(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-20
(45)【発行日】2025-03-03
(54)【発明の名称】導電コイル、ステータ、アキシャルフラックス電気機械及び方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20250221BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20250221BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20250221BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20250221BHJP
H02K 15/085 20060101ALI20250221BHJP
H02K 15/04 20250101ALI20250221BHJP
H02K 15/12 20250101ALI20250221BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K3/28 Z
H02K3/18 Z
H02K21/24 M
H02K15/085
H02K15/04
H02K15/12
(21)【出願番号】P 2021544709
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 GB2020050211
(87)【国際公開番号】W WO2020157501
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521336255
【氏名又は名称】サイエッタ グループ ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】SAIETTA GROUP PLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ロジャー ラインズ
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189697(JP,A)
【文献】特表2001-523438(JP,A)
【文献】特開2010-142035(JP,A)
【文献】特開2015-133787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K3/00-3/28
15/00-15/02
15/04-15/16
21/00-21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束ガイド及び分布巻線を有するヨークレスアキシャルフラックス電気機械ステータ(1)の導電コイル(12;120)であって、前記導電コイル(12;120)は、互いに直列接続され、周方向において重なる一対の導電素子(120、120’)を備え、
各導電素子(120、120’)は、
第1の能動部(121a)及び第2の能動部(121b)を備える一対の能動部(121a、121b)であって、各能動部(121a、121b)は、電気機械(100)の回転軸線に対して
垂直な径方向に延びる、一対の能動部(121a、121b)と、
各能動部(121a、121b)の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分(131a、131b)であって、前記第2の能動部(121b)は、前記第1の能動部(121a)から周方向に離隔し軸線方向にオフセットしている、複数の巻線ターン部分(131a、131b)と、を備え、
前記導電コイル(12)は、前記導電コイル(12)を電源に接続する第1及び第2の接続部分(15、16)をさらに備える導電コイル。
【請求項2】
請求項1に記載の導電コイルにおいて、使用時に、前記第1及び第2の径方向に延びる能動部に沿って径方向で逆方向に電流が流れる導電コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電コイルにおいて、各能動部はさらに、複数の周方向に積層された巻線ターン部分を含む導電コイル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電コイルにおいて、前記第1及び第2の
径方向に延びる能動部の前記巻線ターン部分は、内半径に位置付けられた近位端と、外半径に位置付けられた遠位端とを有し、使用時に
前記能動部対の前記第1及び第2の径方向に延びる能動部に沿って径方向で逆方向に
電流が流れるように、前記巻線ターン部分の前記近位端は内側ループ部により接続され、前記遠位端は外側ループ部により接続される導電コイル。
【請求項5】
請求項4に記載の導電コイルにおいて、前記外側ループ部は、回転軸線と
平行な該コイルの外側部分を形成するよう構成される導電コイル。
【請求項6】
請求項5に記載の導電コイルにおいて、各外側ループ部は、前記外側部分が半円板状又は矩形の表面を形成するように
半円形又は矩形の断面を含む導電コイル。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、前記外側ループ部は、該コイルの
インボリュート部分を形成するよう構成される導電コイル。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、前記内側ループ部は、回転軸線と
平行なコイルの内側部分を形成するよう構成される導電コイル。
【請求項9】
請求項8に記載の導電コイルにおいて、各内側ループ部は、前記内側部分が半円板状又は矩形の表面を形成するように
半円形又は矩形の断面を含む導電コイル。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、前記内側ループ部は、該コイルの
インボリュート部分を形成するよう構成される導電コイル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、相互に直列接続された複数対の能動部を備え、隣接する能動部対は、磁束ガイドを収納する第2のタイプの空間を画定するように周方向に重なり、前記第2のタイプの空間は、該コイルの異なる能動部対の2つの隣接する能動部間の周方向空間である導電コイル。
【請求項12】
請求項11に記載の導電コイルにおいて、能動部対の数は2の整数倍である導電コイル。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の導電コイルにおいて、使用時に磁束ガイド用の前記第2のタイプの空間のうちの1つにより分離された該コイルの隣接する能動部に沿って同じ方向に電流が流れるように構成される導電コイル。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、前記複数対の能動部は、一体的に形成されるか、又は1対の能動部をそれぞれが含む複数の別個の素子を直列接続することにより形成される導電コイル。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、前記第1及び第2の接続部分は回転軸線と平行に延びる導電コイル。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の導電コイルにおいて、該コイルの前記第1及び第2の接続部分は、該コイルの径方向外側端に近接して設けられる導電コイル。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の複数の導電コイルを備える、アキシャルフラックス電気機械のステータであって、前記複数の導電コイルは該ステータの周囲に周方向に分配されるステータ。
【請求項18】
請求項17に記載のステータを備えるアキシャルフラックス電気機械であって、前記ステータの両側に配置された1対の対向するロータを備えるアキシャルフラックス電気機械。
【請求項19】
磁束ガイド及び分布巻線を有するアキシャルフラックス電気機械のステータを製造する方法であって、
複数の導電コイルをステータハウジングの周囲に周方向に分配されるように該ステータハウジング内に位置決めすることであって、各導電コイルは、互いに直列接続され、周方向において重なる一対の導電素子を備え、
各導電素子は、第1の能動部及び第2の能動部を備える一対の能動部であって、各能動部は、前記電気機械の回転軸線に対して
垂直な径方向に延びる、一対の能動部と、
各能動部の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分であって、前記第2の能動部は、前記第1の能動部から周方向に離隔し軸線方向にオフセットしている、複数の巻線ターン部分と、を備える、
ことと、
前記複数の導電コイルが電源に接続できるように前記複数の導電コイルを接続手段に接続することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルフラックス電気機械、特にアキシャルフラックス電気機械のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機及び発電機等の電気機械は、既に極めて広く用いられている。しかしながら、内燃機関を動かす化石燃料への依存及び化石燃料が引き起こす汚染に対する懸念から、電気機械の使用を新たな用途に広げ且つ既存の用途での電気機械の使用を拡大するよう政治的且つ商業的圧力が生じている。電気機械は、電気自動車、オートバイ、船、航空機等の乗り物で用いられることが多くなっている。これらは、エネルギー発電用途、例えば風車の発電機でも用いられる。
【0003】
これらの用途の需要を満たすためには、速度及びトルク等の適当な性能特性と高効率との両方を有する電気機械を設計する必要がある。電気機械の効率は、ほとんど全ての用途で決定的に重要であり、例えば、電気車両の範囲を広げると共に必要電池容量を減らすことができる。必要電池容量を減らすと、車両の重量をさらに減らすことができ、これがさらなる効率向上につながる。
【0004】
1つの既知のタイプの電気機械はアキシャルフラックス機械である。その名前の通り、アキシャルフラックス機械の動作中に切断される磁束線の方向は、機械の回転軸線と平行である。これは、機械の動作中に切断される磁束線の方向が機械の回転軸線に対して垂直であるラジアルフラックス機械とは対照的である。ラジアルフラック機械の方が一般的だが、アキシャルフラックス機械は、そのフォームファクタ(軸線方向に比較的小さい)及び性能特性(高いトルク対重量比等)が高く評価されるような一部の用途で用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集中巻構成を利用するヨークレスアキシャルフラックス機械の一例は、特許文献1に記載されている。アキシャルフラックス機械のステータアセンブリは、電気巻線が巻かれた強磁性体をそれぞれが有する周方向に分配された別個のステータティースを含む。これを、ヨークレスセグメント化アーマチュア機械と一般に称する。ステータハウジングの径方向内側に延びる細長状部分は、冷却用であり、ステータティースを収納する構造を提供するものである。この種のアキシャルフラックス機械は、高効率を達成可能だが、特により広い動作パラメータ範囲で効率を向上させることが望ましい。さらに、ハウジングの径方向内側に延びる細長状部分は、別個のステータティースを収納する何らかの構造を提供するが、ステータハウジング内への各ステータティースの正確な位置決め及び接合に関連する困難があり、強磁性体を含むボビン状構造に各ステータティースを巻き付けなければならない。より容易且つ正確に組み立てることができるステータを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載する実施形態は、高い機械効率、製造の容易性、及び冷却を助けるコイルからステータハウジングへの良好な熱伝導をもたらす、複数の導電コイルを備えたアキシャルフラックス機械の導電コイル及びステータを提供する。
【0008】
本開示において、特に限定のない限り、「径方向」、「軸線方向」、「周方向」、及び「角度」等の用語は、電気機械の回転軸線の方向がz軸と平行である円筒極座標系(r,θ,z)に関して用いられる。すなわち、「軸線方向」は回転軸線と平行である(すなわちz軸に沿う)ことを意味し、「径方向」は回転軸線に対して垂直な任意の方向を意味し、「角度」は方位角方向の角度θであり、「周方向」は回転軸線周りの方位角方向を指す。
【0009】
「径方向に延びる」及び「軸線方向に延びる」等の用語は、ある特徴が正確に径方向又は正確に軸線方向と平行でなければならないことを意味すると理解すべきでない。例えば、磁界で通電導体が受けるローレンツ力は、電流の方向が磁束の方向に対して正確に垂直である場合に最大であることが既知であるが、通電導体は、90°未満の角度でもローレンツ力を受ける。したがって、平行方向及び垂直方向から外れても、根底にある動作原理は変わらない。
【0010】
本発明は、以下で参照する独立請求項に定義されている。好ましい特徴は従属請求項に記載される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、分布巻線を有するヨークレスアキシャルフラックス電気機械ステータの導電コイルが提供される。導電コイルは、第1の能動部及び第2の能動部を備える。各能動部は、電気機械の回転軸線に対して実質的に垂直な略径方向に延び、且つ各能動部の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法(major dimension)を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分を含む。第2の能動部は、第1の能動部から周方向に離隔し軸線方向にオフセットしている。
【0012】
このタイプの導電コイルでは、導電コイルを用いて構成されたステータの製造が容易になると共に、高い機械効率が得られる。例えば、導電コイルは、ラミネーションパック等の磁束ガイドを配置することができる構造を形成することができる。これにより、ステータを迅速且つ高精度に製造することができることで、電気機械の効率が向上する。さらに、能動部の軸線方向オフセットは、軸線方向及び周方向のコイルの積層を容易にする。軸線方向に積層された巻線ターンの使用により、能動部の表皮及び近接効果も軽減される。これは、各巻線ターンの断面が小さくなり、巻線ターンが直列接続されているとすれば、電流が各能動部の軸線方向全長にわたって流れるよう確定的に制御されるからである。これにより、加熱が減り鎖交磁束が向上する。
【0013】
この第1の態様によれば、各導電コイルは、相互に直列接続された複数対の能動部を任意に備え得る。隣接する能動部対は、磁束ガイドを収納する第2のタイプの空間を画定するように周方向に重なり得る。第2のタイプの空間は、コイルの異なる能動部対の2つの隣接する能動部間の周方向空間である。周方向空間は、それを画定する能動部のように実質的に径方向に延びており、径方向に細長状であり得る。コイル毎にこのような能動部対を追加する毎に、毎極毎相のスロット数が1つ増えるのが有利である。毎極毎相のスロット数が多いほどより正確に正弦波状の磁束密度を得ることができるので、これにより損失を減らすことができ、したがって効率を向上させることができる。さらに、コイル毎の能動部数を機械の半径に従って変えることができる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、ヨークレスアキシャルフラックス電気機械のステータの導電コイルが提供される。導電コイルは、2対の能動部を備える。各能動部は、電気機械の回転軸線に対して実質的に垂直に略径方向に延びる。各対の略径方向に延びる能動部は、周方向に離隔する。2対の能動部は、磁束ガイドを収納する第2のタイプの空間を画定するように部分的に周方向に重なる。第2のタイプの空間は、コイルの異なる能動部対の2つの隣接する能動部間の周方向空間である。周方向空間は、それを画定する能動部のように実質的に径方向に延びており、細長状であり得る。
【0015】
第2のタイプによる導電コイルでは、導電コイルを用いて構成されたステータの製造が容易になると共に、高い機械効率が得られる。例えば、複数のこのようなコイルがステータリングの周囲に周方向に分配される場合、得られるコル構造は、磁束ガイドを設けることができる(第2のタイプの)周方向に分配された空間を有する。これにより、ステータを迅速に、多数の磁束ガイドと共に、且つ高精度に製造することができることで、電気機械の効率が向上する。さらに、各コイルは(少なくとも)2対の離隔した能動部を有するので、コイルは毎極毎相(少なくとも)2スロットをステータに与え、これはステータにより発生する磁束密度をより正弦波に近く高調波成分が少ないものにする。正弦波状に変化する電流では、電気機械が発生する平均トルクは、基本磁界成分の相互作用から得られ、高調波成分からは得られない。これが有利なのは、周方向の空間磁束密度の高調波成分によりロータの永久磁石の渦電流が大きくなると、高損失及び加熱の増加が生じるからである。さらに、巻線起磁力分布に高調波成分が追加されると、磁束ガイドにおける損失の増加が生じ得る。さらにまた、コイル毎の能動部対の数は、機械の半径に従って且つ/又は各対を形成する能動部間のスパン(ピッチ)の選択により変えることができる。したがって、特に機械のサイズの増加に伴い、コイル毎にこのような能動部対を追加する毎に毎極毎相のスロット数が1つ増えるので、より高い効率を得ることができる。
【0016】
この第2の態様によれば、各能動部は、各能動部の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分を任意に含み得る。絶縁された巻線ターンを軸線方向に積層させることで、能動部の表皮及び近接効果が軽減される。これにより、電流が導電断面により均一に広がるので加熱が減り、鎖交磁束が向上する。
【0017】
第2の態様によれば、各能動部対は、任意に相互に軸線方向にオフセットし得る。能動部を軸線方向にオフセットさせることにより、軸線方向及び周方向のコイルの積層が容易になることで、各能動部対間のスパン(ピッチ)の自由度が得られ、コイルの噛み合い性により完全巻線の構造剛性も改善される。これにより、コアの鎖交磁束も増える。
【0018】
以下の任意の特徴は、第1の態様の導電コイル及び第2の態様の導電コイルにも当てはまり得る。
【0019】
使用時に、能動部対を形成する能動部に沿って径方向で逆方向に電流が流れる(すなわち、電流が第1の能動部に沿って流れる電流とは逆方向に第2の能動部に沿って流れる)。
【0020】
各能動部は、わずか1巻線ターン分の幅であり得る。代替として、各能動部は、複数の巻線ターン分の幅であり得る。すなわち、各能動部は、複数の周方向に積層された巻線ターン部分を含み得る。各能動部が複数の周方向に積層された巻線ターン部分を含む場合、周方向に積層された巻線ターン部分の数が軸線方向に積層された巻線ターン部分の数より少なく、能動部の径方向に対して垂直なコイルの断面の長寸法が回転軸線と平行になることが好ましい。例えば、能動部は、巻線ターン部分のわずか2つ分の幅であり得るが、軸線方向には3つ以上の巻線ターン部分を含み得る。例えば、周方向に積層された巻線ターン部分の数に対する軸線方向に積層された巻線ターン部分の数の比は、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上であり得る。巻線ターン部分1つ分の幅よりも大きいコイルは、導体の全長を増加させ、これはさらにコイルのインピーダンスを増加させる。インピーダンスが高いほど、低スイッチング速度のコントローラの使用が可能になり得ることで、場合によっては費用が削減され得る。
【0021】
一対の能動部の第1及び第2の略径方向に延びる能動部の巻線ターン部分は、内半径に位置付けられた近位端と、外半径に位置付けられた遠位端とを有し得る。使用時に電流が径方向に延びる能動部対に沿って径方向で逆方向に流れるように、巻線ターン部分の近位端は内側ループ部により接続することができ、遠位端は外側ループ部により接続される。
【0022】
外側ループ部は、回転軸線と実質的に平行なコイルの外側部分を形成するよう構成され得る。コイルの軸平行部分をステータハウジングの開口に軸線方向に挿入することができることで、ステータ製造の容易性が改善される。さらに、コイルの外側部分の広がった性質から、コイルの機械的なロック及びステータの外周における冷却のためのより大きな表面積が得られる。
【0023】
各外側ループ部は、任意の形状を有し得るが、コイルの外側部分が半円板状又は矩形の表面であるように実質的に半円形又は矩形であり得ることが好ましい。外側部分の表面は、曲面、例えばインボリュート形状でもあり得る。これらの表面は、大きな表面積を形成するが、必要な導体長さが比較的限られてもいることで、材料費が削減される。
【0024】
追加として又は代替として、外側ループ部は、コイルの実質的インボリュート部分を形成するよう構成され得る。インボリュート部分は、隣接する導電素子間で実質的に一定のギャップを維持するものであり、周方向に分配されたコイルの径方向に噛み合う構成をもたらす。コイルの外側部分を2つの能動部に接続するコイルの2つの実質的インボリュート外側部分があり得る。
【0025】
内側ループ部は、回転軸線と実質的に平行なコイルの内側部分を形成するよう構成され得る。回転軸線と実質的に平行なので、内側部分が占める周方向空間は最小限である。ステータの内半径で物理的空間が限られているので、これは重要である。
【0026】
各内側ループ部は、任意の形状を有し得るが、コイルの内側部分が半円板状又は矩形の表面を有するように実質的に半円形又は矩形であり得ることが好ましい。内側部分の表面は、曲面、例えばインボリュート形状でもあり得る。これらの形状は、実施に必要な導体長さが比較的限られていることで、材料費が削減される。
【0027】
内側ループ部は、実質的インボリュート部分を形成するよう構成され得る。インボリュート部分は、隣接する導電素子間の実質的に一定のギャップを維持しており、周方向に分配されたコイルの径方向に噛み合う構成をもたらす。コイルの内側部分を2つの能動部に接続するコイルの2つの実質的インボリュート内側部分があり得る。
【0028】
能動部対の数は、2の整数倍であり得る。2の整数倍の能動部対を用いると、各コイルを複数の同一の導電素子から作製することが容易になり、製造費が減る。
【0029】
導電コイルは、使用時に磁束ガイド用の空間のうちの1つにより分離されたコイルの隣接する能動部に沿って同じ方向に電流が流れるように構成され得る。これにより、これらの隣接する能動部に流れる電流がトルク発生に対して逆効果となることが回避される。
【0030】
1つのコイルを構成する複数対の能動部は、一体的に形成され得るか、又は1対の能動部をそれぞれが含む複数の別個の素子を直列接続することにより形成され得る。接続は、例えば、フェルールを用いて、ろう付けにより、又は溶接により行うことができる。別個の素子は、導体を巻回、接合、及び成形することにより形成することができ、これは、比較的安価に実施される技術を用いて行うことができる。素子の一体形成は高価であり得るが、通常の巻線技術では達成できないか又は達成困難であるより複雑なコイルトポロジーも可能にし得る。さらに、一体形成素子により、ステータの構成部品の数が減る。
【0031】
導電コイルは、導電コイルを電源に接続する第1及び第2の接続部分を備え得る。第1及び第2の接続部分は、回転軸線と平行に延び得る。接続部分は、平行な同一方向又は平行な逆方向に延び得る。平行に延びる接続部分は、電源へのコイルの非常に単純な接続を可能にする。
【0032】
コイルの第1及び第2の接続部分は、コイルの軸線方向外側端に近接して設けられ得る。このように、例えばステータアセンブリの内半径よりも大きな周方向空間がある場合、ステータアセンブリの外半径に近接して接続を行うことができる。これは接続があまり密集しないことを意味し、製造が容易になると共により確実な電気接続が得られる。
【0033】
第1の態様による複数の導電コイルを備えた、アキシャルフラックス電気機械のステータも提供される。第2の態様による複数の導電コイルを備えた、アキシャルフラックス電気機械のステータも提供される。いずれの場合も、複数の導電コイルはステータの周囲に周方向に分配される。
【0034】
複数の導電コイルは、ステータの1極にそれぞれ対応する複数の群で設けられ得る。
【0035】
各導電コイルは、多相電源の相に接続されるよう構成され得る。
【0036】
周方向に隣接する導電コイルは、N相電源についてステータが複数群のN個の導電コイルを備え、N個の導電コイルの各群がN相電源の各相に対して1つのコイルを含み、各群がステータの1極に対応するように、多相電源の異なる相に接続されるよう構成され得る。
【0037】
多相電源の各相で、上記相に接続されたステータのコイルが1つおきに共通のバスバーに接続され得る。このように、巻線は、相毎の総コイル数の半分を2相バスバーの1つに接続する2つの交互配置された(interleaved)部分に分割され得る。
【0038】
周方向に隣接する導電コイルは、磁束ガイドを収納する第1のタイプの空間を画定するように周方向に重なり得る。第1のタイプの各空間は、2つの異なるコイルの2つの隣接する能動部間の周方向空間であり得る。それらを画定する能動部のように、第1のタイプの空間は径方向に延び、径方向に細長状であり得る。ステータのコイルは磁束ガイドを収納する構造を自然に形成するので、ステータを迅速且つ高精度に製造することができることで、電気機械の効率が向上する。
【0039】
ステータは、第1及び/又は第2のタイプの空間に位置決めされた磁束ガイドをさらに備え得る。
【0040】
ステータは、ステータハウジングをさらに備え得る。ステータハウジングは、回転軸線と実質的に平行な導電コイルの外側部分を収納するための周方向に分配され軸線方向に延びる開口を含み得る。上記のように、これにより製造がより容易且つ正確になり、ステータの導電コンポーネントからステータハウジングを通した伝熱が得られる。
【0041】
このようなステータを備えたアキシャルフラックス電気機械も提供される。アキシャルフラックス機械は、ステータの両側に配置された1対の対向するロータをさらに備え得る。各ロータが1つのステータ専用であり得るか、又は1つ又は複数のロータが2つの軸線方向に位置合わせされたステータ間で共有され得る。
【0042】
アキシャルフラックス電気機械のステータを製造する方法も提供される。本方法は、複数の導電コイルをステータハウジングの周囲に周方向に分配されるようにステータハウジング内に位置決めするステップを含む。各導電コイルは、第1能動部及び第2能動部を備え、各能動部は、電気機械の回転軸線に対して実質的に垂直な略径方向に延び、且つ各能動部の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分を含む。第2の能動部は、第1の能動部から周方向に離隔し軸線方向にオフセットしている。
【0043】
ステータハウジングは、複数の周方向に分配され軸線方向に延びる開口を含み得る。この場合、複数の導電コイルをステータハウジング内に位置決めするステップは、各導電コイルについて各コイルの軸線方向に延びる部分を軸線方向に延びる開口の1つに位置決めするステップを含み得る。これにより、組立ての容易性、組立ての精度、機械的なロック、並びに使用時の冷却及び効率が向上する。
【0044】
各導電コイルは、相互に直列接続された複数対の能動部を含むことができ、隣接する能動部対は、磁束ガイドを収納する第2のタイプの空間を画定するように周方向に重なる。第2のタイプの空間は、同じコイルだがそのコイルの異なる能動部対の2つの隣接する能動部間の周方向空間である。本方法はさらに、空間に磁束ガイドを位置決めするステップを含む。上記のように、コイル毎に能動部対を追加する毎に、毎極毎相のスロット数が1つ増えるのが有利であり、これにより損失を減らすことができ、したがって効率を向上させることができる。さらに、コイル毎の能動部数を機械の半径に従って増やすことができるので、より大きな機械での効率向上が可能である。
【0045】
アキシャルフラックス電気機械のステータを製造する別の方法が提供される。本方法は、複数の導電コイルをステータハウジングの周囲に周方向に分配されるようにステータハウジング内に位置決めするステップを含む。各導電コイルは、2対の能動部を備え、各能動部は、電気機械の回転軸線に対して実質的に垂直な略径方向に延びる。各対の略径方向に延びる能動部は、周方向に離隔する。2対の能動部は、磁束ガイドを収納する第2のタイプの空間を画定するように部分的に周方向に重なる。第2のタイプの空間は、同じコイルの異なる能動部対の2つの隣接する能動部間の周方向空間である。本方法はさらに、空間に磁束ガイドを位置決めするステップを含む。
【0046】
この第2の方法において、各能動部は、各能動部の径方向に対して垂直な断面が回転軸線と平行な長寸法を有する細長状であるように回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分を含み得る。これにより、電流が導電断面により均一に広がるので加熱が減る。各対の能動部は、相互に軸線方向にオフセットし得る。能動部を軸線方向にオフセットさせることにより、軸線方向及び周方向のコイルの積層が容易になることで、各能動部対間のスパン(ピッチ)の自由度が得られ、コイルの噛み合い性により完全巻線の構造剛性も改善される。
【0047】
両方の方法において、導電コイルは、周方向に隣接する導電コイルが周方向に重なることにより磁束ガイドを収納する第1のタイプの空間を画定するように位置決めされる。第1のタイプの各空間は、2つの異なるコイルの2つの隣接する能動部間の空間であり得る。両方の方法はさらに、第1のタイプの空間に磁束ガイドを位置決めするステップを含み得る。
【0048】
両方の方法はさらに、ステータの少なくとも一部に樹脂等のボンディングコンパウンドを含浸させるステップを含み得る。これにより、ステータアセンブリが強化され、使用中に受ける機械力及び電磁力から保護される。コイルを電源に接続する手段にボンディングコンパウンドを含浸させず、含浸後に接続にアクセスできるようにしてもよいことが有利である。
【0049】
本発明の一態様におけるいかなる特徴も、任意の適当な組み合わせで本発明の他の態様に適用することができる。特に、方法態様を装置態様に適用してもよく、その逆でもよい。さらに、一態様における任意の、一部の、及び/又は全部の特徴を、任意の適当な組み合わせで任意の他の態様の任意の、一部の、及び/又は全部の特徴に適用することができる。
【0050】
本発明の任意の態様で記載及び定義された種々の特徴の特定の組み合わせを、独立して実施及び/又は供給及び/又は使用できることも理解されたい。
【0051】
次に、本発明の実施形態を単なる例として添付図面を参照してさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】ステータアセンブリ、ロータ、及び軸を示すアキシャルフラックス機械の側面図である。
【
図2B】
図1A、
図1B、及び
図2Aのアキシャルフラックス機械の1つのロータの、ロータの永久磁石をより明確に示す平面図である。
【
図4A】48個の導電コイルを含むアキシャルフラックス機械のステータアセンブリの導電コンポーネントの斜視図である。
【
図4B】
図4Aのステータアセンブリの導電コンポーネントの側面図である。
【
図5A】1対の径方向に延びる能動部を有する単一の導電コイル素子の平面及び下面図を示す。
【
図5E】重なりから得られる空間を示す、ステータの周囲に周方向に分配された
図5A~
図5Dの複数の導電素子を含むステータの一部の平面図である。
【
図5G】導電素子が平坦面状に巻回され得る様子を示す導電素子の平面図である。
【
図5K】
図5Jの複数の導電コイル素子を利用するステータの平面図である。
【
図6A】直列接続された2対の周方向に重なり径方向に延びる能動部を含む導電コイルの平面及び下面図を示す。
【
図7A】1対のバスバーに接続された
図6~
図6Dの導電コイルを示す正面図である。
【
図8A】同じバスバー対に接続された8つの導電コイルの斜視図である。
【
図8B】同じバスバー対に接続された8つの導電コイルの平面図である。
【
図9A】各バスバー対に接続された2つの周方向に隣接する導電コイルの正面図である。
【
図9B】各バスバー対に接続された2つの周方向に隣接する導電コイルの斜視図である。
【
図9C】各バスバー対に接続された2つの周方向に隣接する導電コイルの平面図である。
【
図10】導電コイルを三相電源に接続する代替法を示す6つの隣接する導電コイルの斜視図である。
【
図11A】2対の軸線方向に延びる導電部をそれぞれが有する24個の導電コイルを含む16極3相のステータアセンブリの導電コンポーネントの半分の平面図である。
【
図12A】ステータアセンブリの導電コイルを収容するステータハウジングを含むステータアセンブリの斜視図である。
【
図12B】導電コイルがステータハウジング開口内に収納される様子を示す、
図12Aのステータアセンブリの平面図である。
【
図13】ステータを製造する方法を示すフローチャートである。
【
図14】ある範囲のトルク及び速度値に関する
図12A~
図12Cのステータアセンブリを備えたアキシャルフラックス機械の効率を示す効率マップである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
説明及び図を通して、同様の要素には同様の参照符号を用いる。
【0054】
次に、アキシャルフラックスモータ100を参照して本発明の実施形態を記載する。モータ100を説明するが、発電機等の他のタイプのアキシャルフラックス電気機械でも同様に本発明を実施できることを理解されたい。
【0055】
アキシャルフラックス機械の概要
図1A及び
図1Bは、アキシャルフラックスモータ100の主要コンポーネントを示す。アキシャルフラックスモータ100は、ステータアセンブリ1と、ステータアセンブリ1の両側に配置された2つのロータ2a、2bと、軸3とを含む。軸は、駆動端3a及び非駆動端3bを含む。ロータ2a、2bは、軸3に取り付け固定される。使用時に、アキシャルフラックスモータ100のステータ1は静止したままであり、ロータ2a、2b及び軸3はステータ1に対して共に回転する。ロータカバープレート及びステータを動力源に接続する手段等、モータ100に通常存在する種々のコンポーネントは、明確にするために
図1A及び
図1Bから省いてあることを理解されたい。
【0056】
図1A、
図1Bは、2つのロータ2a、2b及び単一のステータ1を示しているが、他の構成が可能であることが理解されよう。例えば、ロータ2a、2bの一方が2つの軸線方向に位置合わせされたステータ間で共有されてもよい。すなわち、2つのステータ及び3つのロータがあり、3つのロータのうち1つが2つのステータ間で共有され得る。
【0057】
図2A及び
図2Bは、ステータアセンブリ1がない状態でモータ100のロータ2a、2b及び軸3を示す。
図2Bから特に明確なように、各ロータ2a、2bは、複数の周方向に分配された永久磁石21、22、23、24を含む。磁石21、22、23、24は、例えば、NdFeB磁石等の希土類磁石である。永久磁石21及び22等の周方向に隣接する磁石は、逆の極性を有する。すなわち、各N極23は、2つのS極22、24に周方向に隣接し、各S極22は、2つのN極21、23に周方向に隣接する。
【0058】
図2A及び
図2Bでは見ることができないが、ロータ2a、2bは、対向する永久磁石が逆の極性を有するように取り付けられる。すなわち、ロータ2aのN極はロータ2BのS極に対面し、またその逆となる。結果として、2つのロータ2a、2bの磁石は、2つのロータ2a、2b間で軸線方向の磁束線を有する磁界を発生する。
【0059】
当業者には理解されるように、本明細書に記載のステータアセンブリ1はヨークレスだがアイアンレスではない。ヨークは、ロータ磁界の逆の極間で磁束線を誘導するために一部のステータに存在する付加的な構造要素である。すなわち、ヨークは、ステータ内の磁気回路を完成させる。本明細書に記載のアキシャルフラックス機械100は、対向する永久磁石が逆の極性を有する1対の対向するロータ2a、2bを利用するので、磁束が一方向となることからヨークで磁気回路を完成させる必要がない。ヨークレスステータを有することで、アキシャルフラックス機械の総重量が減り、これは多くの実際的用途で非常に有益である。さらに、ヨーク領域の磁束密度の変化に起因する損失がないので、効率が向上する。
【0060】
ロータ2a、2bの2つの隣接する永久磁石21、22の中心の周方向(角度)分離αは、アキシャルフラックスモータ100の極ピッチを規定する。なお、永久磁石の平均スパンβはモータ100の極ピッチα以下であり得る。
図2A、
図2Bにおいて、隣接する磁石は非磁性のスペーサにより分離されるので、永久磁石21~24の平均スパンβは、モータ100の極ピッチα未満である。一例では、βはαの約3/4である。β対αの比は、ステータ1の永久磁石磁束密度の周方向の空間高調波歪を減らすよう選択することができる。理解されるように、永久磁石21~24のスパンβをモータ100の極ピッチα未満とすることができるように非磁性のスペーサを設けることは必須ではない。例えば、永久磁石21~24は、それらに必要な離間位置で接着剤等を用いてロータに取着することができる。
【0061】
図2A、
図2Bに示すロータ2a、2bは、16個の周方向に分配された永久磁石21~24を有し、したがって16個の極を有する。しかしながら、これは単なる例であり、実際にはある程度は目的用途に応じて16個よりも多い又は少ない極があり得る。例えば、極は、通常は対で存在し(したがって通常は偶数個の極があり)、極の数は、目的用途に適したモータのサイズに応じて変わるロータ2a、2bの半径によってある程度制限される。ロータ2a、2bは、例えば8~32個の極を有する場合がある。
【0062】
図3を参照すると、これは、さらに詳細な
図1~
図2のアキシャルフラックスモータ100の断面図を示す。本明細書に記載の発明は、
図4~
図12を参照してより詳細に後述するステータアセンブリ1の導電コンポーネント10に主に関するので、
図3のコンポーネントの概要のみを提供する。当業者はアキシャルフラックスモータ100等のアキシャルフラックス機械のコンポーネントに精通しているので、
図3に示す特徴の全てがアキシャルフラックス機械に必須とは限らず、存在する特徴をさまざまな異なる方法で実施できることも理解するであろう。
【0063】
ステータ1、駆動端ロータ2a、非駆動端ロータ2b、及び軸3に加えて、
図3は、ロータ2a、2bを囲み概してモータ100をシールして外部材料が入らないようにする、駆動端及び非駆動端ロータカバープレート4a、4bを示す。ロータスペーサリング4cが、ロータ2a、2bを離隔させる。Oリングシール8a、8b及び運動用シール9がさらにモータ100の内部をシールする。ロータ2a2bの回転は、駆動端及び非駆動端軸受6a、6bにより支援され、これらはロータ2a、2bの永久磁石とステータ1との間でエアギャップ5を維持する。エンコーダマウント71、軸上位置エンコーダ72、及び関連のエンコーダセンサ磁石73を含むエンコーダアセンブリ7も図示する。
【0064】
導電コイル及びステータ
次に、
図4~
図12を参照してステータアセンブリ1の導電コイル12を含む導電コンポーネント10を説明する。特定の数のステータ極11、導電コイル12、及び電流位相の特定の例を記載するが、これに特許請求の範囲を制限する意図はないことを理解されたい。
【0065】
図12A~
図12Cを簡単に参照すると、ステータアセンブリ1が示されており、これは、ステータ1の導電コンポーネント10を収容する環状又はリング状のステータハウジング20を含んでいることが分かる。ステータアセンブリ1のコアは、ロータ磁石がもたらす軸線方向の磁束が導電コンポーネント10を通って径方向に流れる電流と相互作用して、ロータ2a、2bを回転させるトルクを発生する場所であり、ステータの導電コンポーネント10の径方向に延びる能動部と、ラミネーションパックの形態の磁束ガイド30とを含む。磁束ガイド30は、電気絶縁で包囲された方向性電磁鋼板を含み得るラミネーションパックの形態で、コアの導電コンポーネント10の径方向に延びる能動部間の空間に位置決めされる。磁束ガイド30は、ラミネーションパックの形態で、永久磁石21~24が発生させる磁束を通電導体間に通すよう働く。
【0066】
次に
図4A~
図4Cを参照すると、導電コンポーネント10(以降は単に「ステータ10」と称する)が、ステータハウジング20もラミネーションパックの形態の磁束ガイド30もない状態で示されている。
図4Cの上面図から最もよく分かるように、ステータ10は、分布巻線を有し、複数の導電コイル12をそれぞれが含む複数の(この場合は16個の)周方向に分配されたステータ極11a、11b、...、11pを備える。各導電コイル12は、この例ではバスバーの形態をとる接続手段15、16を介して多相電源の1相に接続される。この特定の例では、ステータ10は、三相電源と共に用いるよう構成されるので、ステータの極11a~11p毎に3つの導電コイル12がある。
【0067】
16個の極11a~11p及び極毎に3つの導電コイル12があると、
図4A~
図4Cのステータ10は、合計48個の周方向に分配された導電コイル12を有することが理解されよう。しかしながら、
図4Cの上面図から、このステータ10が実際には96個の径方向に延びる能動部を有することが分かる。さらに、
図4Bの側面図から、径方向に延びる能動部の軸線方向にオフセットした層が2つあり、径方向に延びる能動部が合計192個となることが分かる。この理由は、
図5~
図9の説明から明らかとなる。要約すると、各導電コイル12は1つ又は複数の導電素子120を含み、導電素子120のそれぞれが、1対の軸線方向にオフセットした径方向に延びる能動部を含む。
図4A、
図4Bのステータ10の各導電コイル12は、2つのこのような導電素子120を含んでおり、各導電素子120が1対の軸線方向にオフセットした径方向延在部を含むことが、合計192個の径方向に延びる能動部となる理由である。
【0068】
ステータ10の導電コンポーネントは、1つ又は複数の導電性材料の任意の組み合わせでできていてもよい。しかしながら、導電コンポーネント10は銅でできていることが好ましい。
【0069】
図5A~
図5Dは、単一の導電素子120の種々の図である。上記し且つより詳細に後述するように、各導電コイル12は、1つ又は複数の導電素子120から構成される。導電コイル12毎に1つの導電素子120の場合、導電コイル12及び導電素子120は同等であることが理解されよう。
図6A~
図6Dは、2つの導電素子120及び120’から構成された導電コイル12を示し、以下で説明される。
【0070】
図5A~
図5Dを参照すると、回転軸線が紙面に対して垂直である
図5Aの上面図から最もよくわかるように、導電素子120は、1対の周方向に離隔した径方向に延在する能動導電部121a、121bを含む。これらの径方向に延びる能動部121a、121bを「能動」部と称する理由は、導電コイル12がステータに位置決めされる際に、これらがステータコア内に配置されてロータ2a、2bの磁石が与える磁界と相互作用するからである。能動部が、コアの磁束に対して概ね垂直である略径方向に延びるので、鎖交磁束が少なくとも最大に近いことが理解されよう。
【0071】
2つの能動部121a、121bが離隔する角度γを、コイルスパンと称する。コイルスパンは、極ピッチα(ロータの永久磁石の中心間の角度で定義される)と同じであってもよく、又は異なっていてもよい(小さい又は大きい)。好ましくは、コイルスパンγは、極ピッチα未満である。例えば、γはαの約5/6であり得る。γをα未満にすることにより巻線の短節巻きを実施することができ、これにより巻線起磁力(mmf)の空間高調波成分が減る。
【0072】
図5E及び
図5Fを参照すると、これらは16極3相のステータ10’を示し、これは
図4A~
図4Cのステータ10と同様だが、ステータ10’の各コイル12が1つの導電素子120(1対の能動部121a、121b)のみを有する点が異なる。すなわち、
図5E及び
図5Fにおいて、コイル12及び導電素子120は同等である。ステータ10のように、ステータ10’の導電コイル120a、120b、120cは、ステータの周囲に周方向に分配され、周方向に隣接するコイルは周方向に重なる。
【0073】
図5Eから特に明確なように、コイル120a、120b、120cの周方向の重なりは、コイルの能動部間の周方向空間を画定する。径方向に細長状のこれらの周方向空間は、磁束ガイド30を収納することができる。符号付きの空間141a、141b、141c等の空間を第1のタイプの空間と称する。このように、第1のタイプの空間141a、141b、141cは、異なるコイルの能動部間に画定される。例えば、空間141bは、コイル120aの2つの能動部の一方とコイル120cの2つの能動部の一方との間にある。しかしながら、第1のタイプの特定の空間141a、141b、141cを画定する2つのコイルは、ステータ極毎の相の数、極の数、及び選択されるコイルスパンγを含む種々の因子に応じて変わり得ることを理解されたい。
【0074】
次に
図5A~
図5Dを参照すると、
図5B及び
図5Dから分かるように、2つの能動部121a、121bは相互に軸線方向にオフセットしている。これにより、導電コイル12の周方向の積層が容易になり、導電コイル12毎に複数の導電素子120がある場合の導電素子120の周方向積層も容易になる。
図14を参照してより詳細に述べるように、これによりステータ極及び毎極毎相のスロットを増やすことができ、これはいずれも効率向上をもたらすことができる。さらに、巻線を容易に短節巻きにすることができる。
【0075】
図5B、
図5C、及び
図5Dのそれぞれで分かるように、各導電素子120は、連続した1本の巻回導体から形成される。この長さの導体の最外巻部は、第1の接続部分128で終わり、これを外側尾部128と称する。外側尾部128は、軸線方向と実質的に平行に延びる。より詳細に後述するように、これにより多相電源へのコイル12の簡便な接続が促される。最内巻線ターン部分は、第2の接続部分129で終わり、これを内側尾部129と称する。
【0076】
図5B、
図5C、及び
図5Dのそれぞれで同じく分かるように、導電素子120を形成するこの長さの導体は、電気機械の回転軸線と平行に積層された複数の巻線ターン部分131a、131bがあるように巻回される。各能動部121a、121bの径方向に対して垂直に得られる導電素子120の断面は、回転軸線と平行な長寸法を有する細長状である。
図5A~
図5Dの例では、14個の軸線方向に積層された巻線ターン部分131a、131bがあるが、他の数も可能であるためこれに本発明を制限する意図はない。
【0077】
図5G、
図5H、及び
図5Iは、導電素子120が1本の導体を巻回することにより形成され得る様子を示す。
図5Gに示すように、導体は、複数(この場合は14)ターン又は層の扁平な平面巻線を形成するように単一平面内で1対の支持要素301、302(紙面から垂直に突出する)に巻回される。巻線が扁平なことは、
図5H及び
図5Iから最もよく分かる。最内巻部は内側尾部129で終わり、最外巻部は外側尾部128で終わる。
【0078】
図5G~
図5Iに示す扁平巻線を形成したら、導電素子120の3次元形状が、扁平巻線を
図5A~
図5Dに示す形状に曲げるか又は変形させることにより形成される。当該技術分野で既知のように、曲げ加工は曲げ治具を用いて行うことができる。例えば、軸線方向にオフセットした内側の雄型プロファイルブロックを有する曲げ治具が外側の雌型に押し当たって、能動部が相互に軸線方向にオフセットするように扁平巻線を曲げることができる。外側尾部128及び内側尾部129は、所望に応じて別個に曲げることができる。
【0079】
曲げ加工プロセスを容易にするために、曲げ加工中に巻線がその形状を維持するように扁平巻線が最初に補強され得る。一例では、導体は、巻回後にターン/層同士を接合して形状を維持することができるように熱活性化又は溶剤活性化外側接合層を有する。
【0080】
特に
図5G~
図5Iから、導電素子120をさまざまな異なる方法で巻回することができ、図示の特定の巻線に本発明を制限する意図はないことを理解されたい。いくつかの代替例として、
-
図5Gの巻線は支持要素301、302に反時計方向に巻回されているが、1本の導体を時計方向に巻回することもできる。
-巻線の最外ターンは、外側尾部128が導体素子120の能動部121a、121bに通じるように終わるが、そうである必要はない。外側ターンはターンの任意の点で終わることができ、例えば外側尾部128が能動部ではなくターンのループ部に通じるようにしてもよい。
-14個の軸線方向に積層された巻線ターンが
図5に示されているが、14ターンより多くても少なくてもよい。
-巻線の厚さは1ターン/層だが(特に
図5H参照)、2ターン/層以上の厚さであってもよい。この場合、各導体素子120は、複数の周方向に積層された巻線ターン部分を含むことになる。任意の数の周方向に積層された巻線ターン部分が可能だが、軸線方向の巻線ターン部分の数未満の数にして、各能動部121a、121bの径方向に対して垂直な導電素子120の断面が回転軸線と平行な長寸法を依然として有するようにすることが好ましい。例えば、周方向に積層されたターンの数に対する軸線方向に積層されたターンの数の比は、4以上とすることができ、好ましくは6以上とすることができる。
【0081】
上記から分かるように、使用時に、導電素子120の2つの能動部121a、121bに沿って逆方向に(すなわち、径方向と平行に内側及び外側に)電流が流れる。電流方向の反転は、巻線ターン部分131a、131bの外側ループ部122及び巻線ターン部分131a、131bの内側ループ部125により得られる。外側ループ部122のそれぞれは、第1の部分123と、能動部121a、121bを第1の部分123に接続する1対の第2の部分124a、124b(能動部121a、121bの対のそれぞれに対して1つずつ)とを含む。同様に、内側ループ部125のそれぞれは、第1の部分126と、能動部121a、121bを第1の部分126に接続する1対の第2の部分127a、127b(能動部121a、121bの対のそれぞれに対して1つずつ)とを含む。
【0082】
図5B、
図5C、及び
図5Dから分かるように、外側の第1部分123は、回転軸線と実質的に平行な表面を有するコイル素子120の外側部分133を共に形成する。
図5A~
図5Dの特定の例では、外側の第1の部分123は、実質的に半円形なので、外側部分133は実質的に平坦な半円板133だが、他の形状も可能である。例えば、外側の第1の部分123のそれぞれは、矩形の3辺に相当する形状を有することで、平坦な矩形表面を有する外側部分133を共に形成するようになり得る。別の例として、外側の第1部分123により形成される導電素子120の外側部分133は、平坦又は平面状である必要はなく、これは
図5Jに示されており、
図5Jが示す導電素子120’’は、湾曲したプロファイル、したがって曲面を有する外側部分133’’を有する。
図5Kは、このような導電素子を備えたステータ10’’の平面図を示し、これは
図4Cと同等であり得る(但しステータ10’’は接続手段15、16を示していない)。
【0083】
外側の第1の部分123により形成される表面133を用いて、比較的大きな表面積による冷却を容易にすることができる。さらに、コイル120の外側部分133は回転軸線と実質的に平行なので、ステータハウジング20にコイル素子120’、120’’の外側部分133を軸線方向に収納する軸線方向に延びる開口25を設けて、機械的なロック及び冷却の改善を得ることができる。これを以下でより詳細に説明する。
【0084】
内側の第1の部分126は、コイル素子120の内側部分136を共に形成する。
図5B~
図5Dに示す内側部分136は、上述の外側部分133と実質的に同じであり、上述の外側部分133のように回転軸線と平行であり得ると共に、種々の形状及びプロファイルであり得る。しかしながら、内側部分136は、概してコイル12の冷却及び積層の役割をあまり果たさないので、内側部分126は、導電素子120毎の導体の総量を減らして費用を減らすよう構成され得る。
【0085】
外側の第2の部分124a、124b及び内側の第2の部分127a、127bに関して、これらは
図5A~
図5Dでは実質的に直線状に見えるが、実際にはわずかに湾曲している。特に、外側の第1の部分124a、124bのそれぞれの形状は、第1のインボリュートの一部なので、第1の部分124a、124bは、コイル素子120の外側の実質的インボリュート部分134a、134bを共に形成する。同様に、内側の第2の部分127a、127bのそれぞれの形状は、第2のインボリュートの一部なので、第1の部分127a、127bは、コイル素子120の内側の実質的インボリュート部分137a、137bを共に形成する。インボリュートの意義を、
図6A~
図6Dを参照して説明する。
【0086】
導電素子120が1本の導体を巻回することにより形成されると上述したが、これは必須ではない。導電素子120は、一体形成を含む他の方法で製造することができる。
【0087】
さらに、図示の素子120は、1本の導体から巻回され、巻線ターン部分131a、131bの積層体を含むが、これは好ましいとはいえ必須ではない。例えば、巻線ターン部分131a、131bの軸線方向に延びる積層体ではなく、各導電素子120は、単一の軸線方向に延びる導電性ストリップにより形成することができる。場合によっては、単一の軸線方向に延びる導電性ストリップは、複数の軸線方向に積層された巻線ターン部分131a、131bよりも好ましい場合があるが、以下で説明するように、積層された巻線ターン部分131a、131bの使用は、損失の増加につながり得る表皮及び近接効果の軽減に役立つことが有利である。
【0088】
上記のように、各導電コイル12は、1つの導電素子120のみを含み得る。しかしながら、より詳細に後述する理由から、各導電素子は、2つ以上の周方向に重なる導電素子を含むことが好ましい。次に、2つの周方向に重なる導電素子120、120’を含む導電コイルの例を、
図6A~
図6Dを参照して説明する。
【0089】
図6Aは、2つの導電素子120、120’を含む導電コイル12の上面及び下面図を示す。2つの導電素子120、120’のそれぞれの特徴は、
図5A~
図5Dを参照して上述した単一の導電素子120のものと同じなので、これらの特徴は再度説明しない。
【0090】
導電コイル12を形成するために、2つの同一の導電素子120、120’は、その内側尾部129、129’で相互に電気的に直列接続される。本明細書に示す例では、内側尾部129、129’は、フェルール130を用いて接続される。しかしながら、ろう付け又は溶接等、内側尾部129、129’を接続する方法は他にもある。2つの素子120、120’を接続するために、2つの導電素子120、120’の一方を
図6Aの紙面に垂直に延びる軸周りに180°回転させ、2つの導電素子120、120’の外側尾部128、128’が逆方向になり、内側尾部129、129’が隣接してフェルール130により容易に接続されるようにする。代替として、2つの導電素子を含む導電コイル120を単体として一体的に形成することができる。
【0091】
得られた導電コイル12は、2対の周方向に重なる離隔した能動部対121a、121b;121a’、121b’を有する。特に、2対の能動部は、2つの空間142a、142bを画定する。第1の空間142aは、コイル12の第1の導電素子120の一方の(第1の)能動部121aとコイル12の第2の導電素子120’の一方の(第1の)能動部121a’との間に画定される。第2の空間142bは、コイル12の第1の導電素子120の他方の(第2の)能動部121bとコイル12の第2の導電素子120’の他方の(第2の)能動部121b’との間に画定される。すなわち、2つの空間142a、142bは、同じコイル12の2つの異なる能動部対121a、121b;121a’121b’の隣接する能動部121a、121a’;121b、121b’間の周方向空間である。このタイプの空間を第2のタイプの空間と称する。第1のタイプの空間のように、第2のタイプの空間142a、142bは、ラミネーションパック等の磁束ガイド30用の空間を提供する。これにより、ステータアセンブリ1の作製がより容易になり、ステータアセンブリ1の毎極毎相のスロット数も増加することで、モータの効率を高めることができる。
【0092】
第1のタイプの空間141a~141c(すなわち、異なるコイルの能動部間に画定された空間)及び第2のタイプの空間142a、142b(すなわち、同じコイルだが異なる対の能動部間に画定された空間)を説明したが、第2のタイプの空間を画定する複数のコイル120が第1のタイプの空間を画定するようにステータ10に設けられる場合、第1及び第2のタイプの空間が一致し得ることに留意されたい。これは、各コイル12が2つの導電素子120、120’を含む16極3相のステータを示す
図11Aで最も明確に分かる。空間を明確に見ることができるように、導電コイル12の半分のみを
図11A、
図11Bに示す。第1及び第2のタイプの空間が一致するか否かは、選択されるコイルスパンγ、ステータ極の数、及び相の数を含むいくつかの因子に応じて変わり得る。
【0093】
図6A~
図6Dを参照すると、2つの導電素子120、120’の一方の対の外側インボリュート部分134a、134a’を形成する外側ループ部122、122’の第2の部分124a、124a’間にギャップ143aがあることも、
図6A及び
図6Bから分かる。同様に、他方の対の外側インボリュート部分134b、134b’を形成する外側ループ部122、122’の第2の部分124b、124b’間にギャップ143bがある。一方の対の内側インボリュート部分137a、137a’を形成する内側ループ部125、125’の第2の部分127a、127a’間にギャップ144aもある。最後に、他方の対の外側インボリュート部分137b、137b’を形成する内側ループ部125、125’の第2の部分127b、127b’間にギャップ144bもある。インボリュートの幾何学的特性により、これらのギャップ143a、143b、144a、144bの幅は、導電素子120、120’のインボリュート部の長さに沿って実質的に一定である。これにより、所与の定格のために得られるモータの直径とコイルの損失とが減ることが有利である。
【0094】
2つの導電素子120、120’を有する導電コイル12を説明したが、導電コイル12が3つ以上を含む任意の整数の導電素子120を有し得ることを理解されたい。導電コイル12毎の導電素子の数を増やすと、導電素子120の周方向に隣接する能動部により画定される第2のタイプの空間の数が増えることにより、さらにステータ1の毎極毎相のスロット数が増える。これは、高調波歪が少ない、より正確に正弦波状の磁束密度を有するステータ磁界の発生につながり得る。これにより、ロータ2a、2bの永久磁石における渦電流の発生が減り、さらに加熱損失が減り、したがってより高いモータ効率が得られることが有利である。しかしながら、導電コイル12毎の導電素子120の数が概してサイズ制約により制限されることが理解されよう。例えば、導体の所与の断面(すなわち、巻回される巻線のワイヤの断面)及びステータの所与の半径では、単一のコイルスパンγに周方向にフィットできる導体の数が限られる。
【0095】
コイル12が3つ以上の導電素子を有する場合、いくつかのさらなる検討事項があり得る。例えば、
-複数の導電素子120を(例えばフェルール130により)接続することによりコイルを形成する場合、隣接する導電素子の接続をより単純にするようにいくつかのタイプの導電素子を設けることが好ましい場合がある。例えば、上述の導電素子120は、その外側尾部128が電源に接続されるので、2つの周方向外側の導電素子として用いられ得る。しかしながら、外側の導電素子間にある1つ又は複数の内側の導電素子は、その内側尾部129及び外側尾部128の両方で導電素子に接続されるので、内側尾部129と同様に適合させた外側尾部128を有する第2のタイプの導電素子を、接続しやすいように設けてもよい。代替として、各コイル12を3つ以上の別個の導電素子の接続によってではなく一体ユニットとして形成してもよい。
-コイル12毎に2の整数倍の導電素子120が、コイル12毎に奇数の導電素子120よりも好ましい場合がある。2の整数倍の導電素子120が用いられる場合、
図6A~
図6Dに示すように、2つの周方向に最外の素子120の外側尾部128は平行な逆方向に向けられる。これは必須ではないが、
図7~
図10を参照して後述する接続手段を用いたコイル12のより単純な接続が得られる。
【0096】
周方向に分配されたコイル12の単一の軸線方向層(軸線方向にオフセットした能動部を有するコイル12を有する単層)を有するステータ10を記載したが、ステータ毎に複数の軸線方向に積層されたコイル層があり得ることが理解されよう。この場合、各相の第1のタイプの空間及び/又は第2のタイプの空間は、実質的に周方向に一致することが有利であり得る。これは、複数の軸線方向に積層された層の軸線方向長さを貫通し得る軸線方向に長い磁束ガイド30の挿入を可能にし、組立ての容易性及び速度に関してさらに向上することが有利である。
【0097】
多相電源へのコイルの接続
次に、多相電源への複数の周方向に分配された導電コイル12の接続方法を記載する。実際には、これを達成できる多くの異なる方法があることを理解されたく、当業者は多くの異なる方法を思いつくであろう。したがって、本発明はいかなる特定の接続構成にも限定されない。しかしながら、回転軸線に対して垂直な平面の軸線方向上方/下方及び導電コイルの軸線方向上方/下方に設けられる接続手段15、16を利用する、記載の導電コイル12の接続方法は、特に整然として秩序立った一連の接続を実現する。さらに、接続が行いやすいことで、接続不良の可能性が減り、接続手段を含浸せずにステータを樹脂含浸することができ、これによりステータアセンブリの含浸後でも接続を点検及び固定することが可能になる。
【0098】
最初に
図4Bを参照すると、モータ100の回転軸線に対して垂直な平面の軸線方向上方且つ導電コイル12の軸線方向上方に設けられた第1の接続手段15がある。モータ100の回転軸線に対して垂直な平面の軸線方向下方且つ導電コイル12の軸線方向下方に設けられた第2の接続手段16もある。三相電源と共に用いるよう構成されたステータ10の場合、接続手段15及び16は3相のそれぞれに対応する。しかしながら、これは任意の数の相を有する多相電源に拡張することもできる。
【0099】
並列接続構成と称する
図4A~
図4Cの特定の接続構成では、接続手段15、16のそれぞれが3つの相結線及び1つのスター結線を含む。すなわち、第1の接続手段15は、電源の第1の相に対する第1の相結線151、電源の第2の相に対する第2の相結線152、電源の第3の相に対する第3の相結線153、及びスター結線154を含む。同様に、第2の接続手段16は、電源の第1の相に対する第1の相結線161、電源の第2の相に対する第2の相結線162、電源の第3の相に対する第3の相結線163、及びスター結線164を含む。
【0100】
記載の例では、相結線151~153、161~163、及びスター結線154、164は、外周(但しこれは内周でもあり得る)が導電コイルの軸線方向に延びる外側尾部128、128’と実質的に一致する環状バスバーの形態である。相結線バスバー151~153、161~163は、それ自体が入力1510~1530、1610~1630を介して電源に接続される。
【0101】
図示の並列接続構成では、各導電コイル12が、コイル12を接続手段15、16の一方の相結線の1つ(例として相結線151)と接続手段15、16の他方のスター結線(例ではスター結線164)とに接続することにより、電源の1相に接続される。1つの相結線151及び1つのスターリング164への1つの導電コイル12の接続は、
図7A~
図7Cに示されており、次にこれらを参照して説明する。
【0102】
図7A~
図7Cは、第1の接続手段15からの第1の相結線151と第2の接続手段16からのスター結線164とに接続された2つの導電素子120、120’を有する1つの導電コイル12を示す。導電コイル12の外側尾部128、128’は軸線方向で逆方向に延びており、バスバー151、164の周囲は軸線方向に延びる外側尾部128、128’と一致するので、外側尾部128、128’は結線151、164に容易に接続される。
【0103】
接続をより容易にするために、環状バスバー151、164には、コイル12の軸線方向に延びる外側尾部128、128’を収納する周方向に離間した収納手段151a~151h、164a~164xが設けられる。図示の3相並列接続構成では、各スター結線154、164が全コイル12の半分に接続される一方で、各相結線151~153、161~163は6つのコイル12の1つにしか接続されない。結果として、この例では、スター結線164は、第1の相結線151よりも3倍多い等間隔の収納手段164a~164xを有する。
【0104】
図4A~
図4Cに戻って、ステータ10の各極11a~11pは、各相に1つの導電コイル12(すなわち、ステータが三相電源と共に用いる構成なので極11a~11p毎に3つの導電コイル12)からなり、周方向に隣接する導電コイル12は異なる相に接続される。これを16極ステータ10に関して
図11A及び
図11Bに示し、これは三相電源に接続されるが、その導体の半分しか図示していないので、24個の周方向に分配された導電コイル12しか見えない。
【0105】
この点から、
図4、
図7~
図9、
図11、及び
図12に示す3相並列接続構成では、導電コイル12が5つおきに同じ方法で接続手段15、16に接続される。これを
図8A及び
図8Bに示す。同じ相結線151及び同じスターリング164に接続された8つの等間隔の導電コイル12a~12gがある可能性がある。
図8A、
図8Bには示さないが、コイルのそれぞれの中間では、別のコイル12が電源の同じ相に、但し相補的な(complimentary)バスバーセットにより、すなわち相結線161及びスター結線154に接続されることが理解されよう。
【0106】
電源の他の相に対応する導電コイル12は、1相に関して上述したのと本質的に同じ方法で接続される。これを説明するために、
図9A~
図9Cは、2つの周方向に隣接する導電コイル12が並列接続構成で接続される様子を示す。
【0107】
図9A~
図9Cは、2つの周方向に隣接する導電コイル12a、12bを示す。導電コイル12aは、
図7A~
図7Cの導電コイル12と同様に接続される。すなわち、コイル12aは、第2の相結線152及びスター結線164に接続される。コイル12bは、コイル12aに周方向に隣接しており、電源の異なる相に接続され、したがって異なる対のバスバーに接続される。具体的には、一般性を失わずに、周方向に隣接するコイル12bは、第2の接続手段16の第3の相結線163と第1の接続手段のスター結線154とに接続される。
【0108】
導電コイル12の結線を並列接続構成に関して上述した。しかしながら、他の接続構成が可能である。これを説明するために、
図10は、直列接続構成と称する代替的な構成を示す。
【0109】
図10の直列接続構成では、導電コイル12の上方の第1の接続手段15’が、スター結線を含まず第1の相結線151’、第2の相結線152’、及び第3の相結線153’のみを含むという点で、
図4、
図7~
図9、
図11、及び
図12の接続手段15とは異なる。しかしながら、第2の接続手段16’は、3つの相結線161’、162’、163’、及びスター結線164’を有するという点で、
図4、
図7~
図9、
図11、及び
図12の第2の接続手段16と同じである。第1の接続手段15’にスター結線がないのを補償するために、導電コイル12は異なる方法で接続される。第1の接続手段15’の相結線151’~153’は、2倍の数の導電コイル12にも対応し、したがって第2の接続手段16’と並列接続構成の第1及び第2の接続手段15、16との収納手段と同等の付加的な収納手段を有する。
【0110】
図10は、2つの周方向に隣接するステータ極11及び11’に関する直列接続構成を示す。並列接続構成のように、各極11、11’が1極に1つの導電コイルを含み、1極に3つのコイルとなる。極11は導電コイル12a、12b、及び12cからなり、極11’は導電コイル12a’、12b’、及び12c’からなる。同じく並列接続構成と同様に、周方向に隣接するコイルは異なる相に接続される。しかしながら、並列接続構成の同じ相だが隣接する極のコイル(例えば12a及び12a’)は本質的に独立して接続されて別個の電流経路を形成するが、直列接続構成では結線同士が関連し、同じ電流経路の一部である。
【0111】
同じ相に接続されたコイル12a、12a’のみを考えると、第1の極11のコイル12aは、その外側尾部により第1の接続手段の相結線153’と第2の接続手段の相結線163’とに接続される。第2の隣接する極11’のコイル12a’は、第1の接続手段15’の相結線153’と第2の接続手段のスター結線164’とに接続される。したがって、電流経路は相結線163’からコイル12aを通り、続いて相結線153’に沿ってコイル12a’を通ってスター結線164’まで延びると考えることができる。
【0112】
異なる接続構成を異なる実際的用途に用いることができる。例えば、上述の直列接続構成は、上述の並列接続構成が与えるものの2倍の機械トルク定数(Nm/Aで測定)を理論上は与える。これは、確かに全部ではないが一部の実際的用途には有利である。
【0113】
接続手段15、15’をコイル12の上方にあるものとして説明し、接続手段16、16’をコイルの下方にあるものとして説明したが、両方の対15、16;15’、16’がコイルの上方にあってもよく、又は両方の対15、16;15’、16’がコイルの下方にあってもよいことを理解されたい。この場合、外側尾部128、128’が軸線方向に逆ではなく軸線方向で同じ方向に延びるコイル12を製造することが好ましい場合がある。
【0114】
さらに、接続手段15、16、15’、及び16’を連続した環状バスバーとして説明したが、これは接続手段を実施する1つの方法にすぎない。例えば、接続手段は連続的又は環状でなくてもよく、その代わりに一連の2つ以上の周方向に分配されたバスバー部の形態をとってもよい。当業者は多くの他の種類の接続手段を思いつくであろう。
【0115】
ステータ製造
上述の導電コイル12の特徴及び構成は、複数の周方向に分配されたコイル12を含むステータの特に効率的且つ効果的な製造をもたらす。特に重要なのは、コイル12自体が例えばラミネーションパックの形態の磁束ガイド30を設けることができる構造を提供することである。これにより、特に、ラミネーションパックを収容するボビン状構造にコイルを巻回してから巻回されたボビン状構造をステータハウジング内に(例えば接着剤を用いて)別個に固定することを含み得る多くの既知の製造技術に比べて、ステータアセンブリ1への磁束ガイド30の配置を比較的単純且つ精密に実践できるようになる。種々の他の利点を記載する。
【0116】
図13は、ステータを製造する方法500を説明するフローチャートである。
【0117】
方法500は、上述の導電コイル12等の複数の導電コイルを用意するステップ510を含む。好ましくは、導電コイル12は、各コイル12が第2のタイプの空間を提供するように、(
図6A~
図6Dのコイル12にあるような)周方向に重なる複数対の周方向に離隔した径方向に延びる能動部を有する。しかしながら、コイル12は、(
図5A~
図5Dのコイルにあるような)1対の離隔した能動部のみを有してもよい。導電コイル12は、単一の一体部品として、複数の導電素子120の直列接続により、又は任意の他の方法で形成したものであり得る。
【0118】
520において、方法500は、複数の導電コイル12をステータハウジングの周囲に周方向に分配されるようにステータハウジング内に位置決めするステップを含む。好ましくは、導電コイルは、周方向に隣接する導電コイルが周方向に重なることにより磁束ガイドを収納する第1のタイプの空間を画定するように位置決めされる。周方向に隣接するコイル12の周方向の重なりは、適当なコイルスパンγの適当な数のコイル12をハウジング内に設けることにより確保することができる。上記のように、コイル12が第2のタイプの空間をそれぞれ画定するように複数対の能動部を有する場合、第1及び第2のタイプの空間が相互に一致し得る。
【0119】
ステータハウジング20には、コイル12を収納する複数の周方向に離間した軸線方向に延びる開口25が設けられ得る。これにより、ステータハウジングへのコイル12の位置決めがより容易且つ精密になる。コイル12が軸線方向に延びる外側部分133を有するように形成される場合、軸線方向に延びる外側部分133を軸線方向に延びる開口25内に収納できるのが有利である。軸線方向に延びる外側部分133が大きな表面積を有するので、接着剤(例えば)の必要ない組立てのためにコイル12がステータハウジングに良好に機械的にロックされ、ステータの冷却源も得られる。コイル12を収納する周方向に分配された開口25は、
図12A~
図12Cで最も明確に分かる。
【0120】
場合によっては、530において、方法500は、コイル12により画定された空間(第1及び/又は第2のタイプ)にラミネーションパック等の磁束ガイド30を位置決めするステップを含む。上述のように、隣接するコイルの重なりが、異なるコイルの能動部間に第1のタイプの空間141a、141b、141cを形成する。コイル12が(
図6A~
図6Dのように)それぞれ2対以上の径方向に延びる能動部を含む場合、第2のタイプの空間142a、142a’の対も各導電コイル12内に画定される。いずれの場合も、磁束ガイドを空間内に位置決めすることもできる。コイル12自体が画定された空間を有する構造を提供するので、構造内へのラミネーションパックの位置決めは単純で迅速且つ精密である。コイル12を収納するためにステータハウジング20に開口25を設けることと組み合わせて、これは、ステータコアの両方のコンポーネント(コイル12の能動部及び磁束ガイド30)を多くの既知の技術に比べて迅速且つ非常に正確に位置決めできることを意味する。正確に位置決めされたコアコンポーネントは損失を減らし、したがって機械効率を向上させることが理解されよう。
【0121】
場合によっては、540において、方法500は、複数のコイル12を多相電源に接続できるように接続手段15、16に接続するステップを含む。これは任意の所望の方法で、例えば上述のように並列又は直列接続構成でバスバーを用いて行うことができる。
【0122】
場合によっては、550において、方法500は、ステータアセンブリ1の少なくとも一部に樹脂などのボンディングコンパウンドを含浸させるステップを含む。これによりステータ構造が強化され、ステータアセンブリ1が使用時に受ける機械力及び電磁力から保護される。さらにこれにより、ボンディングコンパウンドが空気よりも大幅に高い伝熱係数を有する場合、ステータ構成要素間の熱伝導を改善することができる。
【0123】
上述のように接続手段15、16がコイル12の軸線方向上方及び/又は下方に設けられる場合、接続手段へのコイルの接続前又は接続後にステータの含浸を行うことができる。さらに、有利なこととして、接続手段15、16自体が含浸されない場合、含浸後に接続を試験、変更、及び必要な場合は交換することができる。樹脂含浸ステータの接続不良によりステータ全体が使用不可能且つ固定不可能になり得るので、これは非常に望ましい。
【0124】
機械効率
本明細書に記載のステータアセンブリ1を備えたアキシャルフラックス機械100は、高いピーク効率だけでなく広い動作パラメータ範囲で高い効率をもたらすことが分かった。高いピーク効率が見積もられることは多いが、特に機械がある動作パラメータ範囲で機能する必要がある用途において、それが実際に達成されることはめったにない。したがって、広いパラメータ範囲での効率は、多くの用途にとってより現実的な有意義な尺度である。
【0125】
これを説明するために、
図14は、多くの用途で一般に用いられているトルク及び速度値の範囲での、
図12A~
図12Cのステータアセンブリを備えたアキシャルフラックス機械の効率測定結果を示す効率マップである。一定効率の等高線が効率マップに含まれる。このように、高いピーク効率(93%)だけでなく、効率は効率マップのほぼ全域で非常に高いままであり、比較的定速の500rpmでも30Nmのトルクまで高いままである(80%超)。
【0126】
ステータアセンブリ1が達成可能な高効率にはいくつかの異なる理由があり得る。これらのいくつかを次に説明する。
【0127】
第1に、上述のように、コイル12の幾何学的形状により与えられるステータ10の導電コンポーネントのほぼ自己形成的な(almost self-forming)構造は、ステータコアのコンポーネントの非常に正確な配置を可能にする。コアのコンポーネントの正確な配置は、ステータ及びロータ磁界の結合がより良好であり、ステータの周囲の対称度が高くトルクの発生を改善することを意味する。
【0128】
別の大きな利点は、より正確に正弦波状の磁束密度を有するステータ磁界の発生である。当業者には理解されるように、ステータの毎極毎相のスロット数が大きいほど、磁束密度を正弦波に近付けることができる。上述のコイル12及びステータ10は、導電コイル12毎の導電素子120の数を増やすことにより毎極毎相のスロット数を増やすことができ、この数は容易に増やすことができる(例えば、特定の用途でステータの半径を増大させることができる場合)。高度な正弦波状の磁束密度の利点は、磁束密度が比較的少ない高調波成分を有することである。高調波成分が少ないと、ロータ及びステータ磁界の結合が磁束密度の基本波成分を多く含むようになり、高調波成分との相互作用が少なくなる。これにより、ロータ磁石の渦電流の発生が減り、これがさらに加熱による損失を減らす。これに対して、多くの既知のアキシャルフラックスモータは、限られた数の毎極毎相のスロット数(例えば分数)しか提供しない集中巻構成を利用し、これはより多くの高調波成分を有する、はるかに台形波状の磁束密度を発生する。
【0129】
コイル12は、軸線方向に延びるストリップを用いて実施することができるが、
図5A~
図5D及び
図6A~
図6Dに示す軸線方向に積層された巻線構成を用いて実施されることが好ましい。多くのモータ製造業者は、これがステータコアの充填率を低下させると考えられ得るのでこれを欠点と考えるかもしれないが、本発明者らは、導体断面の外側及び主に能動部の軸線方向外側部分に電流を流す表皮及び近接効果の低減により、この欠点が補償されることを見出した。軸線方向の巻線数は、これら2つの検討事項のバランスを取るように選択され得る。
【0130】
種々の任意選択的特徴を有するいくつかの実施形態を上述した。任意の相反する特徴を除いて、任意選択的特徴の1つ又は複数の任意の組み合わせが可能である。