(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】開口枠及び開口部構造
(51)【国際特許分類】
E06B 1/62 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
E06B1/62 B
(21)【出願番号】P 2021214611
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】荒川 昌也
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-089585(JP,U)
【文献】特開2008-267097(JP,A)
【文献】実開昭61-020772(JP,U)
【文献】登録実用新案第3145195(JP,U)
【文献】特開平08-074474(JP,A)
【文献】特開平07-150862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に形成された開口部に設けられる開口枠であって、
前記壁を構成する躯体と、当該躯体に取り付けられた耐火面材と、に跨って設けられる枠材を備え、
前記枠材は、前記壁との接着面のうちの前記躯体に対向する部分に、第一溝部を有
し、
前記接着面のうち、前記第一溝部を挟んで、前記耐火面材とは反対側の部分に接着剤層を設けて、前記耐火面材側の部分に接着剤層を設けないことを特徴とする開口枠。
【請求項2】
壁に形成された開口部に設けられる開口枠であって、
前記壁を構成する躯体と、当該躯体に取り付けられた耐火面材と、に跨って設けられる枠材を備え、
前記枠材は、前記壁との接着面のうちの前記躯体に対向する部分に、第一溝部を有し、
前記第一溝部は、前記接着面に設けられる他の溝よりも深く形成されていることを特徴とする開口枠。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の開口枠において、
前記枠材は、前記接着面のうちの前記躯体と前記耐火面材との境界に対向する部分に第二溝部を有することを特徴とする開口枠。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の開口枠において、
前記枠材は、
当該枠材の端面に突出部を有しており、
当該枠材の前記端面のうちの前記突出部よりも前記耐火面材に近い部分が、当該耐火面材の表面と略面一の状態となるように設置されていることを特徴とする開口枠。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の開口枠において、
前記枠材は、当該枠材と共に前記開口部の縁部の仕上げを行うケーシング材を差し込み可能な差込溝を有することを特徴とする開口枠。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の開口枠を備える開口部構造であって、
前記枠材と、前記耐火面材と、に跨ってクロス下地プレートが設けられており、
前記クロス下地プレートは、前記耐火面材に固定されているが、前記枠材には非固定であることを特徴とする開口部構造。
【請求項7】
請求項6に記載の開口部構造において、
前記クロス下地プレートは、本体部と、当該本体部よりも軟質な弾性部と、を備えており、
前記弾性部は、前記本体部の幅方向両端部のうち前記枠材に対向する側の端部から、当該幅方向の外側に向かって延出していることを特徴とする開口部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠及び開口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に設けられる枠体として、建物の内装用のドア、引戸、扉、障子あるいはふすま等を取り付ける建具枠や、建物の外装用のドア、引戸、扉等の枠が知られている(例えば特許文献1参照)。また、特許文献1において、開口部を形成する壁は、柱や梁等の躯体に石膏ボード等の表面板が取り付けられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁を構成する躯体(木材)は、石膏ボード等の耐火面材に比べて、湿度や温度の影響によって寸法変化しやすい。具体的には、躯体は、耐火面材よりも湿度の低下等によって収縮しやすい。したがって、建物の開口部に設けられる枠体(以下「開口枠」という)が躯体と耐火面材とに跨って設置されている場合には、躯体が収縮すると、開口枠のうちの躯体に固定されている部分は躯体に引っ張られ、開口枠のうちの耐火面材に接する部分は相対的に耐火面材によって躯体の収縮方向とは反対側に押されるので、不具合が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、壁に形成された開口部に設けられる開口枠及び当該開口枠を備える開口部構造であって、当該壁を構成する躯体の収縮に起因する不具合の発生を抑制可能な開口枠及び開口部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~
図14に示すように、壁(外壁1、内壁7)に形成された開口部5に設けられる開口枠10であって、
前記壁1,7を構成する躯体(壁パネル2)と、当該躯体2に取り付けられた耐火面材(石膏ボード3)と、に跨って設けられる枠材(横枠11,13)を備え、
前記枠材11,13は、前記壁1,7との接着面のうちの前記躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有
し、
前記接着面のうち、前記第一溝部10eを挟んで、前記耐火面材とは反対側の部分に接着剤層10dを設けて、前記耐火面材側の部分に接着剤層10dを設けないことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、枠材11,13は、壁1,7との接着面のうちの躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有しているので、撓みやすい。さらに、壁1,7との接着面のうち、第一溝部10eを挟んで、耐火面材とは反対側の部分に接着剤層10dが設けられており、耐火面材側の部分に接着剤層10dが設けられていない。したがって、躯体2が収縮して枠材11,13に対し耐火面材3から押す力が加わっても、耐火面材3の端部が潰れてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、枠材11,13は、撓みやすいので、躯体2の収縮(枠材11,13に対する耐火面材3からの押す力)に応じて緩やかにしなる。したがって、躯体2の収縮に応じて枠材11,13の端部が徐々に傾くこととなり、耐火面材3と枠材11,13とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図
1~
図14に示すように、
壁(外壁1、内壁7)に形成された開口部5に設けられる開口枠10
であって、
前記壁1,7を構成する躯体(壁パネル2)と、当該躯体2に取り付けられた耐火面材(石膏ボード3)と、に跨って設けられる枠材(横枠11,13)を備え、
前記枠材11,13は、前記壁1,7との接着面のうちの前記躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有し、
前記第一溝部10eは、前記接着面に設けられる他の溝(切欠部10a、第二溝部10f)よりも深く形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、枠材11,13は、壁1,7との接着面のうちの躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有しているので、撓みやすい。したがって、躯体2が収縮して枠材11,13に対し耐火面材3から押す力が加わっても、耐火面材3の端部が潰れてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、枠材11,13は、撓みやすいので、躯体2の収縮(枠材11,13に対する耐火面材3からの押す力)に応じて緩やかにしなる。したがって、躯体2の収縮に応じて枠材11,13の端部が徐々に傾くこととなり、耐火面材3と枠材11,13とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
さらに、第一溝部10eは、枠材11,13の接着面に設けられる他の溝10a,10fよりも深く形成されているので、仮に、枠材11,13が撓むことによって第一溝部10eからひび割れが生じても、そのひび割れが、他の溝10a,10fまで達することがなく、枠材11,13の一部が脱落してしまう、ひび割れが露呈してしまう、等の不具合が発生しない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば
図3、
図4、
図7~
図9、
図12~
図14に示すように、請求項1又は2に記載の開口枠10において、
前記枠材(横枠11,13)は、前記接着面のうちの前記躯体(壁パネル2)と前記耐火面材(石膏ボード3)との境界に対向する部分に第二溝部10fを有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、枠材11,13は、当該枠材11,13の接着面のうちの躯体2と耐火面材3との境界に対向する部分に第二溝部10fを有しているので、躯体2が収縮した際に、耐火面材3における躯体2側の角部を避けることができる。したがって、躯体2が収縮すると、耐火面材3の端面で枠材11,13を押す状態となり、耐火面材3の躯体2側の角部で押す状態となる場合(すなわち第二溝部10fが設けられていない場合)に比べて、耐火面材3と枠材11,13との間に生じる隙間が狭くなる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば
図3、
図8、
図12に示すように、請求項1から3のいずれか一項に記載の開口枠10において、
前記枠材(横枠11,13)は、
当該枠材11,13の端面に突出部10cを有しており、
当該枠材11,13の前記端面のうちの前記突出部10cよりも前記耐火面材3に近い部分が、当該耐火面材3の表面と略面一の状態となるように設置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、枠材11,13は、当該枠材11,13の端面に突出部10cを有しており、当該枠材11,13の端面のうちの突出部10cよりも耐火面材3に近い部分が、当該耐火面材3の表面と略面一の状態となるように設置されているので、当該耐火面材3の表面に貼り付ける内装材を枠材11,13にまで延長して設けることが可能となる。これにより、枠材11,13の端面のうち突出部10cのみが露出した状態となるので、実際の枠材11,13よりも薄い枠材が設置されているように見せることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図3、
図4、
図6~
図9、
図12~
図14に示すように、請求項1から4のいずれか一項に記載の開口枠10において、
前記枠材(横枠11,13)は、当該枠材11,13と共に前記開口部5の縁部の仕上げを行うケーシング材(入隅ケーシング8b)を差し込み可能な差込溝(凹溝10b)を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、枠材11,13は、当該枠材11,13と共に開口部5の縁部の仕上げを行うケーシング材8bを差し込み可能な差込溝10bを有するので、枠材11,13に対しケーシング材8bを容易に取り付けることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば
図10~
図14に示すように、
請求項1又は2に記載の開口枠10を備える開口部構造であって、
前記枠材11,12,13,14と、前記耐火面材3と、に跨ってクロス下地プレート20が設けられており、
前記クロス下地プレート20は、前記耐火面材3に固定されているが、前記枠材11,12,13,14には非固定であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、枠材11,12,13,14と、耐火面材3と、に跨ってクロス下地プレート20が設けられており、クロス下地プレート20は、耐火面材3に固定されているが、枠材11,12,13,14には非固定であるので、躯体2が収縮して枠材11,12,13,14に対し耐火面材3から押す力が加わっても、クロス下地プレート20やそれに貼り付けられている壁クロス等の内装材が引っ張られる(伸びてしまう)ことがない。したがって、躯体2が収縮しても、内装材にひびが入ったり、躯体2の収縮が解除された際に内装材にみみず腫れ状の筋が入ったりする等の不具合の発生を回避することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば
図10~
図14に示すように、請求項6に記載の開口部構造において、
前記クロス下地プレート20は、本体部21と、当該本体部21よりも軟質な弾性部22と、を備えており、
前記弾性部22は、前記本体部21の幅方向両端部のうち前記枠材11,12,13,14に対向する側の端部から、当該幅方向の外側に向かって延出していることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、クロス下地プレート20は、当該クロス下地プレート20の幅方向両端部のうち枠材11,12,13,14に対向する側の端部が弾性部22によって構成されているので、枠材11,12,13,14が収縮すると、それに伴い変形し、枠材11,12,13,14の収縮が解除されると、それに伴い元の状態に戻る。そして、クロス下地プレート20に貼り付けられている壁クロス等の内装材も、枠材11,12,13,14が収縮すると、弾性部22に追従して変形し、枠材11,12,13,14の収縮が解除されると、弾性部22に追従して元の状態に戻るので、枠材11,12,13,14が収縮して当該収縮が解除された際に、内装材の変形が目立つ等の不具合の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、躯体の収縮に起因する不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】開口部構造を示す図であって、壁の開口部に開口枠及び建具が設けられた状態を示す正面図である。
【
図2】開口部構造及び開口枠の構成を示す平断面図である。
【
図3】開口部構造及び開口枠の構成を示す縦断面図である。
【
図5】第一溝部及び第二溝部が設けられていない場合を説明する縦断面図である。
【
図6】第一溝部が設けられている場合を説明する縦断面図である。
【
図7】第一溝部及び第二溝部が設けられている場合を説明する縦断面図である。
【
図8】開口部構造及び開口枠の変形例1を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は平断面図である。
【
図9】(a)第一溝部及び第二溝部が設けられている場合を説明する縦断面図であり、(b)第一溝部が設けられている場合を説明する縦断面図である。
【
図10】開口部構造の変形例2を示す図であって、壁の開口部に開口枠及び建具が設けられた状態を示す正面図である。
【
図11】クロス下地プレートの構成を示す図である。
【
図12】変形例2の開口部構造の構成を示す縦断面図である。
【
図13】変形例2の開口部構造の構成を示す縦断面図である。
【
図14】変形例2の開口部構造の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1~
図3において符号1は、住宅やオフィス等の建物における外壁を示す。外壁1は、建物の外周に沿って設けられ、建物内の部屋等に面している。また、この外壁1は、建物の一階の外壁でもよいし、二階以上の階の外壁でもよい。
なお、本実施形態における建物は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらのパネル(壁パネル2、床パネル等)を組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、これに限られるものではなく、従来の軸組工法、壁式工法、ツーバイフォー工法等で構築されるものとしてもよい。
【0024】
本実施形態における外壁1は、外壁1の本体となる壁パネル2と、壁パネル2の屋外側面を被覆する外装材(図示省略)と、壁パネル2の屋内側面を被覆する石膏ボード3と、を備える。すなわち、外壁1は、壁パネル2における屋内側面に、耐火面材としての石膏ボード3が取り付けられ、これにより耐火仕様となっている。
壁パネル2は、縦横の框材2aが矩形状に組み立てられるとともに、縦横の框材2aからなる矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面に面材2bが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0025】
壁パネル2の屋外側面には、例えば、透湿防水シート(図示省略)が貼り付けられ、その上から胴縁(図示省略)が取り付けられ、更にその胴縁に対して外装材(図示省略)が取り付けられている。
石膏ボード3は、壁パネル2の屋内側面に貼り付けられた内装下地材であり、石膏ボード3の屋内側面には、壁クロス等の内装材(図示省略)が貼り付けられている。
【0026】
外壁1には、開口部5が形成されている。この開口部5は、左右に間隔を空けて配置された複数の壁パネル2の上端部間に小壁用の壁パネル2が架け渡されて設けられるとともに、当該複数の壁パネル2の下端部間に腰壁用の壁パネル2が架け渡されて設けられて形成されている。
また、左右に間隔を空けて配置された複数の壁パネル2のそれぞれにおける開口部5側面には、小壁用の壁パネル2を支持する柱状の建築構造材4が固定されている。すなわち、開口部5の縁部は、開口部5に面する左右の建築構造材4と、小壁用の壁パネル2の下端部と、腰壁用の壁パネル2の上端部と、によって形成されている。
【0027】
建築構造材4は、外壁1を構成する建物の構造材(躯体)であり、外壁1のうち開口部5の際に位置している。また、建築構造材4は、中身が詰まった中実材であり、無垢材(角材:製材)によって構成されているが、これに限られるものではなく、LVL(Laminated Veneer Lumber)、CLT(Cross Laminated Timber)、その他の材料による中実材でもよい。
【0028】
開口部5には、窓サッシ6が設けられている。この窓サッシ6は、引き違い式の腰高窓用の窓サッシとされている。窓サッシ6は、開口部5の縁部に取り付けられる矩形状のサッシ枠60と、開口部5を塞ぐための障子(図示省略)と、を備える。この障子は、縦横の枠材が矩形状に組み立てられて形成された障子枠と、障子枠の内縁に嵌め込まれて設けられた矩形板状の窓ガラスと、を備える。
サッシ枠60は、小壁用の壁パネル2の下端部に固定される上枠61と、腰壁用の壁パネル2の上端部に固定される下枠62と、開口部5に面する左右の建築構造材4のそれぞれに固定される左右の側枠63と、を備える。
サッシ枠60における各枠61,62,63は、障子(障子枠)の縁部を収容可能な溝部を有しており、障子は、サッシ枠60における上枠61及び下枠62の溝部に沿ってスライド移動可能となっている。
【0029】
なお、窓サッシ6の種類は、本実施形態においては引き違い式の腰高窓とされているが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。
すなわち、開閉方式として、引き違い窓の他に、嵌め殺し窓、折戸、両開き窓、片開き窓、両引き窓、片引き窓、縦滑り出し窓、横滑り出し窓、外倒し窓、内倒し窓、突き出し窓、上げ込み窓、上げ下げ窓、回転窓、オーニング窓、ルーバー窓等の開閉方式とされた窓サッシに変更可能である。また、その位置や機能で分類した場合の窓サッシとしては、腰高窓の他に、掃き出し窓、高窓、地窓、出窓、コーナー窓等の窓サッシに変更可能である。
また、開口部5の縁部のうち、壁パネル2の厚さ方向における屋外側に設けられる建具は、窓(窓サッシ6)に限られるものではなく、戸(扉・ドア)等であっても良い。
【0030】
また、開口部5の縁部のうち、壁パネル2の厚さ方向における屋内側には、開口部5の縁部における屋内側を化粧する開口枠(造作枠)10が固定されている。
図2、
図3、
図4に示すように、開口枠10のうち、開口部5の縁部側であって、かつ屋外側に位置する縁部には、開口枠10の長さ方向に沿って切欠部10aが形成されている。この切欠部10aには、サッシ枠60における開口部5の縁部への固定部位が収納されるようになっている。
なお、上枠61は、下枠62や側枠63と同様に、開口部5の縁部への固定部位が開口枠10の切欠部10aに収納される形状のものであってもよい。また、下枠62は、上枠61と同様に、開口部5の縁部への固定部位が切欠部10aに収納されない形状のものであってもよい。また、側枠63は、上枠61と同様に、すなわち開口部5の縁部への固定部位が切欠部10aに収納されない形状のものであってもよい。
【0031】
また、開口枠10のうち、屋内側に位置する端部には、開口枠10の長さ方向に沿って凹溝10bが形成されている。この凹溝10bには、ケーシング材(入隅ケーシング8b等)を差し込み可能となっている。
また、開口枠10における屋内側の端部は、凹溝10bを境にして、開口部5の縁部側の部分と、開口部5の中央部側の部分と、に分かれており、開口部5の縁部側の部分よりも、開口部5の中央部側の部分の方が突出している。すなわち、開口枠10は、屋内側端面の先端部に、屋内側へ突出する突出部10cを有している。
【0032】
開口枠10は、上下の横枠11,11と、左右の縦枠12,12と、を備える矩形フレーム状の枠体である。
なお、横枠11は、本実施形態においては厚さ27mmの合板が用いられているが、合板以外の板材でもよいし、厚さ寸法も27mmに限定されるものではない。
また、縦枠12は、本実施形態においては厚さ15mmの合板が用いられているが、合板以外の板材でもよいし、厚さ寸法も15mmに限定されるものではない。
【0033】
上下の横枠11,11のうち、上側の横枠11(上枠)は、開口部5の上縁部、すなわち小壁用の壁パネル2の下端部に接着固定される枠材であり、開口部5の上縁部の長さ方向(左右方向)に沿って長尺に形成されている。具体的には、上側の横枠11は、
図3に示すように、小壁用の壁パネル2の下端面と、小壁用の壁パネル2の屋内側面に取り付けられた石膏ボード3の下端面と、に跨って設けられている。
また、上下の横枠11,11のうち、下側の横枠11(下枠)は、開口部5の下縁部、すなわち腰壁用の壁パネル2の上端部に接着固定される枠材であり、開口部5の下縁部の長さ方向(左右方向)に沿って長尺に形成されている。具体的には、下側の横枠11は、
図3に示すように、腰壁用の壁パネル2の上端面と、腰壁用の壁パネル2の屋内側面に取り付けられた石膏ボード3の上端面と、に跨って設けられている。
【0034】
左右の縦枠12,12のうち、右側の縦枠12は、開口部5の右縁部、すなわち開口部5に面する左右の建築構造材4のうちの右側の建築構造材4に接着固定される枠材であり、開口部5の右縁部の長さ方向(上下方向)に沿って長尺に形成されている。具体的には、右側の縦枠12は、
図2に示すように、右側の建築構造材4の左側面と、右側の建築構造材4の屋内側面に取り付けられた石膏ボード3の左端面と、に跨って設けられている。
また、左右の縦枠12,12のうち、左側の縦枠12は、開口部5の左縁部、すなわち開口部5に面する左右の建築構造材4のうちの左側の建築構造材4に接着固定される枠材であり、開口部5の左縁部の長さ方向(上下方向)に沿って長尺に形成されている。本実施形態においては、
図1、
図2に示すように、左側の建築構造材4の屋内側面に建物内部の内壁7が固定されている。すなわち、本実施形態における左側の縦枠12は、建物内の部屋等における角部に設けられており、内部入隅調整下地8aを介して、左側の建築構造材4と、当該左側の建築構造材4の屋内側面に固定された内壁7と、に跨って設けられている。さらに、左側の縦枠12には、入隅ケーシング8bが取り付けられている。すなわち、本実施形態の開口部構造は、窓サッシ6と開口枠10と入隅ケーシング8bとを備えている。
【0035】
なお、左側の縦枠12は、右側の縦枠12と同様に、建築構造材4と石膏ボード3とに跨って設けられるものでもよい。
また、右側の縦枠12は、左側の縦枠12と同様に、建物内の部屋等における角部に設けられるもの、すなわち、例えば、建築構造材4と内壁7とに跨って設けられるものでもよい。
また、開口部5の縁部のうち、壁パネル2の厚さ方向における屋外側に設けられる建具が、掃き出し窓や地窓、戸(扉・ドア)等である場合、すなわち開口部5の縁部が、開口部5に面する左右の建築構造材4と、小壁用の壁パネル2の下端部と、床と、によって形成されている場合には、当該開口部5に取り付ける開口枠10は下側の横枠11を備えていなくてもよい。
【0036】
横枠11及び縦枠12のうち、建物の躯体(壁パネル2や建築構造材4等)と、石膏ボード3と、に跨って設けられる枠材(本実施形態においては上下の横枠11,11及び右側の縦枠12)は、当該枠材の屋内側端面のうち、凹溝10bよりも開口部5の縁部側に位置する部分が、当該石膏ボード3の表面(屋内側面)と略面一の状態となるように設置されている。これにより、建物の躯体と石膏ボード3とに跨って設けられる枠材11,12の屋内側端面のうちの突出部10c以外の部分にも壁クロス等の内装材を貼り付けること、具体的には、当該石膏ボード3に貼り付ける内装材を、凹溝10bを隠す位置まで延長して設けることが可能となっている。石膏ボード3に貼り付ける内装材を、凹溝10bを隠す位置まで延長して設けることで、開口枠10の屋内側端面においては突出部10cのみが露出することとなるので、実際の開口枠10よりも薄い枠が設置されているように見せることができる。すなわち、横枠11及び縦枠12は、見付がハッカケ(八掛、刃掛け)形状となるように構成されている。
【0037】
縦枠12は、当該縦枠12の裏面(縦枠12が取り付けられる躯体側の面)と、建築構造材4(あるいは内部入隅調整下地8a)と、の間に設けられた接着剤による接着剤層10dを介して、当該建築構造材4(あるいは当該内部入隅調整下地8a)に固定されている。
図3、
図4に示すように、横枠11の裏面(横枠11が取り付けられる躯体側の面)のうち、壁パネル2に対向する部分であって、切欠部10aよりも屋内側に位置する部分には、開口枠10の長さ方向に沿って第一溝部10eが形成されている。
また、横枠11は、当該横枠11の裏面のうちの切欠部10aと第一溝部10eとの間に部分と、壁パネル2と、の間に設けられた接着剤による接着剤層10dを介して、当該壁パネル2に固定されている。
さらに、横枠11の裏面のうち、壁パネル2と石膏ボード3との境界に対向する部分には、開口枠10の長さ方向に沿って第二溝部10fが形成されている。
【0038】
建物の躯体(木材)は、石膏ボード等の耐火面材に比べて、湿度や温度の影響によって寸法変化しやすい。具体的には、躯体は、耐火面材よりも湿度の低下等によって収縮しやすい。したがって、湿度の低下等によって壁パネル2が収縮しても、当該壁パネル2に貼り付けられている石膏ボード3は収縮しない(壁パネル2に比べて収縮率が小さい)ので、石膏ボード3が壁パネル2よりも突出して、壁パネル2の端面と石膏ボード3の端面との間に段差ができてしまう。
開口枠を構成する枠材は、躯体に接着固定されているので、枠材のうちの躯体に固定されている部分は躯体の収縮により引っ張られる。一方、躯体が収縮しても耐火面材は収縮しない(躯体に比べて収縮率が小さい)ので、枠材のうちの耐火面材に接する部分は相対的に耐火面材によって躯体の収縮方向とは反対側に押されることとなる。したがって、躯体が収縮すると、枠材の一部分に対し耐火面材から押す力が加わるので、枠材が変形する、耐火面材と枠材との間に隙間が生じる、等の不具合が発生する。
【0039】
特に、小壁用の壁パネル2(あるいは、まぐさ等)に取り付けられる枠材である上枠(上側の横枠11)は、上述の不具合が発生しやすい。
また、上枠のうち、当該上枠の長さ方向における中央部は、当該上枠の長さ方向における端部よりも、上述の不具合が発生しやすい。小壁用の壁パネル2(あるいは、まぐさ等)の端部は、建築構造材4(あるいは、柱等)に接着固定されているので、当該壁パネル2の中央部よりも収縮率が小さい。すなわち、小壁用の壁パネル2の中央部は、当該壁パネル2の端部よりも収縮率が大きいので、上枠の中央部(上枠の長さ方向における中央部)に不具合が発生しやすい。
【0040】
枠材が厚いほど、躯体の収縮力に抵抗する力が大きくなり、躯体が収縮しにくくなるので、上述の不具合が発生しにくくなる。しかしながら、枠材は厚いほど撓みにくくなる。
枠材が撓みにくいと、躯体が収縮して枠材に対し耐火面材から押す力が加わった際に、耐火面材に対する枠材からの押す力が大きくなるので、耐火面材の端部が潰れる可能性が高くなる。耐火面材の端部が潰れると、湿度の上昇等によって躯体の収縮が解除された際に、耐火面材と枠材との間に隙間ができてしまう等の不具合が発生する。
また、枠材が撓みにくいと、枠材に対する耐火面材からの押す力が閾値以上になった際に急激に枠材が傾くこととなるので、耐火面材と枠材とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生する。
また、枠材が撓みにくいと、躯体が収縮して枠材に対し耐火面材から押す力が加わった際に、例えば
図5に示すように、耐火面材に対して枠材の全体が傾いた状態となる。
図5における二点鎖線は、壁パネル2が収縮して壁パネル2の端面と石膏ボード3の端面との間に段差ができた場合における石膏ボード3を示しており、
図5における一点鎖線は、壁パネル2が収縮して壁パネル2の端面と石膏ボード3の端面との間に段差ができた場合における枠材(上枠)を示している。耐火面材に対して枠材の全体が傾いた状態になると、枠材が建具(窓サッシ6等)等に干渉する可能性が高くなる。枠材が建具に干渉すると、建具(あるいは枠材)が損傷してしまう、建具の固定状態が緩んでしまう等の不具合が発生する。
そこで、本発明では、枠材が厚い場合であっても、躯体が収縮して枠材に対し耐火面材から押す力が加わった際に枠材が撓むように、枠材(横枠11)の裏面のうちの躯体(壁パネル2)と対向する部分に第一溝部10eを設けた。
【0041】
横枠11に第一溝部10eを設けることで、当該横枠11が撓みやすくなるので、壁パネル2が収縮して横枠11に対し石膏ボード3から押す力が加わっても、石膏ボード3の端部が潰れてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、横枠11に第一溝部10eを設けることで、当該横枠11が撓みやすくなるので、壁パネル2に対する石膏ボード3からの押す力に応じて横枠11の端部が徐々に傾くこととなる。すなわち、壁パネル2の収縮に応じて横枠11が緩やかにしなるので、石膏ボード3と横枠11とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、横枠11に第一溝部10eを設けて、第一溝部10eよりも石膏ボード3から離れた位置に接着剤層10dを設けることで、例えば
図6に示すように、壁パネル2が収縮して横枠11に対し石膏ボード3から押す力が加わっても、横枠11のうち、第一溝部10eよりも石膏ボード3から離れた部分においては、当該部分と壁パネル2との関係や、当該部分と建具(窓サッシ6等)との関係は変化しないので、横枠11が建具等に干渉してしまう等の不具合が発生しにくくなる。
【0042】
ここで、第一溝部10eの深さ寸法(枠材の厚さ方向における長さ)は、切欠部10aの深さ寸法(枠材の厚さ方向における長さ)よりも長く設定されている。
例えば、第一溝部10eが切欠部10aよりも深くない場合には、横枠11が撓むことによって第一溝部10eの入隅部分からひび割れが生じた際に、そのひび割れが切欠部10aまで達して、横枠11が、第一溝部10eと切欠部10aとの間の部分(接着剤層10dが設けられている部分)と、その他の部分と、に分割されてしまい、当該その他の部分が脱落してしまう等の不具合が発生するおそれがある。これに対し、第一溝部10eを切欠部10aよりも深く形成することで、仮に、横枠11が撓むことによって第一溝部10eの入隅部分からひび割れが生じても、そのひび割れが切欠部10aまで達することがないので、横枠11の一部が脱落してしまう、ひび割れが露呈してしまう、等の不具合が発生しなくなる。
【0043】
さらに、本発明では、躯体が収縮して耐火面材が躯体よりも突出した際に当該耐火面材の角部を避けるために、枠材(横枠11)の裏面のうちの躯体(壁パネル2)と耐火面材(石膏ボード3)との境界に対向する部分に第二溝部10fを設けた。
第二溝部10fが設けられていない場合には、壁パネル2が収縮すると、例えば
図6に示すように、石膏ボード3のうちの壁パネル2側に位置する角部(石膏ボード3の厚さ方向における一方側の角部)で横枠11を押す状態となる。これに対し、横枠11に第二溝部10fを設けることで、例えば
図7に示すように、壁パネル2が収縮した際に、石膏ボード3における壁パネル2を押す部分が、石膏ボード3の角部ではなく、石膏ボード3の端面のうち、石膏ボード3の厚さ方向における一方側の角部と他方側の角部との間に位置する部分になる。すなわち、壁パネル2が収縮すると、石膏ボード3の端面で横枠11を押す状態となるので、第二溝部10fが設けられていない場合に比べて、石膏ボード3に対する横枠11の端部の傾きが小さくなり、石膏ボード3と横枠11との間に生じる隙間が狭くなる。
なお、横枠11には、第一溝部10e及び第二溝部10fのうち、少なくとも第一溝部10eが設けられていればよい。すなわち、例えば
図6に示すように、横枠11は、第二溝部10fを備えていなくてもよい。
【0044】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上記した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下の変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0045】
〔変形例1〕
図8に、壁を構成する躯体の両面に耐火面材が取り付けられている場合の例を示す断面図を示す。
図8(a)は縦断面図であり、
図8(b)は平断面図である。
開口枠10を設置する壁は、屋内と屋外とを仕切る外壁1に限られるものではなく、例えば、屋内における各部屋等の間を仕切る内壁7であってもよい。また、開口枠10を設置する壁は、片面に石膏ボード3が設けられる壁に限られるものではなく、例えば、両面に石膏ボード3が設けられる壁であってもよい。すなわち、開口部構造は、窓サッシ6や入隅ケーシング8bを備えていなくてもよく、少なくとも開口枠10を備えていればよい。
図8に示す壁(内壁7)は、両面に石膏ボード3が設けられている。この場合、当該壁に形成されている開口部5に設ける開口枠10は、上下の横枠13,13と、左右の縦枠14,14と、を備える矩形フレーム状の枠体であってもよい。
【0046】
左右の縦枠14,14は、開口部5の左右の縁部、すなわち開口部5に面する左右の建築構造材4に接着固定される枠材であり、開口部5の左右の縁部の長さ方向(上下方向)に沿って長尺に形成されている。具体的には、縦枠14は、
図8(b)に示すように、建築構造材4と、当該建築構造材4の一方の面に取り付けられた石膏ボード3と、当該建築構造材4の他方の面に取り付けられた石膏ボード3と、に跨って設けられている。
上記の実施形態における縦枠12は、当該縦枠12の一端部に、当該縦枠12の長さ方向に沿って凹溝10bが設けられているが、本変形例における縦枠14は、当該縦枠14の両端部に、当該縦枠14の長さ方向に沿って凹溝10bが設けられている。
また、上記の実施形態における縦枠12は、当該縦枠12の一端部に、当該縦枠12の長さ方向に沿って突出部10cが設けられているが、本変形例における縦枠14は、当該縦枠14の両端部に、当該縦枠14の長さ方向に沿って突出部10cが設けられている。
【0047】
上下の横枠13,13は、開口部5の上下の縁部、すなわち小壁用の壁パネル2の下端部や腰壁用の壁パネル2の上端部に接着固定される枠材であり、開口部5の上下の縁部の長さ方向(左右方向)に沿って長尺に形成されている。具体的には、横枠13は、
図8(a)に示すように、壁パネル2と、当該壁パネル2の一方の面に取り付けられた石膏ボード3と、当該壁パネル2の他方の面に取り付けられた石膏ボード3と、に跨って設けられている。
なお、開口部5の縁部が、開口部5に面する左右の建築構造材4と、小壁用の壁パネル2の下端部と、床と、によって形成されている場合には、当該開口部5に取り付ける開口枠10は下側の横枠13を備えていなくてもよい。
【0048】
上記の実施形態における横枠11は、当該横枠11の一端部に、当該横枠11の長さ方向に沿って凹溝10bが設けられているが、本変形例における横枠13は、当該横枠13の両端部に、当該横枠13の長さ方向に沿って凹溝10bが設けられている。
また、上記の実施形態における横枠11は、当該横枠11の一端部に、当該横枠11の長さ方向に沿って突出部10cが設けられているが、本変形例における横枠13は、当該横枠13の両端部に、当該横枠13の長さ方向に沿って突出部10cが設けられている。
【0049】
また、上記の実施形態における横枠11は、当該横枠11の裏面に、当該横枠11の長さ方向に沿って第一溝部10eと第二溝部10fが一つずつ設けられているが、本変形例における横枠13は、当該横枠13の裏面に、当該横枠13の長さ方向に沿って第一溝部10eと第二溝部10fが二つずつ設けられている。
具体的には、横枠13において、第一溝部10e,10eは、当該横枠13の裏面のうちの壁パネル2と対向する部分に設けられている。そして、一方の第一溝部10eと他方の第二溝部10fとの間に接着剤層10dが設けられている。
また、横枠13において、一方の第二溝部10fは、当該横枠13の裏面のうち、壁パネル2と当該壁パネル2の一方の面に取り付けられた石膏ボード3との境界に対向する部分に設けられており、他方の第二溝部10fは、当該横枠13の裏面のうち、当該壁パネル2と当該壁パネル2の他方の面に取り付けられた石膏ボード3との境界に対向する部分に設けられている。
【0050】
横枠13に第一溝部10eを設けることで、当該横枠13が撓みやすくなるので、壁パネル2が収縮して横枠13に対し石膏ボード3から押す力が加わっても、石膏ボード3の端部が潰れてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、横枠13に第一溝部10eを設けることで、当該横枠13が撓みやすくなるので、壁パネル2に対する石膏ボード3からの押す力に応じて横枠13の端部が徐々に傾くこととなる。すなわち、壁パネル2の収縮に応じて横枠13が緩やかにしなるので、石膏ボード3と横枠13とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
【0051】
さらに、横枠13に第二溝部10fを設けることで、例えば
図9(a)に示すように、壁パネル2が収縮した際に、石膏ボード3における壁パネル2を押す部分が、石膏ボード3の角部ではなく、石膏ボード3の端面のうち、石膏ボード3の厚さ方向における一方側の角部と他方側の角部との間に位置する部分になる。すなわち、壁パネル2が収縮すると、石膏ボード3の端面で横枠13を押す状態となるので、第二溝部10fが設けられていない場合に比べて、石膏ボード3に対する横枠13の端部の傾きが小さくなり、石膏ボード3と横枠13との間に生じる隙間が狭くなる。
なお、横枠13には、第一溝部10e及び第二溝部10fのうち、少なくとも第一溝部10eが設けられていればよい。すなわち、例えば
図9(d)に示すように、横枠13は、第二溝部10fを備えていなくてもよい。
【0052】
〔変形例2〕
上記の実施形態における開口部構造では、石膏ボード3に貼り付ける内装材を、開口枠10の凹溝10bを隠す位置まで延長して設けることが可能となっている。具体的には、内装材を、石膏ボード3と開口枠10とに跨って貼り付けることで、見付がハッカケ(八掛、刃掛け)形状となるように構成されている。その際、壁クロス等の内装材を、開口枠10に直接貼り付けて設けるのではなく、クロス下地プレート(クロス下地テープ)20を介して開口枠10に設けるようにしてもよい。すなわち、開口部構造は、開口枠10と石膏ボード3とに跨って設けられるクロス下地プレート20を更に備えるものであってもよい。
【0053】
図10は、本変形例における開口部構造を示す図である。また、
図11は、クロス下地プレート20の構成を示す図であって、(a)はクロス下地プレート20の厚さ方向から見た図であり、(b)はクロス下地プレート20の長尺方向から見た図である。また、
図12は、本変形例における開口部構造の構成を示す縦断面図である。
図10及び
図12に示すように、クロス下地プレート20(
図10では一点鎖線で示す)は、ケーシング材(入隅ケーシング8b)が取り付けられていない枠材(本変形例の場合は、上下の横枠11,11、右側の縦枠12)と、石膏ボード3と、の境界に沿って、当該境界を塞ぐように設けられる。
【0054】
クロス下地プレート20は、テープ状の部材であり、
図11(a),(b)に示すように、本体部21と、本体部21と一体的に設けられた弾性部22と、を備えている。本体部21は、樹脂(例えば硬質PVC樹脂)からなり、弾性部22は、本体部21よりも軟質な樹脂(例えば軟質PVC樹脂)からなる。
図11(a)に示すように、クロス下地プレート20の本体部21には、当該クロス下地プレート20の厚さ方向に貫通する複数の孔21aが形成されている。この孔21aは、パテを保持する力を高めるために設けられている。
【0055】
また、
図11(a),(b)に示すように、クロス下地プレート20の本体部21には、両面テープ23を貼り付けるためのスペース21bが設けられている。そして、
図12に示すように、クロス下地プレート20は、スペース21bに貼り付けられた両面テープ23(あるいは接着剤等でもよい)を介して石膏ボード3に固定される。
本変形例の施工手順は、例えば石膏ボード3を施工した後に、開口枠10を施工して、その後、クロス下地プレート20を敷設する。具体的には、クロス下地プレート20の幅方向一端部(弾性部22)を開口枠10の突出部10cに突き当てた状態で、クロス下地プレート20の幅方向他端部を両面テープ23で石膏ボード3に固定する。次いで、石膏ボード及びクロス下地プレート20にパテ下塗りを行った後に、パテ上塗りを行い、その後、サンディング処理を行ってから、壁クロス等の内装材を施工する。すなわち、本変形例の場合、内装材は、石膏ボード3とクロス下地プレート20とに跨って貼り付けられており、開口枠10には貼り付けられない。
【0056】
内壁材を、石膏ボード3と開口枠10とに跨って貼り付ける場合には、壁パネル2が収縮して開口枠10(開口枠10を構成する枠材)が撓むと、内壁材が開口枠10に引っ張られて、内壁材が伸びてしまうおそれがある。これにより、内装材にひびが入ったり、壁パネル2の収縮が解除された際に内装材にみみず腫れ状の筋が入ったりする等の不具合が発生するおそれがある。
これに対し、本変形例では、クロス下地プレート20を備えており、このクロス下地プレート20は、石膏ボード3に固定されているが、開口枠10には固定されておらず、内装材は、石膏ボード3とクロス下地プレート20とに跨って貼り付けられており、開口枠10には貼り付けられていない。したがって、例えば
図13に示すように、壁パネル2が収縮して開口枠10(ここでは横枠11)が撓んでも、クロス下地プレート20や内装材が開口枠10に引っ張られることがない。そのため、壁パネル2が収縮しても、内装材にひびが入ったり、壁パネル2の収縮が解除された際に内装材にみみず腫れ状の筋が入ったりする等の不具合の発生を回避することができる。
【0057】
また、例えば開口枠10を湿度や温度の変動の大きい環境に設置した場合には、開口枠10が収縮して、例えば
図14に示すように、突出部10cが斜め上を向くように反った状態となることがある。内壁材を、石膏ボード3と開口枠10とに跨って貼り付ける場合には、開口枠10が収縮して突出部10cが反った状態になると、突出部10cによって内壁材の端部が押し上げられて当該端部に皺が寄ったり当該端部がカール状に変形したりして、開口枠10の収縮が解除されても、皺が寄った状態のまま、カール状に変形した状態のまま、となってしまう等の不具合が発生するおそれがある。
【0058】
これに対し、本変形例では、クロス下地プレート20を備えており、このクロス下地プレート20の幅方向一端部、すなわちクロス下地プレート20における開口枠10の突出部10cと接する部分は弾性部22となっている。したがって、開口枠10が収縮して突出部10cが反った状態になっても、例えば
図14に示すように、弾性部22が弾性変形して開口枠10の収縮を吸収することができる。すなわち、突出部10cが反った状態になると、突出部10cに押されて弾性部22が弓形に変形して凹溝10b内へ入り込み、開口枠10の収縮が解除されると、弾性部22が元の状態(本体部21の延長線上に位置する状態)に戻る。その際、内装材の端部(内装材のうち弾性部22に貼り付けられている部分)も、突出部10cが反った状態になると、弾性部22と一緒に弓形に変形して凹溝10b内へ入り込むので、内装材の端部に皺が寄らないし、開口枠10の収縮が解除されると、弾性部22と一緒に元の状態に戻るので、内装材の端部がカール状に変形した状態で維持されることもない。
なお、突出部10cに押されると弾性部22が弓形に変形することとしたが、弾性部22の変形の仕方はこれに限定されず、例えば、弾性部22はつぶれる(縮む)ように変形してもよい。具体的には、例えば、突出部10cが反った状態になると、突出部10cに押されて弾性部22がつぶれ(縮み)、それに追従して内装材の端部もつぶれ、開口部10の収縮が解除されると、弾性部22が元の状態に戻り、それに追従して内装材の端部も元の状態に戻るような構成でもよい。この場合も、開口枠10の収縮が解除されると、内装材の端部は弾性部22と一緒に元の状態に戻るので、内装材の端部が皺の寄った状態やカール状に変形した状態で維持されることがない。
【0059】
上記の実施形態及び変形例によれば、壁(外壁1、内壁7)に形成された開口部5に設けられる開口枠10であって、壁1,7を構成する躯体(壁パネル2)と、当該躯体2に取り付けられた耐火面材(石膏ボード3)と、に跨って設けられる枠材(横枠11,13)を備え、枠材11,13は、壁1,7との接着面(枠材11,13の裏面)のうちの躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有している。
すなわち、枠材11,13は、壁1,7との接着面のうちの躯体2に対向する部分に、第一溝部10eを有しているので、撓みやすい。したがって、躯体2が収縮して枠材11,13に対し耐火面材3から押す力が加わっても、耐火面材3の端部が潰れてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
また、枠材11,13は、撓みやすいので、躯体2の収縮(枠材11,13に対する耐火面材3からの押す力)に応じて緩やかにしなる。したがって、躯体2の収縮に応じて枠材11,13の端部が徐々に傾くこととなり、耐火面材3と枠材11,13とに跨って貼り付けられた内装材に切れ目ができてしまう等の不具合が発生しにくくなる。
【0060】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、第一溝部10eは、枠材(横枠11,13)の接着面に設けられる他の溝(切欠部10a、第二溝部10f)よりも深く形成されているので、仮に、枠材11,13が撓むことによって第一溝部10eからひび割れが生じても、そのひび割れが、他の溝10a,10fまで達することがなく、枠材11,13の一部が脱落してしまう、ひび割れが露呈してしまう、等の不都合が発生しない。
なお、第一溝部10eを有する枠材は、横枠11,13に限定されず、壁1,7を構成する躯体(建築構造材4)と、当該躯体4に取り付けられた耐火面材(石膏ボード3)と、に跨って設けられる縦枠12,14であってもよい。すなわち、第一溝部10eを有する枠材は、横枠11,13及び縦枠12,14のうちの少なくとも一方であればよい。また、上側の横枠11,13及び下側の横枠11,13のうちの一方にのみ第一溝部10eを設けてもよいし、左側の縦枠12,14及び右側の縦枠12,14のうちの一方にのみ第一溝部10eを設けてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、枠材(横枠11,13)は、当該枠材11,13の接着面のうちの躯体(壁パネル2)と耐火面材(石膏ボード3)との境界に対向する部分に第二溝部10fを有しているので、躯体2が収縮した際に、耐火面材3における躯体2側の角部を避けることができる。したがって、躯体2が収縮すると、耐火面材3の端面で枠材11,13を押す状態となり、耐火面材3の躯体2側の角部で押す状態となる場合(すなわち第二溝部10fが設けられていない場合)に比べて、耐火面材3と枠材11,13との間に生じる隙間が狭くなる。
なお、第二溝部10fを有する枠材は、横枠11,13に限定されず、縦枠12,14であってもよい。すなわち、第二溝部10fを有する枠材は、横枠11,13及び縦枠12,14のうちの少なくとも一方であればよい。また、上側の横枠11,13及び下側の横枠11,13のうちの一方にのみ第二溝部10fを設けてもよいし、左側の縦枠12,14及び右側の縦枠12,14のうちの一方にのみ第二溝部10fを設けてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、枠材(横枠11,13)は、当該枠材11,13の端面に突出部10cを有しており、当該枠材11,13の端面のうちの突出部10cよりも耐火面材(石膏ボード3)に近い部分が、当該耐火面材3の表面と略面一の状態となるように設置されているので、当該耐火面材3の表面に貼り付ける内装材を枠材11,13にまで延長して設けることが可能となる。これにより、枠材11,13の端面のうち突出部10cのみが露出することとなるので、実際の枠材11,13よりも薄い枠材が設置されているように見せることができる。
なお、突出部10cを有する枠材は、横枠11,13に限定されず、縦枠12,14であってもよい。すなわち、突出部10cを有する枠材は、横枠11,13及び縦枠12,14のうちの少なくとも一方であればよい。また、上側の横枠11,13及び下側の横枠11,13のうちの一方にのみ突出部10cを設けてもよいし、左側の縦枠12,14及び右側の縦枠12,14のうちの一方にのみ突出部10cを設けてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、枠材(横枠11,13)は、当該枠材11,13と共に開口部5の縁部の仕上げを行うケーシング材(入隅ケーシング8b等)を差し込み可能な差込溝(凹溝10b)を有するので、枠材11,13に対しケーシング材を容易に取り付けることができる。
なお、差込溝10bを有する枠材は、横枠11,13に限定されず、縦枠12,14であってもよい。すなわち、差込溝10bを有する枠材は、横枠11,13及び縦枠12,14のうちの少なくとも一方であればよい。また、上側の横枠11,13及び下側の横枠11,13のうちの一方にのみ差込溝10bを設けてもよいし、左側の縦枠12,14及び右側の縦枠12,14のうちの一方にのみ差込溝10bを設けてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、壁(外壁1、内壁7)に形成された開口部5に設けられた開口枠10を備える開口部構造であって、開口枠10は、壁1,7を構成する躯体(壁パネル2)と、当該躯体2に取り付けられた耐火面材(石膏ボード3)と、に跨って設けられる枠材(横枠11,13、縦枠12,14)を備え、枠材11,12,13,14と、耐火面材3と、に跨ってクロス下地プレート20が設けられており、クロス下地プレート20は、耐火面材3に固定されているが、枠材11,12,13,14には非固定である。
すなわち、枠材11,12,13,14と、耐火面材3と、に跨ってクロス下地プレート20が設けられており、クロス下地プレート20は、耐火面材3に固定されているが、枠材11,12,13,14には非固定であるので、躯体2が収縮して枠材11,12,13,14に対し耐火面材3から押す力が加わっても、クロス下地プレート20やそれに貼り付けられている壁クロス等の内装材が引っ張られる(伸びてしまう)ことがない。したがって、躯体2が収縮しても、内装材にひびが入ったり、躯体2の収縮が解除された際に内装材にみみず腫れ状の筋が入ったりする等の不具合の発生を回避することができる。
【0065】
また、上記の実施形態及び変形例によれば、クロス下地プレート20は、本体部21と、当該本体部21よりも軟質な弾性部22と、を備えており、弾性部22は、本体部21の幅方向両端部のうち枠材11,12,13,14に対向する側の端部から、当該幅方向の外側に向かって延出している。
すなわち、クロス下地プレート20は、当該クロス下地プレート20の幅方向両端部のうち枠材11,12,13,14に対向する側の端部が弾性部22によって構成されているので、枠材11,12,13,14が収縮すると、それに伴い変形し、枠材11,12,13,14の収縮が解除されると、それに伴い元の状態に戻る。そして、クロス下地プレート20に貼り付けられている壁クロス等の内装材も、枠材11,12,13,14が収縮すると、弾性部22に追従して変形し、枠材11,12,13,14の収縮が解除されると、弾性部22に追従して元の状態に戻るので、枠材11,12,13,14が収縮して当該収縮が解除された際に、内装材の変形が目立つ等の不具合の発生を回避することができる。
なお、変形例2では、第一溝部10e及び第二溝部10fを備えた横枠11にクロス下地プレート20を設ける構成を例示しているが、無論、第二溝部10fを備えない横枠11(
図6に示す横枠11)にクロス下地プレート20を設けることも可能である。また、第一溝部10eを備えない枠材(縦枠12)にクロス下地プレート20を設けることも可能である。
また、変形例2では、上記の実施形態の枠材(横枠11、縦枠12)にクロス下地プレート20を設ける構成を例示しているが、無論、変形例1の枠材(横枠13、縦枠14)にクロス下地プレート20を設けることも可能である。
【0066】
また、躯体は、壁パネル2や建築構造材4に限られるものではない。例えば、建物が軸組材による軸組構法によって建築されたものである場合には、柱やまぐさ等の軸組材が壁1,7を構成する躯体となる。
また、躯体と耐火面材との間には、例えば遮音材や断熱材等のように何らかの機能を有する機能部材が介在されてもよい。
また、開口枠10は、壁1,7に形成された開口部5を開閉する建具(窓や戸など)を保持する建具枠であってもよい。具体的には、例えば、開口枠10が建具として片開き戸を保持する建具枠である場合には、横枠11,13や縦枠12,14は、更に、当該片開き戸が接触する戸当たり部材を取り付けるための溝を有している。
【符号の説明】
【0067】
1 外壁(壁)
2 壁パネル2
3 石膏ボード
5 開口部
7 内壁(壁)
10 開口枠
10a 切欠部(他の溝)
10b 凹溝(差込溝)
10c 突出部
10e 第一溝部
10f 第二溝部(他の溝)
11,13 横枠(枠材)
12,14 縦枠(枠材)
20 クロス下地プレート
21 本体部
22 弾性部