(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】サンドイッチ成形体用金型装置およびサンドイッチ成形体成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20250221BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
(21)【出願番号】P 2020204147
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312016780
【氏名又は名称】共和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
(72)【発明者】
【氏名】岡 隆男
(72)【発明者】
【氏名】東出 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝成
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/002626(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0108612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318219(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0096364(US,A1)
【文献】独国実用新案第202020106091(DE,U1)
【文献】特開平06-320575(JP,A)
【文献】特開2015-131466(JP,A)
【文献】特開平10-052834(JP,A)
【文献】特開平07-227888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/26-39/36
B29C 41/38-41/44
B29C 43/36-43/42
B29C 43/50
B29C 45/00-45/84
B29C 49/48-49/56
B29C 49/70
B29C 51/30-51/40
B29C 51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間に位置するコア層と表裏から
前記コア層を挟むスキン層とに異なる材料を用いて成るサンドイッチ成形体を射出成形するためのサンドイッチ成形体用金型装置であって、
前記サンドイッチ成形体が形成される空洞部と、
前記空洞部の両端から前記スキン層を構成するスキン材を供給する一次ゲートと、
前記空洞部の両端から前記コア層を構成するコア材を供給する二次ゲートと、
前記空洞部に供給された前記スキン材
が前記サンドイッチ成形体の射出成形中に排出
される複数のスピルオーバー部
と
を備え、
前記スピルオーバー部は、それぞれ前記サンドイッチ成形体の縁部を形成するコーナー部の近傍、
並びに前記空洞部において、両端から供給された前記スキン材
および前記コア材が合流するウェルド部の近傍に配置されていることを特徴とするサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項2】
前記スピルオーバー部は、さらに前記サンドイッチ成形体の窓部分の縁部を形成する窓コーナー部の近傍にも配置されていることを特徴とする請求項1記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項3】
前記ウェルド部の近傍に配置された前記スピルオーバー部には、さらに前記空洞部に供給された前記コア材も前記サンドイッチ成形体の射出成形中に排出されることを特徴とする請求項1または2に記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項4】
各々の前記スピルオーバー部において前記スキン材および前記コア材の排出時を調整する開閉ピンを備えることを特徴とする請求項
3記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項5】
前記開閉ピンの開閉を行う開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、油圧シリンダー、エアーシリンダー、および電動式制御部のいずれかであることを特徴とする請求項
4記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項6】
離型後の前記サンドイッチ成形体は、自動車外板に用いられるパネルであることを特徴とする請求項
4または5に記載のサンドイッチ成形体用金型装置。
【請求項7】
請求項
4~
6の何れか一項に記載のサンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法であって、
前記コーナー部の近傍の前記開閉ピンを開閉することにより、前記スキン材を前記スピルオーバー部に排出する第1工程、
前記第1工程の完了後に、前記ウェルド部の近傍の前記開閉ピンを開閉することにより、前記コア材を前記スピルオーバー部に排出する第2工程
を含むことを特徴とするサンドイッチ成形体成形方法。
【請求項8】
前記第2工程には、一旦前記コア材の排出を中断する中断工程が含まれることを特徴とする請求項
7記載のサンドイッチ成形体成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、自動車外板等を形成するサンドイッチ成形体を成形するのに用いるサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バンパー、フェンダー等の自動車外板として、軽量化の観点から、従来の金属製外板に代わって樹脂製外板が用いられている。そして、このような樹脂製外板を形成する部材としては、中間のコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる材料を用いて成るサンドイッチ成形体が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、上述のサンドイッチ成形体においては、スキン層には外観に優れるポリプロピレン樹脂を用い、コア層には機械物性に優れるポリプロピレンとガラス繊維や炭素繊維との複合材を用いる例が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スライドドアなどの複雑な形状をサンドイッチ成形すると、さまざまな問題が生じる。たとえば、上述のサンドイッチ成形体を射出成形する場合、
図7に示すように、スライドドアを構成する四隅のコーナー部や中央部にスキン層を形成するスキン材が溜まり、スキン材溜まり104を形成することがある。この場合、スライドドアを構成するパネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材の充填不足によって耐熱性が確保できないためインライン塗装時にパネルが変形するなどの問題が生じる。
【0005】
また、ウェルド部にコア材を形成するコア材溢れ106が発生する場合がある。この場合、外板に繊維が浮き出ることにより、表面粗さが荒くなり外板品質が悪化するなどの問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形するサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
中間に位置するコア層と表裏から前記コア層を挟むスキン層とに異なる材料を用いて成るサンドイッチ成形体を射出成形するためのサンドイッチ成形体用金型装置であって、
前記サンドイッチ成形体が形成される空洞部と、
前記空洞部の両端から前記スキン層を構成するスキン材を供給する一次ゲートと、
前記空洞部の両端から前記コア層を構成するコア材を供給する二次ゲートと、
前記空洞部に供給された前記スキン材、および前記コア材が前記サンドイッチ成形体の射出成形中に排出される複数のスピルオーバー部と
を備え、
前記スピルオーバー部は、それぞれ前記サンドイッチ成形体の縁部を形成するコーナー部の近傍、並びに前記空洞部において、両端から供給された前記スキン材および前記コア材が合流するウェルド部の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0008】
このように、サンドイッチ成形体のコーナー部の近傍にスピルオーバー部を配置することにより、コーナー部にスキン材溜まりが形成されないようにすることができる。このため、パネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材の充填不足によって耐熱性が確保できずにパネルが変形する事態を防止できる。また、ウェルド部の近傍にスピルオーバー部を配置することにより、コア材溢れが発生し難くなるため、パネルに繊維が浮き出て表面粗さが荒くなるなど、パネルの品質が悪化することが防止される。よって、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形することができる。
【0009】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
各々の前記スピルオーバー部において前記スキン材および前記コア材の排出時を調整する開閉ピンを備えることを特徴とする。
【0010】
このように、樹脂材の排出時を調整することにより、コーナー部やウェルド部などの部位における樹脂材の排出タイミングを変化させることができ、各部位における樹脂材の過不及についてバランスを良好にすることができる。
【0011】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
前記開閉ピンの開閉を行う開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、油圧シリンダー、エアーシリンダー、および電動式制御部のいずれかであることを特徴とする。
このように、開閉制御部に複数種類の装置を適用できるようにすることにより、さまざまな機種の金型に本発明を対応させることができる。
【0012】
また、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、
離型後の前記サンドイッチ成形体は、自動車外板に用いられるパネルであることを特徴とする。
すなわち、本発明のサンドイッチ成形体用金型装置は、自動車外板の成形に公的に用いられる。
【0013】
また、本発明のサンドイッチ成形方法は、
上述のサンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法であって、
前記コーナー部の近傍の前記開閉ピンを開閉することにより、前記スキン材を前記スピルオーバー部に排出する第1工程、
前記第1工程の完了後に、前記ウェルド部の近傍の前記開閉ピンを開閉することにより、前記コア材を前記スピルオーバー部に排出する第2工程
を含むことを特徴とする。
このような手順を履むことにより、バランスよく樹脂材を排出することができ、精度よく成形されたサンドイッチ成形体を成形することができる。
【0014】
また、本発明のサンドイッチ成形方法は、
前記第2工程には、一旦前記コア材の排出を中断する中断工程が含まれることを特徴とする。
これにより、ウェルド部におけるサンドイッチ成形体の成形の精度をより高くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精度よく成形され耐熱性が確保されたサンドイッチ成形体を成形するサンドイッチ成形体用金型装置、および該サンドイッチ成形体用金型装置を用いたサンドイッチ成形体成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置を上方から視た模式図である。
【
図2】実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置を側方から視た模式図である。
【
図3】実施の形態に係る樹脂材の射出時間およびスピルオーバー部の開放時間を示すテーブルである。
【
図4】実施の形態に係る金型の空洞部に樹脂材が充填される過程を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る金型の空洞部に樹脂材が充填される過程を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る金型の空洞部を進行するコア材によってスキン材が引き延ばされる様子を示す図である。
【
図7】従来の技術によりサンドイッチ成形体を射出成形する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態に係るサンドイッチ成形体用金型装置(以下、金型装置と略す。)を上方から視た模式図であり、
図2はこれを側方から視た模式図である。
【0018】
図1、2に示すように、金型装置2は、中間に位置するコア層と表裏からコア層を挟むスキン層とに異なる材料を用いて成るサンドイッチ成形体30の成形に用いる装置であり、平面矩形状の金型4、スキン層を構成する第1樹脂材であるスキン材を金型4に供給する第1樹脂ユニット(不図示)、コア層を構成する第2樹脂材であるコア材を金型4に供給する第2樹脂ユニット(不図示)、スキン材の流路である第1ノズル8、コア材の流路である第2ノズル10、油圧シリンダー12、油圧シリンダー12に連結された開閉ピン14を備えている。
【0019】
なお、第1ノズル8の先端には、スキン材の供給口となる一次ゲート8a、8bがそれぞれ設けられ、第2ノズル10の先端には、コア材の供給口となる二次ゲート10a、10bがそれぞれ設けられている。(なお、以下の説明で一次ゲート8a-8bを結ぶ方向を縦方向と言い、これと直交する方向を横方向と言う。)
【0020】
そして、金型4には、サンドイッチ成形体30が形成される空洞部20、空洞部20への樹脂材の導入口であるフィルムゲート22、および空洞部20から樹脂材を射出成形中に排出するためのスピルオーバー部24が形成されている。
【0021】
ここで、空洞部20は、その両端から一次ゲート8a、8bによってスキン材を供給され、二次ゲート10a、10bによってコア材を供給される。
また、スピルオーバー部24には、スピルオーバー部24a、24b、24c、24d、24e、24f、24gの7個の部位が含まれている。
【0022】
ここで、スピルオーバー部24a、24b、24e、24fは、金型4において、それぞれサンドイッチ成形体30の縁部を形成するコーナー部30aの近傍(空洞部20の横方向外側、かつ空洞部20の縦方向両端側)に配置され、スピルオーバー部24gは、サンドイッチ成形体30の窓部分の縁部を形成する窓コーナー部30bの近傍(窓部分内)に配置され、スピルオーバー部24c、24dは、空洞部20において、両端から供給されたスキン材およびコア材が合流するウェルド部30cの近傍(空洞部20の横方向外側、かつ空洞部20の縦方向中央側)に配置されている。
【0023】
また、それぞれのスピルオーバー部24は、開閉制御部である油圧シリンダー12を介して、開閉ピン14a、14b、14c、14d、14e、14f、14gによって開閉される。なお、スキン材およびコア材の排出時は、各々の開閉ピン14の開閉タイミングをずらすことによって調整することができる。
【0024】
また、金型4には、上下に可動である上部金型4aと固定された下部金型4bとが含まれている。
次に、金型装置2を用いたサンドイッチ成形体30の成形方法について、自動車外板のうちスライドドアを構成するパネルを製造する場合を例に、
図3に示すテーブルを参照しながら説明する。まず、可動である上部金型4aを下方に移動させて金型4を閉じる。次に、図示しないゲート開閉部により、金型4の一次ゲート8bが開放され、第1樹脂ユニットにより、第1ノズル8にサンドイッチ成形体30の表層となるスキン材が射出され、
図4に示すように、サンドイッチ成形体30の下部を構成する部分にスキン材32が供給される。ここで、
図3に示すように、スキン材32が初めて射出された時を第1基準時として、スキン材32は第1基準時から6秒間射出され続ける。
【0025】
次に、第1基準時から4.5秒後、ゲート開閉部により、金型4の一次ゲート8aが開放され、一次ゲート8aから2秒間スキン材32が射出され、サンドイッチ成形体30の上部を構成する部分にもスキン材32が供給される(
図4参照)。
【0026】
そして、第1基準時から6秒が経過すると、第1樹脂ユニットによるスキン材32の射出が停止され、ゲート開閉部により、一次ゲート8a、8bが共に閉鎖される。
次に、ゲート開閉部により、金型4の二次ゲート10bが開放されると、第2樹脂ユニットにより、第2ノズル10にサンドイッチ成形体30の中間層となるコア材34が射出され、
図5に示すように、サンドイッチ成形体30の下部を構成する部分にコア材34が供給される。なお、コア材34が初めて射出された時を第2基準時として、コア材34は第2基準時から5.5秒間(第1基準時から11.5秒まで)射出され続ける。
【0027】
ここで、コア材34が空洞部20に注入されることにより、
図6に示すように、コア材34の進行に伴ってスキン材32が引き延ばされる。これにより、空洞部20全体にスキン材32を行き亘らせることができる。
【0028】
また、これと同時に、油圧シリンダー12により開閉ピン14a、14b、14e、14fが操作されてスピルオーバー部24a、24b、24e、24fが開放され、コーナー部30aに溜まったスキン材32がスピルオーバー部24a、24b、24e、24f
に排出される(第1工程)。これにより、サンドイッチ成形体30のコーナー部30aにスキン材溜まり(
図7参照)が形成されないようにすることができる。
【0029】
この間、第2基準時から1秒後(第1基準時から7秒後)には、油圧シリンダー12によりさらに開閉ピン14gが操作されてスピルオーバー部24gが開放され、窓コーナー部30bに溜まったスキン材32がスピルオーバー部24gに排出され、窓コーナー部30bにおけるスキン材溜まりの形成が防止される。
【0030】
そして、第2基準時から1.5秒後(第1基準時から7.5秒後)には、油圧シリンダー12により開閉ピン14a、14b、14e、14fが操作され、スピルオーバー部24a、24b、24e、24fが閉鎖される。
【0031】
次に、第2基準時から2秒後(第1基準時から8秒後)、サンドイッチ成形体30のコーナー部30aに溜まったスキン材32が排出され終わった頃に、油圧シリンダー12により開閉ピン14c、14dが操作されてスピルオーバー部24c、24dが開放され、サンドイッチ成形体30のウェルド部30cに溜まったスキン材32がスピルオーバー部24c、24dに排出される(第2工程)。
【0032】
さらに、第2基準時から2.5秒後(第1基準時から8.5秒後)には、ゲート開閉部により、金型4の二次ゲート10aが開放される。これにより、
図5に示すように、サンドイッチ成形体30の上部を構成する部分にもコア材34が供給される。
【0033】
その直後の第2基準時から2.8秒後(第1基準時から8.8秒後)、油圧シリンダー12により開閉ピン14gが操作されてスピルオーバー部24gが閉鎖され、窓コーナー部30bに溜まったスキン材32の排出が終了し、第2基準時から3.3秒後(第1基準時から9.3秒後)には、開閉ピン14c、14dを介してスピルオーバー部24c、24dが一旦閉鎖される(中断工程)。
【0034】
そして、第2基準時から4.5秒後(第1基準時から10.5秒後)には、再び開閉ピン14c、14dによりスピルオーバー部24c、24dが開放され、二次ゲート10a、10bから射出されたコア材34が合流するウェルド部30cの余分なコア材34が排出される(第2工程)。これにより、ウェルド部30cにおけるコア材溢れ(
図7参照)が発生し難くなる。
【0035】
第2基準時から5.5秒後(第1基準時から11.5秒後)には、第2樹脂ユニットによるコア材34の射出が停止され、ゲート開閉部により、二次ゲート10a、10bが共に閉鎖される。これと共に、油圧シリンダー12により開閉ピン14c、14dが操作されてスピルオーバー部24c、24dが再び閉鎖される。
【0036】
次に、サンドイッチ成形体30の形状を保持するための加圧がなされ、サンドイッチ成形体30が冷却されて硬化された後、上部金型4aを上方に移動させて金型4が開かれ、パネルが離型される。
【0037】
なお、開閉ピン14の先端は先鋭であるため、スピルオーバー部24に残留する樹脂材とサンドイッチ成形体30は開閉ピン14を閉鎖することによって切り離される。このため、離型時におけるスピルオーバー部24に残留する樹脂材とサンドイッチ成形体30との切り離しはスムーズに行われる。
【0038】
この実施の形態に係る発明によれば、サンドイッチ成形体30のコーナー部30aおよび窓コーナー部30bの近傍にスピルオーバー部24a、24b、24e、24f、24gを配置することにより、コーナー部30aや窓コーナー部30bにスキン材溜まりが形成されないようにすることができる。このため、サンドイッチ成形体30から完成されたパネルにそりが発生して成形寸法精度が悪化したり、コア材34の充填不足によって耐熱性が確保できずにパネルが変形する事態を防止できる。また、ウェルド部30cの近傍にスピルオーバー部24c、24dを配置することにより、コア材溢れが発生し難くなるため、パネルに繊維が浮き出て表面粗さが荒くなるなど、パネルの品質が悪化することが防止される。
【0039】
このため、パネルを精度よく成形できると共に、パネルの耐熱性を確保することができる。
また、スピルオーバー部24c、24dの開放を一旦中断することにより、ウェルド部30cにおけるサンドイッチ成形体30の成形の精度をより高くすることができる。
【0040】
なお、上述の実施の形態においては、開閉制御部が油圧シリンダー12である場合を例示しているが、油圧シリンダー12に代えて、エアーシリンダーや電動式制御部を開閉制御部に用いてもよい。
【0041】
また、上述の実施の形態において、
図3に示されるテーブルは一例であり、樹脂材の射出時間やスピルオーバー部24の開放時間は厳密にこの通りの時間である必要はなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【0042】
また、上述の実施の形態においては、空洞部20の両端からスキン材やコア材を供給することを言及しているが、ここで言及する両端とは、必ずしも
図1に示すような上部中央、下部中央を意味するものではない。たとえば、スキン材やコア材を供給するための一次ゲート8a、8b、および二次ゲート10a、10bがいずれかのスピルオーバー部24の近傍などに備えられていてもよく、双方向など、異なる方向からスキン材やコア材が供給されていればよい。
【0043】
また、上述の実施の形態において、スキン材は、プロピレン系樹脂を含む。
プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選択される少なくとも1種との共重合体が挙げられる。前記共重合体は、プロピレン系ランダム共重合体であっても、プロピレン系ブロック共重合体であってもよい。
【0044】
炭素数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、メチルエチル-1-ブテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ヘキセン、プロピル-1-ヘプテン、メチルエチル-1-ヘプテン、トリメチル-1-ペンテン、プロピル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等の炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。これらの中でも、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましい。
【0045】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体およびプロピレン系ブロック共重合体が好ましい。プロピレン系ブロック共重合体はインパクトポリプロピレンとも呼ばれ、通常、ポリプロピレンホモポリマーとプロピレン-エチレン共重合体との混合物である。
【0046】
プロピレン系樹脂は、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。このような変性プロピレン系樹脂において、不飽和カルボン酸またはその誘導体の含有割合は、好ましくは0.01~10質量%である。
【0047】
コア材は、繊維強化プロピレン系樹脂を含む。繊維強化プロピレン系樹脂は、本実施形態の成形体に優れた耐熱性および機械的強度を付与する。
繊維強化プロピレン系樹脂におけるプロピレン系樹脂としては、スキン材の説明で述べたプロピレン系樹脂が挙げられる。ただし、繊維強化プロピレン系樹脂に含まれるプロピレン系樹脂と、スキン材に含まれるプロピレン系樹脂とは、同一の樹脂であっても異なる樹脂であってもよい。また、プロピレン系樹脂の一部または全部がリサイクル材であってもよい。
【0048】
繊維強化プロピレン系樹脂における繊維としては、例えば、ガラス繊維;炭素繊維;アルミニウム繊維、アルミニウム合金繊維、銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス鋼繊維、チタン繊維などの金属繊維;綿繊維、絹繊維、木質繊維、セルロース繊維などの天然繊維;炭化ケイ素繊維、チッ化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維などのセラミック繊維;全芳香族ポリアミド(アラミド)、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、全芳香族ポリアゾメチン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリアリレート、フッ素系ポリマーなどの合成樹脂からなる合成繊維が挙げられる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られた、フィラメント状の繊維が挙げられる。繊維の中でも、剛性および耐熱性等の観点から、ガラス繊維および炭素繊維が好ましい。
【0049】
繊維には、必要に応じて、カップリング剤処理、界面活性剤処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、プラズマ照射処理等の表面処理が施されていてもよい。カップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン、およびこれらの加水分解物が挙げられる。
【0050】
繊維は、短繊維でも長繊維でもよいが、得られる成形体の物性面が優れることから長繊維が好ましく、成形時の流動性の観点からは短繊維が好ましい。また、短繊維と長繊維との混合繊維を用いることもできる。短繊維は、チョップドファイバー(カットファイバー)状短繊維でも、フィブリルを有するパルプ状短繊維でもよい。
【符号の説明】
【0051】
2 金型装置
4 金型
4a 上部金型
4b 下部金型
8 ノズル
8a 一次ゲート
8b 一次ゲート
10 ノズル
10a 二次ゲート
10b 二次ゲート
12 油圧シリンダー
14(14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g) 開閉ピン
20 空洞部
22 フィルムゲート
24(24a、24b、24c、24d、24e、24f、24g) スピルオーバー部
30 サンドイッチ成形体
30a コーナー部
30b 窓コーナー部
30c ウェルド部
32 スキン材
34 コア材
104 スキン材溜まり
106 コア材溢れ