、改質装置の要求を満たすことができる。
【0083】
[9]幾つかの実施形態では、上記[8]に記載の構成において、Tr/Tk≧1.0を満たす。
【0084】
上記[9]に記載の構成によれば、昇温時間Trを維持時間Tkより長くすることで、改質装置からの蒸気の要求量が一時的に大きくなることをさらに抑制し、改質装置の要求を満たすことができる。
【0085】
[10]幾つかの実施形態では、上記[1]から[9]の何れか1つに記載の構成において、前記少なくとも1つの改質装置と前記微生物反応装置との間に、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整する水分調整装置(24)をさらに備える。
【0086】
上記[10]に記載の構成によれば、改質装置で加水分解された廃棄物の全固形濃度(TS)を調整できるので、微生物反応装置によるガスの生成の効率を向上させることができる。
【0087】
[11]幾つかの実施形態では、上記[10]に記載の構成において、前記改質装置内に含まれる水分量を取得する水分量取得装置(30)をさらに備え、前記水分調整装置は、前記水分量取得装置によって取得された前記水分量に基づいて、前記少なくとも1つの改質装置で加水分解された前記廃棄物の含有水分量を調整する。
【0088】
上記[11]に記載の構成によれば、改質装置内に含まれる水分量に基づいて、改質装置で加水分解された廃棄物の全固形濃度(TS)を調整するので、微生物反応装置によるガスの生成の効率をさらに向上させることができる。
【0089】
[12]幾つかの実施形態では、上記[11]に記載の構成において、前記水分量取得装置は、前記改質装置に供給される前記蒸気の量、前記改質装置に前記蒸気が供給されている状態が継続した時間、及び、前記改質装置内の温度変化量に基づいて、前記改質装置内に含まれる水分量を取得する。
【0090】
本発明者らの知見によれば、改質装置に供給される蒸気の量、改質装置に蒸気が供給されている状態が継続した時間、及び、改質装置内の温度変化量から改質装置内に含まれる水分量を高精度に取得できることを見出した。上記[12]に記載の構成によれば、改質装置内に含まれる水分量を高精度に取得し、微生物反応装置によるガスの生成の効率をさらに向上させることができる。
【0091】
[13]本開示に係る廃棄物処理方法(50)は、蒸気で廃棄物を加水分解するステップ(52)と、加水分解された前記廃棄物のうち少なくとも固体を含む改質物を微生物によって低分子化するステップ(54)と、前記改質物を微生物によって低分子化するステップで生成したガスの燃焼エネルギのみを用いて前記蒸気を発生させるステップ(56)と、を備える。
【0092】
上記[13]に記載の方法によれば、廃棄物を加水分解するための蒸気の要求を速やかに満たすことができる。
【符号の説明】
【0093】
1 廃棄物処理システム
2 改質装置
2A 第1改質装置
2B 第2改質装置
3 微生物反応装置
4 蒸気発生装置
4A 排ガスボイラ(第1蒸気発生装置)
4B 燃焼ボイラ(第2蒸気発生装置)
8 保温用蒸気配管
13 乾燥装置
15 乾燥用蒸気配管
16 分離装置
24 注水管(水分調整装置)
26 排気蒸気流通配管
30 水分量取得装置
50 廃棄物処理方法
A1 第1期間
A2 第2期間
A3 第3期間
A4 第4期間

S1 蒸気
S2 排気蒸気
X1 改質物
X2 残渣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8