(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】水中翼船のロッドシステム
(51)【国際特許分類】
B63B 1/28 20060101AFI20250221BHJP
F16C 23/04 20060101ALI20250221BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20250221BHJP
F16C 29/02 20060101ALI20250221BHJP
F16C 33/74 20060101ALI20250221BHJP
【FI】
B63B1/28
F16C23/04 E
F16J15/16 A
F16C29/02
F16C33/74 Z
(21)【出願番号】P 2021041294
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菊野 信祐
(72)【発明者】
【氏名】谷口 公俊
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-012391(JP,U)
【文献】米国特許第05590966(US,A)
【文献】実開昭54-071899(JP,U)
【文献】特開平06-135372(JP,A)
【文献】実開昭58-182062(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/28
F16C 23/04
F16J 15/16
F16C 29/02
F16C 33/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中翼船においてストラットによって支持される水中翼のフラップを駆動する水中翼船のロッドシステムであって、
前記フラップに連結されると共に前記ストラット内の挿通空間に挿通され、軸方向に変位して前記フラップを駆動するロッドと、
前記挿通空間に設けられ、前記ロッドを前記軸方向に変位自在に支持する軸受と、
前記挿通空間
内で且つ前記軸受
と前記フラップ
との間に設けられ、前記挿通空間
において前記ロッドと
前記ストラットとの間をシールする第1シール機構とを備えている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中翼船のロッドシステムにおいて、
前記第1シール機構から前記軸受側に位置する前記ロッドには、防水剤が塗布されている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水中翼船のロッドシステムにおいて、
前記挿通空間における前記軸受よりも前記フラップ側と反対側の位置に設けられ、前記挿通空間と前記ロッドとの間をシールする第2シール機構をさらに備えている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の水中翼船のロッドシステムにおいて、
前記軸受は、複数設けられている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項5】
水中翼船においてストラットによって支持される水中翼のフラップを駆動する水中翼船のロッドシステムであって、
前記フラップに連結されると共に前記ストラット内の挿通空間に挿通され、軸方向に変位して前記フラップを駆動するロッドと、
前記挿通空間に設けられ、前記ロッドを前記軸方向に変位自在に支持する複数の軸受と、
前記挿通空間における前記複数の軸受よりも前記フラップ側の位置に設けられ、前記挿通空間において前記ロッドと前記ストラットとの間をシールする第1シール機構と、
前記挿通空間に設けられ、
前記複数の軸受に前記軸方向から接触し、前記軸受同士の間隔を保持するスペーサと
を備えている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項6】
水中翼船においてストラットによって支持される水中翼のフラップを駆動する水中翼船のロッドシステムであって、
前記フラップに連結されると共に前記ストラット内の挿通空間に挿通され、軸方向に変位して前記フラップを駆動するロッドと、
前記挿通空間に設けられ、前記ロッドを前記軸方向に変位自在に支持する複数の軸受と、
前記挿通空間における前記複数の軸受よりも前記フラップ側の位置に設けられ、前記挿通空間において前記ロッドと前記ストラットとの間をシールする第1シール機構とを備え、
前記複数の軸受のうち少なくとも前記第1シール機構に最も近い前記軸受は、球面軸受である、水中翼船のロッドシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の水中翼船のロッドシステムにおいて、
前記ロッドの前記フラップ側と反対側の端部に連結され、前記ロッドを軸方向に変位させるアクチュエータをさらに備えており、
前記アクチュエータは、翼走時における非没水部に設けられている、水中翼船のロッドシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の水中翼船のロッドシステムにおいて、
前記第1シール機構は、前記ロッドの外周面と接触する内側シール部材と、前記挿通空間の内周面と接触する外側シール部材と、前記内側シール部材および外側シール部材を保持する保持部材とを有しており、
前記保持部材は、前記内側シール部材を保持する第1金属部と、前記外側シール部材を保持する第2金属部と、前記第1金属部と前記第2金属部とを繋ぐ樹脂部とを有している、水中翼船のロッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、水中翼のフラップを駆動する水中翼船のロッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、船底に水中翼が設けられた水中翼船が知られている。水中翼は、船体の左右方向に延びており、ストラットによって支持されている。水中翼には、船体の姿勢を制御するためのフラップが設けられている。そして、ストラットには、フラップに連結され、フラップを駆動するためのロッドが挿通されている。フラップは、アクチュエータがロッドをその軸方向に変位させることにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した水中翼船では、船体の姿勢を制御するためにフラップが頻繁に駆動されるところ、ロッドの高い円滑性が要求される。つまり、ロッドの円滑性を向上させることは、船体の姿勢制御の高精度化に繋がる。
【0005】
本願に開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水中翼のフラップを駆動するためのロッドの円滑性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示の技術は、水中翼船においてストラットによって支持される水中翼のフラップを駆動する水中翼船のロッドシステムである。前記ロッドシステムは、ロッドと、軸受と、第1シール機構とを備えている。前記ロッドは、前記フラップに連結されると共に前記ストラット内の挿通空間に挿通され、軸方向に変位して前記フラップを駆動する。前記軸受は、前記挿通空間に設けられ、前記ロッドを前記軸方向に変位自在に支持する。前記第1シール機構は、前記挿通空間における前記軸受よりも前記フラップ側の位置に設けられ、前記挿通空間と前記ロッドとの間をシールする。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示の水中翼船のロッドシステムによれば、ロッドの円滑性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、右前方から視た水中翼船の斜視図である。
【
図2】
図2は、左後方から見た水中翼船の斜視図である。
【
図3】
図3は、水中翼船の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。
【
図4】
図4は、ロッドシステムの概略構成を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1シール機構の概略構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第2シール機構の概略構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、ストラット駆動機構の概略構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、ストラット駆動機構の概略構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、ストラット駆動機構のアクチュエータを示す概略の断面図である。
【
図10】
図10は、その他の実施形態に係る第1シール機構の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、右前方から視た水中翼船1の斜視図である。
図2は、左後方から視た水中翼船1の斜視図である。
図3は、水中翼船1の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。
【0010】
水中翼船1は、船体2と、1本の前部ストラット3と、前部ストラット3に設けられた前部フォイル4と、3本の後部ストラット5と、後部ストラット5に設けられた後部フォイル6と、2基のジェットポンプ11と、2基のガスタービンエンジン12とを備えている。なお、前部ストラット3や前部フォイル4、後部フォイル6等の個数は、これに限定されない。
【0011】
以下、水中翼船1の進行方向の前方を「前」および後方を「後」として前後方向を設定する。水中翼船1の進行方向の前方を向いて右側を「右」および左側を「左」として左右方向を設定する。水中翼船1の高さ方向を上下方向に設定する。
【0012】
前部ストラット3は、船体2の前部であって左右方向の中央に設けられている。前部ストラット3の上端部は、船体2の底に連結されている。前部ストラット3は、前後方向に回転するように(即ち、左右方向に延びる軸回りに回転するように)船体2に設けられている。具体的には、前部ストラット3は、船体2の底から下方へ延びる第1状態と、船体2の底から前方へ延びる第2状態との間で前後方向に回転するように構成されている。さらに、前部ストラット3は、その軸心を中心に回転可能に船体2に設けられている。以下、特に断りがない限り、前部ストラット3等の構成を説明する際には、前部ストラット3は第1状態にあるものとする。
【0013】
前部フォイル4は、前部ストラット3の下端部からそれぞれ左右に延びている。つまり、前部フォイル4は、水中翼の一例であり、前部ストラット3によって支持されている。
【0014】
前部フォイル4の後端部には、複数の前部フラップ41が設けられている。前部フラップ41は、船体2の左右方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。前部フラップ41が回動することにより、前部フォイル4による揚力が調節される。前部フラップ41は、フラップの一例である。
【0015】
3本の後部ストラット5は、船体2の後部において左右方向に並んで設けられている。後部ストラット5の上端部は、船体2の底に連結されている。後部ストラット5は、前後方向に回転するように(即ち、左右方向に延びる軸回りに回転するように)船体2に設けられている。具体的には、後部ストラット5は、船体2の底から下方へ延びる第1状態と、船体2の底から後方へ延びる第2状態との間で前後方向に回転するように構成されている。以下、3本の後部ストラット5を区別する場合には、左側から順に、左後部ストラット5、中央後部ストラット5、右後部ストラット5と称する。
【0016】
後部フォイル6は、3本の後部ストラット5の下端部に設けられている。具体的には、左後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延び、右後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延びている。つまり、後部フォイル6は、水中翼の一例であり、後部ストラット5によって支持されている。
【0017】
後部フォイル6の後端部には、複数の後部フラップ61が設けられている。後部フラップ61は、左右方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。後部フラップ61が回動することにより、後部フォイル6による揚力が調節される。後部フラップ61は、フラップの一例である。
【0018】
1基のジェットポンプ11と1基のガスタービンエンジン12とが1組となり、ガスタービンエンジン12がジェットポンプ11を駆動する。つまり、水中翼船1は、2組のジェットポンプ11及びガスタービンエンジン12を備えている。
【0019】
2基のジェットポンプ11は、船体2の後部且つ底部において左右に配置されている。中央後部ストラット5の下端部には、前方に開口する給水口51が設けられている。中央後部ストラット5の上端部は、二股に分岐し、それぞれ2基のジェットポンプ11に接続されている。中央後部ストラット5の内部には、給水路が形成されている。水は、給水口51から中央後部ストラット5の内部に流入し、給水路を流れ、2基のジェットポンプ11にそれぞれ流入する。
【0020】
2基のガスタービンエンジン12は、船体2の後部の左右にそれぞれ配置されている。各ガスタービンエンジン12は、ギヤボックス12a内の減速ギヤ(図示省略)を介して、ジェットポンプ11に連結されている。
【0021】
ジェットポンプ11は、軸流ウォータジェットポンプである。ジェットポンプ11は、後方へ水を噴射し、水中翼船1を前方へ推進させる。
【0022】
水中翼船1は、船体2の底が没水した状態で航行する艇走状態(図示省略)と、前部フォイル4および後部フォイル6による揚力によって船体2が水面よりも上に浮上した状態で航行する翼走状態(
図1および
図2に示す状態)とに切り換え可能となっている。艇走状態では、前部ストラット3および後部ストラット5の両方が第1状態または第2状態になる。また、艇走状態では、前部ストラット3および後部ストラット5は、一方が第1状態となり他方が第2状態となる場合もある。翼走状態では、前部ストラット3および後部ストラット5の両方が第1状態になる。つまり、水中翼船1は、翼走時には前部フォイル4および後部フォイル6の全体が水面下に没水する、いわゆる全没翼型の水中翼船である。
【0023】
また、水中翼船1は、翼走時において、前部ストラット3がその軸心回りに回動することにより、旋回時の釣り合いを取る。つまり、前部ストラット3は、前部フォイル4を支持する機能と、方向舵としての機能とを有している。
【0024】
〈ロッドシステム〉
図4は、ロッドシステム7の概略構成を示す断面図である。
【0025】
水中翼船1は、前部フォイル4の前部フラップ41および後部フォイル6の後部フラップ61を駆動する2つのロッドシステムをさらに備えている。2つのロッドシステムは、基本構成が同様であるため、ここでは一例として、前部フラップ41を駆動するロッドシステム7について説明する。また、ここで言及する位置および方向は、特に断らない限り、翼走状態の水中翼船1における位置および方向を意味する。
【0026】
ロッドシステム7は、アクチュエータ71と、ロッド72と、リンク機構73と、滑り軸受74a,74bと、第1シール機構75と、第2シール機構76と、スペーサ78とを備えている。
【0027】
ロッド72は、前部フラップ41に連結されると共に前部ストラット3内の挿通空間31に挿通され、軸方向に変位して前部フラップ41を駆動する。
【0028】
具体的に、ロッド72は、外形が円形のロッドであり、鉛直方向に延びている。ロッド72は、前部ストラット3内に形成された挿通空間31に挿通されている。挿通空間31は、前部ストラット3において鉛直方向に延びる円柱状の空間である。ロッド72は、ロッド72の軸方向(即ち、鉛直方向)に変位可能に挿通空間31に挿通されている。より詳しくは、ロッド72は、下端が挿通空間31ひいては前部ストラット3の外部に位置する状態で挿通空間31に挿通されている。さらに、ロッド72は、上端が挿通空間31の外部に位置する状態で挿通空間31に挿通されている。
【0029】
ロッド72は、前部フラップ41に間接的に連結されている。具体的には、ロッド72の下端は、リンク機構73を介して前部フラップ41に連結されている。前部フラップ41は、船体2の左右方向に延びるピン42によって支持されており、ピン42を中心として回動する。リンク機構73は、前部フラップ41のレバー41aに連結されている。つまり、ロッド72が軸方向に変位することにより、リンク機構73がレバー41a(前部フラップ41)を回転させる。こうして、ロッド72は、軸方向に変位することによって前部フラップ41を駆動する。
【0030】
アクチュエータ71は、ロッド72の上端に連結されている。つまり、アクチュエータ71は、ロッド72の前部フラップ41側と反対側の端部に連結されている。そして、アクチュエータ71は、ロッド72を軸方向に変位させる。この例では、アクチュエータ71は油圧シリンダである。つまり、アクチュエータ71のピストンロッド71aがロッド72の上端に連結され、アクチュエータ71は、ピストンロッド71aを進退動作(往復動作)させることによってロッド72を軸方向に変位させる。
【0031】
アクチュエータ71は、翼走時における非没水部に設けられている。非没水部は、水中翼船1において水面WS下に没水しない部分である。この例では、アクチュエータ71は、船体2の船底よりも高い位置に設けられている。そのため、翼走時では、船体2が水面WSよりも上に浮上することから、アクチュエータ71は水面WS下に没水しない(
図4参照)。
【0032】
滑り軸受74a,74bは、挿通空間31に設けられ、ロッド72を軸方向に変位自在に支持する。つまり、ロッド72は、滑り軸受74a,74bに対して軸方向に摺動する。滑り軸受74a,74bは、軸受の一例である。滑り軸受74a,74bは、複数(この例では、4つ)設けられている。複数の滑り軸受74a,74bは、挿通空間31において、軸方向に順に配置されている。複数の滑り軸受74a,74bは、互いに所定の間隔を置いて設けられている。
【0033】
このように、ロッド72が複数の滑り軸受74a,74bによって支持されることにより、ロッド72の座屈が抑制される。そのため、ロッド72の円滑性が向上する。つまり、ロッド72は円滑に軸方向に変位する。
【0034】
第1シール機構75は、挿通空間31における滑り軸受74a,74bよりも前部フラップ41側の位置に設けられ、挿通空間31とロッド72との間をシールする。つまり、第1シール機構75は、挿通空間31において、複数の滑り軸受74a,74bのうち最も前部フラップ41に近い滑り軸受74bよりも前部フラップ41側の位置に設けられている。このように、第1シール機構75が設けられることにより、前部フラップ41側から挿通空間31への水(海水)や海洋生物等の異物の浸入が阻止される。
【0035】
第2シール機構76は、挿通空間31における滑り軸受74a,74bよりも前部フラップ41側と反対側の位置に設けられ、挿通空間31とロッド72との間をシールする。つまり、第2シール機構76は、挿通空間31において、複数の滑り軸受74a,74bのうち最も前部フラップ41から遠い滑り軸受74a(即ち、最もアクチュエータ71に近い滑り軸受74a)よりもアクチュエータ71側の位置に設けられている。このように、第2シール機構76が設けられることにより、アクチュエータ71側(即ち、前部フラップ41側と反対側)から挿通空間31への水(海水)や海洋生物等の異物の浸入が阻止される。
【0036】
こうして、第1シール機構75および第2シール機構76が設けられることにより、挿通空間31において両シール機構75,76によって水密空間35が区画形成される。水密空間35は、外部からの水や異物の浸入が阻止される空間であり、ロッド72における少なくとも滑り軸受74a,74bを摺動する部分を収容する空間として設定される。第1シール機構75および第2シール機構76の詳細な構成については、後述する。
【0037】
スペーサ78は、挿通空間31に設けられ、滑り軸受74a,74b同士の間隔を保持する。具体的に、スペーサ78は、円筒状に形成されており、ロッド72の外周に配置されている。スペーサ78の内径は、ロッド72の外径よりも大きく、スペーサ78の外径は、挿通空間31の内径よりも小さい。スペーサ78は、滑り軸受74a,74b同士の間に設けられ、滑り軸受74a,74bと接した状態で配置されている。こうしてスペーサ78が設けられることにより、滑り軸受74a,74b同士が所定の間隔で保持される。
【0038】
さらに、挿通空間31では、第1シール機構75とその直上の滑り軸受74bとの間、および、第2シール機構76とその直下の滑り軸受74aとの間にもスペーサ78が設けられている。そのため、第1シール機構75および第2シール機構76と滑り軸受74a,74bとが所定の間隔で保持される。また、複数の滑り軸受74a,74bのそれぞれが、スペーサ78によって挟持されている。そのため、滑り軸受74a,74bを例えば挿通空間31の内周面に固定しなくても、滑り軸受74a,74bはスペーサ78によって保持(固定)される。
【0039】
また、第1シール機構75から滑り軸受74a,74b側に位置するロッド72には、防水剤が塗布されている。より詳しくは、水密空間35に位置するロッド72、滑り軸受74a,74b、第1シール機構75、第2シール機構76およびスペーサ78の表面には防水剤が塗布されている。この例では、防水剤はグリースである。このように防水剤が塗布されることにより、水密空間35の防水が行われる。また、防水剤としてグリースが用いられるので、ロッド72と滑り軸受74a,74bとの摺動部の潤滑も行われる。
【0040】
ロッド72、滑り軸受74a,74b、第1シール機構75、第2シール機構76およびスペーサ78は、挿通空間31に組み込む前に、互いに組み付けられる。この組み付けの際に、ロッド72や滑り軸受74a,74b等のそれぞれに防水剤が塗布される。組み付けられたロッド72や滑り軸受74a,74b等は、再度防水剤が塗布され、挿通空間31に組み込まれる。
【0041】
こうして挿通空間31に組み込まれたシール機構75,76や滑り軸受74a,74b等は、押え部材77a,77bによって軸方向に押し付けられる。具体的に、挿通空間31におけるアクチュエータ71側の端部に取り付けられる押え部材77bは、第2シール機構76を下方へ押し付ける。挿通空間31における前部フラップ41側の端部に取り付けられる押え部材77aは、スペーサ78を介して第1シール機構75を上方へ押し付ける。これにより、滑り軸受74a,74bやシール機構75,76等が所定の位置に固定される。
【0042】
また、複数の滑り軸受74a,74bのうち少なくとも第1シール機構75に最も近い滑り軸受74bは、球面軸受(球面滑り軸受ともいう)である。この例では、第1シール機構75に最も近い滑り軸受74bのみが球面軸受である。
図5に示すように、滑り軸受74bは、外輪741および内輪742を有している。外輪741と内輪742との滑り接触面は、球面となっている。滑り軸受74bを球面軸受とすることにより、前部フラップ41からリンク機構73を介してロッド72に作用するスラスト荷重(軸方向荷重)を滑り軸受74bで受けることができる。滑り軸受74b以外の滑り軸受74aは、円筒状に形成された単体の部材で構成されている。
【0043】
このように、複数の滑り軸受74a,74bのうち、第1シール機構75に最も近い、言い換えれば前部フラップ41に最も近い滑り軸受74bを球面軸受とすることにより、ロッド72における座屈長さが最小になる。そのため、前部フラップ41から作用するスラスト荷重(軸方向荷重)によって発生し得るロッド72の座屈を抑制することができる。
【0044】
図5は、第1シール機構75の概略構成を示す断面図である。第1シール機構75は、保持部材751と、ロッドパッキン755と、ワイパーシール756と、ガスケット757とを有している。
【0045】
ロッドパッキン755は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例であり、この例では、2つ設けられている。ワイパーシール756は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例であり、この例では、1つ設けられている。第1シール機構75では、前部フラップ41側(
図5における下側)から順に、ワイパーシール756および2つのロッドパッキン755が配置されている。ガスケット757は、挿通空間31の内周面と接触する外側シール部材の一例であり、この例では、1つ設けられている。
【0046】
保持部材751は、ロッドパッキン755、ワイパーシール756およびガスケット757を保持する。具体的に、保持部材751は、第1金属部752と、第2金属部753と、樹脂部754とを一体で有している。
【0047】
第1金属部752は、ロッドパッキン755およびワイパーシール756を保持する金属製の部分である。第2金属部753は、ガスケット757を保持する金属製の部分である。第1金属部752および第2金属部753はそれぞれ、略円環状に形成されている。第1金属部752では、内周面に形成された3つの溝に2つのロッドパッキン755およびワイパーシール756が嵌め込まれている。第2金属部753では、外周面に形成された1つの溝にガスケット757が嵌め込まれている。
【0048】
第1金属部752の外径は、第2金属部753の外径よりも小さい。第1金属部752の内径は、第2金属部753の内径よりも小さい。第1金属部752と第2金属部753とは、互いにロッド72の軸方向にずれて設けられている。樹脂部754は、第1金属部752と第2金属部753とを繋ぐ樹脂製の部分である。樹脂部754は、弾性を有する部分である。第1金属部752と第2金属部753とは、樹脂部754のみによって繋がっている。なお、第1シール機構75と滑り軸受74bとの間には、第2金属部753と外輪741とに接するスペーサ78が設けられている。
【0049】
このように構成された第1シール機構75では、保持部材751(第1金属部752)とロッド72の外周面との間が、ロッドパッキン755およびワイパーシール756によってシールされる。また、第1シール機構75では、保持部材751(第2金属部753)と挿通空間31の内周面との間が、ガスケット757によってシールされる。こうして、ロッド72と挿通空間31との間が第1シール機構75によってシールされる。なお、第1シール機構75では、ガスケット757の位置で水密空間35が区画される。
【0050】
また、第1シール機構75では、第1金属部752と第2金属部753とが樹脂部754によって繋がっているため、第1金属部752および第2金属部753のそれぞれに径方向への柔軟性を持たせることができる。つまり、第1金属部752および第2金属部753のそれぞれは、径方向に変位可能となる。そのため、第1金属部752はロッド72の外周面に対する追従が容易となり、第2金属部753は挿通空間31の内周面に対する追従が容易となる。よって、第1シール機構75によるシール性が高められる。
【0051】
図6は、第2シール機構76の概略構成を示す断面図である。第2シール機構76は、保持部材761と、ロッドパッキン762と、Oリング763a,763bとを有している。
【0052】
ロッドパッキン762は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例であり、この例では、2つ設けられている。Oリング763aは、挿通空間31の内周面と接触する外側シール部材の一例であり、この例では、2つ設けられている。
【0053】
保持部材761は、ロッドパッキン762およびOリング763aを保持する。保持部材761は、金属製の円筒部材である。保持部材761では、内周面に形成された2つの溝にロッドパッキン762が嵌め込まれている。保持部材761では、下部寄りの外周面に形成された溝にOリング763aが嵌め込まれ、上端に形成された段差にもう一つのOリング763aが位置している。この段差に位置するOリング763aは、上方から押え部材767によって保持されている。
【0054】
また、保持部材761の内周面には、2つのロッドパッキン762の間に凹部が形成されている。その凹部には、1つのOリング763bが収容されている。このOリング763bは、ロッド72の外周に嵌められている。また、保持部材761は、上部および下部のそれぞれにおいて円筒状の滑り軸受764を保持している。滑り軸受764は、ロッド72が挿通され、ロッド72を軸方向に変位自在に支持する。
【0055】
また、第2シール機構76は、保持部材761の上側および下側のそれぞれに設けられる保持部材765およびワイパーシール766を有している。ワイパーシール766は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例である。保持部材765は、金属製の円環状部材である。保持部材765では、内周面に形成された溝にワイパーシール766が嵌め込まれている。
【0056】
このように構成された第2シール機構76では、保持部材761,765とロッド72の外周面との間が、ロッドパッキン762およびワイパーシール766によってシールされる。また、第2シール機構76では、保持部材761と挿通空間31の内周面との間が、Oリング763aによってシールされる。こうして、ロッド72と挿通空間31との間が第2シール機構76によってシールされる。
【0057】
〈ストラット駆動機構〉
図7は、ストラット駆動機構8の概略構成を示す斜視図である。
図8は、ストラット駆動機構8の概略構成を示す断面図である。
図9は、ストラット駆動機構8のアクチュエータ81を示す概略の断面図である。
【0058】
水中翼船1は、前部ストラット3を回動させるストラット駆動機構8をさらに備えている。ストラット駆動機構8は、アクチュエータ81と、シャフト82(通称でキングポストともいう)と、トルクアーム83と、ハウジング84とを有している。また、ここで言及する位置および方向は、特に断らない限り、翼走状態の水中翼船1における位置および方向を意味する。
【0059】
シャフト82は、上下方向に延びており、前部ストラット3の上部に回転不能に連結されている。シャフト82は、ハウジング84によって回転自在に支持されている。具体的に、シャフト82は、ハウジング84を貫通している。ハウジング84は、シャフト82を回転自在に支持する2つの滑り軸受85,86を保持している。ハウジング84を貫通したシャフト82の上端には、トルクアーム83が回転不能に連結されている。つまり、ストラット駆動機構8では、シャフト82とトルクアーム83と前部ストラット3とが一体となって回動する。
【0060】
アクチュエータ81は、トルクアーム83を回動させる。この例では、アクチュエータ81は、油圧シリンダである。具体的に、アクチュエータ81のピストンロッド813はトルクアーム83に連結され、アクチュエータ81のキャップ側がハウジング84に設けられたブラケット84aに連結されている。ピストンロッド813が進退動作(往復動作)することにより、トルクアーム83が回動し、それに伴って前部ストラット3が回動する。
【0061】
アクチュエータ81には、万一、前部ストラット3が障害物と接触して過剰な力(回動力)がアクチュエータ81に作用した場合でも、その過剰な力を緩和する機構が設けられている。具体的に、アクチュエータ81には、リリーフ弁816が設けられている。
【0062】
アクチュエータ81では、シリンダチューブ811内のピストン812に連結されたピストンロッド813が進退する。シリンダチューブ811内は、ピストン812によってキャップ室811aとロッド室811bとに区画されている。第1ポートPcからキャップ室811aに作動油が供給されると、ピストンロッド813が進出する。第2ポートPrからロッド室811bに作動油が供給されると、ピストンロッド813が後退する。
【0063】
そして、シリンダチューブ811には、キャップ室811aに連通する第1流路814と、ロッド室811bに連通する第2流路815とが設けられている。リリーフ弁816は、ケース817と、弁体818と、バネ819とを有する。
【0064】
ケース817の内部は弁室817aとなっている。弁体818(ポペット)は、弁室817aにおいて変位可能に収容されている。この例では、弁体818は、
図9において上下方向に変位可能となっている。バネ819は、弁室817aに設けられ、弁体818を一方向(この例では、
図9において下方)に付勢している。弁室817aは、第1流路814および第2流路815の両方に連通している。
【0065】
リリーフ弁816では、弁体818が変位することにより、第1流路814と第2流路815とが連通する連通状態と、第1流路814と第2流路815とが遮断される遮断状態とに切り換えられる。具体的に、弁体818がバネ819の付勢力によって下方へ変位することにより遮断状態となり、弁体818がバネ819の付勢力に抗して上方へ変位することにより、連通状態となる。より詳しくは、キャップ室811aの圧力が第1流路814を通じて弁体818の第1受圧部818aに作用することによる力と、ロッド室811bの圧力が第2流路815を通じて弁体818の第2受圧部818bに作用することによる力とを足し合わせた力が、バネ819の付勢力よりも大きくなると、弁体818が上方へ変位して連通状態となる。
【0066】
リリーフ弁816では、連通状態となると、キャップ室811aとロッド室811bとが連通するので、キャップ室811aとロッド室811bとが均圧される。つまり、キャップ室811aおよびロッド室811bにおいて、圧力が高い一方の室から圧力が低い他方の室に圧力が逃げる。これにより、過剰な回動力がアクチュエータ81に作用してキャップ室811aまたはロッド室811bの圧力が過剰に高くなっても、前述のように過剰な圧力を逃がすことができるので、アクチュエータ81に作用する過剰な力を緩和することができる。そのため、万一、前部ストラット3が障害物と接触しても、アクチュエータ81やトルクアーム83が損傷することを未然に防止することができる。
【0067】
以上のように、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7は、水中翼船1において前部ストラット3(ストラット)によって支持される前部フォイル4(水中翼)の前部フラップ41(フラップ)を駆動する。前部フラップ41に連結されると共に前部ストラット3内の挿通空間31に挿通され、軸方向に変位して前部フラップ41を駆動するロッド72と、挿通空間31に設けられ、ロッド72を軸方向に変位自在に支持する滑り軸受74a,74b(軸受)と、挿通空間31における滑り軸受74a,74bよりも前部フラップ41側の位置に設けられ、挿通空間31とロッド72との間をシールする第1シール機構75とを備えている。
【0068】
前記の構成によれば、ロッド72が変位する際、ロッド72は滑り軸受74a,74bに対して摺動する。一方、前部フラップ41側から挿通空間31への水(海水)や海洋生物等の異物の浸入が第1シール機構75によって阻止される。そのため、滑り軸受74a,74bに対して摺動するロッド72の外周面が水によって腐食することを防止することができる。また、滑り軸受74a,74bに対して摺動するロッド72の外周面に海洋生物等が付着することを防止することができる。これにより、滑り軸受74a,74bに対するロッド72の摺動抵抗の増加が回避されるので、ロッド72の円滑性が向上する。よって、前部フラップ41の制御精度を高めることができる。
【0069】
特に、翼走時には前部フラップ41は水没することから、その前部フラップ41側からの水等の浸入の虞が高くなるところ、前記実施形態によれば、その水等の浸入を阻止できるので、ロッド72の円滑性を効果的に向上させることができる。
【0070】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7において、第1シール機構75から滑り軸受74a,74b側に位置するロッド72には、防水剤が塗布されている。
【0071】
前記の構成によれば、万一、第1シール機構75から水が浸入した場合でも、ロッド72の外周面に水が付着することを防水剤によって防止することができる。そのため、ロッド72の水による腐食をより防止できる。
【0072】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7は、挿通空間31における滑り軸受74a,74bよりも前部フラップ41側と反対側の位置に設けられ、挿通空間31とロッド72との間をシールする第2シール機構76をさらに備えている。
【0073】
前記の構成によれば、前部フラップ41側と反対側から挿通空間31への水(海水)や海洋生物等の異物の浸入が第2シール機構76によって阻止される。そのため、滑り軸受74a,74bに対して摺動するロッド72の外周面が水によって腐食することをより防止することができる。また、滑り軸受74a,74bに対して摺動するロッド72の外周面に海洋生物等が付着することをより防止することができる。
【0074】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7において、滑り軸受74a,74bは、複数設けられている。
【0075】
前記の構成によれば、滑り軸受74a,74bが複数設けられるので、例えば滑り軸受が1つの場合に比べて、ロッド72をより安定して支持することができる。そして、それぞれの滑り軸受74a,74bにおけるロッド72の摺動抵抗の増加を回避することができる。
【0076】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7は、挿通空間31に設けられ、滑り軸受74a,74b同士の間隔を保持するスペーサ78をさらに備えている。
【0077】
前記の構成によれば、複数の滑り軸受74a,74bを所定の間隔で所定の位置に保持することができる。そのため、ロッド72より安定して支持することができる。また、例えば滑り軸受74a,74bを挿通空間31の内周面に固定しなくても、滑り軸受74a,74bをスペーサ78によって挟持することで保持することができる。そのため、メンテナンスや点検時において、滑り軸受74a,74bの挿通空間31への組み込み作業や挿通空間31からの取り出し作業が容易となる。
【0078】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7において、複数の滑り軸受74a,74bのうち少なくとも第1シール機構75に最も近い滑り軸受74bは、球面軸受である。
【0079】
前記の構成によれば、滑り軸受74bが球面軸受であるため、前部フラップ41からロッド72に作用するスラスト荷重(軸方向荷重)を滑り軸受74bで受けることができる。そして、その滑り軸受74bは、複数の滑り軸受74a,74bのうち、第1シール機構75に最も近い、即ち前部フラップ41に最も近い滑り軸受であるため、ロッド72における座屈長さを最小にすることができる。したがって、前部フラップ41から作用するスラスト荷重(軸方向荷重)によって発生し得るロッド72の座屈を効果的に抑制することができる。その結果、ロッド72の円滑性がより向上する。
【0080】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7は、ロッド72の前部フラップ41側と反対側の端部に連結され、ロッド72を軸方向に変位させるアクチュエータ71をさらに備えている。そして、アクチュエータ71は、翼走時における非没水部に設けられている。
【0081】
前記の構成によれば、アクチュエータ71が水分によって腐食する等の影響を抑制することができる。
【0082】
また、前記実施形態の水中翼船1のロッドシステム7において、第1シール機構75は、ロッド72の外周面と接触するロッドパッキン755およびワイパーシール756(内側シール部材)と、挿通空間31の内周面と接触するガスケット757(外側シール部材)と、ロッドパッキン755、ワイパーシール756およびガスケット757を保持する保持部材751とを有している。保持部材751は、ロッドパッキン755を保持する第1金属部752と、ガスケット757を保持する第2金属部753と、第1金属部752と第2金属部753とを繋ぐ樹脂部754とを有している。
【0083】
前記の構成によれば、保持部材751(第1金属部752)とロッド72の外周面との間が、ロッドパッキン755およびワイパーシール756によってシールされる。また、保持部材751(第2金属部753)と挿通空間31の内周面との間が、ガスケット757によってシールされる。こうして、ロッド72と挿通空間31との間を第1シール機構75によってシールすることができる。
【0084】
そして、第1金属部752と第2金属部753とが樹脂部754によって繋がっているため、第1金属部752および第2金属部753のそれぞれに径方向への柔軟性を持たせることができる。そのため、第1金属部752はロッド72の外周面に対する追従が容易となり、第2金属部753は挿通空間31の内周面に対する追従が容易となる。そのため、例えばロッド72が撓んだ場合でも、第1金属部752がそのロッドの形状に応じて追従するため、ロッド72に対するロッドパッキン755等の接触度を適切に確保することができる。したがって、第1シール機構75によるシール性を高精度に維持することができる。
【0085】
(その他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0086】
例えば、前記実施形態のロッドシステム7において、第1シール機構は
図10に示すような構成に変更してもよい。
図10は、その他の実施形態に係る第1シール機構79の概略構成を示す断面図である。この例の第1シール機構79は、保持部材791と、ロッドパッキン792と、ワイパーシール793と、ガスケット794とを有している。
【0087】
ロッドパッキン792は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例である。ワイパーシール793は、ロッド72の外周面と接触する内側シール部材の一例である。第1シール機構79では、前部フラップ41側(
図10における下側)から順に、ワイパーシール793およびロッドパッキン792が配置されている。ガスケット794は、挿通空間31の内周面と接触する外側シール部材の一例である。保持部材791は、ロッドパッキン792、ワイパーシール793およびガスケット794を保持する。保持部材791は、金属製の円筒部材である。保持部材791では、内周面に形成された2つの溝にロッドパッキン792およびワイパーシール793が嵌め込まれている。また、保持部材791では、外周面に形成された1つの溝にガスケット794が嵌め込まれている。
【0088】
このように構成された第1シール機構79では、保持部材791とロッド72の外周面との間が、ロッドパッキン792およびワイパーシール793によってシールされる。また、第1シール機構79では、保持部材791と挿通空間31の内周面との間が、ガスケット794によってシールされる。こうして、ロッド72と挿通空間31との間が第1シール機構79によってシールされる。なお、この第1シール機構79では、ワイパーシール793の位置で水密空間35が区画される。
【0089】
また、前記実施形態において、後部フラップ61を駆動するロッドシステムの構成、作用および効果は、基本的には前述した前部フラップ41を駆動するロッドシステム7と同様である。
【0090】
また、前記実施形態のロッドシステム7において、第2シール機構76を省略するようにしてもよいし、ロッド72等への防水剤の塗布を省略するようにしてもよい。
【0091】
また、前述した第1シール機構75および第2シール機構76の構成は、単なる一例であって、挿通空間31への水等の浸入を阻止し得る構成であれば如何なるものであってもよい。
【0092】
また、前記実施形態のロッドシステム7において、防水剤は前述したグリース以外のものを採用するようにしてもよい。
【0093】
また、前記実施形態のロッドシステム7では、複数の滑り軸受74a,74bのうち、第1シール機構75に最も近い滑り軸受74bのみを球面軸受としたが、滑り軸受74bに加え、他の滑り軸受74aの全部または一部も球面軸受としてもよい。
【0094】
また、前記実施形態のロッドシステム7では、軸受として滑り軸受74a,74bを用いたが、転がり軸受を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 水中翼船
3 前部ストラット(ストラット)
4 前部フォイル(水中翼)
7 ロッドシステム
31 挿通空間
41 前部フラップ(フラップ)
71 アクチュエータ
72 ロッド
74a 滑り軸受(軸受)
74b 滑り軸受(軸受)
75,79 第1シール機構
76 第2シール機構
78 スペーサ
751 保持部材
752 第1金属部
753 第2金属部
754 樹脂部
755 ロッドパッキン(内側シール部材)
756 ワイパーシール(内側シール部材)
757 ガスケット(外側シール部材)