(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】分岐を有するエチレン系ポリマー組成物およびその製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 279/02 20060101AFI20250221BHJP
【FI】
C08F279/02
(21)【出願番号】P 2021530140
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 US2019063406
(87)【国際公開番号】W WO2020112873
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-21
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ヘイリー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ペレス、カルメロ ディクレット
(72)【発明者】
【氏名】オズビー、ジョン オー.
(72)【発明者】
【氏名】エワァート、ショーン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ムンジャル、サラット
(72)【発明者】
【氏名】エディー、クリストファー アール.
(72)【発明者】
【氏名】デミロール、メフメト
(72)【発明者】
【氏名】メンデンホール、ジョナサン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノフ、イヴァン エー.
(72)【発明者】
【氏名】クラソフスキー、アルカジー エル.
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505330(JP,A)
【文献】特表2017-502131(JP,A)
【文献】特表平07-500621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00-210/18
C08F 279/00-279/06
C08F 290/00-290/14
C08L 23/00-23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンモノマーとポリブタジエンとを反応させることによって形成されたエチレン系ポリマー組成物であって、前記ポリブタジエンが構造Iを有し、
【化1】
式中、表記「
【化2】
」が、二重結合に関してトランスのC
2アルキルを表し、nが3~160であり、mが0~50であり、
前記エチレン系ポリマー組成物が、前記エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて、95重量%~99.98重量%のエチレンおよび0.02重量%~5.0重量%の前記ポリブタジエンを重合形態で含み、
以下の特性:
(i)0.05/1000個の炭素~0.15/1000個の炭素のアルケン含有量、
(ii)0.1cN~100cNの溶融弾性、および0.1g/10分~200g/10分の溶融インデックス(I
2)(ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従ってグラム/10分(g/10分)の単位で測定される)、
(iii)C+Dlog(I
2)以上の貯蔵弾性率G’値(式中、G’は170℃および10%のひずみの窒素環境でのレオロジー測定により決定され、Cは185Paであり、Dは-90Pa/log(g/10min)であり、I
2はASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従ってグラム/10分(g/10分)の単位で測定される前記エチレン系ポリマー組成物の溶融インデックスである)、
(iv)0.05mm
2/24.6cm
3~20mm
2/24.6cm
3のGI200値(GI200値は直径が少なくとも200ミクロンのすべてのゲルを含むゲルインデックスである)、および/または
(v)0.909g/cc~0.940g/ccの密度、
のうちの1つ以上を有する、エチレン系ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリブタジエンが、1.2~10の分子量分布を有する、請求項1に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項3】
ブレンド成分をさらに含み、前記ブレンド成分が、前記ポリブタジエンを含まない、請求項
1または2に記載のエチレン系ポリマー組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
【請求項5】
前記物品が、フィルムおよびコーティングからなる群から選択される、請求項
4に記載の物品。
【請求項6】
前記物品が、ケーブル用のコーティング、ワイヤ用のコーティング、およびシート用コーティングからなる群から選択される、請求項
4に記載の物品。
【請求項7】
プロセスであって、
フリーラジカル重合条件下、かつ100MPa以上の圧力の重合反応器において、エチレンモノマーとポリブタジエンとを反応させる工程であって、前記ポリブタジエンが構造Iを有し、
【化3】
式中、表記「
【化4】
」が、二重結合に関してトランスのC
2アルキルを表し、nが3~160であり、mが0~50である、工程と、
エチレン系ポリマー組成物を形成する工程と、
を含み、
前記エチレン系ポリマー組成物が、前記エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて、95重量%~99.98重量%のエチレンおよび0.02重量%~5.0重量%の前記ポリブタジエンを重合形態で含む、プロセス。
【請求項8】
前記エチレンモノマーとポリブタジエンとを反応させる工程が、少なくとも1つの管状反応器を含む反応器構成において行われる、請求項
7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記エチレンモノマーとポリブタジエンとを反応させる工程が、少なくとも1つのオートクレーブ反応器を含む反応器構成において行われる、請求項
7に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
低密度ポリエチレン(LDPE)の分岐レベルは、主に、反応器の設計、およびLDPEを作製するために使用される重合条件によるものである。分岐剤は、LDPEにおける分岐レベルを上げるために使用されてきた。しかしながら、高レベルの分岐を有する変性LDPEを達成するために必要とされるプロセス条件は、多くの場合、より低い結晶化度およびより高い含有量の低分子量抽出可能画分を有する最終生成物をもたらす。したがって、高い分岐レベルを有し、かつ良好なポリマー特性を維持する条件下で調製することができる、変性LDPEの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0002】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物が提供され、これは高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物とを反応させることによって形成され、各炭化水素系分子が3つ以上の末端アルケン基を含む。
【0003】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、プロセスは、フリーラジカル重合条件下、かつ100MPa以上の圧力の重合反応器において、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物とを反応させることを含む。各炭化水素系分子は、3つ以上の末端アルケン基を含む。このプロセスは、エチレン系ポリマー組成物を形成することを含む。さらなる実施形態では、各炭化水素系分子は構造Iを有し、
【化1】
式中、nは3~160であり、mは0~50である。
【0004】
定義
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.によって1990-1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0005】
米国特許実務の目的のために、参照された特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示に関して(本開示で具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲で、それらの全体が参照として組み込まれる(またはその対応する米国版が参照によってそのように組み込まれる)。
【0006】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値からのすべての値を含み、また上限値および下限値を含む。明示的な値を含む範囲(例えば、1または2、または3~5、または6、または7)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意のサブ範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などのサブ範囲を含む)。
【0007】
相反する記載がない限り、文脈から暗示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0008】
「組成物」という用語は、組成物を構成する材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0009】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、それが具体的に開示されているかどうかに関わらず、任意の追加の成分、工程、または手順の存在を除外することを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も含まれる。
【0010】
本明細書で使用される「ポリマー」または「ポリマー材料」という用語は、同じタイプまたは異なるタイプであれそれらのモノマーを重合することによって調製され、かつポリマーを構成する複数および/または繰り返しの「単位」または「マー単位」を重合形態で提供する。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語を包含し、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに用いられ、コポリマーという用語は、通常、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる。それはまた、例えばランダム、ブロックなどのすべての形態のコポリマーを包含する。「エチレン/α-オレフィンポリマー」および「プロピレン/α-オレフィンポリマー」という用語は、それぞれ、エチレンまたはプロピレンと、1つ以上の追加の重合性α-オレフィンモノマーとを重合することから調製された上述のコポリマーを示す。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものを指す。
【0011】
反対の記載がないか、文脈から含意されるか、または当該技術分野において慣例的でない限り、すべての部分およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本出願の出願日現在で最新のものである。
【0012】
本明細書で使用される場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの混合物を指す。ブレンドは、混和性であってもよいか、またはなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していてもよいか、またはしていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野において既知である他の方法から決定して、1つ以上のドメイン構成を含有してもよいか、または含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂もしくは配合)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時成形)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0013】
本明細書で使用される「エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー」という用語は、50モルパーセントを超える重合エチレンモノマー(重合性モノマーの総量に基づく)と、少なくとも1つのアルファ-オレフィンと、を有するコポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用される「エチレンモノマー」という用語は、間に二重結合を有する2個の炭素原子を有し、かつ各炭素が2個の水素原子に結合している化学単位を指し、化学単位は、他のそのような化学単位と重合して、エチレン系ポリマー組成物を形成する。
【0015】
本明細書で使用される「高密度ポリエチレン」(またはHDPE)という用語は、少なくとも0.94g/cc、または少なくとも0.94g/cc~0.98g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーを指す。HDPEは、0.1g/10分~25g/10分のメルトインデックスを有する。HDPEは、エチレン、および1つ以上のC3~C20αオレフィンコモノマーを含むことができる。コモノマー(複数可)は、線状または分岐状であり得る。好適なコモノマーの非限定的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、および1-オクテンが挙げられる。HDPEは、スラリー反応器、気相反応器、または溶液反応器中でチーグラーナッタ触媒、クロム系触媒、幾何拘束型触媒、またはメタロセン触媒のいずれかを用いて調製することができる。エチレン/C3~C20α-エチレンオレフィンコポリマーは、その中に重合した少なくとも50重量%、または少なくとも70%重量、またはで少なくとも80%重、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量量%のエチレンを重合形態で含む。
【0016】
本明細書で使用される「炭化水素系分子」という用語は、炭素原子および水素原子のみを有する化学成分を指す。
【0017】
本明細書で使用される「線状低密度ポリエチレン」(または「LLDPE」)という用語は、エチレンに由来する単位と、少なくとも1つのC3~C10αオレフィンまたはC4~C8αオレフィンコモノマーに由来する単位とを含む不均一な短鎖分岐分布を含有する線状エチレン/α-オレフィンコポリマーを指す。LLDPEは、従来のLDPEとは対照的に、長鎖分岐があるとしてもわずかであることを特徴とする。LLDPEは、0.910g/cc~0.940g/cc未満の密度を有する。LLDPEの非限定的な例としては、TUFLIN(商標)線状低密度ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、DOWLEX(商標)ポリエチレン樹脂(The Dow Chemical Companyから入手可能)、およびMARLEX(商標)ポリエチレン(Chevron Phillipsから入手可能)が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される「低密度ポリエチレン」(またはLDPE)という用語は、0.909g/cc~0.940g/cc未満、または0.917g/cc~0.930g/ccの密度と、広い分子量分布(MWDが3.0超)を有する長鎖分岐とを有するポリエチレンを指す。
【0019】
本明細書で使用される「末端アルケン基」という用語は、ポリマー鎖中の2個の炭素原子間の二重結合を指し、二重結合中の炭素のうちの1個は=CH2基である。末端二重結合は、ポリマー鎖の末端および/またはポリマー鎖の分岐端に位置している。本明細書で使用される「内部アルケン基」という用語は、1,2-二置換炭素-炭素二重結合を指し、炭素原子はトランス配置(シス配置ではない)にある。内部アルケン基は、ポリマー鎖の長さ全体に位置しているが、ポリマー鎖の末端またはポリマー鎖に沿った分岐端には位置していない。末端アルケン基および内部アルケン基は、赤外線分光法(「IR」)によって測定される。
【0020】
本明細書で使用される「アルケン含有量」という用語は、1000個の炭素原子ごとにポリマー鎖に存在する、末端アルケン基の数に内部アルケン基の数を加えたものを指す。アルケン含有量は、赤外線分光法(「IR」)によって測定される。
【0021】
試験方法
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)で報告される。
【0022】
本明細書で使用される「GI200」という用語は、直径が少なくとも200ミクロンのすべてのゲルを含むゲルインデックスを指す。エチレン系ポリマー組成物の架橋度は、指定された時間、組成物を溶媒に溶解し、パーセントゲルまたは抽出不可能な成分を計算することによって測定される。ゲルのパーセントは、通常、架橋レベルの増加と共に増加する。GI200結果は、mm2/24.6cm3で報告される。
【0023】
G’値
本明細書で使用される「G」値という用語は、材料の貯蔵弾性率を指す。貯蔵弾性率は、材料の貯蔵エネルギーまたは弾性応答の尺度である。本明細書で使用される「損失弾性率」(またはG)という用語は、応力に応答した材料の散逸エネルギーの尺度である。G’測定において使用した試料は、圧縮成形プラークから調製した。アルミニウム箔片をバックプレート上に置き、鋳型または型をバックプレートの上部に置く。次に、12グラムの樹脂を型に入れ、2枚目のアルミニウム箔を樹脂および型の上方に置く。次いで、第2のバックプレートをアルミニウム箔の上部に置く。全体のアンサンブルは、次の条件(150℃および100MPaで3分、続いて150℃および150MPaで1分、続いて150MPaで室温まで「1.5分」急冷冷却)で圧縮成形プレスランに入れられる。25mmのディスクを圧縮成形されたプラークから打ち抜く。ディスクの厚さは2.0mmである。G’を決定するためのレオロジー測定は、170℃および10%のひずみの窒素環境で行われる。打ち抜かれたディスクは、ARES-1(Rheometrics SC)レオメーターオーブン内に位置された2つの「25mm」平行プレートの間に置かれる。このオーブンは、170℃で少なくとも30分間予熱され、「25mm」の平行板の間隙はゆっくりと1.65mmに縮小される。次いで、試料をこれらの条件で正確に5分間放置する。次いで、オーブンを開き、余分な試料をプレートの縁の周りで注意深く切り取って、オーブンを閉じる。試料の貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)は、100~0.1rad/s(0.1rad/sで500Paよりも低いG”値を得ることができる場合)、または100~0.01rad/sの周波数掃引の減少に従って小振幅の振動剪断を介して測定される。周波数掃引ごとに、周波数10年ごとに1ポイント(対数間隔)が使用される。データを、両対数スケールでプロットした(G’(Y軸)対G”(X軸))。Y軸スケールは、10~1000Paの範囲を網羅し、一方でX軸スケールは、100~1000Paの範囲を網羅する。Orchestratorソフトウェアを使用して、(または少なくとも4つのデータポイントを使用して)G”が200~800 Paである領域のデータを選択する。データは、近似式Y=C1+C2 ln(x)を使用して対数多項式モデルに近似される。Orchestratorソフトウェアを使用して、500Paに等しいG”におけるG’を補間によって判定する。G’およびG”はパスカル(Pa)で報告される。
【0024】
ヘキサン抽出可能物
本明細書で使用される「ヘキサン抽出物」という用語は、結果として得られたポリマー組成物からヘキサンによって洗浄されたヘキサン可溶性材料の量を指す。ポリマーペレット(さらなる変性なしの重合から、プレス当たり2.2グラム)をプレスして、カーバープレスで3.0~4.0milの厚さのフィルムを形成する。ペレットは2段階でプレスされる。溶融相は、190℃で3分間、3000ポンドである。圧縮相は、190℃で3分間、40000ポンドである。非残留手袋(PIP*CleanTeam*Cotton Lisle検査手袋、部品番号:97-501)は、オペレーターの手からの残留油でフィルムを汚染しないように着用する。フィルムは「1インチ×1インチ」の正方形に型抜きされ、重量が測定される(2.5±0.05g)。次いで、フィルムを、加熱水浴中の「49.5±0.5℃」のヘキサン容器で2時間抽出する。2時間後、フィルムを除去し、きれいなヘキサンですすぎ、真空オーブン(80±5℃)で全真空(ISOTEMP真空オーブン、モデル281A、30インチHg)で2時間乾燥させる。次いで、フィルムをデシケータに入れ、室温まで最低1時間冷却させる。次いで、フィルムの重量を再測定し、ヘキサン中での抽出に起因する質量損失の量を計算する。この方法は、21 CFR§177.1520(d)(3)(ii)に基づいており、n-ヘキサンの代わりにヘキサンを使用することにより、FDAプロトコルから1つ逸脱している。抽出可能なヘキサンは重量%で報告される。
【0025】
溶融弾性
本明細書で使用される「溶融弾性」という用語は、ポリマーが曲がる能力、または溶融時に静的状態から移動可能になる能力を指す。溶融弾性は、D-MELT装置(Goettfert GmbH Buchen、Germanyから入手可能)を使用して測定される。DMELT装置としては、市販のプラストメーターと、カスタム加重試料を組み込むデジタル秤とが挙げられる。密度測定のための試料は、ASTM D1928に従って調製される。試料は、190℃および30,000psiで3分間プレスされ、次いで(21℃)および207MPaで1分間プレスされる。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、試料プレスから1時間以内に行われる。溶融弾性測定では、加重ピストンを使用して、溶融ポリマーストランドを標準のプラストメーター(MP600 Extrusion Plastometer(Melt Indexer)System Installation&Operation Manual(#020011560)、Tinius Olsen、1065 Easton Road、Horsham、PA 19044-8009)バレルから、一定温度(190℃)標準のASTM D1238 MFRダイ(オリフィスの高さ(8.000±0.025mm)および直径(2.0955±0.005mm))から押し出す。押出物は、一連の自由回転ローラーを介して、ステッピングモーター(ステッピングモーターおよびコントローラー操作マニュアル、Oriental Motor USA Corporation、2570W.237thStreet、Torrance、CA90505))によって駆動されるローラー上に引っ張られ、これは、分析中に速度範囲にわたって傾斜する。秤(Excellence Plus XP Precision Balance Operating Instructions,Mettler Toledo,1900 Polaris Parkway,Columbus,Ohio 43240)プラットフォームに取り付けられたテンションローラー上で停止するポリマーストランドの力は、統合制御コンピューターによって記録される。取得した力データの線形回帰から、最終的に報告される値は、ダイ出口速度に対するポリマーストランド速度の一定速度比率(33.2)またはひずみ(Ln[速度比率]=3.5)に基づいて決定される。溶融弾性は、センチニュートン(cN)の単位で報告される。
【0026】
メルトインデックス
本明細書で使用される「溶融インデックス」という用語は、溶融状態にあるときに熱可塑性ポリマーがどれだけ容易に流動するかの尺度を指す。溶融インデックス(I2)は、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。
【0027】
溶融強度
本明細書で使用される「溶融強度」という用語は、ポリマーが破壊する前に、溶融状態のポリマーに加えられる最大張力の尺度を指す。溶融強度は、Goettfert Rheotens 71.97(Goettfert Inc.、Rock Hill、SC)を使用して190℃で測定される。溶融した試料(25~50グラム)には、平坦な入口角度(180度)を備え、長さ30mm、直径2mmのGoettfert Rheotester 2000キャピラリーレオメーターが供給される。試料は、バレル(L=300mm、直径=12mm)に供給され、圧縮され、10分間溶融することを許容された後、0.265mm/sの一定のピストン速度(これは、所与のダイの直径で38.2s-1の壁剪断速度に相当する)で押し出される。押出物は、ダイ出口の100mm下に位置するレオテンのホイールを通過し、2.4ミリメートル/平方秒(mm/s2)の加速速度でホイールによって下向きに引っ張られる。ホイールにかかる力(センチニュートン、cNで測定)は、ホイールの速度(mm/s)の関数として記録される。ストランド速度(mm/s)の関数としての力(cN)の2つの曲線が重なるまで、試料を少なくとも2回繰り返す。次いで、ストランド切断時に最高速度を示した曲線が報告される。溶融強度は、ストランドが切断される前のプラトー力として、cN単位で報告される。
【0028】
核磁気共鳴(1H NMR)
本明細書で使用される「核磁気共鳴」(またはNMR)という用語は、材料または化合物の元素および構造組成を示す材料または化合物のスペクトル分析を指す。プロトンNMR用の試料は、10mmチューブで調製した0.001M Crを含有する2.75gの30/70wt/wt o-ジクロロベンゼン-d4/パークロロエチレン(ODCB-d4/PCE)中の0.1~0.2gの試料を使用して調製した。試料を115℃で加熱し、ボルテックスして、均質性を確保した。単一のパルスプロトンスペクトルは、Bruker Dual DUL高温CryoProbeおよび120℃の試料温度を備えたBruker AVANCE 400MHz分光計で取得した。PBDスペクトルは、ZGパルスP1=5us(約30°PW)、16回のスキャン、AQ1.64s、D114Sで取得した。LDPE-PBD試料は、90°PWを有するZGパルス、32回のスキャン、AQ1.64s、D114sを使用して実行した。
【0029】
ガスクロマトグラフィー分析
本明細書で使用される「ガスクロマトグラフィー分析」という用語は、化合物の成分を重量で分離する方法を指す。
【0030】
ヘッドスペースの水抽出および準備-固相マイクロ抽出(HS-SPME)
各フィルムは、「押出コーティング」で実験のセクションに説明されているように調製された。2グラム(約1インチ×1インチ)の各試料(剥離ライナーにコーティングされ、かつ自立型フィルムとして機能するように除去された約1.3milのポリマー)を個々の「20mL」ヘッドスペースバイアルに量り入れ、バイアルを密封した。フィルムを有するバイアルを75℃で10分間平衡化し、ヘッドスペースを、四重極質量分析計(GC/qMS)を用いたガスクロマトグラフィーによって分析するためにSPMEで抽出した。
【0031】
HS-SPMEの準備
各フィルム10グラム(約1インチ×1インチ)を「40mL」のガラス瓶(I-Chem、高純度)に量り入れた。バイアルを、高純度水(ASTMタイプI、試薬グレード、Mill-Q Integral 3、18.2MΩ、<5ppb TOC)で完全に満たした。バイアルを、PTFEで裏打ちされたキャップで密封し、フィルムを、40℃で48時間抽出した。48時間後、瓶をオーブンから取り出し、内容物を室温に戻した(約4時間)。HS-SPME分析を、20mLのヘッドスペースバイアルを使用して実行した。各バイアルを、「3.5g」の硫酸ナトリウム(Sigma-Aldrich、ACS試薬グレード、1050°Fの炉内で12時間加熱して精製)および10グラムの水抽出物(フィルムなし)で準備した。混合物を激しく混合し、15分間超音波処理して、硫酸ナトリウムを溶解した。次いでバイアルを75℃で10分間平衡化し、ヘッドスペースを、四重極質量分析計(GC/qMS)を用いたガスクロマトグラフィーによって分析するためにSPMEによって抽出した。
【0032】
GC/ODP/qMS分析条件
各バイアル内のヘッドスペースを、SPMEによってサンプリングし、GC/qMSによって分析した。定量化を、外部標準較正手順を使用して実行した。自動試料分析を、Gerstel Multipurpose Sampler(MPS)、Agilent 7890Aガスクロマトグラフィー、およびAgilent5975C不活性XL四重極質量分析計を使用して実行した。MPSを、GerstelのMaestroソフトウェアを使用して制御した。GC/qMSの制御およびデータ収集を、AgilentのChemstationソフトウェアを使用して実行した。水抽出物のヘッドスペースは、「2cm×50/30μm」のジアルケンベンゼン/カルボキシン/ポリジメチルシロキサン(Supleco)SPME繊維を使用して、75℃で水を平衡化し、10分間攪拌してサンプリングした。SPMEファイバーの成分を、250℃のスプリット/スプリットレスインレットで脱着し、続いて、50℃(2分間保持)~260℃(6分間保持)、15℃/分、および2.0mL/分のヘリウムの初期カラムフローのオーブン温度プログラムでAgilent、VF-WAXms、「30mx250μmx0.5μm」キャピラリカラムを使用して分離した。
【0033】
次いで、試料を、材料内で検出された酸素化種(OS)または総揮発性有機化合物(VOC)の1~5のスケール(1が最小を示し、5が最大を示す)で比較ランク付けした。
【0034】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
クロマトグラフィー系は、内部IR5赤外検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフ、およびPrecision Detectors(現在は、Agilent Technologies)2角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された4-キャピラリー粘度計(DV)からなる。すべての絶対光散乱測定に関して、15度角が測定に使用される。オートサンプラーオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混合床カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
【0035】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムでポリスチレン標準を調製した。ポリスチレン標準を穏やかに攪拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準のピーク分子量を、(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)):
【数1】
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0036】
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。120,000の分子量を有するホモポリマーポリエチレン標準となるように、カラム分解能およびバンド拡大効果を補正するために、A(約0.375~0.440)に少し調整した。
【0037】
GPCカラムセットの合計プレート計数を、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに攪拌しながら20分間溶解された)Eicosaneで行った。プレート計数(式2)と対称性(式3)は、次の式に従って200マイクロリットルの注入で測定された。
【数2】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98~1.22の間となるべきである。
【0038】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動の様式で調製された:2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解した。
【0039】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、およびMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、各々の等間隔のデータ回収点(i)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および式1からの点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用した、式4~6によるPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【数4】
【0040】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))を狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークと整合することによって各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に較正するために使用された。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量は式7のように計算される。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容される流量補正は、有効流量が見かけ流量の+/-2%以内であるべきである。
流量(実効)=流量(公称)*(RV(FM較正済み)/RV(FM試料)) (式7)
【0041】
トリプル検出器GPC(TDGPC)
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正および従来の分子量モーメントの計算および分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施された。
【0042】
IR5検出器からの粘度計および光散乱検出器オフセットの判定に関して、多重検出器オフセットの判定のための体系的手法は、Balke、Moureyらによって公開されたもの(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt 13、(1992))によって公開されたものと一致した様式で行われ、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準(Mw/Mn>3)からのトリプル検出器ログ(MWおよびIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に最適化する。
【0043】
絶対分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099(1948))およびKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと一致する様式で得た。分子量の決定において使用される総注入濃度は、好適な線状ポリエチレンホモポリマー、または既知の重量平均分子量のポリエチレン標準のうちの1つから導き出した、質量検出器面積および質量検出器定数から得た。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量は、以下に述べるポリエチレン標準物のうちの1つ以上から誘導される、光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得た。一般に、(GPCOne(商標)を使用して決定された)質量検出器応答(IR5)および光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する線状標準物から決定されるべきである。粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して決定された)は、製造業者によって記載された方法を使用して、または代替的に、標準基準材料(SRM)1475a(国立標準技術研究所(NIST)から入手可能)などの好適な線状標準物の公開された値を使用することによって、達成することができる。較正標準に関する特定の粘度面積(DV)および注入された質量を、その固有粘度に関連づける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィー濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定される。
【0044】
絶対重量平均分子量(MW
(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)面積統合クロマトグラム(光散乱定数で因数分解)を質量定数から回収された質量および質量検出器(IR5)面積で除算し得られる。分子量および固有粘度応答は、信号対雑音が低くなるクロマトグラフィーの端部で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用して)。他のそれぞれのモーメントであるMn
(Abs)およびMz
(Abs)は、次の式8~9に従って計算される。
【数5】
【0045】
トリプル検出器GPC(3D-GPC)によるgpcBR分岐インデックス
gpcBR分岐インデックスは、前述のように、最初に、光散乱、粘度、および濃度の検出器を較正することによって決定される。次いで、ベースラインが光散乱、粘度計、および濃度のクロマトグラムから差し引かれる。次いで、積分ウィンドウを設定して、赤外線(IR5)クロマトグラムからの検出可能なポリマーの存在を示す光散乱および粘度計クロマトグラムの低分子量保持ボリューム範囲のすべての積分を確実にする。次いで、線形ポリエチレン標準を使用して、ポリエチレンおよびポリスチレンのMark-Houwink定数を確立する。定数を得ると、式(10)および(11)に示すように、2つの値を使用して、溶出量の関数としてのポリエチレン分子量およびポリエチレン固有粘度の2つの線形参照従来較正を構成する。
MPE=(KPS/KPE)1/α
PE
+1・MPSαPS+1/αPE+1(式10)
[η]PE=KPS・MPS
α+1/MPE(式11).
gpcBR分岐インデックスは、Yau,Wallace W.の「Examples of Using 3D-GPC-TREF for Polyolefin Characterization」、Macromol.Symp.、2007、257、29-45で説明されているように、長鎖分岐の特徴付けのための堅牢な方法である。このインデックスは、ポリマー検出器領域全体を優先して、g’値の決定および分岐周波数の計算で従来使用されていた「スライスごとの」3D-GPC計算を回避する。3D-GPCデータから、ピーク面積方法を使用した光散乱(LS)検出器により、試料のバルク絶対重量平均分子量(Mw、Abs)を得ることができる。この方法は、従来のg’決定で必要とされるような、濃度検出器信号に対する光散乱検出器信号の「スライスごとの」比率を回避する。
【0046】
3D-GPCでは、試料の固有粘度も、式(8)を使用して個別に得た。式(5)および(8)における面積計算は、全体的な試料面積として、ベースラインおよび積分限界での検出器ノイズおよび3D-GPC設定によって引き起こされる変動の影響をなおさら受けにくいため、より大きな精度を提供する。さらに重要なことに、ピーク面積の計算は、検出器のボリュームオフセットに影響を受けない。同様に、高精度の試料固有粘度(IV)は、式(12)に示す面積方法によって得られる。
【数6】
ここで、η
spiは、粘度計検出器から取得した比粘度を表す。
【0047】
gpcBR分岐インデックスを決定するために、試料ポリマーの光散乱溶出面積を使用して、試料の分子量を決定する。試料ポリマー用の粘度検出器の溶出面積は、試料の固有粘度(IVまたは[η])を決定するために使用される。
最初に、SRM1475aまたは等価物などの線状ポリエチレン標準試料のための分子量および固有粘度は、式(2)および(13)につき、溶出量の関数として分子量および固有粘度の両方について従来の較正(「cc」)を使用して、決定される。
【数7】
式(14)は、gpcBR分岐インデックスを決定するために使用される。
【数8】
式中、[η]は、測定された固有粘度であり、[η]
ccは、従来の較正からの固有粘度であり、Mwは、測定された重量平均分子量であり、Mw
ccは、従来の較正の重量平均分子量である。式(5)を用いた光散乱(LS)による重量平均分子量は、一般に「絶対重量平均分子量」または「Mw、Abs」と称される。従来のGPC分子量較正線(「従来の較正」)を使用したMw、ccは、多くの場合、「ポリマー鎖骨格分子量」、「従来の重量平均分子量」、および「Mw、
GPC」と称される。
【0048】
「cc」の下付き文字が付いたすべての統計値は、それぞれの溶出量、前述の対応する従来の較正、および濃度(Ci)を使用して決定される。下付き文字のない値は、質量検出器、LALLS、および粘度計面積に基づく測定値である。KPEの値は、線形基準試料がゼロのgpcBR測定値を有するまで反復して調整される。例えば、この特定の場合のgpcBRを決定するためのαおよびLog Kの最終値は、ポリエチレンの場合はそれぞれ0.725と-3.391、ポリスチレンの場合はそれぞれ0.722と-3.993である。次いで、これらのポリエチレン係数を式13に入力した。
【0049】
一旦前述の手順を使用してK値およびα値を決定したら、分岐試料を使用して手順を繰り返す。分岐試料は、線形参照から得た最終的なMark-Houwink定数を最適な「cc」較正値として使用して分析される。
【0050】
gpcBRの解釈は、単純である。線状ポリマーの場合、LSおよび粘度計によって測定された値が従来の較正標準に近くなるため、式(14)から計算されたgpcBRはゼロに近くなることになる。分岐ポリマーの場合、特に長鎖分岐のレベルが高い場合、gpcBRはゼロより高くなることになる。これは、測定されたポリマーの分子量が計算されたMw、ccよりも高くなり、計算されたIVccが測定されたポリマーIVよりも高くなるためである。実際、gpcBR値は、ポリマーの分岐の結果としての分子サイズの収縮効果によるIVの分数変化を表している。0.5または2.0のgpcBR値は、等価重量の直鎖状ポリマー分子に対する、それぞれ50%および200%のレベルでのIVの分子サイズ収縮効果を意味する。
【0051】
これらの特定の実施例では、従来の「g’インデックス」および分岐頻度の計算と比較して、gpcBRを使用する利点は、gpcBRの精度がより高いことによるものである。gpcBRインデックスの決定に使用されるパラメータのすべては、高精度で得られ、濃度検出器からの高分子量での低い3D-GPC検出器の応答によって悪影響を受けない。検出器のボリュームアライメントの誤差も、gpcBRインデックス決定の精度に影響しない。
【0052】
フーリエ変換赤外分析
1000個の炭素当たりの末端(ビニル)および内部(またはトランス)二重結合の量の決定は、フーリエ変換赤外分析(「FTIR」)によって行われる。FTIR分析に使用される試料フィルム(厚さ約250~300ミクロン)は、190℃に設定された加熱プラテンを備えたCarver油圧プレス内で試料のペレット約0.5gをプレスすることによって圧縮成形された。末端アルケンおよび内部アルケンのレベルは、ASTM方法D6248で概説されている手順と同様の手順に従って測定された。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示は、エチレン系ポリマー組成物を提供する。エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマーの重合生成物と、3つ以上の末端アルケン基を有する炭化水素系分子の混合物と、を含む。
【0054】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、高圧(100MPA超)およびフリーラジカル重合を伴うプロセスから形成される。エチレンモノマーと、3つ以上の末端アルケン基を有する炭化水素系分子の混合物とが一緒に反応して、エチレン系ポリマー組成物を形成する。重合プロセスについては、以下で詳細に説明する。
【0055】
炭化水素系分子
エチレン系ポリマー組成物は、エチレンの重合反応生成物と、3つ以上の末端アルケン基を有する炭化水素系分子とである。炭化水素系分子は、炭素原子および水素原子のみを有し、3つ以上の末端アルケン基を有する。本明細書で使用される「3つ以上の末端アルケン基を含む炭化水素系分子」(または交換可能に「炭化水素系分子」と称される)という用語は、炭素原子および水素原子のみから構成されるポリマー鎖である化学成分を指す。ポリマー鎖は分岐しており、3つ以上の末端を有し、アルケン基(すなわち、炭化水素二重)結合は各末端に存在する。本明細書で使用される「炭化水素系分子の混合物」という用語は、2つ以上の炭化水素系分子を指し、分子のうちの少なくとも2つは、構造、特性、および/または組成物が異なる。
【0056】
一実施形態では、炭化水素系分子の各々に存在する末端アルケン基の数は、3、または5、または7、または8~17、または18である。さらなる実施形態では、炭化水素系分子の各々に存在する末端アルケン基の数は、3~40、または5~40、または10~40、または12~20である。例として、炭化水素系分子の混合物は、3つの末端アルケン基を有する第1の炭化水素系分子と、12の末端アルケン基を有する第2の炭化水素系分子と、を含み得る。
【0057】
一実施形態では、混合物中の炭化水素系分子の各々は構造Iを有し、
【化2】
式中、n(末端アルケン基の数)は3~160であり、m(内部アルケン基の数)は0~50である。別の実施形態では、nは、3、または5、または10、または20、または30、または40であり、mは、0、または10、または20、または40、または50である。さらなる実施形態では、nは3~160、または5~100、または9~40であり、mは0~30、または1~20、または2~10である。
【0058】
一実施形態では、炭化水素系分子の混合物は、構造Iを有する2つ以上の炭化水素系分子からなり、
【化3】
式中、nは、末端アルケン基の数であり、mは、内部アルケン基の数であり、炭化水素系分子の混合物中の平均n含有量は、9~40であり、平均m含有量は、1~10である。「平均n含有量」は、炭化水素系分子の数平均分子量(Mn)を重量平均分子量(Mw)で除算し、次いで、末端アルケン基の分数を乗算することによって計算される。「平均m含有量」は、炭化水素系分子の数平均分子量(Mn)を重量平均分子量(Mw)で除算し、次いで、末端アルケン基の分数を乗算することによって計算される。
【0059】
一実施形態では、炭化水素系分子の混合物は、各々平均n含有量および平均m含有量(「n/m」として示される、各炭化水素ベース分子の構造Iを参照)を以下のように(9~40/1~10、または12~38/2~8、または13~37/2~6、または15~35/2~6、または19/3、または33/5)有する。
【0060】
一実施形態では、構造Iに基づく炭化水素系分子の混合物は、1.2~20の分子量分布を有する。別の実施形態では、構造Iに基づく炭化水素系分子の混合物は、1.2、または1.3、または1.4~2、または5~10もしくは20の分子量分布を有する。さらなる実施形態において、構造Iに基づく炭化水素系分子の混合物は、1.2~20、または1.3~10、または1.5~5の分子量分布を有する。
【0061】
一実施形態では、炭化水素系分子の各々は構造IIを有し、
【化4】
式中、nは3~160であり、mは0~50であり、xは0~160であり、yは0~50である。別の実施形態では、nは、3、または5、または10、または20、または30、または40、または50~60、または70~80、または90、または100、または110、または120、または130、または140、または150、または160であり、mは、0、または10、または20~30、または40、または50であり、xは、0、または1、または5、または10、または20、または30、または40、または50~60、または70~80、または90、または100、または110、または120、または130、または140、または150、または160であり、yは、0、または1、または10、または20~30、または40、または50である。さらなる実施形態では、nは、3~160、または5~150、または9~140、または9~100、または9~50、または9~30であり、mは、0~30、または1~20、または1~10、xは、0~160、または1~50、または1~20、または1~10、yは、0~50、または1~20、または1~10である。
【0062】
構造Iおよび/または構造IIの炭化水素系分子は、以後、交換可能に「分岐剤」と称される。
【0063】
構造Iおよび構造IIにおける表記
【化5】
は、二重結合に関し
てトランスアルキル基を表す。
【0064】
一実施形態では、異なる分子量を有する構造Iおよび/または構造IIを有する炭化水素系分子の混合物が使用される。
【0065】
本エチレン系ポリマー組成物は、(i)構造Iのみ、(ii)構造IIのみ、または(iii)構造Iおよび構造IIの組み合わせを含み得ることが理解される。本明細書で使用される「エチレン系ポリマー組成物」という用語は、エチレンと構造Iおよび/または構造IIとの反応生成物であるポリマーを指すことが理解される。
【0066】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、95重量%、または96重量%、または97重量%、または98重量%~99重量%、または99.5重量%、または99.7重量%、または99.9重量%のエチレン、および、炭化水素系分子の混合物の逆数、または5.0重量%、または4.0重量%、または3.0重量%、または2.0重量%~1.0重量%、または0.5重量%、または0.3重量%、または0.1重量%の炭化水素系分子の混合物を重合形態で含む。重量パーセントは、エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づく。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、95.0重量%~99.9重量%、または96重量%~99.8重量%、または98重量%~99.8重量%のエチレンを含み、炭化水素系分子の混合物は、5.0重量%~0.1重量%、または4.0重量%~0.2重量%、または2.0重量%~0.2重量%の量で、重合形態で存在する。
【0067】
エチレン系ポリマー組成物は、0.909g/cc~0.940g/ccの密度を有する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.909g/cc、または0.915g/cc、または0.920g/cc~0.930g/cc、または0.935g/cc、または0.940g/ccの密度を有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.910g/cc~0.940g/cc、または0.915g/cc~0.935g/cc、または0.917g/cc~0.930g/cc、または0.917g/cc~0.926g/ccの密度を有する。
【0068】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.10g/10分~200g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.1g/10分、または1.0g/10分、または5.0g/10分、または10g/10分、または20g/10分、または30g/10分、または40g/10分、~50g/10分、または60g/10分、70g/10分、または75g/10分、または80g/10分、または90g/10分、または100g/10分のメルトインデックスを有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.1g/10分~200g/10分、または0.1g/10分~100g/10分、または0.1g/10分~80g/10分、または0.1g/10分~20g/10分のメルトインデックスを有する。
【0069】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.1g/10分~8.0g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0070】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.05/1000個の炭素、または0.15/1000個の炭素、または0.3/1000個の炭素、または0.4/1000個の炭素、~1.0/1000個の炭素、または2.0/1000個の炭素、または3.0/1000個の炭素のアルケン含有量を有する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.05/1000個の炭素~3.0/1000個の炭素、または0.05/1000個の炭素~1/1000個の炭素、または0.08/1000個の炭素~1/1000個の炭素のアルケン含有量を有する。
【0071】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.1cN~100cNの溶融弾性、および0.1g/10分~100g/10分の溶融インデックスを有する。
【0072】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、C+DLOG(I2)よりも大きいG’値を有し、式中、Cは185Paであり、Dが-90PA/log(G/10分)であり、式中、I2は、エチレン系ポリマー組成物のメルトインデックスであり、Paはパスカル(N/m2)であり、log(g/10min)は、エチレン系ポリマー組成物のメルトインデックスの対数である。
【0073】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0mm2/24.6cm3~20mm2/24.6cm3のGI200値を有する。一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0mm2/24.6cm3、または0.05mm2/24.6cm3、または0.3mm2/24.6cm3~0.7mm2/24.6cm3、5mm2/24.6cm3、または20mm2/24.6cm3のGI200値を有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0mm2/24.6cm3~20mm2/24.6cm3、または0.05mm2/24.6cm3~5mm2/24.6cm3、または0.3mm2/24.6cm3~0.7mm2/24.6cm3のGI200値を有する。
【0074】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.900g/cc~0.940g/ccの密度、および0.1g/10分~200g/10分のメルトインデックスを有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.900g/cc、または0.910g/cc、または0.920g/cc~0.925g/cc、または0.930g/ccの密度、および0.1g/10分、または2.0g/10分、または3.0g/10分~9.0g/10分、または10g/10分、または100g/10分のメルトインデックスを有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、0.900g/cc~0.940g/cc、または0.910g/cc~0.930g/cc、または0.917g/cc~0.925g/ccの密度を有し、0.1g/10分~200g/10分、または0.1g/10分~100g/10分、または0.1g/10分~20.0g/10分のメルトインデックスを有する。
【0075】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
0.05/1000個の炭素、または0.15/1000個の炭素、または0.3/1000個の炭素、または0.4/1000個の炭素、~1.0/1000個の炭素、または2.0/1000個の炭素、または3.0/1000個の炭素のアルケン含有量、および/または
(ii)0.1cN~100cNの溶融弾性、および0.1g/10分~200g/10分の溶融インデックス、および/または
(iii)C+Dlog(I2)以上のG’値(式中、Cは185Pa、Dは-90Pa/log(g/10min)である)、および/または
(iv)0.05mm2/24.6cm3~20mm2/24.6cm3のGI200値、および/または
(v)0.909g/cc~0.940g/ccの密度を有する。
【0076】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、Mw(abs)対I2の関係を有し、Mw(abs)はA+B(I2)以下であり、式中、Aは、2.65×105g/モルであり、Bは、-8.00×10-3(g/モル)/(dg/分)(以下、式A)であり、エチレン系ポリマー組成物は、G’対I2の関係を有し、式中、G’は、≧)C+Dlog(I2)以上であり、式中、Cは185Paであり、Dは-90Pa/log(g/10min)(以下、式B)である。言い換えれば、本発明のエチレン系ポリマーは、式Aからの値よりも小さいMw(abs)値、および式Bからの値よりも大きいG’値を有する。
【0077】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物とを重合形態で含む低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0078】
本発明のエチレン系ポリマー組成物は、反応器内高圧重合を介して製造される。特定の理論に縛られることなく、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物との共重合は、複数のシナリオによって起こり得ると考えられている。2つの可能なシナリオは、(i)伝播するポリマー鎖(PC)と炭化水素系分子の末端アルケン基との反応とそれに続くさらなる伝播および停止、ならびに(ii)伝播するポリマー鎖(PC)と炭化水素系分子の内部アルケン基との反応とそれに続くさらなる伝播および停止である。
【0079】
【化6】
結果として得られたエチレン系ポリマー組成物(構造III)は、炭化水素系分子に直接結合したポリエチレン鎖(LDPE)を有する。単一の末端アルケン基または複数の末端アルケン基は、炭化水素系分子に結合した単一または複数のLDPEにつながるポリマー鎖(PC)を伝播することによって攻撃される可能性がある。一実施形態では、2つ以上の末端アルケン基が共重合を受ける一方で、残りの末端アルケン基は未反応のままである。
【0080】
【化7】
結果として得られたエチレン系ポリマー組成物(構造IV)は、内部アルケン基反応点(炭化水素系分子の「m」セクション内)で炭化水素系分子に結合した2つのポリエチレン鎖を有し、これらが結合してLDPE単位を形成する。単一の内部アルケン基または複数の内部アルケン基は、炭化水素系分子と共重合する単一または複数のLDPEにつながるポリマー鎖(PC)を伝播することによって攻撃される可能性がある。一実施形態では、2つ以上の内部アルケン基が反応を受ける一方で、残りの内部アルケン基は未反応のままである。単一の内部および/もしくは末端アルケン基または複数の内部および/もしくは外部アルケン基は、炭化水素系分子と共重合する単一または複数のLDPEにつながるポリマー鎖(PC)を伝播することによって攻撃される可能性がある。一実施形態では、2つ以上のアルケン基が反応を受ける一方で、残りの内部アルケン基は未反応のままである。
【0081】
末端アルケン基(上記のシナリオI)における成長するポリマー鎖の反応器内反応およびそれに続くさらなる伝播および停止の最終生成物は、反応器後の末端アルケン基グラフト化とは異なる。反応器後の末端アルケン基のグラフト化を以下に示す。
【化8】
【0082】
反応後の末端アルケン基グラフト化では、LDPEは末端アルケン基の反応点で炭化水素系分子に結合する。別個の分子、通常は別のLDPEが中間生成物と反応して、結果として得られるエチレン系ポリマー組成物を形成する。
【0083】
内部アルケン基で成長するポリマー鎖の反応器内反応とそれに続くさらなる伝播および停止(上記のシナリオii)の最終生成物は、反応器後の内部アルケングラフト化とは異なる。反応器後の内部アルケングラフト化を以下に示す。
【化9】
【0084】
反応後の内部アルケングラフト化反応では、LDPEは内部アルケン基の反応点で炭化水素系分子に結合する。別個の分子、典型的には別のLDPEが中間生成物と反応して、結果として得られるエチレン系ポリマー組成物を形成する。
【0085】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、上記のように構造IIIおよび/または構造IVを有し、以下の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
(i)0.05/1000個の炭素、または0.15/1000個の炭素、または0.3/1000個の炭素、または0.4/1000個の炭素、~1.0/1000個の炭素、または2.0/1000個の炭素、または3.0/1000個の炭素のアルケン含有量、および/または
(ii)0.1cN~100cNの溶融弾性、および0.1g/10分~200g/10分の溶融インデックス、および/または
(iii)C+Dlog(I2)以上のG’値(式中、Cは185Pa、Dは-90Pa/log(g/10min)である)、および/または
(iv)0mm2/24.6cm3~20mm2/24.6cm3のGI200値、および/または
(v)0.909g/cc~0.940g/ccの密度、および0.1g/10分~200g/10分のメルトインデックス。
【0086】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、エチレン系ポリマー組成物の重量に基づいて、1.0重量%~5.0重量%の抽出可能なヘキサンを有する。別の実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、1.0重量%、または1.1重量%、または1.5重量%~2.6重量%、または3.5重量%、または5.0重量%から抽出可能なヘキサンを有する。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、1.0重量%~4.5重量%、または1.1重量%~3.5重量%、または1.5重量%~2.6重量%で抽出可能なヘキサンを有する。
【0087】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、ブレンド成分を含む。ブレンド成分は、炭化水素系分子の混合物を含まないポリマーである。
【0088】
一実施形態では、ブレンド成分は、炭化水素系分子の混合物を含まないエチレン系ポリマーである。適切なエチレン系ポリマーの非限定的な例としては、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/C3~C8アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/C4~C8アルファ-オレフィンコポリマー、およびエチレンと1つ以上の以下のコモノマーとのコポリマー(アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルエステル、一酸化炭素、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン、およびその任意の組み合わせ)が挙げられる。
【0089】
一実施形態では、ブレンド成分は、0.890g/cc、または0.900g/cc、または0.905g/cc、または0.910g/cc、または0.915g/cc、または0.917g/cc~0.925g/cc、または0.930g/cc、または0.935g/cc、または0.940g/cc、または1.05g/ccの密度を有するエチレン系ポリマーである。さらなる実施形態では、ブレンド成分であるエチレン系ポリマーは、0.900g/cc~0.940g/cc、または0.905g/cc~0.935g/cc、または0.910g/cc~0.930g/cc、または0.915g/cc~0.925g/cc、または0.917g/cc~0.925g/ccの密度を有する。
【0090】
一実施形態では、ブレンド成分は、0.1~200g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0091】
一実施形態では、ブレンド成分は、高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0092】
一実施形態では、ブレンド成分は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0093】
一実施形態では、ブレンド成分は、低密度ポリエチレン(LDPE)である。
【0094】
別の実施形態では、ブレンド成分は、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。さらなる実施形態では、ブレンド成分のアルファ-オレフィンは、C3~C8アルファ-オレフィン、またはC4~C8アルファ-オレフィンである。
【0095】
本開示はまた、本明細書に記載の、一実施形態の組成物、または2つ以上の実施形態の組み合わせから形成される少なくとも1つの成分を含む物品を提供する。
【0096】
一実施形態では、物品は、フィルムのコーティングである。
【0097】
一実施形態では、物品は、コーティングである。
【0098】
一実施形態では、物品は、フィルムである。
【0099】
エチレン系ポリマー組成物は、本明細書に記載されるような2つ以上の実施形態の組み合わせを含む。
【0100】
物品は、本明細書に記載されるような2つ以上の実施形態の組み合わせを含む。
【0101】
本開示はまた、本発明のエチレン系ポリマー組成物を製造するプロセスを提供する。このプロセスは、フリーラジカル重合条件下、かつ100MPAを超える圧力の重合反応器において、3つ以上の末端アルケン基を有する炭化水素系分子の混合物の存在下でエチレンモノマーを反応させることを含む。このプロセスは、本エチレン系ポリマー組成物を形成することを含む。
【0102】
一実施形態では、重合は、少なくとも1つの管状反応器または少なくとも1つのオートクレーブ反応器を含む反応器構成において行われる。
【0103】
一実施形態では、重合は、少なくとも1つの管状反応器を含む反応器構成において行われる。
【0104】
一実施形態では、重合は、少なくとも1つのオートクレーブ反応器を含む反応器構成において行われる。
【0105】
一実施形態では、エチレンモノマーは、炭化水素系分子の混合物の添加剤の少なくとも2モルppm(反応供給物中の総モノマーの量に基づく)の存在下で重合される。
【0106】
一実施形態では、重合圧力は、100MPA以上である。
【0107】
別の実施形態では、重合は、100MPA~360MPAの少なくとも1つの重合圧力で行われる。
【0108】
さらなる実施形態では、重合は、100℃~380℃の少なくとも1つの温度で行われる。
【0109】
高度に分岐したエチレン系ポリマー組成物を製造するために、高圧のフリーラジカル開始重合プロセスが使用される。2つの異なる高圧フリーラジカル開始重合プロセスの種類が知られている。第1のプロセスタイプでは、1つ以上の反応ゾーンを有する攪拌オートクレーブ反応器が使用される。オートクレーブ反応器は、通常、開始剤もしくはモノマー供給物、またはその両方のためのいくつかの注入点を有する。第2のプロセスタイプでは、ジャケット付きチューブが反応器として使用され、これは1つ以上の反応ゾーンを有する。適切であるがこれに限定されない反応器の長さは、100メートル~3000メートル(m)、または1000メートル~2000メートルであり得る。反応ゾーンの始まりは、どちらの種類の反応器とも、典型的には反応開始剤、エチレン、連鎖移動剤(またはテロマー)、コモノマー(複数可)、ならびにそれらの組み合わせのいずれかの側部注入によって定義される。高圧プロセスは、1つ以上の反応ゾーンを有するオートクレーブ反応器または管状反応器で、または各々が1つ以上の反応ゾーンを含むオートクレーブ反応器および管状反応器の組み合わせで実施することができる。
【0110】
一実施形態では、開始剤は、フリーラジカル重合が誘発されることになる反応ゾーンの前に注入される。
【0111】
一実施形態では、従来の連鎖移動剤(CTA)を使用して分子量を制御する。
【0112】
別の実施形態では、1つ以上の従来のCTAが本発明の重合プロセスに追加される。CTAの非限定的な例としては、プロピレン、イソブタン、n-ブタン、1-ブテン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、プロピオンアルデヒド、ISOPAR(ExxonMobil Chemical Co.)、およびイソプロパノールが挙げられる。一実施形態では、プロセスで使用されるCTAの量は、全反応混合物の0.01重量パーセント~10重量パーセントである。
【0113】
一実施形態では、プロセスは、変換効率を改善するためのプロセスリサイクルループを含む。
【0114】
一実施形態では、重合は、2012年10月10日に出願された国際特許出願PCT/US12/059469(WO2013059042(A1))に記載されているような管状反応器内で行われる。この特許出願は、エチレン対CTA比率を制御し、したがってポリマー特性を制御するために新鮮なエチレンを供給する代替の場所を説明するマルチゾーン反応器を記載している。国際特許出願PCT/US12/064284(2012年11月9日出願)(WO2013078018(A2))に記載されているように、新鮮なエチレンモノマーを複数の場所に同時に添加して、所望のエチレンモノマーと連鎖移動との比率を達成する。同様に、ポリマー特性を制御するために、新鮮なCTA添加点の添加を慎重に選択する。新鮮なCTAを複数の場所に同時に添加して、所望のCTAとエチレンモノマーとの比率を実現する。同様に、この用途で説明されている、添加点、および新鮮な分岐剤の量は、対象となる用途での溶融強度および性能の向上という所望の特性を最大化しながら、ゲル形成を制御するように制御される。新鮮な分岐剤を複数の場所に同時に添加して、所望の分岐剤とエチレンモノマーとの比率を達成する。分子量分布を広げ、かつポリマーの溶融強度を高めるための分岐剤および/またはカップリング剤の使用は、ゲル形成、反応器のファウリング、プロセスの不安定性などの潜在的な悪影響を伴わず、またはそれらを最小化し、分岐剤の量を最小化する、製品特性の所望の変化を達成するために、反応器システムに沿ったCTAおよび分岐剤の分布にさらなる要件を課すことになる。
【0115】
一実施形態では、重合は、少なくとも1つの管状反応器内で行われる。マルチ反応器システムでは、オートクレーブ反応器が管状反応器に先行する。新鮮なエチレン、新鮮なCTA、および新鮮な分岐剤の添加点および量は、反応ゾーンへの供給物およびまたは反応ゾーンにおける、エチレンモノマーに対するCTAおよびエチレンモノマーに対する分岐剤の所望の比率を達成するように制御される。
【0116】
一実施形態では、分枝剤は、圧縮段階を介して反応ゾーンに直接供給されるか、または反応ゾーンへの供給に直接供給される。反応および/または反応ゾーンへの供給点の選択は、加圧エチレンおよび/または溶媒へのポリエンの溶解度、加圧エチレンへのポリエンの縮合、および/または開始剤の注入前に反応器の内容物を加熱するために使用される予熱器での分岐剤の早期重合によるファウリングを含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存する。
【0117】
一実施形態では、分枝剤は、反応ゾーンに直接供給されるか、または反応ゾーンへの供給に直接供給される。
【0118】
一実施形態では、分岐剤は、反応ゾーンの入口で、フリーラジカル開始剤の添加の前に、または添加と同時に添加される。別の実施形態では、ポリエンの良好な分散を可能にするために、開始剤の添加の前に分岐剤が添加される。
【0119】
一実施形態では、分岐剤は、反応ゾーン1にのみ供給される。
【0120】
一実施形態では、後続の反応ゾーンに添加されるポリエンの量(質量)と比較して、質量でより多くの分岐剤が反応ゾーン1に添加される。
【0121】
一実施形態では、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの10パーセント~100パーセントである。さらなる実施形態では、第1の反応ゾーンに供給されるエチレンは、重合に供給される全エチレンの20パーセント~80パーセント、さらに25パーセント~75パーセント、さらに30パーセント~70パーセント、さらに40パーセント~60パーセントである。
【0122】
一実施形態では、プロセスは、少なくとも1つの管状反応器を含む反応器構成において行われる。さらなる実施形態では、各反応ゾーンにおける最高温度は、150℃~360℃、さらに170℃~350℃、さらに200℃~340℃である。
【0123】
一実施形態では、反応器の第1の入口での重合圧力は、100MPA~360MPa、さらに150MPA~340MPa、さらに185MPA~320MPaである。
【0124】
一実施形態では、「反応ゾーンiに対する供給物中のCTAの濃度」と「反応ゾーン1に添加された供給物中のCTAの濃度」との比率は、1以上である。
【0125】
一実施形態では、「反応ゾーンiに対する供給物中のCTAの濃度」と「反応ゾーン1に添加された供給物中のCTAの濃度」との比率は、1未満、さらに0.8未満、さらに0.6未満、さらに0.4未満である。
【0126】
一実施形態では、反応ゾーンの数は3~6の範囲である。
【0127】
エチレン系ポリマー組成物の製造に使用されるエチレンモノマーの非限定的な例としては、新鮮なエチレンのみが本発明のポリマーを作製するために使用されるように、ループリサイクルストリームから極性成分を除去することによって、または反応システム構成を使用することによって得られる精製エチレンが挙げられる。エチレンモノマーのさらなる例としては、リサイクルループからのエチレンモノマーが挙げられる。
【0128】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、エチレンモノマー、炭化水素系分子の混合物(構造Iまたは構造II)、および1つ以上のコモノマー、好ましくは1つのコモノマーを含む。適切なコモノマーの非限定的な例としては、α-オレフィン、アクリレート、一酸化炭素、メタクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸のモノエステル、マレイン酸のジエステル、無水物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルキルシラン(各々が20個以下の炭素原子を有する)が挙げられる。α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子を有するか、あるいは代替的に、α-オレフィンコモノマーは、4~8個の炭素原子を有する。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、唯一のモノマー単位として、エチレンモノマーおよび少なくとも1つの炭化水素系分子(構造Iまたは構造II)を含む。
【0130】
フリーラジカル開始剤
一実施形態では、フリーラジカル開始剤を使用して、本発明のエチレン系ポリマー組成物を製造する。有機過酸化物の非限定的な例としては、環状過酸化物、ジアシル過酸化物、ジアルキル過酸化物、ヒドロ過酸化物、ペルオキシカーボネート、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-t-ブチル過酸化物、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-2-ヘキサノエート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、これらの有機ペルオキシ開始剤は、重合性モノマーの重量に基づいて、0.001重量%~0.2重量%の量で使用される。
【0131】
一実施形態では、開始剤は、重合の少なくとも1つの反応ゾーンに添加され、開始剤は、255℃超または260℃超の「1秒での半減期温度」を有する。
【0132】
別の実施形態では、そのような開始剤は、320℃~350℃のピーク重合温度で使用される。
【0133】
さらなる実施形態では、開始剤は、環構造に組み込まれた少なくとも1つの過酸化物基を含む。開始剤の非限定的な例としては、TRIGONOX301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペロキソナン)およびTRIGONOX311(3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)(両方ともAkzo Nobelから入手可能)、ならびにUnited Initiatorsから入手可能なHMCH-4-AL(3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトロキソナン)が挙げられる。
【0134】
一実施形態では、管状反応器の構成は、3~5つの反応ゾーンを含み、新鮮なエチレンが管状反応器の前面に供給され、リサイクルされたエチレンが管状反応器の側面に供給される。新鮮なCTAが管状反応器の側面に供給される。炭化水素系分子の混合物は、管状反応器の前部に供給され、管状反応器の予熱後に炭化水素系分子の混合物が直接供給される。
【0135】
添加剤
一実施形態において、組成物は、1種以上の添加剤を含む。添加剤の非限定的な例としては、安定剤、可塑剤、帯電防止剤、顔料、染料、核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、加工助剤、煙抑制剤、粘度制御剤、および抗遮断剤が挙げられる。ポリマー組成物は、例えば、エチレン系ポリマー組成物の重量に基づいて、1つ以上の添加剤の合計重量の10パーセント未満を含み得る。
【0136】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、1つ以上の安定剤、例えば、IRGANOX1010、IRGANOX1076、およびIRGAFOS168などの酸化防止剤で処理される。一般に、エチレン系ポリマー組成物は、押出または他の溶融プロセスの前に、1つ以上の安定剤で処理される。
【0137】
一実施形態では、エチレン系ポリマー組成物は、炭化水素系分子の混合物(構造Iまたは構造II)を有する本発明のエチレン系ポリマーに加えて、少なくとも1つの他のポリマーをさらに含む。エチレン系ポリマー組成物と他のポリマーとのブレンドおよび混合物を調製し得る。本発明のポリマーとブレンドするのに好適なポリマーには、天然および合成ポリマーが挙げられる。ブレンド用の例示的なポリマーとしては、プロピレン系ポリマー、エチレン/アルケンアルコールコポリマー、ポリスチレン、耐衝撃性改質ポリスチレン、ABS、スチレン/ブタジエンブロックコポリマーおよびそれらの水素化誘導体(SBSおよびSEBS)、および熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。
【0138】
本エチレン系ポリマー組成物とブレンドするための他のエチレン系ポリマー組成物としては、オレフィンプラストマーおよびエラストマー(例えば、商品名AFFINITY PlastomersおよびENGAGE Elastomers(The Dow Chemical Company)およびEXACT(ExxonMobil Chemical Co.)で入手可能なポリマー)などの均質ポリマーが挙げられ、プロピレン系コポリマー(例えば、VERSIFY Plastomers&Elastomers(The Dow Chemical Company)およびVISTAMAXX(ExxonMobil Chemical Co.)の商品名で入手可能なポリマー)も、本発明のポリマーを含むブレンドの成分として有用である可能性がある。
【0139】
用途
本開示のエチレン系ポリマー組成物は、単層および多層フィルム;ブロー成形、射出成形、または回転成形物品などの成形物品;コーティング;繊維;織布、不織布、ケーブル、パイプ、グリーンハウスフィルム、サイロバッグフィルム、照合収縮フィルム、食品包装フィルム、またはフォームを含むがこれらに限定されない有用な物品を製造するために、様々な従来の熱可塑性製造プロセスで使用することができる。
【0140】
エチレン系ポリマー組成物は、透明性収縮フィルム、照合収縮フィルム、キャストストレッチフィルム、サイレージフィルム、ストレッチフード、シーラント、およびおむつバックシートを含むがこれらに限定されない様々なフィルムに使用され得る。他の好適な応用としては、ワイヤおよびケーブル、ガスケットおよびプロファイル、接着剤、履物構成要素、自動車内装部品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
出願人は、反応器内で使用される構造Iまたは構造IIのいずれかを有する炭化水素系分子の混合物(nは3よりも大きい(またはnが5よりも大きい)が、増加した数の分岐点を有するエチレン系ポリマー組成物をもたらしたが、それが、溶融レオロジーの大きな変化をもたらすことを予期せず発見した。エチレン系ポリマー組成物のGPC、溶融レオロジーデータ、および改善された溶解性に見られるように、より高い分岐レベルは、エチレン系ポリマー組成物の反応器のファウリングおよびゲル形成の減少をもたらす。結果として得られたエチレン系ポリマー組成物はまた、例えばPPG-AEMAを含む他のタイプの分岐剤で変性された他のいくつかのポリマー組成物と比較して、改善された(低減された)味および臭気性能を有する。
【実施例】
【0142】
市販の試薬
LDPE5004i、PG7004、PT7007、およびPT7009は各々、オートクレーブ反応器内で製造されたLDPEエチレンホモポリマーである。各々、The Dow Chemical Companyから入手可能である。Isopar E、Isopar H、およびIsopar Lは、Exxon Chemicalsから入手可能である。
【0143】
ポリブタジエン(添加剤A:Nisso PB B-1000、添加剤B:Nisso PB B-2000)は、日本曹達株式会社から供給された。これらの材料の特性を以下の表1に示す。
【表1】
【0144】
1.重合I:オートクレーブ反応器
溶液の調製
非対称ジエン比較試料I:以下に示すメタクリル酸イソプレニル(IPMA)
【化10】
を316ステンレス鋼の供給容器に装てんし、酢酸エチルで希釈して、7.8重量%の最終濃度を生成した。この容器は、使用前に3時間窒素でパージされ、70psigの窒素パッドの下に保たれた。
【0145】
発明例I:添加剤Aを316ステンレス鋼供給容器に装てんし、Isopar(商標)Eで希釈して、1.7重量%の最終濃度を生成した。この容器は、使用前に3時間窒素でパージされ、操作中は70psigの窒素パッドの下に保たれた。
【0146】
この溶液の様々な供給レベルを反応器に導入して、ポリマー試料を製造した。添加剤Bは、添加剤Aと同じ様式で反応器に添加された。
【0147】
開始剤:第2の316ステンレス鋼供給容器内で、過酸化物開始剤tert-ブチルペルオキシアセテート(TPA、ISOPAR(商標)Hの20重量%溶液)、および過酸化物開始剤ジ-tert-ブチル過酸化物(DTBP、ISOPAR(商標)Hの20重量%溶液)をISOPAR Eと組み合わせて、1500質量ppmのTPAおよび415質量ppmのDTBP(4:1モルTPA/モルDTBPの比率)を生成した。容器は、使用前に70psigの窒素で5回パッドを入れ、パッドを外し、操作中は窒素パッドの下に保たれた。
【0148】
エチレンを5500gm/時間、193MPaの圧力で、攪拌(1600rpm)300mL高圧CSTR反応器に注入し、外部加熱ジャケットを設定して、内部反応器温度を220℃で制御した。プロピレン(CTA)を6.2MPaの圧力でエチレンストリームに添加し、MIが約4g/10分の最終生成物を生成する速度で制御し、それから、混合物を193MPaに圧縮して注入した。適切な添加剤溶液の溶液は、高圧ポンプを介して193MPaの圧力で直接反応器にポンプで送られた。過酸化物開始剤溶液を、エチレン転化率を12%近くに制御する速度で、側壁を介して193MPAの圧力で反応器に直接添加した。
【0149】
各実験の重合手順の詳細を以下の表2に示す。
【表2】
【0150】
オートクレーブ反応器内で生成されたエチレンホモポリマーの特性は、以下の表3に提供される。
【表3】
【0151】
2.溶融強度実験
上記に開示された重合Iのオートクレーブ重合条件下で追加の試料を作製した。特に、メルトインデックス(MI)を一定に保持しながら(4g/10分またはその近く)、添加剤Aおよび添加剤Bの両方の供給速度を変動させた。出願人は、メルトインデックスを一定に保ちながら、添加剤Aまたは添加剤Bのいずれかの量を増加させると、ポリマーの溶融強度が増加することを発見した。溶融強度実験の結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0152】
3.押出コーティング
ポリマー組成物、対照、比較試料I、および発明例Iの各々は、熱安定性および分解生成物を決定するために、押出コーティング、温度、および剪断に供される。すべてのコーティング実験を、Black-Clawson押出コーティングラインで実行した。押出機には、3.5インチ、30:1L/D、4:1圧縮比のシングルフライトスクリューと2つの螺旋状マトック混合セクションが装備されていた。91cm(36インチ)の公称ダイ幅は、61cm(24インチ)のオープンダイ幅にデッキされた(ダイの外縁の周りのダイ出口でダイ内の流れをブロックするための金属ダムであり、ダイ幅を減らしてダイからのポリマーの流出を減らすために使用された)。押出コーティングでは、デッケルは、スロットダイコーターのコーティング幅または押出ダイの押出幅を設定するダイインサートである。これは、材料がダイを出るときに流れを制限することによって機能する。
【0153】
押出コーティングの評価については、すべての樹脂に一定の15.2cm(6インチ)のエアギャップを設定した。ダイギャップは20milに設定されたが、一定のコーティング厚さを維持するためにわずかな調整が必要とされた。押出機の各ゾーンの温度は、それぞれ177、232、288、および316℃(ダイ)(350、450、550、および600°F(ダイ))であり、318℃(605°F)の目標溶融温度に至った。スクリュー速度は90rpmであり、250lb/時間の出力速度をもたらす。ライン速度は440ft/min(fpm)であり、結果として、50lb/reamのKRAFT紙に1.3milのコーティングが施された(KRAFT紙の幅は61cm(24インチ)、無漂白であった)。樹脂を剥離ライナー上にコーティングすることによって、分析試験用のポリマーフィルムの自立型細片(例えば、HS-SPME)を得た。溶融ポリマーカーテンが紙基板に接触する前に、幅61cm(24インチ)の一片のシリコンコーティングされた剥離ライナーをポリマーコーティングと紙基板との間に挿入して、紙と剥離ライナーが付着していない「ポリマーコーティング/剥離ライナー/クラフト紙」構成を形成した。「ポリマーコーティング/剥離ライナー」のサブ構成は、食品グレードのアルミニウム箔で巻かれ、包まれた。固化したポリマーコーティングを、分析試験のために剥離ライナーから剥がした。
【0154】
ネックインの量(実際のコーティング幅とデッケル幅(61cm)の差)は、毎分440フィートと毎分880フィート(fpm)のライン速度で測定され、それぞれ「1.3mil」と「0.65mil」のコーティング厚をもたらした。押出機のアンペア数と馬力を記録した。背圧弁の位置を変えずに、各ポリマーの背圧の量も記録した。ドローダウンは、ポリマーコーティングのエッジの欠陥(典型的には、ポリマーコーティングのエッジに沿って振動するポリマーコーティングの幅)に気付いたライン速度、または溶融カーテンがダイから完全に引き裂かれるライン速度である。エッジの欠陥またはウェブの裂け目が認められるまでライン速度を上げることにより、45rpmのスクリュー速度であるすべての樹脂の減速ドローダウン(RRDD)を測定した。押出コーティングの結果を以下の表5に示す。
【表5】
【表6】
【0155】
表3および5~6に見られるように、発明例Iは、優れた溶融強度(MS)、優れた熱安定性(低いOSおよびVOCレベル)、および優れた押出コーティング特性を有する。発明例Iは、比較試料Iよりも溶融加工中により熱的に安定であり、加工中に刺激臭を生じ、かつ食品に悪臭および悪味を与える可能性もある化学種に分解しないことに留意されたい。
【0156】
4.重合II:管状反応器
比較試料A’および比較試料B’
重合は、3つの反応ゾーンを有する管状反応器で実施された。各反応ゾーンにおいて、加圧水は、この水を反応器のジャケットを通して循環させることにより、反応媒体を冷却および/または加熱するために使用された。入口圧力は222MPaであり、管状反応器システム全体にわたる圧力降下は約30MPaであった。各反応ゾーンは、1つの入口および1つの出口を有した。各入口流は、前の反応ゾーンからの出口流、および/または添加されたエチレンに富む供給流からなった。非変換エチレンおよび他のガス状成分(反応器出口内の)は、高圧リサイクルおよび低圧リサイクルによってリサイクルされ、ブースター、一次およびハイパー(二次)圧縮機によって圧縮および分配された。有機過酸化物(tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートおよびジ-tert-ブチルペルオキシド)を各反応ゾーンに供給した。プロピオンアルデヒド(PA)は連鎖移動剤(CTA)として使用され、低圧および高圧のリサイクルフローに由来する各反応ゾーン入口に存在していた。新鮮なPAは、それぞれ0.8と0.2に相当する比率で第2および第3の反応ゾーンにのみ添加された。新鮮なエチレンは第1の反応ゾーンに向けられた。
【0157】
反応ゾーン1内で第1のピーク温度(最高温度)に達した後、反応媒体を加圧水を用いて冷却した。反応ゾーン1の出口で、冷たいエチレンに富む供給物を注入することによって、反応媒体をさらに冷却し、有機過酸化物系を供給することによって、反応を再開した。このプロセスを第2の反応ゾーンの終わりで繰り返して、第3の反応ゾーンでのさらなる重合を可能にした。ポリマーは、約230~250℃の溶融温度で一軸スクリュー押出機を使用して、押し出され、ペレット化された(グラム当たり約30ペレット)。3つの反応ゾーンに対するエチレンに富む供給流の重量比は、1.00:0.80:0.20であった。内部プロセス速度は、第1、第2、および第3の反応ゾーンでそれぞれ約12.5、9、および11m/秒であった。追加情報は、以下の表7~10に見つけることができる。
【0158】
発明例1’
重合は、比較試料A’について上で論じたように、3つの反応ゾーンを有する管状反応器で実施された。すべてのプロセス条件は、発明例1’を除いて、比較試料A’の場合と同じであり、添加剤Aが第1のゾーンに添加された。量は、表8に見つけることができる。追加情報は、表7および9に見つけることができる。
【0159】
発明例2’
重合は、発明例1’について上で論じたように、3つの反応ゾーンを有する管状反応器で実施された。追加の添加剤Aが第1のゾーンに供給されたことを除いて、すべてのプロセス条件は発明例1’と同じである。追加情報は、以下の表7~9に見つけることができる。
【0160】
発明例3’
重合は、発明例1’について上で論じたように、3つの反応ゾーンを有する管状反応器で実施された。追加の添加剤Aが第1のゾーンに供給され、かつ追加のプロピオンアルデヒド(PA)が材料の溶融インデックスを調整するために供給されたことを除いて、すべてのプロセス条件は発明の実施例1’と同じである。追加情報は、以下の表7~9に見つけることができる。
【表7】
【表8】
【表9】
【0161】
表9に示すように、比較試料(CS)PG7004、PT7007、PT7009は、各々の式Aの値と比較してより高いMw(abs)を有し、それによって、比較試料PG7004、PT7007、PT7009がオートクレーブ構成において製造されていることを示している。比較試料A’、B’および発明例1’、2、’および3’は各々、管状反応器構成における重合を示す式A値未満のMw(abs)値を有する。PG7004、PT7007、PT7009、および発明例(IE)1’、2’、3’は各々、式Bから計算されたそれぞれの値よりも高いG’値を有し(式Bを「合格」)、比較試料A’、B’(添加剤なし)に示されるように(A’、B’が式Bに示されるG’要件を満たしていない(式Bに「不合格」))、添加剤なしで、同じ温度/圧力反応器条件下での管状反応器において、可能となるであろうよりも大きく、長い分岐を示す。発明の例1’、2’、3’は、強化された分岐(すなわち、式Bを合格)と管状反応器内での生成(すなわち、式Aを合格)との組み合わせを予期せず示し、それにより、低エネルギー効率生産プロセスでの分岐ポリマーを提供する。
【0162】
発明例は、複数の反応器タイプにおいて添加剤(添加剤A)の添加により強化された分岐を示す。強化された分岐により、優れた溶融弾性および溶融強度を有する材料が得られた。これは、押出コーティングを含む様々なポリマー用途で有利である。特に、管状反応器での添加剤の使用は、オートクレーブ反応器で製造された材料と比較して、発明例における溶融強度を可能にする。結果として得られたエチレン系ポリマー組成物はまた、他のタイプの分岐剤で修飾された他のポリマー組成物と比較して、改善された(低減された)味および臭気性能を有していた。
【0163】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範囲に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
本出願の発明の例として、以下のものが挙げられる。
[1] 高圧(100MPa以上)フリーラジカル重合によって形成された、エチレン系ポリマー組成物であって、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物とを反応させることによって形成され、各炭化水素系分子が3つ以上の末端アルケン基を含む、エチレン系ポリマー組成物。
[2] 前記炭化水素系分子が構造Iを有し、
【化11-1】
式中、nが3~160であり、mが0~50である、上記[1]に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[3] 構造Iに基づく前記炭化水素系分子の混合物が、1.2~10の分子量分布を有する、上記[2]に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[4] 前記炭化水素系分子が構造IIを有し、
【化11-2】
式中、nが3~160であり、mが0~50であり、xが0~160であり、yが0~50である、上記[1]に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[5] 構造IIに基づく前記炭化水素系分子の混合物が、1.2~10の分子量分布を有する、上記[4]に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[6] 前記エチレン系ポリマー組成物が、以下の関係を満たすG’値を有し、
G’≧C+Dlog(I
2
)
式中、Cが185パスカルであり、Dが-90Pa/log(g/10分)であり、
I
2
が、グラム/10分(g/10分)で測定された、前記エチレン系ポリマー組成物のメルトインデックスである、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[7] 前記エチレン系ポリマー組成物が、前記エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて、95重量%~99.98重量%のエチレンを重合形態で含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[8] 前記エチレン系ポリマー組成物が、前記エチレン系ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.02重量%~5.0重量%の前記炭化水素系分子の混合物を重合形態で含む、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[9] 前記エチレン系ポリマー組成物が、0.10g/10分~200g/10分のメルトインデックス(I
2
)を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[10] 前記エチレン系ポリマー組成物が、0.05/1000個の炭素~3.0/1000個の炭素のアルケン含有量を有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[11] 前記エチレン系ポリマー組成物が、0mm
2
/24.6cm
3
~20mm
2
/24.6cm
3
のGI200値を有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[12] 前記エチレン系ポリマー組成物が、0.909g/cc~0.940g/ccの密度を有する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[13] 前記エチレン系ポリマー組成物が、エチレンモノマーと、前記炭化水素系分子の混合物とを重合形態で含む、低密度ポリエチレンである、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[14] ブレンド成分をさらに含み、前記ブレンド成分が、前記炭化水素系分子の混合物を含まない、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー組成物。
[15] 上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の組成物を含む物品。
[16] 前記物品が、フィルム、コーティング、ケーブル用のコーティング、ワイヤ用のコーティング、およびコーティングされたシートからなる群から選択される、上記[15]に記載の物品。
[17] プロセスであって、
フリーラジカル重合条件下、かつ100MPa以上の圧力の重合反応器において、エチレンモノマーと、炭化水素系分子の混合物とを反応させることであって、各炭化水素系分子が3つ以上の末端アルケン基を含む、反応させることと、
エチレン系ポリマー組成物を形成することと、を含む、プロセス。
[18] エチレンモノマーを炭化水素系分子の混合物と反応させることであって、前記炭化水素系分子の各々が、構造Iを有し、
【化11-3】
式中、nが3~160であり、mが0~50である、反応させることと、
エチレン系ポリマーを形成することと、を含む、上記[17]に記載のプロセス。
[19] 前記重合が、少なくとも1つの管状反応器を含む反応器構成において行われる、上記[17]~[18]のいずれか一項に記載のプロセス。
[20] 前記重合が、少なくとも1つのオートクレーブ反応器を含む反応器構成において行われる、上記[17]~[18]のいずれか一項に記載のプロセス。