(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20250221BHJP
G09F 21/04 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
G06Q30/0241
G09F21/04 C
G09F21/04 Q
(21)【出願番号】P 2021007859
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】姉歯 美沙
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0380934(US,A1)
【文献】特開2020-030717(JP,A)
【文献】特開2010-041167(JP,A)
【文献】特開2017-161600(JP,A)
【文献】特開2013-050945(JP,A)
【文献】特開2019-135661(JP,A)
【文献】特開2021-101265(JP,A)
【文献】特開2020-046931(JP,A)
【文献】特開2004-029495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G09F 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信する送信部と、
を備え
、
前記検出部は、前記画像に基づいて前記画像に撮像された人の視線を検出し、
前記視線を所定時間以上前記表示部に向けている人を前記視聴者として検出する、
車両用広告装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記画像
に基づいて前記人の進行方向
をさらに検出し、前記進行方向が前記車両の進行方向と同じ方向であり、且つ、前記視線を所定時間以上前記表示部に向けている人を、前
記視聴者として検出する、
請求項1に記載の車両用広告装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記画像から人を認識するとともに、認識された人の進行方向および動作を検出し、前記進行方向が前記車両の進行方向と反対方向であり、且つ、振り返りの動作を行った人を前記コンテンツの前記視聴者と判定する、
請求項1または2に記載の車両用広告装置。
【請求項4】
前記視聴者が存在する方向を認識する視聴者方向認識部と、
指向性を有する無線通信が可能な指向性通信部と、
をさらに備え、
前記送信部は、前記視聴者方向認識部によって認識された前記視聴者の方向に指向性を向けて前記関連情報を送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用広告装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記車両が所定の速度以上の速度で走行しているときに、前記端末装置に前記関連情報を送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用広告装置。
【請求項6】
前記視聴者が存在する位置を認識する視聴者位置認識部と、
前記車両の走行ルートまたは前記表示部における前記コンテンツの表示タイミングを決定する決定部と、
前記視聴者の前記コンテンツに対する関心の高さを推定する推定部と、
をさらに備え、
前記決定部は、前記視聴者の位置と、前記視聴者の前記コンテンツに対する関心の高さとの関係性に基づいて、前記コンテンツに向けられる関心の大きさを最大化するように前記走行ルートまたは前記表示タイミングを決定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用広告装置。
【請求項7】
前記視聴者の端末装置から前記コンテンツの表示内容に関する所定の情報が入力された場合に、前記視聴者に対して前記コンテンツに関する所定のサービスまたは前記車両に付帯する所定のサービスを提供するサービス提供部をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用広告装置。
【請求項8】
コンピュータが、
車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出
する検出処理と、
検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信する
送信処理と、
を実行する車両用広告方法であって、
前記検出処理は、前記画像に基づいて前記画像に撮像された人の視線を検出し、
前記視線を所定時間以上前記表示部に向けている人を前記視聴者として検出するものである、
車両用広告方法。
【請求項9】
コンピュータに、
車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出
する検出処理と、
検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信
する送信処理と、
を実行させるためのプログラムであって、
前記検出処理は、前記画像に基づいて前記画像に撮像された人の視線を検出し、
前記視線を所定時間以上前記表示部に向けている人を前記視聴者として検出するものである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルサイネージの表示内容に対する視聴者の反応率を調べるため、デジタルサイネージの近くに位置する端末装置に関連情報を表示させ、その表示に関する操作の入力回数をカウントする技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の検査方法では、デジタルサイネージの表示内容に関心のない人の端末装置にも関連情報が表示されるため、そのような人に対して不快感を与えてしまう場合があった。このように、従来の技術では、関連情報を提供する人を適切に選択することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、より適切に選択された人に関連情報を提供することができる車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
【0007】
(1):この発明の一態様に係る車両用広告装置は、車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出する検出部と、前記検出部によって検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信する送信部と、を備えるものである。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記検出部は、前記画像から人を認識するとともに、認識された人の進行方向および視線を検出し、前記進行方向が前記車両の進行方向と同じ方向であり、且つ、前記視線を所定時間以上前記表示部に向けている人を、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者として検出するものである。
【0009】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記検出部は、前記画像から人を認識するとともに、認識された人の進行方向および動作を検出し、前記進行方向が前記車両の進行方向と反対方向であり、且つ、振り返りの動作を行った人を前記コンテンツの前記視聴者と判定するものである。
【0010】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記視聴者が存在する方向を認識する視聴者方向認識部と、指向性を有する無線通信が可能な指向性通信部と、をさらに備え、前記送信部は、前記視聴者方向認識部によって認識された前記視聴者の方向に指向性を向けて前記関連情報を送信するものである。
【0011】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記送信部は、前記車両が所定の速度以上の速度で走行しているときに、前記端末装置に前記関連情報を送信するものである。
【0012】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記視聴者が存在する位置を認識する視聴者位置認識部と、前記車両の走行ルートまたは前記表示部における前記コンテンツの表示タイミングを決定する決定部と、前記視聴者の前記コンテンツに対する関心の高さを推定する推定部と、をさらに備え、前記決定部は、前記視聴者の位置と、前記視聴者の前記コンテンツに対する関心の高さとの関係性に基づいて、前記コンテンツに向けられる関心の大きさを最大化するように前記走行ルートまたは前記表示タイミングを決定するものである。
【0013】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記視聴者の端末装置から前記コンテンツの表示内容に関する所定の情報が入力された場合に、前記視聴者に対して前記コンテンツに関する所定のサービスまたは前記車両に付帯する所定のサービスを提供するサービス提供部をさらに備えるものである。
【0014】
(8):この発明の一態様に係る車両用広告方法は、コンピュータが、車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出し、検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信するものである。
【0015】
(9):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出させ、検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信させるものである。
【発明の効果】
【0016】
(1)~(9)によれば、車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出し、検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信することにより、より適切に選択された人に関連情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の車両用広告システムの概要を示す図である。
【
図2】本実施形態の車両用広告システムの構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における関連情報送信処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態における対応サービス提供処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態の車両用広告システムにおける対応サービス提供処理の実施例を示す図である。
【
図6】本実施形態における広告計画決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の車両用広告システム100の概要を示す図である。車両用広告システム100は、車両Mに搭載された電子看板装置200に広告を含むコンテンツを表示するとともに、視聴者に当該コンテンツに関する関連情報を送信するシステムである。電子看板装置200は、その表示内容が車両Mの外部から視認され得るように車両Mに設置されるものであり、その表示内容は設定により任意に変更可能である。例えば
図1は、通行人P1、P2、P3の周辺を車両Mがコンテンツを表示しながら走行している状況を表している。車両用広告システム100は、電子看板装置200の周辺を撮像した画像からコンテンツの視聴者を検出し、検出した視聴者に対してコンテンツの関連情報を提供するものである。このため、車両用広告システム100は、電子看板装置200の周辺を撮像するための撮像装置300と、視聴者の端末装置600と通信するための指向性通信装置400とを備える。電子看板装置200は車両Mの一方の側面にのみ設置されてもよいし、両側面に設置されてもよい。なお、本実施形態における電子看板装置200は「表示部」の一例である。
【0020】
図2は、本実施形態の車両用広告システム100の構成例を示す図である。車両用広告システム100は、上述の電子看板装置200、撮像装置300、および指向性通信装置400に加え、車両用広告装置500を備える。電子看板装置200と、撮像装置300と、指向性通信装置400と、車両用広告装置500とは内部バスやLAN(Local Area Network)等の通信線により互いに通信可能に接続される。電子看板装置200は、いわゆるデジタルサイネージ装置であり、指定された画像(映像含む)を指定されたタイミングで表示することができる。また、撮像装置300は、電子看板装置200の周辺を撮像可能な位置および姿勢で設置されたカメラである。撮像装置300は、電子看板装置200の視聴者を検出するための画像を取得するために設けられるものであるため、電子看板装置200の表示内容を視認可能な範囲を撮像できるものであればどのようなカメラが用いられてもよい。例えば、車両Mの両側面に電子看板装置200が設置される場合には、それぞれ別々に撮像装置300が設置されてもよいし、一台で車両Mの周囲360度を撮像可能なパノラマカメラなどが用いられてもよい。撮像装置300は、取得した画像データを車両用広告装置500に随時出力する。撮像装置300は「撮像部」の一例である。
【0021】
指向性通信装置400は、所定の方向に指向性を向けて無線通信することができる無線通信装置である。例えば、指向性通信装置400は、指向性アンテナを備え、ビームフォーミング技術により所定のビーム幅で特定の方向に無線電波の指向性を形成することができるものである。本実施形態では、指向性通信装置400は、車両用広告装置500が指定した情報を、車両用広告装置500が指定した方向に指向性を向けて送信するものとする。指向性通信装置400は「指向性通信部」の一例である。
【0022】
車両用広告装置500は、電子看板装置200の周辺が撮像された画像(以下「周辺画像」という。)から電子看板装置200の視聴者を検出し、検出した視聴者に対して電子看板装置200が表示するコンテンツに関する関連情報を送信する装置である。具体的には、車両用広告装置500は、記憶部520と、入力部530と、表示部540と、制御部550とを備える。
【0023】
記憶部520は、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置を用いて構成される。記憶部520には、車両用広告装置500の動作に関する各種情報が記憶される。例えば、記憶部520には視聴者に送信する関連情報や、電子看板装置200に表示させるコンテンツデータや、その表示タイミングに関する設定情報などが記憶される。なお、電子看板装置200に表示させるコンテンツデータや、その表示タイミングに関する設定情報は電子看板装置200に記憶されていてもよいし、電子看板装置200と車両用広告装置500とで同じ情報を記憶していてもよい。
【0024】
入力部530は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を用いて構成される。入力部530は、車両用広告装置500に対する入力操作を受け付ける。入力部530は、取得した入力情報を制御部550に出力する。
【0025】
表示部540は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、タッチパネル等の表示装置を用いて構成される。表示部540は、制御部550の指示に基づき、任意の情報を表示可能である。
【0026】
制御部550は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。制御部550の構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0027】
制御部550は、車両用広告装置500の動作を制御する機能を有する。ここで、制御部550の制御機能には、コンテンツの表示、関連情報の提供、および後述の対応サービスを提供する機能が含まれる。例えば、制御部550は、これらの機能を実現する機能部として、取得部551と、検出部552と、推定部553、位置特定部554と、送信部555と、決定部556と、サービス提供部557とを備える。
【0028】
取得部551は、撮像装置300から周辺画像を取得する機能と、利用者の端末装置600から端末情報を取得する機能とを有する。取得部551は、取得した周辺画像のデータおよび端末情報を記憶部520に記録する。端末情報については後述する。また、取得部551は、自車両Mの走行状態に関する情報を自車両Mに搭載された車両システム(図示せず)から取得する。例えば、車両システムは車載ECU(Electronic Control Unit)であり、取得部551は、自車両Mに搭載された各種の車載ECUから、自車両Mの走行速度やエンジン状態などを示す各種の車両情報を取得することができる。取得部551は、取得した車両情報を記憶部520に記録する。
【0029】
検出部552は、周辺画像から人を認識するとともに、認識された人の進行方向および視線を検出し、進行方向が車両Mの進行方向と同じ方向であり、且つ、視線を所定時間以上電子看板装置200に向けている人をコンテンツに関心を示している視聴者と判定する。また、例えば、検出部552は、周辺画像から人を認識するとともに、認識された人の進行方向および動作を検出し、進行方向が車両Mの進行方向と反対方向であり、且つ、振り返りの動作を行った人をコンテンツの視聴者と判定する。検出部552は、検出した視聴者に関する情報を位置特定部554に通知する。例えば、検出部552は、進行方向と視線の方向とが同じ方向である状態から反対方向である状態に変化した人を振り返りの動作を行った人と検出してもよい。例えば、
図1の例では、歩行者P3が振り返りの動作を行った人として検出され得る。
【0030】
なお、検出部552は、人と車両Mの進行方向が完全に一致しなくても一致度が所定の閾値よりも高ければ同じ方向と判定してもよい。同様に、検出部552は、人と車両Mの進行方向が正反対でなくても一致度が所定の閾値よりも低ければ同じ方向と判定してもよい。例えば、この場合、各進行方向のベクトルの内積の大きさを進行方向の一致度としてもよい。なお、検出部552は、後述する推定部553によって推定された関心の高さに基づいてコンテンツに関心を示している視聴者を判別してもよい。例えば、検出部552は、コンテンツに対する視聴者の関心の高さの推定値が閾値以上である視聴者を、コンテンツに関心を示している視聴者と判定してもよい。
【0031】
推定部553は、検出された視聴者のコンテンツに対する関心の高さを推定する機能を有する。例えば、推定部553は、検出された視聴者の進行方向や視線、動作などを総合的に考慮したモデルにより関心の高さを数値化することにより、コンテンツに対する視聴者の関心の高さを推定してもよい。例えば、視聴者の進行方向と車両Mの進行方向の一致度をx、視聴者の視線と電子看板装置200の位置との合致度をy、視聴者が行った動作から推定される関心の高さの指標値をzとした場合、コンテンツに対する視聴者の関心の高さIは、I=ax+by+czというモデルで算出することができる。ここでa、b、cは、それぞれx、y、zに対する重み係数であり、任意の基準により決定されてよい。重み係数は、テスト結果に基づいて決定されてもよいし、運用実績に基づいて修正または変更されてもよい。推定部553は、このように推定した視聴者の関心の高さを示す情報を、当該視聴者について特定された位置情報と対応づけて記憶部520に記録する。
【0032】
位置特定部554は、視聴者が検出された周辺画像が撮像されたときの撮像装置300の撮像条件に基づいて、車両Mからみて当該視聴者が位置する方向を特定することができる。例えば、撮像装置300がレンズの向きを水平方向に360度変化させることができる回転型のカメラである場合、周辺画像が撮像されたときの基準方向(例えば車両Mの進行方向)に対するレンズの向きを記録しておけば、車両Mの視聴者が検出された周辺画像が撮像されたときのレンズの向きに視聴者がいることが分かる。また、レンズの向きが固定されている場合、周辺画像内における視聴者の位置をもとに、レンズの向きを基準として視聴者がいる方向を特定することができる。なお、ここでは車両Mからみた視聴者の方向を特定する場合を例に説明したが、画像から被写体までの距離を推定する技術や、高精度の地図情報、車両Mの位置情報などの情報を用いて視聴者の三次元位置を特定することも可能である。位置特定部554は、このように特定した視聴者の位置を送信部555に通知する。位置特定部554は「視聴者方向認識部」および「視聴者位置認識部」の一例である。
【0033】
送信部555は、検出部552によって検出された視聴者の端末装置600にコンテンツに関する関連情報を送信する。具体的には、送信部555は、指向性通信装置400の指向性を位置特定部554によって特定された視聴者の位置方向に向けて関連情報を送信する。このようにすることで、コンテンツに関心のない人の端末装置600に関連情報が送信されるのを抑制することができる。また、送信部555は、自車両Mの走行速度に応じて関連情報の送信動作を変更する機能を有する。例えば、送信部555は、車両Mが所定の速度以上の速度で走行しているときに関連情報を送信する。このようにすることで、自車両Mが広告目的で走行していないとき、または停車しているときに関連情報の不要な送信が行われることを抑制することができる。
【0034】
決定部556は、自車両Mの走行ルートまたは表示部540におけるコンテンツの表示タイミングを決定する機能を有する。具体的には、決定部556は、コンテンツの視聴者の位置と、推定部553によって推定された視聴者のコンテンツに対する関心の高さとの関係性に基づいて、コンテンツに向けられる関心の大きさを最大化するように自車両Mの走行ルートまたは電子看板装置200におけるコンテンツの表示タイミングを決定する。
【0035】
サービス提供部557は、検出された視聴者の端末装置からコンテンツの表示内容に関する所定の情報が入力された場合に、その視聴者に対して上述の対応サービスを提供するものである。対応サービスは、コンテンツに関する所定のサービス、または車両Mに付帯する所定のサービスである。対応サービスは、コンテンツに関するもの、または車両Mが有する機能によって提供可能なものであれば所定のサービスに限定されず、どのようなサービスであってもよい。
【0036】
図3は、車両用広告装置500が視聴者の端末装置600に関連情報を送信する処理(以下「関連情報送信処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。具体的には、
図3は車両Mが宣伝走行時における関連情報送信処理の流れを示す。また、
図3に示す関連情報送信処理の実行中においては、所定のコンテンツが電子看板装置200に表示されているものとする。このような状況において、まず、取得部551が撮像装置300から車両Mの周辺画像を取得して記憶部520に記録する(ステップS101)。続いて、検出部552が、周辺画像から電子看板装置200に表示されているコンテンツに関心を示している視聴者の検出を試み(ステップS102)、当該周辺画像から視聴者が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。
【0037】
ここで、視聴者が検出されなかったと判定した場合、検出部552は関連情報送信処理を終了する。一方、視聴者が検出されたと判定した場合、位置特定部554が、周辺画像から検出された視聴者の位置を特定する(ステップS104)。例えば、位置特定部554は、少なくとも自車両Mからみて当該視聴者が位置する方向を特定する。位置特定部554は、特定した視聴者の位置を送信部555に通知する。続いて、送信部555は、指向性通信装置400を介して、位置特定部554により特定された視聴者の位置方向に指向性を向けて関連情報を送信する(ステップS105)。
【0038】
なお、
図3に示すフローは一周期の関連情報送信処理を示すものであり、このようなフローが周期的に繰り返し実行されることにより、車両用広告装置500は自車両Mが走行中に表示するコンテンツについて走行位置周辺の視聴者を随時検出し、検出した視聴者に関連情報を提供することができる。
【0039】
図4は、車両用広告装置500がコンテンツの視聴者に対して対応サービスを提供する処理(以下「対応サービス提供処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、車両Mが停車しているときに提供可能な対応サービスの一例として、視聴者に端末装置600の充電環境を提供するサービス(以下「充電サービス」という。)について説明する。なお、対応サービスは、必ずしも自車両Mが停車しているときに提供可能なサービスである必要はなく、自車両Mが走行中に提供可能なサービスであってもよい。また、
図3の関連情報送信処理と同様に、対応サービス提供処理の実行中においては、所定のコンテンツが電子看板装置200に表示されているものとする。また、
図4において関連情報送信処理と同様の処理については、
図3と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0040】
この場合、車両用広告装置500において、検出部552によってコンテンツの視聴者が検出された場合、サービス提供部557が、対応サービスの利用に関する視聴者情報が車両用広告装置500に入力されたか否かを判定する(ステップS201)。視聴者情報は、車両用広告装置500が視聴者に対して対応サービスを提供するか否かを判定するための情報であり、例えば、視聴者の端末装置600から送信される。ここで視聴者情報が入力されていないと判定した場合、サービス提供部557は対応サービス提供処理を終了する。一方、ステップS201において視聴者情報が入力されたと判定した場合、サービス提供部557は当該視聴者に対してサービス機能を開放する(ステップS202)とともに、その旨を当該視聴者の端末装置600に通知する。
【0041】
図5は、本実施形態の車両用広告システム100における対応サービス提供処理の実施例を示す図である。
図5における対応サービスは上述の充電サービスである。この場合、例えば、車両Mは、充電サービスを提供する際の電源として太陽光発電機710、充電器720A、720B、および720Cを備える。太陽光発電機710は、充電器720A、720B、および720Cに電力を供給し、充電器720A、720B、および720Cは、太陽光発電機710から供給される電力を用いて、それぞれにセットされた機器の充電を行うことができる。なお、ここで、充電器720A、720B、および720Cは、その動作状態がサービス提供部557によって使用可能状態または使用不可状態のいずれかに制御されるものとする。
図5の例は、視聴者BおよびCの端末装置600がそれぞれ充電器720Bおよび720Cによって充電されている状況を表している。また、
図5の例において、視聴者Aはこれから充電サービスの利用を開始しようとしている。
【0042】
この場合、例えば、車両用広告装置500は、周辺画像から視聴者Aを検出し、検出した視聴者Aの端末装置600Aに対して、充電サービスを利用するためのアンケートの情報を関連情報として送信する。利用者Aは端末装置600Aにアンケートに対する回答を入力し、端末装置600Aは、その回答情報を視聴者情報として車両用広告装置500に送信する。回答情報が車両用広告装置500によって受信されると、サービス提供部557が充電器720Aを使用可能状態とし(サービス機能の開放)、その旨を端末装置600Aに通知する。この通知を受け、視聴者Aは、端末装置600Aを充電器720Aにセットすることで充電サービスを利用することができる。
【0043】
また、この場合、車両用広告装置500の制御部550は、電子看板装置200に対して充電サービスを利用中の各視聴者に向けたコンテンツの表示を指示してもよい。例えば、制御部550は、各視聴者について特定した位置情報を電子看板装置200に送信する。この場合、例えば、電子看板装置200は、視聴者の位置に応じて表示領域を分割し、分割されたそれぞれの表示領域に異なるコンテンツを表示するように構成されてもよい。
【0044】
また、例えば、制御部550は、各視聴者について何らかの属性情報や嗜好情報を得ている場合、各視聴者について位置情報に加えて、属性情報または嗜好情報を電子看板装置200に送信してもよい。この場合、例えば、電子看板装置200は、各視聴者の表示領域に、視聴者の属性または嗜好に応じたコンテンツを表示するように構成されてもよい。
【0045】
図6は、車両用広告装置500が自車両Mの走行ルートまたはコンテンツの表示タイミングを決定する処理(以下「広告計画決定処理」という。)の流れの一例を示すフローチャートである。広告計画決定処理は、自車両Mの走行中に実行されてもよいし、停車中に実行されてもよい。まず、推定部553が、過去におけるコンテンツ表示の実績情報をもとに、そのコンテンツ表示中において検出された視聴者の当該コンテンツに対する関心の高さを推定する(ステップS301)。例えば、過去に取得された周辺画像がコンテンツ表示の実績情報として記憶部520に蓄積される場合、推定部553は、周辺画像から認識される各視聴者の進行方向や視線、またはそれらの時間変化等に基づいて、各視聴者のコンテンツに対する関心の高さを推定することができる。
【0046】
続いて、推定部553は、各視聴者について推定した関心の高さと、各視聴者の位置情報と、コンテンツの表示内容とに基づき、各コンテンツの表示位置と、その表示位置におけるコンテンツの表示によって得られる視聴者の関心の高さとの関係性を分析する(ステップS302)。例えば、推定部553は、機械学習により上記関係性を示す学習済みモデルを生成する。続いて、決定部556が、上記関係性の分析結果に基づいて、車両Mの走行ルートまたはコンテンツの表示タイミングを決定する(ステップS303)。具体的には、決定部556は、上記関係性の分析結果に基づいて、視聴者がコンテンツに向ける関心の大きさを最大化するように走行ルートまたはコンテンツの表示タイミングを決定する。推定部553は、このように決定した走行ルートまたはコンテンツの表示タイミングを示す情報(以下「広告計画情報」という。)を記憶部520に記録する。制御部550は、広告計画情報を表示部540に表示させてもよいし、図示しないカーナビゲーション装置等の外部装置に出力してもよい。
【0047】
このように構成された本実施形態の車両用広告装置、車両用広告方法、およびプログラムは、車両Mの外部から視認されるように当該車両Mに設置され、広告を含むコンテンツを表示する電子看板装置200と、電子看板装置200の周辺画像を撮像する撮像装置300と、撮像装置300によって撮像された周辺画像に基づいて、当該コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出する検出部552と、検出部552によって検出された視聴者の端末装置600にコンテンツに関する関連情報を送信する送信部555と、を備えることにより、より適切に選択された人に関連情報を提供することが可能となる。
【0048】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
車両の外部から視認されるように前記車両に設置され、広告を含むコンテンツを表示する表示部の周辺が撮像された画像に基づいて、前記コンテンツに関心を示していることが推定される視聴者を検出し、
前記検出部によって検出された視聴者の端末装置に前記コンテンツに関する関連情報を送信する、
ように構成されている、車両用広告装置。
【0049】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0050】
100…車両用広告システム、200…電子看板装置、300…撮像装置、400…指向性通信装置、500…車両用広告装置、520…記憶部、530…入力部、540…表示部、550…制御部、551…取得部、552…検出部、553…推定部、554…位置特定部、555…送信部、556…決定部、557…サービス提供部、600…端末装置、710…太陽光発電機、720…充電器